(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030026
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】原語表記と転写表記の変換用カードセット
(51)【国際特許分類】
G09B 1/32 20060101AFI20240229BHJP
B42D 15/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G09B1/32
B42D15/00 301N
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132557
(22)【出願日】2022-08-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】722010150
【氏名又は名称】西村 僚之佑
(72)【発明者】
【氏名】西村 僚之佑
(57)【要約】
【課題】1つの文字が単語内の位置に応じて語頭形、語中形又は語末形を取る言語について、転写表記と前記言語による表記の間の相互変換を行うことは、初学者にとって容易でない。
【解決手段】言語において用いられる文字ごとに、当該文字の転写字が記載された転写字カードと、当該文字の語頭形、語中形又は語末形の1つがそれぞれに記載された1枚以上の原語文字カードと、を束ねたカード束を有するカードセットを提供する。これにより、文字ごとに束ねられた転写字カードと原語文字カードを用いて、初学者であっても容易に相互変換を行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの文字が単語内の位置に応じて語頭形、語中形又は語末形を取る言語について、転写表記と前記言語による原語表記の間の相互変換に使用可能なカードセットであって、
前記言語において用いられる文字ごとに、
当該文字の転写字が記載された転写字カードと、
当該文字の語頭形、語中形又は語末形の1つがそれぞれに記載された1枚以上の原語文字カードと、
を束ねたカード束
を有するカードセット。
【請求項2】
前記原語文字カードは、
当該文字が1つ以上の語頭形を有する場合には、当該文字が有する語頭形と同数の、それぞれに当該文字の語頭形の1つが記載された語頭形カードを含み、
当該文字が1つ以上の語中形を有する場合には、当該文字が有する語中形と同数の、それぞれに当該文字の語中形の1つが記載された語中形カードを含み、
当該文字が1つ以上の語末形を有する場合には、当該文字が有する語末形と同数の、それぞれに当該文字の語末形の1つが記載された語末形カードを含む、
請求項1記載のカードセット。
【請求項3】
全ての前記転写字カードに共通の印を付し、
全ての前記語頭形カードに共通の印を付し、
全ての前記語中形カードに共通の印を付し、
全ての前記語末形カードに共通の印を付した、
請求項2記載のカードセット。
【請求項4】
前記カード束のそれぞれにおいて、前記転写字カード、前記語頭形カード、前記語中形カード及び前記語末形カードのうち当該カード束に含まれるものが、全ての前記カード束で同一の順序となるよう束ねられている、
請求項2記載のカードセット。
【請求項5】
前記カード束の前記原語文字カードが、当該カード束に対応する文字の独立形が記載された独立形カードをさらに含む、
請求項1-4のいずれか1項に記載のカードセット。
【請求項6】
前記原語文字カードのうち一部又は全部の前記原語文字カードが透明な素材からなる、
請求項1-4のいずれか1項に記載のカードセット。
【請求項7】
透明な素材からなる前記原語文字カードは、カード1枚のうちの一部が透明な素材からなり、その他の部分が透明でない素材からなる、
請求項6記載のカードセット。
【請求項8】
前記語末形カードのうち一部の前記語末形カードが透明な素材からなる、
請求項2-4のいずれか1項に記載のカードセット。
【請求項9】
透明な素材からなる前記語末形カードは、カード1枚のうちの一部が透明な素材からなり、その他の部分が透明でない素材からなる、
請求項8記載のカードセット。
【請求項10】
前記語中形カードに記載された文字の前後の文字とつながる部分について、一般的な書体より長く書かれている若しくは前の文字とつながる部分又は後の文字とつながる部分の少なくとも一方が書かれていない、
請求項2-4のいずれか1項に記載のカードセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの文字が単語内の位置に応じて語頭形、語中形又は語末形を取る言語について、転写表記と前記言語による原語表記の間の相互変換に使用可能なカードセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
外国語を学ぶ際にまず必要となることは、その言語で使用されている文字を習得することである。日本語及び英語を解する日本人にとっては、漢字を用いる中国語や、ラテン文字を用いる西欧や中欧の諸言語の表記を認識するのは比較的容易であるが、例えば、ハングル文字を用いる朝鮮語、シャム文字を用いるタイ語、キリル文字を用いるロシア語などの表記を認識するのは容易でない。
【0003】
言語において用いられる文字を習得していない段階においては、その言語における使用文字による表記を、ラテン文字等による表記に変換したものを用いて学習することがある。このような変換処理は、転写、翻字、字訳などと呼ばれ、日本語の表記をローマ字表記することもこの処理に含まれる。
【0004】
ある言語における文字と、その転写表記である転写字が1対1対応する場合には、これらの相互変換は比較的容易であるが、1つの転写字に対応する文字が複数存在し得る場合には、相互変換が複雑なものとなる。特に、1つの文字が単語内の位置に応じて語頭形、語中形又は語末形を取るモンゴル文字やアラビア文字については、1つの転写字に対応し得る文字が3つ存在することとなり、モンゴル文字やアラビア文字で表記された単語を転写字へと転写する操作やその逆の操作は、初学者には容易でない。
【0005】
このような性質を有する言語を学習するためのツールとして、非特許文献1に記載されているような、文字の語頭形、語中形及び語末形を理解しやすく説明するものはあったが、転写字との間の相互変換を行う実践の場面においては使い勝手のよいものではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】サレム アル・ネアイミ、原田紀夫, 「アラビア語学習支援システムの開発」, 情報処理学会第71回全国大会講演論文集, 2009年3月10日, pp.4-619-4-620
【非特許文献2】フフバートル編, 「モンゴル文字入門」, [online], 1997年, 東京外国語大学アジア・アフリカ言語研究所, [2022年7月1日検索], インターネット<URL: http://www.aa.tufs.ac.jp/elib/ltext/khk/pdf/c.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、1つの文字が単語内の位置に応じて語頭形、語中形又は語末形を取る言語について、転写表記と前記言語による原語表記の間の相互変換を行うことは、初学者にとって容易でないという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、転写表記と前記言語による原語表記の間の相互変換を、初学者にも分かりやすく簡便に行うためのカードセットを提供し、外国語教育に資することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカードセットは、言語において用いられる文字ごとに、当該文字の転写字が記載された転写字カードと、当該文字の語頭形、語中形又は語末形の1つがそれぞれに記載された1枚以上の原語文字カードと、を束ねたカード束を有する。
【発明の効果】
【0010】
転写字と、当該転写字に対応する文字の複数の字形を1つのカード束としたことで、カードセットの使用者が文字の対応関係を直感的に理解できるとともに、各カードを1つの字形が記載されたものとしたことで、変換対象の文字とカードに記載の文字とを隣に並べて対比することや、原語文字カード同士を連結させて原語表記の最終的な形を試作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】カードセットに含まれるカードの内訳を示した説明図である。
【
図2】カードセットを用いて転写表記をモンゴル文字表記に変換する手順の一例を示したフローチャートである。
【
図3】カードセットを用いてモンゴル文字表記を転写表記に変換する手順の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、1つの文字が単語内の位置に応じて語頭形、語中形又は語末形を取る言語として、モンゴル文字を用いる伝統的モンゴル語を例に挙げて、本発明の実施の形態を説明する。同様の性質を有する言語には、アラビア文字を用いるアラビア語、ペルシャ語、ウルドゥー語、オスマン語等や、チベット文字を用いるチベット語、満州文字を用いる満州語などがあり、以下の説明は伝統的モンゴル語をこのような言語に置き換えても妥当するものである。
【0013】
モンゴル文字の一覧表には、外来語の表記に用いる文字を含めるか否か等の違いから複数のものがあるが、一例として非特許文献2の3ページに記載のものについて誤記を修正したものを表1として示す。表1に記載のモンゴル文字は29文字からなり、それぞれがラテン文字の転写字を有する。モンゴル語の単語は縦書きにより、原則として各文字をつなげた形で表記される。単語内の各文字は、先頭の文字は語頭形、末尾の文字は語末形、その他の文字は語中形により表記される。語頭、語中又は語末に現れることがない一部の文字については、現れない形を有していない。また、一部の文字は複数の語頭形、語中形又は語末形を有し、例えば語中形が2つある文字は直後の文字が母音か子音かにより取るべき形が定まるなど、周囲の文字との関係等の何らかの言語学的根拠に基づいて複数の形のうちいずれを取るかが定まる。
【0014】
【実施例0015】
図1は、本発明に係るカードセットの全体像を示したものである。カードセットには、29のモンゴル文字のそれぞれに対応して、転写字が記載された転写字カード1001~1029と、語頭形が記載された語頭形カード2001~2929と、語中形が記載された語中形カード3001~3929と、語末形が記載された語末形カード4001~4929が含まれる。以下の説明では、語頭形カード、語中形カード及び語末形カードを、まとめて原語文字カードと称する。
【0016】
転写字カードには、モンゴル文字の1つに対応する転写字が記載されている。
図1においては、転写字としてラテン文字を例示しているが、現代モンゴル語において用いられるキリル文字を転写字として用いてもよい。
【0017】
原語文字カード1枚には、モンゴル文字の語頭形、語中形又は語末形の1つが記載される。各モンゴル文字に対応する原語文字カードには、当該モンゴル文字が有する語頭形、語中形及び語末形とそれぞれ同数の語頭形カード、語中形カード及び語末形カードが含まれる。例えば、転写字「a」で表される1番目の文字には2つの語末形が存在することから、これに対応する語末形カードには語末形カード4001と語末形カード4101の2枚が存在する。また、例えば、29番目の文字には語末形が存在しないことから、これに対応する語末形カード4029にはモンゴル文字を記載しないか、あるいはそもそも語末形カード4029をカードセットに含まないこととできる。
【0018】
モンゴル文字の1つに対応する転写字カード及び原語文字カードは、カード束として束ねられており、カードセット全体には少なくとも29のカード束が含まれることとなる。具体的な束ね方については、ステイプラーや紐で綴じる、カードリングを用いる、輪ゴムやクリップで留めるなど、知られた任意の方法によることができる。束ねる順序も任意であるが、例えば、転写字カード、語頭形カード、語中形カード、語末形カードの順に統一するなど、全てのカード束で同一の順序となるよう束ねることで、カードセット全体としての使用感を統一することができる。また、モンゴル文字1つに対して同一構成の束を複数備えることも可能であり、これにより1単語内に同一文字が複数回現れる場合に変換処理が並列化できるようになる。
【0019】
また、カードセットに含まれる全ての転写字カードに共通の印(しるし)を付すことが望ましい。印は、そのカードに記載されている文字が転写字であることを示す何らかの文字又は文字列、任意に定めた記号、カードの一部又は全体の色、転写字の色、カードの凹凸など、五感により印として認識し得る任意のものを使用できる。共通の印が付されていることで、そのカードが転写字カードであることを容易に認識することができる。同様の理由で、カードセットに含まれる全ての語頭形カード、語中形カード及び語末形カードについても、それぞれに共通の印を付すことが望ましい。転写字カード、語頭形カード、語中形カード及び語末形カードのそれぞれに付される印は、互いに異なるものとすることが通常であるが、例えば語頭形カード、語中形カード及び語末形カードについては共通の印を付すなど、互いに異ならない印を付すことを妨げない。
【0020】
なお、モンゴル文字には、語頭形、語中形及び語末形のほか、独立形も存在する。独立形は、文中での使用は稀なものであるが、各カード束のモンゴル文字に対応する独立形を記載した独立形カードを、対応するカード束の原語文字カードに加えることで、カードセットをより網羅的なものとすることができる。この場合、カードセットに含まれる全ての独立形カードに共通の印を付すことが望ましい。
【0021】
図2のフローチャートは、本発明に係るカードセットを用いて転写表記をモンゴル文字表記に変換する手順の一例を示すものである。このフローチャートは、転写表記を1字ずつモンゴル文字表記に変換する手順を示しているが、カードセットを用いた変換手順はこれに限られず、複数文字の変換を同時並行で進めてもよい。以降では、転写表記された単語「asiγ」(「利益」を意味する)を例に、フローチャートに示された手順を説明する。
【0022】
手順開始(S101)後、まず先頭の1字である「a」を認識し(S102)、転写字「a」が記載された転写字カードを含むカード束を取り出す(S103)。この文字は単語の先頭にある(S104Y)ので、取り出したカード束から語頭形カードを選択し(S105)、そこに記載された文字を記録する(S109)。この文字は単語の末尾ではない(S110N)ので、次の1字「s」を認識し(S111)、転写字「s」が記載された転写字カードを含むカード束を取り出す(S103)。この文字は単語の先頭でも末尾でもない(S104N、S106N)ので、取り出したカード束から語中形カードを選択し(S108)、そこに記載された文字を記録する(S109)。次の「i」についても同様の処理を行う(S110N,S111,S103,S104N,S106N,S108,S109,S110N)。
【0023】
その後、単語中の「γ」を認識し(S111)、転写字「γ」が記載された転写字カードを含むカード束を取り出す(S103)と、この文字は単語の先頭ではない(S104N)が末尾である(S106Y)ので、取り出したカード束から語末形カードを選択し(S107)、そこに記載された文字を記録する(S109)。この文字は単語の末尾である(S110Y)ので、変換手順はここで終了する(S112)。これまでに記録された文字を縦に順次つなげて記述することで、単語「asiγ」のモンゴル文字表記が得られる。
【0024】
なお、例には含まれていなかったが、転写字「n」が記載された転写字カードを含むカード束を取り出し(S103)て語中形カードを選択する(S108)際など、カード束に語中形カードが2枚存在する場合には、いずれを選択すべきかの判断が必要となる。このような場合は、続く文字が母音か子音かにより一方を選択する必要があり、続く文字と併せて判断を行うことで、一方の語中形カードを選択することができる。このように、選択した語頭形カード、語中形カード又は語末形カードが複数存在する場合には、周囲の文字等の必要な情報を併せて参照して、言語学的根拠に基づいてそのうち1つを選択することが求められる。
【0025】
図3のフローチャートは、本発明に係るカードセットを用いてモンゴル文字表記を転写表記に変換する手順の一例を示すものである。このフローチャートは、モンゴル文字表記を1字ずつ転写表記に変換する手順を示しているが、カードセットを用いた変換手順はこれに限られず、複数文字の変換を同時並行で進めてもよい。以降では、前段落で得たモンゴル文字表記を転写表記「asiγ」に再変換することを例として、フローチャートに示された手順を説明する。
【0026】
手順開始(S201)後、まず先頭の1字を認識する(S202)。この文字は単語の先頭にある(S204Y)ので、この文字を各カード束における語頭形カードに記載された文字と比較し、両者が一致するカード束を取り出す(S205)。そして、そのカード束から転写字カードを取り出し、そこに記載された文字を記録する(S209)。この文字は単語の末尾ではない(S210N)ので、次の1字を認識する(S211)。この文字は単語の先頭でも末尾でもない(S204N、S206N)ので、この文字を各カード束における語中形カードに記載された文字と比較し、両者が一致するカード束を取り出す(S208)。そして、そのカード束から転写字カードを取り出し、そこに記載された文字を記録する(S209)。そして、続く1文字についても同様の処理を行う(S210N,S211,S204N,S206N,S208,S209,S210N)。
【0027】
その後、最後の文字を認識する(S211)と、この文字は単語の先頭ではない(S204N)が末尾である(S206Y)ので、この文字を各カード束における語末形カードに記載された文字と比較し、両者が一致するカード束を取り出す(S207)。そして、そのカード束から転写字カードを取り出し、そこに記載された文字を記録する(S209)。この文字は単語の末尾である(S210Y)ので、変換手順はここで終了する(S212)。これまでに記録された文字を順次並べることで、モンゴル文字表記された単語の転写表記「asiγ」が得られる。
【0028】
なお、例には含まれていなかったが、転写字「a」又は「e」に対応する文字の語中形は同一であるため、これらの語中形と一致する語中形カードを有するカード束を選択しようとする(S208)場合には、2つのカード束のうちいずれを選択すべきかの判断が必要となる。このような場合は、「a」が男性語で使われる男性母音であり、「e」が女性語で使われる女性母音であることから、単語自体が男性語であるか女性語であるかを単語中で用いられている他の子音等から判断することで、一方のカード束を選択することができる。このように、認識した文字と一致する語頭形カード、語中形カード又は語末形カードが複数存在する場合には、周囲の文字等の必要な情報を併せて参照して、言語学的根拠に基づいてそのうち1つを選択することが求められる。
【0029】
以上で見てきた相互変換の過程の中で、単語中のモンゴル文字と原語文字カードに記載された文字を比較する工程においては、転写字に転写しようとするモンゴル文字と原語文字カードに記載の文字とを近接させることが求められ、記録したモンゴル文字をつなげて記述する工程では、原語文字カードに記載の文字同士を重ね合わせて完成形をイメージすることなどが求められる。原語文字カードが紙などの不透明な素材のものであると、カードの余白部分が近接比較や重ね合わせの妨げとなるが、これを透明な素材のものとすれば、モンゴル文字同士を余白なく近接させたり重ね合わせたりすることが容易となり、各工程が効率化される。したがって、原語文字カードについては、透明な素材からなるものとすることが望ましい。
【0030】
一方、原語文字カードの重ね合わせによりモンゴル文字同士の接続を試みる場面において、多くの文字は縦の線により接続されるのに対して、一部の文字は異なる形で接続されることがあり、そのような場合に透明な素材の原語文字カードを単純に用いると、文字同士の接続部分に縦の線及び異なる形による接続の線が混在することになり、接続の形が視覚的に分かりづらくなる。このような問題は、縦の線によらない接続をする可能性のある文字が記載された1枚の原語文字カードの一部のみを透明な素材からなるものとし、その他の部分は透明でない素材からなるよう構成することにより、カードの透明でない部分を用いて接続に不要な線を隠すことができるようにすることで解消できる。
【0031】
また、転写字「a」「e」で表される文字の2つの語末形のうち一方は、前の子音と分かち書きをする(前の文字とつなげない)ため、これらが記載された語末形カードは、他のカードとの重ね合わせる際の位置関係に格別の注意を払う必要がある。これを容易になさしめるため、これらの語末形カードに限って透明な素材からなるものとすることで、不透明な素材よりも透明な素材が高価な場合にはカードセット全体のコストを低減させることができる。さらに、透明な素材からなるべき語末形カード1枚のうち、接続時の位置関係に格別の注意を払うべき一部のみを透明な素材からなるものとし、その他の部分を透明でない素材からなるものとすれば、注意を払うべき一部を際立たせることも可能である。
【0032】
加えて、原語文字カードに記載の文字同士を重ね合わせる場面においては、文字間の距離を柔軟に調整できると、カード操作を通じて文字をつなげて書くイメージが捉えやすくなる。これを実現するため、語中形カードに記載する文字における、前後の文字とつながる部分を一般的な書体よりも長く書いておくことが望ましい。その一方で、後続の文字が先行する文字の一部に組み込まれるような形でつながるような特殊な接続が生じる場合もあり、このような場合には、前後の文字とつながる部分として語中形カードに記載される部分を接続に用いないことになる。このような場合にも対応できるよう、特殊な接続が生じる可能性がある文字を記載する語中形カードには、例えば前後の文字とつながる部分を含めて書かれた文字が記載された面の反対面に、前の文字とつながる部分又は後の文字とつながる部分の少なくとも一方が書かれていない文字を記載するなど、前後の文字とつながる部分について長く書かれたものと書かれていないものを選択可能な構成を取ることが考えられる。
【0033】
本発明は、これまでに述べた実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能なものであり、実施例に開示された構成を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
特に、実施例においては、単語単位で相互変換を行う際に本発明のカードセットを用いる手順を示したが、本発明のカードセットの用途はこれに限られない。本発明のカードセットは、カード束ごとに転写字並びに対応する文字の語頭形、語中形及び語末形の組を記憶するために用いたり、2つのカード束それぞれから原語文字カードを1枚ずつ取り出して2文字のつなげ方を理解するために用いたりするなど、単語単位でなく1文字や数文字の単位で使用することも可能である。