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  • 特開-加熱装置 図1
  • 特開-加熱装置 図2
  • 特開-加熱装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030007
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20240229BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H05B3/10 A
B60H1/22 611C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132525
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中川 周
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 智紀
【テーマコード(参考)】
3K092
3L211
【Fターム(参考)】
3K092PP13
3K092PP15
3K092QB02
3K092RA02
3K092RA06
3K092RB04
3K092RB23
3K092RF11
3K092VV40
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211DA50
(57)【要約】
【課題】 熱媒体の加熱効率をより向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】 加熱装置は、中空構造を有しており、通電により発熱する第1発熱部材と、中空構造を有しており、通電により発熱する第2発熱部材と、第1発熱部材及び第2発熱部材が収容され、熱媒体が流れる流路を有する筐体と、を備える。流路は、熱媒体が、第1発熱部材の内周面から外周面に沿って通過した後、第2発熱部材の外周面から内周面に沿って通過するように構成されている、または、第1発熱部材の外周面から内周面に沿って通過した後、第2発熱部材の内周面から外周面に沿って通過するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有しており、通電により発熱する第1発熱部材と、
中空構造を有しており、通電により発熱する第2発熱部材と、
前記第1発熱部材及び前記第2発熱部材を収容し、熱媒体が流れる流路を有する筐体と、
を備え、
前記流路は、前記熱媒体が、
前記第1発熱部材の内周面から外周面に沿って通過した後、前記第2発熱部材の外周面から内周面に沿って通過するように構成されている、または、
前記第1発熱部材の前記外周面から前記内周面に沿って通過した後、前記第2発熱部材の前記内周面から前記外周面に沿って通過するように構成されている、
加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置であって、
前記流路は、下流側の断面積が上流側の断面積よりも小さい、加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱装置であって、
前記第2発熱部材は、前記第1発熱部材の上方に配置されており、
前記流路は、前記熱媒体が、前記第1発熱部材の前記内周面から前記外周面に沿って通過した後、前記第2発熱部材の前記外周面から前記内周面に沿って通過するように構成されており、
前記筐体の上面には、外部空間から前記第2発熱部材の前記外周面に沿う前記流路に達する貫通孔が形成されている、加熱装置。
【請求項4】
請求項1に記載の加熱装置であって、
前記第1発熱部材及び前記第2発熱部材は、カートリッジヒータである、加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、発熱部材の表面に沿って熱媒体が流れる流路が形成された筐体を備える加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中空構造を有する2つのセラミックヒータと、セラミックヒータを収容し、熱媒体が流れる流路を有する筐体と、を備える加熱装置が開示されている。この加熱装置では、熱媒体が、一方のセラミックヒータの内周面及び外周面に沿って通過した後、他方のセラミックヒータの内周面及び外周面に沿って通過する。特許文献1では、熱媒体がセラミックヒータの外周面だけでなく、内周面にも接するため、熱媒体を効率的に加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-126844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、中空構造を有する2つのセラミックヒータを用いているものの、依然として熱媒体の加熱効率の向上が要求されている。本明細書では、熱媒体を加熱する加熱装置において、熱媒体の加熱効率をより向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術の第1の態様では、加熱装置は、中空構造を有しており、通電により発熱する第1発熱部材と、中空構造を有しており、通電により発熱する第2発熱部材と、前記第1発熱部材及び前記第2発熱部材を収容し、熱媒体が流れる流路を有する筐体と、を備える。前記流路は、前記熱媒体が、前記第1発熱部材の内周面から外周面に沿って通過した後、前記第2発熱部材の外周面から内周面に沿って通過するように構成されている、または、前記第1発熱部材の前記外周面から前記内周面に沿って通過した後、前記第2発熱部材の前記内周面から前記外周面に沿って通過するように構成されている。
【0006】
上記の加熱装置では、熱媒体が、例えば、第1発熱部材の内周面に沿って流れた後、第1発熱部材の外周面に沿って流れ、その後、第2発熱部材の外周面に沿って流れた後、第2発熱部材の内周面に沿って流れる。このように、上記の加熱装置では、中空構造を有する第1発熱部材及び第2発熱部材の内周面及び外周面に沿って熱媒体が順に流れるので、熱媒体が発熱部材に接する時間(加熱される時間)が長く、熱媒体の温度が上昇し易い。したがって、加熱装置のサイズを大きくしたり、ワット密度を大きくすることなく、加熱効率を向上させることができる。
【0007】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記流路は、下流側の断面積が上流側の断面積よりも小さくてもよい。熱媒体が過度に加熱されると、熱媒体が沸騰する場合がある。熱媒体が沸騰すると、大きな気泡の発生や熱媒体を構成する成分の析出等により、熱媒体の加熱効率の低下や熱媒体の劣化が生じ得る。上記の構成では、下流側の流路の断面積が上流側の流路の断面積よりも小さい。流路の断面積が小さくなると、熱媒体の流速が大きくなる。流路の下流側の断面積を上流側の断面積よりも小さくすることにより、流路の下流側における熱媒体の流速が上昇し、発熱部材の温度上昇が抑制されるため、熱媒体の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0008】
第3の態様では、上記第1又は第2の態様において、前記第2発熱部材は、前記第1発熱部材の上方に配置されてもよい。前記流路は、前記熱媒体が、前記第1発熱部材の前記内周面から前記外周面に沿って通過した後、前記第2発熱部材の前記外周面から前記内周面に沿って通過するように構成されてもよい。前記筐体の上面には、外部空間から前記第2発熱部材の前記外周面に沿う前記流路に達する貫通孔が形成されてもよい。熱媒体が加熱されると、溶存酸素等が気泡となって発生する。気泡が生じると、熱媒体の加熱効率が低下し得る。上記の構成では、筐体の上面に、外部空間から第2発熱部材の外周面に沿う流路に達する貫通孔が形成されている。このため、この貫通孔を気泡の排出孔として利用することで、熱媒体とともに下流側(上方)に流れた気泡を、貫通孔を介して効率的に排除することができる。
【0009】
第4の態様では、上記第1から第3の態様のいずれか一つにおいて、前記第1発熱部材及び前記第2発熱部材は、カートリッジヒータであってもよい。カートリッジヒータは、熱が溜まり易いため、発熱部材(例えば、電熱線)等の寿命が低下し易い。しかしながら、第1発熱部材及び第2発熱部材は、中空構造を有しているので、放熱性が高く、発熱部材の寿命の低下を抑制することができる。このように、本明細書に開示の技術は、各発熱部材がカートリッジヒータである場合に、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る加熱装置の断面図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3】実施例に係る加熱装置の筐体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施例の加熱装置10について説明する。加熱装置10は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に搭載され、補助熱源や代替熱源として、車両用空調装置の冷凍回路を循環する冷媒(熱媒体)の加熱に用いられる。熱媒体は、例えば、エンジン冷却水や不凍液である。図1に示すように、加熱装置10は、第1発熱部材30と、第2発熱部材40と、第1発熱部材30及び第2発熱部材40が収容される筐体20と、を備えている。なお、図1の上下方向は、加熱装置10が実際に車両に搭載されて使用されるときの上下方向(鉛直方向)に一致している。
【0012】
第1発熱部材30及び第2発熱部材40は、通電により発熱する電熱線ヒータであり、図1に示すように、円筒形状を有する発熱部32及び継手部34を有している。図2に示すように、第1発熱部材30の発熱部32は、例えば、円筒形状のセラミックス35の外周にニクロム線等のコイル状の電熱線36を巻き付け、これをステンレス鋼製のパイプ37に挿入し、電熱線36とパイプ37の間を耐熱絶縁材(例えば、酸化マグネシウム)で封入することにより形成されている。すなわち、第1発熱部材30は、いわゆるカートリッジヒータである。継手部34は、例えば金属や耐熱性樹脂等により構成されており、図1に示すように、その一端が発熱部32の一端に接続されている。継手部34の外径は、発熱部32の外径よりも小さい。継手部34の内径は、発熱部32の内径と略等しい。第1発熱部材30は、中空構造を有している。
【0013】
図1に示すように、発熱部32(詳細には電熱線36)には、図示しない端子部を介してリード線80が接続されている。リード線80は、外部の図示しない電源装置に電気的に接続されている。このリード線80に通電することにより、電熱線36が発熱する。
【0014】
第2発熱部材40は、発熱部42と継手部44を有している。第2発熱部材40の発熱部42、継手部44、リード線82等の構成は、第1発熱部材30のそれぞれと同様である。
【0015】
筐体20は、略直方体形状を有しており、第1発熱部材30及び第2発熱部材40を収容する。筐体20は、例えば、アルミニウム等の金属や耐熱性樹脂等により構成されている。図3に示すように、筐体20はその内部に、第1発熱部材30を収容する空間S1と、第2発熱部材40を収容する空間S2を有している。空間S1及び空間S2は、略円柱形状を有している。空間S1の直径(図3の上下方向の長さ)は、第1発熱部材30の発熱部32の外径よりも大きい。空間S2の直径(図3の上下方向の長さ)は、第2発熱部材40の発熱部42の外径よりも大きい。空間S1と空間S2は、連通孔91によって接続されている。また、筐体20の上面20aには、外部空間から空間S2に達する貫通孔90が形成されている。貫通孔90の中心軸と連通孔91の中心軸は一致している。貫通孔90には、継手部92が接続されている。図示していないが、継手部92は、バルブを介して、熱媒体を貯留する貯留槽に接続されている。
【0016】
第1発熱部材30を筐体20に収容するときには、バックアップリング60を介して第1発熱部材30の発熱部32を筐体20の挿入孔68に挿通させる。そして、第1発熱部材30を空間S1に挿入した状態で、Oリング62を介して蓋52により挿入孔68を閉塞し、締結部材54(例えば、ねじ)により、蓋52を筐体20に固定する。これにより、第1発熱部材30が筐体20に収容された状態となる。第2発熱部材40を筐体20に収容するときには、第1発熱部材30と同様に、バックアップリング64を介して発熱部42を筐体20の挿入孔69に挿通させ、第2発熱部材40を空間S2に挿入した状態で、Oリング66を介して蓋56により挿入孔69を閉塞し、締結部材58により蓋56を筐体20に固定する。これにより、第2発熱部材40が筐体20に収容された状態となる。
【0017】
このようにして構成された加熱装置10の内部には、図1に示すように、第1発熱部材30の継手部34側の端部を流入口110とし、第2発熱部材40の継手部44側の端部を流出口120とする流路P1~P5が形成される。流路P1は、第1発熱部材30の内周面30aに沿って形成されている。流路P2は、第1発熱部材30の外周面30bに沿って形成されている。流路P3は、筐体20の連通孔91を通過しており、流路P2と流路P4を接続している。流路P4は、第2発熱部材40の外周面40bに沿って形成されている。流路P5は、第2発熱部材40の内周面40aに沿って形成されている。本実施例では、流路P1~P5の断面積は、互いに略等しい。流入口110から加熱装置10に流入した熱媒体は、図1の矢印で示すように、流路P1、P2、P3、P4、P5の順に加熱装置10の内部を流れ、流路P1~P5を流れる過程で各発熱部材30、40により加熱され、流出口120から外部に流出する。
【0018】
以上に説明したように、本実施例の加熱装置10では、流入口110から流入した熱媒体は、第1発熱部材30の内周面30aに沿って流路P1を流れた後、第1発熱部材30の外周面30bに沿って流路P2を流れ、その後、連通孔91(流路P3)を介して、第2発熱部材40の外周面40bに沿って流路P4を流れた後、第2発熱部材40の内周面40aに沿って流路P5を流れ、流出口120から流出する。このように、本実施例の加熱装置10では、熱媒体が、第1発熱部材30の内周面30a及び外周面30bと、第2発熱部材40の外周面40b及び内周面40aとに沿う各流路P1~P5を順に流れるので、熱媒体が各発熱部32、42に接する時間(加熱される時間)が長く、熱媒体の温度が上昇し易い。したがって、加熱装置10のサイズを大きくしたり、ワット密度(発熱部32、42の単位面積当たりの電力)を大きくすることなく、熱媒体の加熱効率を向上させることができる。
【0019】
また、本実施例の加熱装置10は、筐体20の上面20aに、外部空間と流路P4を連通する貫通孔90が形成されており、加熱装置10を使用するときに、第2発熱部材40が、第1発熱部材30の上方に位置する向きで車両に搭載される。加熱装置10では、熱媒体が加熱されると、溶存酸素等が気泡となって発生する。気泡が生じると、熱媒体の加熱効率が低下し得る。熱媒体中に生じた気泡は、加熱装置10の内部を上方に流動する。したがって、本実施例の加熱装置10では、筐体20の上面20a(すなわち、流路の最上部)に設けられた貫通孔90を気泡の排出孔として利用することで、当該貫通孔90を介して気泡を効率的に排除することができる。
【0020】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下、上述した実施例の変形例を以下に列挙する。
【0021】
上述した実施例では、熱媒体が、第1発熱部材30の内周面30aから外周面30bに沿って通過した後、第2発熱部材40の外周面40bから内周面40aに沿って通過するように構成されていた。すなわち、熱媒体が、加熱装置10の内部を、流路P1、P2、P3、P4、P5の順に通過する構成であった。しかしながら、熱媒体は、第1発熱部材30の外周面30bから内周面30aに沿って通過した後、第2発熱部材40の内周面40aから外周面40bに沿って通過するように構成されていてもよい。すなわち、熱媒体は、加熱装置10の内部を、流路P2、P1、P5、P4の順に通過してもよい。例えば、上述した加熱装置10において、筐体20の下面に外部から流路P2に熱媒体を流入させる流入口(不図示)を形成する。さらに、連通孔91を閉塞すると共に、流入口110と流出口120を管部材(不図示)により接続する。これにより、貫通孔90を熱媒体の流出口として、筐体20の下面に形成した流入口から貫通孔90まで、流路P2、P1、P5、P4の順に熱媒体を通過させることができる。
【0022】
また、上述した実施例では、流路P1~P5の断面積が互いに等しかったが、下流側に位置する流路の断面積が上流側に位置する流路の断面積よりも小さくてもよい。例えば、流路P5の断面積が、他の流路P1~P4の断面積よりも小さくてもよい。また例えば、流路P1、P2、P3、P4、P5が、この順に小さくなる断面積を有していてもよい。このような構成では、下流側の流路における熱媒体の流速が、上流側の流路における熱媒体の流速よりも大きくなる。熱媒体が過度に加熱されると、熱媒体が沸騰する場合がある。熱媒体が沸騰すると、大きな気泡の発生や熱媒体を構成する成分の析出等により、熱媒体の加熱効率の低下や熱媒体の劣化が生じ得る。本変形例では、流路の下流側の断面積を上流側の断面積よりも小さくすることにより、流路の下流側における熱媒体の流速が上昇し、発熱部材の温度上昇が抑制されるため、熱媒体の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0023】
また、上述した実施例では、図1の上下方向が、鉛直方向に一致する方向で加熱装置10を使用する場合について説明した。しかしながら、加熱装置10を使用するときの加熱装置10の姿勢はこれに限られない。例えば、第1発熱部材30と第2発熱部材40が、水平方向に位置する姿勢で加熱装置10を使用してもよい。
【0024】
また、上述した実施例において、貫通孔90は設けられていなくてもよい。また、上述した実施例では、第1発熱部材30及び第2発熱部材40が、カートリッジヒータである例について説明したが、第1発熱部材30及び第2発熱部材40は、いわゆるセラミックヒータであってもよい。
【0025】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
10:加熱装置、20:筐体、20a:上面、30:第1発熱部材、30a:内周面、30b:外周面、40:第2発熱部材、40a:内周面、40b:外周面、90:貫通孔、91:連通孔
図1
図2
図3