(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029989
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】直流モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20240229BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H02K9/06 G
H02K9/06 A
H02K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132502
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
【テーマコード(参考)】
5H604
5H609
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604BB07
5H604BB14
5H604CC02
5H604CC16
5H609BB06
5H609BB15
5H609PP02
5H609QQ02
5H609RR06
(57)【要約】
【課題】 直流モータの内部の冷却の促進、およびモータの電気回路の絶縁信頼性の向上。
【解決手段】 回転子1の鉄芯2の外径側に、巻線3が施される巻線部2cが複数形成され、回転子1の鉄芯2の内径側に、巻線部2cを支持する支持部が形成され、巻線部2cにインシュレータ4が嵌め合わされた直流モータにおいて、インシュレータ4は、その中心に形成された環状部4aと、鉄芯2の各巻線部2cに嵌め合わされる複数の端部嵌め合わせ部4bとの間に、それらを連結する複数の羽aを有するファン部4cと、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(1)の鉄芯(2)の外径側に、巻線(3)が施される巻線部(2c)が複数形成され、
回転子(1)の鉄芯(2)の内径側に、巻線部(2c)を支持する支持部が形成され、
巻線部(2c)にインシュレータ(4)が嵌め合わされた直流モータにおいて、
インシュレータ(4)は、その中心に形成された環状部(4a)と、
鉄芯(2)の各巻線部(2c)に嵌め合わされる複数の端部嵌め合わせ部(4b)と、
環状部(4a)と端部嵌め合わせ部(4b)との間を連結する複数の羽(a)を有するファン部(4c)と、
を具備する直流モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の直流モータにおいて、
前記回転子(1)の鉄芯(2)の支持部は、回転子(1)の鉄芯(2)の中心に位置する中心側環状支持部(2a)、および中心側環状支持部(2a)から外径側に放射状に延びる複数の放射状支持部(2b)を有し、
インシュレータ(4)のファン部(4c)の少なくとも一部は、前記放射状支持部(2b)の近傍に位置する直流モータ。
【請求項3】
請求項2に記載の直流モータにおいて、
インシュレータ(4)のファン部(4c)を形成する羽(a)と、鉄芯(2)の放射状支持部(2b)との間に隙間(5)を形成した直流モータ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の直流モータにおいて、
インシュレータ(4)のファン部(4c)は、羽車状に形成されると共に、その羽(a)の平面が回転子(1)の回転軸(6)に平行に配置された直流モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータの構造に関し、特に、そのモータの冷却、およびモータの電気回路の絶縁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なブラシ付き直流モータにおいて、回転子は、鋼板の積層体からなる鉄芯と、巻線と、を有する。
鉄芯の外径側には、巻線が施される巻線部が複数形成され、巻線部には電気絶縁体であるインシュレータが嵌め合わされている。また、鉄芯の内径側には、巻線部を支持する支持部が形成されている。
なお、モータの鉄芯の内径側は、インシュレータで覆われていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータはケーシングで覆われているため、その内部で発生した熱がこもり、モータの温度が上昇し、モータの耐久性が低下する。
また、回転子の鉄芯の内径側はインシュレータで覆われていないため、巻線と鉄芯が直接接触する可能性があり、その場合、巻線の絶縁が低下し、電気回路が短絡するおそれがある。
そこで、本発明はモータの内部の冷却の促進、およびモータの電気回路の絶縁信頼性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための第1の発明は、回転子1の鉄芯2の外径側に、巻線3が施される巻線部2cが複数形成され、
回転子1の鉄芯2の内径側に、巻線部2cを支持する支持部が形成され、
巻線部2cにインシュレータ4が嵌め合わされた直流モータにおいて、
インシュレータ4は、その中心に形成された環状部4aと、
鉄芯2の各巻線部2cに嵌め合わされる複数の端部嵌め合わせ部4bと、
環状部4aと端部嵌め合わせ部4bとの間を連結する複数の羽aを有するファン部4cと、
を具備する直流モータである。
【0005】
また、第2の発明は、上記第1の発明に記載の直流モータにおいて、
前記回転子1の鉄芯2の支持部は、回転子1の鉄芯2の中心に位置する中心側環状支持部2a、および中心側環状支持部2aから外径側に放射状に延びる複数の放射状支持部2bを有し、
インシュレータ4のファン部4cの少なくとも一部は、前記放射状支持部2bの近傍に位置する直流モータである。
【0006】
また、第3の発明は、上記第2の発明に記載の直流モータにおいて、
インシュレータ4のファン部4cを形成する羽aと、鉄芯2の放射状支持部2bとの間に隙間5を形成した直流モータである。
【0007】
また、第4の発明は、上記第1の発明~第3の発明のいずれかに記載の直流モータにおいて、
インシュレータ4のファン部4cは、羽車状に形成されると共に、その羽aの平面が回転子1の回転軸6に平行に配置された直流モータである。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明は、インシュレータ4が、その中心に形成された環状部4aと、鉄芯2の各巻線部2cに嵌め合わされる複数の端部嵌め合わせ部4bと、環状部4aと端部嵌め合わせ部4bとの間を連結する複数の羽aを有するファン部4cと、を具備するものである。
このように、インシュレータ4の環状部4aと端部嵌め合わせ部4bとの間にファン部4c設けたので、インシュレータ4の回転に伴って気流が生じ、モータ内部の冷却が促進される。
【0009】
また、第2の発明のように、回転子1の鉄芯2の支持部が、回転子1の鉄芯2の中心に位置する中心側環状支持部2a、および中心側環状支持部2aから外径側に放射状に延びる複数の放射状支持部2bを有し、インシュレータ4のファン部4cの少なくとも一部を、放射状支持部2bの近傍に位置することができる。
この構成により、鉄芯2の放射状支持部2bと巻線3とが接触して電気回路を短絡するおそれが低下し、絶縁信頼性が向上する。
【0010】
さらに、第3の発明のように、インシュレータ4のファン部4cを形成する羽aと、鉄芯2の放射状支持部2bとの間に隙間5を形成することができる。
この構成により、隙間5を通じて気流が流通することが可能となり、気流の生成が放射状支持部2bによって妨げられることが低下されるので、絶縁効果を保ちつつ、冷却効果を高めることが可能となる。
【0011】
さらに、第4の発明のように、インシュレータ4のファン部4cは、羽車状に形成されると共に、その羽aの平面を回転子1の回転軸6に平行に配置することができる。
この構成により、回転子の回転方向に依らずに、同様の気流を生じさせることが可能となり、モータの回転に関わらず、冷却効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5A】同直流モータにおけるインシュレータ4の第1の実施例の平面図。
【
図6】
図2におけるA-A矢視断面略図であって羽aと鉄芯2の間に隙間5を有する場合の説明図。
【
図7】
図2におけるA-A矢視断面略図であって羽aと鉄芯2の間に隙間がない場合の説明図。
【
図8A】インシュレータの羽aの他の例(第1の変形例)の断面図。
【
図9A】本発明の直流モータにおけるインシュレータ4の第2実施例の平面図。
【
図10A】第2の実施例のインシュレータの羽aの他の例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
直流モータは、
図1に記載の如く、ケーシング7の内部に回転軸6を介して回転子1が支持され、ケーシング7の内周面に永久磁石9が配置されている。
回転子1は、鋼板の積層体からなる鉄芯2と、巻線3と、を有する。
図2,
図3に示す如く、鉄芯2の外径側に巻線3が施される巻線部2cが複数形成されており、電気絶縁体であるインシュレータ4が巻線部2cに嵌め合わされている。また、鉄芯2の内径側には巻線部2cを支持する支持部が形成されている。
支持部は、回転軸6を挿入する孔が設けられた中心側環状支持部2aと、その中心側環状支持部2aから外径側に放射状に延びる放射状支持部2bとを有する。放射状支持部2bの外径側に外径側環状支持部2dが形成され、外径側環状支持部2dの外径側に巻線部2cが形成されている。
【0014】
図2に示す如く、インシュレータ4の中心側には、環状部4aが形成されている。インシュレータ4の外径側に、鉄芯2の各巻線部2cに嵌め合わせられる端部嵌め合わせ部4bが形成されている。端部嵌め合わせ部4bは、鉄芯2の外径側環状支持部2dに嵌め合わせられる外径側環状嵌め合わせ部4dに支持されている。
【0015】
図2、
図3、および
図4に示す如く、鉄心2の上下から一対のインシュレータ4を嵌め合わせた状態で、
図1に示す如く、インシュレータ4を介して各巻線部2cに巻線3が巻かれており、その各巻線3の両端のリード線3aが整流子8の整流子片8aに接続されている。
【実施例0016】
本発明の各インシュレータ4には、
図2、
図3、
図4、
図5Aに示す如く、外径側環状嵌め合わせ部4d介して、環状部4aと端部嵌め合わせ部4bとの間を連結する複数の羽aを有する羽車状のファン部4cが形成されている。
このファン部4cにより、インシュレータ4の回転に伴って気流が生じ、モータ内部の冷却が促進される。
インシュレータ4の羽aの枚数は、鉄芯2の放射状支持部2bの形成数より多く形成されている(この例では、羽aの枚数は、鉄芯2の放射状支持部2bの形成数の2倍形成されている。)。羽aの枚数は、鉄芯2の放射状支持部2bの形成数と同じであってもよい。
このインシュレータ4の羽aの少なくとも一部が、鉄芯2の放射状支持部2bの近傍に位置する。
このようにインシュレータ4を形成することにより、鉄芯2の放射状支持部2bと巻線3とが接触して電気回路が短絡するおそれが低下し、絶縁信頼性が向上する。
【0017】
なお、この例のインシュレータ4の各羽aは、
図3、
図4に示す如く、回転軸6の軸線に対して傾斜している。各羽aの形状は、
図5Bに示す如く、断面が長方形に形成されている。
上下一対のインシュレータ4の羽aの傾斜の向きは、
図6に示す如く、同じ方向に傾斜しており、ファン部4cの羽aと鉄心2の放射状支持部2bとの間には、隙間5が形成されている。隙間5を通じて気流が流通することが可能となり、気流の生成が放射状支持部2bによって妨げられることが低下されるので、絶縁効果を保ちつつ、冷却効果を高めることが可能となる。
また、
図7に記載の如く、隙間5を形成しない構成とすることもできる。
上下一対のインシュレータ4の羽aの枚数は同数であり、各羽aの形成位置は重なる位置に形成されている。
【0018】
上記第1の実施例の各羽aの断面形状は、
図5Bの形状に限られるものではない。
図8A~
図8Dは、羽aの断面形状の変形例の一例である。
図8Aの羽aの断面形状は、羽aの対向する平面の両端が曲面で連結されている。
図8Bの羽aの断面形状は、傾斜向きの下方側が先細りした流線に形成されている。
図8Cの羽aの断面形状は、
図8Aの対向する面が、平面から湾曲面になっている。
図8Dの羽aの断面形状は、
図8Cの両端が角を有している。