(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030048
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】包装用バリア紙及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20240229BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240229BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20240229BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240229BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240229BHJP
【FI】
B32B27/10
B65D65/40 D
B32B29/00
B32B27/32 Z
B32B7/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132599
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】390033868
【氏名又は名称】株式会社メイワパックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武居 勇希
(72)【発明者】
【氏名】中村 美都
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
4F100AK06D
4F100AK16B
4F100AK21B
4F100AK51C
4F100AK69B
4F100AK71E
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100DG10A
4F100EJ65C
4F100GB23
4F100JD02B
4F100JD03
4F100JD04
4F100JK02
4F100JK03
4F100JL11D
4F100JL12E
4F100YY00A
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】
気体透過度の低いバリア紙に関し、特に低温シール性を有し、内容物を高速で充填及び封止可能な高速充填封止性を備える包装用バリア紙及び包装袋を提供する。
【解決手段】
紙基材を用いた、低温シール性を有し、かつ内容物を高速充填封印可能な包装用バリア紙であって、
紙からなる基材と、
前記基材上に設けられたバリア層と、
前記バリア層上に設けられたアンカーコート層と、
接着用樹脂層と、
シーラント層と、が積層されてなり、
前記基材は、当該包装用バリア紙全体の50重量%以上を占め、
前記シーラント層が、20~40m/分の速度で封止及び包装でき、且つ100℃~130℃で融着可能な材料から選択されて含んでなる、
包装用バリア紙。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材を用いた、低温シール性を有し、かつ内容物を高速充填封印可能な包装用バリア紙であって、当該バリア紙は、
紙からなる基材と、
前記基材上に設けられたバリア層と、
前記バリア層上に設けられたアンカーコート層と、
接着用樹脂層と、
シーラント層と、が積層されてなる包装用バリア紙であって、
前記基材は、当該包装用バリア紙全体の50重量%以上を占め、
前記シーラント層が、20~40m/分の速度で封止及び包装でき、且つ100℃~130℃で融着可能な材料から選択されて含んでなる、
ことを特徴とする、包装用バリア紙。
【請求項2】
前記バリア層が、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる群から選択された1種であることを特徴とする、請求項1に記載の包装用バリア紙。
【請求項3】
前記シーラント層が、ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の包装用バリア紙。
【請求項4】
前記包装用バリア紙の引裂き強度が300~2000mNであることを特徴とする、請求項1または2に記載の包装用バリア紙。
【請求項5】
請求項1または2に記載の包装用バリア紙より形成されてなる包装袋であって、上記包装用バリア紙を折曲させて前記包装袋の底部を形成し、少なくとも側辺部を加熱融着して、内容物を収納可能な収納部が形成されることを特徴とする、包装袋。
【請求項6】
正面視及び側面視において、前記包装袋の開口が、前記袋の上部に形成されてなることを特徴とする、請求項5に記載の包装袋。
【請求項7】
前記内容物が、顆粒、粉末及びかやく等の食料品であることを特徴とする、請求項5に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体透過度の低いバリア紙に関し、特に低温シール性を有し、且つ当該紙を包装時に、内容物を高速で充填及び封止可能な高速充填封止性を更に備える包装用バリア紙及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今より、循環型社会の構築が求められており、中でも包装材料としては、従来から、プラスチック等の合成樹脂が用いられてきたが、使用後の廃棄物処理が問題となってきており、一般的には、プラスチックの廃棄物はゴミとして回収され、焼却処分または土中への埋設処分となっている。
【0003】
焼却処分では、従来の包装材料が、オレフィン系樹脂を中心とした構成になっているため、燃焼エネルギーが非常に高く、焼却炉内を痛める可能性も十分にある。更に塩素系化合物が存在すると、焼却時の温度領域によってはダイオキシンが発生する可能性もあり、焼却処分自体が問題視されている。
また、土中への埋設処分では、ポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィンが自然環境の中で半永久的に残存するため、自然環境の汚染を生む原因の一つになっている。
【0004】
このように、上記焼却処分に伴って発生する二酸化炭素排出による地球温暖化の低減や、脱炭素及び地球環境の持続的社会の形成が改めて叫ばれている中で、高度な機能性が要求される包装材料については、合成樹脂の使用量だけでなく、従来用いられてきたアルミ等の金属箔を他材料に代替する等、全ての原材料の使用量を削減して、生産時の二酸化炭素の発生量を全体的に抑えることが求められており、特に基材に対して紙を適用することが検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、輸送時の振動等により、ピンホールと呼ばれる小さな穴の発生を抑制可能な紙積層シートが、特許文献2には、生分解性を有し、かつ、酸素バリア性・水蒸気バリア性に優れ、安定した蒸着層を有し、食品用包装材料として使用可能な積層材料がそれぞれ開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示される材料を用いた包装材料は、高い気体バリア性が要求される用途には適しておらず、更に、特許文献2で開示される包装材料では、蒸着層を構成するも、蒸着層を形成するプロセス増加や生産コスト高に加え、製袋時の充填適性について開示されておらず、高速で内容物を包装及び封止しうる包装材料として適用することは難しい現状にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-69297号公報
【特許文献2】特開2003-291296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した現状に鑑みて、従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、酸素及び水蒸気等の気体バリア性を有し、低温シール性かつ内容物を高速で充填及び封止可能な高速充填封止性を備える包装用バリア紙、及びそのバリア紙を用いた包装袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、紙基材を用いた、低温シール性を有し、かつ内容物を高速充填封印可能な包装用バリア紙であって、当該バリア紙は、
紙からなる基材と、
前記基材上に設けられたバリア層と、
前記バリア層上に設けられたアンカーコート層と、
接着用樹脂層と、
シーラント層と、が積層されてなる包装用バリア紙であって、
前記基材は、当該包装用バリア紙全体の50重量%以上を占め、
前記シーラント層が、20~40m/分の速度で封止及び包装でき、且つ100℃~130℃で融着可能な材料から選択されて含んでなる、
ことを特徴とする、包装用バリア紙に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記バリア層が、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる群から選択された1種であることを特徴とする、請求項1に記載の包装用バリア紙に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記シーラント層が、ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の包装用バリア紙に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記包装用バリア紙の引裂き強度が300~2000mNであることを特徴とする、請求項1または2に記載の包装用バリア紙に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1または2に記載の包装用バリア紙より形成されてなる包装袋であって、上記包装用バリア紙を折曲させて前記包装袋の底部を形成し、少なくとも側辺部を加熱融着して、内容物を収納可能な収納部が形成されることを特徴とする、包装袋に関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、正面視及び側面視において、前記包装袋の開口が、前記袋の上部に形成されてなることを特徴とする、請求項5に記載の包装袋に関する。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記内容物が、顆粒、粉末及びかやく等の食料品であることを特徴とする、請求項5に記載の包装袋に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明の包装用バリア紙によれば、紙基材を用いた、低温シール性を有し、かつ内容物を高速充填封印可能な包装用バリア紙であって、当該バリア紙は、
紙からなる基材と、
前記基材上に設けられたバリア層と、
前記バリア層上に設けられたアンカーコート層と、
接着用樹脂層と、
シーラント層と、が積層されてなる包装用バリア紙であって、
前記基材は、当該包装用バリア紙全体の50重量%以上を占め、
前記シーラント層が、20~40m/分の速度で封止及び包装でき、且つ100℃~130℃で融着可能な材料から選択されて含んでなる、
ことで、基材を紙としているため耐熱性に優れているので、実際の包装機で製袋する際の熱による包材の収縮防止が可能となる。更に構成される各層は、製袋しながら包装することに有効なので、製袋包装機により内容物を封入後に高速で封止及び包装されうる効果を奏する。
【0017】
請求項2に係る発明の包装用バリア紙によれば、前記バリア層が、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる群から選択された1種であることで、紙基材層より透過された水蒸気や気体等を確実に捕捉できうる効果を奏する。
【0018】
請求項3に係る発明の包装用バリア紙によれば、前記シーラント層が、ポリオレフィン系樹脂からなることで、製袋時に低温でシールすることが容易となる効果を奏する。
【0019】
請求項4に係る発明の包装用バリア紙によれば、前記包装用バリア紙の引裂き強度が300~2000mNであることで、手切り性が良好となり、包装袋の開封も容易となる効果を奏する。
【0020】
請求項5に係る発明の包装用バリア紙より形成されてなる包装袋によれば、包装用バリア紙より形成されてなる包装袋であって、上記包装用バリア紙を折曲させて前記包装袋の底部を形成し、少なくとも側辺部を加熱融着して、内容物を収納可能な収納部が形成されることで、少なくとも3方がシールされたパウチ状の包装袋を製袋可能な効果を奏する。
【0021】
請求項6に係る発明の包装用バリア紙より形成されてなる包装袋によれば、正面視及び側面視において、前記包装袋の開口が、前記袋の上部に形成されてなることで、開口からの内容物の高速充填が容易となる効果を奏する。
【0022】
請求項7に係る発明の包装用バリア紙より形成されてなる包装袋によれば、前記内容物が、顆粒、粉末及びかやく等の食料品であることで、酸素及び水蒸気に対して高いバリア性(気体非透過性)を有するので、内容物が乾燥せず長期間の保存が可能となる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る包装用バリア紙を形成するラミネート体の構成を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明に係る包装用バリア紙の包装方向により、シール(加熱融着)強度に及ぼす加熱特性を示す模式図であって、(A)は、縦方向でのシール強度特性、(B) は横方向でのシール強度特性を示す模式図である。
【
図3】本発明に係る包装用バリア紙及びポリエチレンテレフタレート(PET)を基材として作製した同様の材料の加熱融着強度(シール強度)特性を示す模式図であって、(A)は、縦方向でのシール強度特性、(B) は横方向でのシール強度特性を示す模式図である。
【
図4】本発明に係る包装用バリア紙の力学的特性である、引張強度を示す模式図である。
【
図5】本発明に係る包装用バリア紙の力学的特性である、引裂き強度を示す模式図であり、(1)はシーラント別の各包装用バリア紙の引裂き強度を示す模式図であって、(2)は官能評価を示す模式図である。
【
図6】本発明に係る包装用バリア紙より形成される包装袋を示す正面図であって、(a)は正面からのAA’断面図、(b)は側面からのBB’断面図である。
【
図7】本発明に係る包装用バリア紙より形成される包装袋の包装時の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[包装用バリア紙の構成]
以下、本発明に係る包装用バリア紙の好適な実施形態について、図面を参照しながら包装用バリア紙の一例を示して詳細に説明する。
本発明の一例である実施形態の包装用バリア紙10は、例えば、食品等を包装するために用いられる包装材料である。
本発明の構成を示す事例である模式図を
図1に示すように、包装用バリア紙10は、紙基材層11と、紙基材上に設けられた気体透過度が低いバリア層12と、バリア層12の一方の面側に設けられたシーラント層13と、バリア層12とシーラント層13を接合する接着用樹脂層14と、アンカーコート(AC)層16を有するラミネート体であり、紙基材層11、バリア層12、アンカーコート層16、接着用樹脂層14、シーラント層13の順で積層されている。
以下、当該バリア紙10を構成する各層について説明する。
【0025】
紙基材層11は、バリア層12を備えるシーラント層13を支持する基材層であり、可撓性のある、紙軟包装を構成する基材である。
紙基材層11は、熱や機械的張力等から基材層や後述するアンカーコート層を保護する役割と、表印刷を行う際の印刷基材としての役割、更に耐熱性が高いことから、実際の包装機で製袋する際の熱による包材の収縮を防止する役割を有する。
【0026】
その紙基材層11を構成する紙としては、目的とする包材の機能や印刷柄等によって自由に選択でき特に限定されず、本発明では、バリア性を付与した紙(バリアコート紙)を例示したが、それ以外に、上質紙、コート紙、マット紙、アート紙、クラフト紙等が例示される。なかでも、包装材料の機能性や軽量化の観点からバリアコート紙が好ましい。
【0027】
なお、紙基材層11の紙坪量は、包装機で製袋する際にフィルム送りの抵抗とならなければ特に限定されないが、紙坪量30~100g/m2であることが好ましい。30g/m2未満であると、当該包装用バリア紙全体の50重量%以上を占めることが難しい。一方、100g/m2を超えると、熱が伝わりにくくなり、シーラント層を設けても熱融着を行うことが困難になることがある。
【0028】
更に、紙基材層に、必要に応じてインキ層15や表面層等を順次設けてもよい。
ここで、インキ層15は、絵柄を印刷した層であり、絵柄とは、紙基材層11に記録または印刷され得る種々の態様の記録対象のことであって、特に限定されることなく、図、文字、模様、パターン、記号、柄、マーク等を広く含む。
【0029】
当該バリア紙10が食品を内包することが意図された包装袋に用いられる場合は、絵柄として、内容物の図や商品名、賞味期限、製造日、製造番号等の情報を示す文字が用いられる。
更に、絵柄層の擦れ等による消失を抑制したり、絵柄の改ざんを抑制したりすることができる表面層等を設けても良いが、それぞれ必要に応じて適宜省略してもよい。
【0030】
次にシーラント層13は、当該バリア紙10の紙基材層11とは反対側の面に表出する層である。シーラント層13は、当該バリア紙10を用いて包装袋等の包装体を形成した場合に、最内層となる層であり、加熱による接着特性を有するヒートシール(熱融着)性を有する。
【0031】
シーラント層13は、加熱により隙間なくヒートシールされる観点から、その厚さは、15μm以上80μm以下であることが望ましい。シーラント層13の厚みが、15μm以上であれば、例えば、当該バリア紙10を用いて後述の包装袋1A(
図5参照)を製袋するときに、特に折り返される部位においてシール強度を維持することができる。
また、シーラント層13の厚みが、50μm以下とすることで、優れた手切れ性やホットタック性(内容物充填時の圧力衝撃に対するシール箇所が剥離しない特性)を維持することができる。
【0032】
そのシーラント層13を構成する合成樹脂は、ヒートシール性を有する未延伸ポリオレフィン樹脂が好ましく用いられる。特に、本発明においては、未延伸ポリエチレン系樹脂または未延伸ポリプロピレン系樹脂を好適に使用することができる。
【0033】
未延伸ポリエチレン系樹脂を構成する樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)などが例示される。また、エチレンの一部を他のモノマーに置き換えた共重合オレフィンであってもよい。
【0034】
さらに、未延伸ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどが例示される。また、プロピレンの一部を他のモノマーに置き換えた共重合ポリプロピレンであってもよい。
【0035】
また、当該バリア紙10は紙基材層11とシーラント層13との間に、バリア層12を備える。
紙基材層11は酸素や水蒸気などを通しやすく、バリア層12は、常用の基材に比べ、従来公知の水蒸気及び/又は酸素等のガスの透過を抑制するバリア性を有する材料により構成される層であり、バリア層12は、積層体を透過する酸素や水蒸気を抑制するために設けられている。これらの中でも、リサイクル性や原材料削減を考慮すると、バリア剤を塗工した層であることが好ましい。
また、バリア層12を構成する樹脂としては、酸素透過率、水蒸気透過率が低いものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンポリビニルアルコール系樹脂又はポリ塩化ビニリデン系樹脂がより好適に用いられる。
【0036】
接着用樹脂層14は、バリア層12とシーラント層13とを接合するものであり、ポリオレフィン系樹脂からなることが好ましい。
【0037】
またバリア層12と接着用樹脂層14の間に、アンカーコート(AC)層16が設けられても良い。
アンカーコート(AC)層16は、合成樹脂等の基材密着性の悪い部材に対して、紙基材層の接着性を向上させる接着剤をコーティングして設けられる。
上記アンカーコート(AC)層16を形成する樹脂としては、基材層と合成樹脂層の接着性が向上するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系のアンカーコート剤等が好適である。
【0038】
更に、アンカーコート(AC)層16を形成する方法としては特に限定されず、ロールコーティング法、グラビアコート法、ブレーダコート法等の公知のコーティング法等が例示される。
なお、アンカーコート(AC)層16の厚みは0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。0.1μm未満であると、ラミネート強度を得る点で不充分となり、10μmを超えると、安定した強度が出なくなり、上記のアンカーコート剤は柔軟性に乏しいため、悪影響を与える。より好ましくは、0.1μm以上、5μm以下である。
【0039】
<当該バリア紙を用いた包装袋>
図6及び
図7は、本実施形態の当該バリア紙を用いた包装袋を示す図である。
図6は、本実施形態の当該バリア紙10を用いた包装袋1Aを示す図であって、
図6(A)は、本実施形態の当該バリア紙10を用いた包装袋1Aを示すAA’断面図であり、
図6(B)は、
図6(A)のBB’断面図である。また、
図7は、包装袋1Aを連続して包装及び封止した包装袋1Bを示す正面図である。
本実施形態のバリア紙10は、例えば、3辺をシールした平パウチ(3方パウチ)型の包装袋1A(
図6参照)に適用することができ、1枚の矩形状のバリア紙10をシーラント層13が対面するように二つ折りに折り曲げ、折り線を底辺とし以外の3辺をヒートシールしてシール部が形成され、袋上部に開口が設けられるように作製される。
【0040】
当該バリア紙10は、従来の包装材料に比して手切れ性に優れているため、上記のような包装袋に用いることによって、包装袋の開封部分を手で切って、容易に開封することができる。また、開封した開口部を折り曲げて塞ぎ、塞いだ状態を維持することもできる。
なお、包装袋の形態は、上述の平パウチ型等に限定されるものでなく、4辺をシールした4方パウチ型の包装袋であってもよい。さらに、必要に応じてノッチ等切り込み部を別途設けても良い。
【実施例0041】
以下に、本発明に係る包装用バリア紙に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
本発明の包装用バリア紙を実施例に基づき下記に詳述する。尚、当該バリア紙の物性は以下の各方法にて測定を行った。
[紙坪量]
試験片として、当該紙を200mm×250mmに切り出し、電子天秤を用いて測定して、紙坪量(g/m2)を算出した。
[ヒートシール強度]
上記試験片を2枚用意し、シーラント層同士が接するように重ねて、80~180℃、0.13MPaにて0.5秒間ヒートシールしてフィルム状とし、フィルムの長さ方向(縦方向:(MD))と幅方向(横方向:(TD))について、それぞれのシール強度を測定した。
試験方法は、日本工業規格JIS Z 1707に準拠して、各温度でシールした試験片のヒートシール部の引張強度を測定した。なお、試験片幅は15mmとし、引張り速度300mm/分として、ヒートシール部が破断する最大荷重を求めた。
また、図示してはいないが、上記結果を基に、剥離させて形成される剥離距離を測定して各試料のホットタック性を検討した。試験方法は、以下に記載の手順にて行った。
(1)シーラント面々を重ね合わせた試験片端部に30gの分銅をクリップで鋏み込む。
(2)ヒートシーラーにて100~150℃、シール圧1kg/cm2として1秒間シールする。
(3)上記ヒートシーラーのシールバーが降りたと同時に手を離す。
(4)上記シールバーが上昇すると試験片は分銅に引き出され落下する。
(5)試験片のシーラント面のシール部の剥離距離を測定する。
[引裂き強度]
日本工業規格JIS K 7128-2に準拠し、エルメンドルフ法を適用して、引裂き強度を測定した。
さらに、成人男性または女性(20代から50代)10名を無作為に抽出して引裂き試験を実施し、当該バリア紙の引裂きやすさ及び切り難さ等を5段階で評価して官能評価を得た。
[引張強度]
日本工業規格JIS Z 1707に準拠して、引張強度を測定した。試験片幅は15mmとし、引張速度を500mm/分として、試験片全体が破断する最大荷重を求めた。
[気体透過度]
また、紙基材である当該紙を、日本工業規格JIS K 7126 Bに準拠し、23℃、60%RTの環境下にて気体透過度を測定した。測定対象とする気体は、酸素及び水蒸気とした。
[内容物の充填適性評価]
当該バリア紙を包装袋にした際、内容物を高速で充填及び封止可能であるかを確認するため、製袋包装機にて当該バリア紙を製袋して、内容物を充填及び封止する試験を実施した。
なお、上記試験は、三方・四方シール包装機R―54G((株)トパック製)を用いて、横方向に送達して、当該紙を折曲後、側辺部を130~170℃でシールし、内容物としてグラニュー糖を4.5g充填した後、封止した。なお、回転数は500rpmとし、ピッチは80mmとした。以下、表1に試験条件を示す。
【0043】
【0044】
<実施例1>
初めに、一方の面にバリア剤が塗工された紙基材である、バリア紙(1)及び(2)(:シールドプラス(登録商標)、日本製紙(株)製 片艶晒紙タイプ)、及びバリア紙(3)(:HansolEB(ハンソル製紙(株)製(韓国)片艶晒紙タイプ)をそれぞれ用いた。当該紙の紙坪量は、バリア紙(1)及び(2)が、66(g/m2)、バリア紙(3)が、70(g/m2)であった。
該紙基材のバリア層上にポリウレタン系の2液溶剤型のアンカーコート剤を塗布し、これを乾燥して、紙基材層/バリア層/アンカーコート層の構成を有する積層フィルムを得た。
次いで、紙基材/バリア層/アンカーコート層の積層シート上に、低密度ポリエチレン(LDPE)(CE4009 住友化学(株)製)(密度920kg/m3)からなる接着用樹脂を20μmの厚さとなるように溶融押出し、エチレン―メタクリル酸共重合体(EMMA)(N410C 三井・ダウ ポリケミカル(株)製)(密度940kg/m3)からなるシーラント層用の樹脂を25μmの厚さとなるように溶融押出し、基材層/バリア層/アンカーコート層/接着層/シーラント層の層構成を得た。なお、当該紙基材の気体透過度を表2に記す。
(以下余白)
【0045】
【0046】
<実施例2>
当該紙基材を上記バリア紙(3)とし、シーラント層を直鎖状低密度ポリエチレン(LLD)(TUX-VCS 三井化学東セロ(株)製)とした以外は実施例1の当該バリア紙の構成と同様とした。
【0047】
<比較例1>
上記各実施例の比較例として、紙基材をポリエチレンテレフタレート(PET)に変更した以外は、各実施例と同様にして当該紙と同様の構成である試料を得た。
【0048】
実施例及び比較例の各バリア紙の評価結果を以下に詳述する。
【0049】
<低温シール性の評価>
作製した実施例1、2及び比較例の当該バリア紙を、JIS Z 1707に準拠して、縦方向(MD)及び横方向(TD)それぞれのシール強度に及ぼすシール温度の影響をそれぞれ評価した。
図2及び
図3にその結果を示す。
実施例1より、縦方向及び横方向ともに、シール温度が100乃至110℃にて、シール強度の発現が確認され、さらに実施例2では、90℃以降よりシール強度が発現し、さらにシール強度の立ち上がりは、実施例1と比して著しく高く、シール強度の最大値でも、縦方向及び横方向ともに、130℃以上のシール温度で実施例1の1.5倍のシール強度を有することが確認された。
【0050】
更に、実施例1、2及び比較例1を、上記と同様の縦方向及び横方向のシール強度に及ぼすシール温度の影響について評価した(
図3参照)。
その結果、比較例1にて、基材が樹脂(PET)では、縦及び横方向どちらも90℃でシール強度が発現し、100~130℃で加熱すると、最大で25~40(N)のシール強度を示したが、基材を紙とした各実施例では、シール強度の発現が100~110℃と比較例と比べて高く、更に、シール強度が、最大で15Nと、比較例と比して低下することが明らかとなった。
また、実施例1及び2のホットタック性を評価したところ、100℃~150℃の範囲で加熱した時、シーラント層の一部の剥離距離は10mm以内となり、製袋して内容物を高速で充填しても剥離せず、損傷が小さくなることが示唆された。
【0051】
<引張強度の評価>
図4に、実施例1、2及び比較例1との引張強度(引張破断強度)を示す。比較例が44~53(N)であるのに対し、各実施例では、一部低い試料があるも総じて73~84(N)と、比較例と比して高かった。
なお、図示はしていないが、引張伸び試験も併せて実施し、比較例では試験片長と比して0.9~1.2倍の伸びを示したが、実施例1及び2の試料は、0.02~0.04倍の伸びとなり、総じて伸びないことが確認された。
【0052】
<引裂き性の評価>
また、実施例1及び2の当該バリア紙を、JIS K7128-2に準拠し、エルメンドルフ法を適用して引裂き強度を測定したところ、各試料は総じて、460~700mNであったが、実施例2の試料及び、シーラント層の種類別によって一部の試料では、最大で1500mNを示し、引裂き強度が非常に高いことが確認された(
図5(1)参照)。
さらに、手切りによる引裂き性(手切れ性)の評価を、作製した各実施例の試料を試験者により手で適正に切れるか否かを判定する官能評価とし、5段階で評価した。
実施例1及び2のバリア紙の手切れ性評価は、総じて4.0から4.5点であったが、上記の実施例2の試料では、引裂き強度が650~1500mN(
図5(1)参照)と大きく切りにくくなるので、手切れ性の評価は総じて3点台と低くなった(
図5(2)参照)。
【0053】
<包装袋の高速充填適性の確認>
上述した評価結果を基に、内容物をグラニュー糖として製袋包装機にて製袋及び封止して、当該バリア紙より製袋された包装袋1Aの内容物の高速充填適性を確認した。
以下表3に、作製した包装袋1Aの上部(上)及び左辺(左)及び右辺(右)を形成してシールした箇所のシール強度を測定した結果を示す。なお、試験条件は日本工業規格JIS Z 1707に準拠して、各箇所を3回測定して平均化した。なお、引張速度は、300mm/分とした。
【0054】
【0055】
包装袋の各辺部でのシール強度は、総じて9~18Nであり、包装袋としても十分なシール強度を有するとともに、本実施例で作製された包装袋が、内容物の高速充填適性を有していることが確認された。
なお、バリア紙(1)を用いた試験片において、包袋した包装袋をシールした側辺部の角部に、未溶着の箇所が発生した。
この未溶着の原因として、基材である紙の剛性と、シーラント層のホットタック性能との組み合わせによっては調和しない可能性が考えられ、組み合わせを最適化すれば十分に機能することが明らかとなった。
【0056】
ここで本発明は、上記実施形態以外にも、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形を行うことが可能である。
本発明では、内容物を顆粒物等の粒形状を有する食料品を対象にしているが、それ以外に同様の形状に限定すれば、化粧品や医薬品等も収容することが可能である。