(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030006
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】デジタル移相器
(51)【国際特許分類】
H01P 1/185 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H01P1/185
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132523
(22)【出願日】2022-08-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
(57)【要約】
【課題】接続部の大型化を抑えつつ、接続部に移相機能を追加し、移相量を調整できるデジタル移相器を提供する。
【解決手段】デジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、2つのデジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部20と、を備え、接続部20は、2つのデジタル移相回路10の、一方の回路の信号線路1と他方の回路の信号線路1との間に直列接続されたコイル52と、コイル52の両側に並列接続された一対のコンデンサ53と、一対のコンデンサ53の一端側の各々に設けられ、一対のコンデンサ53の一端側を接地させるか否かを切り替える一対の電子スイッチ54と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデジタル移相回路が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、
2つの前記デジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、
前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の第1の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、
前記接続部は、
2つの前記デジタル移相回路の、一方の回路の前記信号線路と他方の回路の前記信号線路とを接続する第1の接続回路と、
前記一方の回路の前記一対の外側線路と前記他方の回路の前記一対の外側線路とを電気的に接続する接続線路と、を備え、
前記第1の接続回路は、
前記一方の回路の前記信号線路と前記他方の回路の前記信号線路との間に直列接続された第1のコイルと、
前記第1のコイルの両側に並列接続された一対の第1のコンデンサと、
前記一対の第1のコンデンサの一端側の各々に設けられ、前記一対の第1のコンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える一対の第2の電子スイッチと、を備える、
デジタル移相器。
【請求項2】
前記接続部は、前記一対の第1のコンデンサの両側に並列接続された一対の第2のコンデンサを備える、
請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項3】
複数のデジタル移相回路が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、
2つの前記デジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、
前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の第1の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、
前記接続部は、
2つの前記デジタル移相回路の、一方の回路の前記信号線路と他方の回路の前記信号線路とを接続する第2の接続回路と、
前記一方の回路の前記一対の外側線路と前記他方の回路の前記一対の外側線路とを電気的に接続する接続線路と、を備え、
前記第2の接続回路は、
前記一方の回路の前記信号線路と前記他方の回路の前記信号線路との間に並列接続された第3のコンデンサと、
前記第3のコンデンサの両側に直列接続された一対の第2のコイルと、
前記第3のコンデンサの一端側に設けられ、前記第3のコンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える第3の電子スイッチと、を備える、
デジタル移相器。
【請求項4】
前記接続部は、前記一対の第2のコイルの間に並列接続された第4のコンデンサを備える、
請求項3に記載のデジタル移相器。
【請求項5】
複数の前記デジタル移相回路の少なくとも1つは、移相量の分布を緩和する緩和回路とされている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項6】
前記デジタル移相回路は、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に接続される第5のコンデンサと、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に前記第5のコンデンサを接続するか否かを切り替える第4の電子スイッチと、を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項7】
前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、多層で構成され、
多層である前記接地導体の一つの層は、前記一方の回路の前記第1の接地導体から前記他方の回路の前記第2の接地導体まで延伸して、前記接続線路を形成するグランド層である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項8】
前記グランド層は、切欠部を有する、
請求項7に記載のデジタル移相器。
【請求項9】
前記一対の内側線路は、第1の内側線路と、第2の内側線路と、を備え、
前記一対の外側線路は、前記第1の内側線路と電気的に接続される第1の外側線路と、前記第2の内側線路と電気的に接続される第2の外側線路と、を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1には、マイクロ波、準ミリ波、又はミリ波等の高周波信号を対象とするデジタル制御型の移相回路(デジタル移相回路)が開示されている。デジタル移相器は、このデジタル移相回路が多数、縦続接続された状態で半導体基板上に実装される。即ち、デジタル移相回路は、実際のデジタル移相器の構成における単位ユニットであり、数十個が縦続接続されることによって所望の機能を発揮する。
【0003】
デジタル移相器の構成が、上記のデジタル移相回路が一列に繋げられた構成である場合にはデジタル移相器の長さが長くなる。デジタル移相器の長さを短くするためには、デジタル移相器の構成を、折れ曲がりの構造を有するベンド型の線路等の接続部を用いて折り曲げた構成にすることが考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A Ka-band Digitally-Controlled Phase Shifter with sub-degree Phase Precision (2016,IEEE,RFIC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記接続部に移相機能を付加する場合、接続部に上記デジタル移相回路を追加することが考えられるが、接続部のサイズが大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接続部の大型化を抑えつつ、接続部に移相機能を追加し、移相量を調整できるデジタル移相器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るデジタル移相器は、複数のデジタル移相回路が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、2つの前記デジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の第1の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、前記接続部は、2つの前記デジタル移相回路の、一方の回路の前記信号線路と他方の回路の前記信号線路とを接続する第1の接続回路と、前記一方の回路の前記一対の外側線路と前記他方の回路の前記一対の外側線路とを電気的に接続する接続線路と、を備え、前記第1の接続回路は、前記一方の回路の前記信号線路と前記他方の回路の前記信号線路との間に直列接続された第1のコイルと、前記第1のコイルの両側に並列接続された一対の第1のコンデンサと、前記一対の第1のコンデンサの一端側の各々に設けられ、前記一対の第1のコンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える一対の第2の電子スイッチと、を備える。
【0008】
本発明の第1の態様に係るデジタル移相器では、2つのデジタル移相回路群の間を接続する接続部の第1の接続回路において、第1のコイルを直列接続すると共に第1のコイルの両側に一対の第1のコンデンサを並列接続する。そして、各々の第1のコンデンサの一端側に第2の電子スイッチを設け、接地させるか否かを切り替える。これにより、接続部の大型化を抑えつつ、接続部に移相機能を追加し、移相量を調整することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様のデジタル移相器において、前記接続部は、前記一対の第1のコンデンサの両側に並列接続された一対の第2のコンデンサを備えてもよい。
【0010】
本発明の第3の態様に係るデジタル移相器は、複数のデジタル移相回路が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、2つの前記デジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の第1の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、前記接続部は、2つの前記デジタル移相回路の、一方の回路の前記信号線路と他方の回路の前記信号線路とを接続する第2の接続回路と、前記一方の回路の前記一対の外側線路と前記他方の回路の前記一対の外側線路とを電気的に接続する接続線路と、を備え、前記第2の接続回路は、前記一方の回路の前記信号線路と前記他方の回路の前記信号線路との間に並列接続された第3のコンデンサと、前記第3のコンデンサの両側に直列接続された一対の第2のコイルと、前記第3のコンデンサの一端側に設けられ、前記第3のコンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える第3の電子スイッチと、を備える。
【0011】
本発明の第3の態様に係るデジタル移相器では、2つのデジタル移相回路群の間を接続する接続部の第2の接続回路において、第3のコンデンサを並列接続すると共に第3のコンデンサの両側に一対の第2のコイルを並列接続する。そして、第3のコンデンサの一端側に第3の電子スイッチを設け、接地させるか否かを切り替える。これにより、接続部の大型化を抑えつつ、接続部に移相機能を追加し、移相量を調整することができる。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様のデジタル移相器において、前記接続部は、前記一対の第2のコイルの間に並列接続された第4のコンデンサを備えてもよい。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、複数の前記デジタル移相回路の少なくとも1つは、移相量の分布を緩和する緩和回路とされてもよい。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1から第5の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、前記デジタル移相回路は、前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に接続される第5のコンデンサと、前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に前記第5のコンデンサを接続するか否かを切り替える第4の電子スイッチと、を備えてもよい。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、多層で構成され、多層である前記接地導体の一つの層は、前記一方の回路の前記第1の接地導体から前記他方の回路の前記第2の接地導体まで延伸して、前記接続線路を形成するグランド層であってもよい。
【0016】
本発明の第8の態様は、第7の態様のデジタル移相器において、前記グランド層は、切欠部を有してもよい。
【0017】
本発明の第9の態様は、第1から第7の態様のいずれか一つのデジタル移相器において、前記一対の内側線路は、第1の内側線路と、第2の内側線路と、を備え、前記一対の外側線路は、前記第1の内側線路と電気的に接続される第1の外側線路と、前記第2の内側線路と電気的に接続される第2の外側線路と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記本発明の一態様によれば、接続部の大型化を抑えつつ、接続部に移相機能を追加し、移相量を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るデジタル移相器を示す回路図である。
【
図2】第1実施形態に係るデジタル移相回路を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るデジタル移相回路の高遅延モードを説明する図である。
【
図4】第1実施形態に係るデジタル移相回路の低遅延モードを説明する図である。
【
図5】第1実施形態に係る接続部を示す平面図である。
【
図6】第1実施形態に係る接続部を示す回路図である。
【
図7】第1実施形態に係る接続部の変形例を示す平面図である。
【
図8】第1実施形態に係るデジタル移相器の実施例1の移相量の分布を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係るデジタル移相器の実施例2の移相量の分布を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係るデジタル移相器の実施例3の移相量の分布を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係るデジタル移相器の接続部を示す回路図である。
【
図12】第3実施形態に係るデジタル移相器の接続部を示す回路図である。
【
図13】第4実施形態に係るデジタル移相器の接続部を示す回路図である。
【
図14】第5実施形態に係る緩和回路のうちの第1緩和回路を説明する図である。
【
図15】第5実施形態に係る緩和回路のうちの第2緩和回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるデジタル移相器について詳細に説明する。尚、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法を適宜変えて図示している。
【0021】
(第1実施形態)
〈デジタル移相器〉
図1は、第1実施形態に係るデジタル移相器100を示す回路図である。
図1に示す通り、第1実施形態のデジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10(10-1~10-40)と、複数の接続部20(20-1~20-3)と、を備える。このようなデジタル移相器100は、所定の周波数帯域の信号Sを、縦続接続された複数のデジタル移相回路10によって移相する。信号Sは、マイクロ波、 準ミリ波、又はミリ波等の周波数帯域を有する高周波信号である。
【0022】
複数のデジタル移相回路10は、電気的に縦続接続されている。
図1では、40個のデジタル移相回路10(10-1~10-40)が縦続接続されている例を図示しているが、縦続接続されるデジタル移相回路10の数は任意である。
図1に示す例では、説明の便宜上、縦続接続されている40個のデジタル移相回路10を、
図1において実線矢印で示す信号Sが流れる順番に、デジタル移相回路10-1,10-2,…,10-40としている。但し、信号Sが流れる方向は、
図1において点線矢印で示すように逆でもよい。
【0023】
ここで、デジタル移相回路10は、複数個を単位としてデジタル移相回路群30を構成する。具体的に、1番目から10番目までのデジタル移相回路10-1~10-10は、デジタル移相回路群30-1を構成し、11番目から20番目までのデジタル移相回路10-11~10-20は、デジタル移相回路群30-2を構成する。また、21番目から30番目までのデジタル移相回路10-21~10-30は、デジタル移相回路群30-3を構成し、31番目から40番目までのデジタル移相回路10-31~10-40は、デジタル移相回路群30-4を構成する。
【0024】
換言すると、デジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10-1~10-10が縦続接続されたデジタル移相回路群30-1と、複数のデジタル移相回路10-11~10-20が縦続接続されたデジタル移相回路群30-2と、を有する。また、デジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10-21~10-30が縦続接続されたデジタル移相回路群30-3と、複数のデジタル移相回路10-31~10-40が縦続接続されたデジタル移相回路群30-4と、を有する。
【0025】
接続部20は、ベンド型の形状を有しており、2つのデジタル移相回路群30を接続する。
図1に示す例において、接続部20は、180°ベンドの形状を有している。具体的に、接続部20-1は、デジタル移相回路群30-1の信号Sが入力される一端とは反対側の他端と、デジタル移相回路群30-2の一端とを接続する。接続部20-2は、デジタル移相回路群30-2の他端と、デジタル移相回路群30-3の一端とを接続する。接続部20-3は、デジタル移相回路群30-3の他端と、デジタル移相回路群30-4の一端とを接続する。
【0026】
つまり、接続部20-1は、デジタル移相回路群30-1におけるデジタル移相回路10-10と、デジタル移相回路群30-2におけるデジタル移相回路10-11とを接続する。接続部20-2は、デジタル移相回路群30-2におけるデジタル移相回路10-20と、デジタル移相回路群30-3におけるデジタル移相回路10-21とを接続する。接続部20-3は、デジタル移相回路群30-3におけるデジタル移相回路10-30と、デジタル移相回路群30-4におけるデジタル移相回路10-31とを接続する。
【0027】
デジタル移相回路群30-1とデジタル移相回路群30-2とが接続部20-1によって接続されることにより、信号Sの経路が180°折り曲げられる。また、デジタル移相回路群30-2とデジタル移相回路群30-3とが接続部20-2によって接続されることにより、信号Sの経路が180°折り曲げられる。同様に、デジタル移相回路群30-3とデジタル移相回路群30-4とが接続部20-3によって接続されることにより、信号Sの経路が180°折り曲げられる。このように、デジタル移相回路群30-1~30-4は、互いに並行に配列され、接続部20-1~20-3を介してメアンダ状に接続されている。尚、接続部20の詳細については後述する。
【0028】
〈デジタル移相回路〉
図2は、第1実施形態に係るデジタル移相回路10を示す斜視図である。
図2に示す通り、デジタル移相回路10は、信号線路1、一対の内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)、一対の外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)、一対の接地導体4(第1の接地導体4a及び第2の接地導体4b)、コンデンサ5、複数の接続導体6、4つの電子スイッチ7(電子スイッチ7a,7b,7c,7d)、及びスイッチ制御部8を備える。
【0029】
信号線路1は、所定方向に延在する直線状の帯状導体である。即ち、信号線路1は、一定幅W1、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。
図2に示す例では、信号線路1には、手前側から奥側に向かって信号Sが流れる。
【0030】
第1の内側線路2aは、直線状の帯状導体である。即ち、第1の内側線路2aは、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第1の内側線路2aは、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。第1の内側線路2aは、信号線路1と平行に設けられており、信号線路1の一方側(
図1における右側)に所定の距離M1だけ離間している。
【0031】
第2の内側線路2bは、直線状の帯状導体である。即ち、第2の内側線路2bは、第1の内側線路2aと同様に、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第2の内側線路2bは、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。第2の内側線路2bは、信号線路1と平行に設けられており、信号線路1の他方側(
図1における左側)に所定の距離M1だけ離間している。
【0032】
第1の外側線路3aは、信号線路1の一方側において、第1の内側線路2aよりも信号線路1から遠い位置に設けられる直線状の帯状導体である。第1の外側線路3aは、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第1の外側線路3aは、信号線路1に対して第1の内側線路2aを挟んだ状態で信号線路1から所定距離を隔てて平行に設けられている。第1の外側線路3aは、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bと同様に、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0033】
第2の外側線路3bは、信号線路1の他方側において、第2の内側線路2bよりも信号線路1から遠い位置に設けられる直線状の帯状導体である。第2の外側線路3bは、第1の外側線路3aと同様に、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第2の外側線路3bは、信号線路1に対して第2の内側線路2bを挟んだ状態で信号線路1から所定距離を隔てて平行に設けられている。第2の外側線路3bは、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bと同様に、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0034】
第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bの各一端側に設けられる直線状の帯状導体である。第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bの各一端に電気的に接続されている。第1の接地導体4aは、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。
【0035】
第1の接地導体4aは、同一方向に延在する第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bに直交するように設けられている。第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bから所定距離を隔てた下方に設けられている。
【0036】
第1の接地導体4aは、左右方向における一端が第1の外側線路3aの右側縁部と略同一位置となるように設定されている。また、第1の接地導体4aは、左右方向における他端が第2の外側線路3bの左側縁部と略同一位置となるように設定されている。
【0037】
第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bの各他端側に設けられる直線状の帯状導体である。第2の接地導体4bは、第1の接地導体4aと同様に一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。
【0038】
第2の接地導体4bは、第1の接地導体4aに対して平行に配置されており、第1の接地導体4aと同様に、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bに直交するように設けられている。第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bから所定距離を隔てた下方に設けられている。
【0039】
第2の接地導体4bは、左右方向における一端が第1の外側線路3aの右側縁部と略同一位置となるように設定されている。また、第2の接地導体4bは、左右方向における他端が第2の外側線路3bの左側縁部と略同一位置となるように設定されている。即ち、第2の接地導体4bは、左右方向における位置が第1の接地導体4aと同一である。
【0040】
コンデンサ5は、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間に設けられる。例えば、コンデンサ5は、上部電極が信号線路1に対して接続され、下部電極が電子スイッチ7dに対して電気的に接続されている。例えば、コンデンサ5は、MIM(Metal Insulator Metal)構造の薄膜のコンデンサである。尚、コンデンサ5は、平行平板の対向面積に応じた静電容量を有する。但し、コンデンサ5は平行平板コンデンサに替えて、櫛歯型コンデンサを用いてもよい。
【0041】
複数の接続導体6は、少なくとも接続導体6a~6fを含む。接続導体6aは、第1の内側線路2aの一端と第1の接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6aは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の内側線路2aの下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0042】
接続導体6bは、第2の内側線路2bの一端と第1の接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6bは、接続導体6aと同様に上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の内側線路2bの下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0043】
接続導体6cは、第1の外側線路3aの一端と第1の接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6cは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の外側線路3aの一端における下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0044】
接続導体6dは、第1の外側線路3aの他端と第2の接地導体4bとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6dは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の外側線路3aの他端における下面に接続し、他端(下端)が第2の接地導体4bの上面に接続する。
【0045】
接続導体6eは、第2の外側線路3bの一端と第1の接地導体4aとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6eは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の外側線路3bの一端における下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0046】
接続導体6fは、第2の外側線路3bの他端と第2の接地導体4bとを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6fは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の外側線路3bの他端における下面に接続し、他端(下端)が第2の接地導体4bの上面に接続する。
【0047】
接続導体6gは、信号線路1の他端とコンデンサ5の上部電極とを電気的且つ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6gは、上下方向に延在する導体であり、一端(上端)が信号線路1の他端における下面に接続し、他端(下端)がコンデンサ5の上部電極に接続する。
【0048】
電子スイッチ7aは、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。電子スイッチ7aは、例えばMOS型FET(電界効果トランジスタ)であり、ドレイン端子が第1の内側線路2aの他端に電気的に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに電気的に接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に電気的に接続されている。
【0049】
電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。閉状態とは、ドレイン端子及びソース端子が導通している状態である。開状態とは、ドレイン端子及びソース端子が導通しておらず、電気的な接続が遮断している状態である。電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8の制御によって、第1の内側線路2aの他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0050】
電子スイッチ7bは、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。電子スイッチ7bは、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第2の内側線路2bの他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。
【0051】
電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8の制御によって、第2の内側線路2bの他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0052】
電子スイッチ7cは、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。電子スイッチ7cは、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が信号線路1の他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。尚、
図2に示す例では、電子スイッチ7cは、信号線路1の他端側に設けられているが、これに限定されず、信号線路1の一端側に設けられてもよい。尚、電子スイッチ7cは、必要がなければ使用しなくてもよい。
【0053】
電子スイッチ7cは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ7cは、スイッチ制御部8の制御によって、信号線路1の他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0054】
電子スイッチ7dは、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間において、コンデンサ5に対して直列に接続される。電子スイッチ7dは、例えばMOS型FETである。
図2に示す例では、電子スイッチ7dは、ドレイン端子がコンデンサ5の下部電極に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。
【0055】
電子スイッチ7dは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ7dは、スイッチ制御部8の制御によって、コンデンサ5の下部電極及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0056】
スイッチ制御部8は、複数の電子スイッチ7a,7b,7c,7dを制御する制御回路である。例えば、スイッチ制御部8は、4つの出力ポートを備えている。スイッチ制御部8は、各出力ポートから個別のゲート信号を出力して複数の電子スイッチ7の各ゲート端子に供給することにより複数の電子スイッチ7のそれぞれを個別に開状態又は閉状態に制御する。
【0057】
図2ではデジタル移相回路10の機械的構造が解り易いようにデジタル移相回路10を斜視した模式図を示しているが、実際のデジタル移相回路10は、半導体製造技術を利用することにより、多層構造物として形成される。
【0058】
一例として、デジタル移相回路10は、信号線路1、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a、及び第2の外側線路3bが第1の導電層に形成されている。第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bは、絶縁層を挟んで第1の導電層と対向する第2の導電層に形成されている。第1の導電層に形成された構成要素と第2の導電層に形成された構成要素とは、ビアホール(via hole)によって相互に接続される。複数の接続導体6は、絶縁層内に埋設されたビアホールに相当する。
【0059】
次に、本実施形態におけるデジタル移相回路10の動作について説明する。デジタル移相回路10は、動作モードとして、高遅延モードと低遅延モードとを有する。デジタル移相回路10は、高遅延モード又は低遅延モードで動作する。
【0060】
《高遅延モード》
図3は、第1実施形態に係るデジタル移相回路10の高遅延モードを説明する図である。高遅延モードは、信号Sに第1の位相差を発生させるモードである。高遅延モードでは、
図3に示す通り、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが開状態に制御され、電子スイッチ7dが閉状態に制御される。
【0061】
電子スイッチ7aが開状態に制御されることにより、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとの電気的な接続が遮断された状態となる。電子スイッチ7bが開状態に制御されることにより、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとの電気的な接続が遮断された状態となる。電子スイッチ7dが閉状態に制御されることにより、信号線路1の他端は、コンデンサ5を介して第2の接地導体4bに接続された状態となる。
【0062】
信号線路1に入力端(他端)から出力端(一端)に向かって信号Sが伝搬すると、信号Sとは逆方向である一端から他端に向かってリターン電流R1が流れる。高遅延モードでは、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが開状態であるため、リターン電流R1は、主として、
図3に示す通り、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bを流れる。
【0063】
高遅延モードでは、リターン電流R1が第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bを流れるため、低遅延モードと比較して、インダクタンス値が高い。高遅延モードでは、低遅延モードよりも大きな遅延量を得ることができる。また、電子スイッチ7dが閉状態になることで、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとがコンデンサ5で電気的に接続されるため、デジタル移相回路10の静電容量値も高い。よって、高遅延モードでは、低遅延モードよりも大きな遅延量を得ることができる。
【0064】
《低遅延モード》
図4は、第1実施形態に係るデジタル移相回路10の低遅延モードを説明する図である。低遅延モードは、信号Sに第1の位相差よりも小さい第2の位相差を発生させるモードである。低遅延モードでは、
図4に示す通り、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが閉状態に制御され、電子スイッチ7dが開状態に制御される。
【0065】
電子スイッチ7aが閉状態に制御されることにより、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとが電気的に接続された状態となる。電子スイッチ7bが閉状態に制御されることにより、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとが電気的に接続された状態となる。
【0066】
信号線路1に入力端(他端)から出力端(一端)に向かって信号Sが伝搬すると、信号Sとは逆方向である一端から他端に向かってリターン電流R2が流れる。低遅延モードでは、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bが閉状態であるため、リターン電流R2は、主として、
図4に示す通り、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bを流れる。
【0067】
低遅延モードでは、リターン電流R2が第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bを流れるため、高遅延モードと比較して、インダクタンス値が低い。低遅延モードでの遅延量は、高遅延モードでの遅延量よりも小さくなる。また、信号線路1の他端にはコンデンサ5が接続されているが、電子スイッチ7dが開状態であるため、コンデンサ5の静電容量は機能せず(信号線路1からは見えず)、コンデンサ5の静電容量に比べて極めて小さい寄生容量が存在するのみである。よって、低遅延モードでは、高遅延モードよりも小さい遅延量を得ることができる。
【0068】
ここで、低遅延モードでは、電子スイッチ7cが閉状態に制御されることにより、信号線路1の損失を意図的に増加させることも可能である。これは、低遅延モードにおける高周波信号の損失を高遅延モードにおける高周波信号の損失と同程度とするためのものである。
【0069】
即ち、低遅延モードにおける高周波信号の損失は、高遅延モードにおける高周波信号の損失よりも明確に小さい。この損失差は、動作モードを低遅延モードと高遅延モードとに切り替えた場合にデジタル移相回路10から出力される高周波信号の振幅差を招来させるものである。このような事情に対して、デジタル移相回路10では、低遅延モードで電子スイッチ7cを閉状態に制御することにより、上記振幅差を解消することもある。
【0070】
〈接続部〉
接続部20は、移相量調整機能を備える。なお、接続部20は、後述するように、デジタル移相回路10と同様に移相量を調整する機能を有するため、以下では接続部20-1を、中継デジタル移相回路10-41と称する場合がある。また、接続部20-2を、中継デジタル移相回路10-42と称し、接続部20-3を、中継デジタル移相回路10-43と称する場合がある。
【0071】
図5は、第1実施形態に係る接続部20を示す平面図である。
図6は、第1実施形態に係る接続部20を示す回路図である。尚、本実施形態のデジタル移相器100は、3つの接続部20(接続部20-1,20-2,20-3)を備えるが、3つの接続部20は同様の構成であるため、ここでは、接続部20-1について説明する。
図5,
図6に示す通り、接続部20-1は、接続線路23、及び、第1の接続回路51を備える。なお、本実施形態では、3つの接続部20(接続部20-1,20-2,20-3)を備えるが、移相量調整機能を有する接続部20は1つ以上あればよい。
【0072】
図5に示すように、接続線路23は、デジタル移相回路10-10の外側線路3と、デジタル移相回路10-11の外側線路3とを接続する。接続線路23は、一端がデジタル移相回路10-10の第1の外側線路3aに接続され、他端がデジタル移相回路10-11の第1の外側線路3aに接続される第1の接続線路23aを備える。尚、第1の外側線路3aは、上述した接地導体4を介して第1の内側線路2aと電気的に接続されている。第1の接続線路23aは、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。尚、第1の接続線路23aは、第1の外側線路3aより幅が大きいことが望ましい。
【0073】
また、接続線路23は、一端がデジタル移相回路10-10の第2の外側線路3bに接続され、他端がデジタル移相回路10-11の第2の外側線路3bに接続される第2の接続線路23bを備える。尚、第2の外側線路3bは、上述した接地導体4を介して第2の内側線路2bと電気的に接続されている。第2の接続線路23bは、第1の接続線路23aと所定の距離を隔てて平行に設けられている。第2の接続線路23bは、一定幅、一定厚、及び所定長さを有する長尺板状の導体である。尚、第2の接続線路23bは、第2の外側線路3bより幅が大きいとよい。
尚、
図5に示す例では、接続線路23と外側線路3が同じ層で接続されているが、接続線路23がビアを介して外側線路3と違う層で接続されていてもよい。すなわち、第1の接続線路23aと第1の外側線路3aとが電気的に接続されると共に、第2の接続線路23bと第2の外側線路3bとが電気的に接続されていればよい。
【0074】
第1の接続回路51は、デジタル移相回路10-10の信号線路1と、デジタル移相回路10-11の信号線路1と、を接続する。この第1の接続回路51は、接続部20において移相量を調整する。第1実施形態における第1の接続回路51は、
図6に示す、π型回路を構成している。第1の接続回路51は、コイル52と、コンデンサ53と、電子スイッチ54と、を備える。
【0075】
コイル52は、デジタル移相回路10-10の信号線路1と、デジタル移相回路10-11の信号線路1との間に直列接続されている。コイル52としては、例えば、スパイラルインダクタが好ましい。スパイラルインダクタは、接続部20のほぼ全区間を橋渡ししている。尚、コイル52としては、スパイラルインダクタ以外の、巻き線コイル、積層コイル、薄膜コイル等を用いてもよい。
【0076】
コンデンサ53は、コイル52の両側に並列接続されている。コンデンサ53は、例えば、MIM(Metal Insulator Metal)構造の薄膜のコンデンサを用いることができる。コンデンサ53は、平行平板の対向面積に応じた静電容量を有する。但し、コンデンサ53は平行平板コンデンサに替えて、櫛歯型コンデンサを用いてもよい。尚、一対のコンデンサ53の静電容量は、各々等しい。
【0077】
コンデンサ53は、上部電極がコイル52の端部に接続され、下部電極が電気的に接地されている。尚、コンデンサ53の下部電極は、近くに配置された接続線路23、デジタル移相回路10の内側線路2、外側線路3、接地導体4、その他のグランド(図示しないデジタル移相器100のフレームグランド等)のいずれかに接続されてもよい。
【0078】
図7は、第1実施形態に係る接続部20の変形例を示す平面図である。
図7に示す通り、コンデンサ53の下部電極53aは、デジタル移相回路10-10の第1の接地導体4aから、デジタル移相回路10-11の第2の接地導体4bまで延伸するグランド層3Aに接続されるものであってもよい。
【0079】
この変形例において、第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bは、多層で構成されている。グランド層3Aは、多層である接地導体の一つの層が延伸したものであり、デジタル移相回路10-10の外側線路3と、デジタル移相回路10-11の外側線路3とを接続する接続線路23を形成している。グランド層3Aのうち、コイル52及びコンデンサ53と重なる部分(金属)は除去され、切欠部3Bとなっている。
【0080】
この構成において、コンデンサ53は、切欠部3Bに配置され、下部電極53aがグランド層3Aに接続されている。尚、コンデンサ53の下部電極53aは、近くに配置されたデジタル移相回路10の内側線路2、外側線路3、接地導体4のいずれかに接続されてもよい。
【0081】
図6に戻り、電子スイッチ54は、一対のコンデンサ53の下部電極側の各々に設けられ、一対のコンデンサ53の下部電極側を接地させるか否かを切り替える。なお、電子スイッチ54は、コンデンサ53の上部電極側に設けられてもよい。電子スイッチ54は、コンデンサ53の下部電極とグランドとの間において、コンデンサ53に対して直列に接続される。電子スイッチ54は、例えばMOS型FETである。
【0082】
電子スイッチ54は、ドレイン端子がコンデンサ53の下部電極に接続され、ソース端子がグランドに接続され、ゲート端子が図示しないスイッチ制御部に接続されている。なお、電子スイッチ54のスイッチ制御部は、上述した
図2に示すデジタル移相回路10のスイッチ制御部8と独立した制御装置であってもよいし、共通の制御装置であってもよい。
【0083】
電子スイッチ54は、スイッチ制御部からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ54は、スイッチ制御部の制御によって、コンデンサ53の下部電極及びグランドを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。なお、電子スイッチ54は、バイポーラートランジスター(BJT)等であっても構わない。
【0084】
電子スイッチ54が閉状態になることで、コンデンサ53とグランドとが電気的に接続され、接続部20の静電容量が高くなる。これによって、電子スイッチ54が開状態のときよりも大きな遅延量を得ることができる(高遅延モード)。また、電子スイッチ54が開状態になることで、コンデンサ53と開状態の電子スイッチ54の寄生容量の直列合成容量が機能し、電子スイッチ54が閉状態のときよりも小さい遅延量を得ることができる(低遅延モード)。この低遅延モードのため、電子スイッチ54は、寄生容量を有する電子スイッチであって、上述したFET、BJTが好ましい。
【0085】
〈デジタル移相器の特性〉
図8は、第1実施形態に係るデジタル移相器100の実施例1の移相量の分布を示す図である。
図8に示すグラフは、横軸にデジタル移相回路10の番号をとり、縦軸にデジタル移相回路10毎の移相量をとってある。なお、
図8では、変則的であるが、横軸において、デジタル移相回路10-1~10-40の前に、接続部20(中継デジタル移相回路10-41~10-43)の移相量を図示している。なお、
図8に示す移相量分布は、中継デジタル移相回路10-41~10-43の順番で電子スイッチ54が開状態から閉状態になったときのものを示している。
【0086】
具体的に、
図8に示す移相量分布は、中継デジタル移相回路10-41~10-43及びデジタル移相回路10-1~10-40の全てが高遅延モードに設定されている状態から、中継デジタル移相回路10-41~10-43、デジタル移相回路10-1~10-40の順で、順次低遅延モードへ切り替え制御を行った場合に得られたものである。また、
図8に示す移相量分布は、信号Sの周波数が30[GHz]で、コイル52のインダクタンスが25.74[pH]、コンデンサ53の静電容量が42[fF]の場合のものである。デジタル移相器100の理想的な特性は、
図8に示すグラフの上部が平坦であること(移相量の分布がないこと)である。
【0087】
図8を参照すると、コンデンサ53の静電容量を42[fF]にした場合、接続部20(中継デジタル移相回路10-41~10-43)の移相量は、デジタル移相回路10-1~10-40と同等となることが分かる。したがって、この場合、接続部20(中継デジタル移相回路10-41~10-43)を含む、合計43個のユニットを移相回路として使用することができるし、デジタル移相回路10-1~10-40を通常使用した上で、接続部20(中継デジタル移相回路10-41~10-43)を調整用ユニットとして使用することができる。
【0088】
図9は、第1実施形態に係るデジタル移相器100の実施例2の移相量の分布を示す図である。実施例2は、コンデンサ53の静電容量が35[fF]の場合のものである。その他の条件は、
図8と同様である。
図9を参照すると、コンデンサ53の静電容量を35[fF]にした場合、接続部20(中継デジタル移相回路10-41~10-43)の移相量は、デジタル移相回路10-1~10-40の移相量よりも小さいものとなることが分かる。したがって、必要に応じて電子スイッチ54を閉状態とすることで、接続部20(中継デジタル移相回路10-41~10-43)を、移相量を小さくする調整用ユニットとして使用することができる。
【0089】
図10は、第1実施形態に係るデジタル移相器100の実施例3の移相量の分布を示す図である。実施例3は、コンデンサ53の静電容量が50[fF]の場合のものである。その他の条件は、
図8と同様である。
図10を参照すると、コンデンサ53の静電容量を50[fF]にした場合、接続部20(中継デジタル移相回路10-41~10-43)の移相量は、デジタル移相回路10-1~10-40の移相量よりも大きいものとなることが分かる。したがって、この場合、必要に応じて電子スイッチ54を閉状態とすることで、接続部20(中継デジタル移相回路10-41~10-43)を、移相量を大きくする調整用ユニットとして使用することができる。
なお、
図8~
図10に示す移相量の凸部や凹部は、後述する第5実施形態の緩和回路を適用することで緩和することができる。
【0090】
ところで、IC(集積回路)上に伝送線路を構成する場合、様々な設計ルールに制約され、とくに低い特性インピーダンスの伝送線路や高い特性インピーダンスの伝送線路の実現、あるいは高精度なインピーダンス制御を実現するのが難しいという問題がある。しかしながら、比較的長い距離信号を伝送するにはこれを用いるほかない。一方、ベンド型の接続部20(折り返し部)は、比較的短い距離における信号伝送に相当するため、上記第1の接続回路51を用いれば回路インピーダンスはコイル52やコンデンサ53により厳密に設計、実現することが可能となる。すなわち、回路インピーダンスは、ICのデザインルールではなく、コイル52のインダクタンスとコンデンサ53のキャパシタンスにより厳密に決定されるからである。また、コイル52の形状および構成(折り曲げ方やサイズなど)及び値は、自由度があるので比較的短い距離の結線目的に最適である。
【0091】
尚、第1の接続回路51の代わりに、デジタル移相回路10と同じ回路を、接続部20に搭載することも考えられるが、この構成では、接続部20が移相機能を有する半面、デジタル移相回路10の全長による制約のため、接続部20のサイズが大きくなるという問題がある。これは、あくまでベンド機能は、接続部20が担い、移相機能はデジタル移相回路10が担うという機能分離の思想によるものである。そこで、本実施形態では、接続部20にコイル52、コンデンサ53、及び電子スイッチ54を設け、ベンド機能と移相(調整)機能を統合させた。これにより、接続部20のサイズを大きくすることなく、移相量を調整することができる。つまり、接続部20が移相機能を発揮しない場合は電子スイッチ54を開状態にすることで、デジタル移相器100は、40ユニットの移相回路となる。また、接続部20が移相機能を発揮する場合は電子スイッチ54を閉状態にすることで、デジタル移相器100は、43ユニットの移相回路となる。
【0092】
以上の通り、本実施形態のデジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10が縦続接続された複数のデジタル移相回路群30と、2つのデジタル移相回路群30の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部20と、を備え、デジタル移相回路10は、信号線路1、信号線路1の両側に設けられた一対の内側線路2、一対の内側線路2の外側に設けられた一対の外側線路3、一対の内側線路2及び一対の外側線路3の各一端に接続された第1の接地導体4a、一対の外側線路3の各他端に接続された第2の接地導体4b、一対の内側線路2の各他端と第2の接地導体との間に各々設けられる一対の電子スイッチ7a,7b(第1の電子スイッチ)を少なくとも有し、一対の内側線路2にリターン電流が流れる低遅延モード又は一対の外側線路3にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、接続部20は、2つのデジタル移相回路10の、一方の回路の信号線路1と他方の回路の信号線路1とを接続する第1の接続回路51と、一方の回路の一対の外側線路3と他方の回路の一対の外側線路3とを電気的に接続する接続線路23と、を備え、第1の接続回路51は、一方の回路の信号線路1と他方の回路の信号線路1との間に直列接続されたコイル52(第1のコイル)と、コイル52の両側に並列接続された一対のコンデンサ53(第1のコンデンサ)と、一対のコンデンサ53の一端側の各々に設けられ、一対のコンデンサ53の一端側を接地させるか否かを切り替える一対の電子スイッチ54(第2の電子スイッチ)と、を備える。この構成によれば、接続部20において移相量を調整できる。
なお、本実施形態では、一対の電子スイッチ54をそれぞれ開状態または閉状態とする2パターンで移相量を調整したが、一対の電子スイッチ54の一方のスイッチが開状態で他方のスイッチが閉状態を含む3パターンで移相量を調整してもよい。
【0093】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0094】
〈デジタル移相器〉
図11は、第2実施形態に係るデジタル移相器100Aの接続部20を示す回路図である。
図11に示すように第2実施形態では、接続部20において、更に一対のコンデンサ55を備える点で、上記第1実施形態と異なる。
【0095】
一対のコンデンサ55は、一対のコンデンサ53の両側(IN側とOUT側)に並列接続されている。コンデンサ55は、例えば、上部電極が信号線路1とコイル52との接点に対して接続され、下部電極が電気的に接地されている。コンデンサ55の下部電極側には、コンデンサ53の下部電極側のように電子スイッチ54が設けられていない。コンデンサ55の静電容量は、コンデンサ53と等しくても、異なってもよい。尚、一対のコンデンサ55の静電容量は、各々等しい。
【0096】
以上の通り、第2実施形態のデジタル移相器100Aでは、接続部20は、一対のコンデンサ53の両側に並列接続された一対のコンデンサ55(第2のコンデンサ)を備える。この構成によれば、接続部20にベンド機能と移相(調整)機能を統合させると共に、常に移相調整回路として機能させることができる。これにより、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することが可能となる。
【0097】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0098】
〈デジタル移相器〉
図12は、第3実施形態に係るデジタル移相器100Bの接続部20を示す回路図である。
図12に示すように第3実施形態では、接続部20において、上述した第1の接続回路(π型回路)と同様に、回路インピーダンスを厳密に決定できる第2の接続回路61(T型回路)を備える点で、上記第1、第2実施形態と異なる。
【0099】
第2の接続回路61は、コンデンサ62と、一対のコイル63と、電子スイッチ64と、を備える。コンデンサ62は、一対のコイル63の間に並列接続されている。コンデンサ62は、上部電極が一対のコイル63の間に接続され、下部電極が電気的に接地されている。コイル63は、コンデンサ62の両側(IN側とOUT側)に一対で設けられ、2つのデジタル移相回路10の信号線路1の間に直列接続されている。コイル63としては、例えば、スパイラルインダクタが好ましい。尚、一対のコイル63のインダクタンスは、各々等しい。
【0100】
コンデンサ62の一端側には、電子スイッチ64が設けられている。電子スイッチ64は、コンデンサ62の一端側を接地させるか否かを切り替える。
図12に示す例では、コンデンサ62の下部電極側に、電子スイッチ64が設けられている。なお、電子スイッチ64は、コンデンサ62の上部電極側に設けられてもよい。電子スイッチ64は、コンデンサ62の下部電極とグランドとの間において、コンデンサ62に対して直列に接続される。電子スイッチ64は、例えばMOS型FETである。
【0101】
電子スイッチ64は、ドレイン端子がコンデンサ62の下部電極に接続され、ソース端子がグランドに接続され、ゲート端子が図示しないスイッチ制御部に接続されている。電子スイッチ64は、スイッチ制御部からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。電子スイッチ64は、スイッチ制御部の制御によって、コンデンサ62の下部電極及びグランドを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。なお、電子スイッチ64は、バイポーラートランジスター(BJT)等であっても構わない。
【0102】
電子スイッチ64が閉状態になることで、コンデンサ62とグランドとが電気的に接続され、接続部20の静電容量が高くなる。これによって、電子スイッチ64が開状態のときよりも大きな遅延量を得ることができる(高遅延モード)。また、電子スイッチ64が開状態になることで、コンデンサ62と開状態の電子スイッチ64の寄生容量の直列合成容量が機能し、電子スイッチ64が閉状態のときよりも小さい遅延量を得ることができる(低遅延モード)。この低遅延モードのため、電子スイッチ64は、寄生容量を有する電子スイッチであって、上述したFET、BJTが好ましい。
【0103】
以上の通り、第3実施形態のデジタル移相器100Bでは、接続部20は、2つのデジタル移相回路10の信号線路1の間に並列接続されたコンデンサ62(第3のコンデンサ)と、コンデンサ62の両側に直列接続された一対のコイル63(第2のコイル)と、コンデンサ62の一端側に設けられ、コンデンサ62の一端側を接地させるか否かを切り替える一対の電子スイッチ64(第3の電子スイッチ)と、を備える。この構成によれば、第1実施形態と同様に、接続部20において移相量を調整できる。
【0104】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0105】
〈デジタル移相器〉
図13は、第4実施形態に係るデジタル移相器100Cの接続部20を示す回路図である。
図13に示すように第4実施形態では、接続部20において、更にコンデンサ65を備える点で、上記第3実施形態と異なる。
【0106】
コンデンサ65は、一対のコイル63の間に並列接続されている。コンデンサ65は、上部電極が一対のコイル63の間に接続され、下部電極が電気的に接地されている。尚、コンデンサ65の上部電極は、コンデンサ62のIN側とOUT側のどちらに接続されてもよい。コンデンサ65の下部電極側には、コンデンサ62の下部電極側のように電子スイッチ64が設けられていない。コンデンサ65の静電容量は、コンデンサ62と等しくても、異なってもよい。
【0107】
以上の通り、第4実施形態のデジタル移相器100Cでは、接続部20は、一対のコイル63の間に並列接続されたコンデンサ65(第4のコンデンサ)を備える。この構成によれば、接続部20にベンド機能と移相(調整)機能を統合させると共に、常に移相調整回路として機能させることができる。これにより、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を平均化することが可能となる。
【0108】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0109】
第5実施形態では、上記移相量の分布の凸部や凹部を緩和するため、上述したデジタル移相回路10-1~10-40の少なくとも1つが、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布を緩和する緩和回路とされている。
緩和回路には、後述するように、第1緩和回路RC1と第2緩和回路RC2とがある。第1緩和回路RC1は、緩和回路(第1緩和回路RC1、第2緩和回路RC2)以外のデジタル移相回路10と比較して大きな移相量を有するデジタル移相回路10であって、上記の移相量の分布の凹部を緩和する回路である。第2緩和回路RC2は、緩和回路(第1緩和回路RC1、第2緩和回路RC2)以外のデジタル移相回路10と比較して小さな移相量を有するデジタル移相回路10であって、上記の移相量の分布の凸部を緩和する回路である。
【0110】
例えば
図8の場合、デジタル移相回路10-7~10-10は、第2緩和回路RC2とされてもよい。また、デジタル移相回路10-13~10-15は、第1緩和回路RC1とされてもよい。尚、緩和回路(第1緩和回路RC1、第2緩和回路RC2)の具体的構成については後述する。
【0111】
〈緩和回路〉
《第1緩和回路》
図14は、第5実施形態に係る緩和回路のうちの第1緩和回路RC1を説明する図である。第1緩和回路RC1の基本的な構成は、緩和回路(第1緩和回路RC1、第2緩和回路RC2)以外のデジタル移相回路10(以下、「標準デジタル移相回路ST」という)とほぼ同様である。但し、第1緩和回路RC1は、標準デジタル移相回路STと比較して大きな移相量を有するように、標準デジタル移相回路STとは若干構成が異なる。
【0112】
具体的に、第1緩和回路RC1は、以下に列挙する条件の少なくとも1つを満足する構成である。
・条件1:長さが標準デジタル移相回路STよりも長い
・条件2:信号線路1と内側線路2との距離が標準デジタル移相回路STよりも短い
・条件3:信号線路1と外側線路3との距離が標準デジタル移相回路STよりも長い
・条件4:コンデンサ5が標準デジタル移相回路STよりも大きい
・条件5:電子スイッチ7a,7bが標準デジタル移相回路STよりも大きい
【0113】
図14(a)は、上記の「条件1」を満足する第1緩和回路RC1を示す図である。
図14(a)に示す第1緩和回路RC1は、長さ(信号線路1、内側線路2、外側線路3等の長さ)Paが、標準デジタル移相回路STの長さPよりも長い。
【0114】
図14(b)は、上記の「条件2」を満足する第1緩和回路RC1を示す図である。
図14(b)に示す第1緩和回路RC1は、信号線路1と内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)との距離Qaが、標準デジタル移相回路STにおける信号線路1と内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)との距離Qよりも短い。
【0115】
図14(c)は、上記の「条件3」を満足する第1緩和回路RC1を示す図である。
図14(c)に示す第1緩和回路RC1は、信号線路1と外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)との距離Raが、標準デジタル移相回路STにおける信号線路1と外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)との距離Rよりも長い。
【0116】
図14(d)は、上記の「条件4」を満足する第1緩和回路RC1を示す図である。
図14(d)に示す第1緩和回路RC1は、コンデンサ5の大きさが、標準デジタル移相回路STにおけるコンデンサ5の大きさよりも大きい。尚、図示は省略しているが、上記の「条件5」を満足する第1緩和回路RC1は、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7b(
図2~4参照)の大きさが、標準デジタル移相回路STの電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bの大きさよりも大きい。
【0117】
第1緩和回路RC1は、上述の通り、標準デジタル移相回路STと比較して大きな移相量を有する。このため、標準デジタル移相回路STに代えて第1緩和回路RC1を用いることで、移相量を大きくすることができる。従って、例えば、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布が凹部を有している場合には、第1緩和回路RC1を用いることで、その凹部を緩和することができる。
【0118】
《第2緩和回路》
図15は、第5実施形態に係る緩和回路のうちの第2緩和回路RC2を説明する図である。第2緩和回路RC2の基本的な構成は、第1緩和回路RC1と同様に、標準デジタル移相回路STとほぼ同様である。但し、第2緩和回路RC2は、標準デジタル移相回路STと比較して小さな移相量を有するように、標準デジタル移相回路STとは若干構成が異なる。
【0119】
具体的に、第2緩和回路RC2は、以下に列挙する条件の少なくとも1つを満足する構成である。
・条件1:長さが標準デジタル移相回路STよりも短い
・条件2:信号線路1と内側線路2との距離が標準デジタル移相回路STよりも長い
・条件3:信号線路1と外側線路3との距離が標準デジタル移相回路STよりも短い
・条件4:コンデンサ5が標準デジタル移相回路STよりも小さい
・条件5:電子スイッチ7a,7bが標準デジタル移相回路STよりも小さい
【0120】
図15(a)は、上記の「条件1」を満足する第2緩和回路RC2を示す図である。
図15(a)に示す第2緩和回路RC2は、長さ(信号線路1、内側線路2、外側線路3等の長さ)Paが、標準デジタル移相回路STの長さPよりも短い。
【0121】
図15(b)は、上記の「条件2」を満足する第2緩和回路RC2を示す図である。
図15(b)に示す第2緩和回路RC2は、信号線路1と内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)との距離Qaが、標準デジタル移相回路STにおける信号線路1と内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)との距離Qよりも長い。
【0122】
図15(c)は、上記の「条件3」を満足する第2緩和回路RC2を示す図である。
図15(c)に示す第2緩和回路RC2は、信号線路1と外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)との距離Raが、標準デジタル移相回路STにおける信号線路1と外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)との距離Rよりも短い。
【0123】
図15(d)は、上記の「条件4」を満足する第2緩和回路RC2を示す図である。
図15(d)に示す第2緩和回路RC2は、コンデンサ5の大きさが、標準デジタル移相回路STにおけるコンデンサ5の大きさよりも小さい。尚、図示は省略しているが、上記の「条件5」を満足する第2緩和回路RC2は、電子スイッチ7a及び電子スイッチ7b(
図2~4参照)の大きさが、標準デジタル移相回路STの電子スイッチ7a及び電子スイッチ7bの大きさよりも小さい。
【0124】
第2緩和回路RC2は、上述の通り、標準デジタル移相回路STと比較して小さな移相量を有する。このため、標準デジタル移相回路STに代えて第2緩和回路RC2を用いることで、移相量を小さくすることができる。従って、例えば、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布が凸部を有している場合には、第2緩和回路RC2を用いることで、その凸部を緩和することができる。
【0125】
以上の通り、第5実施形態では、複数のデジタル移相回路10が縦続接続された複数のデジタル移相回路群30と、2つのデジタル移相回路群30の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部20とを備え、少なくとも1つのデジタル移相回路群30をなすデジタル移相回路10の少なくとも1つが、移相量の分布を緩和する緩和回路とされている。このため、接続部20の前後で生ずる微弱な反射に起因して生ずる移相量の分布をさらに緩和することができる。
【0126】
ここで、上記の緩和回路は、標準デジタル移相回路STと比較して大きな移相量を有するデジタル移相回路10である第1緩和回路RC1と、標準デジタル移相回路STと比較して小さな移相量を有するデジタル移相回路10である第2緩和回路RC2との少なくとも一方を含む。第1緩和回路RC1を用いることで移相量の分布の凹部を緩和することができ、第2緩和回路RC2を用いることで移相量の分布の凸部を緩和することができる。このように、第1緩和回路RC1と第2緩和回路RC2とを用いることで、移相量の分布が凹部を有するものであっても、凸部を有するものであっても対応することが可能である。
【0127】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、信号Sの周波数が30[GHz]である場合について説明したが、信号Sの周波数は、30[GHz]以外であってもよい。例えば、マイクロ波、 準ミリ波、又はミリ波等の周波数帯域における任意の周波数であってよい。
【0128】
また、上記実施形態では、デジタル移相回路10がコンデンサ5(第5のコンデンサ)を備える構成について説明したが、当該コンデンサ5が無い構成であっても構わない。この場合、コンデンサ5の下部電極に接続される電子スイッチ7d(第4の電子スイッチ)も無くても構わない。
【符号の説明】
【0129】
1…信号線路、2…内側線路、2a…第1の内側線路、2b…第2の内側線路、3…外側線路、3A…グランド層、3B…切欠部、3a…第1の外側線路、3b…第2の外側線路、4…接地導体、4a…第1の接地導体、4b…第2の接地導体、5…コンデンサ(第5のコンデンサ)、6…接続導体、6a~6f…接続導体、7…電子スイッチ、7a,7b…電子スイッチ(第1の電子スイッチ)、7c…電子スイッチ、7d…電子スイッチ(第4の電子スイッチ)、8…スイッチ制御部、10…デジタル移相回路、10-1~10-40…デジタル移相回路、10-41~10~43…中継デジタル移相回路、20…接続部、20-1~20-3…接続部、23…接続線路、23a…第1の接続線路、23b…第2の接続線路、30…デジタル移相回路群、30-1~30-4…デジタル移相回路群、51…第1の接続回路、52…コイル(第1のコイル)、53…コンデンサ(第1のコンデンサ)、54…電子スイッチ(第2のスイッチ)、55…コンデンサ(第2のコンデンサ)、61…第2の接続回路、62…コンデンサ(第3のコンデンサ)、63…コイル(第2のコイル)、64…電子スイッチ(第3のスイッチ)、65…コンデンサ(第4のコンデンサ)、100…デジタル移相器、100A~100C…デジタル移相器、R1…リターン電流、R2…リターン電流、RC1…第1緩和回路、RC2…第2緩和回路、S…信号、ST…標準デジタル移相回路
【手続補正書】
【提出日】2023-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデジタル移相回路が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、
2つの前記デジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、
前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の第1の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、
前記接続部は、
2つの前記デジタル移相回路の、一方の回路の前記信号線路と他方の回路の前記信号線路とを接続する第1の接続回路と、
前記一方の回路の前記一対の外側線路と前記他方の回路の前記一対の外側線路とを電気的に接続する接続線路と、を備え、
前記第1の接続回路は、
前記一方の回路の前記信号線路と前記他方の回路の前記信号線路との間に直列接続された第1のコイルと、
前記第1のコイルの両側に並列接続された一対の第1のコンデンサと、
前記一対の第1のコンデンサの一端側の各々に設けられ、前記一対の第1のコンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える一対の第2の電子スイッチと、を備え、
前記第2の電子スイッチは、寄生容量を有する、
デジタル移相器。
【請求項2】
前記接続部は、前記一対の第1のコンデンサの両側に並列接続された一対の第2のコンデンサを備える、
請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項3】
複数のデジタル移相回路が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、
2つの前記デジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、
前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の第1の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、
前記接続部は、
2つの前記デジタル移相回路の、一方の回路の前記信号線路と他方の回路の前記信号線路とを接続する第2の接続回路と、
前記一方の回路の前記一対の外側線路と前記他方の回路の前記一対の外側線路とを電気的に接続する接続線路と、を備え、
前記第2の接続回路は、
前記一方の回路の前記信号線路と前記他方の回路の前記信号線路との間に並列接続された第3のコンデンサと、
前記第3のコンデンサの両側に直列接続された一対の第2のコイルと、
前記第3のコンデンサの一端側に設けられ、前記第3のコンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える第3の電子スイッチと、を備え、
前記第3の電子スイッチは、寄生容量を有する、
デジタル移相器。
【請求項4】
前記接続部は、前記一対の第2のコイルの間に並列接続された第4のコンデンサを備える、
請求項3に記載のデジタル移相器。
【請求項5】
複数の前記デジタル移相回路の少なくとも1つは、移相量の分布を緩和する緩和回路とされている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項6】
前記デジタル移相回路は、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に接続される第5のコンデンサと、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に前記第5のコンデンサを接続するか否かを切り替える第4の電子スイッチと、を備える、 請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項7】
前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、多層で構成され、
多層である前記接地導体の一つの層は、前記一方の回路の前記第1の接地導体から前記他方の回路の前記第2の接地導体まで延伸して、前記接続線路を形成するグランド層である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項8】
前記グランド層は、切欠部を有する、
請求項7に記載のデジタル移相器。
【請求項9】
前記一対の内側線路は、第1の内側線路と、第2の内側線路と、を備え、
前記一対の外側線路は、前記第1の内側線路と電気的に接続される第1の外側線路と、前記第2の内側線路と電気的に接続される第2の外側線路と、を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデジタル移相回路が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、
2つの前記デジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、
前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の第1の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、
前記接続部は、
2つの前記デジタル移相回路の、一方の回路の前記信号線路と他方の回路の前記信号線路とを接続する第1の接続回路と、
前記一方の回路の前記一対の外側線路と前記他方の回路の前記一対の外側線路とを電気的に接続する接続線路と、を備え、
前記第1の接続回路は、
前記一方の回路の前記信号線路と前記他方の回路の前記信号線路との間に直列接続された第1のコイルと、
前記第1のコイルの両側に並列接続された一対の第1のコンデンサと、
前記一対の第1のコンデンサの一端側の各々に設けられ、前記一対の第1のコンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える一対の第2の電子スイッチと、を備え、
前記第2の電子スイッチは、寄生容量を有し、
前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、多層で構成され、
多層である前記接地導体の一つの層は、前記一方の回路の前記第1の接地導体から前記他方の回路の前記第2の接地導体まで延伸して、前記接続線路を形成するグランド層であり、
前記グランド層は、前記第1の接続回路と重なる部分を除去した切欠部を有し、
前記第1のコンデンサは、前記切欠部に配置され、その一端側が前記グランド層に接続されている、
デジタル移相器。
【請求項2】
前記接続部は、前記一対の第1のコンデンサの両側に並列接続された一対の第2のコンデンサを備える、
請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項3】
複数の前記デジタル移相回路の少なくとも1つは、移相量の分布を緩和する緩和回路とされている、
請求項1または2に記載のデジタル移相器。
【請求項4】
前記デジタル移相回路は、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に接続される第5のコンデンサと、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に前記第5のコンデンサを接続するか否かを切り替える第4の電子スイッチと、を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項5】
前記一対の内側線路は、第1の内側線路と、第2の内側線路と、を備え、
前記一対の外側線路は、前記第1の内側線路と電気的に接続される第1の外側線路と、前記第2の内側線路と電気的に接続される第2の外側線路と、を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデジタル移相回路が縦続接続された複数のデジタル移相回路群と、
2つの前記デジタル移相回路群の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、
前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記一対の内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記一対の内側線路及び前記一対の外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記一対の外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記一対の内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の第1の電子スイッチを少なくとも有し、前記一対の内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記一対の外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、
前記接続部は、
2つの前記デジタル移相回路の、一方の回路の前記信号線路と他方の回路の前記信号線路とを接続する第1の接続回路と、
前記一方の回路の前記一対の外側線路と前記他方の回路の前記一対の外側線路とを電気的に接続する接続線路と、を備え、
前記第1の接続回路は、
前記一方の回路の前記信号線路と前記他方の回路の前記信号線路との間に直列接続された第1のコイルと、
前記第1のコイルの両側に並列接続された一対の第1のコンデンサと、
前記一対の第1のコンデンサの一端側の各々に設けられ、前記一対の第1のコンデンサの一端側を接地させるか否かを切り替える一対の第2の電子スイッチと、を備え、
前記第2の電子スイッチは、寄生容量を有し、
前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体は、多層で構成され、
多層である前記接地導体の一つの層は、前記一方の回路の前記第1の接地導体から前記他方の回路の前記第2の接地導体まで延伸して、前記接続線路を形成するグランド層であり、
前記グランド層は、前記第1の接続回路と重なる部分を除去した切欠部を有し、
前記第1のコンデンサは、前記切欠部に配置され、その一端側が前記グランド層に接続されている、
デジタル移相器。
【請求項2】
前記接続部は、前記一対の第1のコンデンサの両側に並列接続された一対の第2のコンデンサを備える、
請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項3】
複数の前記デジタル移相回路の少なくとも1つは、移相量の分布を緩和する緩和回路とされている、
請求項1または2に記載のデジタル移相器。
【請求項4】
前記デジタル移相回路は、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に接続される第5のコンデンサと、
前記信号線路と前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の少なくとも一方との間に前記第5のコンデンサを接続するか否かを切り替える第4の電子スイッチと、を備える、
請求項1または2に記載のデジタル移相器。
【請求項5】
前記一対の内側線路は、第1の内側線路と、第2の内側線路と、を備え、
前記一対の外側線路は、前記第1の内側線路と電気的に接続される第1の外側線路と、前記第2の内側線路と電気的に接続される第2の外側線路と、を備える、
請求項1または2に記載のデジタル移相器。