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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030089
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】廃樹脂回収装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20240229BHJP
   G01F 23/292 20060101ALI20240229BHJP
   G01F 23/2962 20220101ALI20240229BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G21C19/32
G01F23/292 Z
G01F23/2962
G21F9/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132652
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉村 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃
(72)【発明者】
【氏名】大内 勉
(72)【発明者】
【氏名】横山 聡
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014FA04
2F014FB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、廃樹脂を高効率で回収することができ、廃樹脂を回収する系統内への空気の流入を防止できる廃樹脂回収装置を提供する。
【解決手段】本発明による廃樹脂回収装置10は、廃樹脂2と廃液3が貯蔵されている廃樹脂貯蔵タンク1に設置可能であり、起動すると廃樹脂2の回収または攪拌を行うノズル6、7と、一端部にノズル6、7を備え、ノズル6、7を昇降させる機構であるノズル昇降部4と、ノズル6、7またはノズル昇降部4に設置され、ノズル6、7と廃樹脂2との距離を計測するための距離センサ21と、距離演算部101と伸縮制御部103を備える演算制御部100を備える。距離演算部101は、距離センサ21の計測結果から、ノズル6、7と廃樹脂2との距離である測定距離を求める。伸縮制御部103は、ノズル昇降部4によりノズル6、7を昇降させ、測定距離が予め定めた最適距離と等しい場合には、ノズル6、7の昇降を停止する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃樹脂と廃液が貯蔵されている廃樹脂貯蔵タンクに設置可能であり、
起動すると前記廃樹脂の回収または攪拌を行うノズルと、
一端部に前記ノズルを備え、前記ノズルを昇降させる機構であるノズル昇降部と、
前記ノズルまたは前記ノズル昇降部に設置され、前記ノズルと前記廃樹脂との距離を計測するための距離センサと、
距離演算部と、伸縮制御部を備える演算制御部と、
を備え、
前記距離演算部は、前記距離センサの計測結果から、前記ノズルと前記廃樹脂との距離である測定距離を求め、
前記伸縮制御部は、前記ノズル昇降部により前記ノズルを昇降させ、前記測定距離が予め定めた最適距離と等しい場合には、前記ノズルの昇降を停止する、
ことを特徴とする廃樹脂回収装置。
【請求項2】
前記廃樹脂貯蔵タンクの上部から前記廃液の液面までの距離を計測するデプスカメラを備え、
前記演算制御部は、液面距離演算部と、先端位置演算部を備え、
前記液面距離演算部は、前記デプスカメラの計測結果から、前記廃液の前記液面の位置を取得し、
先端位置演算部は、前記ノズル昇降部の昇降状態から、前記ノズルの上下方向の位置を取得し、
前記演算制御部は、前記ノズルの上下方向の位置が前記廃液の前記液面の位置よりも上方である場合には、起動している前記ノズルを停止する、
請求項1に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項3】
前記ノズル昇降部は、内径が互いに異なる複数の筒状部材がテレスコピック状に接続されて構成された伸縮機構であり、長さが伸縮することにより前記ノズルを昇降させる、
請求項1に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項4】
前記ノズル昇降部は、複数の腕部と、前記腕部を接続する複数の関節部とを備え、前記腕部の接続角度が変わることにより前記ノズルを昇降させる、
請求項1に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項5】
前記ノズル昇降部は、棒状部材を備え、前記棒状部材の位置が上下方向に移動することにより前記ノズルを昇降させる、
請求項1に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項6】
前記伸縮制御部は、
前記測定距離が前記最適距離よりも小さい場合には、前記ノズル昇降部により前記ノズルを上昇させて前記ノズルを前記廃樹脂から離し、
前記測定距離が前記最適距離よりも大きい場合には、前記ノズル昇降部により前記ノズルを下降させて前記ノズルを前記廃樹脂に近づける、
請求項1に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項7】
前記伸縮制御部は、
前記測定距離が前記最適距離よりも小さい場合には、前記最適距離と前記測定距離の差だけ前記ノズルを上昇させ、
前記測定距離が前記最適距離よりも大きい場合には、前記測定距離と前記最適距離の差だけ前記ノズルを下降させる、
請求項6に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項8】
前記距離センサは、前記ノズルと前記廃樹脂との距離を超音波で計測する距離センサである、
請求項1に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項9】
前記距離演算部は、
前記距離センサが送信した前記超音波の周波数と、前記廃樹脂からの反射波の周波数との差を用いて、前記廃樹脂の表面の変動速度を求め、
前記変動速度を用いて、前記測定距離を補正する、
請求項8に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項10】
前記距離センサは、前記ノズルと前記廃樹脂との距離を超音波で計測するとともに、前記廃樹脂の映像を撮影するデプスカメラである、
請求項1に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項11】
前記距離センサは、前記ノズルと前記廃樹脂の映像を撮影する水中カメラである、
請求項1に記載の廃樹脂回収装置。
【請求項12】
前記距離センサが撮影した前記映像を表示する映像出力部を備える、
請求項10または11に記載の廃樹脂回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃樹脂を回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所において、原子炉の運転によって生じた放射性の樹脂は、廃樹脂として廃樹脂貯蔵タンクに貯蔵される。廃樹脂貯蔵タンクから廃樹脂を抜き出す際には、廃樹脂貯蔵タンクの下部に蓄積した廃樹脂を攪拌して回収する必要がある。
【0003】
従来の廃樹脂回収装置の例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された放射性廃スラッジの抜出装置は、遠隔操作により移動可能な装置本体(水中遠隔装置)と、装置本体に接続され、廃スラッジ貯蔵タンクから放射性廃スラッジ(廃樹脂)を抜出す抜出し管と、探知波(音波)により装置本体の位置を探知する機器(位置探知ソナー発信機)と、探知波により廃スラッジ貯蔵タンク内の放射性廃スラッジの位置を探知する機器(スラッジ面探知ソナー)とを備え、装置本体及び放射性廃スラッジのそれぞれの位置の探知の結果に基づいて、装置本体を遠隔操作する。スラッジは、攪拌空気供給管で供給された空気により攪拌される。位置探知ソナー発信機が発生した探知波は、廃スラッジ貯蔵タンク内の廃液の水面に浮かべられた、位置探知ソナー受信機で受信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-128025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃樹脂回収装置では、廃樹脂貯蔵タンクの底部に存在する廃樹脂の層の付近に攪拌ノズルと回収ノズルを設置し、攪拌ノズルから空気または水を吐出してタンクの内部(特に廃樹脂)を攪拌し、回収ノズルで廃樹脂を吸引することで、廃樹脂を回収する。
【0006】
従来の廃樹脂回収装置には、廃樹脂を回収して廃樹脂の層が変動すると、回収ノズルと廃樹脂面との距離が離れるために、廃樹脂の回収効率が低下するという課題がある。また、例えば特許文献1に記載の装置では、廃樹脂の回収に伴い廃スラッジ貯蔵タンク内の廃液の液面が変動すると、位置探知ソナー受信機が装置本体の位置を正確に取得できず、抜出し管の位置を正確に定められないので廃樹脂の回収効率が低下することが懸念される。このように、従来の廃樹脂回収装置には、廃樹脂の回収に伴い、廃樹脂の回収効率が低下することがあるという課題がある。
【0007】
また、廃樹脂の回収に伴い廃樹脂貯蔵タンク内の液位が低下すると、回収ノズルが気中に露出して空気を吸引し、廃樹脂を回収する系統内に空気が流入して系統のポンプなどに悪影響を与えることがあり得る。このため、廃樹脂を回収する系統内への空気の流入を防止できる廃樹脂回収装置が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、廃樹脂を高効率で回収することができるとともに、廃樹脂を回収する系統内への空気の流入を防止できる廃樹脂回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による廃樹脂回収装置は、廃樹脂と廃液が貯蔵されている廃樹脂貯蔵タンクに設置可能であり、起動すると前記廃樹脂の回収または攪拌を行うノズルと、一端部に前記ノズルを備え、前記ノズルを昇降させる機構であるノズル昇降部と、前記ノズルまたは前記ノズル昇降部に設置され、前記ノズルと前記廃樹脂との距離を計測するための距離センサと、距離演算部と、伸縮制御部を備える演算制御部とを備える。前記距離演算部は、前記距離センサの計測結果から、前記ノズルと前記廃樹脂との距離である測定距離を求める。前記伸縮制御部は、前記ノズル昇降部により前記ノズルを昇降させ、前記測定距離が予め定めた最適距離と等しい場合には、前記ノズルの昇降を停止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、廃樹脂を高効率で回収することができるとともに、廃樹脂を回収する系統内への空気の流入を防止できる廃樹脂回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1による廃樹脂回収装置の構成を示す図。
図2】実施例1による廃樹脂回収装置の詳しい構成を示す図。
図3】実施例1による廃樹脂回収装置が廃樹脂貯蔵タンクに設置されたときの、ノズルの位置が設定される手順を示すフロー図。
図4】実施例1による廃樹脂回収装置が運転され、廃樹脂貯蔵タンクの内部の廃樹脂を廃樹脂回収装置が回収するときの手順を示すフロー図。
図5】本発明の実施例2による廃樹脂回収装置の構成を示す図。
図6】本発明の実施例3による廃樹脂回収装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による廃樹脂回収装置は、廃樹脂貯蔵タンクから廃樹脂を回収して廃樹脂の層が変動しても、ノズル(攪拌ノズルと回収ノズル)と回収対象の廃樹脂との距離を常に一定に保つことができる。このため、ノズルと廃樹脂との距離を最適に保つことができ、廃樹脂を高効率で回収することができる。また、本発明による廃樹脂回収装置は、廃樹脂貯蔵タンク内の液位を測定するので、廃樹脂の回収に伴い廃樹脂貯蔵タンク内の液位が低下しても、回収ノズルが空気を吸引するのを防止することができ、廃樹脂を回収する系統内への空気の流入を防止できる。
【0013】
以下、本発明の実施例による廃樹脂回収装置について、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0014】
本発明の実施例1による廃樹脂回収装置について説明する。
【0015】
図1は、本実施例による廃樹脂回収装置10の構成を示す図である。本実施例による廃樹脂回収装置10は、廃樹脂貯蔵タンク1に設置可能であり、廃樹脂貯蔵タンク1に設置されて運転される。図1には、本実施例による廃樹脂回収装置10の運転状態を示している。
【0016】
廃樹脂貯蔵タンク1の内部には、廃樹脂2と廃液3が貯蔵されている。廃樹脂2は、例えば粒状である。廃液3は、例えば水である。廃樹脂2と廃液3は、廃樹脂貯蔵タンク1の底部に存在する。
【0017】
本実施例による廃樹脂回収装置10は、攪拌ノズル6(6a、6b)と、回収ノズル7と、ノズル昇降部4(4a、4b、4c)と、演算制御部100を備える。廃樹脂回収装置10は、後述するセンサ(例えば、距離センサやカメラなど)をさらに備える。攪拌ノズル6と回収ノズル7は、廃樹脂2の上方に配置される。
【0018】
攪拌ノズル6a、6bは、それぞれノズル昇降部4a、4bの一端部(下端部)に設置されている。攪拌ノズル6は、水または空気を噴射して廃樹脂貯蔵タンク1の内部を攪拌することで、廃樹脂2を攪拌する。
【0019】
回収ノズル7は、ノズル昇降部4cの一端部(下端部)に設置されている。回収ノズル7は、廃樹脂貯蔵タンク1に貯蔵された廃樹脂2を廃液3とともに吸引することにより、廃樹脂2を回収する。
【0020】
攪拌ノズル6と回収ノズル7は、廃樹脂2の表面付近に配置される。図1に示す例では、廃樹脂回収装置10は、2つの攪拌ノズル6a、6bと1つの回収ノズル7を備える。廃樹脂回収装置10が備える攪拌ノズル6と回収ノズル7の数は、これに限られず、任意に定めることができる。以下では、攪拌ノズル6をノズル6と呼び、回収ノズル7をノズル7と呼ぶこともある。
【0021】
ノズル昇降部4は、一端部(下端部)にノズル6、7を備え、ノズル6、7を昇降させる機構であり、廃樹脂貯蔵タンク1の内部に配置される。本実施例では、ノズル昇降部4は、長さが伸縮することによりノズル6、7を昇降させる伸縮機構で構成される。ノズル昇降部4が伸縮してノズル6、7が昇降することにより、ノズル6、7の上下方向(鉛直方向)の位置を定めることができる。例えば、ノズル昇降部4が伸長して回収ノズル7が降下することにより、回収ノズル7を廃樹脂2の表面付近に設置することができる。
【0022】
ノズル昇降部4a、4b、4cの他端部(上端部)は、固定部5に固定されている。固定部5は、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8に設けられた固定機構である。本実施例では、固定部5は、廃樹脂貯蔵タンク1の頂部(上面)に設けられている。
【0023】
演算制御部100は、廃樹脂貯蔵タンク1の外部に配置され、ノズル昇降部4を制御することで、ノズル6、7の昇降を制御する。演算制御部100は、廃樹脂回収装置10が備えるセンサの出力を入力して処理し、ノズル昇降部4を制御する。
【0024】
図2は、本実施例による廃樹脂回収装置10の詳しい構成を示す図である。図2には、主に、廃樹脂回収装置10が備えるセンサと、攪拌ノズル6が設置されたノズル昇降部4の構成と、演算制御部100の構成を示している。
【0025】
以下では、一例として、攪拌ノズル6が設置されたノズル昇降部4について説明する。回収ノズル7が設置されたノズル昇降部4は、攪拌ノズル6が設置されたノズル昇降部4と同様の構成を備えることができる。
【0026】
廃樹脂回収装置10は、センサとして、超音波距離センサ21と、液面計測用デプスカメラ22を備える。
【0027】
超音波距離センサ21は、ノズル6に設置されている。超音波距離センサ21は、廃樹脂回収装置10が廃樹脂貯蔵タンク1に設置されたときと、廃樹脂回収装置10が運転されているときに、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離を計測する。
【0028】
液面計測用デプスカメラ22は、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8に設けられた固定部5に設置されている。液面計測用デプスカメラ22は、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8から廃液3の液面までの距離を計測する。本実施例では、液面計測用デプスカメラ22は、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8から廃液3の液面までの距離を、超音波で測ることができる。すなわち、液面計測用デプスカメラ22は、超音波距離センサの機能も備える。なお、演算制御部100は、液面計測用デプスカメラ22からの信号の強度が微弱で距離の計測が困難な場合には、この信号を強度が十分な大きさになるように増幅してもよい。
【0029】
ノズル昇降部4について説明する。本実施例では、ノズル昇降部4は、複数のロッド11と、ワイヤー12と、ワイヤー繰出し装置13を備える。
【0030】
複数のロッド11は、内径(太さ)が互いに異なる複数の筒状部材であり、廃樹脂貯蔵タンク1の内部に配置される。ノズル昇降部4は、複数のロッド11がテレスコピック状に接続されて構成された伸縮機構である。ノズル昇降部4は、内径の大きいロッド11の中に内径の小さいロッド11が入り込むことにより収縮し、内径の大きいロッド11の中から内径の小さいロッド11が出てくることにより伸長する。
【0031】
なお、ロッド11の数は、廃樹脂貯蔵タンク1の大きさや廃樹脂回収装置10の設置スペースの大きさなどに応じて、任意に定めることができる。
【0032】
ワイヤー12は、一端が、ノズル昇降部4の下端部に位置するロッド11に固定されており、他端が、ワイヤー繰出し装置13に固定されている。ワイヤー12は、ワイヤー繰出し装置13により、廃樹脂貯蔵タンク1の中での長さが変わる。
【0033】
ワイヤー繰出し装置13は、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8に固定され、ワイヤー12を巻取るためのドラムと、このドラムの回転数を計測するためのエンコーダを備える。ワイヤー繰出し装置13は、ドラムが回転することにより、ワイヤー12を巻き取ったり送り出したりすることができ、廃樹脂貯蔵タンク1の中でのワイヤー12の長さを変えることができる。
【0034】
本実施例では、ノズル昇降部4は、ワイヤー繰出し装置13によりワイヤー12が巻き取られると、内径の大きいロッド11の中に内径の小さいロッド11がテレスコピック状に格納されて収縮する。そして、ノズル昇降部4は、ワイヤー繰出し装置13によりワイヤー12が送り出されると、内径の大きいロッド11の中に格納されていた内径の小さいロッド11が、自重により内径の大きいロッド11の中から出てきて伸長する。
【0035】
演算制御部100は、伸縮制御部103、クロック信号発生部110、距離演算部101、液面距離演算部104、先端位置演算部105、及び比較部102を備える。
【0036】
伸縮制御部103は、ノズル昇降部4を伸縮させる。本実施例では、伸縮制御部103は、ワイヤー繰出し装置13を制御し、ドラムを回転させてワイヤー12を巻き取ったり送り出したりして、廃樹脂貯蔵タンク1の中でのワイヤー12の長さを変えることで、ノズル昇降部4を伸縮させる。
【0037】
クロック信号発生部110は、周期的に信号(クロック信号)を発信する。演算制御部100では、クロック信号発生部110が発信したクロック信号に従い、各部が動作することができる。
【0038】
距離演算部101は、超音波距離センサ21の計測結果から、ノズル6、7と廃樹脂2の表面との距離を求める。
【0039】
液面距離演算部104は、液面計測用デプスカメラ22の計測結果から、廃液3の液面の位置を求める。
【0040】
先端位置演算部105は、ノズル昇降部4の昇降状態(昇降の程度)から、ノズル6、7の上下方向(鉛直方向)の位置を取得する。本実施例では、先端位置演算部105は、ワイヤー繰出し装置13のドラムの回転数を用いてノズル昇降部4の昇降状態を求め、ノズル6、7の上下方向(鉛直方向)の位置を取得する。
【0041】
比較部102は、距離演算部101が求めた距離(測定距離)と、ノズル6、7と廃樹脂2の表面との最適な距離(最適距離)とを比較する。また、比較部102は、液面距離演算部104が取得した廃液3の液面の位置と、先端位置演算部105が取得したノズル6、7の上下方向(鉛直方向)の位置とを比較する。
【0042】
図3を参照して、本実施例による廃樹脂回収装置10が廃樹脂貯蔵タンク1に設置されたときの、ノズル6、7の位置が設定される手順を説明する。以下では、一例として、攪拌ノズル6の位置が設定される手順を説明するが、回収ノズル7も、攪拌ノズル6と同様に位置が設定される。
【0043】
図3は、本実施例による廃樹脂回収装置10が廃樹脂貯蔵タンク1に設置されたときの、ノズル6の位置が設定される手順を示すフロー図である。廃樹脂回収装置10は、ノズル昇降部4が収縮している状態で廃樹脂貯蔵タンク1に設置されている。
【0044】
ステップS100で、演算制御部100の伸縮制御部103は、ワイヤー繰出し装置13のドラムを回転させてワイヤー12を送り出して、ノズル昇降部4の伸長を開始する。
【0045】
ステップS101で、演算制御部100のクロック信号発生部110から伸縮制御部103に停止信号が送られると、伸縮制御部103は、ノズル昇降部4の伸長を停止する。クロック信号発生部110は、クロック信号と同期して、伸縮制御部103に周期的に停止信号を送る。
【0046】
ステップS102で、ノズル6に設置されている超音波距離センサ21は、廃樹脂2の表面に超音波を送信し、廃樹脂2からの反射波を受信する。超音波距離センサ21が受信した反射波の波形は、演算制御部100の距離演算部101に送られる。距離演算部101は、反射波の波形を解析することにより、超音波距離センサ21が超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間(伝搬時間)を求める。そして、距離演算部101は、伝搬時間の半分の時間に超音波の速度(音速)を乗じることで、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離を求める。距離演算部101が求めた、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離を、「測定距離」と呼ぶ。
【0047】
なお、超音波距離センサ21は、温度センサを備え、温度センサによって廃樹脂貯蔵タンク1の内部の温度を取得することができる。距離演算部101は、超音波距離センサ21が取得した廃樹脂貯蔵タンク1の内部の温度を用いて廃樹脂貯蔵タンク1の内部での音速を求めることで、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離をより正確に求めることができる。
【0048】
ステップS103で、演算制御部100の比較部102は、距離演算部101が求めた測定距離と、ノズル6と廃樹脂2の表面との最適な距離(最適距離)とを比較する。最適距離は、事前のシミュレーションや実験などに基づいて予め定めることができる。
【0049】
ステップS104からステップS106は、伸縮制御部103が、ステップS103での比較部102の比較結果に応じて実行する。
【0050】
ステップS104は、測定距離が最適距離よりも小さい場合に、伸縮制御部103が実行するステップである。この場合には、ノズル6が廃樹脂2の表面に近づきすぎているので、伸縮制御部103は、ワイヤー繰出し装置13のドラムをステップS100での回転方向と逆方向に回転させてワイヤー12を巻き取って、ノズル昇降部4を収縮させる。ノズル昇降部4の収縮により、ノズル6は、上昇して廃樹脂2から離れる。
【0051】
ステップS105は、測定距離が最適距離よりも大きい場合に、伸縮制御部103が実行するステップである。この場合には、ノズル6が廃樹脂2の表面から離れすぎているので、伸縮制御部103は、ワイヤー繰出し装置13のドラムをステップS100での回転方向と同方向に回転させてワイヤー12を送り出して、ノズル昇降部4を伸長させる。ノズル昇降部4の伸長により、ノズル6は、下降して廃樹脂2に近づく。
【0052】
ステップS104またはステップS105が実行された場合には、ステップS101に進み、クロック信号発生部110から伸縮制御部103に停止信号が送られると、伸縮制御部103は、ノズル昇降部4の収縮または伸長を停止する。測定距離が最適距離と等しくなるまで、ステップS101からステップS105までのステップが実行される。
【0053】
ステップS106は、測定距離が最適距離と等しい場合に、伸縮制御部103が実行するステップである。この場合には、伸縮制御部103は、ノズル6が廃樹脂2の表面から最適な距離だけ離れた位置にあるので、ノズル昇降部4の伸縮を終了する。ノズル6は、昇降を終了し、廃樹脂2の表面からの距離が最適距離となる。
【0054】
次に、図4を参照して、本実施例による廃樹脂回収装置10が運転され、廃樹脂貯蔵タンク1の内部の廃樹脂2を廃樹脂回収装置10が回収するときの手順を説明する。以下では、一例として、攪拌ノズル6について説明するが、以下の説明は回収ノズル7にも当てはまる。廃樹脂回収装置10は、廃樹脂貯蔵タンク1に設置され、図3に示した手順でノズル6、7の位置が設定された後に、運転が開始される。
【0055】
図4は、本実施例による廃樹脂回収装置10が運転され、廃樹脂貯蔵タンク1の内部の廃樹脂2を廃樹脂回収装置10が回収するときの手順を示すフロー図である。
【0056】
ステップS200で、演算制御部100は、廃樹脂回収装置10の運転を開始し、攪拌ノズル6と回収ノズル7を起動する。攪拌ノズル6は、起動すると、廃樹脂2の攪拌を開始する。回収ノズル7は、起動すると、廃樹脂2の回収を開始する。
【0057】
ステップS201で、演算制御部100のクロック信号発生部110から伸縮制御部103に停止信号が送られると、伸縮制御部103は、ノズル昇降部4を伸縮させている場合には(後述するステップS212またはステップS222を実行した場合には)、ノズル昇降部4の伸縮を停止する。
【0058】
ステップS201の後、ステップS202、ステップS203、及びステップS204が実行される。これらのステップは、任意の順序で実行され、複数のステップが同時に行われてもよい。
【0059】
ステップS202で、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8に設置されている液面計測用デプスカメラ22(図2)は、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8から廃液3の液面までの距離を超音波で計測する。演算制御部100の液面距離演算部104は、液面計測用デプスカメラ22の計測結果から、廃液3の液面の位置を取得する。液面距離演算部104は、任意の基準位置からの高さとして、廃液3の液面の位置を求めることができる。
【0060】
ステップS203で、演算制御部100の先端位置演算部105は、ワイヤー繰出し装置13のエンコーダが計測した、ワイヤー繰出し装置13のドラムの回転数から、ノズル6の上下方向(鉛直方向)の位置を取得する。例えば、先端位置演算部105は、ドラムの回転数と半径からワイヤー12の移動量(廃樹脂貯蔵タンク1の中での長さの変化量)を求め、この移動量とノズル6の初期位置からノズル6の上下方向の位置を求めることができる。先端位置演算部105は、液面距離演算部104が廃液3の液面の位置を求めるのに用いる基準位置からの高さとして、ノズル6の上下方向の位置を求めることができる。
【0061】
ステップS204で、ノズル6に設置されている超音波距離センサ21は、廃樹脂2の表面に超音波を送信し、廃樹脂2からの反射波を受信する。超音波距離センサ21が受信した反射波の波形は、演算制御部100の距離演算部101に送られる。
【0062】
ステップS205で、演算制御部100の比較部102は、ステップS202で液面距離演算部104が取得した廃液3の液面の位置と、ステップS203で先端位置演算部105が取得したノズル6の上下方向(鉛直方向)の位置とを比較する。
【0063】
ステップS206で、ノズル6の上下方向の位置(ノズル6の先端部の位置)が廃液3の液面よりも上方である場合には、ステップS207に移行し、ノズル6の上下方向の位置が廃液3の液面よりも下方である場合には、ステップS208に移行する。
【0064】
ステップS207で、ノズル6の位置が廃液3の液面よりも上方であるので、演算制御部100は、ノズル6を停止する。攪拌ノズル6は、廃樹脂2の攪拌を停止する。回収ノズル7は、廃樹脂2の回収を停止し、空気を吸引しないようにする。これにより、廃樹脂2を回収する系統内への空気の流入を防止できる。
【0065】
ステップS208で、距離演算部101は、図3のステップS102と同様にして、超音波距離センサ21が受信した廃樹脂2からの反射波の波形から、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離(測定距離)を取得する。
【0066】
距離演算部101は、反射波の波形から反射波の周波数を取得することができる。距離演算部101は、超音波距離センサ21が送信した超音波の周波数と、反射波の周波数と、超音波の音速を用いて、廃樹脂2の表面の変動速度(表面の位置の下降速度)を求めることができる。例えば、距離演算部101は、送信波の周波数と反射波の周波数との差を用いドップラー効果の原理を利用して、廃樹脂2の表面の変動速度を求めることができる。
【0067】
距離演算部101は、廃樹脂2の表面の変動速度を用いて、測定距離を補正することができる。例えば、距離演算部101は、廃樹脂2の表面の変動速度に、クロック信号発生部110がクロック信号を発信する周期を乗じて、次にクロック信号が発信されるまでの廃樹脂2の表面の変動量(表面の位置の下降距離)を演算し、この変動量だけ測定距離を増やすことで、測定距離を補正することができる。
【0068】
なお、既に述べたように、超音波距離センサ21が温度センサを備えると、距離演算部101は、超音波距離センサ21が取得した廃樹脂貯蔵タンク1の内部の温度を用いて廃樹脂貯蔵タンク1の内部での音速を求めることで、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離をより正確に求めることができる。
【0069】
ステップS210で、比較部102は、距離演算部101が求めた測定距離と、ノズル6と廃樹脂2の表面との最適距離とを比較する。
【0070】
ステップS211とステップS221とステップS231は、比較部102と伸縮制御部103が、ステップS210での比較部102の比較結果に応じて実行する。
【0071】
ステップS211は、測定距離が最適距離よりも小さい場合に、比較部102が実行するステップである。この場合には、比較部102は、最適距離と測定距離の差を求める。
【0072】
ステップS212で、伸縮制御部103は、ワイヤー繰出し装置13のドラムを回転させてワイヤー12を巻き取り、最適距離と測定距離の差だけノズル昇降部4を収縮させる。このようにして、ノズル6は、廃樹脂回収装置10の運転中に上昇して、廃樹脂2の表面から最適な距離だけ離れた位置に配置される。
【0073】
ステップS221は、測定距離が最適距離よりも大きい場合に、比較部102が実行するステップである。この場合には、比較部102は、測定距離と最適距離の差を求める。
【0074】
ステップS222で、伸縮制御部103は、ワイヤー繰出し装置13のドラムを回転させてワイヤー12を送り出し、測定距離と最適距離の差だけノズル昇降部4を伸長させる。このようにして、ノズル6は、廃樹脂回収装置10の運転中に下降して、廃樹脂2の表面から最適な距離だけ離れた位置に配置される。
【0075】
ステップS231は、測定距離が最適距離と等しい場合に、伸縮制御部103が実行するステップである。この場合には、伸縮制御部103は、ノズル6が廃樹脂2の表面から最適な距離だけ離れた位置にあるので、ノズル昇降部4の伸縮を停止する。ノズル6は、昇降を停止する。伸縮制御部103は、次にノズル昇降部4を伸縮させるまで待機する。
【0076】
本実施例による廃樹脂回収装置10は、ステップS201以降の処理を運転の開始から運転の終了まで繰り返し実行することにより、運転中に、ノズル6、7を廃樹脂2の表面から最適な距離だけ離れた位置に配置でき、ノズル6、7と廃樹脂2との距離を常に一定に保つことができる。本実施例による廃樹脂回収装置10は、廃樹脂2の回収に伴う廃樹脂2の表面の変動に追従してノズル昇降部4を伸縮させることができ、ノズル昇降部4の一端部に位置するノズル6、7と廃樹脂2の表面との距離を常に最適に保持することができる。
【0077】
本実施例による廃樹脂回収装置10では、先端位置演算部105が、ノズル6、7の上下方向(鉛直方向)の位置を、ワイヤー繰出し装置13のドラムの回転数を用いて取得する。このため、廃樹脂回収装置10は、廃樹脂貯蔵タンク1の内部の廃樹脂2や廃液3の性状によらずノズル6、7の位置を取得することができ、また、廃樹脂2の回収に伴い廃液3の液面が変動してもノズル6、7の位置を正確に取得できるという利点がある。
【0078】
また、本実施例による廃樹脂回収装置10では、距離演算部101が、廃樹脂2の表面の変動速度をリアルタイムで求めることができ、この変動速度を用いて、測定したノズル6と廃樹脂2の表面との距離(測定距離)を補正することができる。このため、廃樹脂回収装置10は、ノズル6、7の位置(ノズル6、7の先端部の位置)を廃樹脂2の表面に高精度で追従させることができるという利点がある。
【実施例0079】
本発明の実施例2による廃樹脂回収装置10について説明する。以下では、本実施例による廃樹脂回収装置10について、実施例1による廃樹脂回収装置10と異なる点を主に説明する。
【0080】
図5は、本実施例による廃樹脂回収装置10の構成を示す図である。本実施例による廃樹脂回収装置10は、ノズル昇降部4の構成と、センサとして樹脂面計測用デプスカメラ204を備える点と、映像出力部140を備える点が、実施例1による廃樹脂回収装置10と主に異なる。
【0081】
以下では、一例として、攪拌ノズル6が設置されたノズル昇降部4について説明する。回収ノズル7が設置されたノズル昇降部4は、攪拌ノズル6が設置されたノズル昇降部4と同様の構成を備えることができる。
【0082】
本実施例による廃樹脂回収装置10では、ノズル昇降部4は、多関節ロボット201で構成されている。ノズル6は、ノズル昇降部4の一端部(下端部)に設置されている。ノズル6には、距離センサとして、実施例1では超音波距離センサ21が設置されていたが、本実施例では樹脂面計測用デプスカメラ204が設置されている。なお、本実施例による廃樹脂回収装置10は、実施例1による廃樹脂回収装置10と同様に、ノズル6に超音波距離センサ21が設置されていてもよい。
【0083】
多関節ロボット201は、複数のリンクロッド202(腕部)と、リンクロッド202同士を接続する複数のジョイント機構203(関節部)とを備え、ジョイント機構203が回転してリンクロッド202の接続角度が変わることにより長さが伸縮する。すなわち、多関節ロボット201で構成されたノズル昇降部4は、長さが伸縮することによりノズル6、7を昇降させる伸縮機構である。ジョイント機構203のそれぞれは、ジョイント機構203の回転角を計測するエンコーダを備える。
【0084】
なお、リンクロッド202とジョイント機構203の数は、廃樹脂貯蔵タンク1の大きさや廃樹脂回収装置10の設置スペースの大きさなどに応じて、任意に定めることができる。
【0085】
演算制御部100の先端位置演算部105は、ノズル昇降部4の昇降状態から、ノズル6、7の上下方向(鉛直方向)の位置を取得する。本実施例では、先端位置演算部105は、クロック信号発生部110が発信したクロック信号を受信したタイミングで、ジョイント機構203のエンコーダが計測した回転角を取得する。そして、先端位置演算部105は、リンクロッド202のそれぞれの長さと、取得した回転角から求めたリンクロッド202の接続角度から、ノズル6の上下方向(鉛直方向)の位置を取得する。
【0086】
樹脂面計測用デプスカメラ204は、ノズル6に設置されており、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離を超音波で計測するための距離センサである。すなわち、樹脂面計測用デプスカメラ204は、廃樹脂2の表面に超音波を送信し、廃樹脂2からの反射波を受信する。樹脂面計測用デプスカメラ204が受信した反射波の波形は、演算制御部100の距離演算部101に送られる。
【0087】
距離演算部101は、実施例1で説明したのと同様の方法で反射波の波形を解析することにより、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離(測定距離)を求める。
【0088】
演算制御部100の比較部102は、実施例1で説明したように、距離演算部101が求めた測定距離と、ノズル6と廃樹脂2の表面との最適な距離(最適距離)とを比較する。
【0089】
演算制御部100の伸縮制御部103は、実施例1で説明したように、比較部102の比較結果に応じて、ノズル昇降部4を伸縮させたり、ノズル昇降部4の伸縮を停止したりする。伸縮制御部103は、多関節ロボット201のジョイント機構203を回転させてリンクロッド202の接続角度を変えることで、ノズル昇降部4を伸縮させる。
【0090】
本実施例による廃樹脂回収装置10は、映像出力部140を備えることができる。樹脂面計測用デプスカメラ204は、廃樹脂2の映像を撮影することができる。映像出力部140は、樹脂面計測用デプスカメラ204が撮影した廃樹脂2の映像を表示する。作業員は、映像出力部140に表示された映像を見て、廃樹脂回収装置10の運転状態を監視することができる。
【0091】
本実施例による廃樹脂回収装置10では、ノズル昇降部4が多関節ロボット201で構成されているので、ノズル昇降部4は、上下方向に伸縮可能なだけでなく、水平方向にも移動可能である。このため、廃樹脂貯蔵タンク1の内部にノズル6、7の妨げとなる物体が存在する場合でも、この物体を回避してノズル6、7を目的の位置に設置することができるという利点がある。
【0092】
また、本実施例による廃樹脂回収装置10では、ノズル6と廃樹脂2の表面との距離を計測するのに樹脂面計測用デプスカメラ204を用いているため、樹脂面計測用デプスカメラ204で廃樹脂2の映像を取得できる。このため、映像出力部140に廃樹脂2の映像を表示することで、作業員が、廃樹脂回収装置10の運転状態(例えば、廃樹脂2の回収の様子)を廃樹脂貯蔵タンク1の外部で監視できるという利点がある。
【実施例0093】
本発明の実施例3による廃樹脂回収装置10について説明する。以下では、本実施例による廃樹脂回収装置10について、実施例1による廃樹脂回収装置10と異なる点を主に説明する。
【0094】
図6は、本実施例による廃樹脂回収装置10の構成を示す図である。本実施例による廃樹脂回収装置10は、ノズル昇降部4の構成と、センサとして水中カメラ304を備える点と、映像出力部140を備える点が、実施例1による廃樹脂回収装置10と主に異なる。ノズル昇降部4aには、攪拌ノズル6が設置されている。ノズル昇降部4aに隣り合うノズル昇降部4cには、回収ノズル7が設置されている。
【0095】
以下では、一例として、攪拌ノズル6が設置されたノズル昇降部4(4a)について説明する。回収ノズル7が設置されたノズル昇降部4(4c)は、攪拌ノズル6が設置されたノズル昇降部4aと同様の構成を備えることができる。
【0096】
本実施例による廃樹脂回収装置10では、ノズル昇降部4は、複数のロッドパーツ302と、ロッドパーツ302同士を接続するロッド接続部303を備える。ロッドパーツ302は、棒状部材で構成することができ、端部にロッド接続部303が設けられている。ロッド接続部303は、2つのロッドパーツ302を互いに接続する部材であり、例えばフランジで構成することができる。
【0097】
なお、ロッドパーツ302とロッド接続部303の数は、廃樹脂貯蔵タンク1の大きさや廃樹脂回収装置10の設置スペースの大きさなどに応じて、任意に定めることができる。
【0098】
ノズル6は、ノズル昇降部4の一端部(下端部)に設置されている。ノズル6には、実施例1では超音波距離センサ21が設置されていたが、本実施例では超音波距離センサ21が設置されていない。なお、本実施例による廃樹脂回収装置10は、実施例1による廃樹脂回収装置10と同様に、ノズル6に超音波距離センサ21が設置されていてもよく、実施例2による廃樹脂回収装置10と同様に、ノズル6に樹脂面計測用デプスカメラ204が設置されていてもよい。
【0099】
ノズル昇降部4の複数のロッドパーツ302は、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8にある固定部5に設置されたロッド接続機構305にて、互いに接続される。ロッド接続機構305は、複数のロッドパーツ302をロッド接続部303で互いに接続する機構であり、廃樹脂回収装置10が運転を開始する前に複数のロッドパーツ302を互いに接続する。
【0100】
ノズル昇降部4の一端部(下端部)に位置するロッドパーツ302には、ワイヤー12の一端が固定されている。ワイヤー12の他端は、ワイヤー繰出し装置13に固定されている。ワイヤー12は、ワイヤー繰出し装置13により、廃樹脂貯蔵タンク1の中での長さが変わる。ワイヤー繰出し装置13は、廃樹脂貯蔵タンク1の上部8に固定されており、実施例1で説明したような構成を備え、ワイヤー12を巻き取ったり送り出したりして、廃樹脂貯蔵タンク1の中でのワイヤー12の長さを変えることができる。
【0101】
本実施例では、ノズル昇降部4は、ワイヤー12の移動により、位置が上下方向に移動する。具体的には、ノズル昇降部4は、ワイヤー繰出し装置13によりワイヤー12が巻き取られると、全体が上昇し、ワイヤー繰出し装置13によりワイヤー12が送り出されると、全体が下降する。すなわち、複数のロッドパーツ302で構成されたノズル昇降部4は、ロッドパーツ302の位置が上下方向に移動することによりノズル6、7を昇降させる機構である。
【0102】
演算制御部100の先端位置演算部105は、実施例1と同様に、ワイヤー繰出し装置13のエンコーダが計測した、ワイヤー繰出し装置13のドラムの回転数から、ノズル6、7の上下方向(鉛直方向)の位置を取得する。
【0103】
ノズル昇降部4の一端部(下端部)には、水中カメラ304とレーザー照射器306が設置されている。水中カメラ304は、水中カメラ304が設置されているノズル昇降部4aに隣り合うノズル昇降部4cのノズル7と廃樹脂2の表面との距離を計測するための距離センサであり、この距離を計測するために、ノズル昇降部4cのノズル7と廃樹脂2の表面の映像を撮影する。レーザー照射器306は、廃樹脂回収装置10の運転中に常時、レーザー光を廃樹脂2の表面に照射する。廃樹脂2の表面のレーザー光の照射点は、ノズル7と廃樹脂2の表面との距離を計測するときの計測点として用いられる。従って、レーザー照射器306は、ノズル7にできるだけ近い位置の廃樹脂2の表面に、レーザー光を照射するのが好ましい。
【0104】
なお、本実施例では、ノズル7と廃樹脂2の表面との距離(測定距離)は、水中カメラ304が撮影したノズル7と廃樹脂2の表面の映像から求める。このため、水中カメラ304は、ノズル7の先端部と廃樹脂2の表面(レーザー光の照射点)を同時に撮影できるように、画角が広いのが好ましい。また、水中カメラ304は、水平画角と垂直画角のうち広い画角が上下方向(鉛直方向)を向くように設置されるのが好ましい。
【0105】
演算制御部100の距離演算部101は、ノズル昇降部4aに設置された水中カメラ304が撮影した映像から、ノズル昇降部4cのノズル7と廃樹脂2の表面との距離(測定距離)を求める。例えば、距離演算部101は、画像処理によりノズル7の先端部と廃樹脂2の表面のレーザー光の照射点を計測点として取得し、互いに隣り合うノズル昇降部4(ノズル昇降部4aとノズル昇降部4c)の間の距離と、水中カメラ304の画素数と上下方向の画角を用いて、ノズル7と廃樹脂2の表面との距離を計算する。
【0106】
演算制御部100の比較部102は、実施例1で説明したように、距離演算部101が求めた測定距離と、ノズル7と廃樹脂2の表面との最適な距離(最適距離)とを比較する。
【0107】
演算制御部100の伸縮制御部103は、実施例1で説明したように、比較部102の比較結果に応じて、ノズル昇降部4を昇降させたり、ノズル昇降部4の昇降を停止したりする。
【0108】
本実施例による廃樹脂回収装置10は、映像出力部140を備えることができる。水中カメラ304は、廃樹脂2の映像を撮影することができる。映像出力部140は、水中カメラ304が撮影した廃樹脂2の映像を表示する。作業員は、映像出力部140に表示された映像を見て、廃樹脂回収装置10の運転状態を監視することができる。
【0109】
以上の説明では、ノズル昇降部4aに設置されている水中カメラ304が、ノズル昇降部4aに隣り合うノズル昇降部4cのノズル7と廃樹脂2の表面との距離を計測するために、ノズル昇降部4cのノズル7と廃樹脂2の表面の映像を撮影する例を説明した。本実施例では、任意のノズル昇降部4に設置されている水中カメラ304が、このノズル昇降部4に隣り合うノズル昇降部4のノズル6、7と廃樹脂2の表面との距離を計測するために、隣り合うノズル昇降部4のノズル6、7と廃樹脂2の表面の映像を撮影することができる。
【0110】
なお、距離演算部101は、水中カメラ304が撮影した映像の画像処理により、互いに隣り合うノズル昇降部4の向きが平行であるか否かを検出することができる。距離演算部101は、互いに隣り合うノズル昇降部4の向きが平行でない場合には、平行からのずれ量を求め、算出したノズル6、7と廃樹脂2の表面との距離(測定距離)をこのずれ量を用いて補正することができる。
【0111】
本実施例による廃樹脂回収装置10では、ノズル昇降部4は、ロッドパーツ302とロッド接続部303を備えるという簡単な構造を有し、ロッド接続機構305で組み立てられる。このため、ノズル昇降部4は、複数のロッドパーツ302に分割して運搬することができ、可搬性に優れるという利点がある。
【0112】
また、本実施例による廃樹脂回収装置10では、ノズル6、7と廃樹脂2の表面との距離を計測するのに水中カメラ304を用いているため、水中カメラ304で廃樹脂2の映像を取得できる。このため、映像出力部140に廃樹脂2の映像を表示することで、作業員が、廃樹脂回収装置10の運転状態(例えば、廃樹脂2の回収の様子)を廃樹脂貯蔵タンク1の外部で監視できるという利点がある。水中カメラ304は、ノズル昇降部4(ロッドパーツ302)に設置可能な大きさと重量を持つカメラであればよく、安価なカメラで構成することができる。
【0113】
以上説明したように、実施例1から3による廃樹脂回収装置10は、廃樹脂貯蔵タンク1から廃樹脂2を回収する際に、ノズル6、7と廃樹脂2との距離を常に一定に保つことができるので、廃樹脂2の回収効率が低下せず、廃樹脂2を高効率で回収することができる。また、実施例1から3による廃樹脂回収装置10は、廃樹脂貯蔵タンク1から廃樹脂2を回収する際に、廃樹脂貯蔵タンク1の内部の廃液3の液位を測定することで、回収ノズル7が空気を吸引するのを防ぎ、廃樹脂2を回収する系統内への空気の流入を防止することができる。
【0114】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0115】
1…廃樹脂貯蔵タンク、2…廃樹脂、3…廃液、4、4a、4b、4c…ノズル昇降部、5…固定部、6、6a、6b…攪拌ノズル、7…回収ノズル、8…廃樹脂貯蔵タンクの上部、10…廃樹脂回収装置、11…ロッド、12…ワイヤー、13…ワイヤー繰出し装置、21…超音波距離センサ、22…液面計測用デプスカメラ、100…演算制御部、101…距離演算部、102…比較部、103…伸縮制御部、104…液面距離演算部、105…先端位置演算部、110…クロック信号発生部、140…映像出力部、201…多関節ロボット、202…リンクロッド、203…ジョイント機構、204…樹脂面計測用デプスカメラ、302…ロッドパーツ、303…ロッド接続部、304…水中カメラ、305…ロッド接続機構、306…レーザー照射器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6