(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030068
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
G05G 7/10 20060101AFI20240229BHJP
F16C 1/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G05G7/10 A
F16C1/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132624
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】今永 祐二
【テーマコード(参考)】
3J032
3J070
【Fターム(参考)】
3J032AB09
3J032AB22
3J032BC02
3J070AA04
3J070BA67
3J070CB03
3J070CB37
3J070CC24
3J070DA03
(57)【要約】
【課題】長手状部材を好適に案内することが可能な作業車を提供する。
【解決手段】移動可能なローダレバーと、可撓性を有する長手状に形成され、ローダレバーに連結されると共に、ローダレバーの移動に伴って移動するケーブル40・50と、ケーブル40・50が挿通される挿通孔71aを有し、車体に対して相対移動可能に設けられる可動部材70と、を具備し、車体に固定され、切欠部62を有する板状部材60をさらに具備し、可動部材70は、挿通孔71aが切欠部62の内側の範囲内で移動するように板状部材60に相対移動可能に設けられる。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な移動部材と、
可撓性を有する長手状に形成され、前記移動部材に連結されると共に、前記移動部材の移動に伴って移動する長手状部材と、
前記長手状部材が挿通される挿通部を有し、車体に対して相対移動可能に設けられる可動部材と、
を具備する作業車。
【請求項2】
前記車体に固定され、切欠部を有する固定部材をさらに具備し、
前記可動部材は、
前記挿通部が前記切欠部の内側の範囲内で移動するように前記固定部材に相対移動可能に設けられる、
請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記固定部材は、
前記切欠部が形成される第一板状部を具備し、
前記可動部材は、
前記挿通部が形成されると共に、前記第一板状部の前記切欠部を塞ぐように形成される第二板状部を具備する、
請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記可動部材の移動を案内する案内機構をさらに具備する、
請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記案内機構は、
前記可動部材又は前記固定部材のいずれか一方に回転可能に設けられるローラと、
前記可動部材又は前記固定部材のいずれか他方に設けられ、前記ローラを案内する案内部と、
を具備する、
請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記案内機構は、
前記第一板状部の一側面側及び他側面側のそれぞれに設けられる、
請求項4に記載の作業車。
【請求項7】
前記移動部材は、
フロントローダを操作する操作具を含み、
前記長手状部材は、
前記操作具の操作を伝達するケーブルを含む、
請求項2から請求項6までのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項8】
作業者が搭乗する搭乗部に設けられ、位置を調整可能な座席をさらに具備し、
前記固定部材は、
前記搭乗部の底部を成すものであり、
前記操作具は、
前記座席と一体的に移動するように構成される、
請求項7に記載の作業車。
【請求項9】
前記長手状部材は、
前記操作具から前記座席の移動方向に沿う一方向に向かって延出するように設けられると共に、前記挿通部を介して前記底部の下方へと案内され、前記底部の下方において前記一方向とは反対方向に向かって延出される、
請求項8に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル等の長手状部材を具備する作業車の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の作業車(トラクタ)は、移動可能な座席、フロントローダを操作するためのジョイスティック装置、及びジョイスティック装置とバルブとを接続するケーブル等を具備する。ジョイスティック装置は、座席に固定され、当該座席と一体的に移動する。ケーブルは、プレートに形成された長孔を介して、キャビンの内部から外部へと案内される。このように長孔を介してケーブルを配置することで、座席の移動に伴うケーブルの移動や変形を許容することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、ケーブルの移動を許容するために比較的大きな長孔を形成する必要があるため、当該長孔を介して塵挨がキャビン内へと流入するおそれや、美観が低下するおそれ等がある。このため、当該長孔を塞ぐような大型のシール部材が別途必要になるなど、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、長手状部材を好適に案内することが可能な作業車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、移動可能な移動部材と、可撓性を有する長手状に形成され、前記移動部材に連結されると共に、前記移動部材の移動に伴って移動する長手状部材と、前記長手状部材が挿通される挿通部を有し、車体に対して相対移動可能に設けられる可動部材と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、長手状部材を好適に案内することができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記車体に固定され、切欠部を有する固定部材をさらに具備し、前記可動部材は、前記挿通部が前記切欠部の内側の範囲内で移動するように前記固定部材に相対移動可能に設けられるものである。
本開示の一態様によれば、固定部材を貫通するように配置されるケーブルの無理な変形を抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記固定部材は、前記切欠部が形成される第一板状部を具備し、前記可動部材は、前記挿通部が形成されると共に、前記第一板状部の前記切欠部を塞ぐように形成される第二板状部を具備するものである。
本開示の一態様によれば、塵挨の流通の防止や美観の向上を図ることができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記可動部材の移動を案内する案内機構をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、可動部材を好適に移動させることができる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記案内機構は、前記可動部材又は前記固定部材のいずれか一方に回転可能に設けられるローラと、前記可動部材又は前記固定部材のいずれか他方に設けられ、前記ローラを案内する案内部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、可動部材を好適に移動させることができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記案内機構は、前記第一板状部の一側面側及び他側面側のそれぞれに設けられるものである。
本開示の一態様によれば、可動部材を好適に移動させることができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記移動部材は、フロントローダを操作する操作具を含み、前記長手状部材は、前記操作具の操作を伝達するケーブルを含むものである。
本開示の一態様によれば、フロントローダを操作する操作具に連結されるケーブルの無理な変形を抑制することができる。
【0015】
本開示の一態様においては、作業者が搭乗する搭乗部に設けられ、位置を調整可能な座席をさらに具備し、前記固定部材は、前記搭乗部の底部を成すものであり、前記操作具は、前記座席と一体的に移動するように構成されるものである。
本開示の一態様によれば、座席の位置調整に伴って移動するケーブルの無理な変形を抑制することができる。
【0016】
本開示の一態様においては、前記長手状部材は、前記操作具から前記座席の移動方向に沿う一方向に向かって延出するように設けられると共に、前記挿通部を介して前記底部の下方へと案内され、前記底部の下方において前記一方向とは反対方向に向かって延出されるものである。
本開示の一態様によれば、座席の移動に伴うケーブルの摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一態様によれば、長手状部材を好適に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【
図11】ロッドエンド及び第二揺動部材を示した拡大斜視図。
【
図12】レバー本体部及び挿通部が前後に揺動する様子を示した側面図。
【
図13】ロッドエンド及び第二揺動部材が揺動する様子を示した斜視図。
【
図14】ローダレバーが左方へ揺動される場合における各種部材の移動方向を示した斜視図。
【
図15】座席、アームレスト及び可動部材の移動方向を示した側面図。
【
図19】前方に移動された可動部材を示した斜視図。
【
図20】可動部材を前方に案内した案内機構を示した拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれトラクタ1の車体を基準とした上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0020】
以下では、
図1及び
図2を参照し、本発明の一実施形態に係るトラクタ1について説明する。
【0021】
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、トランスミッションケース4、前輪5、後輪6、ボンネット7、キャビン8、ステアリングホイール9及びフロントローダ10を具備する。
【0022】
図1に示す機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、平面視略矩形状に形成される。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けて配置される。機体フレーム2の後部にはエンジン3が固定される。当該エンジン3の後部には、トランスミッションケース4が固定される。機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪5に支持される。トランスミッションケース4の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪6に支持される。エンジン3はボンネット7に覆われる。
【0023】
エンジン3の動力は、トランスミッションケース4に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪5に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪6に伝達可能とされる。エンジン3の動力によって前輪5及び後輪6が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。
【0024】
エンジン3の後方にはキャビン8が設けられる。キャビン8の内部には、作業者が搭乗する搭乗部8aが形成される。キャビン8の底面を形成する底部8b(
図2参照)は、作業車が足を置く部分に比べて、座席16が設置される部分が高くなるような段差状に形成される。当該搭乗部8aには、前輪5の切れ角を調節するためのステアリングホイール9及び種々の操作具が配置される。また
図2に示すように、搭乗部8aには、作業者が着座するための座席16、及び作業者が肘を置くためのアームレスト17等が設けられる。アームレスト17は、座席16の左右両側に設けられる。右側のアームレスト17の前方には、フロントローダ10を操作するためのローダレバー20が設けられる。
【0025】
図1に示すトラクタ1の前部には、フロントローダ10が装着される。フロントローダ10は、ブーム11、バケット12、ブームシリンダ13、バケットシリンダ14及びバルブ15(
図2参照)等を具備する。
【0026】
ブーム11は、前下方に向けて延びるように配置される。バケット12は、ブーム11の前端部に着脱可能に連結される。
図2に示すバルブ15は、ブームシリンダ13及びバケットシリンダ14に油圧を供給可能に構成される。バルブ15は、搭乗部8aの下方に配置される。
図1に示すブーム11はバルブ15からの油圧によってブームシリンダ13が伸縮されることで、車体に対して回動することができる。バケット12はバルブ15からの油圧によってバケットシリンダ14が伸縮されることで、ブーム11に対して回動することができる。このように、ブーム11及びバケット12を適宜回動させながら土砂の運搬作業等を行うことができる。
【0027】
以下では
図2から
図14を参照し、ローダレバー20、及び当該ローダレバー20の操作力をバルブ15に伝達するための各種部材の構成について説明する。具体的には、ローダレバー20、操作機構30、第一ケーブル40及び第二ケーブル50について説明する。
【0028】
なお、
図2から
図11には、ニュートラル位置に移動された状態のローダレバー20、操作機構30、第一ケーブル40及び第二ケーブル50が示されている。以下では、ローダレバー20がニュートラル位置にあることを前提として、ローダレバー20等の構成を説明する。
【0029】
ローダレバー20は、キャビン8の底部8bを挟んでバルブ15の後上方に配置される。
図3及び
図4に示すように、ローダレバー20は、レバー本体部21及び挿通部22を具備する。レバー本体部21は、作業者が把持するグリップ(上端部)から略下方に延出するように形成される。
【0030】
挿通部22は、後述する操作機構30の上側揺動軸33が挿通される部分である。挿通部22は、長手方向を上下方向に向けた略直方体状に形成される。挿通部22の上面には、レバー本体部21が固定される。挿通部22の下端部には、第一ケーブル40が連結される(
図9等参照)。また挿通部22には、操作機構30を介して第二ケーブル50も連結される。
【0031】
図4から
図6に示す操作機構30は、ローダレバー20の前後方向及び左右方向への揺動操作を、第一ケーブル40及び第二ケーブル50に伝達するためのものである。操作機構30は、ローダレバー20の下端部に設けられる。後述するように、操作機構30は、ローダレバー20の揺動操作を、第一ケーブル40及び第二ケーブル50の前後方向への往復運動に変換する。操作機構30は、支持部材31、第一揺動部材32、上側揺動軸33、ボルト34、規制部材35、ロッドエンド36、第二揺動部材37、下側第二揺動軸38及び連結ロッド39を具備する。
【0032】
支持部材31は、後述する第一揺動部材32及び第二揺動部材37等を支持するためのものである。支持部材31は、略板状の部材を適宜折り曲げて形成される。支持部材31は、ボルト及びナット等を介して車体に固定される。
図4、
図5及び
図7に示すように、支持部材31は、前壁部31aと、前壁部31aを挟むように形成された左右一対の左壁部31b及び右壁部31cと、底面を形成する底部31dと、前壁部31aに形成されたボス部31eと、左壁部31bの後部に固定されたケーブル支持部31fと、を具備する。
【0033】
右壁部31cは、左壁部31bよりも前後幅が短くなるように形成される。ボス部31eは、軸線方向を前後方向に向けた略筒状に形成される。
図5及び
図7に示すように、ボス部31eは、前壁部31aから前方に突出するように形成される。ケーブル支持部31fは、支持部材31の後部に形成される。ケーブル支持部31fは、底部31dから上方へ延出するように形成され、第一ケーブル40及び第二ケーブル50が挿通可能に形成される。
【0034】
第一揺動部材32は、ローダレバー20の左右方向の揺動操作に応じて左右方向に揺動される部材である。第一揺動部材32は、略板状の部材を適宜組み合わせて形成される。
図4、
図7及び
図9に示すように、第一揺動部材32は、第一取付部32a及び第二取付部32cを具備する。
【0035】
第一取付部32aは、ローダレバー20が取り付けられる部分である。第一取付部32aは、平面視において後方が開口する略U字状に形成される。第一取付部32aの下部は、支持部材31の内側に配置される。第一取付部32aの内側には、ローダレバー20の挿通部22が配置される。
【0036】
図10に示すように、第一取付部32aには、前方へ延出する下側第一揺動軸32bが形成される。下側第一揺動軸32bは、軸線D32bを前後方向に向けた略筒状に形成される。下側第一揺動軸32bは、上側揺動軸33の前下方に位置する(
図5参照)。下側第一揺動軸32bは、支持部材31のボス部31eに挿通される。これによって第一揺動部材32は、支持部材31に対して左右方向に揺動可能、かつ前後方向に揺動不能に設けられる。またこれによって、ローダレバー20(
図4参照)は、下側第一揺動軸32bを中心に左右方向に揺動可能となる。
【0037】
図4及び
図9に示す第二取付部32cは、後述するロッドエンド36が取り付けられる部分である。第二取付部32cは、第一取付部32aの右側面に形成される。第二取付部32cは、支持部材31の右壁部31cの後方に位置する(
図10参照)。第二取付部32cは、前後一対の前壁部32d及び後壁部32eを具備し、側面視で上方が開口する略U字状に形成される。これによって第二取付部32cの強度を比較的高くすることができる。
【0038】
図9に示すように、第二取付部32cの前壁部32dの上面は、右下がりに傾斜するように形成される。第二取付部32cの後壁部32eの上下幅は、前壁部32d(上端部)の上下幅よりも短い。このような構成により、後述する第二揺動部材37及び連結ロッド39が揺動する際に、第二揺動部材37等が第一揺動部材32に接触するのを防止できる。
【0039】
図4及び
図9に示すように、第二取付部32cの後壁部32eの右端部には、切欠部32fが形成される。作業者は、第二取付部32cにロッドエンド36を取り付ける際に、この切欠部32fのスペースを利用してスパナ等の工具を使うことができる。これによってロッドエンド36を第二取付部32cに容易に取り付けることができる。
【0040】
図4、
図7及び
図8に示す上側揺動軸33は、ローダレバー20を前後方向に揺動可能に支持するためのものである。上側揺動軸33は、軸線方向を左右方向に向けて配置される。本実施形態では、上側揺動軸33として、第一取付部32aの左右幅よりも長いボルトが用いられる。上側揺動軸33は、第一揺動部材32の第一取付部32a及びローダレバー20の挿通部22に挿通される。これによって上側揺動軸33は、ローダレバー20を前後方向に揺動可能に支持する。当該ローダレバー20上の1点(仮想点)に着目すると、当該仮想点は、ローダレバー20の上側揺動軸33を中心とする揺動時に、上側揺動軸33の軸線(左右方向)に対して垂直な方向を向いた第一仮想平面P1上を移動することになる(
図12参照)。
【0041】
図10に示すボルト34は、第一揺動部材32の下側第一揺動軸32bが支持部材31のボス部31eから抜けるのを防止するためのものである。ボルト34は、下側第一揺動軸32bに締結される。
【0042】
図5及び
図6に示す規制部材35は、第一揺動部材32の揺動を所定の位置で規制するためのものである。規制部材35は、第一規制部材35a及び第二規制部材35bを具備する。
【0043】
第一規制部材35aは、第一揺動部材32の右方への揺動を規制するためのものである。
図8に示すように、第一規制部材35aは、支持部材31の右壁部31cに取り付けられるボルト及びナットによって構成される。第一規制部材35aは、ボルトの軸部が右壁部31cから支持部材31の内側へ突出するように設けられる。第一揺動部材32が右方へ所定の角度揺動された場合、第一取付部32aに第一規制部材35aが当接する。
【0044】
これによって第一規制部材35aは、第一揺動部材32の右方への過度な揺動を規制することができ、ローダレバー20の操作性の向上を図ることができる。また本実施形態ではボルトの右壁部31cに対する突出幅を調整することにより、第一揺動部材32が第一規制部材35aに当接する角度を容易に調整することができる。
【0045】
図5及び
図9に示す第二規制部材35bは、第一揺動部材32の左方への揺動を規制するためのものである。第二規制部材35bは、支持部材31の底部31dに取り付けられるボルト及びナットによって構成される。第二規制部材35bは、ボルトの軸部が底部31dから支持部材31の内側へ延出するように設けられる。第一揺動部材32が左方へ所定の角度揺動された場合、第一取付部32aに第一揺動部材32が当接する。
【0046】
これによって第二規制部材35bは、第一揺動部材32の左方への過度な揺動を規制することができ、ローダレバー20の操作性の向上を図ることができる。また本実施形態ではボルトの底部31dに対する突出幅を調整することにより、第一揺動部材32が第二規制部材35bに当接する角度を容易に調整することができる。
【0047】
図9から
図11に示すロッドエンド36は、ローダレバー20の左右方向の揺動操作に伴って揺動する部材である。なお
図11では、第一ケーブル40及び第二ケーブル50の記載を省略している。ロッドエンド36は、第一揺動部材32の第二取付部32cに固定される。ロッドエンド36は、第二取付部32cから上方へ延びるように形成される。ロッドエンド36は、外輪36a及び内輪36bを具備する。
【0048】
外輪36aは、内輪36bを転動可能に支持する部分である。外輪36aは、略円環状に形成される。外輪36aは、ロッドエンド36の上端部に形成される。内輪36bは、後述する連結ロッド39を挿通可能な略球状の部分である。内輪36bは、外輪36aの内側に収納される。外輪36a及び内輪36bは、下側第一揺動軸32bと同じ高さ位置に配置される(
図5参照)。
【0049】
ロッドエンド36は、第一揺動部材32が左右方向へ揺動される場合に、下側第一揺動軸32bを中心に揺動する。この際ロッドエンド36は、下側第一揺動軸32bの軸線D32b(前後方向)に対して垂直な方向を向いた第二仮想平面P2上を移動する(
図13参照)。
【0050】
図8、
図10及び
図11に示す第二揺動部材37は、後述する下側第二揺動軸38を中心に揺動可能な部材である。第二揺動部材37は、下側第二揺動軸38を介して支持部材31の右壁部31cに取り付けられ、ロッドエンド36よりも前方に配置される。第二揺動部材37は、挿通部37a、延出部37b及び板状部37cを具備する。
【0051】
挿通部37aは、下側第二揺動軸38が挿通される部分である。挿通部37aは、軸線方向を左右方向に向けた円筒状に形成される。延出部37bは、挿通部37aの頂部から上方へ延出するように形成される。延出部37bは、軸線方向を上下方向に向けた円筒状に形成される。延出部37bには、第二ケーブル50が連結される。板状部37cは、連結ロッド39が固定される部分である。板状部37cは平板状に形成され、延出部37bの軸線方向と平行に配置される。板状部37cは、延出部37bから右後方に突出するように形成される。また板状部37cは、ロッドエンド36の上端部と対向するように形成される。
【0052】
下側第二揺動軸38は、第二揺動部材37を揺動可能に支持するためのものである。下側第二揺動軸38は、軸線D38を左右方向に向けて(下側第一揺動軸32bに対して垂直な向きに)配置される。また下側第二揺動軸38は、下側第一揺動軸32bと同一の高さ位置に配置される(
図5参照)。これによって操作機構30の上下幅が大きくなるのを抑制し、操作機構30の小型化を図ることができる。本実施形態では、下側第二揺動軸38は、ボルトによって構成される。下側第二揺動軸38は、支持部材31の右壁部31c及び第二揺動部材37の挿通部37aに挿通される。これによって下側第二揺動軸38は、第二揺動部材37を揺動可能に支持する。当該第二揺動部材37上の1点(仮想点)に着目すると、当該仮想点は、第二揺動部材37の下側第二揺動軸38を中心とする揺動時に、下側第二揺動軸38の軸線D38(左右方向)に対して垂直な方向を向いた仮想平面上を移動する(
図13参照)。当該仮想平面は、前述のローダレバー20の第一仮想平面P1(
図12参照)と平行であるため、以下では便宜上、第二揺動部材37についても第一仮想平面P1と称する。
【0053】
図10及び
図11に示す連結ロッド39は、ロッドエンド36を介して第一揺動部材32及び第二揺動部材37を連結するためのものである。連結ロッド39は、後方に向かうにつれて左方へ延出する長手状に形成される。連結ロッド39は、固定部39a及び軸状部39bを具備する。
【0054】
固定部39aは、連結ロッド39の右前端部に形成される。
図10に示す固定部39aは、第二揺動部材37の板状部37cに挿通される。当該挿通部分にナットNが締結されることによって、固定部39aは、第二揺動部材37の板状部37cに固定される。
【0055】
軸状部39bは、固定部39aから左後方に延出するように形成される。当該軸状部39bは、下側第二揺動軸38の軸線D38(左右方向)に対して傾斜する。より詳細には、軸状部39bは、下側第二揺動軸38の軸線D38と非平行となるように配置される。また軸状部39bは、下側第二揺動軸38の軸線D38に対して垂直な平面に対しても傾斜するように配置される。すなわち軸状部39bは、下側第二揺動軸38の軸線D38の方向との間で成す角(鋭角)が、0度より大きく、90度未満となる角度範囲で傾斜している。軸状部39bは、ロッドエンド36の内輪36bに挿通される。これによって軸状部39bは、その軸線D39に沿ってロッドエンド36に対してスライド可能に構成される。
【0056】
なお、操作機構30には、ローダレバー20の揺動を物理的に規制し、ローダレバー20の操作を不能とするレバーロック機構(不図示)を設けることも可能である。前記レバーロック機構は、例えば棒状の部材(ピン等)を、挿通部22、支持部材31及び第一揺動部材32等に貫通させて、ローダレバー20の揺動を規制する構成とすることが可能である。前記レバーロック機構によってローダレバー20の揺動を規制することで、ローダレバー20への意図しない接触等による誤操作により、バルブ15が作動するのを防止することができる。なお、前記レバーロック機構の具体的な構成は特に限定しない。
【0057】
図2及び
図5に示す第一ケーブル40は、ローダレバー20の前後方向の揺動操作をバルブ15に伝達するためのものである。第一ケーブル40は、長手状(線状)に形成され、可撓性を有している。
図5に示すように、第一ケーブル40は、アウターケーブル41及びインナーケーブル42を具備する。
【0058】
アウターケーブル41は、インナーケーブル42を覆うように形成される。アウターケーブル41の一端部は、支持部材31のケーブル支持部31fにナットを介して固定される。アウターケーブル41は、ケーブル支持部31fによって、前後方向に沿って延びるように支持される。アウターケーブル41の他端部は、
図2に示すバルブ15の近傍で車体に固定される。
【0059】
図5に示すインナーケーブル42の一端部は、アウターケーブル41の一端部から前方へ突出し、ローダレバー20の挿通部22の下面に回動可能に連結される(
図9等参照)。インナーケーブル42の他端部は、アウターケーブル41の他端部から前方へ突出し、
図2に示すバルブ15に連結される。インナーケーブル42は、挿通部22の前後方向への揺動に伴って前後方向に移動され、アウターケーブル41に対して摺動する。
【0060】
第二ケーブル50は、ローダレバー20の左右方向の揺動操作をバルブ15に伝達するためのものである。第二ケーブル50は、長手状(線状)に形成され、可撓性を有している。
図5に示すように、第二ケーブル50は、アウターケーブル51及びインナーケーブル52を具備する。
【0061】
アウターケーブル51は、インナーケーブル52を覆うように形成される。アウターケーブル51は、第一ケーブル40と同様に、バルブ15の近傍及びケーブル支持部31fに固定される。アウターケーブル51は、ケーブル支持部31fによって、前後方向に沿って延びるように支持される。インナーケーブル52の一端部は、アウターケーブル51の一端部から前方へ突出し、第二揺動部材37の延出部37bに回動可能に連結される。インナーケーブル52の他端部は、アウターケーブル51の他端部から前方へ突出し、
図2に示すバルブ15に連結される。インナーケーブル52は、第二揺動部材37の揺動に伴って前後方向に移動され、アウターケーブル51に対して摺動する。
【0062】
図2に示すように、第一ケーブル40及び第二ケーブル50は、側面視で前方が開口する略U字状に屈曲するように配置される。より詳細には、第一ケーブル40及び第二ケーブル50は、ローダレバー20の下端部から略後方へ延出し、中途部が搭乗部8aにおいて下方へ向けて屈曲するように配置される。第一ケーブル40及び第二ケーブル50の中途部は、後述する可動部材70を介して搭乗部8aの底部8bの下方へ案内される。また第一ケーブル40及び第二ケーブル50は、搭乗部8aの下方において前方に向かって延出される。
【0063】
本実施形態では、ローダレバー20の揺動操作が操作機構30によってインナーケーブル42・51の前後方向の移動に変換される。これによってバルブ15が動作され、フロントローダ10が操作される。以下、具体的に説明する。
【0064】
まず
図12を参照し、ローダレバー20の前後方向の揺動操作がインナーケーブル42の前後方向の移動に変換される流れについて説明する。なお
図12では、ローダレバー20の前後方向の揺動操作とは関係のない一部の部材(第二揺動部材37や連結ロッド39等)の記載を省略している。
【0065】
ローダレバー20のレバー本体部21が前後方向に揺動操作されると、挿通部22は、上側揺動軸33を中心に前後方向に揺動される。当該揺動に伴って、挿通部22の下端部に連結されるインナーケーブル42は前後に移動される。これによってローダレバー20の前後方向の揺動操作をインナーケーブル42の前後の移動に変換し、バルブ15を動作させることができる。
【0066】
上述の如く、操作力が入力されるレバー本体部21と、操作力を第一ケーブル40に出力する挿通部22とは、揺動時にそれぞれ第一仮想平面P1上を移動する。こうしてレバー本体部21と挿通部22とが同一平面上を移動する場合、レバー本体部21及び挿通部22を直接連結する等、簡素な構成で操作力を変換することができる。
【0067】
次に、ローダレバー20の左右方向の揺動操作がインナーケーブル52の前後方向の移動に変換される流れについて説明する。
【0068】
図3に示すローダレバー20のレバー本体部21が左右方向に揺動操作されると、挿通部22及び第一揺動部材32は、
図5に示す下側第一揺動軸32bを中心に揺動される。当該揺動に伴ってロッドエンド36も下側第一揺動軸32bを中心に揺動される。
【0069】
上述の如く、ロッドエンド36は、揺動時に
図13に示す第二仮想平面P2上を、下側第一揺動軸32bの軸線D32bを中心とする円周方向に移動する。これに対し、第二揺動部材37は、揺動時に、第二仮想平面P2に対して垂直な方向(左右方向)を向いた第一仮想平面P1上を、下側第二揺動軸38の軸線D38を中心とする円周方向に移動する。このような構成においては、ロッドエンド36が揺動時に第二揺動部材37に対して左右に変位すると共に、第二揺動部材37が揺動時にロッドエンド36に対して前後に変位することになる。この前後及び左右の変位を吸収するために複数のリンク機構を設けた場合、構造が複雑化するおそれがある。
【0070】
本実施形態では、ロッドエンド36に対してスライド可能な連結ロッド39を設けることにより、構造の簡素化を図ることができる。以下では、ローダレバー20が左方に揺動操作される場合を例に挙げて説明する。
【0071】
図14に矢印A1で示すように、ローダレバー20が左方に揺動操作されると、ロッドエンド36は、左上方(背面視反時計回り方向)に揺動される。この際、第二揺動部材37は、連結ロッド39を介してロッドエンド36により押圧される。
【0072】
ロッドエンド36の押圧により、第二揺動部材37は、
図14に矢印A2で示すように、下側第二揺動軸38を中心に右側面視時計回り方向へ揺動しようとする。その結果、連結ロッド39は、内輪36bに対して軸線D39(
図14に矢印A3で示す右前方)へスライドしながら、下側第二揺動軸38を中心に前上方(
図14に矢印A2で示す右側面視時計回り方向)に揺動される。こうして連結ロッド39が斜め方向へスライドすることにより、ロッドエンド36及び第二揺動部材37の左右及び前後の変位を吸収しながら、第二揺動部材37を揺動させることができる。
【0073】
またロッドエンド36及び第二揺動部材37の揺動に伴って、ロッドエンド36の内輪36bは、外輪36aに対して転動する。これによってロッドエンド36に対する連結ロッド39の向きの変化を吸収することができる。
【0074】
図14に矢印A4で示すように、第二揺動部材37の揺動により延出部37bが略前方へ揺動され、第二ケーブル50(インナーケーブル52)は前方に引っ張られる。こうしてローダレバー20の左方の揺動操作が第二ケーブル50の前方への移動に変換される。
【0075】
このように、本実施形態では、ロッドエンド36と第二揺動部材37とが揺動時に互いに異なる平面上(第二仮想平面P2及び第一仮想平面P1)を移動する場合でも、軸線D39を下側第二揺動軸38に対して傾斜させた連結ロッド39をスライドさせることにより、簡素な構成でローダレバー20の左方への揺動を第二ケーブル50の前方への移動に変換することができる。これによって、リンク機構(リンクの支点)の数が増加するのを抑制できるため、がたつきの増大を抑制して操作感が悪化するのを防止できると共に、ローダレバー20を軽い力で操作することができる。また部品点数の増大を抑制してコストの削減を図ることもできる。
【0076】
なお、ローダレバー20が右方に揺動操作される場合、操作機構30は、左方への揺動操作と略同様に動作して、ローダレバー20の揺動操作を第二揺動部材37の揺動(第二ケーブル50の後方への移動)に変換することができる。
【0077】
より詳細には、ローダレバー20が右方に揺動操作される場合、ロッドエンド36及び第二揺動部材37は、ローダレバー20が左方へ揺動操作される場合と反対方向に揺動される(
図14の破線矢印参照)。
【0078】
なお、本実施形態では、ローダレバー20がニュートラル位置から左右のいずれに揺動される場合であっても、連結ロッド39はロッドエンド36に対して同一の方向にスライドするように構成されている(
図14の実線及び破線の矢印A3参照)。このように構成することで、連結ロッド39の可動範囲(スライドする範囲)を狭めて、部品の小型化を図ることができる。
【0079】
また本実施形態では、支持部材31に直接的に、又は間接的に操作機構30の各種部材(第一揺動部材32等)が連結される。これによって支持部材31を介して操作機構30を一体形成することができるため、操作機構30を車体にまとめて取り付けることができ、組付性の向上を図ることができる。
【0080】
以下では、
図15から
図17を参照し、座席16、アームレスト17、ローダレバー20及び操作機構30の関係について説明する。
【0081】
座席16は、
図15の矢印D1に示すように、搭乗部8aの底部8bに対して前後位置を調整可能に構成される。ローダレバー20及び操作機構30は座席16に固定され、座席16と一体的に前後に移動するように構成される。このような構成により、座席16とローダレバー20との相対的な位置関係を保持することができるため、座席16の位置調整によって作業者とローダレバー20との間の距離が変化するのを防止することができ、ローダレバー20の操作性が低下するのを防止できる。
【0082】
またアームレスト17は、
図15の矢印D2に示すように、座席16に対して上下位置を調整可能に構成される。当該アームレスト17は、位置調整時にローダレバー20及び操作機構30に対して相対的に移動する。このような構成により、作業者の体格(腕の長さ等)に応じてアームレスト17からローダレバー20までの距離を調整することができ、ローダレバー20の操作性を向上することができる。
【0083】
ここで、座席16の移動に伴ってローダレバー20が移動すると、ローダレバー20に連結される第一ケーブル40及び第二ケーブル50も前後方向に移動する。本実施形態ではこの移動により第一ケーブル40及び第二ケーブル50が無理に変形しないように、板状部材60、可動部材70及び案内機構80(
図16参照)が設けられている。以下、具体的に説明する。なお以下では、第一ケーブル40及び第二ケーブル50を総称して、「ケーブル40・50」と称する。
【0084】
図16に示す板状部材60は、座席16が設置された底部8bの一部を成す部材である。板状部材60は、車体に固定される。板状部材60は、板部61、切欠部62、後側延出部63及び前側延出部64を具備する。
【0085】
板部61は、板面を上下に向けて配置される部分である。板状部材60は、板部61の端部が部分的に折り曲げられることによって形成される。切欠部62は、板部61の右端部における前後中途部に形成される。切欠部62は、例えば座席16の可動範囲と同程度の前後幅を有するように形成される。
【0086】
後側延出部63は、切欠部62の後側において、板部61から上方に延出する部分である。後側延出部63は、板面を左右方向に向けて配置される。後側延出部63には、前後に延びる長孔が形成される。後側延出部63は、切欠部62と隣接するように形成される。
【0087】
前側延出部64は、切欠部62の前側において、板部61から上方に延出する部分である。前側延出部64は、板面を斜め方向(前後方向に対して左右に傾斜する方向)に向けて配置される。前側延出部64は、切欠部62と隣接するように形成される。
【0088】
可動部材70は、板状部材60に対して相対移動可能な部材である。
図18に示すように、可動部材70は、板部71、第一延出部72、第二延出部73及び第三延出部74を具備する。
【0089】
板部71は、板面を上下に向けて配置される部分である。可動部材70は、板部71の端部が部分的に折り曲げられることによって形成される。板部71には、挿通孔71aが形成される。挿通孔71aは、板部71の前後中途部を上下に貫通するように形成される。挿通孔71aは、平面視略円状に形成される。挿通孔71aには、ケーブル40・50が挿通される(
図16参照)。
【0090】
第一延出部72は、板部71の左後部から下方へ延出する部分である。第一延出部72は、板面を左右方向に向けて配置される。第二延出部73は、板部71の右後部から上方へ延出する部分である。第二延出部73は、板面を左右方向に向けて配置される。第一延出部72及び第二延出部73は、挿通孔71aよりも後方に形成される。第三延出部74は、板部71の右前部から上方へ延出する部分である。第三延出部74は、板面を板状部材60の前側延出部64(
図16参照)と同一方向に向けて配置される。第三延出部74は、挿通孔71aよりも前方に形成される。
【0091】
図16及び
図17に示す案内機構80は、可動部材70の移動を案内するためのものである。案内機構80は、ローラ81及び案内部82を具備する。
【0092】
ローラ81は、可動部材70に回転可能に設けられる。ローラ81は、
図18に示すように、第二延出部73及び第一延出部72の左側面に設けられる。ローラ81は、第二延出部73の後端部と、第一延出部72の前端部及び後端部とに設けられる。以下では、第二延出部73に設けられるローラ81を「上側のローラ81」、第一延出部72に設けられるローラ81を「下側のローラ81」と称する。
【0093】
図16及び
図17に示す案内部82は、上下のローラ81を案内する部分である。上側のローラ81を案内する案内部82は、板状部材60の後側延出部63によって構成される。下側のローラ81を案内する案内部82は、板状部材60の下面に固定される略L字状の取付部材82aによって構成される。取付部材82aは、前後に延びる長孔を有する。
【0094】
上側のローラ81は、上側の案内部82に嵌め合わされる。下側のローラ81は、下側の案内部82に嵌め合わされる。これによって案内機構80(ローラ81及び案内部82)は、板状部材60の板部61を挟んで、当該板部61の上下にそれぞれ設けられる。また可動部材70は、当該案内機構80及び板状部材60を介して車体に設けられ、ローラ81の回転によって、板状部材60に対して前後に相対移動することができる。なお
図16及び
図17には、最も後方へ移動された可動部材70が示されている。
【0095】
また
図16に示すように、可動部材70の板部71は、板状部材60の切欠部62を塞ぐように設けられる。これによって塵挨が切欠部62を介して搭乗部8aの内外に流通するのを防止できる。また、切欠部62を介して搭乗部8aの下方が見えるのを防止して、美観の向上を図ることができる。
【0096】
また挿通孔71aは、切欠部62の内側に配置される。本実施形態では、上下の案内部82(長孔)の前後幅は、切欠部62の前後幅と同程度となっている。こうして本実施形態では、挿通孔71aが切欠部62の範囲内で前後に移動するように、可動部材70が設けられる。
【0097】
以下では、座席16が前方へ移動される場合を例に挙げ、可動部材70が移動する様子を説明する。
【0098】
図15に示す座席16が前方へ移動されると、ローダレバー20及び操作機構30が前方へ移動される。ローダレバー20等の移動により、
図16に示すケーブル40・50は、前方へ移動される。この際ケーブル40・50は、挿通孔71aを介して可動部材70を前方へ押圧する。
【0099】
ケーブル40・50による挿通孔71aの前方への押圧によって、ローラ81が案内部82を前方へ向けて回転し、
図19及び
図20に示すように、可動部材70は板状部材60に対して前方へ移動される。これによって、座席16の前方への移動に追従するようにケーブル40・50の挿通部分(挿通孔71a)を前方に移動させることができるため、ケーブル40・50が前記挿通部分で無理に変形されるのを抑制することができ、ケーブル40・50の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0100】
またケーブル40・50の挿通部分(挿通孔71a)がケーブル40・50に追従するように移動するため、挿通孔71aの大きさをケーブル40・50が挿通可能な最小限の大きさに抑えることもできる。このため、挿通孔71aを介した塵挨の流通の防止や美観の向上を図ることができる。また当該挿通孔71aにグロメット等の保護部材を設けるか、ケーブル40・50の挿通孔71aに挿通される部分にだけ保護部材を設けることで、挿通孔71aのエッジによるケーブル40・50の損傷を容易に防止することができる。
【0101】
さらに、可動部材70の板部71は、前後位置に関わらず、常に切欠部62を塞ぐように形成される(
図16及び
図19参照)。これによって塵埃の流通の防止や美観の向上を効果的に図ることができる。
【0102】
また本実施形態では、上下2つの案内機構80を設けることにより、可動部材70のがたつきを抑制し、可動部材70を好適に移動させることができる。特に、本実施形態では、1つの下側の案内部82に対して複数(2つ)の下側のローラ81が回転するように構成される(
図17参照)。これによって、下側のローラ81にかかる負荷を分散することができる。
【0103】
また
図15に示すように、ケーブル40・50は、ローダレバー20及び操作機構30から後方(座席16の移動方向)に延出すると共に、中途部が可動部材70(挿通孔71a)を介して搭乗部8aの底部8bの下方へと案内される。本実施形態では、ローダレバー20及び操作機構30がアームレスト17よりも前方に配置されることにより、ローダレバー20等と可動部材70との前後方向に沿った間隔を比較的長くすることができる。これにより、ケーブル40・50が急激に下方へと屈曲されるのを防止することができる。また、座席16の移動方向(前後方向)と、ローダレバー20からケーブル40・50が延出する方向(前後方向)を揃えることで、座席16と共にケーブル40・50が前後に移動した場合であっても、ケーブル40・50の屈曲部分の曲げ半径の変化を抑制することができる。
【0104】
以上の如く、本実施形態に係る操作機構30は、下側第一揺動軸32b(第一揺動軸)を中心として揺動可能な第一揺動部材32と、前記下側第一揺動軸32bと垂直な向きに配置された下側第二揺動軸38(第二揺動軸)を中心として揺動可能な第二揺動部材37と、前記第一揺動部材32に固定されるロッドエンド36(第一連結部材)と、前記第二揺動部材37に固定され、軸線D38を前記下側第二揺動軸38に対して傾斜した方向に向けて配置された軸状部39bを具備し、前記軸状部39bが前記ロッドエンド36に対してスライド可能に連結される連結ロッド39(第二連結部材)と、前記第一揺動部材32又は前記第二揺動部材37のいずれか一方に連結されるローダレバー20(操作具)と、を具備するものである。
【0105】
このように構成することにより、ローダレバー20の操作を伝達する際に、簡素な構成で揺動の方向を変換することができる。
【0106】
また、下側第一揺動軸32bは車体前後方向に沿って延びるように配置され、下側第二揺動軸38は車体左右方向に沿って延びるように配置されるものである。
【0107】
このように構成することにより、ローダレバー20の操作を伝達する際に、簡素な構成で揺動の方向を変換することができる。
【0108】
また、ローダレバー20の操作を伝達する第一ケーブル40、第二ケーブル50(ケーブル)を、車体前後方向に沿って延びるように支持するケーブル支持部31f(支持部)をさらに具備するものである。
【0109】
このように構成することにより、ケーブルを車体前後方向に延びるように配置することができ、例えば操作機構30の下方の部材等とケーブルとの干渉を回避しながらケーブルを配置することができる。
【0110】
また、前記下側第一揺動軸32b及び前記下側第二揺動軸38は、前記下側第一揺動軸32b及び前記下側第二揺動軸38に対して直交する方向(上下方向)において同一の位置に配置されるものである(
図5参照)。
【0111】
このように構成することにより、操作機構30をコンパクトに構成することができる。
【0112】
また、前記下側第一揺動軸32bを介して前記第一揺動部材32を支持すると共に、前記下側第二揺動軸38を介して前記第二揺動部材37を支持する支持部材31をさらに具備するものである。
【0113】
このように構成することにより、第一揺動部材32及び第二揺動部材37を支持部材31に一体化(ユニット化)することができる。これによって、部品の管理や取付作業の容易化を図ることができる。
【0114】
また、前記支持部材31には、前記第一揺動部材32又は前記第二揺動部材37のいずれか他方に連結されて前記ローダレバー20の操作を伝達する第二ケーブル50(ケーブル)を支持するケーブル支持部31f(支持部)が形成されるものである。
【0115】
このように構成することにより、支持部材31を利用して第二ケーブル50を配置することができる。
【0116】
また、前記支持部材31に設けられ、前記第一揺動部材32又は前記第二揺動部材37の少なくともいずれか一方の揺動を所定の位置で規制する規制部材35をさらに具備するものである。
【0117】
このように構成することにより、ローダレバー20の揺動操作を適宜規制することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0118】
また、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、位置を調整可能な座席16と、前記操作機構30と、を具備し、前記操作機構30は、前記座席16と一体的に移動するように構成されるものである(
図15参照)。
【0119】
このように構成することにより、座席16と操作機構30との相対的な位置関係を保持することができ、操作機構30の操作性が低下するのを防止することができる。
【0120】
また、前記座席16は、車体前後方向の位置を調整可能であり、前記操作機構30は、前記座席16に設けられたアームレスト17よりも前方に配置され、前記操作機構30には、前記ローダレバー20の操作を伝達する第二ケーブル50(ケーブル)が連結され、前記第二ケーブル50は、前記操作機構30から後方に延出するように設けられると共に、中途部において前方に向かって屈曲するように配置されるものである。
【0121】
このように構成することにより、屈曲された第二ケーブル50の曲げ半径が、座席16の移動に伴って大きく変化するのを抑制することができ、第二ケーブル50の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0122】
また、前記操作機構30に対する相対的な位置を調整可能なアームレスト17をさらに具備するものである。
【0123】
このように構成することにより、操作機構30の操作性を向上させることができる。
【0124】
なお、本実施形態に係る下側第一揺動軸32bは、第一揺動軸の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る下側第二揺動軸38は、第二揺動軸の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るロッドエンド36は、第一連結部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る連結ロッド39は、第二連結部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るローダレバー20は、操作具の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るトラクタ1は、作業車の実施の一形態である。
【0125】
また、以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、移動可能なローダレバー20(移動部材)と、可撓性を有する長手状に形成され、前記ローダレバー20に連結されると共に、前記ローダレバー20の移動に伴って移動するケーブル40・50(長手状部材)と、前記ケーブル40・50が挿通される挿通孔71a(挿通部)を有し、車体に対して相対移動可能に設けられる可動部材70と、を具備するものである。
【0126】
このように構成することにより、長手状部材(ケーブル40・50)を好適に案内することができる。
すなわち、部材を貫通するようにケーブル40・50を配置する必要がある場合に、当該部材(可動部材70)を移動可能に構成し、ケーブル40・50に追従して可動部材70を移動させることで、ケーブル40・50が無理に変形するのを抑制することができる。またケーブル40・50に追従して可動部材70を移動させることができるため、挿通孔71aを最小限の大きさに留めることができ、挿通孔71aを介する塵挨の流通や、美観の低下を防止することができる。
【0127】
また、前記車体に固定され、切欠部62を有する板状部材60(固定部材)をさらに具備し、前記可動部材70は、前記挿通孔71aが前記切欠部62の内側の範囲内で移動するように前記板状部材60に相対移動可能に設けられるものである。
【0128】
このように構成することにより、板状部材60を貫通するように配置されるケーブル40・50の無理な変形を抑制することができる。
【0129】
また、前記板状部材60は、前記切欠部62が形成される板部61(第一板状部)を具備し、前記可動部材70は、前記挿通孔71aが形成されると共に、前記板部61の前記切欠部62を塞ぐように形成される板部71(第二板状部)を具備するものである(
図16参照)。
【0130】
このように構成することにより、塵挨の流通の防止や美観の向上を図ることができる。
【0131】
また、前記可動部材70の移動を案内する案内機構80をさらに具備するものである。
【0132】
このように構成することにより、可動部材70を好適に移動させることができる。
【0133】
また、前記案内機構80は、前記可動部材70又は前記板状部材60のいずれか一方に回転可能に設けられるローラ81と、前記可動部材70又は前記板状部材60のいずれか他方に設けられ、前記ローラ81を案内する案内部82と、を具備するものである。
【0134】
このように構成することにより、可動部材70を好適に移動させることができる。
【0135】
また、前記案内機構80は、前記板部61の一側面側及び他側面側(上側及び下側)のそれぞれに設けられるものである(
図16及び
図17参照)。
【0136】
このように構成することにより、可動部材70を好適に移動させることができる。
【0137】
また、前記移動部材は、フロントローダ10を操作するローダレバー20(操作具)を含み、前記長手状部材は、前記ローダレバー20の操作を伝達するケーブル40・50を含むものである。
【0138】
このように構成することにより、フロントローダ10を操作するローダレバー20に連結されるケーブル40・50の無理な変形を抑制することができる。
【0139】
また、作業者が搭乗する搭乗部8aに設けられ、位置を調整可能な座席16をさらに具備し、前記板状部材60は、前記搭乗部8aの底部8bを成すものであり、前記ローダレバー20は、前記座席16と一体的に移動するように構成されるものである(
図15参照)。
【0140】
このように構成することにより、座席16の位置調整に伴って移動するケーブル40・50の無理な変形を抑制することができる。
【0141】
また、前記ケーブル40・50は、前記ローダレバー20から前記座席16の移動方向に沿う一方向(後方)に向かって延出するように設けられると共に、前記挿通孔71aを介して前記底部8bの下方へと案内され、前記底部8bの下方において前記一方向とは反対方向(前方)に向かって延出されるものである。
【0142】
このように構成することにより、座席16の移動に伴うケーブル40・50の摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0143】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るローダレバー20は、移動部材及び操作具の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る挿通孔71aは、挿通部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る板状部材60は、固定部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る板部61は、第一板状部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る板部71は、第二板状部の実施の一形態である。
【0144】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0145】
例えば、本実施形態に係る作業車はトラクタ1であるものとしたが、作業車の種類はこれに限定されるものでない。作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0146】
また本実施形態では、
図4に示すように、ローダレバー20と一体的に揺動する第一揺動部材32にロッドエンド36が設けられ、第二ケーブル50が連結される第二揺動部材37に連結ロッド39が設けられる例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第一揺動部材32に連結ロッド39を設け、第二揺動部材37にロッドエンド36を設けることも可能である。
【0147】
また
図5に示すように下側第一揺動軸32b及び下側第二揺動軸38は、互いに同一の高さに配置されるものとしたが、これに限定されるものではなく、下側第一揺動軸32b及び下側第二揺動軸38が互いに異なる高さ位置に配置されてもよい。
【0148】
また操作機構30の第一揺動部材32や第二揺動部材37等は、
図5に示す支持部材31に一体化されるものとしたが、これに限定されるものではなく、一部の部材が支持部材31とは異なる部材に支持(固定)されてもよい。
【0149】
また
図5に示す規制部材35は、第一揺動部材32の左右への揺動を規制するものとしたが、第一揺動部材32の前後への揺動を規制する規制部材を設けることも可能である。
【0150】
また
図5に示す規制部材35は、第一揺動部材32の揺動を規制するものとしたが、例えば第二揺動部材37の揺動を規制する規制部材を設けることも可能である。
【0151】
またローダレバー20及び操作機構30は、
図15に示すように、座席16と一体的に移動するものとしたが、これに限定されるものではなく、ローダレバー20及び操作機構30に対して座席16が相対的に移動してもよい。
【0152】
またアームレスト17は、ローダレバー20及び操作機構30に対して相対的に移動するものとしたが、これに限定されるものではなく、アームレスト17の移動に伴ってローダレバー20及び操作機構30が一体的に移動するものでもよい。またアームレスト17よりも前方にローダレバー20及び操作機構30が配置されるものとしたが、アームレスト17、ローダレバー20及び操作機構30の位置関係はこれに限定されるものではない。
【0153】
またケーブル40・50は、ローダレバー20及び操作機構30から後方へ延出するものとしたが、ケーブル40・50のローダレバー20等からの延出方向は特に限定されない。例えばケーブル40・50は、ローダレバー20等から下方へ延出するものでもよい。またケーブル40・50は、部分的に屈曲するように配置されるものとしたが、これに限定されるものではなく、概ね直線状に(屈曲しないように)配置されてもよい。
【0154】
また本実施形態では、
図16に示すように、板状部材60に切欠部62を形成し、当該切欠部62に可動部材70を設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、板状部材60に切欠部62を形成せず、板状部材60の外側に可動部材70を設けることも可能である。
【0155】
また板状部材60及び可動部材70は、板部61・71の端部が適宜折り曲げられることによって形成されるものとしたが、板状部材60及び可動部材70の形状や構造等は本実施形態に限定されるものではなく、任意に変更可能である。
【0156】
また本実施形態では、ローラ81が可動部材70に設けられると共に、案内部82が板状部材60に設けられるものとしたが、案内機構80の構成はこれに限定されない。例えば、ローラ81が板状部材60に設けられると共に、案内部82が可動部材70に設けられるものでもよい。
【0157】
また案内機構80は、ローラ81及び案内部82を具備するものとしたが、案内機構80を構成する部材はローラ81及び案内部82に限定されるものではなく、任意に変更可能である。例えば、案内機構80として、スライド可能なレール等を用いることも可能である。
【0158】
また本実施形態では、
図15、
図16等に示すように、可動部材70を介して案内される長手状部材としてケーブル40・50を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、電力や電気信号を伝えるワイヤーハーネス、空調用の空気を案内するダクト、空調機に用いられるエアコンホース等を長手状部材として、可動部材70で案内することも可能である。例えば、座席16に設けられて座席16を暖めたり冷やしたりするシート空調機を設ける場合には、当該シート空調機に接続されるダクト、エアコンホース等を可動部材70を介して案内することができる。
【0159】
また本実施形態では、長手状部材が連結される移動部材の一例としてローダレバー20を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の移動可能な部材に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0160】
1 トラクタ
20 ローダレバー
30 操作機構
32 第一揺動部材
32b 下側第一揺動軸
36 ロッドエンド
37 第二揺動部材
39 連結ロッド
39b 軸状部
40 第一ケーブル
50 第二ケーブル
70 可動部材
71a 挿通孔