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特開2024-29995二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029995
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20240229BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240229BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B01D53/22 ZAB
C01B32/50
B01D53/92 240
B01D53/92 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132510
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】大出 高史
【テーマコード(参考)】
4D002
4D006
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA20
4D002CA20
4D002FA01
4D002GA02
4D002GB02
4D006GA41
4D006JA53Z
4D006KA64
4D006KE13P
4D006MC78
4D006PB19
4D006PB64
4D006PC80
4G146JA02
4G146JA04
4G146JB09
4G146JC11
4G146JD03
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の回収効率を確保したうえで、装置全体をコンパクトに構成することができる二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収装置1は、二酸化炭素を含む処理対象ガスが供給され、圧縮可能なガス供給空間11を有する密閉容器3と、該密閉容器3内に配置され、ガス供給空間11に供給された処理対象ガスから二酸化炭素を選択的に透過させる二酸化炭素選択透過膜4と、密閉容器3のガス供給空間11を圧縮して、ガス供給空間11に供給された処理対象ガスを二酸化炭素選択透過膜4に圧送する圧縮手段5と、を備えている。これにより、二酸化炭素の回収効率を確保したうえで、装置全体をコンパクトに構成することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む処理対象ガスが供給され、圧縮可能なガス供給空間を有する密閉容器と、
該密閉容器内に配置され、前記ガス供給空間に供給された前記処理対象ガスから二酸化炭素を選択的に透過させる二酸化炭素選択透過膜と、
前記密閉容器の前記ガス供給空間を圧縮して、前記ガス供給空間に供給された前記処理対象ガスを前記二酸化炭素選択透過膜に圧送する圧縮手段と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記処理対象ガスは、海上施工に用いる作業船から排出される排気ガスであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記二酸化炭素選択透過膜は、対向するように一対備えられ、
該一対の二酸化炭素選択透過膜間の二酸化炭素流入空間に流入された二酸化炭素が前記密閉容器から外部に回収される構成であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記密閉容器内において、前記二酸化炭素選択透過膜よりも、前記処理対象ガスの流動方向下流側に位置する分離された二酸化炭素の流入空間に、二酸化炭素濃度計が配置されることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
前記密閉容器内には、圧縮方向略中央に配置され、対向する一対の二酸化炭素選択透過膜間に設けられる二酸化炭素流入空間と、
圧縮方向において、前記二酸化炭素流入空間を挟むようにそれぞれ配置される前記ガス供給空間と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記圧縮手段は、伸縮自在の押圧シャフトを有するプレス機にて構成され、
該プレス機の押圧シャフトにより、前記ガス供給空間を圧縮する構成であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
二酸化炭素を選択的に透過させる二酸化炭素選択透過膜を利用した二酸化炭素回収方法であって、
二酸化炭素を含む処理対象ガスを密閉容器内のガス供給空間を経由して、前記二酸化炭素選択透過膜に圧送する第1圧送ステップと、
前記処理対象ガスが供給された前記ガス供給空間を圧縮して、前記ガス供給空間内の処理対象ガスを前記二酸化炭素選択透過膜に圧送する第2圧送ステップと、
を含むことを特徴とする二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象ガスから二酸化炭素を分離して回収する二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋土木工事において、海底の軟弱地盤にセメント改良杭を造成して補強を行う深層混合処理工法(以下:CDM工法という)がある。海上においてCDM工法を採用する際は、CDM船と呼ばれる、セメント、水及び混和剤を混合したセメントミルクを地盤内に圧送するために必要な特殊な作業船を使用する。そこで、CDM船の一日当たりの二酸化炭素の排出量は数tレベルとなっている。この現状を踏まえ、近年の環境問題への意識改革として、カーボンニュートラルに向けての二酸化炭素の排出量の削減が必須の課題となっている。
【0003】
すなわち、海上施工に用いる作業船、例えば、上述したCDM船や浚渫船、起重機船、SCP船(サンドコンパクション船)等から排出される排気ガス中の二酸化炭素を回収して再利用に繋げる方法は少なく、カーボンニュートラルを目指すうえで、これらの作業船からの二酸化炭素排出量の削減は、喫緊の課題である。
【0004】
そこで、二酸化炭素回収技術としては、化学吸収法、物理吸収法、物理吸着法、膜分離法、深冷分離法、酸素燃焼法等が存在する。しかしながら、物理吸着法等は、装置全体が大型化してしまい、上述したCDM船等の作業船上に搭載することができず、採用することが困難になる。
【0005】
また、二酸化炭素回収装置の従来技術として、特許文献1には、第一空間に流入する二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を分離膜によって選択的に第二空間に透過させるように構成された二酸化炭素分離器と、前記第二空間に連通した略密閉構造の空間に設けられた水を貯める貯水部と、前記第二空間を減圧するポンプと、前記ポンプの出口から排出されたガスから水分を分離する水分離器と、を備えた二酸化炭素分離回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-159813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の二酸化炭素分離回収装置では、その構造が複雑であり、コスト面等の観点から不利であり、しかも、二酸化炭素分離器の他に、貯水部や、ポンプ、水分離器が必要であり、装置全体が大型化するために、上述したCDM船等の作業船上に配置することが困難になり、採用することはできない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、二酸化炭素の回収効率を確保したうえで、装置全体をコンパクトに構成することができる二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の二酸化炭素回収装置に係る発明は、二酸化炭素を含む処理対象ガスが供給され、圧縮可能なガス供給空間を有する密閉容器と、該密閉容器内に配置され、前記ガス供給空間に供給された前記処理対象ガスから二酸化炭素を選択的に透過させる二酸化炭素選択透過膜と、前記密閉容器の前記ガス供給空間を圧縮して、前記ガス供給空間に供給された前記処理対象ガスを前記二酸化炭素選択透過膜に圧送する圧縮手段と、を備えることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、二酸化炭素を含む処理対象ガスが密閉容器内のガス供給空間に供給されると、圧縮手段により、密閉容器のガス供給空間を圧縮することで、速やかに、ガス供給空間の処理対象ガスを二酸化炭素選択透過膜に圧送することができ、処理対象ガス中の二酸化炭素が二酸化炭素選択透過膜を透過することにより、処理対象ガスから二酸化炭素を分離させて回収することができる。
【0010】
請求項2の二酸化炭素回収装置に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記処理対象ガスは、海上施工に用いる作業船から排出される排気ガスであることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、二酸化炭素回収装置を、海上施工に用いる作業船上に配置することができるので、該二酸化炭素回収装置は、当該作業船から排出される排気ガス中の二酸化炭素を分離させて回収するのに特に有効である。
【0011】
請求項3の二酸化炭素回収装置に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記二酸化炭素選択透過膜は、対向するように一対備えられ、該一対の二酸化炭素選択透過膜間の二酸化炭素流入空間に流入された二酸化炭素が前記密閉容器から外部に回収される構成であることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、二酸化炭素の単位時間当たりの回収量を増加させることができる。
【0012】
請求項4の二酸化炭素回収装置に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記密閉容器内において、前記二酸化炭素選択透過膜よりも、前記処理対象ガスの流動方向下流側に位置する分離された二酸化炭素の流入空間に、二酸化炭素濃度計が配置されることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、二酸化炭素濃度計による検出結果を経時的に管理することで、二酸化炭素選択透過膜の損傷や目詰まりなどの不具合を把握し、メンテナンス時期等を把握することができる。
【0013】
請求項5の二酸化炭素回収装置に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記密閉容器内には、圧縮方向略中央に配置され、対向する一対の二酸化炭素選択透過膜間に設けられる二酸化炭素流入空間と、圧縮方向において、前記二酸化炭素流入空間を挟むようにそれぞれ配置される前記ガス供給空間と、を備えることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、密閉容器を圧縮すると、その内部の2箇所のガス供給空間がそれぞれ圧縮されることで、各ガス供給空間の処理対象ガスが一対の二酸化炭素選択透過膜に圧送され、二酸化炭素流入空間に二酸化炭素が分離して充填される。その結果、二酸化炭素の単位時間当たりの回収量が増加される。
【0014】
請求項6の二酸化炭素回収装置に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記圧縮手段は、伸縮自在の押圧シャフトを有するプレス機にて構成され、該プレス機の押圧シャフトにより、前記ガス供給空間を圧縮する構成であることを特徴とするものである。
請求項6の発明では、圧縮手段を簡易な構成としているので、装置全体をコンパクトに構成することができる。
【0015】
請求項7の二酸化炭素回収方法に係る発明は、二酸化炭素を選択的に透過させる二酸化炭素選択透過膜を利用した二酸化炭素回収方法であって、二酸化炭素を含む処理対象ガスを密閉容器内のガス供給空間を経由して、前記二酸化炭素選択透過膜に圧送する第1圧送ステップと、前記処理対象ガスが供給された前記ガス供給空間を圧縮して、前記ガス供給空間内の処理対象ガスを前記二酸化炭素選択透過膜に圧送する第2圧送ステップと、を含むことを特徴とするものである。
請求項7の発明では、第1圧送ステップとして、処理対象ガスをガス供給空間に大気圧より高圧(例えば2気圧)にて圧送すると、ガス供給空間の処理対象ガスは2気圧であり、二酸化炭素選択透過膜から下流側に位置する二酸化炭素流入空間が1気圧であれば、その圧力差で処理対象ガスが二酸化炭素選択透過膜に容易に圧送される。次に、第2圧送ステップとして、ガス供給空間を圧縮してガス供給空間内の圧力を上昇させることで、ガス供給空間の処理対象ガスを二酸化炭素選択透過膜に速やかに圧送することができる。この2段階の第1及び第2圧送ステップにより、効率よく処理対象ガスを二酸化炭素選択透過膜に圧送することができ、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素の回収効率を確保したうえで、装置全体をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の概略斜視図である。
図2図2(a)は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置に採用した密閉容器の初期状態を示す正面図であり、(b)は、(a)の状態から密閉容器に圧縮荷重が付与された状態を示す正面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の作用を段階的に示した概略斜視図である。
図4図4は、図3から続く本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の作用を段階的に示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図1図4に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、CDM工法に使用されるCDM船(図示略)上に搭載される。CDM船上には、概ね、約10m(縦方向)×約10m(幅方向)の設置面積があり、この設置面積内に本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1を設置することができる。言い換えれば、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、例えば、その装置全体の設置面積(平面上の大きさ)が約10m(縦方向)×約10m(幅方向)よりも小さく、好ましくは、約8m(縦方向)×約4m(幅方向)程度まで小さくコンパクトに構成される。本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、CDM工法に使用されるCDM船から排出される排気ガス中の二酸化炭素を回収するためのものである。
【0019】
そして、図1及び図2に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、二酸化炭素を含む処理対象ガスが供給され、圧縮可能な各ガス供給空間11、11を有する密閉容器3と、該密閉容器3内に配置され、処理対象ガスから二酸化炭素を選択的に透過させる二酸化炭素選択透過膜4、4と、密閉容器3のガス供給空間11、11を圧縮して、ガス供給空間11、11に供給された処理対象ガスを二酸化炭素選択透過膜4、4に圧送する圧縮手段5と、二酸化炭素選択透過膜4よりも、処理対象ガスの流動方向下流側に位置する二酸化炭素流入空間10に配置される二酸化炭素濃度計6と、を備えている。
【0020】
密閉容器3は、内部に空間を有する直方体状に構成される。密閉容器3は、圧縮手段5による一方向からの圧縮荷重により、内部の容積が縮小すべく構成されている。密閉容器3内には、圧縮方向(幅方向)略中央に配置され、対向する一対の二酸化炭素選択透過膜4、4間に設けられる二酸化炭素流入空間10と、圧縮方向において、二酸化炭素流入空間10を挟むようにそれぞれ配置され、処理対象ガスが供給されるガス供給空間11、11と、が備えられている。
【0021】
密閉容器3は、圧縮手段5による圧縮荷重により、各ガス供給空間11、11がそれぞれ圧縮されてその容積を縮小でき、一方、二酸化炭素流入空間10は圧縮されずその容積が縮小不可に構成される。言い換えれば、密閉容器3は、圧縮手段5による圧縮荷重により、各ガス供給空間11、11と二酸化炭素流入空間10との間で圧力差が現出されるように構成される。なお、密閉容器3の各ガス供給空間11、11は、後述する残留ガス排出管16から残留ガスが排出され、圧縮手段5による圧縮荷重が解除されると、次のバッチとして、後述するガス供給管14、14からの処理対象ガスの流入により初期形状に復元する。
【0022】
密閉容器3内には、上述したように、圧縮方向(幅方向)略中央に、互いに対向する一対の二酸化炭素選択透過膜4、4が配置される。一対の二酸化炭素選択透過膜4、4間に二酸化炭素流入空間10が配置される。二酸化炭素流入空間10に、二酸化炭素濃度計6が配置される。当該二酸化炭素濃度計6により、二酸化炭素流入空間10の二酸化炭素の濃度を正確に計測することができる。二酸化炭素選択透過膜4は、圧送された(導かれた)処理対象ガスから二酸化炭素を選択的に透過させるものである。具体的に、二酸化炭素選択透過膜4は、アミノ基を有する高分子化合物のゲル粒子膜(アミン含有ゲル粒子膜)と、当該ゲル粒子膜を担持する担体とから構成される。担体には、例えば、多孔質フィルムが採用される。
【0023】
そして、例えば、二酸化炭素選択透過膜4は、予め、ゲル粒子を満たした水槽に多孔質フィルムを浸すことで、所定厚さのアミン含有ゲル粒子膜を形成して構成される。なお、ゲル粒子に浸して取り出したものを振動させることで、多孔質フィルムに担持されるゲル粒子量を均一にしている。二酸化炭素選択透過膜4の担体は、密閉容器3内を二酸化炭素流入空間10とガス供給空間11、11とに区画すべく密閉容器3の内壁面に沿って気密的に接続される。密閉容器3の上端面には、二酸化炭素流入空間10と連通する二酸化炭素排出管18が設けられる。この二酸化炭素排出管18は、二酸化炭素を気体のまま、または液化して貯溜するボンベ20等に接続される。二酸化炭素排出管18は、複数本備えても良いし、1本備えてもよい。本実施形態では、二酸化炭素排出管18は1本備えられる。
【0024】
図1及び図2に示すように、密閉容器3の正面(圧縮手段5側の外壁面)には、密閉容器3に向かって進退自在に構成される押圧プレート24が当接するように接続される。押圧プレート24は、密閉容器3の正面全域を覆うように形成される。押圧プレート24には、一方のガス供給空間11と連通するガス供給管14が設けられる。このガス供給管14は、圧縮手段5側に突出している。また、押圧プレート24には、一方のガス供給空間11と連通する残留ガス排出管16が設けられる。この残留ガス排出管16も、圧縮手段5側に突出している。これらガス供給管14及び残留ガス排出管16は、押圧プレート24の長手方向略中央に配置される。押圧プレート24において、ガス供給管14が上側で、残留ガス排出管16が下側に配置される。
【0025】
図2に示すように、一方、密閉容器3の背面(圧縮手段5側とは反対側の外壁面)には、圧縮手段5の押圧シャフト25(押圧プレート24)から密閉容器3への押圧力が、確実に密閉容器3に伝達されるための押圧抵抗プレート27が配置される。押圧抵抗プレート27は、その位置が変位することはない。押圧抵抗プレート27は、密閉容器3の背面全域を覆うように形成される。押圧抵抗プレート27には、他方のガス供給空間11と連通するガス供給管14が設けられる。このガス供給管14は、圧縮手段5側とは反対方向に突出している。また、押圧抵抗プレート27には、他方のガス供給空間11と連通する残留ガス排出管16が設けられる。この残留ガス排出管16も、圧縮手段5側とは反対方向に突出している。これらガス供給管14及び残留ガス排出管16は、押圧抵抗プレート27の長手方向略中央に配置される。押圧抵抗プレート27において、ガス供給管14が上側で、残留ガス排出管16が下側に配置される。
【0026】
そして、処理対象ガスは、これらガス供給管14、14から各ガス供給空間11、11にそれぞれ圧送、供給される。一方、これらガス供給空間11、11内の、処理対象ガスから二酸化炭素を分離させた後の残留ガスが各残留ガス排出管16、16からそれぞれ外部に排出される。なお、押圧プレート24の厚みと、押圧抵抗プレート27の厚みとは略同じである。一方、押圧抵抗プレート27の面積が、押圧プレート24の面積よりも若干大きい。
【0027】
圧縮手段5は、一般的なプレス機で構成される。圧縮手段5は、伸縮自在の押圧シャフト25を有するプレス機で構成される。圧縮手段5は複数台備えられても良いし、1台備えてもよい。本実施形態では、圧縮手段5は2台備えられる。各圧縮手段5の伸縮自在の押圧シャフト25が押圧プレート24を押圧して移動させることで、密閉容器3の各ガス供給空間11、11が圧縮されて、その容積がそれぞれ縮小される。なお、本実施形態では、押圧抵抗プレート27を配置し、各圧縮手段5、5により押圧プレート24を押圧、移動させることで、密閉容器3の各ガス供給空間11、11を圧縮しているが、密閉容器3の背面に押圧抵抗プレート27を配置せずに、該背面に密閉容器3に向かって進退自在に押圧プレート24を接続して、各圧縮手段5、5により密閉容器3の正面及び背面を各押圧プレート24、24を介して押圧することで、密閉容器3の各ガス供給空間11、11をそれぞれ圧縮しても良い。
【0028】
次に、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1の作用を図3及び図4に基づいて、適宜図2も参照して説明する。
まず、図3(a)を参照して、二酸化炭素を含む処理対象ガスを、ガス供給管14、14を介して密閉容器3の各ガス供給空間11、11にそれぞれ圧送することで、処理対象ガスを、各ガス供給空間11、11を経由して一対の二酸化炭素選択透過膜4、4に圧送する(第1圧送ステップ)。そして、処理対象ガス中の二酸化炭素が各二酸化炭素選択透過膜4、4を透過して、一対の二酸化炭素選択透過膜4、4間の二酸化炭素流入空間10に流入、充填される。このとき、各残留ガス排出管16、16は閉じた状態とし、その際二酸化炭素排出管18については、二酸化炭素流入空間10の内圧等に鑑み必要に応じて開閉状態とする。なお、二酸化炭素流入空間10の内圧を低く維持することが重要となる。続いて、処理対象ガスが密閉容器3の各ガス供給空間11、11に所定量圧送された後、各ガス供給管14、14を閉じる。
【0029】
次に、図2(b)及び図3(b)を参照して、各圧縮手段5を駆動させて、各圧縮手段5の押圧シャフト25を必要量伸ばし、押圧プレート24を前進させて、密閉容器3の正面を押圧する。すると、密閉容器3において、各ガス供給空間11、11がそれぞれ圧縮されて、その容積が縮小され、結果として、各ガス供給空間11、11内だけが高圧になる。言い換えれば、各圧縮手段5により密閉容器3の正面を押圧プレート24を介して押圧することで、各ガス供給空間11、11と、二酸化炭素流入空間10との間の圧力差が大きくなる。そして、各ガス供給空間11、11と二酸化炭素流入空間10との圧力差により、各ガス供給空間11、11の処理対象ガスが一対の二酸化炭素選択透過膜4、4に圧送される(第2圧送ステップ)。すると、各ガス供給空間11、11の処理対象ガス中の二酸化炭素が各二酸化炭素選択透過膜4、4を透過して、一対の二酸化炭素選択透過膜4、4間の二酸化炭素流入空間10に流入、充填される。
【0030】
次に、図3(c)を参照して、密閉容器3の二酸化炭素流入空間10から二酸化炭素排出管18を経由して排出(また吸引)された二酸化炭素はボンベ20に貯溜される。続いて、各圧縮手段5、5の押圧シャフト25、25を伸ばし、密閉容器3の正面を押圧プレート24を介して必要量押し終えると、二酸化炭素排出管18を閉めて、各残留ガス排出管16、16を開く。続いて、図4(d)を参照して、各圧縮手段5、5の押圧シャフト25、25をさらに伸ばし、密閉容器3の正面を押圧プレート24を介して最後まで押し終えることで、密閉容器3の各ガス供給空間11、11に残留した残留ガスが、各残留ガス排出管16、16から外部に排出される。
【0031】
次に、図4(e)を参照して、各残留ガス排出管16、16を閉める。続いて、各圧縮手段5、5の押圧シャフト25、25を初期位置に戻しつつ、各圧縮手段5、5による密閉容器3への圧縮荷重を解除する。同時に、各ガス供給管14、14を開き、次の処理対象ガスが各ガス供給管14、14を経由して密閉容器3の各ガス供給空間11、11に圧送されると、各ガス供給空間11、11が膨張して初期形状に戻ると共に押圧プレート24の初期位置への後退が完了する。引き続き、上述したような二酸化炭素の回収工程が繰り返される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、二酸化炭素を含む処理対象ガスが供給され、圧縮可能なガス供給空間11、11を有する密閉容器3と、該密閉容器3内に配置され、ガス供給空間11、11に供給された処理対象ガスから二酸化炭素を選択的に透過させる二酸化炭素選択透過膜4、4と、密閉容器3のガス供給空間11、11を圧縮して、ガス供給空間11、11に供給された処理対象ガスを二酸化炭素選択透過膜4、4に圧送する圧縮手段5と、を備えている。これにより、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、二酸化炭素の回収効率を確保したうえ、装置全体をコンパクトに構成することができる。その結果、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1を、CDM工法に用いるCDM船上に設置することができる。なお、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、上述しているように、例えば、その装置全体の設置面積(平面上の大きさ)が約10m(縦方向)×約10m(幅方向)よりも小さく、好ましくは、約8m(縦方向)×約4m(幅方向)程度まで小さくコンパクトに構成される。
【0033】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、装置全体がコンパクトに構成され、CDM工法に用いるCDM船上に搭載することができるので、当該CDM船から排出される排気ガス中の二酸化炭素を回収するのに、特に有効となる。このように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1を、CDM船の排気ガス中から二酸化炭素を回収する際に使用すれば、CDM船上にて回収された二酸化炭素をセメント及び水を攪拌してなるセメントミルク中に溶解させることで、二酸化炭素をセメントミルクと反応させて炭酸カルシウムを含むセメント改良杭として地盤中に固定化することができる。このように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1によりCDM船上に回収した二酸化炭素を運搬することなく、速やかにその場で地盤中に固定化することができ、特に有効である。
【0034】
さらに、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、密閉容器3内には、圧縮方向略中央に配置され、対向する一対の二酸化炭素選択透過膜4、4間に設けられる二酸化炭素流入空間10と、圧縮方向において、二酸化炭素流入空間10を挟むようにそれぞれ配置されるガス供給空間11、11と、を備えている。そして、各ガス供給空間11、11が圧縮されることで、各ガス供給空間11、11の処理対象ガスが一対の二酸化炭素選択透過膜4、4に圧送され、処理対象ガス中の二酸化炭素が二酸化炭素流入空間10に流入、充填されるので、単位時間当たりの回収量を増加させることができ、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0035】
さらにまた、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、密閉容器3の二酸化炭素流入空間10に二酸化炭素濃度計6が配置されるので、二酸化炭素濃度計6による検出結果を経時的に管理することで、二酸化炭素選択透過膜4の損傷や目詰まりなどの不具合を把握することができ、メンテナンス時期等を把握することができる。また、二酸化炭素濃度計6による検出結果に基づいて、二酸化炭素流入空間10から外部へ排出され、二酸化炭素流入空間10内もしくは直接利用される二酸化炭素の濃度を把握することができる。
【0036】
さらにまた、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1に採用した圧縮手段5は、伸縮自在の押圧シャフト25を有するプレス機にて構成され、その構成を簡易化しているので、装置全体をコンパクトにすることができる。また、本実施形態では、圧縮手段5としてのプレス機の押圧シャフト25により、押圧プレート24を介して密閉容器3の各ガス供給空間11、11を圧縮するので、各ガス供給空間11、11を局所的でなく平面的に略均一に圧縮することができ、各ガス供給空間11、11内の圧力を偏ることなくその全域に亘って略均一に高くすることができる。
【0037】
さらにまた、本実施形態では、処理対象ガスを密閉容器3内の各ガス供給空間11、11を経由して、一対の二酸化炭素選択透過膜4、4に圧送する第1圧送ステップと、処理対象ガスが供給された各ガス供給空間11、11を各圧縮手段5、5によりそれぞれ圧縮して、各ガス供給空間11、11内の処理対象ガスを一対の二酸化炭素選択透過膜4、4に圧送する第2圧送ステップと、を含む。この2段階の第1及び第2圧送ステップにより、効率よく処理対象ガスを二酸化炭素選択透過膜4、4に圧送することができ、二酸化炭素の回収効率をさらに向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、CDM工法に使用されるCDM船から排出される排気ガス中の二酸化炭素を回収するためのものであるが、当然ながら、他の海洋施工に用いる作業船上、特に、配置スペースが限られ、比較的大型の作業船、例えば浚渫船や起重機船、SCP船上等に、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1を搭載して、これらの作業船の排気ガスから二酸化炭素を回収することができる。また、本実施形態では、二酸化炭素回収装置1を1台備えているが、配置スペースに余裕があれば、当然ながら複数台備えてもよい。さらに、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1を設置することができれば、陸上施工において使用される設備等からの排気ガスの二酸化炭素を回収する際に採用してもよく、使用場所や使用環境等が限定されることはない。
【符号の説明】
【0039】
1 二酸化炭素回収装置,3 密閉容器,4二酸化炭素選択透過膜,5 圧縮手段,6 二酸化炭素濃度計,10 二酸化炭素流入空間,11 ガス供給空間,25 押圧シャフト
図1
図2
図3
図4