(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029997
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】射出成形機の材料受入機構とこれを備えた射出成形機、及び射出成形機の冷却方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/72 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B29C45/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132512
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】河口 倫範
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AJ02
4F206AJ12
4F206AK02
4F206AK13
4F206AL20
4F206JA07
4F206JE09
4F206JF01
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN03
4F206JN43
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】射出成形機の材料受入部の材料受入機構のメンテナンス性を改善する。
【解決手段】射出成形機の材料受入機構7は、射出成形機に供給される材料を受け入れる材料受入部42と、材料受入部42に熱的に接続された少なくとも一つのヒートパイプ71と、少なくとも一つのヒートパイプ71に熱的に接続された少なくとも一つのヒートシンク72と、を有する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機に供給される材料を受け入れる材料受入部と、
前記材料受入部に熱的に接続された少なくとも一つのヒートパイプと、
前記少なくとも一つのヒートパイプに熱的に接続された少なくとも一つのヒートシンクと、
を有する、射出成形機の材料受入機構。
【請求項2】
前記少なくとも一つのヒートパイプは、前記材料受入部の内部にある内部部分と、前記材料受入部の外部にある外部部分と、を有し、
前記少なくとも一つのヒートシンクは前記少なくとも一つのヒートパイプの前記外部部分に接続されている、請求項1に記載の材料受入機構。
【請求項3】
前記内部部分は前記材料受入部の貫通孔の内部を延び、
前記材料受入部の前記貫通孔と前記内部部分との間に介在し、前記材料受入部と前記内部部分とに接し、前記材料受入部と前記内部部分とを熱的に接続する熱伝導性膜を有する、請求項2に記載の材料受入機構。
【請求項4】
前記少なくとも一つのヒートパイプの前記内部部分は、前記材料受入部の内部を直線状に延びている、請求項2に記載の材料受入機構。
【請求項5】
前記少なくとも一つのヒートパイプは複数のヒートパイプを含む、請求項1に記載の材料受入機構。
【請求項6】
金型を型締めする型締装置と、材料を溶融して射出する射出装置と、を有し、
前記射出装置は請求項1から5のいずれか1項に記載の材料受入機構を有する、射出成形機。
【請求項7】
前記射出装置はスクリュとシリンダとを有し、前記シリンダは、シリンダ本体と前記材料受入部とを有し、前記シリンダ本体と前記材料受入部は前記スクリュを収容し、前記シリンダ本体はヒータを備え、前記材料受入部は前記シリンダ本体から独立した部材である、請求項6に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記射出装置は、発熱部と、前記発熱部を冷却する送風装置と、前記発熱部及び前記送風装置を収容するカバーと、を有し、
前記ヒートシンクは前記カバーに収容され、前記送風装置は前記ヒートシンクを冷却する、請求項6に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記少なくとも一つのヒートパイプの、前記材料受入部の外部にある外部部分は、前記材料受入部の内部にある内部部分に接続された接続部分と、前記接続部分に接続され、前記ヒートシンクを支持するヒートシンク支持部と、を有し、前記ヒートシンク支持部は前記接続部分と異なる方向に延び、前記カバーに収容されている、請求項8に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記発熱部は、前記射出装置を駆動するためのモータとボールねじとを含む、請求項8に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記少なくとも一つのヒートパイプは、全長に渡り直線状に延びている、請求項6に記載の射出成形機。
【請求項12】
以下の工程を有する、射出成形機の冷却方法:
(a)射出成形機に供給される材料を材料受入部で受け入れる工程:
(b)前記材料受入部で受け入れた前記材料を前記射出成形機の内部で加熱溶融させる工程:及び
(c)前記材料受入部に熱的に接続された少なくとも一つのヒートパイプと、前記少なくとも一つのヒートパイプに熱的に接続された少なくとも一つのヒートシンクと、によって前記材料受入部を冷却する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の材料受入機構とこれを備えた射出成形機、及び射出成形機の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、ホッパから供給される材料を受け入れる材料受入部を有している。材料受入部は、通常、スクリュを収容するシリンダの端部の近傍に設けられる。特許文献1には材料受入部の下側部分に冷却水を循環させて、材料受入部の下側部分の温度を下げることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、射出成形機の材料受入部は、材料の逆流を生じにくくさせるために、冷却水で冷却される。冷却水を長時間流通させると、冷却水の流路にカルキ(次亜塩素酸カルシウム)の堆積や電蝕が生じることがある。このため、流路の清掃が必要となり、メンテナンス性が低下する。本開示はメンテナンス性の改善された射出成形機の材料受入機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様による射出成形機の材料受入機構は、射出成形機に供給される材料を受け入れる材料受入部と、少なくとも一つのヒートパイプと、少なくとも一つのヒートパイプに接続されたヒートシンクと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、メンテナンス性の改善された射出成形機の材料受入機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る射出成形機の概略正面図である。
【
図2A】
図1に示す射出成形機の射出装置の正面図である。
【
図2B】
図1に示す射出成形機の射出装置の上面図である。
【
図3A】
図1に示す射出成形機の材料受入機構の斜視図である。
【
図3B】
図1に示す射出成形機の材料受入機構の正面図である。
【
図3C】
図1に示す射出成形機の材料受入機構の側面図である。
【
図6】第2の実施形態に係る射出成形機の射出装置とシリンダの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下の説明で、スクリュ33の回転軸に沿った方向、あるいはスクリュ33の移動方向を軸方向Xといい、軸方向Xに関し射出装置3から型締装置2に向かう方向を前方、型締装置2から射出装置3に向かう方向を後方という。軸方向Xは水平方向と平行である。軸方向Xと垂直で水平方向と平行な方向を奥行き方向Y、軸方向X及び奥行き方向Yと垂直で、鉛直方向と平行な方向を鉛直方向Zという。
【0009】
(第1の実施形態)
<全体構成>
図1は第1の実施形態に係る射出成形機1の概略正面図を示している。
図2Aは射出装置3の正面図、
図2Bは射出装置3の上面図を示している。
図1を参照すると、射出成形機1は、金型Mを型締めする型締装置2と、射出される材料を加熱溶融して射出する射出装置3と、から概略構成されている。
【0010】
<型締装置2>
型締装置2は、ベッド21上に固定され固定金型M1が取り付けられる固定盤22と、ベッド21上をスライド可能な型締ハウジング23と、ベッド21上をスライド可能で可動金型M2が取り付けられる可動盤24と、を備えている。固定盤22と型締ハウジング23は複数本のタイバー25によって連結されている。可動盤24と型締ハウジング23の間には、金型Mを開閉するための型締機構26が設けられている。型締機構26はトグル機構から構成されている。図示は省略するが、型締機構26は直圧式の型締機構、つまり油圧式の型締シリンダから構成してもよい。
【0011】
<射出装置3>
射出装置3は基台31上に設けられている。射出装置3は、シリンダ32と、シリンダ32に収容されたスクリュ33と、スクリュ33を駆動する駆動機構34と、を備えている。スクリュ33は駆動機構34によって回転駆動されるとともに軸方向Xに駆動される。駆動機構34はカバー35で覆われている。シリンダ32の後端部近傍に、射出される材料を供給するホッパ36が設けられている。ホッパ36は射出される材料が供給される材料供給開口36Aを備えている。シリンダ32の先端には材料を射出する射出ノズル37が設けられている。
【0012】
射出装置3はノズルタッチ装置38を備えている。ノズルタッチ装置38は射出装置3を前進させ、それによって射出ノズル37が金型MのスプルーブッシュM3にタッチする。ノズルタッチ装置38は駆動機構34と固定盤22とを連結している。ノズルタッチ装置38は、たとえば油圧シリンダを用いた機構、あるいは、ボールねじを用いた機構によって構成される。
【0013】
図2Aを参照すると、シリンダ32は、シリンダ本体41と材料受入部42とを有している。材料受入部42は射出成形機1のホッパ36を支持し、またはホッパ36と接続されている。シリンダ本体41と材料受入部42は軸方向Xに連結されて一体のシリンダ32を構成する。シリンダ本体41と材料受入部42はそれぞれ円筒状の空洞部41A,42Aを有し、シリンダ本体41の空洞部41Aと材料受入部42の空洞部42Aは、スクリュ33を収容する内部空間を構成する。材料受入部42は、スクリュ33の軸方向Xに関し型締装置2の反対側の位置でシリンダ本体41に接続されている。材料受入部42はシリンダ本体41から独立した部材であり、ボルト(図示せず)によって、シリンダ本体41に固定されている。
【0014】
図2Bを参照すると、シリンダ本体41はヒータ43を備えている。ヒータ43は射出成形機1の外部に設けられた電源盤44からケーブル45を介して給電される。ヒータ43は軸方向Xに複数の部分に分割されている。ヒータ43はシリンダ本体41を加熱し、それによってシリンダ本体41の内部にある材料を加熱溶融する。
<射出装置3の駆動機構34>
【0015】
図2Aを参照して、駆動機構34の構成について説明する。駆動機構34は、シリンダ32の後方に位置する前方支持台51と、前方支持台51の後方に位置する後方支持台52と、前方支持台51と後方支持台52とを連結するガイドバー53と、を備えている。ガイドバー53にスライド盤54が連結され、スライド盤54は複数本のガイドバー53にガイドされて軸方向Xに移動することができる。
【0016】
スクリュ33は、スクリュ33の後端部がスライド盤54によって回転可能に支持されている。シリンダ32の材料受入部42は固定部材55を介して前方支持台51に固定されている。スライド盤54には可塑化モータ56が設けられている。可塑化モータ56はプーリ、タイミングベルト等からなる回転伝達機構57を介して、スクリュ33を回転駆動する。
【0017】
駆動機構34は、後方支持台52とスライド盤54の間に位置するボールねじ58を有している。ボールねじ58は後方支持台52に回転可能に支持されている。ボールねじ58と噛み合うボールナット59が、接続部材60を介してスライド盤54に固定されている。後方支持台52には射出モータ61が設けられている。射出モータ61はプーリ、タイミングベルト等からなる回転伝達機構62によってボールねじ58を回転駆動する。ボールねじ58は接続部材60を介してスライド盤54を軸方向Xに駆動し、これによってスクリュ33が軸方向Xに駆動される。
【0018】
射出装置3を駆動するためのモータ、すなわち可塑化モータ56と射出モータ61は、発熱による誤動作や作動停止の可能性を低減するため、冷却される。ボールねじ58も、ボールナット59との噛合いによって発熱するため、冷却される。従って、可塑化モータ56と射出モータ61とボールねじ58はカバー35に収容された発熱部である。
【0019】
射出装置3は、これらの発熱部を冷却する送風装置63を有する。送風装置63はカバー35に収容されたファンである。
図2Aでは送風装置63はカバー35の上部に設けられているが、設置位置は特に限定されず、各発熱部に送風による気流が適切に当たるように設定されればよい。カバー35は通風口39を備えており、カバー35内の空気は通風口39を通してカバー35外の空気と置換される。
【0020】
<射出装置3の材料受入機構7>
図3A~3Cはそれぞれ材料受入機構7の斜視図、正面図、側面図である。
図2A,3A~3Cを参照すると、射出成形機1は、射出成形機1のホッパ36と接続された材料受入機構7を有する。材料受入機構7は、上述の材料受入部42と、材料受入部42に熱的に接続された少なくとも一つのヒートパイプ71と、少なくとも一つのヒートパイプ71に熱的に接続された少なくとも一つのヒートシンク72と、を有している。
【0021】
材料受入部42は、軸方向Zに延びてスクリュ33が貫通する円筒状の空洞部42Aと、材料受入部42の上面に開口する円筒状の材料供給孔42Bと、を有している。ホッパ36は材料供給孔42Bの開口部に取り付けられる。材料供給孔42Bは鉛直方向Zに延びて、材料受入部42の内部で空洞部42Aに接続している。材料受入部42は鋳物である。材料受入部42の奥行き方向Yの両側には、取付用のボルト穴42Dが複数個設けられている。
【0022】
材料受入部42はホッパ36の取り付け部としての機能だけでなく、シリンダ32の一部としての機能も有している。シリンダ本体41の空洞部41Aと材料受入部42の空洞部42Aは連通しているため、シリンダ本体41のヒータ43で加熱溶融した材料が、材料受入部42を通ってホッパ36に逆流する可能性がある。材料受入部42を冷却することで、材料の逆流の可能性を低減することができ、材料受入部42やホッパ36の耐久性も高められる。ヒートパイプ71とヒートシンク72は材料受入部42の冷却手段を構成する。
【0023】
図3A,3Cに示すように、材料受入機構7は、材料受入部42の奥行き方向Y両側にそれぞれ4本、計8本設けられたヒートパイプ71と、8本のヒートパイプ71に接続された一つのヒートシンク72と、を有している。ヒートパイプ71とヒートシンク72の数は限定されず、それぞれ少なくとも一つあればよい。複数のヒートパイプ71を設けることで、材料受入部42を均等に冷却することができる。また、奥行き方向Yにおける一方の側のヒートパイプ群71A(
図3A参照)と他方の側のヒートパイプ群71B(
図3A参照)は、スクリュ33の中心線Cを含むX-Z面に関し鏡対称で設けることが好ましい。なお、本実施形態ではすべてのヒートパイプ71は同一の構成、形状、寸法を有しているが、一つのヒートパイプ71と他のヒートパイプ71で構成、形状、寸法の少なくともいずれかが異なっていてもよい。
【0024】
<ヒートパイプ71の構成>
図3B,3Cに示すように、各ヒートパイプ71は、材料受入部42の内部にある内部部分71Cと、材料受入部42の外部にある外部部分71Dと、を有している。ヒートシンク72は少なくとも一つの(ここでは全ての)ヒートパイプ71の外部部分71Dに接続されている。各ヒートパイプ71は、全長に渡り直線状に延びている。従って、各ヒートパイプ71の内部部分71Cも、材料受入部42の内部を直線状に延びている。ヒートパイプ71は直線状であるので余分な加工費が不要である。
【0025】
図4Aはヒートパイプ71の縦断面図、
図4Bはヒートパイプ71の横断面図を示す。ヒートパイプ71の内部部分71Cは、材料受入部42と熱的に接続されている。ヒートパイプ71は銅等の熱伝導性の高い金属から形成されたパイプ73と、パイプ73の内壁面に設けられたウィック74と、を有している。ウィック74の内側は内部空洞77とされ、内部空洞77には、揮発性液体(作動液)75が気密的に封入されている。ウィック74は内壁面に形成された複数の細かい溝から構成してもよいし、繊維のメッシュから構成してもよく、毛細管現象により作動液75がパイプ73内をパイプ73の軸方向(鉛直方向Z)に輸送されるようになっていればよい。
【0026】
作動液75はヒートパイプ71の内部部分71C(高音部)で熱を吸収して蒸発する。蒸発した作動液75はヒートパイプ71の内部空洞77を通って外部部分71Dに移動し、ヒートシンク72との接続部(低温部)で冷却される。低温部で冷却された作動液75は凝集して液体に戻り、ウィック74に吸収され、ウィック74を伝わって高温部に戻る。
【0027】
材料受入部42にはヒートパイプ71を設けるための円筒状の貫通孔42Cが形成されている。ヒートパイプ71の内部部分71Cは貫通孔42Cの内部を延びている。貫通孔42Cは円形の内面を有し、ヒートパイプ71は円形の外面を有し、貫通孔42Cの内径はヒートパイプ71の外形より若干大きい。ヒートパイプ71は貫通孔42Cとほぼ同心となるように貫通孔42C内に設置される。貫通孔42Cと内部部分71Cとの間には熱伝導性膜76が介在している。熱伝導性膜76は例えば、熱伝導性を有するグリースからなり、材料受入部42とヒートパイプ71の内部部分71Cの両者に接し、内部部分71Cと材料受入部42とを熱的に接続する。
【0028】
ヒートパイプ71は材料受入部42に適宜の方法で固定される。詳細な説明は省略するが、例えば、ヒートパイプ71にねじを設け、ナットで締結することができる。
【0029】
<ヒートシンク72の構成>
図3A~3Cに示すように、ヒートシンク72は複数枚のフィン78を備えている。複数枚のフィン78はヒートパイプ71の軸方向(鉛直方向Z)に沿って相互に間隔をあけて積層されている。フィン78は、熱伝導性の高い金属、例えばアルミニウム合金から形成されている。フィン78はヒートパイプ71に溶着等によって固定されている。
【0030】
<比較例>
図5は比較例の材料受入部142の斜視図である。比較例の材料受入部142は本実施形態の材料受入部42と同じ外形を有し、空洞部142A、材料供給孔142B、ボルト穴142Dも、本実施形態の空洞部42A、材料供給孔42B、ボルト穴42Dと同様に構成されている。また、材料受入部142は冷却手段を備えており、機能的には本実施形態の材料受入部42と同様である。
【0031】
冷却手段として、材料受入部142の内部に冷却水が流通する内部流路201が形成されている。内部流路201は冷却水の外部流路202と接続されている。外部流路202にはポンプ203と熱交換器204が設けられている。材料受入部142を冷却して昇温した冷却水は、チラー205から供給される冷水によって熱交換器204で冷却される。材料受入部142はシリンダ32とともに軸方向Xに移動可能であるので、外部流路202はゴムホースなどの変形容易な材料で形成される。
【0032】
内部流路201は3次元状に構成されている。これによって、材料受入部142を均等に冷却することができる。また、冷却水の入口206と出口207をそれぞれ一つにすることができ、外部流路202の取り回しが複雑化することが防止される。
【0033】
しかし、比較例の材料受入部142には以下の課題がある。まず、冷却水に含まれる硬度成分によって、冷却水の流路(内部流路201及び外部流路202)にカルキ(次亜塩素酸カルシウム)の堆積が生じることがある。また、冷却水の流路に電蝕が生じることもある。このため、流路の定期的な清掃が必要となるが、特に内部流路201は3次元形状であり、清掃は容易ではない。清掃のためには材料受入部142をシリンダ32から取り外す必要もある。
【0034】
<本実施形態の効果>
これに対し、本実施形態では冷却水を用いていない。ヒートパイプ71の内部は密閉構造であるため、異物が進入する可能性が低く、清掃が基本的に不要である。従って、本実施形態の材料受入機構7はほぼメンテナンスフリーに近い。
【0035】
次に、比較例の材料受入部142は3次元流路を形成するため、複雑な機械加工が必要である。材料受入部142は鋳物であるが、鋳物の製作時に複雑な流路を形成することは困難である。このため、流路のない鋳物に機械加工を施して3次元流路を形成する必要がある。しかし、3次元流路を形成するためには複数の直線部を組み合わせる必要があり、複数回の機械加工が必要となる。さらに鋳物の外面に開口のない直線部では、鋳物の外面から穿孔し、その後外面をプラグ(例えば、プラグ208)で塞ぐ工程が必要となる。これに対し、本実施形態では貫通孔42Cが直線状であるため、機械加工が容易である。
【0036】
さらに、本実施形態では、冷却のために冷却水を用いる必要がないため、外部流路202、ポンプ203、熱交換器204、チラー205なども不要となる。従って、本実施形態ではこれらの設備のメンテナンスも不要である。
【0037】
また、比較例のような水冷方式の場合、材料受入部142の冷却性能は主に水の熱伝導率で決定されることになる。これに対して、ヒートパイプ71の熱伝導率は水の少なくとも数十倍高いため、冷却性能の点からも本実施形態は有利である。換言すれば、比較例の場合は、冷却性能を確保するために、材料受入部142の空洞部142Aを取り囲むように内部流路201を3次元的に配置する方式が望ましいといえる。これに対し、本実施形態では、単純な直線状のヒートパイプ71で十分である。
【0038】
この点について補足すると、材料受入部42,142はシリンダ本体41と隣接しているため、材料受入部42,142の過冷却はシリンダ本体41の冷却につながり、ひいてはヒータ43の使用電力の増加につながる可能性がある。従って、材料受入部42,142の冷却性能は、シリンダ本体41に及ぼす影響をできるだけ抑えるものであることが望ましく、過剰な冷却性能はむしろ好ましくない。この観点からも、比較例のようにヒートパイプ71を材料受入部142の空洞部141Aを取り囲むように3次元的に配置する必要はなく、単純な直線状のヒートパイプ71の方が好ましい。
【0039】
比較例は、冷却水の入口206と出口207をそれぞれ一つにするため、1本の3次元状流路としている。冷却水の流路に複雑な分岐構造を設けることは望ましくなく、流路選択の自由度はあまり高くない。
【0040】
これに対して、本実施形態ではヒートパイプ71の設置位置の自由度が高い。本実施形態では材料受入部42の下面から下方に延びるヒートパイプ71を設けているが、材料受入部42の上面から上方に延びるヒートパイプを設けてもよいし、材料受入部42の側面から側方(水平方向)延びるヒートパイプを設けてもよい。これは、シリンダ32が回転するため、冷却をしない場合の材料受入部42の温度分布がほぼ均一になるためである。換言すれば、材料受入部42の冷却箇所(ヒートパイプ71の設置位置)は、冷却性能の観点から大きな制約を受けない。
【0041】
ヒートパイプ71とヒートシンク72は汎用品を利用可能である。特に、ヒートパイプ71は様々な外径のものが市販されており、外径、設置位置、本数等を選択することで、冷却性能を容易に調整することができる、
【0042】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る射出成形機1の射出装置3の正面図を示す、
図2Aと同様の図である。ここでは第1の実施形態との相違点を中心に説明する。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。
【0043】
ヒートパイプ71の外部部分71Dは、内部部分71C(
図3B,3C参照)に接続された接続部分71Eと、接続部分71Eに接続され、ヒートシンク72を支持するヒートシンク支持部71Fと、を有している。ヒートシンク支持部71Fは接続部分71Eと異なる方向(本実施形態では軸方向X)に延びる。ヒートパイプ71はパイプ73が銅や銅合金で構成され曲げ加工が容易であるので、本実施形態のように途中で曲げることが容易である。ヒートシンク72はカバー35に収容され、送風装置63はヒートシンク72を冷却する。
【0044】
ヒートシンク72に気流を当てることで、ヒートシンク72の冷却効率をさらに高めることができる。元々設置されていた送風装置63を利用するので、新たに送風装置を設ける必要がない。また、ヒートシンク72がカバー35で覆われ、外部から見ることができないため、意匠上も好ましい。
【0045】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
射出成形機に供給される材料を受け入れる材料受入部と、
前記材料受入部に熱的に接続された少なくとも一つのヒートパイプと、
前記少なくとも一つのヒートパイプに熱的に接続された少なくとも一つのヒートシンクと、
を有する、射出成形機の材料受入機構。
[構成2]
前記少なくとも一つのヒートパイプは、前記材料受入部の内部にある内部部分と、前記材料受入部の外部にある外部部分と、を有し、
前記少なくとも一つのヒートシンクは前記少なくとも一つのヒートパイプの前記外部部分に接続されている、構成1に記載の材料受入機構。
[構成3]
前記内部部分は前記材料受入部の貫通孔の内部を延び、
前記材料受入部の前記貫通孔と前記内部部分との間に介在し、前記材料受入部と前記内部部分とに接し、前記材料受入部と前記内部部分とを熱的に接続する熱伝導性膜を有する、構成2に記載の材料受入機構。
[構成4]
前記少なくとも一つのヒートパイプの前記内部部分は、前記材料受入部の内部を直線状に延びている、構成2または3に記載の材料受入機構。
[構成5]
前記少なくとも一つのヒートパイプは複数のヒートパイプを含む、構成1から4のいずれか1項に記載の材料受入機構。
[構成6]
金型を型締めする型締装置と、材料を溶融して射出する射出装置と、を有し、
前記射出装置は構成1から5のいずれか1項に記載の材料受入機構を有する、射出成形機。
[構成7]
前記射出装置はスクリュとシリンダとを有し、前記シリンダは、シリンダ本体と前記材料受入部とを有し、前記シリンダ本体と前記材料受入部は前記スクリュを収容し、前記シリンダ本体はヒータを備え、前記材料受入部は前記シリンダ本体から独立した部材である、構成6に記載の射出成形機。
[構成8]
前記射出装置は、発熱部と、前記発熱部を冷却する送風装置と、前記発熱部及び前記送風装置を収容するカバーと、を有し、
前記ヒートシンクは前記カバーに収容され、前記送風装置は前記ヒートシンクを冷却する、構成6または7に記載の射出成形機。
[構成9]
前記少なくとも一つのヒートパイプの前記外部部分は、前記内部部分に接続された接続部分と、前記接続部分に接続され、前記ヒートシンクを支持するヒートシンク支持部と、を有し、前記ヒートシンク支持部は前記接続部分と異なる方向に延び、前記カバーに収容されている、構成8に記載の射出成形機。
[構成10]
前記発熱部は、前記射出装置を駆動するためのモータとボールねじとを含む、構成8または9に記載の射出成形機。
[構成11]
前記少なくとも一つのヒートパイプは、全長に渡り直線状に延びている、構成6または7に記載の射出成形機。
[方法1]
以下の工程を有する、射出成形機の冷却方法:
(a)射出成形機に供給される材料を材料受入部で受け入れる工程:
(b)前記材料受入部で受け入れた前記材料を前記射出成形機の内部で加熱溶融させる工程:及び
(c)前記材料受入部に熱的に接続された少なくとも一つのヒートパイプと、前記少なくとも一つのヒートパイプに熱的に接続された少なくとも一つのヒートシンクと、によって前記材料受入部を冷却する工程。
【符号の説明】
【0046】
1 射出成形機
2 型締装置
3 射出装置
7 材料受入機構
32 シリンダ
33 スクリュ
35 カバー
36 材料受入部
41 シリンダ本体
42 材料受入部
42B 貫通孔
43 ヒータ
56 可塑化モータ(発熱部)
58 ボールねじ(発熱部)
61 射出モータ(発熱部)
63 送風装置
71 ヒートパイプ
71C 内部部分
71D 外部部分
71E 接続部分
71F ヒートシンク支持部
72 ヒートシンク
76 熱伝導性膜