(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030076
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】歩行車
(51)【国際特許分類】
A61H 3/04 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132635
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】502020168
【氏名又は名称】ユーバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】長竹 善弘
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046CC01
4C046DD07
4C046DD27
4C046DD33
4C046DD43
4C046DD46
(57)【要約】
【課題】ハンドルの位置を後側位置と前側位置との相互間で容易に変更すること。
【解決手段】複数のフレーム(11,41a,41b等)を組み合わせて構成される歩行車本体10と、歩行車本体10の下方に有する車輪2と、歩行車本体10の上方に有するハンドル7と、を備え、歩行車本体10の上部に、ハンドル7を下側から支持するハンドル支持部11fを備え、ハンドル7は、把持部74の先端が後方へ突き出す後側位置Prと、該後側位置Prよりも前側に位置するとともに把持部74の先端が前方へ突き出す前側位置Pfとの間において、ハンドル支持部11fの軸回りに回動する構成とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフレームを組み合わせて構成される歩行車本体と、該歩行車本体の下方に有する車輪と、上記歩行車本体の上方に有するハンドルと、を備えた歩行車であって、
上記歩行車本体の上部に、上記ハンドルを支持可能に上方向へ突出するハンドル支持部を備え、
上記ハンドルは、把持部の先端が後方へ突き出す後側位置と、該後側位置よりも前側に位置するとともに上記把持部の先端が前方へ突き出す前側位置との間において、上記ハンドル支持部の軸回りに回動する構成とした
歩行車。
【請求項2】
上記ハンドルは、左右方向の各側に一対が備えられ、左右夫々において、上記把持部を有するハンドル本体部と、該ハンドル本体部から下方向に突出するハンドル支柱を備え、
上記ハンドル本体部は、上記ハンドル支柱に対して該ハンドル支柱の軸回りに回動可能に軸支され、
上記ハンドル支持部は、一対の上記ハンドルの夫々に対応して上記歩行車本体の左右各側に備えたハンドル支持フレームであり、
上記ハンドル支持フレームは、上記ハンドル支柱と同軸を成すように該ハンドル支柱を軸支可能に上方向に突出して形成された
請求項1に記載の歩行車。
【請求項3】
上記ハンドル支持フレームは、上方程後方に傾いた姿勢で上下方向に沿って延び、
上記ハンドルは上記後側位置のとき、上記ハンドル本体部の先端が前後方向に沿って略水平に倒伏する倒伏姿勢で配置された
請求項2に記載の歩行車。
【請求項4】
上記ハンドル本体部を上記ハンドル支柱の周方向において、上記前側位置と上記後側位置との何れかの位置に規制する規制手段と、該規制手段による位置規制状態を解除操作する解除操作手段を備え、
上記規制手段と上記解除操作手段とは、少なくとも2組が備えられるとともに、少なくとも2組の夫々が上記ハンドル支柱の中心軸を隔てた各側に配設された
請求項2又は請求項3に記載の歩行車。
【請求項5】
上記ハンドル支持フレームは、上記ハンドルの側から上記歩行車本体の下方かつ前側に位置する上記車輪の側へ略直線状に延びる
請求項4に記載の歩行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、歩行が困難な高齢者等のユーザーの歩行を補助するための歩行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザーの歩行を補助するための歩行車が知られている。例えば、下記特許文献1には、ハンドルの先端を前側へ向けた前側位置と該ハンドルの先端を後側へ向けた後側位置との間でハンドルの位置を変更可能に設けられた歩行車が提案されている。
【0003】
特許文献1のハンドルは、アセンブリ(歩行車本体)に対して左右方向に沿って延びる軸を介して軸支されている。このため、特許文献1のハンドルは、上下反転するように軸を回転中心として側面視で反時計回り又は時計回りに回動させて前側位置と後側位置との間で位置を変更する。
【0004】
しかし、このようにしてハンドルの位置を変更する際には、ユーザーは、ハンドルを持ち上げるようにして上下反転させる動作を強いられる。このため、特許文献1の歩行車は、下肢が不自由なユーザーが自らの体重を預けながらハンドルの位置調整を行うことは困難であり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明は、上述の問題に鑑み、ハンドルの位置を後側位置と前側位置との相互間で容易に変更することができる歩行車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、複数のフレームを組み合わせて構成される歩行車本体と、該歩行車本体の下方に有する車輪と、上記歩行車本体の上方に有するハンドルと、を備えた歩行車であって、上記歩行車本体の上部に、上記ハンドルを支持可能に上方向へ突出するハンドル支持部を備え、上記ハンドルは、把持部の先端が後方へ突き出す後側位置と、該後側位置よりも前側に位置するとともに上記把持部の先端が前方へ突き出す前側位置との間において、上記ハンドル支持部の軸回りに回動する構成としたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、上記ハンドルは、後側位置と前側位置との相互間で変更する際に、上方向へ突出する上記ハンドル支持部の軸回りに回動するため、水平面に沿う姿勢に維持したまま変更することができる。
【0009】
このため、本発明の歩行車は、上記ハンドルの位置を変更する際に、例えば、上記ハンドルを側面視で上下反転させる従来の歩行車のように、下肢が不自由なユーザー(歩行者)にとって困難な、上記ハンドルを持ち上げる動作をユーザーに強いることがない。
【0010】
さらに、本発明の上記ハンドルは、上述したように、位置変更の途中において、平面に沿う姿勢に維持される。このため、ユーザーは、位置変更の途中においても上記ハンドル本体部に体重をかけながら後側位置と前側位置との相互間で容易に上記ハンドルの位置を変更することができる。
【0011】
この発明の態様として、上記ハンドルは、左右方向の各側に一対が備えられ、左右夫々において、上記把持部を有するハンドル本体部と、該ハンドル本体部から下方向に突出するハンドル支柱を備え、上記ハンドル本体部は、上記ハンドル支柱に対して該ハンドル支柱の軸回りに回動可能に軸支され、上記ハンドル支持部は、一対の上記ハンドルの夫々に対応して上記歩行車本体の左右各側に備えたハンドル支持フレームであり、上記ハンドル支持フレームは、上記ハンドル支柱と同軸を成すように該ハンドル支柱を軸支可能に上方向に突出して形成された構成としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、左右一対の上記ハンドルは、夫々独立して位置変更できるため、ユーザーは、左右何れか一方の上記ハンドルを把持した状態で他方の上記ハンドルの位置変更を容易に行うことができる。
【0013】
上記ハンドル支柱と上記ハンドル支持フレームとは、互いに同軸であるため、ユーザーから上記ハンドルへ入力された荷重を、互いに同軸を成す上記ハンドル支柱から上記ハンドル支持フレーム側へと、夫々の軸方向に沿って直線状に、つまり軸力として効率よく伝達できる。
【0014】
従って、上記ハンドルを上記ハンドル支持フレームによって安定して支持できるため、ユーザーは、上記ハンドルに体重を預けながら容易に上記ハンドルの位置を変更することができる。
【0015】
この発明の態様として、上記ハンドル支持フレームは、上方程後方に傾いた姿勢で上下方向に沿って延び、上記ハンドルは後側位置のとき、上記ハンドル本体部の先端が前後方向に沿って略水平に倒伏する倒伏姿勢で配置された構成としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、上記ハンドル本体部を、前側位置から上記ハンドル支持フレームの軸回りに180度回転させるだけで、後側位置へと変更することに加えて、上記ハンドル支持フレームに対して、前側位置と線対称となる姿勢に容易に変更できる。すなわち、上記ハンドルは、後側位置のとき倒伏姿勢で配置できる一方で、前側位置のとき先端(前端)程上方へ位置するように倒伏姿勢よりも傾く前上がり姿勢で配置でき、夫々の位置に適した姿勢となるように容易に変更することができる。
【0017】
この発明の態様として、上記ハンドル本体部を上記ハンドル支柱の周方向において、前側位置と後側位置との何れかの位置に規制する規制手段と、該規制手段による位置規制状態を解除操作する解除操作手段を備え、上記規制手段と上記解除操作手段とは、少なくとも2組が備えられるとともに、少なくとも2組の夫々が上記ハンドル支柱の中心軸を隔てた各側に配設された構成としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、少なくとも2組の夫々に備えた上記解除操作手段を同時に操作しなければ、上記ハンドル本体の上記ハンドル支柱に対する位置規制状態が解除されないため、上記ハンドル本体の位置規制状態が上記解除操作手段の誤操作により解除されることを防ぐことができる。一方、少なくとも2組の夫々は、上記ハンドル支柱の中心軸を隔てた各側に配設されているため、ユーザーは、これら2組の夫々に備えた上記規制手段による規制状態を同時に解除する際には、2組の夫々に備えた上記解除操作手段を例えば、2本の指先で摘むなどして押圧するだけで足りるため、片手でも容易に解除操作することができる。
【0019】
この発明の態様として、上記ハンドル支持フレームは、上記ハンドルの側から上記歩行車本体の下方かつ前側に位置する上記車輪の側へ略直線状に延びる構成としてもよい。
【0020】
上記構成によれば、上記ハンドル支柱と、上記歩行車本体の下方かつ前側に位置する車輪の側とを、上記ハンドル支持フレームを介して直線状に結ぶことができるため、ユーザーが歩行車を前方へ押す力を、上記ハンドルから上記ハンドル支持フレームを介して前側に位置する車輪へと効率よく伝達できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明により、ハンドルの位置を後側位置と前側位置との相互間で容易に変更することができる歩行車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態の歩行車を後方かつ右方から視た斜視図
【
図2】本実施形態の歩行車を前方かつ左方から視た斜視図
【
図5】本実施形態の折り畳んだ状態の歩行車を後方から視た斜視図
【
図6】本実施形態の折り畳んだ状態の歩行車の左側面図
【
図7】
図3のA-A線に沿った要部を示す拡大断面図
【
図8】(a)は
図7のD-D線に沿った要部を示す拡大断面図(b)は
図3のB-B線に沿った、
図7中の領域X2相当部分の拡大断面図
【
図9】
図3中の領域X1を一部
図4中のC-C線に沿った断面で示した拡大図
【
図10】
図9中のE-E線に沿った上側ジョイント部材周辺の矢視断面図
【
図11】(a)は
図9中のE-E線に沿ったハンドル基部周辺の矢視断面図、(b)は
図9中のF-F線に沿った矢視に対して前方かつ右側から視た斜視断面図
【
図12】(a)は変形例に係る横フレーム体の要部を示す平面図、(b)は同じく正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図中、矢印Zは歩行車1の上下方向、矢印Wは歩行車1の左右方向(幅方向)、矢印Xは上下方向Zおよび左右方向Wに直交する方向、すなわち歩行車1の前後方向を夫々示すものとする。さらに、図中、矢印Zaは上方向、矢印Zbは下方向、矢印Wrは右方向、矢印Wlは左方向、矢印Xfは前方向、矢印Xrは後方向を夫々示すものとする。
【0024】
図1~
図6に示すように、歩行車1は、複数のフレームを組み合わせて左右方向および前後方向に折り畳み可能に構成される歩行車本体10と、歩行車本体10の下方に有する車輪2と、歩行車本体10の上方に有するハンドル7とを備えている。
車輪2は、歩行車本体10の底面の下方かつ4隅に配置され、前側の左右に位置する前輪2fと後側の左右に位置する後輪2rを備えている。
【0025】
歩行車本体10のフレームには、縦フレーム11として、左右の前輪2fを支持可能に上下方向に沿って延びる前側縦フレーム11fと、左右の後輪2rを支持可能に上下方向に沿って延びる後側縦フレーム11rとを備えている。
【0026】
なお、車輪2は、縦フレーム11の下端にキャスター4を介して旋回自在に支持されている。本実施形態のキャスター4は、下方へ向けて二股状に突出する左右一対のフォーク部4aを備え、一対のフォーク部4aによって、これらの間に配置した車輪2を左右方向に延びる軸5を介して軸支している。このようにキャスター4は、左右一対のフォーク部4aによって車輪2を左右両側から安定して支持することができる。
【0027】
また、
図1、
図5に示すように、左右の後輪用のキャスター4には、後輪用のブレーキ6が設けられている。後輪用のブレーキ6は、不図示の摩擦パッドを備え、ハンドル7に装着された後述するブレーキレバー73を操作することで摩擦パッドを後輪2rの周面に押し付けて制動力を付与する。
【0028】
前側縦フレーム11fは、断面が正円形状の金属製パイプ部材で形成され、上下方向と一致する方向に対して、前輪2fの側から上方程後方へ位置するように側面視で傾斜した姿勢で歩行車本体10の上端に至るまで略直線状に延びている。前側縦フレーム11fの上端部には、ハンドル7が取り付けられている。
【0029】
後側縦フレーム11rは、断面が長楕円形状の金属製パイプ部材で形成され、上下方向と一致する方向に対して、後輪2rの側から上方程前方へ位置するように側面視で傾斜した姿勢で略直線状に延びている。前側縦フレーム11fの上部と後側縦フレーム11rの上部とは、上側ジョイント部材31を介して互いに連結されている。
【0030】
前側縦フレーム11fは、上端が上側ジョイント部材31の前端において一体に結合されている。一方、後側縦フレーム11rは、上端が上側ジョイント部材31の後端において左右方向に延びる軸31aを介して前側縦フレーム11fに対して前後方向へ折り畳み可能に枢着されている。
【0031】
図1~
図3に示すように、前側縦フレーム11fと後側縦フレーム11rとの間には、これらフレーム11f,11rを前後方向に連結する側部フレーム12を備えている。側部フレーム12は、歩行車本体10の上下方向の中間付近において左右一対を備え、何れも前後方向と略一致する方向に延びている。
【0032】
側部フレーム12の前端は、前側縦フレーム11fの中間付近に備えた縦スライドジョイント部材32に左右方向に延びる軸32aを介して軸支されている。縦スライドジョイント部材32は、前側縦フレーム11fの中間付近と下部との間で前側縦フレーム11fに対して軸方向にスライド自在に結合されている。
【0033】
側部フレーム12の後端は、後側縦フレーム11rに備えた後側ジョイント部材33に左右方向に延びる軸33aを介して軸支されている。後側ジョイント部材33は、後側縦フレーム11rの中間付近に結合されている。
【0034】
これにより、側部フレーム12は、側面視で後側ジョイント部材33との軸支部としての軸33aを支点として、縦スライドジョイント部材32の上下方向のスライドに伴って前端が上下方向に揺動可能に構成されている。
【0035】
図1、
図2、
図4に示すように、左右の前側縦フレーム11fの間には、左右方向に折り畳み可能な縦面フレーム体20を備えている。縦面フレーム体20は、X字状に交差する2本のフレーム21,21を備え、2本のフレーム21,21の交差部分を軸支部22によって軸支することによって交差角度を変更可能に構成される。各フレーム21の上端は、左右夫々に対応する上側ジョイント部材31に軸支されている。一方、各フレーム21の下端は、左右夫々に対応する縦スライドジョイント部材32に軸支されている。
これにより、縦面フレーム体20は、2本のフレーム21,21がX字状を成す展開状態から
図5に示すように左右方向に折り畳み可能に構成されている。
【0036】
図2、
図4に示すように、縦面フレーム体20には、歩行車本体10を展開状態に規制する開状態規制手段25を備えている。
開状態規制手段25は、2本のフレーム21,21の上部の間に亘って設けられ、左端が、上部が左側に位置するフレーム21に軸支された左フレーム26lと、右端が、上部が右側に位置するフレーム21に軸支された右フレーム26rと、操作部材27とを備えている。左フレーム26lの右端と右フレーム26rの左端とは操作部材27と共に軸支されている。
【0037】
歩行車本体10の展開状態においては、右フレーム26rと左フレーム26lとは思案点を僅かに越えた位置で固定され、縦面フレーム体20に備えた2本のフレーム21,21の交差角度を固定する。歩行車本体10を折り畳む際には、操作部材27を手で引き上げて右フレーム26rと左フレーム26lとを屈曲させた状態とする。
【0038】
図1、
図2、
図4に示すように、左右の側部フレーム12の間には、展開時に前後方向及び左右方向に沿った水平な面S40を構成する横面フレーム体40を備えている。横面フレーム体40は、左右方向に折り畳み可能に構成されている。
【0039】
本実施形態の横面フレーム体40は、X字状に交差する2本のフレーム41a,41bと、左右の側部フレーム12に並列配置される横スライド側部フレーム43を備えている。
【0040】
2本のフレーム41a,41bは、互いの交差部分を軸支部42によって軸支することによって交差角度を変更可能に構成される。横スライド側部フレーム43の前端は、側部フレーム12に備えた横スライドジョイント部材34に結合されている。横スライドジョイント部材34は、側部フレーム12に対して、前端と後端との間で軸方向に沿ってスライド自在に結合されている。
【0041】
図4に示すように、左右各側において、各フレーム41a,41bの後端は、横スライド側部フレーム43の後端に固定されたジョイント部材35に上下方向に延びる軸35aを介して軸支されている。
図1、
図4に示すように、各フレーム41a,41bの前端は、縦スライドジョイント部材32に上下方向に延びる軸32bを介して軸支されている。
【0042】
なお、横面フレーム体40の上面には、不図示のボードが設置され、例えば、ユーザーが着席する座面として利用される。ボードは、横面フレーム体40の左右方向の折り畳み時に適宜谷折り又は山折りが可能な折り目(図示省略)が形成されている。
【0043】
図1、
図2、
図4に示すように、2本のフレーム41a,41bは、断面四角形状の角パイプで形成され、長さ方向の両端部分41at,41bt(
図4参照)と中間部分41as,41bs(
図4参照)が水平に配置されている。2本のフレーム41a,41bのうち一方のフレーム41aは、長さ方向の中間部分41asが両端部分41at,41atに対して下方向に位置するように長さ方向の各端部分41atと中間部分41asとを曲げ部分41au(
図4参照)を介して一体に形成されている。2本のフレーム41a,41bのうち他方のフレーム41bは、長さ方向の中間部分41bsが両端部分に対して上方向に位置するように長さ方向の各端部分41btと中間部分41bsとを曲げ部分41bu(
図4参照)を介して一体に形成されている。
【0044】
そして、2本のフレーム41a,41bは、交差部分において一方のフレーム41aが下方向に位置するとともに他方のフレーム41bが上方向に位置するようにX字状に構成されている。
これにより、横面フレーム体40は、略水平に配置された展開状態において2本のフレーム41a,41bが上下に交差しても、該交差部分に相当する、横面フレーム体40の中央部、すなわち軸支部42が他の部位に対して局所的に隆起することを緩和して平坦な座面を形成し易くしている。
【0045】
図7は、
図3のA-A線に沿った要部を示す拡大断面図、
図8(a)は
図7のD-D線に沿った要部を示す拡大断面図、
図8(b)は
図3のB-B線に沿った、
図7中の領域X2相当部分の拡大断面図を示す。
【0046】
図7、
図8(a)(b)に示すように、横スライド側部フレーム43は、後側縦フレーム11rに結合された後側ジョイント部材33に対して左右方向に延びる軸33aを介して軸支されている。さらに、横スライド側部フレーム43は、軸33aに対して側部フレーム12の軸方向に沿ってスライド可能に軸支されている。
【0047】
具体的には、
図8(a)に示すように、横スライド側部フレーム43における、側部フレーム12との対向面(すなわち、左右方向の外面)には、軸33aを横スライド側部フレーム43の軸方向に沿って案内する案内溝44が、該横スライド側部フレーム43の軸方向に沿って形成されている。案内溝44は、横スライド側部フレーム43の後端に位置する枢着部としての軸35a(
図7、
図8(a)参照)と横スライドジョイント部材34との間において連続して形成されている。
なお、側部フレーム12と横スライド側部フレーム43とは平行であるため、案内溝44は、側部フレーム12の軸方向と一致する方向に形成されている。
【0048】
図8(b)に示すように、軸33aは、後側ジョイント部材33から左右方向に隣接する横スライド側部フレーム43に向けて突出し、突出方向の先端部には径方向に拡大する頭部33a1を備えている。
図8(a)(b)に示すように、軸33aは、頭部33a1が案内溝44を通じて横スライド側部フレーム43の内部空間43sに挿入された状態で、案内溝44に沿ってスライド可能に案内溝44の縁部44aに係合されている。
【0049】
これにより、横スライド側部フレーム43は、後側縦フレーム11rに結合された後側ジョイント部材33に対して軸33aを介して側部フレーム12の軸方向に沿ってスライド可能に軸支されている。すなわち、横スライド側部フレーム43は、側部フレーム12の軸方向に沿ってスライド可能に、側部フレーム12に対して横スライドジョイント部材34を介して結合されるとともに、後側縦フレーム11rに対して後側ジョイント部材33を介して結合されている。
【0050】
本実施形態において、
図8(b)に示すように、本実施形態において、横スライド側部フレーム43の後側ジョイント部材33に対する枢着部としての軸33aと、側部フレーム12の後側ジョイント部材33に対する枢着部としての軸33aとは、後側縦フレーム11rの前側付近において同軸に備えており、共通のピンで形成されている。
【0051】
上述した本実施形態の歩行車1を展開状態から折り畳む際には、ユーザーが操作部材27を引き上げることで縦スライドジョイント部材32が
図3に示す位置から前側縦フレーム11fに沿って下方へとスライドする(
図3中の矢印Dd参照)。これに伴って、縦面フレーム体20および横面フレーム体40は、
図5、
図6に示すように、左右方向へ折り畳まれる。
【0052】
このように、縦スライドジョイント部材32が下方へスライドすることに伴って、側部フレーム12は、
図6に示すように、水平姿勢から後側ジョイント部材33の枢着部としての軸33aを支点として前端が下方へ位置するように側面視で傾斜する方向へ回動する。
【0053】
これにより、
図5、
図6に示すように、後側縦フレーム11rは、上側ジョイント部材31の枢着部としての軸31aを支点として前側縦フレーム11fの側へ変位するため、歩行車1を前後方向に折り畳むことができる。
【0054】
さらに、横面フレーム体40は、
図7に示すように、横スライド側部フレーム43が側部フレーム12に対して後側ジョイント部材33および横スライドジョイント部材34に対して結合されているため、
図5、
図6に示すように、側部フレーム12の上述した傾斜方向への回動に伴って水平姿勢から後端が上方へ振られるように回動して側面視で傾斜姿勢となる。
ここで、
図3、
図5~
図7、
図8(a)に示すように、横面フレーム体40によって構成される面S40において左右方向に直交する方向(以下「直交方向」と称する)をY方向とする。
【0055】
図7に示すように、横面フレーム体40は、左右方向の折り畳み時に、折り畳み動作に連動して、換言すると2本のフレーム41a,41bの交差角度が変動することにより、該横面フレーム体40によって構成される面S40の直交方向Yの長さLy40が展開時より長くなる。
【0056】
横面フレーム体40は、座面として極力広い面積を確保して形成した場合、折り畳み時に、縦スライドジョイント部材32が
図3中の矢印Ddに示すように、下方へ変位するストロークだけでは、すなわち、横面フレーム体40を水平姿勢から傾けた姿勢とするだけでは、横面フレーム体40の直交方向Yの長さLy40が、折り畳みに要する長さとなるまで変位させることができず、横面フレーム体40を左右方向にしっかりと折り畳むことができないおそれがある。
【0057】
これに対して本実施形態の歩行車1は、
図5~
図7に示すように、折り畳み時に、横面フレーム体40を後側縦フレーム11rよりも後方へ突出する折り畳み形態となる構成としている(特に
図7中の仮想線で示した横面フレーム体40参照)。
【0058】
詳しくは、横面フレーム体40の前端に位置する枢着部(35a)は、
図1、
図7に示すように、展開時に後側縦フレーム11rよりも前側位置Pfに配置されるのに対して、折り畳み時には、
図5~
図7に示すように、後側縦フレーム11rよりも後方へ位置するように突出する(特に
図7中の仮想線で示した横面フレーム体40参照)。
【0059】
これにより、本実施形態の横面フレーム体40は、折り畳み時に直交方向Yへ長くなった部分を後方へと逃がすことができる。
【0060】
従って、横面フレーム体40は、展開時には例えば、座面として広い面積を確保しながらも、折り畳み時にはコンパクトに折り畳むことができる。
【0061】
図9は、上側ジョイント部材31と前側縦フレーム11fとの結合部の内部構造を示す。
【0062】
図9に示すように、上側ジョイント部材31の前側部分には、前側縦フレーム11fを挿通可能な貫通穴311が上下方向に沿って形成されている。さらに、上側ジョイント部材31の内部における、貫通穴311に対して後側付近には、貫通穴311の一部が後側へ張り出した空間312が設けられている。空間312は、下方に向けて開口し、該開口312aを通じて金属等の硬質材料で形成されたブロック53を収容可能に形成されている。
【0063】
上側ジョイント部材31の空間312の上部315には、上下方向に沿って貫通するボルト貫通穴314が形成されている。ボルト貫通穴314には、上方からボルトBが挿通され、該挿通されたボルトBの軸部分が空間312に向けて突出するように頭部が上部315の上面315aに設置されている。ブロック53には、ボルトBを挿通可能なネジ穴53bが上下方向に沿って貫通形成されている。そして、ブロック53は、ネジ穴53bにネジ込まれたボルトBによって空間312内に収容された状態で保持されている。
【0064】
ボルトBは、前側縦フレーム11fに対して互いの軸方向が一致する方向に備えている。これにより、ボルトBを軸回りに回動することで、空間312の内部において、ブロック53をボルトBに螺合されたナットのように、前側縦フレーム11fの軸方向に沿って空間312の上部へと螺進させることができる。
【0065】
すなわち、ボルトBは、ブロック53を前側縦フレーム11fの軸方向に沿ってガイドする。また、上側ジョイント部材31の空間312の後壁316の前面316aは、上方程、前側縦フレーム11fの側へ近接するように、ボルトBの軸方向、すなわち前側縦フレーム11fの軸方向に対して傾斜する傾斜面により形成されている。
一方、ブロック53の後面53aは、後壁316の前面316aと面接触状態に当接可能に傾斜する傾斜面により形成されている。
【0066】
ブロック53は、前面が隣接する前側縦フレーム11fの外周面に面接触するとともに、後面53aが後壁316の前面316aに面接触した状態で上側ジョイント部材31と、貫通穴311に挿通された前側縦フレーム11fとの間に介在する。
【0067】
上記構成によれば、後壁316の前面316aとブロック53の後面53aとが面接触した状態でブロック53を空間312内において前側縦フレーム11fの軸方向に沿って上方へ螺進させることにより、ブロック53を前側縦フレーム11fに対して圧接する方向へガイド(案内)することができる。
【0068】
これにより、ブロック53は、上側ジョイント部材31の貫通穴311に挿通された状態の前側縦フレーム11fを、該貫通穴311の周方向における、該ブロック53の側と反対側の内周面に押し付けることができる。
従って、前側縦フレーム11fと上側ジョイント部材31とを、両部材11f,31の間に介在するブロック53により加締めることで強固に、かつコンパクトに結合できる。
また、
図1~
図3に示すように、ハンドル7には、ユーザーが把持する把持部74を有する樹脂製のハンドル本体部71と、ハンドル本体部71の基端(下端)から下方へ突出する金属製のハンドル支柱72と、ブレーキレバー73とを備えている。
【0069】
ブレーキレバー73は、把持部74の直下に配置され、ハンドル本体部71の基部から把持部74と略同一方向に突出している。これにより、把持部74とブレーキレバー73とは、ハンドル本体部71の基部から2股状に突出する。
【0070】
図9、
図11(a)に示すように、ハンドル支柱72は、円筒状の前側縦フレーム11fの上端から内部に挿入されることで前側縦フレーム11fに対して、互いに同軸を成すように軸支されている。これにより、歩行車1には、
図1~
図4に示すように、左右の前側縦フレーム11fに対応して左右一対のハンドル7が備えられている。
なお、ハンドル支柱72の内周面には、該ハンドル支柱72を補強するための補強パイプ99が装着されている(
図9、
図10、
図11(a)(b)参照)。
【0071】
図9、
図10に示すように、ハンドル7は、ハンドル支柱72の前側縦フレーム11fに対する挿入量に応じて高さを調節可能に構成されている。
詳述すると、
図9に示すように、ハンドル支柱72には、軸方向において所定間隔ごとに径方向に貫通する貫通穴722が複数形成されている。一方、
図10に示すように、前側縦フレーム11fの上部と、該上部に固定された上側ジョイント部材31との夫々には、左右方向の外側から前側縦フレーム11fの内部に向けて貫通する貫通穴111,317が形成されている。
【0072】
また、
図3、
図10に示すように、上側ジョイント部材31には、高さ調節ネジ8を備えている。
前側縦フレーム11fと上側ジョイント部材31との各貫通穴111,317と、ハンドル支柱72の軸方向に複数形成した貫通穴722のうち何れかの貫通穴722とが連通した状態において、高さ調節ネジ8が挿通されている。これにより、高さ調節ネジ8は、前側縦フレーム11fに対してハンドル支柱72を所定高さに保持することができる。すなわち、ハンドル7は、ハンドル支柱72の前側縦フレーム11fに対する挿入具合に応じて、その高さを調節することができる。
【0073】
また、
図3、
図4に示すように、ハンドル7は、ハンドル本体部71をハンドル支柱72に対して軸回りに回動させることで、把持部74の先端が後方へ突き出す後側位置Prと、該後側位置Prよりも前側に位置するとともに把持部74の先端が前方へ突き出す前側位置Pfとの間において変更可能に構成している。
【0074】
図11(a)(b)に示すように、ハンドル7は、後側位置Prと前側位置Pfとの夫々の位置でハンドル本体部71をハンドル支柱72に対して軸回りに回動することを規制する規制手段としてのトーションバネ65(
図11(b)においては図示省略)、被規制部材63および規制部材66と、規制手段による規制をユーザーの押圧操作により解除する解除操作手段としての押圧部材61とを備えている。
【0075】
詳述すると、
図11(a)に示すように、ハンドル本体部71の基部は、下端から上方に向けて挿入穴711が形成され、該挿入穴711にハンドル支柱72の上部が下方から挿入されている。ハンドル本体部71の基部のハンドル支柱72を隔てた両側(当例では左右各側)には、ボス部75が突設されている。上述した規制手段63,65,66と押圧部材61とは、一つのハンドル7につき左右のボス部75に対応して2組が設けられている。
【0076】
ボス部75の内部には、押圧部材61と、押圧部材61を径方向内側(ハンドル支柱72の側)へ押圧可能に保持する押圧部材保持部材62が収容されている。ハンドル支柱72の軸方向および周方向のボス部75に対応する部位には、径方向へ貫通する貫通穴721が形成されている。
【0077】
貫通穴721には、被規制部材63が差し込まれている。被規制部材63は、押圧部材61の径方向内側への押圧により、規制位置から規制解除位置へと移動可能に貫通穴721の周縁に保持されている。
【0078】
詳しくは、被規制部材63は、径方向外端631が、規制位置のときハンドル支柱72の外周面よりも径外側へ突出する一方で、規制解除位置のときハンドル支柱72の外周面よりも径外側へ突出しないように貫通穴721に差し込まれている。
【0079】
ハンドル支柱72の内部において、互いに対向する一対の被規制部材63の間には、付勢手段としてU字状のトーションバネ65を備えている。被規制部材63は、径方向内側部分632にトーションバネ65の長さ方向の端部が係止され、トーションバネ65の付勢力によって、径方向外側、すなわち規制位置へ付勢されている。
【0080】
一方、ボス部75の内部における、貫通穴721の周縁には、規制位置に位置する被規制部材63が周方向に移動することを規制する規制部材66を備えている。また、押圧部材61は、押圧部材保持部材62によって、上述したように、径方向内側へ押圧可能であることに加えてトーションバネ65の付勢力によって規制位置より径方向外側へ変位しないように保持されている。
【0081】
上述した構成によれば、押圧部材61を押圧していない状態においては、被規制部材63は、トーションバネ65の付勢力によって規制位置に位置するため、規制部材66によって周方向に移動することが規制される。よって、ハンドル本体部71は、ハンドル支柱72の軸回りに回転することを規制される。
【0082】
一方、左右各側の押圧部材61を同時に押圧することで、左右夫々の被規制部材63は、トーションバネ65の付勢力に抗して規制位置から規制解除位置へ押し込まれる。これにより、ハンドル本体部71は、押圧部材61も含めてハンドル支柱72の軸回りに回転することができる。
【0083】
なお、ハンドル本体部71をハンドル支柱72に対して回動させて後側位置Prと前側位置Pfとの間で位置を変更したとき、被規制部材63は、トーションバネ65の付勢力によって規制解除位置から規制位置(径方向外側)へと移動し、再度、規制部材66に規制された状態となる。
【0084】
また、
図3、
図4に示すように、ハンドル本体部71は、ハンドル支柱72の軸回りに180度回転させることで前側位置Pfと後側位置Prとの間で位置変更が完了したとき、前側位置Pfと後側位置Prとの各姿勢が、ハンドル支柱72の軸方向に対して互いに線対称となるように姿勢変更することができる。
【0085】
具体的に、
図3に示すように、ハンドル本体部71は後側位置Prのとき、把持部74が前後方向に沿って略水平に倒伏する倒伏姿勢Paとなるように設定する一方で、前側位置Pfのとき、把持部74が先端(前端)程上方へ倒伏姿勢Paよりも傾く前上がり姿勢Pbとなるように設定している。
【0086】
ハンドル本体部71は、後側位置Prのとき、歩行車本体10の前側縦フレーム11fに対して後側に配置できるため、この位置において上述した倒伏姿勢Paとすることで、ユーザーが歩行車本体10に対して後側から体重をかけた状態で歩行車1を前方へ押し進め易い姿勢となるため好ましい。
【0087】
一方、ハンドル本体部71は、前側位置Pfのとき、歩行車本体10の前側縦フレーム11fに対して前側に配置することができ、その位置において上述した前上がり姿勢Pbとすることで、ユーザーは、歩行車本体10に対して後方からでも把持部74に体重を掛けた状態で把持し易くなるため好ましい。
【0088】
このように、ハンドル7を、ハンドル支柱72の軸回りに回転させるだけで、後側位置Prと前側位置Pfとの位置変更のみならず、夫々の位置に適した姿勢へと容易に変更することができる。
【0089】
また、左右のハンドル7は、上述したように、左右夫々に対応する前側縦フレーム11fに軸支されているため、左右独立して位置変更することができる。また、上述した規制手段63,65,66(
図11(a)(b)参照)は、位置変更する際に、ハンドル本体部71が
図4に示すように、歩行車本体10の直上(左右方向の内側)を通過する方向への回動のみを許容している。例えば、左側のハンドル本体部71を後側位置Prから前側位置Pfへ変更する際には、平面視で反時計回り(矢印D2)にハンドル支柱72の軸回りに180度回転させる必要がある。同じく左側のハンドル本体部71を前側位置Pfから後側位置Prへ変更する際には平面視で時計回り(矢印D1)に、右側のハンドル本体部71を後側位置Prから前側位置Pfへ変更する際には平面視で時計回り(矢印D1)に、右側のハンドル本体部71を前側位置Pfから後側位置Prへ変更する際には平面視で反時計回り(矢印D2)に、夫々ハンドル支柱72の軸回りに180度回転させる必要がある。
【0090】
このように、ユーザーは、ハンドル7の位置を変更する際に、ハンドル本体部71が歩行車本体10の直上を通過する方向への回動のみを許容することで、ハンドル7に体重を預けながらでも安定して位置変更することができる。
【0091】
上述した実施形態の歩行車1は、
図1~
図4に示すように、複数のフレーム(11,41a,41b等)を組み合わせて構成される歩行車本体10と、歩行車本体10の下方に有する車輪2と、歩行車本体10の上方に有するハンドル7と、を備え、歩行車本体10の上部に、ハンドル7を下側から支持する前側縦フレーム11f(ハンドル支持部)を備え、ハンドル7に、把持部74を有するハンドル本体部71と、ハンドル本体部71の下端(基端)から前側縦フレーム11fによって軸支可能に下方へ突出するハンドル支柱72を備え、
図3,
図4に示すように、ハンドル本体部71は、ハンドル本体部71の把持部74の先端が後方へ突き出す後側位置Prと、該後側位置Prよりも前側に位置するとともにハンドル本体部71の把持部74(先端)が前方へ突き出す前側位置Pfとの間において、前側縦フレーム11fの軸回りに回動する構成としたものである。
【0092】
上記構成によれば、ハンドル7は、後側位置Prと前側位置Pfとの相互間で位置を変更する際に、ハンドル7を下側から支持する前側縦フレーム11fの軸回りに回動するため(
図3、
図4中の矢印D1,D2参照)、ハンドル本体部71を水平面に沿った姿勢のまま変更することができる。
【0093】
このため、本発明の歩行車1は、ハンドル7の位置を変更する際に、例えば、ハンドル本体部71を左右方向に延びる軸回りに回動(上下反転)させる従来の歩行車のように、下肢が不自由なユーザー(歩行者)にとって困難な、ハンドル7を持ち上げる動作をユーザーに強いることがなくハンドル本体部71の位置を容易に変更することができる。
【0094】
さらに、本実施形態のハンドル7は、上述したように、位置変更の途中においてもハンドル本体部71をユーザーが把持し易い、平面に沿う姿勢に維持される。このため、ハンドル本体部71の位置変更の途中においてもユーザーは、ハンドル本体部71に体重をかけながら後側位置Prと前側位置Pfとの相互間で容易に位置を変更させることができる。
【0095】
加えて、本実施形態のハンドル7は、位置を変更する際に、上述したように、水平面に沿った姿勢のまま変更することで、従来のように、上下反転させて変更する場合と比して、ブレーキレバー73から導出され、ハンドル7周辺に取り回されるブレーキワイヤー(図示省略)が、ハンドル7に絡まり難くなり、容易に位置を変更することができる。
【0096】
またこの発明の態様として、
図1~
図3に示すように、ハンドル7は、歩行車本体10の左右各側に備えた前側縦フレーム11fの夫々に支持され、前側縦フレーム11fは、ハンドル支柱72と同軸を成すように上方向へ突出して形成されたものである。
【0097】
上記構成によれば、左右一対のハンドル7は、夫々独立して位置変更することができるため、ユーザーは、左右何れか一方のハンドル7を把持した状態で他方のハンドル7の位置変更を容易に行うことができる。
【0098】
さらに、ハンドル支柱72と前側縦フレーム11fとは、互いに同軸であるため、ユーザーからハンドル7へ入力された荷重を、互いに同軸を成すハンドル支柱72から前側縦フレーム11fへと、夫々の軸方向に沿って直線状に、つまり軸力として効率よく伝達できる。
【0099】
従って、ハンドル7を前側縦フレーム11fによって安定して支持できるため、ユーザーは、ハンドル7に体重を預けながら容易にハンドル7の位置を変更することができる。
【0100】
またこの発明の態様として、
図3に示すように、前側縦フレーム11fは、上方程後方に傾いた姿勢で上下方向に沿って延び、ハンドル7は後側位置Prのとき、ハンドル本体部71の把持部74が前後方向に沿って略水平に倒伏する倒伏姿勢Paで配置されたものである。
【0101】
上記構成によれば、ハンドル本体部71を、倒伏姿勢Paで配置された後側位置Prから前側縦フレーム11fの軸回りに180度回転させるだけで、前側位置Pfにおいては、前側縦フレーム11fの軸方向に対して、倒伏姿勢Paと線対称となる姿勢、すなわち、先端(前端)程上方へ倒伏姿勢Paよりも傾く前上がり姿勢Pbへと変更することができる。
【0102】
このように、ハンドル7を、前側縦フレーム11fの軸回りに回転させるだけで、後側位置Prと前側位置Pfとの位置変更のみならず、夫々の位置に適した姿勢へと変更することができる。
【0103】
ここで、ハンドル7は、前側位置Pfのとき、後側位置Prと比して歩行車本体10に対して前方寄りに位置するが、前上がり姿勢Pbとなるため、上述したように、歩行車本体10の後方からでもユーザーが自身の体重を預けた状態で把持することができる。
【0104】
但し、ハンドル7は、前側位置Pfのとき前上がり姿勢Pbとすることで、上述したように、ユーザーが把持し易くなる一方で、前上がり姿勢Pbの把持部74に対して体重をかける程、該把持部74に沿ってユーザーの手が後下方向へずれ落ち易くなるおそれがある。
【0105】
これに対して本実施形態においては、ハンドル本体部71が前上がり姿勢Pbのとき、把持部74とブレーキレバー73とは、共に前上方向へ二股状に突出するため(
図3中の仮想線で示したハンドル本体部71参照)、仮に、把持部74を把持するユーザーの手が該把持部74に沿って後下方向へずれ落ちようとしてもブレーキレバー73の付け根部分に当たることで、それ以上のずれ落ちを抑制できる。
【0106】
またこの発明の態様として、
図3、
図4に示すように、ハンドル本体部71は、ハンドル支柱72に対して、該ハンドル支柱72の軸回りに回動可能に軸支され、
図11(a)(b)に示すように、ハンドル本体部71をハンドル支柱72の周方向において、前側位置Pfと後側位置Prとの何れかの位置に規制する規制手段としてのトーションバネ65、被規制部材63および規制部材66と、該規制手段63,65,66による位置規制状態を解除操作する解除操作手段としての押圧部材61を備え、規制手段63,65,66と押圧部材61とは、2組が備えられるとともに、2組の夫々がハンドル支柱72の中心軸を隔てた左右各側に配設されたものである。
【0107】
上記構成によれば、2つの押圧部材61を同時に操作しなければ、ハンドル本体部71のハンドル支柱72に対する位置規制状態が解除されないため、ハンドル本体部71の位置規制状態が解除操作手段の誤操作により解除されることを防ぐことができる。一方、2組の夫々が、ハンドル支柱72の中心軸を隔てた各側に配設されているため、ユーザーは、2つの規制手段63,65,66による規制状態を同時に解除する際には、2つの押圧部材61を例えば、2本の指先で摘むなどして押圧するだけで足りるため、片手でも容易に解除することができる。
【0108】
またこの発明の態様として、
図1~
図3に示すように、前側縦フレーム11fは、ハンドル7の側から前輪2fの側へ歩行車本体10において略直線状に延びたものである。
【0109】
上記構成によれば、ハンドル7と前輪2fとを、前側縦フレーム11fを介して略直線状に結ぶことができるため、ユーザーが歩行車1を前方へ押す力を、ハンドル7から前側縦フレーム11fを介して前輪2fへと効率よく伝達できる。
【0110】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0111】
例えば、本発明の横面フレーム体は、上述した実施形態の横面フレーム体40のように、折り畳み時において、直交方向Yの長さLy40が前後方向の少なくとも何れか一方の縦フレーム11よりも該一方へ、展開時よりも突出する構成であれば、後側縦フレーム11rよりも後方向へ突出するに限らず、前側縦フレーム11fよりも前方向へ突出する形態、或いは、これら縦フレーム11f,11rに対して前後方向の双方へ突出する形態としてもよい。
【0112】
また、本発明の横面フレーム体は、折り畳み時において、直交方向Yの長さLy40が前後方向の少なくとも何れか一方の縦フレーム11よりも該一方へ、展開時よりも突出する構成であれば、展開時において例えば、一方の端部が一方の縦フレーム11よりも該一方側に位置する展開形態であってもよい。
例えば、上述した実施形態の横面フレーム体40は、後端に位置する軸35aが折り畳み時に、展開時よりも後方に位置するのであれば、展開時に該軸35aが後側縦フレーム11rよりも後方に位置する展開形態であってもよい。
なお、言うまでもなく、本発明の横面フレーム体は、座面として利用することに限定せず、荷物の設置面としてなど他の用途に適用してもよい。
【0113】
また、本発明の横面フレーム体は、上述した実施形態の横面フレーム体40に限定せず、
図12(a)(b)に示すような横面フレーム体40’で構成とすることができる。
【0114】
具体的には、
図12(a)(b)に示すように、X字状に交差する2本のフレーム41a’,41b’は、何れも断面四角形状の角パイプで形成されるとともに、互いの交差部分には、軸支部42’によって枢支された回動部48を備えている。回動部48は、2本のフレーム41a’,41b’の上下方向の厚みと同じ厚みで形成されている。
【0115】
図12(b)に示すように、回動部48は、上側片半分に位置する上側回動部48bと下側片半分に位置する下側回動部48aとを上下各側に重ね合わせた状態で上下方向に延びる軸支部42’に軸支されている。これにより、上側回動部48bと下側回動部48aとは、軸支部42’の軸回りに相対回転可能に形成されている。
【0116】
上側回動部48bには、軸支部42’を隔てた各側から互いに相反する方向(径方向外側)へ直線状に突出する一対の突出部材49a,49aを備え、これら一対の突出部材49a,49aによって2本のフレーム41a’,41b’のうち一方のフレーム41a’が形成されている。
【0117】
同様に下側回動部48aの軸支部42’を隔てた各側から互いに相反する方向(径方向外側)へ直線状に突出する一対の突出部材49b,49bを備え、これら一対の突出部材49b,49bによって2本のフレーム41a’,41b’のうち他方のフレーム41b’が形成されている。これにより、上側回動部48bと下側回動部48aとを相対回転させることで2本のフレームの交差角度を変更することができる。
上記構成によれば、横面フレーム体40’は、上面を交差部分も含めて平坦に形成することができるため、座面として利用し易い形態とすることができる。
【0118】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、フレームは、縦フレーム11、一方のフレーム(41a又は41a’)、他方のフレーム(41b又は41b’)に対応し、同様に
ハンドル支持部は、前側縦フレーム11fに対応し、
規制手段は、トーションバネ65、被規制部材63および規制部材66に対応し、
解除操作手段は、押圧部材61に対応する。
【符号の説明】
【0119】
1…歩行車
2…車輪
2f…前輪(歩行車本体の下方かつ前側に位置する車輪)
7…ハンドル
10…歩行車本体
11…縦フレーム(フレーム)
11f…前側縦フレーム(ハンドル支持部)
11r…後側縦フレーム
41a,41a’…一方のフレーム
41b,41b’…他方のフレーム
61…押圧部材(解除操作手段)
65…トーションバネ(規制手段)
66…被規制部材(規制手段)
67…規制部材(規制手段)
71…ハンドル本体部
72…ハンドル支柱
74…把持部
Pr…後側位置
Pf…前側位置
Pa…倒伏姿勢
Pb…前上がり姿勢
X…前後方向
W…左右方向