(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030047
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物、硬化物、及び、印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20240229BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132592
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】臣 直毅
(72)【発明者】
【氏名】武田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】横山 優香
(72)【発明者】
【氏名】安井 達哉
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD10
4J039AD21
4J039AE05
4J039BC29
4J039BE27
4J039EA33
4J039EA36
4J039EA48
4J039FA07
(57)【要約】
【課題】顔料の分散性に優れており、塗膜に優れた光沢と塗膜耐性とを付与することができ、かつ、インキ組成物を構成する樹脂のバイオマス成分比率を高めることができる活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物を提供する。
【解決手段】顔料と、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、モノマーとを少なくとも含有し、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、カルダノール骨格、ビスフェノール骨格、及び、(メタ)アクリレート部位を含有する活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、モノマーとを少なくとも含有し、
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、カルダノール骨格、ビスフェノール骨格、及び、(メタ)アクリレート部位を含有する
活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物。
【請求項2】
樹脂成分のバイオマス成分比率が、20%以上である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物。
【請求項3】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有するカルダノール骨格は、重合カルダノール骨格である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物。
【請求項4】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有するビスフェノール骨格は、ビスフェノールA骨格である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物。
【請求項5】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、重合カルダノールと、ビスフェノール骨格を含有するエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られる請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物。
【請求項6】
活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物の全体の質量に対して、前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、15~40質量%である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項8】
基材上に、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物から形成される印刷層を有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物、硬化物、及び、印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノール骨格を含有するエポキシアクリレートは、活性エネルギー線硬化型樹脂の中でも最も工業的に使用される汎用材料の一つである。
【0003】
印刷インキ・塗料分野においても、ビスフェノール骨格から生じる、硬度、柔軟性、強靭性、耐薬品性を示すことから、汎用的に用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂が、主に塗料用ワニスのベース樹脂、フィルム成形用のベース樹脂としてや、エポキシ樹脂ワニスに添加して流動性の調整や硬化物としたときの靭性改良、接着性改良の目的に使用されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のビスフェノール骨格を含有するエポキシアクリレートを印刷インキや塗料に使用した場合、顔料の分散性が十分とは言えず、顔料分散剤の添加や、別の樹脂との併用等が必要であった。
【0007】
また、汎用的なビスフェノール骨格を含有するエポキシアクリレートは、石油由来材料から合成されるものが多いが、近年ではバイオマス素材からなる活性エネルギー線硬化型樹脂の需要が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は、顔料の分散性に優れており、塗膜に優れた光沢と塗膜耐性とを付与することができ、かつ、インキ組成物を構成する樹脂のバイオマス成分比率を高めることができる活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは、顔料と、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、モノマーとを少なくとも含有し、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、カルダノール骨格、ビスフェノール骨格、及び、(メタ)アクリレート部位を含有することにより、上述した課題を全て解決できることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、顔料と、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、モノマーとを少なくとも含有し、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、カルダノール骨格、ビスフェノール骨格、及び、(メタ)アクリレート部位を含有する活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物である。
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物は、樹脂成分のバイオマス成分比率が20%以上であることが好ましい。
また、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有するカルダノール骨格は、重合カルダノール骨格であることが好ましい。
また、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有するビスフェノール骨格は、ビスフェノールA骨格であることが好ましい。
また、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、重合カルダノールと、ビスフェノール骨格を含有するエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られることが好ましい。
また、活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物の全体の質量に対して、前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、15~40質量%であることが好ましい。
また本発明は、本発明の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物を硬化してなる硬化物でもある。
また本発明は、本発明の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物から形成される印刷層を有する印刷物でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、顔料の分散性に優れており、塗膜に優れた光沢と塗膜耐性とを付与することができ、かつ、インキ組成物を構成する樹脂のバイオマス成分比率を高めることができる活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物は、顔料と、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、モノマーとを少なくとも含有し、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、カルダノール骨格、ビスフェノール骨格、及び、(メタ)アクリレート部位を含有する。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
【0015】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物(単にインキ組成物ともいう)の各構成について詳述する。
【0016】
(顔料)
本発明のインキ組成物は、顔料を含有する。
【0017】
上記顔料としては特に限定されず、有機顔料であっても、無機顔料であってもよい。
【0018】
上記有機顔料としては、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等が挙げられる。
【0019】
上記無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、群青、紺青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)、及び、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料等が挙げられる。
【0020】
色相ごとの顔料の具体例は以下の通りである。
【0021】
イエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられる。
【0022】
マゼンタ顔料としては、C.I.Pigment Red 5、7、12、19、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
【0023】
シアン顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等であり、C.I.Pigment Blue 15:4等が挙げられる。
【0024】
ブラック顔料としては、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等が挙げられる。
【0025】
ホワイト顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。
上記酸化チタンは、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理されたものであってもよい。
【0026】
上記顔料の含有量としては特に限定されないが、ホワイト顔料を用いる場合、例えば、インキ組成物の全体の質量に対して1~20質量%であることが好ましい。
また、ホワイト顔料以外を用いる場合は、例えば、インキ組成物の全体の質量に対して0.5~15質量%であることが好ましい。
【0027】
(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)
本発明のインキ組成物は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有する。
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、カルダノール骨格、ビスフェノール骨格、及び、(メタ)アクリレート部位を含有する。
【0028】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、カルダノール骨格、ビスフェノール骨格、及び、(メタ)アクリレート部位を含有することにより、インキ組成物には優れた顔料分散性を、塗膜には優れた光沢と塗膜耐性とを付与することができ、かつ、インキ組成物を構成する樹脂のバイオマス成分比率を高めることができる。
【0029】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有するカルダノール骨格は、重合カルダノール骨格であることが好ましい。
【0030】
上記重合カルダノール骨格としては、例えば下記式(1)の構造が挙げられる。
【0031】
【化1】
(式(1)中、R
1は、炭素数が15、水素数が25~31の炭化水素基であり、lは、2~10の整数である。)
【0032】
上記式(1)中、lは上記式(1)の括弧内で表される構成単位の数を意味する。
上記式(1)中、lは、2~10の整数である。上記式(1)の括弧内で表される構成単位は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂中に連続(ブロック)に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。
【0033】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有するビスフェノール骨格としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールP骨格、及び、ビスフェノールZ骨格等が挙げられる。
なかでも対応するエポキシ樹脂の入手容易性の観点から、ビスフェノールA骨格であることが好ましい。
【0034】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、重量平均分子量(Mw)が3000~20000であることが好ましく、6000~10000であることがより好ましい。
上記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法のポリスチレン換算値として測定される。
【0035】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有量としては、インキ組成物の全体の質量に対して15~40質量%であることが好ましい。
上記含有量であれば、顔料の分散性、塗膜の光沢及び塗膜耐性を好適に発現することができる。
また、上記性能を付与しつつ、インキ組成物中のバイオマス成分比率を高めることもできる。
【0036】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、重合カルダノールと、ビスフェノール骨格を含有するエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られることが好ましい。
以下、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の製造方法の一例について説明する。
【0037】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の製造方法では、下記式(2)で表される重合カルダノールを合成する。
【0038】
【化2】
(式(2)中、R
1は、炭素数が15、水素数が25~31の炭化水素基であり、mは、2~20の整数である。)
【0039】
上記式(2)で表される重合カルダノールは市販のものを購入してもよいし、下記の方法により合成してもよい。
【0040】
上記式(2)で表されるカルダノール化合物を合成する方法としては、例えば、下記式(3)で表されるカルダノール化合物を、酸触媒の存在下で反応させることにより作製することができる。
【0041】
【化3】
(式(3)中、R
2は、炭素数が15、水素数が25~31の炭化水素基である。)
【0042】
上記酸触媒としては、公知のものを使用することができ、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸等を使用することができる。
なかでも、触媒活性および溶液への溶解性の観点から、p-トルエンスルホン酸を使用することが好ましい。
上記酸触媒の使用量としては、上記式(3)で表されるカルダノール化合物100質量部に対して、0.1~10質量部程度である。
【0043】
上記式(3)で表されるカルダノール化合物を、酸触媒の存在下で反応させる際の反応温度としては、例えば、120~200℃程度である。また、反応時間としては、例えば、1~10時間程度である。
なお、目的とする上記式(2)で表される化合物が得られたことは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、上記式(3)に由来するピークの低下と、新たな成分の留出とを確認すればよい。
【0044】
また、上記反応の際に用いる装置(撹拌装置、還流装置等)は、公知のものを適宜選択すればよい。
上記反応を行った後、公知の方法により精製してもよく、精製しなくてもよい。公知の方法により精製することがより好ましい。
【0045】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の製造方法の一例では、上記式(2)で表される重合カルダノールと、下記式(4)で表されるビスフェノール骨格を含有する化合物とを反応させる。
【0046】
【0047】
上記式(4)中、O1は、上記式(4)中央の炭化水素基に対してオルト位、メタ位又はパラ位の何れであってもよく、O2は、上記式(4)中央の炭化水素基に対してオルト位、メタ位又はパラ位の何れであってもよいが、入手容易性の観点から、O1及びO2のそれぞれが、上記式(4)中央の炭化水素基に対してパラ位であることが好ましい。
【0048】
なお、上記式(4)では、ビスフェノールA骨格を含有するエポキシ樹脂を用いているが、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールP骨格、及び、ビスフェノールZ骨格等を含有するものであってもよい。
【0049】
上記式(2)で表される重合カルダノールと、上記式(4)で表されるビスフェノール骨格を含有する化合物との反応は、塩基性下で行われることが好ましい。
【0050】
上記式(2)で表される重合カルダノールと、上記式(4)で表されるビスフェノール骨格を含有する化合物との反応に用いられる塩基としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ金属フッ化物、アミン、有機リン化合物等が挙げられる。
上記塩基を用いる量としては、塩基の種類によって異なるが、例えば、上記式(2)で表される重合カルダノール100質量部に対して、0.1~2.0質量部程度である。
【0051】
上記式(2)で表される重合カルダノールと、上記式(4)で表されるビスフェノール骨格を含有する化合物との反応では溶媒を用いてもよい。
【0052】
上記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水や、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく挙げられるが、これらに限定されない。
上記溶媒は単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。
上記溶媒を用いる量としては、例えば、上記式(2)で表される重合カルダノール100質量部に対して、30質量部以下程度である。
【0053】
上記式(2)で表される重合カルダノールと、上記式(4)で表されるビスフェノール骨格を含有する化合物との反応させる際の反応温度としては、例えば、60~120℃程度である。また、反応時間としては、例えば、1~24時間程度である。
なお、目的とするエポキシ樹脂が得られたことは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、原料(例えば、上記式(2)で表される重合カルダノール)に由来するピークの低下と、新たな成分の留出とを確認すればよい。
【0054】
上記式(2)で表される重合カルダノールと、上記式(4)で表されるビスフェノール骨格を含有する化合物との反応の際に用いる装置(撹拌装置、還流装置等)は、公知のものを適宜選択すればよい。
上記反応を行った後、公知の方法により精製してもよく、精製しなくてもよい。公知の方法により精製することがより好ましい。
【0055】
上記式(2)で表される重合カルダノールと、上記式(4)で表されるビスフェノール骨格を含有する化合物との反応により得られるエポキシ樹脂は、上記式(1)で表される構造と、下記式(5)で表される構造とを有する。
上記エポキシ樹脂は、比較的低粘度であり、更に分子中に十分なエポキシ基を有しているため、後述する(メタ)アクリレート化反応を行うことができる。
【0056】
【化5】
(式(5)中、R
1は、炭素数が15、水素数が25~31の炭化水素基であり、nは、1~10の整数である。)
【0057】
上記式(5)中、nは上記式(5)の括弧内で表される構成単位の数を意味する。
上記式(5)中、nは、1~10の整数である。上記式(5)の括弧内で表される構成単位は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂中に連続(ブロック)に存在してもよいし、ランダムに存在してもよい。
【0058】
上記式(5)で表される構造のエポキシ基を(メタ)アクリレート化することにより、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を得ることができる。
上記(メタ)アクリレート化は、塩基触媒の存在下で、式(5)で表される構造のエポキシ基と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸とを反応させればよい。
【0059】
上記アクリル酸、メタクリル酸は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、5~20質量部程度であることが好ましい。
【0060】
上記塩基触媒としては、公知のものを適宜選択すればよい。
また、溶媒を用いてもよく、上記式(2)で表される重合カルダノールと、上記式(4)で表されるビスフェノール骨格を含有する化合物とを反応させる工程で記載した溶媒を適宜選択すればよい。
また、必要に応じて重合禁止剤や、酸化防止剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
上記塩基触媒は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~4質量部程度であることが好ましい。
上記添加剤の使用量は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01~3質量部程度であることが好ましい。
【0061】
上記エポキシ樹脂を(メタ)アクリレート化する反応は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
また、反応温度としては、例えば、60~120℃程度である。また、反応時間としては、例えば、1~10時間程度である。
なお、目的とするエポキシ(メタ)アクリレートが得られたことは、例えば、反応物の酸価を測定して(メタ)アクリル酸の消費を確認し、赤外吸収スペクトルを測定して、上記式(5)で表される構造のエポキシ基が減少したことと、(メタ)アクリル酸が導入されたことを確認すればよい。
【0062】
また、上記反応の際に用いる装置(撹拌装置、還流装置等)は、公知のものを適宜選択すればよい。
上記反応を行った後、公知の方法により精製してもよく、精製しなくてもよい。公知の方法により精製することがより好ましい。
【0063】
(モノマー)
本発明のインキ組成物は、モノマーを含有する。
【0064】
上記モノマーは、単官能モノマーを用いてもよく、多官能モノマーを用いてもよく、単官能モノマーと多官能モノマーの両方を用いてもよい。
【0065】
上記単官能モノマーとしては、例えば、ベンジルメタアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性コハク酸(メタ)アクリレート等単官能の(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ビニルメチルオキサゾリジノン、スチレン、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0066】
上記多官能モノマーとしては、例えば、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
上記モノマーとしては多官能モノマーが好ましく、なかでも、硬化性の観点から、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、並びに、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0068】
上記モノマーの含有量としては、インキの粘度の観点から、インキ組成物の全体の質量に対して20~50質量%であることが好ましい。
【0069】
(その他)
本発明のインキ組成物は、必要に応じて、重合開始剤、重合禁止剤、ワックス、樹脂、増感剤、表面調整剤、溶剤、可塑剤、紫外線吸収剤等を含んでもよい。
【0070】
上記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ開始剤、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物開始剤、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド等のリン系、チオキサントン等のイオウ系、ベンジル、9,10-フェナントレンキノン等のベンジル系の光重合開始剤等が挙げられる。
上記重合開始剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0071】
上記重合開始剤の含有量としては、インキ組成物の全体の質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0072】
上記重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等が挙げられる。
上記重合禁止剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記重合禁止剤を用いる量としては、例えば、インキ組成物の全体の質量に対して、0.1~2.0質量%程度である。
【0073】
上記ワックスとしては特に限定されず、天然ワックス、合成ワックスの何れか、又は、その両方を用いてもよい。
上記ワックスは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記ワックスの含有量としては、例えば、インキ組成物の全体の質量に対して、0.1~10質量%程度である。
【0075】
上記樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩ビ-酢ビ共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン-酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、シリコン樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。
上記樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0076】
上記樹脂の含有量としては、例えば、インキ組成物の全体の質量に対して、0.1~10質量%程度である。
【0077】
上記増感剤、表面調整剤、溶剤、可塑剤、紫外線吸収剤等については、インキ組成物の分野で用いられている公知の材料を適宜選択すればよい。
これらの含有量としては、例えば、インキ組成物の全体の質量に対して、0.1~10質量%程度である。
【0078】
(インキ組成物)
本発明のインキ組成物は、顔料と、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、モノマーとを少なくとも含有する。
本発明のインキ組成物は、必要に応じて上述したその他の材料を含有してもよい。
【0079】
本発明のインキ組成物の製造方法としては特に限定されず、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の公知の分散機を使用して分散混合して調整すればよい。
【0080】
(インキ組成物の物性)
本発明のインキ組成物は、樹脂成分のバイオマス成分比率が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
上記バイオマス成分比率が20%以上であることにより、循環型社会の構築に好適に寄与することができる。
なお、上記バイオマス成分比率とは、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、及び、その他で記載した樹脂の中に含まれるバイオマス由来成分の割合をいい、次の式で表される。
バイオマス成分比率(%)={バイオマス由来成分の質量/[上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の質量+その他で記載した樹脂の質量]}×100
【0081】
本発明のインキ組成物は、顔料の分散性に優れる。
上記顔料の分散性は、例えば、インキ組成物についてスプレッドメーターにてフロー値を測定し、フロー傾斜(スロープ)値として流動性を調べる。
なお、フロー傾斜値とは、スプレッドメーターで100秒後の広がり直径をmm単位で計った数値から、10秒後の広がり直径をmm単位で計った数値を差し引いた数値であり、この値が大きいほど流動性(顔料の分散性)が良好となる。
【0082】
上記流動性が8mm以上であれば顔料の分散性に優れると判断することができる。
上記流動性は、8.5mm以上であることが好ましく、9mm以上であることがより好ましく、9.5mm以上であることが更に好ましく、10mm以上であることが特に好ましい。
【0083】
本発明のインキ組成物は、塗膜の光沢に優れる。
上記塗膜の光沢は、例えば、インキ組成物0.1ccを、RI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いて塗工紙(日本製紙株式会社製、オーロラコート)に展色した後に、メタルハライドランプを用い120W/cmの出力で展色物に80mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、村上式デジタル光沢計(村上色彩研究所製)を用いて展色面の60°反射光沢値により測定する。
【0084】
上記60°反射光沢値が35以上であれば光沢に優れると判断することができる。
上記60°反射光沢値は、40以上であることが好ましく、45以上であることがより好ましい。
【0085】
本発明のインキ組成物は、塗膜の耐摩擦性に優れる。
上記塗膜の耐摩擦性は、例えば、インキ組成物を、ハンドプルーファーを用いてオーロラコート紙(日本製紙株式会社製)に展色したものを試験片とし、その後、メタルハライドランプ用い120W/cmの出力で試験片に80mJ/cm2の紫外線を照射することで、インキ組成物を硬化させて塗工面を形成する。
その後、得られた各試験片のそれぞれについて学振型摩擦堅牢度試験機により耐摩擦性を評価する。
なお、耐摩擦性評価の条件は、当て布(カナキン3号)を介して1kgの錘で20往復の摩擦を加えるものとし、この摩擦を加えた直後の塗膜の状態を目視で観察する。
【0086】
上記試験方法において、9往復の摩擦を加えても塗工面が取れないことが好ましく、15往復の摩擦を加えても塗工面が取れないことがより好ましく、20往復の摩擦を加えても塗工面が取れないことが更に好ましい。
【0087】
<硬化物及び印刷物>
本発明のインク組成物を硬化してなる硬化物もまた本発明に包含される。
また、本発明のインク組成物から形成される印刷層を有する印刷物もまた本発明に包含される。本発明のインキ組成物を印字、硬化することにより、本発明の硬化物や、印刷物を製造することができる。
【0088】
本発明のインキ組成物を印字、硬化する方法は特に限定されない。
一例を挙げると、印字、硬化する方法は、インキ組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾したインキ組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法が挙げられる。
基材への吐出(画像の印字)は、インキ組成物をインクジェット記録用プリンターの低粘度対応のプリンタヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、1~60μmとなるようにプリンタヘッドから吐出すればよい。
また、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布されたインキ組成物の塗膜に光を照射すればよい。
なお、上記基材上に形成された塗膜を印刷層ともいう。
【0089】
インクジェット記録方式用プリンター装置は、従来から使用されているインクジェット記録方式用プリンター装置であってもよい。また、塗膜の硬化における光源は、紫外線(UVランプ)、紫外線(発光ダイオード(LED)、電子線、可視光線等を用いればよい。
【0090】
上記基材としては、金属、紙、プラスチックのいずれであってもよい。
また、上記印刷物としては、例えば、飲料缶、飲料容器、食品容器、医薬品包装などの各種の包装材料が挙げられる。
【実施例0091】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。
【0092】
(エポキシアクリレート樹脂1の作製)
[上記式(2)で表される重合カルダノールの合成]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに窒素パージを施しながら精製カルダノール100質量部を量りとり、p-トルエンスルホン酸一水和物0.8質量部を加えて反応溶液を作製した。次いで、上記反応溶液を150℃に加熱し、3時間撹拌を行った。
反応温度を室温に戻し、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。
水層を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムにより脱水した。
その後、硫酸ナトリウムをろ過にて取り除いた後、溶媒をエバポレーターで留去した。
得られた粗生成物を300℃に加熱し、減圧下で3時間撹拌することによって留出成分を除去して、上記式(2)で表される重合カルダノール(式(2)中、R1は、炭素数が15、水素数が25~31の炭化水素基である。)を得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、カルダノールに由来するピークの低下と、新たな高分子量成分の留出とを確認し、上記式(2)で表される重合カルダノールが得られたことを確認した。
【0093】
[エポキシ樹脂の合成]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら上記式(2)で表される重合カルダノール100質量部を量り取り、ビスフェノールA型エポキシ樹脂jer-828(三菱ケミカル社製)112質量部、水酸化ナトリウム0.6質量部、メタノール18質量部、水5質量部を加えて反応溶液を作製した。次いで、反応溶液を75℃にまで昇温し、還流しながら3時間撹拌を行った。
反応温度を室温に戻し、水層をトルエンで3回抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムにより脱水した。
その後、硫酸ナトリウムをろ過にて取り除いた後、溶媒をエバポレーターで留去し、上記式(1)で表される構造(式(1)中、R1は、炭素数が15、水素数が25~31の炭化水素基である。)と、上記式(5)で表される構造(式(5)中、R1は、炭素数が15、水素数が25~31の炭化水素基である。)とを含むエポキシ樹脂を得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に由来するピークの低下と、新たな高分子量成分の留出とを確認し、エポキシ樹脂が得られたことを確認した。
【0094】
[エポキシアクリレート樹脂1の合成]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら上記エポキシ樹脂100質量部を量り取り、トリフェニルホスフィン0.4質量部、ヒドロキノン0.1質量部、アクリル酸11質量部を加えて反応溶液を作製した。
次いで、反応溶液を110℃にまで昇温し、還流しながら5時間撹拌を行うことで、目的とするエポキシアクリレート樹脂1を得た。
反応物の酸価を測定することによりアクリル酸の消費を確認し、更に赤外吸収スペクトルを測定することでエポキシ基の減少とアクリル酸の導入を確認し、エポキシアクリレート樹脂1が得られたことを確認した。エポキシアクリレート樹脂1のバイオマス成分比率は42.2%であった。
【0095】
上記エポキシアクリレート樹脂以外の材料は以下の通りである。
(顔料)
BHS(ピグメントイエロー13、商品名「BHS」、クラリアントケミカルズ社製)
T-DD(炭酸カルシウム、商品名「白艶華DD」、一次粒子径80nm、白石カルシウム社製)
(樹脂)
PE210(ビスフェノールA型エポキシアクリレート、商品名「MIRAMER PE210」、MIWON社製)
EBECRYL600(ビスフェノールA型エポキシアクリレート、商品名「EBECRYL600」、ダイセル・オルネクス社製)
EBECRYL3700(ビスフェノールA型エポキシアクリレート、商品名「EBECRYL3700」、ダイセル・オルネクス社製)
CN104(ビスフェノールA型エポキシアクリレート、商品名「CN104」、サートマー社製)
A-DAPワニス(大阪ソーダ社製「A-DAP」(ジアリルフタレート樹脂)30質量部を、Di-TMPTA70質量部に溶解したもの)
(モノマー)
DPHA ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
3EO-TMPTA トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンオキサイド変性物
Di-TMPTA ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
(重合禁止剤)
BHT ジブチルヒドロキシトルエン
(重合開始剤)
EMK(4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、商品名「Omnirad EMK」、IGM Resins B.V.社製)
379(2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン- 4-イル-フェニル)-ブタノン、商品名「Omnirad379」、IGM Resins B.V.社製)
(ワックス)
NJ-100(ポリエチレンワックス、商品名「NJ-100」、森村ケミカル株式会社製)
【0096】
(実施例1~6、比較例1~4)
表1の記載に基づいて各材料をロール温度40℃の3本ロールミルにより分散混合し、インキ組成物を作製した。
【0097】
<バイオマス成分比率>
実施例及び比較例で作製したインキ組成物に含まれる樹脂成分のバイオマス成分比率を以下の式により算出した。
バイオマス成分比率(%)={バイオマス由来成分の質量/[エポキシアクリレート樹脂1の質量+他の樹脂(PE210、EBECRYL600、EBECRYL3700、CN104、A-DAPワニスに含まれる樹脂成分)の質量]}×100
【0098】
<流動性>
実施例及び比較例で作製したインキ組成物について、スプレッドメーターにてフロー値を測定し、フロー傾斜(スロープ)値として流動性を調べた。
なお、フロー傾斜値とは、スプレッドメーターで100秒後の広がり直径をmm単位で計った数値から、10秒後の広がり直径をmm単位で計った数値を差し引いた数値であり、この値が大きいほど流動性(顔料の分散性)が良好である。
【0099】
<光沢>
実施例及び比較例で作製したインキ組成物0.1ccずつを、RI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いて塗工紙(日本製紙株式会社製、オーロラコート)に展色した後に、メタルハライドランプを用い120W/cmの出力で展色物に80mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、村上式デジタル光沢計(村上色彩研究所製)を用いて展色面の60°反射光沢値を測定した。
【0100】
<耐摩擦性>
実施例及び比較例で作製したインキ組成物を、ハンドプルーファーを用いてオーロラコート紙(日本製紙株式会社製)に展色したものを試験片とし、その後、メタルハライドランプ用い120W/cmの出力で試験片に80mJ/cm2の紫外線を照射することで、インキ組成物を硬化させて塗工面を形成した。
その後、得られた各試験片のそれぞれについて学振型摩擦堅牢度試験機により耐摩擦性を以下の基準で評価した。
なお、耐摩擦性評価の条件は、当て布(カナキン3号)を介して1kgの錘で20往復の摩擦を加えるものとし、この摩擦を加えた直後の塗膜の状態を目視で観察する。
5:20往復の摩擦を加えても塗工面が取れなかった
4:10~19往復の摩擦により塗工面が取れた
3:5~9往復の摩擦により塗工面が取れた
2:2~4往復の摩擦により塗工面が取れた
1:1往復の摩擦により塗工面が取れた
【0101】
【0102】
実施例の結果から、本発明のインキ組成物は、顔料の分散性に優れており、塗膜に優れた光沢と塗膜耐性とを付与することができ、かつ、インキ組成物を構成する樹脂のバイオマス成分比率を高めることができることが確認された。
【0103】
本明細書では以下の事項が開示されている。
【0104】
本開示(1)は、顔料と、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、モノマーとを少なくとも含有し、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、カルダノール骨格、ビスフェノール骨格、及び、(メタ)アクリレート部位を含有する活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物である。
本開示(2)は、樹脂成分のバイオマス成分比率が、20%以上である本開示(1)に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物である。
本開示(3)は、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有するカルダノール骨格は、重合カルダノール骨格である本開示(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物である。
本開示(4)は、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含有するビスフェノール骨格は、ビスフェノールA骨格である本開示(1)~(3)の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物である。
本開示(5)は、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、重合カルダノールと、ビスフェノール骨格を含有するエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られる本開示(1)~(4)の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物である。
本開示(6)は、活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物の全体の質量に対して、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、15~40質量%である本開示(1)~(5)の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物である。
本開示(7)は、本開示(1)~(5)の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物を硬化してなる硬化物である。
本開示(8)は、基材上に、本開示(1)~(5)の何れかに記載の活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物から形成される印刷層を有する印刷物である。
本発明は、顔料の分散性に優れており、塗膜に優れた光沢と塗膜耐性とを付与することができ、かつ、インキ組成物を構成する樹脂のバイオマス成分比率を高めることができる活性エネルギー線硬化型印刷用インキ組成物を提供することができる。