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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030001
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20240229BHJP
   E03C 1/02 20060101ALI20240229BHJP
   E03D 11/14 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/02
E03D11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132517
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 晶
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聖
(72)【発明者】
【氏名】高野 賢一
【テーマコード(参考)】
2D039
2D060
2D061
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039CA04
2D039CA05
2D039CB01
2D060AA01
2D060AB10
2D061AA03
2D061AB05
2D061AB07
2D061AC01
2D061DE01
(57)【要約】
【課題】漏水を抑制しつつ、施工性を向上させること。
【解決手段】実施形態に係るシール部材は、水洗便器の外部配管接続部と、外部配管とを接続する水洗便器用のシール部材である。シール部材は、周縁部と、第1壁部と、第2壁部とを備える。周縁部は、リング状に形成され、外部配管接続部の端面に当接する。第1壁部は、周縁部から周縁部の軸方向に沿って延び、外部配管接続部の内周壁に当接する。第2壁部は、周縁部から周縁部の軸方向に沿って延び、第1壁部よりも内側に設けられ、外部配管の外周壁に当接する。第1壁部は、外部配管接続部の内周壁に当接するリブ部を備える。第1壁部と第2壁部との間には、空洞部が形成される。空洞部は、リブ部よりも周縁部側まで形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器の外部配管接続部と、外部配管とを接続する水洗便器用のシール部材であって、
リング状に形成され、前記外部配管接続部の端面に当接する周縁部と、
前記周縁部から前記周縁部の軸方向に沿って延び、前記外部配管接続部の内周壁に当接する第1壁部と、
前記周縁部から前記周縁部の軸方向に沿って延び、前記第1壁部よりも内側に設けられ、前記外部配管の外周壁に当接する第2壁部と
を備え、
前記第1壁部は、前記外部配管接続部の内周壁に当接するリブ部を備え、
前記第1壁部と前記第2壁部との間には、空洞部が形成され、
前記空洞部は、前記リブ部よりも前記周縁部側まで形成される、シール部材。
【請求項2】
前記空洞部は、前記外部配管接続部に前記第1壁部が挿入され、かつ、前記第2壁部に前記外部配管が挿入された状態において、前記第1壁部と前記第2壁部とが当接しないように形成される、請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記第1壁部は、内側に突出する段部を有する前記外部配管接続部に挿入され、
前記周縁部の軸方向における前記第1壁部の長さは、前記周縁部の軸方向における前記端面から前記段部までの長さ以上である、請求項1に記載のシール部材。
【請求項4】
前記リブ部は、前記周縁部の軸方向に沿って複数設けられ、
複数の前記リブ部のうち、前記周縁部から最も遠いリブ部は、前記外部配管接続部の内周壁側に突出する先端部の角度が、他のリブ部の先端部の角度よりも大きい、請求項1に記載のシール部材。
【請求項5】
前記外部配管が挿入される挿入孔の前記周縁部側の端部には、面取り部が形成される、請求項1~4のいずれか1つに記載のシール部材。
【請求項6】
前記面取り部は、前記空洞部の前記周縁部側の端部よりも前記リブ部側まで形成される、請求項5に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の排水管と、排水トラップとをシール部材によって水密に接続する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-129660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記するシール部材では、排水トラップに当接する筒状の部材から排水管側に向けて突出する突出部が設けられ、突出部が排水管に当接することで、排水管と排水トラップとが水密に接続される。
【0005】
しかしながら、上記するシール部材は、筒所の部材が排水トラップ、および、排水管によって両側から挟まれる。そのため、シール部材と、排水トラップ、および、排水管との摩擦力が大きくなり、排水トラップと排水管との接続する際に大きな力で押し込まなければならず、施工性について改善の余地がある。
【0006】
実施形態の一態様は、漏水を抑制しつつ、施工性を向上させるシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係るシール部材は、水洗便器の外部配管接続部と、外部配管とを接続する水洗便器用のシール部材である。シール部材は、周縁部と、第1壁部と、第2壁部とを備える。周縁部は、リング状に形成され、外部配管接続部の端面に当接する。第1壁部は、周縁部から周縁部の軸方向に沿って延び、外部配管接続部の内周壁に当接する。第2壁部は、周縁部から周縁部の軸方向に沿って延び、第1壁部よりも内側に設けられ、外部配管の外周壁に当接する。第1壁部は、外部配管接続部の内周壁に当接するリブ部を備える。第1壁部と第2壁部との間には、空洞部が形成される。空洞部は、リブ部よりも周縁部側まで形成される。
【0008】
これにより、水洗便器の外部配管接続部にシール部材が挿入される場合に、シール部材は、空洞部を有することで、第1壁部を第2壁部側に変形させることができる。空洞部が、リブ部よりも周縁部側まで形成されることで、シール部材は、第1壁部を第2壁部側に容易に変形させることができる。そのため、シール部材が外部配管接続部に挿入される場合、外部配管接続部とシール部材との摩擦力が低減され、外部配管接続部へのシール部材の挿入が容易になる。従って、シール部材は、水洗便器の施工性を向上させることができる。また、洗浄水が供給された場合、シール部材は、空洞部に流入する洗浄水の水圧によって、第1壁部を外部配管接続部側に付勢することができ、第2壁部を外部配管側に向けて付勢することができる。そのため、シール部材は、シール性を向上させることができ、洗浄水の漏水を抑制することができる。
【0009】
また、空洞部は、外部配管接続部に第1壁部が挿入され、かつ、第2壁部に外部配管が挿入された状態において、第1壁部と第2壁部とが当接しないように形成される。
【0010】
これにより、シール部材は、空洞部に流入する洗浄水の水圧によって、第1壁部を全体的に外部配管接続部側に付勢することができる。また、シール部材は、空洞部に流入する洗浄水の水圧によって、第2壁部を全体的に外部配管側に付勢することができる。そのため、シール部材は、シール性を向上させることができ、洗浄水の漏水を抑制することができる。
【0011】
また、第1壁部は、内側に突出する段部を有する外部配管接続部に挿入される。周縁部の軸方向における第1壁部の長さは、周縁部の軸方向における外部配管接続部の端面から段部までの長さ以上である。
【0012】
これにより、シール部材は、第1壁部の先端を、外部配管接続部の段部に当接させることができる。そのため、シール部材は、第1壁部の先端において洗浄水をシールすることができ、第1壁部の先端側において、第1壁部よりも外側に洗浄水が流入することが抑制することができる。そのため、シール部材は、第1壁部の先端側において、第1壁部よりも内側の洗浄水の水圧と、第1壁部よりも外側の圧力との差を大きくすることができる。従って、シール部材は、第1壁部の先端側のリブ部を外部配管接続部側に押し付ける力を大きくすることができ、第1壁部の先端側のリブ部における水密性を高くすることができる。すなわち、シール部材は、シール性を向上させることができ、洗浄水の漏水を抑制することができる。また、たとえば、シール部材は、周縁部の軸方向の中央付近の第1壁部を第2壁部側に突出するように湾曲させることができる。そのため、シール部材は、第1壁部の先端側の第1リブ部にかかる応力を大きくすることができる。従って、シール部材は、周縁部の先端側のリブ部における水密性を高くすることができる。すなわち、シール部材は、シール性を向上させることができ、洗浄水の漏水を抑制することができる。
【0013】
また、リブ部は、周縁部の軸方向に沿って複数設けられる。複数のリブ部のうち、周縁部から最も遠いリブ部は、外部配管接続部の内周壁側に突出する先端部の角度が、他のリブ部の先端部の角度よりも大きい。
【0014】
これにより、シール部材は、周縁部から最も遠いリブ部におけるシール性を向上させることができる。
【0015】
また、外部配管が挿入される挿入孔の周縁部側の端部には、面取り部が形成される。
【0016】
これにより、シール部材は、第1壁部の周縁部付近における剛性を低くすることができる。そのため、シール部材は、外部配管接続部にシール部材が挿入される場合に、第1壁部を第2壁部側に容易に変形させることができる。従って、シール部材は、水洗便器の施工性を向上させることができる。
【0017】
また、面取り部は、空洞部の周縁部側の端部よりもリブ側まで形成される。
【0018】
これにより、シール部材は、第1壁部の周縁部付近における剛性を低くすることができる。そのため、シール部材は、外部配管接続部にシール部材が挿入される場合に、第1壁部を第2壁部側に容易に変形させることができる。従って、シール部材は、水洗便器の施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
実施形態の一態様によれば、漏水を抑制しつつ、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係るシール部材と、給水管と、水洗大便器との分解図である。
図2図2は、実施形態に係るシール部材の断面図である。
図3図3は、水洗大便器と給水管とを接続した状態のシール部材の一部を示す断面図である。
図4図4は、変形例に係るシール部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するシール部材の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0022】
実施形態に係るシール部材は、水洗便器用のシール部材である。水洗便器は、たとえば、水洗大便器である。なお、水洗便器は、水洗小便器を含んでもよい。ここでは、一例として水洗大便器に設けられるシール部材について説明する。
【0023】
実施形態に係るシール部材1は、図1図3を参照して説明される。図1は、実施形態に係るシール部材1と、給水管2(外部配管)と、水洗大便器3との分解図である。図1では、水洗大便器3の断面図が示される。図2は、実施形態に係るシール部材1の断面図である。図3は、水洗大便器3と給水管2とを接続した状態のシール部材1の一部を示す断面図である。
【0024】
また、図1などには、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。直交座標系では、X軸正方向が左方、および、X軸負方向が右方として規定される。また、Y軸正方向が前方、および、Y軸負方向が後方として規定される。また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0025】
水洗大便器3は、トイレ室に設置される。水洗大便器3は、トイレ室の壁面に取り付けられる壁掛け式である。水洗大便器3は、フラッシュバルブ式の水洗大便器である。なお、水洗大便器3は、水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式であってもよい。また、水洗大便器3は、貯水タンクに洗浄水を貯水するタンク式であってもよい。
【0026】
水洗大便器3は、給水管2から給水部4(外部配管接続部)に供給される洗浄水をボウル部5に吐水し、洗浄水によってボウル部5内の汚物を、トラップ部6を介して外部の排水管に排出する。
【0027】
給水部4は、シール部材1によって後方側の壁に設けられる給水管2に接続される。給水部4には、シール部材1が挿入される。給水部4には、シール部材1が挿入される挿入口4aが形成される。挿入口4aには、段部4bが形成される。段部4bは、挿入口4aを形成する給水部4の内周壁から突出するように形成される。
【0028】
シール部材1は、樹脂製であり、弾性部材によって構成される。シール部材1は、パッキンである。シール部材1は、水洗大便器3の給水部4と、給水管2とを水密に接続する。シール部材1は、周縁部10と、第1壁部11と、第2壁部12とを備える。
【0029】
周縁部10は、リング状に形成される。周縁部10の中心には、孔10aが形成される。周縁部10は、給水部4の端面4cに当接する。給水部4の端面4cは、たとえば、給水部4の後端面である。給水部4の端面4cは、トイレ室の壁面のうち、給水管2が設けられる壁面に向かい合う。
【0030】
第1壁部11は、周縁部10から周縁部10の軸方向に沿って延びるように設けられる。周縁部10の軸Pは、周縁部10に形成される孔10aの中心軸を含む。第1壁部11は、円筒状に形成される。第1壁部11は、周縁部10の軸Pを中心とした円筒状に形成される。
【0031】
なお、以下では、周縁部10の軸方向について、周縁部10側を基端側とし、周縁部10とは反対側の第1壁部11の端部側を先端側として説明することがある。たとえば、周縁部10の軸方向において、基端側は後側であり、先端側は前側である。
【0032】
周縁部10の軸方向において、第1壁部11の長さL1(図2参照)は、給水部4の端面4cから段部4bまでの長さL2(図1参照)よりも長い。第1壁部11の長さL1は、給水部4の端面4cとの当接面10bから第1壁部11の先端側の端部(先端)までの長さである。
【0033】
第1壁部11は、複数の第1リブ部15(リブ部)を備える。複数の第1リブ部15は、周縁部10の軸方向に沿って並んで設けられる。たとえば、第1壁部11は、周縁部10の軸方向に沿って3つの第1リブ部15を備える。第1リブ部15の数は、これに限定されることはなく、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。なお、第1壁部11は、1つの第1リブ部15を備えてもよい。
【0034】
第1リブ部15は、第1壁部11の外周壁から第1壁部11の径方向の外側に向けて突出するように設けられる。第1リブ部15は、第1壁部11の周方向に沿って、第1壁部11の全周に設けられる。
【0035】
第1リブ部15の最外径(直径)は、第1壁部11が挿入される水洗大便器3の給水部4の内周壁の直径よりも大きい。
【0036】
第2壁部12は、周縁部10から周縁部10の軸方向に沿って延びるように設けられる。第2壁部12は、第1壁部11よりも内側に設けられる。第2壁部12は、円筒状に形成される。第2壁部12は、周縁部10の軸Pを中心に円筒状に形成される。すなわち、第1壁部11と第2壁部12とは、同軸上に形成される。第2壁部12は、第1壁部11に向かい合うように設けられる。すなわち、シール部材1は、第1壁部11と第2壁部12とよる2重の円筒状の部材を有する。
【0037】
第2壁部12は、第2壁部12の内周壁が、周縁部10の孔10aを形成する内周壁に連続するように設けられる。シール部材1には、周縁部10の孔10aを形成する内周壁と、第2壁部12とによって、給水管2が挿入される挿入孔12aが形成される。
【0038】
第2壁部12は、複数の第2リブ部17を備える。複数の第2リブ部17は、周縁部10の軸方向に沿って並んで設けられる。たとえば、第2壁部12は、周縁部10の軸方向に沿って7つの第2リブ部17を備える。第2リブ部17の数は、これに限定されることはなく、6つ以下であってもよく、8つ以上であってもよい。
【0039】
第2リブ部17は、第2壁部12の内周壁から第2壁部12の径方向の内側に向けて突出するように設けられる。第2リブ部17は、第2壁部12の周方向に沿って、第2壁部12の全周に設けられる。
【0040】
第2リブの最内径(直径)は、シール部材1に挿入される給水管2の外周壁の直径よりも小さい。
【0041】
第2壁部12の外周壁の直径は、第1壁部11の内周壁の直径よりも小さい。そのため、第1壁部11、および、第2壁部12との間には、空洞部18が形成される。空洞部18は、周縁部10とは反対側の端部において開口する。空洞部18は、周縁部10とは反対側の端部から、第1リブ部15よりも周縁部10側まで形成される。具体的には、空洞部18は、最も周縁部10側の第1リブ部15よりも、周縁部10側まで形成される。
【0042】
シール部材1によって水洗大便器3の給水部4と、給水管2とが接続された場合、空洞部18は、第1壁部11と第2壁部12とが当接しないように形成される。すなわち、給水部4にシール部材1が挿入され、かつ、シール部材1に給水管2が挿入された場合に、空洞部18は、第1壁部11と第2壁部12とが当接しないように形成される。
【0043】
また、シール部材1には、面取り部19が形成される。面取り部19は、給水管2が挿入される挿入孔12aに形成される。面取り部19は、挿入孔12aの周縁部10側の端部に形成される。面取り部19は、周縁部10側の端部(後端側)となるにつれて拡径するように傾斜する傾斜面である。面取り部19は、空洞部18の周縁部10側の端部よりも第1リブ部15側まで形成される。すなわち、周縁部10の径方向において、面取り部19の一部は、第2壁部12を挟んで空洞部18に重なるように形成される。なお、面取り部19は、空洞部18の周縁部10側の端部よりも周縁部10側に形成されてもよい。
【0044】
シール部材1によって水洗大便器3の給水部4と、給水管2とが接続される場合、シール部材1の第1壁部11は、給水部4に挿入される。第1壁部11の第1リブ部15は、給水部4の内周壁に当接する。
【0045】
シール部材1は、周縁部10が給水部4の端面4cに当接するまで、給水部4に挿入される。周縁部10の軸方向において、第1壁部11の長さL1は、給水部4の端面4cから給水部4の段部4bまでの長さL2以上であるため、第1壁部11の先端側の端部は、給水部4の段部4bに当接する。たとえば、第1壁部11の長さL1が、給水部4の端面4cから給水部4の段部4bまでの長さL2よりも長い場合、第1壁部11は、周縁部10と給水部4の段部4bとによって挟まれることで、湾曲する。第1壁部11は、周縁部10の軸方向の中央付近が、第2壁部12側に突出するように湾曲する。
【0046】
第1壁部11の先端側の端部が、給水部4の段部4bに当接することで、シール部材1は、第1壁部11の先端側の端部で洗浄水をシールする。給水管2から洗浄水が供給された場合、第1壁部11の先端側において、第1壁部11よりも外側に洗浄水が流入することが抑制される。すなわち、周縁部10の軸方向において、最も先端側に位置する第1リブ部15と段部4bとの間への洗浄水の流入が抑制される。
【0047】
そのため、周縁部10の軸方向における先端側において、第1壁部11よりも内側の洗浄水の水圧と、第1壁部11よりも外側の圧力との差が大きくなる。従って、周縁部10の軸方向における先端側の第1リブ部15が給水部4の内周壁側に付勢される力が大きくなり、先端側の第1リブ部15における水密性が高くなる。
【0048】
また、第1壁部11は、周縁部10の軸方向の中央付近が、第2壁部12側に突出するように湾曲する。そのため、周縁部10の軸方向における先端側の第1リブ部15にかかる応力が大きくなる。従って、先端側の第1リブ部15における水密性が高くなる。
【0049】
シール部材1によって水洗大便器3の給水部4と、給水管2とが接続された場合、シール部材1の挿入孔12aに給水管2が挿入される。第2壁部12の第2リブ部17は、給水管2に当接する。
【0050】
給水部4にシール部材1が挿入される場合、シール部材1には、空洞部18が形成されているため、第1壁部11は、周縁部10側を中心に第2壁部12側に傾くように変形する。そのため、給水部4へのシール部材1の挿入が容易となる。
【0051】
なお、空洞部18は、第1リブ部15よりも周縁部10側まで形成されているため、第1リブ部15が給水部4の内周壁から受ける力によって、第1壁部11は、周縁部10側を中心に変形し易い。そのため、給水部4へのシール部材1の挿入が容易となる。
【0052】
また、シール部材1に面取り部19が形成されることで、給水部4にシール部材1が挿入される場合に、第1壁部11の周縁部10付近における剛性が低くなる。具体的には、面取り部19は、空洞部18の周縁部10側の端部よりも第1リブ部15側まで形成される。そのため、給水部4にシール部材1が挿入される場合に、第1壁部11が第2壁部12側に向けて変形し易くなる。そのため、給水部4へのシール部材1の挿入が容易となる。
【0053】
また、シール部材1に給水管2が挿入される場合、シール部材1には、空洞部18が形成されているため、第2壁部12が周縁部10側を中心に第1壁部11側に傾くように変形する。そのため、シール部材1への給水管2の挿入が容易となる。
【0054】
なお、シール部材1によって水洗大便器3の給水部4と、給水管2とが接続された場合であっても、空洞部18は、第1壁部11と第2壁部12とが当接しないように形成される。そのため、シール部材1による給水部4と給水管2とを接続する作業中に、第1壁部11と第2壁部12とが当接することがなく、第1壁部11の変形、および、第2壁部12の変形が妨げられることがない。従って、シール部材1による給水部4と給水管2との接続作業が容易になる。すなわち、水洗大便器3の施工が容易になる。
【0055】
シール部材1によって給水部4と給水管2とが接続され、給水管2から洗浄水が供給される場合、洗浄水が空洞部18に流入し、第1壁部11は洗浄水の水圧によって給水部4側(外側)に向けて付勢される。また、第2壁部12は洗浄水の水圧によって給水管2側(内側)に向けて付勢される。そのため、洗浄水が給水管2から供給された場合に、シール部材1はより水密性が高くなる。
【0056】
シール部材1によって給水部4と給水管2とが接続された場合に、空洞部18は、第1壁部11と第2壁部12とが当接しないように形成される。洗浄水は、周縁部10側まで形成される空洞部18に流入し、第1壁部11を全体的に給水部4側に付勢する。また、洗浄水は、第2壁部12を全体的に給水管2側に付勢する。そのため、複数の第1リブ部15にかかる圧力のばらつきが抑制される。また、複数の第2リブ部17にかかる圧力をばらつきが抑制される。
【0057】
シール部材1は、水洗大便器3の給水部4と、給水管2とを接続する。シール部材1は、周縁部10と、第1壁部11と、第2壁部12とを備える。周縁部10は、リング状に形成され、給水部4の端面4cに当接する。第1壁部11は、周縁部10から周縁部10の軸方向に沿って延び、給水部4の内周壁に当接する。第2壁部12は、周縁部10から周縁部10の軸方向に沿って延び、第1壁部11よりも内側に設けられ、給水管2の外周壁に当接する。第1壁部11は、第1リブ部15を備える。第1リブ部15は、給水部4の内周壁に当接する。第1壁部11と第2壁部12との間には空洞部18が形成される。空洞部18は、第1リブ部15よりも周縁部10側まで形成される。
【0058】
これにより、水洗大便器3の給水部4にシール部材1が挿入される場合に、シール部材1は、空洞部18を有することで、第1壁部11を第2壁部12側に変形させることができる。空洞部18が、第1リブ部15よりも周縁部10側まで形成されることで、シール部材1は、第1壁部11を第2壁部12側に容易に変形させることができる。そのため、シール部材1が給水部4に挿入される場合、給水部4とシール部材1との摩擦力が低減され、給水部4へのシール部材の挿入が容易になる。従って、シール部材1は、水洗大便器3の施工性を向上させることができる。また、給水管2から洗浄水が供給された場合、シール部材1は、空洞部18に流入する洗浄水の水圧によって、第1壁部11を給水部4側に付勢することができ、第2壁部12を給水管2側に向けて付勢することができる。そのため、シール部材1は、シール性を向上させることができ、洗浄水の漏水を抑制することができる。
【0059】
空洞部18は、給水部4に第1壁部11が挿入され、かつ、第2壁部12に給水管2が挿入された状態において、第1壁部11と第2壁部12とが当接しないように形成される。
【0060】
これにより、給水管2から洗浄水が供給された場合、シール部材1は、空洞部18に流入する洗浄水の水圧によって、第1壁部11を全体的に給水部4側に付勢することができる。また、給水管2から洗浄水が供給された場合、シール部材1は、空洞部18に流入する洗浄水の水圧によって、第2壁部12を全体的に給水管2側に付勢することができる。そのため、シール部材1は、複数の第1リブ部15にかかる圧力のばらつきを抑制することができる。また、シール部材1は、複数の第2リブ部17にかかる圧力のばらつきを抑制することができる。従って、シール部材1は、シール性を向上させることができ、洗浄水の漏水を抑制することができる。
【0061】
また、シール部材1は、シール部材1が給水部4に挿入される場合に第1壁部11を第2壁部12側に変形させることができ、かつ、給水管2がシール部材1に挿入される場合に第2壁部12を第1壁部11側に変形させることができる。すなわち、シール部材1は、シール部材1による給水部4と給水管2とを接続する作業中に、第1壁部11と第2壁部12とが当接することを防止することができる。そのため、シール部材1は、水洗大便器3の施工性を向上させることができる。
【0062】
シール部材1には、面取り部19が形成される。面取り部19は、給水管2が挿入される挿入孔12aの周縁部10側の端部に形成される。
【0063】
これにより、シール部材1は、第1壁部11の周縁部10付近における剛性を低くすることができる。そのため、シール部材1は、給水部4にシール部材1が挿入される場合に、第1壁部11を第2壁部12側に容易に変形させることができる。従って、シール部材1は、水洗大便器3の施工性を向上させることができる。
【0064】
面取り部19は、空洞部18の周縁部10側の端部よりも第1リブ部15まで形成される。
【0065】
これにより、シール部材1は、第1壁部11の周縁部10付近における剛性を低くすることができる。そのため、シール部材1は、給水部4にシール部材1が挿入される場合に、第1壁部11を第2壁部12側に容易に変形させることができる。従って、シール部材1は、水洗大便器3の施工性を向上させることができる。
【0066】
第1壁部11は、内側に突出する段部4bを有する給水部4に挿入される。周縁部10の軸方向における長さL1は、周縁部10の軸方向における給水部4の端面4cから段部4bまでの長さL2以上である。
【0067】
これにより、シール部材1は、周縁部10の軸方向における先端側の端部を、給水部4の段部4bに当接させることができる。そのため、シール部材1は、周縁部10の軸方向における先端側の端部において洗浄水をシールすることができ、第1壁部11の先端側において、第1壁部11よりも外側に洗浄水が流入することが抑制することができる。そのため、シール部材1は、第1壁部11の先端側において、第1壁部11よりも内側の洗浄水の水圧と、第1壁部11よりも外側の圧力との差を大きくすることができる。従って、シール部材1は、周縁部10の軸方向における先端側の第1リブ部15を給水部4側に押し付ける力を大きくすることができ、周縁部10の軸方向における先端側の第1リブ部15における水密性を高くすることができる。すなわち、シール部材1は、シール性を向上させることができ、洗浄水の漏水を抑制することができる。
【0068】
また、たとえば、シール部材1は、周縁部10の軸方向の中央付近の第1壁部11を、第2壁部12側に突出するように湾曲させることができる。そのため、シール部材1は、周縁部10の軸方向における先端側の第1リブ部15にかかる応力を大きくすることができる。従って、シール部材1は、周縁部10の軸方向における先端側の第1リブ部15における水密性を高くすることができる。すなわち、シール部材1は、シール性を向上させることができ、洗浄水の漏水を抑制することができる。
【0069】
変形例に係るシール部材1は、図4に示すように、第1リブ部15のうち、周縁部10から最も遠い第1リブ部15において、給水部4(図3参照)の内周壁側に突出する先端部の角度S1を、他の第1リブ部15の先端部の角度S2よりも大きくしてもよい。たとえば、周縁部10の軸方向において先端側の第1リブ部15の先端部の角度S1は、基端側の第1リブ部15の先端部の角度S2よりも大きい。図4は、変形例に係るシール部材1の断面図である。なお、周縁部10の軸方向において先端側の第1リブ部15の最外径を、基端側の第1リブ部15の最外径よりも大きくしてもよい。
【0070】
これにより、変形例に係るシール部材1は、周縁部10の軸方向における先端側の第1リブ部15のシール性を向上させることができる。
【0071】
上記実施形態、および、変形例に係るシール部材1は、給水管2と、水洗大便器3の給水部4とを接続する一例について説明したが、これに限られることはない。シール部材1は、排水管と、水洗大便器3のトラップ部6とを接続するシール部材であってもよい。
【0072】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 シール部材
2 給水管
3 水洗大便器
4 給水部(外部配管接続部)
4b 段部
4c 端面
10 周縁部
11 第1壁部
12 第2壁部
12a 挿入孔
15 第1リブ部(リブ部)
17 第2リブ部
18 空洞部
19 面取り部
図1
図2
図3
図4