(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030004
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】2つの把持手段を備える把持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240229BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20240229BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B25J15/00 C
B25J15/06 D
B25J15/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132521
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】307002127
【氏名又は名称】株式会社ウエノテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】亀山 真悟
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS03
3C707ES03
3C707ET03
3C707ET05
3C707EU02
3C707EU07
3C707EV02
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT08
3C707FU01
3C707HS14
3C707HS27
3C707HT22
(57)【要約】
【課題】1つの把持装置において、2種の把持手段を有するにも関わらず、可動域、操作性、速度性を維持し、かつ軽量、小型で簡易な構造である、実用性の高い把持装置を提供すること。
【解決手段】先端に第1の把持器具が設置された又は設置可能なシャフトと、第2の把持器具が設置された又は設置可能な一対の平行リンクを備え、前記一対の平行リンクは、駆動軸と他の従属軸とが同方向へ回転する、又は2つの中間リンクが同方向へ移動する回転補助機構、または前記平行リンクと前記シャフトを駆動可能な1つの動力源とを備えること。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持装置であって、
先端に第1の把持器具が設置された又は設置可能なシャフトと、
第2の把持器具が設置された又は設置可能な一対の平行リンクを備え、
前記一対の平行リンクは、
駆動軸と他の従属軸とが同方向へ回転する、又は2つの中間リンクが同方向へ移動する回転補助機構とを備えることを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記回転補助機構が、一対の平行リンクの各々に2カ所ずつ設けられることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記回転補助機構が、タイミングベルト及び/又は歯車機構であることを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1の把持器具が、真空パッドからなることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項5】
前記第2の把持器具が、フィンガーからなることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項6】
前記シャフトを駆動する1つの動力源を備えることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項7】
前記1つの動力源がモータであることを特徴とする請求項6に記載の把持装置。
【請求項8】
前記シャフトが、前記動力源により駆動する歯車と嵌合するラックを備え、軸方向に駆動することを特徴とする請求項6に記載の把持装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の把持装置を備えるロボット。
【請求項10】
前記シャフトが、一対のラックを備え、
前記一対の平行リンクは、いずれも歯車の回転によりその駆動リンクが回動し、
前記一対のラックが前記一対の平行リンクの駆動用の歯車と嵌合していることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項11】
把持装置であって、
動力源と、
前記動力源により駆動し、第1の把持器具が先端に設置された又は設置可能なシャフトと、
第2の把持器具が設置されている又は設置可能な一対の平行リンクを備え、
前記一対の平行リンクは、前記シャフトの駆動により駆動軸が回転駆動することを特徴とする把持装置。
【請求項12】
前記シャフトが、前記動力源により駆動する歯車と嵌合するラックを備え、軸方向に駆動することを特徴とする請求項11に記載の把持装置。
【請求項13】
前記シャフトが、一対のラックを備え、
前記一対の平行リンクは、各々が歯車の回転によりその駆動リンクが回動し、
前記一対のラックが前記一対の平行リンクの駆動用の歯車と嵌合していることを特徴とする請求項11に記載の把持装置。
【請求項14】
前記動力源が、1つのモータからなることを特徴とする請求項11に記載の把持装置。
【請求項15】
前記第1の把持器具が、真空パッドからなることを特徴とする請求項11に記載の把持装置。
【請求項16】
前記シャフトが中空管として構成されていることを特徴とする請求項11に記載の把持装置。
【請求項17】
前記第2の把持器具が、フィンガーからなることを特徴とする請求項11に記載の把持装置。
【請求項18】
前記一対の平行リンクが、固定リンクの駆動軸と他の従属軸とが同方向へ回転する、又は2つの中間リンクが同方向へ移動する回転補助機構を備えることを特徴とする請求項11から17のいずれかに記載の把持装置。
【請求項19】
前記回転補助機構が、一対の平行リンクの各々に2カ所ずつ設けられることを特徴とする請求項18に記載の把持装置。
【請求項20】
前記回転補助機構が、タイミングベルト及び/又は歯車機構であることを特徴とする請求項19に記載の把持装置。
【請求項21】
請求項11から17のいずれかに記載の把持装置を備えるロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルなど所望の物品を把持する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボトルやボトルキャップなど所望の物品を、把持する把持装置が知られている。当該把持装置は、グリッパと呼ばれることもある。これらの把持装置は、産業用ロボットに搭載されロボットハンドとして適用される場合があり、様々な物品の搬送のために使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
把持装置の把持方式としては、主に吸着して把持する方式と、フィンガーを利用して挟むハンド型の方式が存在する。吸着方式としては、磁力を利用したものや、真空吸着を利用したものが存在する。ハンド型は、単純に両側から挟む構成や、手の関節を模した構成など、様々な態様のものが知られている。
【0004】
吸着方式のうち、真空パッド等を利用した真空方式は、基本的に把持対象物の材質を問わないため、汎用性に優れ、速度にも優れる。ただし、表面の凹凸が大きい場合、多孔質の表面である場合など、形状や素材により吸着できない場合がある。また、パッドがひとつの真空パッドを利用した場合には、狭く深い箇所への挿入に優れる。一方、複数の真空パッドを使用したものではスペースを必要とするが過重の大きな物品の把持が可能になる。磁力による吸着方式は、素材により吸着の可否が定まる。
【0005】
ハンド型の場合、吸着方式に比して強い圧力で把持できること、幅広い物品形状に対応できることなどについて利点が存在する。その一方、「掴む」及び「離す」工程が必要になるため、一定のスペースを必要とし、速度では吸着方式に比して一般的に遅い。また、フィンガー数や形状が複雑になると、コストは増え制御も複雑になる。
【0006】
このように、いずれの方式にも一長一短がある。このため、両者を併用する装置が考えられるが、併用すると可動域、操作性、速度性などにおいて一方が一方のメリットを減じることとなるばかりか、機器の複雑性増、重量増、体積増(挿入可能域減)などの問題も生じるため、実用された機器を見ることはほぼない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、1つの把持装置において、2種の把持手段を有するにも関わらず、可動域、操作性、速度性を維持し、かつ軽量、小型で簡易な構造である、実用性の高い把持装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、把持装置であって、先端に第1の把持器具が設置された又は設置可能なシャフトと、第2の把持器具が設置された又は設置可能な一対の平行リンクを備え、前記一対の平行リンクは、駆動軸と他の従属軸とが同方向へ回転する、又は2つの中間リンクが同方向へ移動する回転補助機構とを備えることからなる。
【0010】
さらに、本発明は、把持装置であって、動力源と、前記動力源により駆動し、第1の把持器具が先端に設置された又は設置可能なシャフトと、第2の把持器具が設置されている又は設置可能な一対の平行リンクを備え、前記一対の平行リンクは、前記シャフトの駆動により駆動軸が回転駆動することからなる。
【0011】
また、前期シャフトが、前記動力源により駆動する歯車と嵌合するラックを備え、軸方向に駆動することが好適である。
また、前記シャフトが、一対のラックを備え、前記一対の平行リンクは、いずれも歯車の回転によりその駆動リンクが回動し、前記一対のラックが前記一対の平行リンクの駆動用の歯車と嵌合していることが好適である。
また、前記シャフトが、前記動力源により駆動する歯車と嵌合するラックを備え、軸方向に駆動することが好適である。
【0012】
本発明においては、第1の把持器具として、典型的には吸着型の把持器具を想定し、当該把持器具のメリットを享受できるようにシャフト構造(棒状部材)を採用する。シャフト先端に真空パッドまたは磁力グリッパ等を備えることで、簡易な構成でありつつ、狭小域であっても容易に到達することが可能である。本発明において真空パッドは1つのパッドから構成されることが好適であるが、複数のパッドを有する吸着器具を採用しても良い。シャフト形状は、円筒形、多角柱形など、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、角柱状であることが好適である。第1の把持器具は交換可能に構成されることが好ましいが、シャフトと一体的に又は不可分に形成されていても良い。この趣旨で、請求項における「設置されたシャフト」との表現は、シャフトと一体的に又は不可分に形成されることを含む。また、第1の把持器具として吸着式以外の器具を採用することを排する趣旨ではない。
【0013】
さらに、本発明では、第2の把持器具として、ハンド型を想定し、当該把持器具が設置された、または設置可能な一対の平行リンクを備える。第2の把持器具も交換可能に構成されることが好ましいが、一体的に又は不可分に形成されていても良い。当該一対の平行リンクは、好適にはシャフトに対して対称に設けられ、物品を挟んで把持する機能を備える。
【0014】
平行リンクのうち、固定リンクの一方の軸が駆動軸となり、駆動軸の回転により第1の中間リンクが駆動する。また、固定リンクに平行なリンクを従動リンク、駆動軸を有する中間リンクを第1の中間リンク(又は駆動リンク)、他の中間リンクを第2の中間リンクと記載する。なお、固定リンクは平行リンク構成が成立している限り、物体としては存在しない場合がある。
【0015】
好適な形態としては、固定リンク及び従動リンクよりも中間リンクが長く、第1の中間リンクが、駆動軸と同期して駆動する。また、固定リンクは物理的部材としては設けられない。従動リンクは、第2の把持器具を備える。第2の中間リンクは、固定リンクと共有する軸の回転に同期して駆動する。当該構成は、シャフト構成と相まって装置の機能性、操作性、小型軽量化などに適している。
【0016】
第2の把持器具は、典型的にはフィンガーが用いられ、従動リンクに交換可能に設置されることが好適である。また、フィンガーは、保持面が平面状である板状部材からなるフィンガーが好ましいが、多関節のフィンガーなど他のフィンガー構成や、他の把持器具を排除する趣旨ではない。
【0017】
一対の平行リンクを採用することで、その駆動によりシャフト周囲に空間が生まれ、当該状態にて第1の把持器具を使用することができる。さらに、平行リンクを採用することで、第2の把持器具を常に一定方向、例えばシャフト軸に平行に維持できる。したがって、物品の大きさや形状に関係なく、常に一定の方向又は角度で物品に接することができ、適切な圧力で把持することが可能になる。平行リンクを介したフィンガーは、重量や形状に左右される真空パッドとの相互の補完関係性が高い。なお、併用する関係上、フィンガーが物品を把持すべく閉じたとき(第2の把持器具を使用して閉じたとき)、第1の把持器具よりも外側に延出した位置となるよう構成され、真空パッドを利用する際は、フィンガーが退避した状態に構成される。
【0018】
さらに、真空パッド使用時に、第2の把持器具を実用上完全に退避させることができれば、併用のメリットをより享受できる。具体的には、駆動軸の駆動により、平行リンクをほぼシャフト軸と平行または接触するところまで退避させることができれば、第1の把持器具を、挿入域や可動域、操作性に影響を与えることなく、利用することが可能になる。平行リンクは、この退避を可能にする点でも有利である。
【0019】
当該退避を確実なものにすべく、好ましくは平行リンクにおいて、固定リンクの駆動軸と他の従属軸が同方向に回転できるように、又は2つの中間リンクが同方向へ移動するための回転補助機構が設けられる。又は、当該構成は、平行リンクの完全な退避を可能にするものであり、第1の把持器具との併用による相乗効果をより担保することができる。すなわち、第2の把持器具を使用して一対のフィンガーが下部にあり、把持面がシャフト軸に平行な状態を0度とした場合、大凡180度まで平行リンクを回転させた状態が、最大に退避された状態となる。しかしながら、この場合、平行リンクが思案点を通過することになる。そこで、本発明では、思案点において、固定リンクの駆動軸と他の従属軸が同方向に回転できる、又は2つの中間リンクが同方向へ移動できる回転補助機構を設けることで、完全な退避を安全かつ確実に行うこととしたものである。
【0020】
回転補助機構の好適な例として、タイミングベルト及び/または歯車構成が挙げられる。タイミングベルトは、例えば固定リンクの両軸間に設置される。当該構成により両者の同期した回転が担保され、思案点において両中間リンクの同期した方向への力が与えられる。また、当該歯車構成の例としては、第1の中間リンクに回転しない歯車(第1の歯車)を設け、第2の中間リンクに対して回転しない歯車(第2の歯車)を設ける。そして、従動リンク上に、当該2つの歯車に嵌合する、自由回転する歯車(第3の歯車)を設ける。第1の歯車と第2の歯車は、当該自由回転する第3の歯車を介して、同期して同方向への力が与えられる。したがって、駆動軸の回転が、第1の中間リンクを動かすことにより、当該第1の中間リンクの動きが第2の中間リンクに同期するよう伝達される。
【0021】
回転補助機構は、所望の軸が思案点において駆動軸と同方向に回転する力を与えることができる限り、又は所望のリンクが所望の方向に移動できる限り、例えば、歯車構成とタイミングベルトの配置の変更や、複数の駆動源を備えて制御する構成など、上記と異なる他の構成を排除するものではない。しかしながら、操作効率、小型化及び軽量化、他の動力源を必要としないなどの点で、タイミングベルト及び/又は歯車機構は有利である。さらに、リンク及びフィンガーの重量に耐える十分な動力供与性、スペースや同期性を考慮すると、各平行リンクにおいて、固定リンクの両軸においてはタイミングベルト、従動リンク上には歯車機構として2つの機構を設けることが好適である。
【0022】
第1の把持器具において使用されるシャフトは、1つの動力源により駆動されることが好適である。動力源は好適にはモータである。そして、シャフトには直線上のシャフト駆動用ラックが設けられ、モータの駆動により回転するギアが、シャフト駆動用ラックに設けられたラックと嵌合される構成とする。当該構成により、モータの駆動によりシャフトが軸方向に駆動する。すなわち、モータの正逆回転により、シャフトが軸方向のいずれにも駆動されることが可能になる。ただし、油圧又は空気圧・水圧及び電動シリンダー、ピストン機構など、シャフトが軸方向のいずれにも駆動可能である限り、他の動力源が排除されるものではない。ただし、モータ及びシャフト用ラックを介して駆動する方式は、重量、体積、操作性、平行リンクとの併用いずれについても有利である。
【0023】
シャフト先端には第1の把持器具が装着される。第1の把持器具が真空パッドである場合、空気通路としてシャフトが中空に構成され、端部にはチューブ等が装着される。真空発生装置等は、把持装置の内外に適宜装着される。シャフトが軸方向に移動することに伴い、シャフトと、ハウジングまたはマウント間に伸縮可能部材が設けられる。例えばチューブである場合、螺旋状に設置されることでシャフトの移動性が担保される。把持器具が磁力による吸着パッドであり、磁力の発生に配線等が必要な場合には、シャフト内にこれら器具を適宜配置する構成を採用することができる。
【0024】
平行リンクは、駆動軸の回転により駆動する。当該駆動軸の駆動源は、シャフトの駆動源とは別の駆動源として備えることができる。しかしながら、好ましくは、把持装置の動力源はひとつとして構成される。当該構成を担保するため、シャフトには直線上の一対の平行リンク用ラックを備える。当該平行リンク用ラックは、シャフト駆動用ラックとは別個のものであり、平行リンクを駆動させるために使用される。
【0025】
好適な態様として、平行リンク用ラックは、その回転軸が平行リンクの駆動軸ともなる歯車と嵌合される。すなわち、平行リンクの駆動軸は歯車の回転軸と同一に構成される。そして、平行リンク用ラックがシャフトの駆動に伴って移動すると、シャフト駆動用ラックに嵌合した歯車が回転し、駆動軸が回転する。当該構成は、平行リンクの駆動においてシャフトとは別の動力源を排することができ、シャフト自体が駆動軸の駆動源となるために、小型軽量化が実現され、操作性・制御をも容易にする。さらには、平行リンク用ラックはシャフト上に一対に設けることができるため、互いの動作の同期を容易に図ることができる。
【0026】
シャフト駆動用ラックが設けられる場合、平行リンク用と合わせて3つのラックが設けられることになる。平行リンクは互いに対象に設けられることから、説明の都合上、駆動用ラックが平面(上面)であるとした場合、両側面に設けることが可能である。また、両側面のラックの配置高さを変えることで、より小型化を図ることができる。この構成を選択する場合、シャフト主部は角柱状、特に四角柱状であることが好適である。
【0027】
当該構成によれば、動作として、シャフトが物品へ向けて近づくように駆動されると同時に、一対の平行リンクが同期して退避することになる。したがって、最小限の要素で、把持器具の即時かつ確実な切り替えが実現される。操作及び制御も、モータの制御のみで完結するため、複雑な制御を必要とせずに、2つの把持機器のメリットを享受することができる。
【0028】
本発明の把持機器は、最も典型的には産業用ロボットに搭載されて使用されるが、単体で、又は他の機器に搭載されて使用されても良い。また、ハウジング、ボルトやネジ、ロボットマウントなどの部材が適宜設けられる。シャフトや平行リンクの素材は特に限定はされないが、金属系素材、ステンレス、樹脂など、使用環境に適合した素材が選択される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば1つの把持装置において、2種の把持手段を有するにも関わらず、可動域、操作性、速度性を維持し、かつ軽量、小型で簡易な構造である、実用性の高い把持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図6】平行リンクが開いた使用状態を示す構造図である。
【
図7】平行リンクが開いた使用状態を示す構造図である。
【
図8】平行リンクが退避した使用状態を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0032】
図1に、本発明の把持装置1が示される。把持装置1は、第1の把持器具である真空パッド2と、第2の把持機器である一対のフィンガー4を備えている。真空パッド2は、シャフト3の先端に接続されている。フィンガー4が、一対の平行リンク5に備えられている。平行リンク5は、第1の中間リンクであり駆動軸9の回転と同期して動作する駆動リンク6、第2の中間リンク7、従動リンク8を備える。駆動リンク6及び中間リンク7は、フィンガー4を両側から十分な強度で支えるように一対かつ同形状のフレームとして設けられている。また、駆動リンク6及び中間リンク7は、回動した際にフィンガー4及び相互に接触しないよう、外側へ広がった退避部分を有している。フィンガー4は、従動リンク8に交換可能に設置されている。把持面は平面に構成され、把持面が1つの直線として見える位置から見て、シャフト3軸と平行になるよう構成されている。なお、図面上、平行リンク5における一対となる構成要素には「’」を付しているが、構成や動作が共通するため、主に一方の符号のみを使用して説明する。
【0033】
平行リンク5は駆動軸9のほか、第2の軸10、第3の軸11、第4の軸12を備える。固定リンクは部材としては設けられていないが、駆動軸9及び第2の軸10を結んで構成され、第3の軸11と第4の軸12を結ぶラインと平行かつ同距離である。駆動軸9と第3の軸11を結ぶラインと、第2の軸10と第4の軸12とを結ぶラインは平行かつ同距離である。
【0034】
駆動軸9と10間には、タイミングベルト24が設けられる。ガイド27がタイミングベルト24の安定性確保のために設けられている。駆動軸10はタイミングベルト24の駆動に依存して回転するように構成され、中間リンク7は駆動軸10の回転と同期して回動するように構成されている。
【0035】
歯車構成25が、軸11から軸12にかけて設けられている。軸11は歯車28の軸と同一であり、歯車28は駆動リンク6に対して回転しないように固定されている。そして、軸12は歯車30の軸と同一であり、歯車30は中間リンク7に対して回転しないように固定される。さらに、従動リンク8に、歯車28及び歯車30に嵌合し、かつ自由回転する歯車29が設けられる。また、従動リンク8の挙動は歯車28及び歯車30に依存しない。したがって、歯車28が与える動きと方向と同方向の力が、歯車29を介して、歯車30に与えられる。
【0036】
把持装置1の外殻は、ハウジング14により構成され、モータ17からの電源コード及び制御コードを備えたコネクタ13、シャフト用コネクタ15、ロボットマウント16等を備えている。
【0037】
ハウジング14を外して内部構造を示したものが
図2~
図4である。図に示されるように、把持装置1にはモータ17が設けられ、ハウジングに対して固定される。モータ17は、正逆回転可能なモータである。モータ17の駆動により回転するモータシャフト18が、シャフト3の軸に平行に設置されている。モータシャフト18が回転すると、カバー19内にモータシャフト18上に設けられたベベルギアが、歯車20の軸に設けられた溝と嵌合し、歯車20が所望の方向に回転する。すなわち、モータ17の制御により、モータ20を所望の向きに回転させることができる。モータ17は、電源及び制御コネクタ13を介して装置外の制御装置に接続される。
【0038】
シャフト3は、主部分が角に丸みを帯びた略四角柱状に構成されている。先端は円柱状であり真空パッド2を装着可能に構成されている。空気通路の確保ために、内部には空洞が設けられており、端部にてチューブ26が連結されている。チューブ26は、シャフト26が軸方向に移動することから、螺旋状に設置されていることで、シャフト3を軸方向に移動可能に構成されている。チューブ26は、ロボットマウント16と連結しており、ロボットマウント16内部を介してシャフト用コネクタ15と連通している。したがって、本実施例においては装置外に設けられる真空発生装置及び制御装置と接続され、真空パッド2の使用と制御が担保される。ハウジング14は、シャフト3を内部に保持しながら駆動を妨げないように保持空間や固定部材、ローラ等を備えて構成されている。
【0039】
歯車20が、シャフト3に軸方向に沿って設けられた第1のラック21と嵌合している。したがって、モータ17の駆動に基づく歯車20の回転により、第1のラック21を介して、シャフト3が軸方向に駆動することになる。
【0040】
さらに、シャフト3には、その両側面(第1のラック21のある位置を平面側とした場合の相対的表現)に、それぞれ高さを変えた位置に直線状のラック22、22’を備える。側面における相対的高さが変えられていることで、歯車23、23’に対して設けられるタイミングベルト24、24’等は相互に反対側にすることができ、シャフトも小型化され、装置のさらなる小型化を実現している。当該ラック22、22’は、それぞれ歯車23,23’と嵌合している。したがって、シャフト3の駆動により、歯車23、23’が同期して回転する。回転方向はシャフト3の駆動方向に依存する。
【0041】
歯車23は、その回転軸として円柱状部材を備え、当該円柱状部材が駆動軸9となるように構成されている。さらに、駆動リンク6は、駆動軸9の回転と同期して回動するよう、歯車23と駆動軸9が嵌合して構成されている。
【0042】
したがって、シャフト3が駆動すると、ラック22及び歯車23を介して、駆動軸9が回転し、駆動リンク6が回動することとなる。フィンガー4、4’が互いに重ね合わさる時、シャフト3が最もロボットマウント16側に位置することになる。その状態から、シャフト3を駆動すると、
図5のように、フィンガー4、4’がシャフト3軸と平行な状態となり、説明と理解を容易にするため当該位置を0度とする。
【0043】
図5~
図8は、平行リンクを0度(
図5)から180度(
図8)まで、開いていく状態を示している。
図5の状態から、モータ17を駆動すると、
図6のように90度開いた状態となる。平行リンク5の性質により、フィンガー4の方向は常に一定であり、固定リンクに対して一定の角度が維持されている。その一方、シャフト3が駆動した結果、真空パッド2がフィンガー4よりも延出した位置にある。このように、フィンガー4が退避しつつ、真空パッド4の周囲が空き、真空パッド3を使用可能な状態となる。
【0044】
図7は、120度開いた状態を示している。厳密ではないが、ほぼ思案点における状態である。通常の平行リンク構成では、思案点において、各リンクの挙動が不安定になる。しかしながら、本願の構成では、タイミングベルト24及び歯車構成25により、思案点における駆動軸9の駆動方向に他の軸が従動するため、安全かつ確実な退避を可能にしている。このとき、シャフト3はさらに延出した位置にある。なお、本実施例においては、同期性を考慮して固定リンクにタイミングベルトを、従動リンクにはスペース性に優れる歯車構成を採用し、機能性と小型軽量性を両立している。
【0045】
図8は、180度開いた状態を示している。当該状態まで退避すると、真空パッド3が最も延出しており、かつ平行リンク5がシャフト3に沿っている。駆動リンク6及び中間リンク7の退避部分により、相互に接触なく退避を可能にしている。当該状態においては真空パッド3を狭小位置にも差し込むことが可能であり、かつ把持後の軌道の自由度も高い。一方、
図8の状態から、所望の位置にて、フィンガー4を使用して物品を挟む際には、
図5の状態となり真空パッドが退避するので、問題なく使用することができる。
【0046】
このような相互の退避を可能にしたことで、真空パッド3とフィンガー4の両方のメリットを減じることなく併用が可能でありながら、小型かつ軽量で、多くの駆動源や制御装置等を必要とせず、メンテナンス等も容易である。
【0047】
すなわち、本実施例によれば、ひとつの動力源の制御のみで2つの把持機器を切り替えつつ把持でき、フィンガーも簡易な形状で個別制御が不要かつ完全な退避が可能であることから、把持機器内に別途制御装置を設ける必要もない。真空パッドを使用する際は、フィンガーや平行リンクが影響を与えずに済む。部品や構成は複雑ではなく、コストに優れ、交換や修理も容易である。したがって、市場において実用可能な把持装置として提供されることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 把持装置
2 真空パッド
3 シャフト
4 フィンガー
5 平行リンク
6 駆動リンク
7 中間リンク
8 従動リンク
9 駆動軸
10 軸
11 軸
12 軸
13 コネクタ
14 ハウジング
15 コネクタ
16 ロボットマウント
17 モータ
18 モータシャフト
19 ハウジング
20 歯車
21 ラック
22 ラック
23 歯車
24 タイミングベルト
25 歯車構成
26 チューブ
27 ガイド
28 歯車
29 歯車
30 歯車