(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003001
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20231228BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20231228BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20231228BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20231228BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08K3/00
C09J7/35
C08J7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176598
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2023507134の分割
【原出願日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021042917
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池平 秀
(57)【要約】
【課題】ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できる樹脂シートの提供。
【解決手段】支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、(B)成分中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である、樹脂シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、
樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、
(B)成分中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である、樹脂シート。
【請求項2】
樹脂組成物層中の(D)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上である、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
樹脂組成物層中の(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量(質量%)の値と(C)成分の比表面積(m2/g)の値との積が、300以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項5】
(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である、請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項6】
(B)成分中の沸点220℃以上の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~10質量%である、請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項7】
(B)成分中の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である、請求項1~6の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項8】
(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である、請求項1~7の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項9】
(D)成分が、ポリブタジエン構造及びポリカーボネート構造から選ばれる1種以上の構造を有する樹脂を含む非粒子状の応力緩和材を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項10】
(D)成分が、粒子状の応力緩和材を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項11】
粒子状の応力緩和材の平均粒径が、10,000nm以下である、請求項10に記載の樹脂シート。
【請求項12】
樹脂組成物層が、(E)硬化剤をさらに含む、請求項1~11の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項13】
(E)成分が、活性エステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤を含む、請求項12に記載の樹脂シート。
【請求項14】
(E)成分が、活性エステル系硬化剤を含む、請求項13に記載の樹脂シート。
【請求項15】
樹脂組成物層が、(F)硬化促進剤をさらに含む、請求項1~14の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項16】
樹脂組成物層が、(G)ラジカル重合性化合物をさらに含む、請求項1~15の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項17】
(G)成分が、マレイミド基を有する、請求項16に記載の樹脂シート。
【請求項18】
支持体と接しない面を外気に露出し190℃で30分間加熱処理した後の樹脂組成物層の重量減少率が、1質量%~10質量%となる、請求項1~17の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項19】
樹脂組成物層の硬化後の誘電正接(Df)が、10GHz、23℃で測定した場合、0.0090以下である、請求項1~18の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項20】
樹脂組成物層の100℃における溶融粘度が、50,000poise以下である、請求項1~19の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項21】
下記(I)及び(II)の工程を含むプリント配線板の製造方法。
(I)請求項1~20の何れか1項に記載の樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程
【請求項22】
(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、
(B)成分中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物(層)を有する樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、一般に、絶縁層は樹脂組成物を硬化させて形成される。近年、絶縁層の誘電正接をより低く抑えることが求められている。
【0003】
これまでに、絶縁層を形成するための樹脂組成物として、無機充填材を配合したエポキシ樹脂組成物を用いることにより、絶縁層の誘電正接をより低く抑えることができることが知られている。また、応力緩和材を配合することで、樹脂組成物の硬化後の反りを抑制できることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、応力緩和材や無機充填材を配合したエポキシ樹脂組成物を用いた場合、応力緩和材がエポキシ樹脂組成物下で相溶性が悪いこと、無機充填材により溶融粘度が高くなることなどから、ラミネート後のムラの発生が課題となっていた(ラミネート後のムラの詳細については試験例4を参照)。
【0006】
本発明の課題は、ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できる樹脂シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、(B)成分中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である樹脂組成物(層)を有する樹脂シートを用いることにより、意外にも、ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、
樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、
(B)成分中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である、樹脂シート。
[2] 樹脂組成物層中の(D)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上である、上記[1]に記載の樹脂シート。
[3] 樹脂組成物層中の(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂シート。
[4] 樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量(質量%)の値と(C)成分の比表面積(m2/g)の値との積が、300以上である、上記[1]~[3]の何れかに記載の樹脂シート。
[5] (B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である、上記[1]~[4]の何れかに記載の樹脂シート。
[6] (B)成分中の沸点220℃以上の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~10質量%である、上記[1]~[5]の何れかに記載の樹脂シート。
[7] (B)成分中の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である、上記[1]~[6]の何れかに記載の樹脂シート。
[8] (B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である、上記[1]~[7]の何れかに記載の樹脂シート。
[9] (D)成分が、ポリブタジエン構造及びポリカーボネート構造から選ばれる1種以上の構造を有する樹脂を含む非粒子状の応力緩和材を含む、上記[1]~[8]の何れかに記載の樹脂シート。
[10] (D)成分が、粒子状の応力緩和材を含む、上記[1]~[9]の何れかに記載の樹脂シート。
[11] 粒子状の応力緩和材の平均粒径が、10,000nm以下である、上記[10]に記載の樹脂シート。
[12] 樹脂組成物層が、(E)硬化剤をさらに含む、上記[1]~[11]の何れかに記載の樹脂シート。
[13] (E)成分が、活性エステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤を含む、上記[12]に記載の樹脂シート。
[14] (E)成分が、活性エステル系硬化剤を含む、上記[13]に記載の樹脂シート。
[15] 樹脂組成物層が、(F)硬化促進剤をさらに含む、上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂シート。
[16] 樹脂組成物層が、(G)ラジカル重合性化合物をさらに含む、上記[1]~[15]の何れかに記載の樹脂シート。
[17] (G)成分が、マレイミド基を有する、上記[16]に記載の樹脂シート。
[18] 支持体と接しない面を外気に露出し190℃で30分間加熱処理した後の樹脂組成物層の重量減少率が、1質量%~10質量%となる、上記[1]~[17]の何れかに記載の樹脂シート。
[19] 樹脂組成物層の硬化後の誘電正接(Df)が、10GHz、23℃で測定した場合、0.0090以下である、上記[1]~[18]の何れかに記載の樹脂シート。
[20] 樹脂組成物層の100℃における溶融粘度が、50,000poise以下である、上記[1]~[19]の何れかに記載の樹脂シート。
[21] 下記(I)及び(II)の工程を含むプリント配線板の製造方法。
(I)上記[1]~[20]の何れかに記載の樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程
[22] (A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、
(B)成分中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である、樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂シートによれば、ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0011】
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物(層)と、を有する。
【0012】
<樹脂組成物(層)>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)の厚さは、特に限定されるものではないが、薄型化の観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。樹脂組成物(層)の厚さの下限は、特に限定されないが、例えば、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0013】
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、(B)成分中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である。このような樹脂シートを用いることにより、ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できる。
【0014】
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材の他に、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(E)硬化剤、(F)硬化促進剤、(G)ラジカル重合性化合物、(H)熱可塑性樹脂、及び(I)その他の添加剤が挙げられる。以下、本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0015】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、(A)エポキシ樹脂を含有する。(A)エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する硬化性樹脂である。
【0016】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0018】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との両方を含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との両方を含んでいることが好ましい。
【0019】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族グリシジルエーテル、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製の「EX-992L」、三菱ケミカル社製の「YX7400」、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-991L」(アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」、「JP-400」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「EG-280」(フルオレン構造含有エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製「EX-201」(環状脂肪族グリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0022】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0023】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(A)エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(固体状エポキシ樹脂:液状エポキシ樹脂)は、好ましくは10:1~1:50、より好ましくは2:1~1:20、特に好ましくは1:1~1:10である。
【0026】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~2,000g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~1,000g/eq.、さらにより好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0027】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0028】
樹脂組成物(層)中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。樹脂組成物(層)中の(A)エポキシ樹脂の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。
【0029】
<(B)有機溶剤>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、(B)有機溶剤を含有する。ここで説明する(B)有機溶剤は、炭素原子及び酸素原子から選ばれる骨格原子で構成された分子内に炭素間二重結合及び炭素間三重結合(芳香環を構成する結合を除く)を含まない沸点250℃以下の液体化合物(常温(25℃)下において液体の化合物)である。また、ここで説明する(B)有機溶剤には、(A)エポキシ樹脂に該当するものを含めない。なお、本明細書中において沸点とは、常圧(1atm;760mmHg)下における沸点(すなわち標準沸点)を示す。(B)有機溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(B)有機溶剤としては、芳香族性溶剤及び非芳香族性溶剤が挙げられる。
【0031】
芳香族性溶剤は、芳香環を分子内に含む溶剤である。芳香族性溶剤としては、例えば、ベンゼン(沸点80℃)、トルエン(沸点110℃)、o-キシレン(沸点144℃)、m-キシレン(沸点139℃)、p-キシレン(沸点138℃)、エチルベンゼン(沸点136℃)等のC6-8芳香族炭化水素、1,2,3-トリメチルベンゼン(沸点176℃)、1,3,5-トリメチルベンゼン(沸点165℃)、1,2,4-トリメチルベンゼン(沸点169℃)、4-エチルトルエン(沸点161℃)、3-エチルトルエン(沸点160℃)、2-エチルトルエン(沸点166℃)等のC9芳香族炭化水素、1,2-ジエチルベンゼン(沸点184℃)、1,3-ジエチルベンゼン(沸点181℃)、1,4-ジエチルベンゼン(沸点183℃)、3-エチル-o-キシレン(沸点194℃)、4-エチル-o-キシレン(沸点190℃)、2-エチル-p-キシレン(沸点187℃)、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン(沸点198℃)等のC10芳香族炭化水素等の芳香族炭化水素系溶剤;アセトフェノン(沸点202℃)等の芳香族ケトン系溶剤;ベンジルアルコール(沸点205℃)、フェネチルアルコール(沸点219-221℃)等の芳香族アルコール系溶剤;アニソール(沸点154℃)、フェネトール(沸点169℃)等の芳香族エーテル系溶剤;安息香酸メチル(沸点198-200℃)、安息香酸エチル(沸点211-213℃)等の芳香族エステル系溶剤等が挙げられる。
【0032】
非芳香族性溶剤は、芳香環を分子内に含まない溶剤である。非芳香族性溶剤としては、例えば、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコールエーテルエステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、脂肪族ケトン系溶剤、脂肪族アルコール系溶剤、脂肪族エステル系溶剤、脂肪族エーテル系溶剤等が挙げられる。
【0033】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール(沸点197℃)、ジエチレングリコール(沸点244℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、トリメチレングリコール(沸点211-217℃)等が挙げられる。
【0034】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)(沸点124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ)(沸点135℃)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(別名プロピルセロソルブ)(沸点151℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ)(沸点171℃)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(別名イソブチルセロソルブ)(沸点160℃)、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(別名tert-ブチルセロソルブ)(沸点152℃)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点208℃)等のセロソルブ類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルカルビトール)(沸点193℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名カルビトール)(沸点196℃)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(別名プロピルカルビトール)(沸点212-216℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DB)(別名ブチルカルビトール)(沸点230℃)等のカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)(沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点132℃)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点150℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)等のプロピレングリコールエーテル類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点198℃)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点210℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエ-テル(沸点215℃)等のジプロピレングリコールエーテル類等が挙げられる。
【0035】
グリコールエーテルエステル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名メチルセロソルブアセテート)(沸点145℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート)(沸点156℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(別名ブチルセロソルブアセテート)(沸点191℃)等のセロソルブエステル類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)(別名カルビトールアセテート)(沸点217℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(別名ブチルカルビトールアセテート)(沸点247℃)等のカルビトールエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(沸点146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点160℃)等のプロピレングリコールエーテルエステル類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点200℃)等のジプロピレングリコールエーテルエステル類等が挙げられる。
【0036】
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、n-ペンタン(沸点36℃)、n-ヘキサン(沸点69℃)、2-メチルペンタン(別名イソヘキサン)(沸点60-62℃)、n-ヘプタン(沸点98℃)、n-オクタン(沸点125℃)、シクロペンタン(沸点49℃)、シクロヘキサン(沸点81℃)、メチルシクロヘキサン(沸点101℃)、エチルシクロヘキサン(沸点132℃)等が挙げられる。
【0037】
脂肪族ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン(沸点56℃)、メチルエチルケトン(MEK)(沸点79℃)、ジエチルケトン(沸点101℃)、2-ペンタノン(沸点101℃)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃)、2-ヘキサノン(沸点127℃)、2-ヘプタノン(MAK)(沸点151℃)、ジイソブチルケトン(沸点168℃)等の非環状ケトン類;シクロヘキサノン(Anone)(沸点155℃)、2-メチルシクロヘキサノン(沸点162℃)等の環状ケトン類が挙げられる。
【0038】
脂肪族アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール(沸点64℃)、エタノール(沸点78℃)、n-プロパノール(沸点97℃)、イソプロパノール(沸点82℃)、n-ブチルアルコール(沸点117℃)、イソブチルアルコール(沸点108℃)、sec-ブチルアルコール(沸点99℃)、tert-ブチルアルコール(沸点82℃)、n-ペンチルアルコール(沸点138℃)、イソペンチルアルコール(沸点131℃)、sec-ペンチルアルコール(沸点119℃)、tert-ペンチルアルコール(沸点102℃)、ネオペンチルアルコール(沸点113℃)、n-ヘキシルアルコール(沸点157℃)、n-ヘプチルアルコール(沸点175℃)、イソヘプチルアルコール(沸点159℃)、n-オクチルアルコール(沸点195℃)、2-エチルヘキシルアルコール(沸点184℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)等が挙げられる。
【0039】
脂肪族エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル(沸点57℃)、酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸n-プロピル(沸点96℃)、酢酸イソプロピル(沸点89℃)、酢酸n-ブチル(沸点126℃)、酢酸イソブチル(沸点118℃)、酢酸sec-ブチル(沸点112℃)、酢酸tert-ブチル(沸点97℃)、酢酸n-ペンチル(沸点149℃)、酢酸イソペンチル(沸点142℃)、プロピオン酸エチル(沸点99℃)、プロピオン酸プロピル(沸点122℃)、プロピオン酸イソプロピル(沸点108℃)等の脂肪酸アルキルエステル類;乳酸メチル(沸点144-145℃)、乳酸エチル(沸点151-155℃)、乳酸ブチル(沸点185-187℃)等のヒドロキシ酸アルキルエステル類;アセト酢酸メチル(沸点170℃)、アセト酢酸エチル(沸点184℃)等のケト酸アルキルエステル類;γ-ブチロラクトン(沸点204℃)等のラクトン類等が挙げられる。
【0040】
脂肪族エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル(沸点34℃)、ジイソプロピルエーテル(沸点68℃)、メチルtert-ブチルエーテル(沸点55℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、1,4-ジオキサン(沸点101℃)、1,3-ジオキソラン(沸点75℃)等が挙げられる。
【0041】
樹脂組成物(層)に含まれる(B)有機溶剤中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量は、樹脂組成物(層)に含まれる全(B)有機溶剤を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、誘電正接をより低く抑え、反りをより抑える観点から、好ましくは0質量%~7質量%、より好ましくは0質量%~5質量%、さらに好ましくは0質量%~3質量%、さらにより好ましくは0質量%~1質量%、特に好ましくは0質量%~0.1質量%である。
【0042】
樹脂組成物(層)に含まれる(B)有機溶剤中の芳香族性溶剤の含有量は、ムラの発生をより抑える観点から、樹脂組成物(層)に含まれる全(B)有機溶剤を100質量%とした場合、好ましくは0質量%~9質量%、より好ましくは0質量%~7質量%、さらに好ましくは0質量%~5質量%、さらにより好ましくは0質量%~3質量%、なお一層好ましくは0質量%~1質量%、特に好ましくは0質量%~0.1質量%である。
【0043】
樹脂組成物(層)に含まれる(B)有機溶剤中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物(層)に含まれる全(B)有機溶剤を100質量%とした場合、好ましくは0質量%~50質量%、より好ましくは0質量%~40質量%、さらに好ましくは0質量%~30質量%、さらにより好ましくは0質量%~20質量%、特に好ましくは0質量%~15質量%である。
【0044】
樹脂組成物(層)に含まれる(B)有機溶剤中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物(層)に含まれる全(B)有機溶剤を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上である。
【0045】
樹脂組成物(層)に含まれる(B)有機溶剤中の沸点220℃以上の有機溶剤の含有量は、樹脂組成物(層)に含まれる全(B)有機溶剤を100質量%とした場合、誘電正接をより低く抑え、反りをより抑える観点から、好ましくは0質量%~25質量%、より好ましくは0質量%~20質量%、さらに好ましくは0質量%~15質量%、さらにより好ましくは0質量%~10質量%、なお一層より好ましくは0質量%~5質量%、とりわけ好ましくは0質量%~1質量%、特に好ましくは0質量%~0.1質量%である。
【0046】
樹脂組成物(層)中の(B)有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の全成分を100質量%とした場合、誘電正接(Df)をより低く抑え、反りの発生をより抑える観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。樹脂組成物(層)中の(B)有機溶剤の含有量の下限は、より良好なラミネート性を達成する観点から、樹脂組成物(層)中の全成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。
【0047】
樹脂組成物(層)中の(B)有機溶剤の含有量は、樹脂シートにおいて、支持体と接しない面を外気に露出し190℃(常圧下)で30分間加熱処理した後の樹脂組成物層の重量減少率が、誘電正接(Df)をより低く抑え、反りの発生をより抑える観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは7質量%以下、その下限が、より良好なラミネート性を達成する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.4質量%以上、さらに好ましくは1.6質量%以上、特に好ましくは1.8質量%以上となるように設定し得る。
【0048】
<(C)無機充填材>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、(C)無機充填材を含有する。(C)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物(層)に含まれる。
【0049】
(C)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(C)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(C)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0051】
(C)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらにより好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。(C)無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上である。(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0052】
(C)無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。(C)無機充填材の比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、さらにより好ましくは30m2/g以下、特に好ましくは10m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0053】
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0054】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0055】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0056】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0057】
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0058】
樹脂組成物(層)中の(C)無機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下であり得る。樹脂組成物(層)中の(C)無機充填材の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、誘電正接をより低く抑える観点から、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、50質量%以上、さらにより好ましくは55質量%以上、60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上、70質量%以上である。
【0059】
樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)無機充填材の含有量(質量%)の値と(C)無機充填材の比表面積(m2/g)の値との積は、硬化時の反りをより抑制し、誘電正接をより低く抑える観点から、好ましくは230以上、より好ましくは250以上、さらに好ましくは280以上、特に好ましくは300以上である。
【0060】
<(D)応力緩和材>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、(D)応力緩和材を含有する。(D)応力緩和材は、柔軟性を有する樹脂を意味し、樹脂組成物(層)中で粒子の形態を維持する粒子状樹脂成分(粒子状の応力緩和材)、或いは樹脂組成物(層)に混和又は溶解する傾向のある非粒子状樹脂成分(非粒子状の応力緩和材)であり得、それらの一方のみが含まれていても又はそれらの両方が含まれていてもよく、それらを形成する樹脂成分は、樹脂そのものがゴム弾性を示す樹脂、又は他の成分と反応することによりゴム弾性を示す樹脂であり得る。ゴム弾性を示す樹脂としては、例えば、日本工業規格(JIS K7161)に準拠し、温度25℃、湿度40%RHにて、引っ張り試験を行った場合に、1GPa以下の弾性率を示す樹脂が挙げられる。
【0061】
粒子状の応力緩和材は、球状であることが好ましい。また、粒子状の応力緩和材は、粒子内部に空孔を有する中空粒子であっても、粒子内部に空孔を有さない非中空粒子であってもよい。中空粒子は、粒子内部に空孔を1個のみ有する単中空粒子であっても、粒子内部に複数の空孔を有する多中空粒子であってもよい。
【0062】
粒子状の応力緩和材は、例えば、ゴム成分を含むゴム粒子であり、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系エラストマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、イソプレン-イソブチレン共重合体、イソブチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン三元共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等のアクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等をゴム成分として含むゴム粒子であることが好ましい。さらにゴム成分には、ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴムを混合してもよい。ゴム粒子に含まれるゴム成分は、ガラス転移温度が例えば0℃以下であり、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。
【0063】
粒子状の応力緩和材は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、コア-シェル型ゴム粒子を含むことが好ましい。コア-シェル型ゴム粒子とは、上記で挙げたようなゴム成分を含むコア粒子と、それを覆う1層以上のシェル部からなる粒子状の応力緩和材である。さらに、コア-シェル型ゴム粒子は、上記で挙げたようなゴム成分を含むコア粒子と、コア粒子に含まれるゴム成分と共重合可能なモノマー成分をグラフト共重合させたシェル部からなるコア-シェル型グラフト共重合体ゴム粒子であることが好ましい。ここでいうコア-シェル型とは、必ずしもコア粒子とシェル部が明確に区別できるもののみを指しているわけではなく、コア粒子とシェル部の境界が不明瞭なものも含み、コア粒子はシェル部で完全に被覆されていなくてもよい。
【0064】
ゴム成分は、コア-シェル型ゴム粒子中に、40質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。コア-シェル型ゴム粒子中のゴム成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、コア粒子をシェル部で十分に被覆する観点から、例えば、95質量%以下、90質量%であることが好ましい。
【0065】
コア-シェル型ゴム粒子のシェル部を形成するモノマー成分は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミド;マレイミド;マレイン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;スチレン、4-ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル等を含み、中でも、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルを含むことがより好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸又はアクリル酸である。
【0066】
コア-シェル型ゴム粒子の市販品としては、例えば、チェイルインダストリーズ社製の「CHT」;UMGABS社製の「B602」;ダウ・ケミカル日本社製の「パラロイドEXL-2602」、「パラロイドEXL-2603」、「パラロイドEXL-2655」、「パラロイドEXL-2311」、「パラロイド-EXL2313」、「パラロイドEXL-2315」、「パラロイドKM-330」、「パラロイドKM-336P」、「パラロイドKCZ-201」、三菱レイヨン社製の「メタブレンC-223A」、「メタブレンE-901」、「メタブレンS-2001」、「メタブレンW-450A」「メタブレンSRK-200」、カネカ社製の「カネエースM-511」、「カネエースM-600」、「カネエースM-400」、「カネエースM-580」、「カネエースMR-01」;ガンツ化成製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
【0067】
粒子状の応力緩和材の平均粒径(平均一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。粒子状の応力緩和材の平均粒径(平均一次粒子径)の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは10,000nm以下、より好ましくは5,000nm以下、さらに好ましくは1,000nm以下である。粒子状の応力緩和材の平均粒径(平均一次粒子径)は、ゼータ電位粒度分布測定装置等を用いて測定できる。
【0068】
非粒子状の応力緩和材は、分子内にポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂を含むことが好ましく、ポリブタジエン構造及びポリカーボネート構造から選ばれる1種以上の構造を有する樹脂を含むことがより好ましく、ポリブタジエン構造及びフェノール性水酸基を有する樹脂(フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂)又はポリカーボネート構造を有する樹脂(ポリカーボネート樹脂)を含むことが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを指す。
【0069】
ポリブタジエン構造は、ブタジエンを重合して形成される構造だけでなく、当該構造に水素添加して形成される構造も含む。また、ポリブタジエン構造は、その一部のみが水素添加されていてもよく、その全てが水素添加されていてもよい。さらに、ポリブタジエン構造は、応力緩和材分子において、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
【0070】
ポリブタジエン樹脂の好ましい例としては、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。中でも、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、及びエポキシ基含有ポリブタジエン樹脂が更に好ましく、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂が特に好ましい。ここで、「水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂」とは、ポリブタジエン骨格の少なくとも一部が水素化された樹脂をいい、必ずしもポリブタジエン骨格が完全に水素化された樹脂である必要はない。水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂等が挙げられる。好ましいフェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂の例としては、例えば、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及びフェノール性水酸基含有樹脂を原料とするものが挙げられる。ここで、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン及びジイソシアネート化合物は下記の例示のものと同様のものが挙げられる。フェノール性水酸基含有樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0071】
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、ダイセル社製の「PB-3600」(エポキシ基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(エポキシ基含有ポリブタジエン)、クレイバレー社製の「Ricon 657」(エポキシ基含有ポリブタジエン)、「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、日本曹達社製の「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ダイセル社製の「PB3600」、「PB4700」(ポリブタジエン骨格エポキシ化合物)、「エポフレンドA1005」、「エポフレンドA1010」、「エポフレンドA1020」(スチレンとブタジエンとスチレンブロック共重合体のエポキシ化合物)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ化合物)、「R-45EPT」(ポリブタジエン骨格エポキシ化合物)等が挙げられる。
【0072】
また、好ましいポリブタジエン樹脂の例としては、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び多塩基酸またはその無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)も挙げられる。該ポリイミド樹脂のポリブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0073】
ヒドロキシル基末端ポリブタジエンの数平均分子量は、好ましくは500~5,000、より好ましくは800~3,500である。ヒドロキシル基末端ポリブタジエンの水酸基当量は、好ましくは250~5,000g/eq.、より好ましくは1,000~3,000g/eq.である。
【0074】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらの中で芳香族ジイソシアネートが好ましく、トルエン-2,4-ジイソシアネートがより好ましい。
【0075】
多塩基酸またはその無水物としては、例えば、エチレングリコールビストリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の四塩基酸およびこれらの無水物、トリメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸等の三塩基酸およびこれらの無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト(1,2-C)フラン-1,3-ジオン等が挙げられる。
【0076】
また、ポリブタジエン樹脂には、スチレンを重合して得られる構造を有するポリスチレン構造が含まれ得る。
【0077】
ポリスチレン構造を分子内に有する樹脂であるポリスチレン樹脂の具体例としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロックコポリマー、水添スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水添スチレン-ブタジエンランダム共重合体等が挙げられる。
【0078】
ポリスチレン樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、水添スチレン系熱可塑性エラストマー「H1041」、「タフテックH1043」、「タフテックP2000」、「タフテックMP10」(旭化成社製);エポキシ化スチレン-ブタジエン熱可塑性エラストマー「エポフレンドAT501」、「CT310」(ダイセル社製);ヒドロキシル基を有する変成スチレン系エラストマー「セプトンHG252」(クラレ社製);カルボキシル基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN503M」、アミノ基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN501」、酸無水物基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックM1913」(旭化成ケミカルズ社製);未変性スチレン系エラストマー「セプトンS8104」(クラレ社製)等を挙げることができる。(C)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
ポリシロキサン構造は、シロキサン結合を含む構造であり、例えばシリコーンゴムに含まれる。ポリシロキサン構造は、応力緩和材分子において、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
【0080】
ポリシロキサン構造を分子内に有する樹脂であるポリシロキサン樹脂の具体例としては、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサン、四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号)等が挙げられる。
【0081】
ポリ(メタ)アクリレート構造は、アクリル酸又はアクリル酸エステルを重合して形成される構造であり、メタクリル酸又はメタクリル酸エステルを重合して形成される構造も含む。(メタ)アクリレート構造は、応力緩和材分子において、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
【0082】
ポリ(メタ)アクリレート構造を分子内に有する樹脂であるポリ(メタ)アクリレート樹脂の好ましい例としては、ヒドロキシ基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂、フェノール性水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂、カルボキシ基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂、酸無水物基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂、イソシアネート基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン基含有ポリ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
【0083】
ポリ(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン「SG-70L」、「SG-708-6」、「WS-023」、「SG-700AS」、「SG-280TEA」(カルボキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、酸価5~34mgKOH/g、重量平均分子量40万~90万、Tg-30℃~5℃)、「SG-80H」、「SG-80H-3」、「SG-P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、エポキシ当量4761~14285g/eq、重量平均分子量35万~85万、Tg11℃~12℃)、「SG-600TEA」、「SG-790」」(ヒドロキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂、水酸基価20~40mgKOH/g、重量平均分子量50万~120万、Tg-37℃~-32℃)、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」(カルボキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)、「W-197C」(水酸基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)、「KG-25」、「KG-3000」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)等が挙げられる。
【0084】
ポリアルキレン構造は、所定の炭素原子数を有することが好ましい。ポリアルキレン構造の具体的な炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは5以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。また、ポリアルキレン構造は、応力緩和材分子において、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
【0085】
ポリアルキレンオキシ構造は、所定の炭素原子数を有することが好ましい。ポリアルキレンオキシ構造の具体的な炭素原子数は、好ましくは2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。ポリアルキレンオキシ構造は、応力緩和材分子において、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
【0086】
ポリアルキレン構造を分子内に有する樹脂であるポリアルキレン樹脂及びポリアルキレンオキシ構造を分子内に有する樹脂であるポリアルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」、三菱ケミカル社製の「YX-7180」(エーテル結合を有するアルキレン構造を含有する樹脂)、DIC Corporation社製の「EXA-4850-150」、「EXA-4816」、「EXA-4822」、ADEKA社製の「EP-4000」、「EP-4003」、「EP-4010」、「EP-4011」、新日本理化社製の「BEO-60E」、「BPO-20E」、三菱ケミカル社製の「YL7175」、「YL7410」等が挙げられる。
【0087】
ポリイソプレン構造は、応力緩和材分子において、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。ポリイソプレン構造を分子内に有する樹脂であるポリイソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL-613」等が挙げられる。
【0088】
ポリイソブチレン構造は、応力緩和材分子において、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。ポリイソブチレン構造を分子内に有する樹脂であるポリイソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0089】
ポリカーボネート構造は、応力緩和材分子において、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
【0090】
ポリカーボネート構造を分子内に有する樹脂であるポリカーボネート樹脂の好ましい例としては、ヒドロキシ基含有ポリカーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有ポリカーボネート樹脂、カルボキシ基含有ポリカーボネート樹脂、酸無水物基含有ポリカーボネート樹脂、エポキシ基含有ポリカーボネート樹脂、イソシアネート基含有ポリカーボネート樹脂、ウレタン基含有ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0091】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0092】
また、好ましいポリカーボネート樹脂の例としては、ヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び多塩基酸またはその無水物を原料とする線状ポリイミドも挙げられる。該線状ポリイミドは、ウレタン構造およびポリカーボネート構造を有する。該ポリイミド樹脂のポリカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0093】
ヒドロキシル基末端ポリカーボネートの数平均分子量は、好ましくは500~5,000、より好ましくは1,000~3,000である。ヒドロキシル基末端ポリカーボネートの水酸基当量は、好ましくは250~1,250である。
【0094】
非粒子状の応力緩和材は、さらにイミド構造を有することが好ましい。イミド構造を有することにより、非粒子状の応力緩和材の耐熱性を高めクラック耐性を効果的に高めることができる。
【0095】
非粒子状の応力緩和材は、直鎖状、分枝状、及び環状のいずれの構造であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0096】
非粒子状の応力緩和材は、さらにエポキシ樹脂と反応できる官能基を有することが好ましい。この官能基には、加熱によって現れる反応基も含まれる。非粒子状の応力緩和材が官能基を有することにより、樹脂組成物(層)の硬化物の機械的強度を向上させることができる。
【0097】
官能基としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、およびウレタン基などが挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、官能基としては、ヒドロキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基から選択される1種以上の官能基を有することが好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。
【0098】
非粒子状の応力緩和材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
非粒子状の応力緩和材の具体的な数平均分子量Mnは、好ましくは500以上、より好ましくは800以上、更に好ましくは1,000以上、特に好ましくは1,200以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、特に好ましくは10,000以下である。非粒子状の応力緩和材の数平均分子量Mnは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0100】
非粒子状の応力緩和材が官能基を有する場合、非粒子状の応力緩和材の官能基当量は、好ましくは100g/eq.以上、より好ましくは200g/eq.以上、更に好ましくは1,000g/eq.以上、特に好ましくは2,500g/eq.以上であり、好ましくは50,000g/eq.以下、より好ましくは30,000g/eq.以下、更に好ましくは10,000g/eq.以下、特に好ましくは5,000g/eq.以下である。官能基当量は、1グラム当量の官能基を含む樹脂のグラム数である。例えば、エポキシ基当量は、JIS K7236に従って測定することができる。また、例えば、水酸基当量はJIS K1557-1に従って測定した水酸基価でKOHの分子量を割ることで算出することができる。
【0101】
(D)応力緩和材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。
【0102】
樹脂組成物(層)中の(D)応力緩和材の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。樹脂組成物(層)中の(D)応力緩和材の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、反りの発生をより抑制する観点から、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。
【0103】
<(E)硬化剤>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、任意成分として(E)硬化剤を含有していてもよい。(E)硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。(E)硬化剤は、(A)エポキシ樹脂と反応して硬化させる機能を有し得る。ここで説明する(E)硬化剤は、上記で説明した(D)応力緩和材に該当するもの以外の成分である。
【0104】
(E)硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びチオール系硬化剤等が挙げられる。(E)硬化剤は、一実施形態において、誘電正接をより低く抑える観点から、活性エステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤を含むことが好ましく、活性エステル系硬化剤を含むことが特に好ましい。
【0105】
活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0106】
活性エステル系硬化剤としては、具体的には、ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、及びナフタレン型活性エステル化合物から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物が好ましい。
【0107】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル化合物として、「EXB9401」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0108】
フェノール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。また、被着体に対する密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「KA-1160」等が挙げられる。
【0109】
カルボジイミド系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する硬化剤が挙げられ、例えば、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。
【0110】
カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0111】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」、クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0112】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0113】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0114】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0115】
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0116】
(E)硬化剤の反応基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。反応基当量は、反応基1当量あたりの(E)硬化剤の質量である。
【0117】
樹脂組成物(層)中の(E)硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。樹脂組成物(層)中の(E)硬化剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.01質量%以上であり得、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり得る。
【0118】
<(F)硬化促進剤>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、任意成分として(F)硬化促進剤を含んでいてもよい。(F)硬化促進剤は、(B)エポキシ樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0119】
(F)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(F)硬化促進剤は、イミダゾール系硬化促進剤及びアミン系硬化促進剤から選ばれる硬化促進剤を含むことが好ましい。(F)硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0121】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0122】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0123】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0124】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2MZA-PW」、「2PHZ-PW」、「C11Z-A」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0125】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0126】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0127】
アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0128】
樹脂組成物(層)中の(F)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。樹脂組成物(層)中の(F)硬化促進剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上等であり得る。
【0129】
<(G)ラジカル重合性化合物>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、任意成分として(G)ラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。(G)ラジカル重合性化合物は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。ここで説明する(G)ラジカル重合性化合物は、上記で説明した(A)エポキシ樹脂、(D)応力緩和材、及び(E)硬化剤に該当するもの以外の成分である。
【0130】
(G)ラジカル重合性化合物は、一実施形態において、エチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物である。(G)ラジカル重合性化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、アリル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等のラジカル重合性基を有し得る。(G)ラジカル重合性化合物は、一実施形態において、マレイミド基を有することが好ましい。(G)ラジカル重合性化合物は、一実施形態において、ラジカル重合性基を2個以上有することが好ましい。
【0131】
(G)ラジカル重合性化合物は、第一の実施形態において、好ましくは、式(G-1):
【0132】
【0133】
[式中、R1は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;環A及び環Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;aは、1以上の整数を示す。]
で表されるマレイミド化合物を含む。a単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。第一の実施形態におけるマレイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0134】
本明細書中、置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリール-アルキル基(アリール基で置換されたアルキル基)、アルキル-アリール基(アルキル基で置換されたアリール基)、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アルキル-カルボニル基、アルケニル-カルボニル基、アリール-カルボニル基、アルキル-オキシ-カルボニル基、アルケニル-オキシ-カルボニル基、アリール-オキシ-カルボニル基、アルキル-カルボニル-オキシ基、アルケニル-カルボニル-オキシ基、アリール-カルボニル-オキシ基等の1価の置換基が挙げられ、置換可能であれば、オキソ基(=O)等の2価の置換基も含み得る。
【0135】
アルキル(基)とは、直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基を意味する。アルキル(基)は、特に指定がない限り、炭素原子数1~14のアルキル(基)が好ましく、炭素原子数1~10のアルキル(基)がより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル(基)がさらに好ましい。アルキル(基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。アルケニル(基)とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族不飽和炭化水素基を意味する。アルケニル(基)は、特に指定がない限り、炭素原子数2~14のアルケニル(基)が好ましく、炭素原子数2~10のアルケニル(基)がより好ましく、炭素原子数2~6のアルケニル基がさらに好ましい。アルケニル(基)としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。アリール(基)とは、芳香族炭素環の1個の水素原子を除いてなる1価の芳香族炭化水素基を意味する。アリール(基)は、特に指定がない限り、炭素原子数6~14のアリール(基)が好ましく、炭素原子数6~10のアリール(基)が特に好ましい。アリール(基)としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0136】
R1は、それぞれ独立して、アルキル基を示し、一実施形態において、好ましくは、メチル基である。環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、一実施形態において、好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくは、アルキル基から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環であり、さらに好ましくは、アルキル基から選ばれる基で置換されたベンゼン環である。環Bは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、一実施形態において、好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくは、アルキル基から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環であり、さらに好ましくは、(無置換の)ベンゼン環である。aは、1以上の整数を示し、好ましくは、1~20の整数である。
【0137】
第一の実施形態における(G)ラジカル重合性化合物は、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法又はそれに準ずる方法を用いて製造することができる。
【0138】
(G)ラジカル重合性化合物は、第二の実施形態において、好ましくは、式(G-2’):
【0139】
【0140】
[式中、環Cは、置換基を有していてもよいモノシクロアルカン環、又は置換基を有していてもよいモノシクロアルケン環を示し;b及びcは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、且つbとcの合計が6以上であり;*は、結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するマレイミド化合物を含む。第二の実施形態におけるマレイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0141】
モノシクロアルカン環とは、単環式の脂肪族飽和炭化水素環を意味する。モノシクロアルカン環は、炭素原子数4~14のモノシクロアルカン環が好ましく、炭素原子数4~10のモノシクロアルカン環がより好ましく、炭素原子数5又は6のモノシクロアルカン環が特に好ましい。モノシクロアルカン環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられる。モノシクロアルケン環とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する単環式の脂肪族不飽和炭化水素環を意味する。モノシクロアルケン環は、炭素原子数4~14のモノシクロアルケン環が好ましく、炭素原子数4~10のモノシクロアルケン環がより好ましく、炭素原子数5又は6のモノシクロアルケン環が特に好ましい。モノシクロアルケン環としては、例えば、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサジエン環等が挙げられる。
【0142】
環Cは、置換基を有していてもよいモノシクロアルカン環、又は置換基を有していてもよいモノシクロアルケン環を示す。環Cは、好ましくは、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基で置換されていてもよいモノシクロアルカン環;又はアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基で置換されていてもよいモノシクロアルケン環である。環Cは、より好ましくは、炭素原子数1~14のアルキル基及び炭素原子数2~14のアルケニル基から選ばれる基で置換されていてもよいモノシクロアルカン環;又は炭素原子数1~14のアルキル基及び炭素原子数2~14のアルケニル基から選ばれる基で置換されていてもよいモノシクロアルケン環である。
【0143】
b及びcは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、且つbとcの合計が6以上(好ましくは8以上、より好ましくは10以上)である。b及びcは、好ましくは、それぞれ独立して、0~20の整数であり、且つbとcの合計が6以上(好ましくは8以上、より好ましくは10以上)である。b及びcは、より好ましくは、それぞれ独立して、1~20の整数であり、且つbとcの合計が6以上(好ましくは8以上、より好ましくは10以上)である。b及びcは、さらに好ましくは、それぞれ独立して、5~10の整数である。b及びcは、特に好ましくは、8である。
【0144】
(G)ラジカル重合性化合物は、第二の実施形態において、特に好ましくは、式(G-2):
【0145】
【0146】
[式中、R2は、それぞれ独立して、置換基を示し;環Dは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;D1及びD2は、それぞれ独立して、単結合、-C(Rx)2-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し;Rxは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;dは、それぞれ独立して、0又は1を示し;eは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;fは、それぞれ独立して、0、1又は2を示し;nは、0又は1以上の整数を示し;その他の記号は上記と同様である。]
で表されるマレイミド化合物を含む。e単位、f単位及びn単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0147】
R2は、それぞれ独立して、置換基を示し、好ましくは、アルキル基である。環Dは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、好ましくは、アルキル基から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環である。D1及びD2は、それぞれ独立して、単結合、-C(Rx)2-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、好ましくは、単結合、-C(Rx)2-、又は-O-である。Rxは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。dは、それぞれ独立して、0又は1を示し、好ましくは0である。eは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、好ましくは0、1、2又は3であり、より好ましくは0、1又は2である。fは、それぞれ独立して、0、1又は2を示し、好ましくは0である。nは、0又は1以上の整数を示し、好ましくは、0である。
【0148】
式(G-2)中に含まれる式(D):
【0149】
【0150】
[式中、*は結合部位を示し;その他の記号は上記と同様である。]
で表される部分構造としては、特に限定されるものではないが、例えば、式(D-1)~(D-3):
【0151】
【0152】
[式中、*は上記と同様である。]
で表される部分構造が挙げられる。
【0153】
第二の実施形態における(G)ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-689」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」等が挙げられる。
【0154】
(G)ラジカル重合性化合物は、第一の実施形態において含まれる好適なマレイミド化合物、及び第二の実施形態において含まれる好適なマレイミド化合物を、いずれか単独で含んでいてもよいが、2種以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0155】
(G)ラジカル重合性化合物のラジカル重合性基当量は、好ましくは250g/eq.~2500g/eq.、より好ましくは300g/eq.~1500g/eq.である。(G)ラジカル重合性化合物のラジカル重合性基当量は、ラジカル重合性基1当量当たりの樹脂の質量を表す。
【0156】
(G)ラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300~40000、より好ましくは300~10000、特に好ましくは300~7000である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0157】
樹脂組成物(層)中の(G)ラジカル重合性化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。樹脂組成物(層)中の(G)ラジカル重合性化合物の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上である。
【0158】
<(H)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、さらに任意成分として(H)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。ここで説明する(H)熱可塑性樹脂は、上記で説明した(A)エポキシ樹脂、(D)応力緩和材、(E)硬化剤、及び(G)ラジカル重合性化合物に該当するもの以外の成分である。
【0159】
(H)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。(H)熱可塑性樹脂は、一実施形態において、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選ばれる熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、フェノキシ樹脂を含むことがより好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0161】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0162】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YX7200B35」、「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0163】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0164】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0165】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0166】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0167】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0168】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0169】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0170】
ポリカーボネート樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0171】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0172】
(H)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果を顕著に得る観点から好ましくは5,000以上、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0173】
樹脂組成物(層)中の(H)熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり得る。樹脂組成物(層)中の(H)熱可塑性樹脂の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物(層)中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上等であり得る。
【0174】
<(I)その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(I)その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(I)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0175】
<支持体>
本発明の樹脂シートは、支持体を有する。本発明の樹脂シートにおける支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0176】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0177】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0178】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
【0179】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、ウレタン系離型剤、及びシリコーン系離型剤からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、シリコーン系離型剤又はアルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0180】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0181】
<保護フィルム>
本発明の樹脂シートは、樹脂組成物(層)の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に、支持体に準じた保護フィルムがさらに積層されていてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物(層)の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0182】
<樹脂シートの製造方法>
本発明の樹脂シートは、例えば、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、塗布後に乾燥を行い、支持体上に層状の樹脂組成物(層)を形成することにより、製造することができる。
【0183】
ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)中の(B)有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、ワニス状の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下であり得る。
【0184】
ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)に含まれる(B)有機溶剤中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量は、ワニス状の樹脂組成物に含まれる全(B)有機溶剤を100質量%とした場合、好ましくは0質量%~20質量%、より好ましくは0質量%~15質量%、さらに好ましくは0質量%~10質量%、特に好ましくは0質量%~5質量%であり得る。
【0185】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の方法により実施することができる。乾燥の温度条件は、特に限定されるものではないが、好ましくは50℃~150℃、より好ましくは60℃~130℃、特に好ましくは70℃~120℃に設定し得る。乾燥時間は、樹脂組成物(層)の厚さや樹脂組成物中に含まれる成分によっても異なるが、例えば1分間~10分間であり得る。
【0186】
<ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)の製造方法>
ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)は、例えば、任意の調製容器に(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、(D)応力緩和材、必要に応じて(E)硬化剤、必要に応じて(F)硬化促進剤、必要に応じて(G)ラジカル重合性化合物、必要に応じて(H)熱可塑性樹脂、及び必要に応じて(I)その他の添加剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0187】
<樹脂シートの特性>
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、(B)有機溶剤中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である。このような樹脂シートを用いることにより、ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できる。
【0188】
本発明の樹脂シートは、ラミネート後のムラの発生を抑えることができるという特徴を有し得る。したがって、一実施形態において、下記試験例4のように本発明の樹脂シートを内層基板にラミネートした後、内層基板周囲の樹脂組成物(層)の凹みを観察した場合に、凹みが観察され得ない。
【0189】
本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)の硬化物は、反りを抑制できるという特徴を有し得る。したがって、一実施形態において、下記試験例5のように測定した反り量が、好ましくは2mm以下となり得る。
【0190】
一実施形態において、本発明の樹脂シートは、(B)無機充填材を用いながらも溶融粘度を低くできるので、良好なラミネート性を達成でき得る。したがって、一実施形態において、下記試験例3のように本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)の100℃における溶融粘度は、好ましくは50,000poise以下、より好ましくは30,000poise以下、さらに好ましくは20,000poise以下、さらにより好ましくは15000poise以下、特に好ましくは13,000poise以下であり得る。樹脂組成物(層)の100℃における溶融粘度の下限は、例えば100poise以上であり得る。
【0191】
一実施形態において、本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)の硬化物は、誘電正接(Df)が低いという特徴を有し得る。したがって、一実施形態において、下記試験例6のように10GHz、23℃で測定した場合の樹脂組成物の硬化物の誘電正接(Df)は、好ましくは0.0200以下、0.0150以下、より好ましくは0.00120以下、0.0100以下、さらに好ましくは0.0095以下、0.0090以下、特に好ましくは0.0085以下、0.0080以下となり得る。
【0192】
一実施形態において、本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)は、樹脂シートにおいて、支持体と接しない面を外気に露出し(他方の面は支持体との積層面)、下記試験例2のように190℃(常圧下)で30分間加熱処理した後の樹脂組成物層の重量減少率が、誘電正接(Df)をより低く抑え、反りの発生をより抑える観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは7質量%以下、その下限が、より良好なラミネート性を達成する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.4質量%以上、さらに好ましくは1.6質量%以上、特に好ましくは1.8質量%以上となり得る。
【0193】
<樹脂シート(樹脂組成物)の用途>
本発明の樹脂シート(樹脂組成物)は、絶縁用途の樹脂シート(樹脂組成物)、特に、絶縁層を形成するための樹脂シート(樹脂組成物)として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂シート(樹脂組成物)(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂シート(樹脂組成物))として好適に使用することができる。また、後述するプリント配線板において、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂シート(樹脂組成物)(プリント配線板の絶縁層形成用樹脂シート(樹脂組成物))として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができる。また、本発明の樹脂シート(樹脂組成物)は、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
【0194】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の樹脂シート(樹脂組成物)は、半導体チップパッケージにおける再配線層を形成するための再配線形成層用の樹脂シート(樹脂組成物)(再配線形成層形成用の樹脂シート(樹脂組成物))、及び半導体チップパッケージにおける半導体チップを封止するための樹脂シート(樹脂組成物)(半導体チップ封止用の樹脂シート(樹脂組成物))としても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0195】
<プリント配線板>
本発明の樹脂シートは、プリント配線板の製造に用いることができる。プリント配線板は、本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物(層)を硬化して得られる絶縁層を含む。
【0196】
プリント配線板は、例えば、本発明の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物(層)が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物(層)を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0197】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0198】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0199】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0200】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0201】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0202】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0203】
工程(II)において、樹脂組成物(層)を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する。樹脂組成物(層)の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0204】
例えば、樹脂組成物(層)の熱硬化条件は、樹脂組成物(層)に含まれる成分の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0205】
樹脂組成物(層)を熱硬化させる前に、樹脂組成物(層)を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物(層)を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物(層)を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0206】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0207】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物(層)の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0208】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0209】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0210】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0211】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0212】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0213】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されるものではないが、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0214】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0215】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0216】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0217】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0218】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0219】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0220】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0221】
<半導体装置>
上記で説明したプリント配線板は、プリント配線板を含む半導体装置に用いることができる。
【0222】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0223】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度及び圧力の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、それぞれ、室温(23℃)及び常圧(1atm)である。
【0224】
<合成例1:エラストマーAの合成>
反応容器に、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量=3000、ヒドロキシ基当量=1800g/eq.)69gと、PGMEA(昭和電工社製、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)40gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させた。均一になったところで60℃に昇温し、更に撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(エボニックデグサジャパン社製「IPDI」、イソシアネート基当量=113g/eq.)8gを添加し、約3時間反応を行った。
【0225】
次いで反応物に、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、水酸基当量=117g/eq.)23gと、PGMEA60gとを添加し、攪拌しながら150℃で還流昇温し、約10時間反応を行った。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温した。そして、反応物を100メッシュの濾布で濾過して、ポリブタジエン構造及びフェノール性水酸基を有するエラストマーA(フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂:不揮発成分50質量%)を得た。エラストマーAの数平均分子量は5900、ガラス転移温度は-7℃であった。
【0226】
<合成例2:エラストマーBの合成>
撹拌装置、温度計及びコンデンサーを取り付けられたフラスコに、溶剤として、PGMEA736gを仕込んだ。さらに、前記のフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネート100.1g(0.4モル)と、ポリカーボネートジオール(クラレ社製「C-2015N」、数平均分子量:約2000、水酸基当量=1000g/eq.、不揮発成分:100%)400g(0.2モル)とを仕込んで、70℃で4時間反応を行った。
【0227】
ついで、前記のフラスコに、更にノニルフェノールノボラック樹脂(水酸基当量=229.4g/eq、平均4.27官能、平均計算分子量979.5g/モル)195.9g(0.2モル)と、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート41.0g(0.1モル)とを仕込んで、2時間かけて150℃に昇温し、12時間反応させた。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温した。そして、100メッシュの濾布で濾過して、ポリカーボネート構造を有するエラストマーB(不揮発成分50質量%)を得た。エラストマーBの数平均分子量は6100、ガラス転移温度は5℃であった。
【0228】
<合成例3:マレイミド化合物Aの合成>
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法で合成された下記式(1)で表されるマレイミド化合物A(Mw/Mn=1.81、a’=1.47(主に1、2又は3))を準備した。
【0229】
【0230】
<実施例1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量189g/eq.)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量271g/eq.)1部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50質量%のトルエン溶液)1部、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq.)3部、エラストマーA(固形分50質量%のPGMEA溶液)20部、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)65部、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.05部、メチルエチルケトン(MEK)10部、及びシクロヘキサノン(Anone)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製した。
【0231】
次に、支持体として、一方の主面をアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」;厚み:38μm、軟化点:130℃、以下「離型PET」ということがある。)を用意した。
【0232】
上記で得られた樹脂組成物(樹脂ワニス)を、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが50μmとなるよう、離型PETの離型処理面上にダイコーターにて均一に塗布した。その後、樹脂ワニスを80℃~120℃(平均100℃)で乾燥させた。乾燥時間は下記の試験例2に示す方法で、加熱処理に依る重量減少率が、下記の表1に記載の値となるよう調整した。これにより、支持体と該支持体上に設けられた樹脂組成物層を含む樹脂シートを作製した。
【0233】
<実施例2>
カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50質量%のトルエン溶液)1部を使用せず、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq.)の使用量を3部から3.5部に変更し、さらにトルエン0.5部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0234】
<実施例3>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)の使用量を65部から60部に変更し、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50質量%のトルエン溶液)1部を使用せず、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部を使用せず、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、フェノール性水酸基当量:117g/eq.)の使用量を3部から3.5部に変更し、さらにトルエン0.5部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0235】
<実施例4>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量189g/eq.)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量271g/eq.)1部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000L-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のMEK溶液)3部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA3018-50P」、水酸基当量151、不揮発成分50%のプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)溶液)2部、エラストマーA(固形分50質量%のPGMEA溶液)10部、マレイミド化合物Aを4部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)60部、硬化促進剤(和光純薬工業社製「4-ジメチルアミノピリジン」)0.05部、メチルエチルケトン(MEK)9.48部、トルエン0.53部、及びシクロヘキサノン(Anone)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製した。こうして得られた樹脂組成物(樹脂ワニス)を用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0236】
<実施例5>
活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000L-65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のMEK溶液)3部を使用せず、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA3018-50P」、水酸基当量151、不揮発成分50%のプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)溶液)の使用量を2部から5.9部に変更し、メチルエチルケトン(MEK)の使用量を9.48部から10部に変更し、トルエン0.53部を使用しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0237】
<実施例6>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)65部の代わりにアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C4」、平均粒径1.1μm、比表面積4.5m2/g)60部を使用し、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.05部の代わりに硬化促進剤(和光純薬工業社製「4-ジメチルアミノピリジン」)0.05部を使用し、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ製「BMI-689」)4部の代わりにマレイミド化合物Aを4部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0238】
<実施例7>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量189g/eq.)3部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量271g/eq.)1部、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN475V」、エポキシ当量332g/eq.)2部、エラストマーB(固形分50質量%のPGMEA溶液)10部、ダウ・ケミカル日本社製「パラロイドEXL-2655」5部、活性エステル系硬化剤(エア・ウォーター社製「PC1300-02-65MA」、活性基当量約199、不揮発成分65質量%のMAK溶液)4.6部、硬化促進剤(和光純薬工業社製「4-ジメチルアミノピリジン」)0.05部、熱可塑性樹脂(三菱ケミカル社製「YX7200B35」、不揮発性分35%のAnone溶液)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)50部、メチルエチルケトン(MEK)15部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製した。こうして得られた樹脂組成物(樹脂ワニス)を用いて、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0239】
<比較例1>
メチルエチルケトン(MEK)10部の代わりにトルエン10部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0240】
<比較例2>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)の使用量を65部から40部に変更し、エラストマーA(固形分50質量%のPGMEA溶液)の使用量を20部から1部に変更し、メチルエチルケトン(MEK)10部の代わりにトルエン10部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0241】
<比較例3>
メチルエチルケトン(MEK)10部の代わりにトルエン5部を使用し、さらにジエチレングリコールモノブチルエーテル(DB)5部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0242】
<比較例4>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)の使用量を65部から85部に変更し、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216、固形分50質量%のトルエン溶液)の使用量を1部から10部に変更し、メチルエチルケトン(MEK)10部の代わりにトルエン10.5部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0243】
<比較例5>
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)65部の代わりにアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C4」、平均粒径1.1μm、比表面積4.5m2/g)20部を使用し、メチルエチルケトン(MEK)10部の代わりにトルエン10部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを作製した。
【0244】
<試験例1:GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)による樹脂シートの樹脂組成物層中の有機溶剤の分析>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートから樹脂組成物層の一部を5mg測り取り、GCMS-QP2020-NX(島津製作所製)にて250℃、10分のオーブン条件で測り取ったサンプルを処理し、サンプルライン温度260℃、トランスファーライン温度260℃、サイクルタイム55分の条件で測定した。検出された各ピークから溶剤種を特定し、予め作製しておいた検量線と照らし合わせることで、支持体付き樹脂シートの樹脂シート中に含有されている有機溶剤の種類と含有量を解析した。
【0245】
<試験例2:加熱処理による樹脂シートの樹脂組成物層の重量減少率の測定>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを10cm×10cmに裁断し、これらを十分に乾燥したシリカゲルと一緒にデシケーターに入れ、30分放置した。その後、保護フィルムを剥離した状態で樹脂シートの質量(g)を測定し、その値をα1(g)とした。次に、樹脂シートを190℃のオーブンで30分加熱して、先ほど同様シリカゲルと一緒にデシケーター中で30分放冷した後に再度樹脂シートの質量(g)を測定し、その値をα2(g)とした。また、支持体のみを10cm×10cmに裁断し、それを30分間デシケーターで放置した後、支持体の質量(g)を測定し、その値をβ(g)とした。下記式(A)から樹脂シートを190℃で30分加熱処理した時の樹脂組成物層の重量減少率α(%)の値を算出した。
【0246】
【0247】
<試験例3:溶融粘度の測定及び評価>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートの樹脂組成物層の溶融粘度を測定した。ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」を使用して、樹脂量は1g、直径18mmのパラレルプレートを使用し、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/分、測定温度間隔2.5℃、振動1Hz/degの測定条件にて溶融粘度を測定し、以下の評価基準で評価した。
【0248】
評価基準
「〇」:100℃における溶融粘度が50,000Poise以下の場合
「×」:100℃における溶融粘度が50,000Poiseを上回る場合
【0249】
<試験例4:ラミネート後のムラの評価>
(1)内層基板の用意
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0250】
(2)樹脂シートのラミネート
実施例及び比較例で作製した樹脂シートから保護フィルムを剥がして、樹脂組成物層を露出させた。バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0251】
(3)樹脂組成物層の熱硬化
その後、樹脂シートがラミネートされた内層基板を、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層、内層基板及び絶縁層をこの順に有する硬化基板を得た。
【0252】
(4)硬化基板のムラの評価
硬化基板の両面について、樹脂シートがラミネートされた部分(積層板とは反対側の表面)の表面均一性の観察を目視にて行い、下記の評価基準で評価した。
【0253】
評価基準
「〇」:ムラが全く観察されず、完全に均一な表面である、もしくは樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmの部分のみにムラが観察され、それより内側の部分は完全に均一な表面である場合
「×」:樹脂シートがラミネートされた部分の外周から1cmより内側の部分に、不均一な部分が観察される場合
【0254】
<試験例5:反りの測定及び評価>
12インチシリコンウエハ(厚さ775μm)の片面全体に、実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いてラミネートし、支持体を剥離した。12インチシリコンウエハにラミネートした樹脂組成物層上に、さらに樹脂シートをラミネートすることで樹脂組成物層を2層積層し、厚さ100μmの樹脂組成物層を形成した。得られた樹脂組成物層付きシリコンウエハをオーブン中180℃および90分の条件で熱処理して、硬化した樹脂組成物層(即ち、絶縁層)付きシリコンウエハを形成した。シャドウモアレ測定装置(Akorometrix社製「ThermoireAXP」)を用いて、前記の絶縁層付きシリコンウエハの25℃での反り量を測定した。測定は、電子情報技術産業協会規格のJEITA EDX-7311-24に準拠して行った。具体的には、測定領域の基板面の全データの最小二乗法によって算出した仮想平面を基準面として、その基準面から垂直方向の最小値と最大値との差を反り量として求め、下記の評価基準で評価した。
【0255】
評価基準
「○」:反り量が2mm以下の場合
「×」:反り量が2mmより大きい場合
【0256】
<試験例6:誘電正接の測定及び評価>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートの一部を切り出し、180℃にて90分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離し、評価用硬化物を得た。
【0257】
評価用硬化物を、幅2mm、長さ80mmに切り出し、試験片を得る。得られた試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により、測定周波数10GHz、測定温度23℃にて誘電正接(Df)を測定する。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出し、この平均値に基づいて下記の評価基準で評価した。
【0258】
評価基準
「〇」:誘電正接(Df)が0.008以下の場合
「△」:誘電正接(Df)が0.008より大きく、0.010未満の場合
「×」:誘電正接(Df)が0.010以上の場合
【0259】
実施例及び比較例で得られたワニス状の樹脂組成物の不揮発成分及び揮発成分の含有量、試験例の測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0260】
【0261】
表1に示す通り、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、及び(D)応力緩和材を含み、(B)成分中の沸点120℃未満の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である樹脂組成物層を有する樹脂シートを用いることにより、ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できることがわかる。
【0262】
本願は、日本国特許庁に出願された特願2021-042917(出願日2021年3月16日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。