(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030069
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20240229BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20240229BHJP
B60R 21/2334 20110101ALI20240229BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B60N2/427
B60R21/207
B60R21/2334
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132626
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩通
(72)【発明者】
【氏名】小杉 英記
(72)【発明者】
【氏名】中尾 拓馬
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087CD04
3B087DB05
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA21
3D054CC04
3D054CC11
3D054CC34
3D054CC42
3D054EE19
3D054EE26
3D054FF12
(57)【要約】
【課題】シートクッションを速やかに上方へ持ち上げて乗員の前方移動を抑制する。
【解決手段】乗員拘束装置は、シートクッション6と、シートクッション6が載設されるシートフレーム4と、シートクッション6とシートフレーム4との間に配置されたエアバッグG1と、エアバッグG1にガスを供給するインフレータ3と、を備える。膨張展開したエアバッグG1は側面視L字形状となる。シートフレーム4は、シート前後方向に延在する一対のサイドフレーム41a、41b、及びサイドフレーム41a、41bの前部同士を橋絡したフロントフレーム42を有する。インフレータ3はフロントフレーム42に設けられた凹部42b内に配置される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションが載設されるシートフレームと、
前記シートクッションと前記シートフレームとの間に配置されたエアバッグと、
前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
を備え、
膨張展開した前記エアバッグは側面視L字形状となる、乗員拘束装置。
【請求項2】
前記シートフレームは、シート前後方向に延在する一対のサイドフレーム、及び該一対のサイドフレームの前部同士を橋絡したフロントフレームを有し、
前記インフレータは前記フロントフレームに設けられた凹部内に配置される、請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記エアバッグの後端は前記シートフレームに固定されていない、請求項1又は2に記載の乗員拘束装置。
【請求項4】
前記エアバッグは、第1チャンバと、前記第1チャンバの下面側の前部に連結された第2チャンバと、を有し、
前記インフレータは前記第2チャンバ内に配置されている、請求項1又は2に記載の乗員拘束装置。
【請求項5】
前記第1チャンバは、シート後方ほどシート左右方向の幅が狭くなる、請求項4に記載の乗員拘束装置。
【請求項6】
前記エアバッグは、前記シートクッション側に位置する上パネルと、前記シートフレーム側に位置する下パネルの周縁同士を縫合部により連結したものであり、
前記上パネルがシート左右方向に延在するタック部を有する、請求項1又は2に記載の乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時に乗員を拘束する各種のエアバッグ装置やシートベルト装置などが開発されている。車両の正面衝突等では、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員の腰部が、ラップベルトの下側をくぐり抜けようとするサブマリン現象が発生する可能性があった。そこで、シートクッションの下部に配置したエアバッグを膨張させてシートクッションの前部を高くする装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シートクッションを速やかに上方へ持ち上げて乗員の前方移動を抑制する乗員拘束装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の乗員拘束装置は、シートクッションと、前記シートクッションが載設されるシートフレームと、前記シートクッションと前記シートフレームとの間に配置されたエアバッグと、前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備え、膨張展開した前記エアバッグは側面視L字形状となるものである。
【0006】
本発明の一態様では、前記シートフレームは、シート前後方向に延在する一対のサイドフレーム、及び該一対のサイドフレームの前部同士を橋絡したフロントフレームを有し、前記インフレータは前記フロントフレームに設けられた凹部内に配置される。
【0007】
本発明の一態様では、前記エアバッグの後端は前記シートフレームに固定されていない。
【0008】
本発明の一態様では、前記エアバッグは、第1チャンバと、前記第1チャンバの下面側の前部に連結された第2チャンバと、を有し、前記インフレータは前記第2チャンバ内に配置されている。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1チャンバは、シート後方ほどシート左右方向の幅が狭くなる。
【0010】
本発明の一態様では、前記エアバッグは、前記シートクッション側に位置する上パネルと、前記シートフレーム側に位置する下パネルの周縁同士を縫合部により連結したものであり、前記上パネルがシート左右方向に延在するタック部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シートクッションを速やかに上方へ持ち上げて乗員の前方移動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るエアバッグを上方向から見た平面図である。
【
図5】車両用シートのベースフレームの斜視図である。
【
図8】第2のエアバッグのパネル構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るエアバッグG1は、車両用シートS(
図6、7参照)のベースフレーム4とシートクッション6との間に設置されるものである。以下、シート前後方向は車両前後方向、シート上下方向は車両上下方向、シート幅方向は車幅方向に相当する。また、シート前後方向、シート上下方向、シート幅方向を単に前後、上下、左右と称する場合がある。
【0015】
図1はエアバッグG1を上方向から見た平面図、
図2はエアバッグG1を下方向から見た平面図、
図3は
図1のIII-III線断面図、
図4は
図2のIV-IV線断面図である。
【0016】
エアバッグG1は、第1チャンバ1と、第1チャンバ1の前部かつ下部に連結された第2チャンバ2とを備える。
【0017】
第1チャンバ1は、前方ほど左右幅が大きくなる平面視略半楕円形状である。
【0018】
第1チャンバ1は、上側の外面を構成するパネル11Aと、下側の外面を構成するパネル11Bとを有する。パネル11A及びパネル11Bは、周縁を縫合糸13によって縫合され袋状になっている。パネル11A及びパネル11Bは、別パネルでもよいし、一連一体であってもよい。
【0019】
第1チャンバ1の左右方向の中央部かつ前後方向の中央部には円形縫合部14が設けられており、パネル11A及びパネル11Bが結合されている。円形縫合部14を設けることで、第1チャンバ1の容量が抑えられる。円形縫合部14を省略した構成としてもよい。
【0020】
第2チャンバ2は、左右両側が外方へ凸となるように湾曲した略々矩形状であり、左右方向の最大幅は、第1チャンバ1の左右方向の最大幅と同程度か、又は僅かに小さい。第2チャンバ2の後部にはインフレータ3の挿入口が設けられている
【0021】
第2チャンバ2の前後方向の長さは、第1チャンバ1の円形縫合部14から前縁までの長さと同程度であり、非膨張状態では、第1チャンバ1の前縁部と第2チャンバ2の前縁部とがほぼ同位置にある。例えば、第2チャンバ2の前後方向の長さは100mm程度である。
【0022】
第2チャンバ2は、上側の外面を構成するパネル21Aと、下側の外面を構成するパネル21Bとを有する。パネル21A及びパネル21Bは、左右の側縁部及び前縁部を縫合糸23によって縫合されている。パネル21A及びパネル21Bの後縁部は縫合されず、インフレータ3を挿入するための開口部となっている。
【0023】
パネル21A及びパネル21Bは、別パネルでもよいし、一連一体であってもよい。第2チャンバ2にベントホールが設けられていてもよい。
【0024】
パネル21Aは、パネル21Bよりも後端部が後方に延出している。パネル21Aの後端延出部21A´と、パネル21Bの後端部には、それぞれ、インフレータ3の側面から立設されたスタッドボルト30が挿通されるボルト挿通口24、25が設けられている。
【0025】
図4に示すように、インフレータ3を第2チャンバ2の後部の開口から第2チャンバ2内に挿入し、スタッドボルド30をパネル21Bのボルト挿通口25(第2ボルト挿通口)に挿通させる。次に、パネル21Aの後端延出部21A´を下面側に折り返してスタッドボルド30をボルト挿通口24(第1ボルト挿通口)に挿通させる。
【0026】
第1チャンバ1の下側のパネル11Bには、円形縫合部14と前縁部との間に連通口12が設けられている。第2チャンバ2の上側のパネル21Aには、前後方向の中央部に連通口22が設けられている。連通口12の径と連通口22の径は同程度である。連通口12、22の数は特に限定されないが、この例では、左右幅方向に間隔を空けてそれぞれ2個の連通口12、22が設けられている。
【0027】
第1チャンバ1の連通口12に、第2チャンバ2の連通口22を位置合わせした状態で、これらの連通口12及び22の周縁同士を縫合糸15により結合する。これにより、第1チャンバ1と第2チャンバ2とが連結され、第1チャンバ1内と第2チャンバ2内とが連通される。
【0028】
図5はエアバッグG1を取り付ける車両用シートSのベースフレーム4(シートフレーム)の斜視図である。ベースフレーム4上に、ウレタン等よりなるシートクッション6(
図6参照)が載設される。また、車両用シートSは、ベースフレーム4に対し、支軸9及びリクライニングデバイス(図示略)を介して回動可能に連結されたシートバック5と、シートバック5の上部に取り付けられたヘッドレスト(図示略)とを備える。
【0029】
ベースフレーム4は、シートの左右両側に位置し、前後方向に延在した1対のサイドフレーム41a、41bと、サイドフレーム41a、41bの前部同士を橋絡したフロントフレーム42と、サイドフレーム41a、41bの後部同士を橋絡したリヤフレーム43とを有している。フロントフレーム42とリヤフレーム43との間に、弾性体としてSバネ44が架設されている。
【0030】
Sバネ44は、左右に蛇行しながらフロントフレーム42からリヤフレーム43にかけて前後方向に延在する。フロントフレーム42とリヤフレーム43との間には、複数本のSバネ44が左右方向に多列に配設されている。
【0031】
ベースフレーム4に設ける弾性体として、Sバネ44に代えてパン(金属パネル)を用いる構成としてもよい。
【0032】
フロントフレーム42の後部は、後ろ側ほど低位となる傾斜面42a(
図6参照)となっており、この傾斜面にSバネ44の一端が連結されている。
【0033】
フロントフレーム42の前部にはインフレータを収容するための凹部42bが設けられている。凹部42bは、左右方向に延びる溝形状である。
図6に示すように、エアバッグG1の第2チャンバ2内に挿入したインフレータ3部分を凹部42b内に配置し、第2チャンバ2の後部から突出したインフレータ3のスタッドボルド30と、凹部42bの底面とを締結することにより、インフレータ3をフロントフレーム42に固定する。
【0034】
エアバッグG1は、フロントフレーム42上、及びサイドフレーム41a、41b間のSバネ44上に、折り畳まず、第2チャンバ2が下側になるように設置される。エアバッグG1はインフレータ3による固定箇所以外、ベースフレーム4等に固定されていない。
【0035】
エアバッグG1の設置後、ベースフレーム4上にシートクッション6が載設される。エアバッグG1は、ベースフレーム4とシートクッション6との間に広げた状態で設置される。
【0036】
図6は、通常時(エアバッグGの非膨張時)において、車両用シートSに乗員Pが着座している状態を示す。乗員Pは、シートベルト8を装着している。本実施形態では、インフレータ3が凹部42b内に配置され、かつエアバッグG1が折りたたまれず平らに広げた状態となっているため、車両用シートSに着座した乗員Pに対し異物感を与えにくく、快適性(座り心地)を良好なものとすることができる。
【0037】
センサによって車両の衝突が検知/予知された場合、インフレータ制御回路からインフレータ3に起動信号が入力され、インフレータ3からガスが噴出する。ガス噴出により、
図7に示すように、まず、エアバッグG1の第2チャンバ2が膨張する。第2チャンバ2が膨張することでシートクッション6とベースフレーム4との間に空間が生じ、連通口12、22を通過したガスにより第1チャンバ1が膨張する。エアバッグG1は、膨張完了時に側面視(左側又は右側から見た場合)略L字形となる。
【0038】
エアバッグG1は、Sバネ44及びフロントフレーム42の傾斜面42aによって下側から支承されつつ上方へ向かって厚み(径)を増大させるように膨張する。これにより、シートクッション6を押し上げ、シートベルト8(ラップベルト)による乗員拘束力を高め、乗員の前方移動を抑制できる。
【0039】
膨張した第2チャンバ2は、第1チャンバ1の前部を下側から支持する。膨張したエアバッグG1は、シート後方からシート前方に向かってバッグの厚みが増していく形状となるため、シート前方ほどシートクッション6の押し上げ量が大きくなり、乗員の前方移動を効果的に抑制できる。
【0040】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、第1チャンバ1及び第2チャンバ2の2つのチャンバにより膨張展開時に側面視略L字形となるエアバッグG1について説明したが、タック構造を有する1チャンバ構成で膨張展開時に側面視略L字形となるエアバッグG2(
図12参照)としてもよい。
【0041】
エアバッグG2の外面は、
図8に示すようなパネル50にて構成されている。パネル50は、エアバッグG2の下側の外面を構成する下パネル50Lと、上側の外面を構成する上パネル50Uとを有する。上パネル50Uと下パネル50Lとは一連一体であり、上パネル50Uと下パネル50Lとの境界が折り返し予定線L1となっている。
【0042】
上パネル50U及び下パネル50Lは、折り返し予定線L1に近い程、左右方向の幅が狭くなっている。パネル50を折り返し予定線L1に沿って折り返すことで、上パネル50Uと下パネル50Lとが重ね合わされる。このとき、折り返し予定線L1は、エアバッグG2の後縁となる。すなわち、エアバッグG2は、後方ほど左右幅が小さくなる。
【0043】
下パネル50Lの前方側(折り返し予定線L1とは反対側)の端縁50aの近傍にはボルト挿通口55が設けられている。
【0044】
上パネル50Uには、左右方向に延びる3本の平行な折り返し予定線L2、L3、L4が折り返し予定線L1側から順に間隔を空けて設定されている。また、上パネル50Uの折り返し予定線L1とは反対側の端部は中央部が張出部50Eになっており、この張出部50Eにボルト挿通口56が設けられている。張出部50Eと折り返し予定線L4との間で、張出部50Eに近いほど上パネル50Uの左右幅は小さくなっている。
【0045】
図9に示すように、上パネル50Uを折り返し予定線L3で山折りし、折り返し予定線L2、L4で谷折りすることで、タック部Tを形成する。パネル50を折り返し予定線L1に沿って折り返し、上パネル50Uと下パネル50Lとを重ね合わせる。
【0046】
テザー60の一端部を下パネル50Lに縫合糸58により結合し、他端部を上パネル50Uのタック部T(例えば、折り返し予定線L3と折り返し予定線L4との間の領域)に縫合糸57により結合する。
【0047】
次に、
図10A、
図10Bに示すように、タック部Tを後方に倒し、タック部Tより前方側で、下パネル50Lと上パネル50Uの周縁とを縫合糸51によって縫合する。また、後方に倒したタック部Tよりも後方側で円形縫合部53を形成し、上パネル50Uと下パネル50Lを結合する。ここで、
図10Aは、折り畳んだパネル50を上パネル50U側から見た平面図であり、
図10Bは下パネル50L側から見た平面図である。
【0048】
上記第1の実施形態と同様に、円形縫合部53を設けることで、1チャンバ構成でもエアバッグの容量が抑えられる。円形縫合部53を省略した構成としてもよい。
【0049】
次に、
図11A、
図11Bに示すように、タック部Tを前方に倒し、タック部Tを含めて、上パネル50Uと下パネル50Lとの周縁(左右の側縁及び後縁)を縫合糸52によって縫合し、エアバッグG2を作製する。
【0050】
図9に示すように、張出部50E側からエアバッグG2内にインフレータ3を挿入し、スタッドボルド30を下パネル50Lのボルト挿通口55に挿通させる。次に、上パネル50Uの張出部50Eを下面側に折り返して、スタッドボルド30をボルト挿通口56に挿通させる。
【0051】
上記第1の実施形態と同様に、エアバッグG2のインフレータ3部分を車両用シートSのベースフレーム4の凹部42b内に配置し、突出したインフレータ3のスタッドボルド30と、凹部42bの底面とを締結することにより、インフレータ3をフロントフレーム42に固定する。
【0052】
エアバッグG2は、フロントフレーム42上、及びサイドフレーム41a、41b間のSバネ44上に、折り畳まず、下パネル50Lが下側になるように設置する。
【0053】
インフレータ3からガスが噴出すると、
図12に示すように、エアバッグG2が膨張する。タック部Tが前方へ展開する共に、テザー60がエアバッグ下部の膨張エリアの形状を規制することで、エアバッグG2は、膨張完了時に側面視略L字形となる。エアバッグG2がシートクッション6を押し上げ、シートベルト8(ラップベルト)による乗員拘束力を高め、乗員の前方移動を抑制できる。
【0054】
エアバッグG2は、外面を構成するパネル50に加えて、インナーパネルを備えた構成としてもよい。
【0055】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成とされてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 第1チャンバ
2 第2チャンバ
3 インフレータ
4 ベースフレーム
5 シートバック
6 シートクッション
30 スタッドボルト
42 フロントフレーム