(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029986
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】頭蓋形状矯正ヘルメット及び頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61F5/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132497
(22)【出願日】2022-08-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和4年7月1日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://www.babyband.jp/ (2) ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和4年7月1日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/701708_30400BZX00090000_1_01_01
(71)【出願人】
【識別番号】521407050
【氏名又は名称】株式会社Berry
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕士
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB20
4C098BC45
4C098DD13
(57)【要約】
【課題】頭部からの汗による蒸れの抑えられる頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供すること。
【解決手段】頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナ3と、を備え、インナーライナ3は、シェル2の内面側に配置される外側層33と、頭部に接触する内側層35と、外側層33と内側層35との間に位置するクッション層34とを有し、クッション層34は、クッション性を有し、内側層35は、クッション層34よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成され、外側層33は、クッション層34よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットであって、
シェルと、
前記シェルの内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナと、を備え、
前記インナーライナは、前記シェルの内面側に配置される外側層と、頭部に接触する内側層と、前記外側層と前記内側層との間に位置するクッション層とを有し、
前記クッション層は、クッション性を有し、
前記内側層は、前記クッション層よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成され、
前記外側層は、前記クッション層よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成される、
頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項2】
前記クッション層は20個以上貫通孔を有する
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項3】
前記内側層は、前記クッション層よりも高い透湿度を有する、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項4】
前記外側層は、前記内側層よりも高い速乾性を有する
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項5】
前記クッション層の密度は前記内側層の密度及び前記外側層の密度より高い
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項6】
前記クッション層は、発泡樹脂により構成されている、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項7】
前記外側層は、合成繊維により構成されている、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項8】
前記外側層を構成する合成繊維は、ポリエステル繊維である、
請求項7に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項9】
前記シェルの内面に面ファスナーが配置され、前記外側層は前記シェル側の面に起毛構造を有する、
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項10】
前記内側層は、合成繊維或いは/及び綿を含む
請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項11】
頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットのシェルの内面側に配置される、頭部に接触するインナーライナであって、
前記シェルの内面側に配置される外側層と、頭部に接触する内側層と、前記外側層と前記内側層との間に位置するクッション層とを有し、
前記クッション層は、クッション性を有し、
前記内側層は、前記クッション層よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成され、
前記外側層は、前記クッション層よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成される、
頭蓋形状矯正ヘルメットのインナーライナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋の変形を矯正するために頭部に装着される頭蓋形状矯正ヘルメット及び頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳児や幼児に、例えば斜頭、短頭、長頭等の治療を要する頭蓋変形が生じる場合がある。斜頭は頭蓋が左右対称ではなく片側に傾斜している変形形状である。短頭は、頭蓋の前後方向寸法が著しく短い変形形状である。長頭は、頭蓋の前後方向寸法が著しく長い変形形状である。このような頭蓋変形を治療する装具として、頭部に被ることにより、頭蓋の成長に伴って頭蓋の形状が矯正されるように変形を促す頭蓋形状矯正ヘルメットが、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、非発泡合成樹脂製外側シェルとシェルの内面に配設された発泡合成樹脂製内側ライナーとを具備する頭蓋変形矯正ヘルメットが開示されている。しかしながら、内側ライナーが発泡合成樹脂層のみにより構成されている場合、例えば、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメットを適切に保持しつつ、頭部からの汗による蒸れを抑えることは難しい。よって、より良好な装着状態が得られる頭蓋形状矯正ヘルメットが求められていた。
【0005】
本発明は、良好な装着状態が得られる頭蓋形状矯正ヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットは、シェルと、シェルの内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナと、を備え、インナーライナは、シェルの内面側に配置される外側層と、頭部に接触する内側層と、外側層と内側層との間に位置するクッション層とを有し、クッション層は、クッション性を有し、内側層は、クッション層よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成され、外側層は、クッション層よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成される。
【0007】
(2)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、クッション層は20個以上の貫通孔を有する。
【0008】
(3)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、内側層は、クッション層よりも高い透湿度を有する。
【0009】
(4)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、外側層は、内側層よりも高い速乾性を有する。
【0010】
(5)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、クッション層の密度は内側層の密度及び外側層の密度より高い。
【0011】
(6)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、クッション層は発泡樹脂により構成されている。
【0012】
(7)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、外側層は、合成繊維により構成されている。
【0013】
(8)(7)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、外側層を構成する合成繊維は、ポリエステル繊維である。
【0014】
(9)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、シェル側の面に面ファスナーが配置され、外側層はシェルに面して起毛構造を有する。
【0015】
(10)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、内側層は、合成繊維或いは/及び綿を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、良好な装着状態が得られる頭蓋形状矯正ヘルメットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットを斜め前方から見たときの斜視図である。
【
図2】
図1の頭蓋形状矯正ヘルメットにおいて、仮想的にシェルを透過してインナーライナを見たときの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る平面状に展開されるインナーライナの斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る貫通孔を有するインナーライナの断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るシェルにインナーライナが装着された状態の頭蓋形状矯正ヘルメットの断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る貫通孔を有さないインナーライナの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態1に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は本発明の一実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1を治療対象者としての使用者100が被っている様子を示す斜視図である。頭蓋形状矯正ヘルメット1は、シェル2とインナーライナ3とを備える。
【0020】
シェル2が頭蓋形状矯正ヘルメット1の外形を構成している。シェル2には、シェル通気孔21が設けられている。シェル通気孔21は、治療対象者としての乳幼児が頭蓋形状矯正ヘルメット1を常に装着しているような場合において、頭部からの汗を蒸散させる。
図1に示すように、シェル通気孔21は多数設けられていることが好ましい。シェル2の内表面には、インナーライナ3を固定するための面ファスナー(不図示)が設けられている。
【0021】
インナーライナ3は、シェル2の内表面に配置されて使用者100の頭部に接触する。インナーライナ3は、シェル2に重ねられる。インナーライナ3は、矯正対象の頭蓋が固いシェル2に直接押し付けられる場合に生じる頭皮へのダメージを和らげる働きを有する。インナーライナ3は、複数のインナーライナ通気孔31を有する。複数のインナーライナ通気孔31は、縦横に等間隔に設けられていてもよい。インナーライナ通気孔31は、例えば1mm以上4mm以下の開口径であって、シェル通気孔21の開口径よりも小さな開口径であってもよい。インナーライナ通気孔31は、例えば、直径2mm程度の開口径を有する。インナーライナ3は、シェル2の内表面に、例えば面ファスナーを介して着脱自在に装着される。
【0022】
図2は、仮想的にシェル2を透過してインナーライナ3を見たときの斜視図であり、特に、
図1に示すように、シェル2に重ねられて使用者100に装着されている時のインナーライナ3の立体的な形の斜視図である。インナーライナ3は複数の切り込み32を有する。
図3は、複数の切り込み32に基づいてインナーライナ3が2次元に展開された態様の斜視図である。インナーライナ3は略平面状に展開され得る。
図3においては、インナーライナ通気孔31の表記は省略されている。インナーライナ3は、シェル2の形状に合わせてカットされた板状のクッションである。インナーライナ3の厚みは1mmから10mmである。インナーライナ3の厚みは1.5mm~4mmが好ましい。
【0023】
図4は、インナーライナ3の断面図である。インナーライナ3は、少なくとも3層を含む。インナーライナ3は、シェル2の内面側に配置される外側層33と、使用者100の頭部に接触する内側層35と、外側層33と内側層35との間に位置するクッション層34とを備える。
【0024】
以下、外側層33、クッション層34、内側層35それぞれについて詳細に説明する。
(外側層)
【0025】
外側層33は、例えば、合成繊維により構成されている。外側層33を構成する合成繊維は、例えば、吸水速乾性の高い素材であるポリエステル繊維が好ましい。外側層33は、合成繊維で構成されたニット生地であってもよい。
【0026】
外側層33は、クッション層34よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成される。外側層33は、クッション層34よりも高い吸水性を有していることが好ましい。吸水性は、例えば、JIS L 1907:2010の滴下法により評価される。外側層33は、クッション層34よりも高い速乾性を有していることが好ましい。外側層33は、内側層35よりも高い速乾性を有していてもよい。速乾性は、拡散性残留水分率試験により評価される。外側層33は、好ましくは、クッション層34よりも高い吸水速乾性を有している。吸水速乾性は、例えば、ISO17617:2014のA1法により評価される。
【0027】
外側層33は、クッション層34よりも高い透湿度を有していることが好ましい。外側層33は、内側層35よりも高い透湿度を有していることが好ましい。透湿度は、例えば、JIS L 1099:2021に基づいて測定される。
【0028】
外側層33は、クッション層34よりも薄いことが好ましい。これにより、インナーライナ3に、頭部への保持性、圧力分散性、及び吸水速乾性の機能性を持たせつつ、インナーライナ全体の厚みの増加を抑えることができる。
【0029】
外側層33は、起毛素材を含む。より詳細には、外側層33はシェル側の面に起毛構造を有する。外側層33の表面がシェル2に設けられる面ファスナーに固定される。外側層33がシェル2に固定されることにより、インナーライナ3はシェル2に固定される。
【0030】
以上のように、外側層33は、合成繊維を含む繊維層により構成されていることが好ましく、起毛構造を含む繊維層により構成されることが好ましい。
【0031】
外側層33は、インナーライナ通気孔31に対応する孔として、20個以上、好ましくは200個以上の通気孔を有する。直径4mm以下の孔が0.3個/cm2以上空けられていることが好ましい。
【0032】
(クッション層)
クッション層34は常時頭蓋から圧力を受けてへこんだ状態で維持されるため、形状が変化しやすい、即ち、へたりやすい。その点を考慮し、へたりにくい素材によりクッション層34は構成される。
【0033】
クッション層34は、例えば、低反発クッションである。クッション層34は合成発泡樹脂、例えば低反発ポリウレタンフォームにより構成される。
【0034】
クッション層34の密度は内側層35の密度及び外側層33の密度より高い。クッション層34は80kg/m3以上の密度を有することが好ましい。クッション層34の密度は、例えば、JIS K 6401:2011に基づいて測定される。
【0035】
スポンジ状で通気性の高いウレタンフォームは存在するが、このようなウレタンフォームはやわらかすぎるため、頭部への保持性が低くなる。ある程度クッション性は残しつつ、頭部への保持性を確保するためには、ウレタンフォームの密度をある程度高めて硬くする必要がある。しかしながら、ウレタンフォームの密度を高めてしまうと通気性が低下する。これに対して、全体に細かな孔がクッション層34或いはインナーライナ3に設けられる。これにより、頭蓋形状矯正ヘルメット1として、良好な通気性が実現される。又、クッション層34にも抗菌加工の行われていることが好ましい。
【0036】
クッション層34は、インナーライナ通気孔31に対応する孔として、20個以上、好ましくは200個以上の通気孔を有する。直径4mm以下の孔が0.3個/cm2以上空けられていることが好ましい。
【0037】
(内側層)
内側層35は、合成繊維或いは/及び綿を含む。内側層35はコットン、シルク、ウール、ポリエステル、レーヨンの繊維の少なくとも1つを有してもよい。内側層35は、吸水速乾性の高い、綿を含む繊維層により構成されていることが好ましい。内側層35は、内面側から順に、綿を含む第一層と、合成繊維を含む第2層と、を有してもよい。第一層は、綿で構成されたニット生地であり、第2層は、合成繊維で構成されたニット生地であってもよい。第一層は、綿で構成されたトリコット生地であり、第2層は、合成繊維で構成されたトリコット生地であってもよい。内側層35は、頭蓋の頭皮に触れるため、肌に優しいことが求められる。このため綿を含む層が第一層となることが好ましい。一方、吸われた汗の水分を頭蓋形状矯正ヘルメット1の外に逃がすためには、速乾性が求められる。第2層が合成繊維で形成されており、速乾性が併せて内側層35に与えられる。合成繊維としては、ポリエステル繊維が好ましい。
【0038】
内側層35は、クッション層34よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成される。内側層35は、クッション層34よりも高い吸水性を有していることが好ましい。吸水性は、例えば、JIS L 1907:2010の滴下法により測定される。内側層35は、クッション層34よりも高い速乾性を有していることが好ましい。速乾性は、拡散性残留水分率試験により測定される。内側層35は、好ましくは、クッション層34よりも高い吸水速乾性を有している。吸水速乾性は、例えば、ISO17617:2014のA1法により測定される。
【0039】
内側層35は、クッション層34よりも高い透湿度を有していることが好ましい。透湿度は、例えば、JIS L 1099:2021に基づいて測定される。
【0040】
内側層35は、クッション層34よりも薄いことが好ましい。これにより、インナーライナ3に、頭部への保持性、圧力分散性、及び吸水速乾性の機能性を持たせつつ、インナーライナ全体の厚みの増加を抑えることができる。
【0041】
外側層33は、インナーライナ通気孔31に対応する孔として、20個以上、好ましくは200個以上の通気孔を有する。直径4mm以下の孔が0.3個/cm2以上空けられていることが好ましい。
【0042】
内側層35は、クッション層34よりも高い抗菌活性値を有する。これにより、効果的に抗菌作用を得ることができる。抗菌活性は、例えば、JIS L 1902/JIS K 6400-9規格に基づいて評価することができる。
【0043】
(インナーライナ)
インナーライナ3について、インナーライナ3を構成する外側層33とクッション層34と内側層35との関係が中心に述べられる。
【0044】
インナーライナ3は、クッション層34と外側層33とを接合する熱圧着接合部を備え、クッション層34と内側層35とを接合する熱圧着接合部を備える。三層の接着方法にはいくつかの方法がある。熱圧着(ホットメルト)方式は、高い接着性を有し(はがれにくく)、均一な厚みをもたらすので好ましい。
【0045】
内側層35は、直接肌に触れるため、吸水速乾、抗菌防臭加工のある素材により構成される。例えば、衣服用の素材が好ましい。クッション層34は、圧力を分散させる例えば、低反発ポリウレタンフォームにより構成される。又クッション層34は、流れ出た汗を吸収し拡散させる機能性を有する。蒸れを防ぐメカニズムは、例えば、以下の通りである。頭蓋から出た汗が内側層35により吸収或いは吸水される。汗は、内側層35から蒸散し、クッション層通気孔34aを通り、即ち導水されて外側層33に達する。汗は外側層33が速乾性を有することから拡散蒸発され、シェル2のシェル通気孔21から蒸散する。
【0046】
クッション層34に採用されるウレタンフォームは加水分解しやすい材質であるため、本来水には弱い。しかしながら、外側層33及び内側層35を速乾性のある素材にしているため、仮に汗等の水分が付着しても、すぐに拡散し、乾きやすく、ウレタンフォームへの影響は小さい。同様の理由で、インナーライナ3は、洗濯して繰り返し使用することができる。200回の洗濯試験を実施したが、剥がれや破損等の大きな劣化は見られない。
【0047】
インナーライナ3とシェル2との関係においては、蒸れを防止する効果と並行して、インナーライナ3の取り外しが容易で洗濯が容易であり、使用者100の肌に優しいとう効果も重要である。この効果のみを訴求する場合には、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナ3と、を備え、インナーライナ3は、シェル2の内面側に配置される外側層33と、頭部に接触する内側層35と、外側層33と内側層35との間に位置するクッション層34とを有し、クッション層34は、クッション性を有し、シェル2は面ファスナーを有し、外側層33は起毛構成を有し、内側層35は、肌に優しい素材、例えば非アレルギー素材である綿素材を有することが好ましい。
【0048】
図5は、インナーライナ3がシェル2に重ねられている状態での断面図である。
図5において、シェル通気孔21とインナーライナ通気孔31として示すように、シェル2の有するシェル通気孔21とインナーライナ3の有するインナーライナ通気孔31との位置は、一致していることが好ましい。これにより、より、頭蓋表皮からの汗の蒸散の効率が高くなる。ただし、シェル2の有するシェル通気孔21とインナーライナ3の有するインナーライナ通気孔31との位置は、一致していなくてもよい。この場合であっても、頭皮全体から発生する汗が吸水速乾性の高い内側層35で吸水され、その水分が吸水速乾性の高い内側層35、クッション層34のクッション層通気孔34a、吸水速乾性の高い外側層33、シェル2のシェル通気孔21を通じて拡散放出される。
【0049】
以上のように、本実施形態の頭蓋形状矯正ヘルメット1は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナ3と、を備え、インナーライナ3は、クッション層34と、クッション層34の内面側に配置された内側層35と、クッション層34の外面側に配置された外側層33と、を備え、クッション層34には複数の通気孔が形成されており、内側層35は、クッション層34よりも吸水速乾性が高く、外側層33は、クッション層34よりも吸水速乾性が高い。
【0050】
これにより、良好な装着状態が得られる頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供することができる。より具体的には、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1を適切に保持しつつ、頭部からの汗による蒸れを抑えることができる。頭皮全体から発生する汗が吸水速乾性の高い内側層35で吸水され、その水分が吸水速乾性の高い内側層35、クッション層34のクッション層通気孔34a、吸水速乾性の高い外側層33、シェル2のシェル通気孔21を通じて拡散放出される。そして、内側層35と外側層33の間にクッション層34が存在することにより圧力が適切に分散され、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1が適切に保持される。
【0051】
又、本実施形態の頭蓋形状矯正ヘルメット1は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナ3と、を備え、インナーライナ3は、クッション層34と、クッション層34の内面側に配置された内側層35と、クッション層34の外面側に配置された外側層33と、を備え、クッション層34は、発泡樹脂により構成され、内側層35及び外側層33は、繊維層により構成される。
【0052】
これにより、良好な装着状態が得られる頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供することができる。より具体的には、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1を適切に保持しつつ、頭部からの汗による蒸れを抑えることができる。頭皮全体から発生する汗が繊維層により構成される内側層35で吸水され、その水分が繊維層により構成される内側層35、クッション層34のクッション層通気孔34a、繊維層により構成される外側層33、シェル2のシェル通気孔21を通じて拡散放出される。そして、内側層35と外側層33の間にクッション層34が存在することにより圧力が適切に分散され、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1が適切に保持される。
【0053】
又、本実施形態の頭蓋形状矯正ヘルメット1は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナ3と、を備え、インナーライナ3は、クッション層34と、クッション層34の内面側に配置された内側層35と、クッション層34の外面側に配置された外側層33と、を備え、クッション層34は、発泡樹脂により構成され、内側層35は、綿を含む繊維層により構成され、外側層33は、合成繊維を含む繊維層により構成される。
【0054】
これにより、良好な装着状態が得られる頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供することができる。頭部と接触する内側層35が綿を含む繊維層により構成されているため、本実施形態の頭蓋形状矯正ヘルメット1は、乳幼児のような使用者100が装着しても、使用者100の頭皮に優しい。そして、外側層33が合成繊維を含む繊維層により構成されているため、使用者100の汗を効果的に拡散放出させることができる。そして、内側層35と外側層33の間にクッション層34が存在することにより圧力が適切に分散され、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1を適切に保持される。
【0055】
又、本実施形態の頭蓋形状矯正ヘルメット1は、内面に面ファスナーが配置されたシェル2と、シェル2の内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナ3と、を備え、インナーライナ3は、クッション層34と、クッション層34の内面側に配置された内側層35と、クッション層34の外面側に配置された外側層33と、を備え、クッション層34は、発泡樹脂により構成され、内側層35は、繊維層により構成され、外側層33は、起毛構造を含む繊維層により構成される。
【0056】
これにより、良好な装着状態が得られる頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供することができる。シェル2の内面側に配置される外側層33が起毛構造を含む繊維層により構成されているため、インナーライナ3をシェル2から容易に着脱することができる。よって、適切なタイミングでインナーライナ3を洗濯することが可能であり、使用者100は清潔な状態のインナーライナ3が取り付けられている頭蓋形状矯正ヘルメット1を装着することができる。又、インナーライナ3側に面ファスナーを設ける必要がなく、対となる面ファスナー同士の位置ずれの問題も生じない。そして、内側層35と外側層33の間にクッション層34が存在することにより圧力が適切に分散され、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1を適切に保持される。
【0057】
なお、例えばインナーライナ3がウレタンフォーム等の発泡樹脂1層により構成されている場合、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1を適切に保持するためには、発泡樹脂の密度をある程度高めて硬くする必要がある。しかしながら、発泡樹脂の密度を高めてしまうと通気性が低下し、汗による蒸れが生じやすくなる。一方、発泡樹脂の密度を低くすると通気性は向上するが、圧力分散性が低下し、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1を適切に保持することが難しくなる。
【0058】
インナーライナ3は、
図4に示すように、インナーライナ3を貫通する複数(多数)の貫通孔であるインナーライナ通気孔31が設けられることが好ましい。本実施形態の構成によれば、クッション層34の圧力分散性を確保しつつ、頭部からの汗が拡散放出する通路を確保することが可能となるため、頭部に対して頭蓋形状矯正ヘルメット1を適切に保持しつつ、頭部からの汗による蒸れを抑えることができる。更に、乳幼児といった使用者100の頭皮に優しい頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供することができ、又、インナーライナ3の着脱が容易な頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供することができる。
【0059】
なお、
図4に示すように、外側層33、クッション層34、及び内側層35の通気孔の位置は一致していることが好ましいが、
図6に示すように、外側層33、クッション層34、及び内側層35がそれぞれ外側層通気孔33a、クッション層通気孔34a、内側層通気孔35aを有し、それらの位置が一致しない構成も可能である。内側層35で吸収された汗は、クッション層通気孔34aを通して外側層33に到達し、シェル2のシェル通気孔21から蒸散する。
【0060】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。又、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0061】
以上説明した実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット1によれば以下のような効果が奏される。
【0062】
(1) 頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット1は、シェル2と、シェル2の内面側に配置されて頭部に接触するインナーライナ3と、を備え、インナーライナ3は、シェル2の内面側に配置される外側層33と、頭部に接触する内側層35と、外側層33と内側層35との間に位置するクッション層34とを有し、クッション層34は、クッション性を有し、内側層35は、クッション層34よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成され、外側層33は、クッション層34よりも吸水性或いは/及び速乾性が高い素材により構成される。
【0063】
これにより、良好な装着状態の得られる頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供することができる。例えば、頭部からの汗による蒸れの抑えられる頭蓋形状矯正ヘルメット1を提供することができる。頭皮全体から発生する汗が内側層35、クッション層34、外側層33、シェル2のシェル通気孔21を通じて拡散放出され得る。内側層35、外側層33共に吸水性が良い場合には、汗は内側層35に良く吸収され、更にクッション層34の穴を通して外側層33に吸水される。外側層33の吸水性が良いため、内側層35で吸水された汗が外側層33に受け継がれやすい。内側層35の吸水性が良く、外側層33の速乾性が高い場合には、外側層33の湿度が低いことが期待され、内側層35から外側層33への水分の蒸散が進みやすい。内側層35の速乾性が高く外側層33の吸水性が高い場合には、内側層35に水分が溜まるのではなく外側層33に水分が溜まる形になり、さらさらした内側層35となる。内側層35と外側層33との双方が速乾性を有する場合には、主に蒸気の形態にて内側層35からクッション層34を通して外側層33を通りシェル2の孔から蒸散される。吸水性と速乾性とを合わせ持つような場合には、上記の4通りが適宜組み合わさった形にて汗が蒸散する。
【0064】
(2)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、クッション層34は20個以上、好ましくは200個以上の貫通孔を有する。
【0065】
これにより、頭部からの汗がクッション層34を通過して、外側層33に導出され得る。
【0066】
(3)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、内側層35は、クッション層34よりも高い透湿度を有する。
【0067】
これにより、頭部からの汗は、内側層35からクッション層34のクッション層通気孔34aに導出され得る。
【0068】
(4)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、外側層33は、内側層35よりも高い速乾性を有する。
【0069】
これにより、クッション層34のクッション層通気孔34aから放出される汗が速く乾燥され得る。
【0070】
(5)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、クッション層34の密度は内側層35の密度及び外側層33の密度より高い。
【0071】
これにより、クッション層34は、頭蓋形状矯正ヘルメット1の機能である頭蓋矯正において、一部が常に潰れて、シェル2からの圧力を分散させつつ頭蓋の矯正に貢献することができる。
【0072】
(6)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、クッション層34は発泡樹脂により構成されている。
【0073】
これにより、クッション層34は、頭蓋形状矯正ヘルメット1の機能である頭蓋矯正において、一部が常に潰れて、シェル2からの圧力を分散させつつ頭蓋の矯正に貢献することができる。
【0074】
(7)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、外側層33は、合成繊維により構成されている。
【0075】
これにより、クッション層34のクッション層通気孔34aから放出される汗が速く乾燥され得る。
【0076】
(8)(7)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、外側層33を構成する合成繊維は、ポリエステル繊維である。
【0077】
これにより、クッション層34のクッション層通気孔34aから放出される汗が速く乾燥され得る。
【0078】
(9)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、シェル2側の面に面ファスナーが配置され、外側層33はシェル2に面して起毛構造を有する。
【0079】
これにより、面ファスナーに起毛構造が固定され、シェル2に外側層33が固定され得る。シェル2に対してインナーライナ3が脱着可能な状態で固定され得る。
【0080】
(10)(1)の頭蓋形状矯正ヘルメット1において、内側層35は、合成繊維或いは/及び綿を含む。
【0081】
これにより、肌に優しい内側層35が実現される。特に綿100%の素材で内側層35が構成される場合には、アレルギー反応が抑えられ得る。
【符号の説明】
【0082】
1 頭蓋形状矯正ヘルメット
2 シェル
21 シェル通気孔
3 インナーライナ
31 インナーライナ通気孔
32 切り込み
33 外側層
33a 外側層通気孔
34 クッション層
34a クッション層通気孔
35 内側層
35a 内側層通気孔
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