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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030012
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】自己位置推定システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240229BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240229BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/09 D
G09B29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132532
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 諒子
(72)【発明者】
【氏名】横田 忠至
【テーマコード(参考)】
2C032
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB22
2C032HC08
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE11
5H181FF04
5H181FF05
5H181MC18
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】車両の自己位置推定の安定性の低下を抑制する。
【解決手段】複数の車両Mと通信可能である自己位置推定システム1000であって、複数の車両それぞれに搭載され、環境情報を取得する環境認識部210と、地図情報を取得する地図情報取得部240と環境情報を取得し、かつ、検出情報を取得して、環境情報と、地図情報と、検出情報と、を利用して、複数の車両それぞれの自己位置を推定する位置推定部250と、複数の車両それぞれにおいて推定された自己位置および取得された環境情報を利用して、判定対象地物が通行可能な状態であるか否かを判定する状態判定部111と、判定対象地物が通行不能な状態であると状態判定部が判定した場合に、予め定められた宛先に通知する状態通知部113と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両(M)と通信可能である自己位置推定システム(1000)であって、
前記複数の車両それぞれに搭載され、該車両の周囲の環境に関する情報である環境情報を取得する環境認識部(210)と、
地図情報を取得する地図情報取得部(240)と、
前記複数の車両それぞれに搭載された前記環境認識部から該車両についての前記環境情報を取得し、かつ、前記複数の車両それぞれに搭載されたセンサから該車両についての走行状態および位置についての情報である検出情報を取得して、前記環境情報と、前記地図情報と、前記検出情報と、を利用して、前記複数の車両それぞれの自己位置を推定する位置推定部(250)と、
前記複数の車両それぞれにおいて推定された前記自己位置および取得された前記環境情報を利用して、各前記車両の走行経路上に存在する判定対象地物が通行可能な状態であるか否かを判定する状態判定部(111)と、
前記判定対象地物が通行不能な状態であると前記状態判定部が判定した場合に、予め定められた宛先に通知する状態通知部(113)と、
を備える、
自己位置推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自己位置推定システムであって、
前記複数の車両は、前記地図情報取得部と、前記位置推定部と、をそれぞれ有し、
前記自己位置推定システムは、各前記車両の前記地図情報取得部による取得対象の前記地図情報であるマスタ地図情報の一部として記憶されている通行可否情報であって、地物の通行可否状態を示す情報である通行可否情報を更新する状態更新部(112)をさらに備え、
前記状態更新部は、前記マスタ地図情報における前記通行可否情報が示す通行可否状態と、前記状態判定部による判定結果と、が互いに異なる場合に、前記マスタ地図情報における前記通行可否情報を、前記判定結果と合致するように更新する、
自己位置推定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の自己位置推定システムであって、
前記複数の車両は、対応処理部(260)をそれぞれ有し、
前記対応処理部は、前記地図情報取得部により取得された前記地図情報に含まれる前記通行可否情報が、該車両の走行経路上に存在する地物が通行不能な状態であることを示している場合に、自動運転から手動運転への該車両の運転状態の切り替えと、該車両の走行経路の変更と、運転者への通知と、のうちの少なくともいずれかひとつを実行する、
自己位置推定システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の自己位置推定システムであって、
前記状態判定部は、前記判定対象地物の通行可否状態の判定結果が予め設定された時間が経過しても通行不能で変わらない場合に、前記判定対象地物が通行不能な状態となっている可能性を表す数値(Pc)を増加させ、
前記状態更新部は、前記数値が予め設定された閾値以上である場合に、前記判定対象地物が通行不能な状態となっているとして前記通行可否情報を更新し、
前記状態通知部は、前記数値が予め設定された閾値以上である場合に、前記判定対象地物が通行不能な状態となっていることを示す情報を前記宛先に通知する、
自己位置推定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の自己位置推定システムであって、
前記状態判定部は、前記判定対象地物の通行可否状態について、通行不能であるという同じ判定結果が、予め設定された時間内に予め設定された回数以上得られた場合に前記数値を増加させる、
自己位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自己位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の車両それぞれに搭載された情報取得装置により取得された道路上の地物に関する情報を収集し、かかる情報の所定期間内における変化を比較することにより、道路上に設置された信号機および標識等の地物の出現・変更・撤去等を検出する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の情報処理システムは、地物の出現・変更・撤去等に応じて地図情報を更新することにより、車両位置推定の安定性の低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-164840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地物が撤去されたとして地図情報から消去された場合であっても、現実には地物の故障により通行不能な状態になっているにすぎず、地物自体は存在している場合がある。このような場合、地図情報と現実の地物の状態との間に差異が生じ、車両位置推定の安定性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、自己位置推定システム(1000)が提供される。この自己位置推定システムは、複数の車両(M)と通信可能である自己位置推定システムであって、前記複数の車両それぞれに搭載され、該車両の周囲の環境に関する情報である環境情報を取得する環境認識部(210)と、地図情報を取得する地図情報取得部(240)と、前記複数の車両それぞれに搭載された前記環境認識部から該車両についての前記環境情報を取得し、かつ、前記複数の車両それぞれに搭載されたセンサから該車両についての走行状態および位置についての情報である検出情報を取得して、前記環境情報と、前記地図情報と、前記検出情報と、を利用して、前記複数の車両それぞれの自己位置を推定する位置推定部(250)と、前記複数の車両それぞれにおいて推定された前記自己位置および取得された前記環境情報を利用して、各前記車両の走行経路上に存在する判定対象地物が通行可能な状態であるか否かを判定する状態判定部(111)と、前記判定対象地物が通行不能な状態であると前記状態判定部が判定した場合に、予め定められた宛先に通知する状態通知部(113)と、を備える。
【0007】
この形態の自己位置推定システムによれば、複数の車両それぞれについての環境情報および検出情報を利用して、各車両の走行経路上に存在する判定対象地物が通行可能な状態であるか否かを判定し、判定対象地物が通行不能な状態であると状態判定部が判定した場合に予め定められた宛先に通知するので、判定対象地物を修復する機会を与えることができ、地図情報と現実の地物の状態との間に差異が生じることによる自己位置推定の安定性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の自己位置推定システムの概略構成を示す説明図である。
図2】第1実施形態の車両の概略構成を示すブロック図である。
図3】車両に搭載されたカメラの撮像領域を示す側面図である。
図4】車両に搭載されたカメラの撮像領域を示す上面図である。
図5】第1実施形態のサーバの概略構成を示すブロック図である。
図6】第1実施形態の自己位置推定処理の手順を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態の地図情報更新処理の手順を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態の地図情報更新処理の手順を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態の地図情報更新処理におけるステップS242AからステップS248Aの手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A-1.システム構成:
図1に示すように、本実施形態の自己位置推定システム1000は、複数の車両Mと、複数の車両Mとネットワークを介して互いに通信可能なサーバ100とを備える。自己位置推定システム1000は、複数の車両Mから取得した情報を利用して、各車両Mの走行経路上に存在する地物が通行可能な状態であるか、または、通行不能な状態であるかを判定し、地物の状態に応じてサーバ100に記憶された地図情報を更新する。「地物が通行不能な状態」は、例えば、踏切の遮断機が故障により下りたままになっている状態を意味する。また、自己位置推定システム1000は、地物が通行不能な状態となっていると判定した場合、ネットワークを介して地物の管理者Adへその旨を通知する。「管理者Ad」には、例えば、踏切が通行不能な状態となっている場合には、かかる踏切を管理する鉄道会社が該当する。なお、自己位置推定システム1000による通知の対象は管理者Adに限定されず、地物が存在する地域の自治体および警察署等の予め定められた宛先であってもよい。
【0010】
複数の車両Mはそれぞれ、自動運転を実行可能であり、自動運転と手動運転とが切り替え可能に構成されている。「自動運転」とは、エンジン制御とブレーキ制御と操舵制御とを運転者に代わって自動的に実行する運転を意味する。「手動運転」とは、エンジン制御のための操作(アクセルペダルの踏込)と、ブレーキ制御のための操作(ブレーキベダルの踏込)と、操舵制御のための操作(ステアリングホイールの回転)とを運転者が実行する運転を意味する。なお、車両Mは、エンジンを搭載した車両に限らず、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)であってもよい。
【0011】
図2に示すように、複数の車両Mはそれぞれ、環境認識部210と、自車状態量センサ部220と、衛星測位取得部230と、地図情報取得部240と、位置推定部250と、車両制御部260とを備える。本実施形態では、環境認識部210と、自車状態量センサ部220と、衛星測位取得部230と、地図情報取得部240と、位置推定部250と、車両制御部260とのうちの少なくとも一部は、CPUと、ROMと、RAMとを備えたコンピュータにより実現される機能部である。かかるコンピュータの一例としてECU(Electronic Control Unit)が挙げられる。
【0012】
環境認識部210は、車両Mの周囲の地物の位置および状態を検出する。本実施形態では、車両Mは、環境認識部210として、図3および図4に示すカメラ211と、Lidar装置212と、ミリ波レーダ213とを備える。本実施形態では、カメラ211は、ハッチングを付して示す車両Mの前方における放射状の領域を撮像し、画像データを取得する。Lidar装置212は、レーザ光を照射し、物体によって反射された反射波を受信することによって地物の位置および距離を検出する。ミリ波レーダ213は、ミリ波を射出し、地物によって反射された反射波を受信することによって地物の位置および距離を検出する。なお、車両Mは、Lidar装置212とミリ波レーダ213とのうち、少なくともいずれか一方を備えていればよい。環境認識部210により取得される画像データ、地物の位置および距離を以下の説明において、「環境情報」とも呼ぶ。環境情報はすなわち、車両Mの周囲の環境に関する情報といえる。
【0013】
図2に示す自車状態量センサ部220は、車両Mの走行時における走行状態を表す自車状態量、例えば、車速およびヨーレート等を検出する。本実施形態では、車両Mは、自車状態量センサ部220として、車速センサおよびヨーレートセンサを備える。なお、自車状態量センサ部220は、車速センサおよびヨーレートセンサに限定されない。車両Mは、自車状態量センサ部220として、車両Mの加速度、ピッチ角およびロール角をそれぞれ検出するセンサを備えていてもよい。
【0014】
衛星測位取得部230は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する人工衛星から受信する航法信号に基づいて、車両Mの現在位置(経度・緯度)を検出する。衛星測位取得部230により取得される車両Mの現在位置および上述の自車状態量センサ部220により検出される自車状態量は、本開示における「検出情報」に相当する。
【0015】
地図情報取得部240は、サーバ100から地図情報を取得する。地図情報は、道路の道幅や車線数等の静的な地図情報に加え、渋滞情報等の動的な情報を有している。また、本実施形態では、地図情報は、踏切やETCゲートのように開閉状態を切り変えることにより車両Mの通行を制限する地物について、かかる地物の通行可否を示す情報(以下、「通行可否情報」とも呼ぶ)を含む。
【0016】
位置推定部250は、上述の環境情報と、検出情報と、地図情報とを利用して、地図上における車両Mの自己位置および車両Mの周囲に存在する地物の位置を推定する。また、位置推定部250は、推定した自己位置と取得した環境情報とをサーバ100に送信する。
【0017】
車両制御部260は、位置推定部250により推定された自己位置および環境認識部210により認識された車両Mの周囲に存在する地物の位置に応じて、車両Mの加減速および操舵の制御を実行する。また、通行予定の地物が通行不能であることを通行可否情報が示している場合、車両制御部260は、自動運転から手動運転への運転状態の切り替えと、走行経路の変更と、運転者への通知とを実行する。例えば、走行予定だったETCゲートが通行止めとなっている場合、車両制御部260は、通行止めとなっているETCゲートを避けて通行可能なETCゲートを走行するように走行経路を変更する。また、全てのETCゲートが通行止めとなっており一般ゲートを走行する場合には、運転者が通行料金の支払いをする必要があるため、車両制御部260は、一般ゲートを走行する旨を運転者へ通知するとともに、自動運転から手動運転に運転状態を切り替える。車両制御部260は、本開示における「対応処理部」に相当する。なお、車両制御部260は、地物の状態に応じて、自動運転から手動運転への運転状態の切り替えと、走行経路の変更と、運転者への通知とのうちのいずれかひとつを実行してもよい。
【0018】
図5に示すように、サーバ100は、CPU110と、記憶装置120と、ROM130と、RAM140とを備えたコンピュータとして構成されている。CPU110と、記憶装置120と、ROM130と、RAM140とは、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
【0019】
CPU110は、ROM130に格納されているプログラムをRAM140に展開して実行することにより、状態判定部111と、状態更新部112と、状態通知部113として機能する。状態判定部111は、各車両Mから環境情報および自己位置を取得して、各車両Mの走行経路上に存在する地物が通行可能な状態であるか否かを判定する。状態更新部112は、状態判定部111における判定の結果に応じて、地図情報を更新する。状態通知部113は、地物が通行不能な状態であると判定された場合に、かかる地物の管理者Adへその旨を通知する。各機能部における具体的な処理については、後述する地図情報更新処理において説明する。
【0020】
記憶装置120は、上述の地図情報を格納するデータベースである地図情報データベース121を記憶している。本実施形態では、地図情報データベース121に格納された地図情報が、上述の地図情報取得部240による取得対象となる地図情報である。以下、地図情報データベース121に格納された地図情報を、「マスタ地図情報」とも呼ぶ。
【0021】
A-2.自己位置推定処理:
各車両Mはそれぞれ、図6に示す自己位置推定処理を走行中繰り返し実行して、各車両Mの自己位置を推定し、推定した自己位置と取得した環境情報とをサーバ100へ送信する。
【0022】
各車両Mにおいて、環境認識部210による環境情報の取得(ステップS110)と、自車状態量センサ部220および衛星測位取得部230による検出情報の取得(ステップS112)と、地図情報取得部240による地図情報の取得(ステップS114)とが並列して実行される。
【0023】
ステップS120において、各車両Mの位置推定部250は、取得した環境情報、検出情報および地図情報を利用して、自車両の自己位置を推定する。
【0024】
各車両Mにおいて、位置推定部250は、自己位置および環境情報をサーバ100へ送信し(ステップS130)、車両制御部260は、自己位置および環境情報に応じて自車両の運転状態の制御を行う(ステップS132)。ステップS130およびステップS132の終了後、各車両Mにおいて、再びステップS110、ステップS112およびステップS114が実行される。以上のように、各車両Mにおいて、ステップS110~ステップS132が繰り返し実行される。
【0025】
A-3.地図情報更新処理:
サーバ100は、図7に示す地図情報更新処理をサーバ100の稼働中繰り返し実行し、各車両Mの走行経路上に存在する地物それぞれの通行可否状態の判定結果に応じて、マスタ地図情報の更新および地物の管理者Adへの通知を実行する。
【0026】
ステップS210において、状態判定部111は、各車両Mから送信された自己位置および環境情報を取得する。
【0027】
ステップS220において、状態判定部111は、取得した各車両Mの自己位置および環境情報を利用して、各車両Mの走行経路上に存在する地物(以下、「判定対象地物」とも呼ぶ)が通行可能な状態であるか否かを判定する。状態判定部111は、各車両Mの自己位置および環境情報から判定対象地物が走行不能な状態であることを示す情報が読み取れた場合に、判定対象地物が通行不能な状態であると判定する。「判定対象地物が走行不能な状態であることを示す情報」としては、ETCゲートを例にすると、ETCゲートの開閉バーが下りていること、通行止めを示す「×印」の標識の存在・赤色灯の点灯・「閉鎖」等の文字列の表示等がある。また、状態判定部111は、各車両Mの走行軌跡情報から複数の車両Mが特定のETCゲートを避けて走行していることが読み取れた場合に、かかるETCゲートが通行不能な状態であると判定する。なお、走行軌跡情報は、各車両Mから取得した各車両Mの自己位置の履歴から得られる各車両Mの走行経路の軌跡を示す情報を意味する。
【0028】
判定対象地物が通行可能な状態であると判定された場合(ステップS220:Yes)、状態判定部111は、ステップS220における判定結果とマスタ地図情報における判定対象地物に関する通行可否情報とが一致しているか否かを判定する(ステップS230)。判定結果と通行可否情報とが一致していると判定された場合(ステップS230:Yes)、状態判定部111は、再びステップS210を実行する。
【0029】
判定結果と通行可否情報とが一致しないと判定された場合(ステップS230:No)、状態判定部111は、通行可能と判定された回数が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する(ステップS240)。通行可能と判定された回数が閾値未満であると判定された場合(ステップS240:No)、状態判定部111は、再びステップS210を実行する。
【0030】
通行可能と判定された回数が閾値以上であると判定された場合(ステップS240:Yes)、状態更新部112は、判定対象地物が通行可能な状態であるとしてマスタ地図情報を更新する(ステップS250)。より具体的には、状態更新部112は、マスタ地図情報における通行可否情報を、状態判定部111によるステップS220における判定結果と合致するように更新する。通行可能と判定された回数が未だ少ない場合、判定対象地物が安定的に通行可能な状態となっていない可能性があり、そのような場合にマスタ地図情報を更新すると、マスタ地図情報が高い頻度で更新されて不安定になるおそれがある。そこで、本実施形態では、通行可能と判定された回数が閾値以上となった場合に、状態更新部112はマスタ地図情報を更新する。
【0031】
ステップS250の終了後、状態判定部111は、再びステップS210を実行する。
【0032】
他方、判定対象地物が通行不能な状態であると判定された場合(ステップS220:No)、状態判定部111は、状態判定部111によるステップS220における判定結果とマスタ地図情報における判定対象地物に関する通行可否情報とが一致しているか否かを判定する(ステップS232)。判定結果と通行可否情報とが一致していると判定された場合(ステップS232:Yes)、状態判定部111は、再びステップS210を実行する。
【0033】
判定結果と通行可否情報とが一致しないと判定された場合(ステップS232:No)、状態判定部111は、通行不能と判定された回数が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する(ステップS242)。通行不能と判定された回数が閾値未満であると判定された場合(ステップS242:No)、状態判定部111は、再びステップS210を実行する。ステップS242における判定を実行する意図は、上述したステップS240における判定を実行する意図と同様である。
【0034】
通行不能と判定された回数が閾値以上であると判定された場合(ステップS242:Yes)、状態更新部112は、判定対象地物が通行不能な状態であるとしてマスタ地図情報を更新する(ステップS252)。さらにステップS262において、状態通知部113は、判定対象地物が通行不能な状態であることを管理者Adへ通知する。ステップS262の終了後、状態判定部111は、再びステップS210を実行する。以上のように、サーバ100において、判定対象地物ごとに、ステップS210~ステップS262が繰り返し実行される。
【0035】
以上説明した第1実施形態の自己位置推定システム1000によれば、複数の車両Mそれぞれについての環境情報および検出情報を利用して、判定対象地物が通行可能な状態であるか否かを判定し、判定対象地物が通行不能な状態であると状態判定部111が判定した場合にその旨を判定対象地物の管理者等に通知するので、地物を修復する機会を与えることができ、地図情報と現実の地物の状態との間に差異が生じることによる自己位置推定の安定性の低下を抑制できる。
【0036】
また、自己位置推定システム1000は、判定対象地物が通行不能な状態であると状態判定部111が判定した場合には、自動運転から手動運転への運転状態の切り替えと、走行経路の変更と、運転者への通知と、のうちの少なくともいずれかを実行するので、通行不能な状態となっている地物を回避して走行することができる。
【0037】
また、自己位置推定システム1000は、通行可否情報と状態判定部111による判定結果とが互いに異なる場合にマスタ地図情報における通行可否情報を更新するので、マスタ地図情報を現実の地物の状態に対応した内容に修正でき、自己位置推定の精度の低下を抑制できる。
【0038】
B.第2実施形態:
図8に示すように、第2実施形態の自己位置推定システム1000は、図7に示す地図情報更新処理のステップS242に代えて、図9に示すステップS242A~ステップS248Aを実行する点において、第1実施形態の自己位置推定システム1000と異なる。第2実施形態の自己位置推定システム1000のシステム構成および地図情報更新処理におけるその他の手順は、第1実施形態の自己位置推定システム1000と同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図9に示すステップS242Aにおいて、状態判定部111は、判定対象地物についての通行不能状態の継続時間を取得する。通行不能状態の継続時間は、判定対象地物が通行不能状態であるという判定が最初になされた時刻と現在時刻との差分を取ることによって求めることができる。
【0040】
ステップS244Aにおいて、状態判定部111は、判定対象地物における車両Mの迂回回数を計測する。「迂回回数」は、判定対象地物が通行不能であるという判定結果が得られ、車両Mが判定対象地物を迂回した回数を意味する。迂回回数は、上述した各車両Mの走行軌跡情報から求めることができる。
【0041】
ステップS246Aにおいて、状態判定部111は、継続時間および迂回回数から通行不能可能性Pcを算出する。「通行不能可能性Pc」は、判定対象地物が現実に通行不能な状態となっている可能性を表す数値を意味する。本実施形態では、通行不能可能性Pcは、継続時間および迂回回数と通行不能可能性Pcとの関係を示す予め作成されたテーブルを参照して算出される。かかるテーブルは、継続時間が長くなるにつれて、また、迂回回数が多くなるにつれて通行不能可能性Pcが増大するように作成されている。継続時間が長い場合、また、迂回回数が多い場合には、偶発的にではなく継続的に判定対象地物の通行不能状態が発生している可能性が高いといえるからである。
【0042】
ステップS248Aにおいて、状態判定部111は、算出された通行不能可能性Pcが予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。通行不能可能性Pcが閾値未満である場合(ステップS248A:No)、状態判定部111は、再び図8に示すステップS210を実行する。他方、図9において通行不能可能性Pcが閾値以上である場合(ステップS248A:Yes)、状態更新部112は、図8に示すステップS252を実行する。言い換えれば、判定対象地物が通行不能な状態であるという判定結果が予め設定された時間経過しても変わらない場合、また、判定対象地物が通行不能な状態であるという判定結果が予め設定された回数以上得られた場合に、状態更新部112はステップS252を実行する。
【0043】
以上説明した第2実施形態の自己位置推定システム1000によれば、予め設定された時間以上判定対象地物の通行不能状態が継続した場合、または、判定対象地物が通行不能な状態であるという判定結果が予め設定された回数以上得られた場合に通行不能可能性Pcを増加させ、通行不能可能性Pcが予め設定された閾値以上である場合に、判定対象地物が通行不能状態となっているとしてマスタ地図情報における通行可否情報を更新するとともにその旨を判定対象地物の管理者等に通知するので、地物を修復する機会を与えることができ、通行可否情報の正確性の低下を抑制できる。
【0044】
C.他の実施形態:
(C1)上記実施形態において、位置推定部250は各車両Mが備えているが、本開示はこれに限定されない。サーバ100が地図情報取得部240および位置推定部250を備え、サーバ100が有する地図情報と各車両Mから取得した環境情報および検出情報とを利用して各車両Mの自己位置を推定し、各車両Mに通知してもよい。かかる形態においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
(C2)上記実施形態において、状態更新部112は、マスタ地図情報の更新にあたり、状態判定部111による判定結果とマスタ地図情報における通行可否情報とが一致しないことを条件としているが、本開示はこれに限定されない。状態更新部112は、新たな判定結果が得られるたびにマスタ地図情報を更新してもよい。かかる形態によれば、上記実施形態と同様の効果を奏するとともに、地図情報更新処理が煩雑になることを抑制できる。
【0046】
(C3)上記実施形態において、状態判定部111は、通行不能状態の継続時間と車両Mの迂回回数とを利用して通行不能可能性Pcを算出しているが、本開示はこれに限定されない。状態判定部111は、継続時間と迂回回数とのうちのいずれか一方のみを利用して、通行不能可能性Pcを算出してもよい。かかる形態においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0048】
本開示に記載の自己位置推定システム1000およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の自己位置推定システム1000およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の自己位置推定システム1000およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
M…車両、111…状態判定部、113…状態通知部、210…環境認識部、240…地図情報取得部、250…位置推定部、1000…自己位置推定システム
図1
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図9