IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 資生堂の特許一覧

特開2024-30091経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤
<>
  • 特開-経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤 図1
  • 特開-経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤 図2
  • 特開-経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤 図3
  • 特開-経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤 図4
  • 特開-経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤 図5
  • 特開-経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤 図6
  • 特開-経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤 図7
  • 特開-経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030091
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240229BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240229BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240229BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K36/258
A61P17/00
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132654
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】真野 千夏
(72)【発明者】
【氏名】宮永 美帆
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD64
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB16
4C088AC11
4C088BA08
4C088CA13
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】継続的な経口摂取も可能な天然由来で安全性が高く、経口摂取することによって肌の透明感を向上することができる経口摂取用の肌の透明感向上剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る経口摂取用の肌の透明感向上剤の一態様は、高麗人参若しくはその抽出物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高麗人参若しくはその抽出物を含む、経口摂取用の肌の透明感向上剤。
【請求項2】
肌の透明感向上が、肌の光透過性を向上する作用に基づくものである、請求項1に記載の経口摂取用の肌の透明感向上剤。
【請求項3】
肌の透明感向上が、肌の黄色みを低減する作用に基づくものである、請求項1に記載の経口摂取用の肌の透明感向上剤。
【請求項4】
前記高麗人参若しくはその抽出物の1日当たりの摂取量が、100~250mgである、請求項1から3のいずれか一項に記載の経口摂取用の肌の透明感向上剤。
【請求項5】
前記高麗人参若しくはその抽出物が、高麗人参の根部若しくはその抽出物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の経口摂取用の肌の透明感向上剤。
【請求項6】
高麗人参若しくはその抽出物を含む、経口摂取用の肌の光透過性向上剤。
【請求項7】
高麗人参若しくはその抽出物を含む、経口摂取用の肌の黄色み低減剤。
【請求項8】
前記高麗人参若しくはその抽出物の1日当たりの摂取量が、100~250mgである、請求項6に記載の経口摂取用の肌の光透過性向上剤又は請求項7に記載の経口摂取用の肌の黄色み低減剤。
【請求項9】
前記高麗人参若しくはその抽出物が、高麗人参の根部若しくはその抽出物である、請求項6に記載の経口摂取用の肌の光透過性向上剤又は請求項7に記載の経口摂取用の肌の黄色み低減剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤及び経口摂取用の肌の黄色み低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の感じているさまざまな肌の悩みの中で、肌の透明感に関する悩みは幅広い年代に共通して強く、年々その割合は高まってきている。肌を構成する皮膚組織は層構造になっており、最外層となる角層から順に、表皮、真皮、皮下組織とおおまかに分類される。表皮にはメラニン色素、真皮には血液中に含まれるヘモグロビンが多く存在しており、肌の色を構成するおもな要因となっている。また、表面の微細な凹凸を形成する皮溝と皮丘からなる表面形態は一般的に「きめ」(肌理)とよばれており、「しわ」はこれよりも大きな凹凸の状態として認識されている。このような皮膚組織の構造・状態は肌の外観に及ぼす影響も大きいと考えられる。
【0003】
「透明感のある肌」が具体的にどういう状態を意味するのかは人によってあいまいな部分もある。日本化粧品工業連合会の効能効果専門委員会では、「透明感とは視覚的な表現であり、皮膚がくもりなく透き通ったように見える状態を言う。肌の透明感には角質層の光透過性が大きく影響している。角質層の光透過性、すなわち入射光に対する透過光の比率が高いほど透明感が高いと考えられ、角質層の水分量や肌表面のきめの整い具合などの要素により左右される。」との定義案をまとめている。
【0004】
非特許文献1では、透明度測定装置を用いて解析された肌の透明度と美容技術者の判定した視感による肌の透明感とが高い相関を示し、光が皮膚の内部へ透過して、皮膚内部から反射されて戻ってくる肌の内部反射光の状態が透明感に大きな影響を与えていることが報告されている。
【0005】
また、非特許文献1には、肌の透明感の要因として、例えば、きめの間隔および深さ・角層水分量・メラニン量・ヘモグロビン量が寄与していることが記載されており、より詳細には、「角層水分量およびきめの深さについては正の寄与率を示し,きめの間隔・メラニン量・ヘモグロビン量については負の寄与率を示した。これは透明感の高い肌はきめが深く,細かく,角層水分量が多く,メラニン量およびヘモグロビン量が少ないことを意味している。」と記載されている。
【0006】
さらに、特許文献1には、皮膚の黄色化は、肌の透明感を喪失させると記載されており、皮膚の黄色化も透明感に寄与していると考えられている。
【0007】
以上のように、肌の透明感は、複合的な要因によるものと考えられている。そのため、肌の透明感を向上するためには、各要因に個別に対処したり、複数の要因に対処したりすることが考えられる。
【0008】
これまでに、様々な皮膚外用剤組成物が提案されており、例えば、特許文献2には、抗老化用、皮膚しわ改善用、皮膚弾力改善用、皮膚美白用、皮膚保湿用、にきび皮膚改善用、抗炎症用、皮膚血色改善用、抗酸化用に用いられる皮膚外用剤組成物として、高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する皮膚外用剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-031106号公報
【特許文献2】特表2010-528109号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】桑原智裕、「肌の透明感測定」、光学、39巻11号、524-528頁、2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2の皮膚外用剤組成物は、皮膚の末梢血液循環を改善させることによって、血色を良くして、皮膚をきれいで且つ透明にするものであり、また、経口摂取するものではなく外用で用いられるものである。
【0012】
本発明の一態様は、継続的な経口摂取も可能な天然由来で安全性が高く、経口摂取することによって肌の透明感を向上することができる経口摂取用の肌の透明感向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る経口摂取用の肌の透明感向上剤の一態様は、高麗人参若しくはその抽出物を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る経口摂取用の肌の透明感向上剤の一態様は、継続的な経口摂取も可能な天然由来で安全性が高く、経口摂取することによって肌の透明感を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】透明度測定装置の概略図である。
図2】皮膚の内部反射光の放射状態を説明する図である。
図3】透明度測定装置により求めた透明度指標1/Cの値の推移を示す図である。
図4】透明度測定装置により求めた透明度指標1/Cの値の変化量を示す図である。
図5】皮膚透明度測定装置により求めた表層透明度の値の推移を示す図である。
図6】皮膚透明度測定装置により求めた深層透明度の値の推移を示す図である。
図7】皮膚透明度測定装置により求めた深層透明度の値の変化量を示す図である。
図8】分光測色計により求めたbの値の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断りがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0017】
一実施形態に係る経口摂取用の肌の透明感向上剤は、高麗人参若しくはその抽出物を含む。経口摂取用の肌の透明感向上剤を摂取することにより、肌の光透過性の向上、肌の黄色みの低減などが可能となる。そして、これらの作用などにより、肌の透明感の向上を視認し、実感することができる。肌の透明感の向上は、皮膚状態の向上といった美容に有用である。
【0018】
本発明において、「肌の透明感」とは、視覚的な表現であり、皮膚がくもりなく透き通ったように見える状態を言う。「肌の透明感の向上」とは、皮膚がくもりなく透き通ったように見える状態にする、又は近づけることをいう。
【0019】
上述したように、「肌の透明感」には、様々な要因がある。経口摂取用の肌の透明感向上剤は、肌の光透過性(肌の透明度)を向上する作用、肌の黄色み(黄色化)を低減する作用により、肌の透明感を向上するものであることが好ましい。
【0020】
一実施形態に係る経口摂取用の肌の光透過性向上剤は、高麗人参若しくはその抽出物を含む。経口摂取用の肌の光透過性向上剤を摂取することにより、肌の光透過性を向上することができる。肌の光透過性の向上は、肌の透明感等の皮膚状態の向上といった美容に有用である。
【0021】
肌の光透過性を向上する作用(「肌の透明度を向上する作用」と称することもある。)は、例えば、後述する実施例の項目に記載の透明度測定装置を使用して確認することができる。透明度測定装置を用いて測定し、算出された皮膚内の透明指標が向上した場合は、放出される光が増加したことを意味し、肌の光透過性が向上した(「皮膚内透明度が向上した」と称することもある。)ということができる。これにより、皮膚に入射した光が皮膚内部を伝搬し易くなり、皮膚内部からの反射光が増加するため、肌の透明感の向上を視認し、実感することができる。
【0022】
一実施形態に係る経口摂取用の肌の黄色み低減剤は、高麗人参若しくはその抽出物を含む。経口摂取用の肌の黄色み低減剤を摂取することにより、肌の黄色みを低減することができる。肌の黄色みの低減は、肌の透明感等の皮膚状態の向上といった美容に有用である。
【0023】
肌の黄色みを低減する作用は、例えば、分光測色計を使用して確認することができる。分光測色計を用いて測定し、算出されたL表色系のb値の数値が低下した場合は、肌の黄色みが低減したということができる。これにより、肌の透明感の向上を視認し、実感することができる。
【0024】
表色系は、国際照明委員会(CIE)で規格化された表色系であり、皮膚の色を表す表記法として当業界に広く知られており、CIE1976(L)表色系とも称される。L表色系においては、明度をLで表し、そして色相と彩度を示す色度をaとbで表している。aとbはそれぞれ色の方向を示しており、aは赤方向、-aは緑方向、bは黄色方向、そして-bは青方向を示している。
表色系による色の解析は、積分球型の分光測色計によって簡便に行うことができ、例えばコニカミノルタ社製の分光測色計CM-700dを使用することができる。
【0025】
また、本発明は、肌の透明感の向上に使用するための、肌の光透過性の向上に使用するための、又は肌の黄色みの低減に使用するための高麗人参若しくはその抽出物;肌の透明感の向上が必要な対象者に高麗人参若しくはその抽出物を経口投与することを含む肌の透明感を向上する方法、肌の光透過性の向上が必要な対象者に高麗人参若しくはその抽出物を経口投与することを含む肌の光透過性を向上する方法、又は肌の黄色みの低減が必要な対象者に高麗人参若しくはその抽出物を経口投与することを含む肌の黄色みを低減する方法;並びに、肌の透明感向上剤、肌の光透過性向上剤、又は肌の黄色み低減剤を製造するための高麗人参若しくはその抽出物の使用、も包含する。
【0026】
<高麗人参若しくはその抽出物>
高麗人参は、学名「Panax Ginseng」として広く知られ、漢方薬として、その薬効が知られている。生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の点から乾燥粉末あるいは溶媒抽出物として用いることが好ましい。
【0027】
乾燥粉末を得る方法は、例えば、高麗人参の全草あるいは根、葉、茎、枝、花、果実等の各種部位を細断又は粉砕し、その後に乾燥する方法や高麗人参を乾燥した後に細断又は粉砕して乾燥粉末を得る方法などが挙げられる。また、高麗人参を細断又は粉砕し、発酵や酵素処理を施した後、乾燥し、更に必要に応じて所定の粒径にすべく粉砕する方法等を適宜用いることができる。
【0028】
抽出物は、高麗人参の全草あるいは根、葉、茎、枝、花、果実等の各種部位のうちいずれか1つ又は2つ以上の抽出物を使用することができる。また、高麗人参を圧搾することにより得られる圧搾液にも抽出物と同様の有効成分が含まれているので、抽出物の代わりに高麗人参の圧搾液を使用することもできる。
【0029】
高麗人参からの有効成分の抽出方法は、常法より得ることができ、例えば、高麗人参を必要により乾燥した後、抽出溶媒に一定期間浸漬するか、あるいは加熱還流している抽出溶媒と接触させ、次いで濾過し、濃縮して得ることができる。抽出溶媒としては、通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。上記溶媒で抽出して得た抽出液をそのまま、あるいは濃縮したエキスを用いるか、あるいはこれらエキスを吸着法、例えばイオン交換樹脂を用いて不純物を除去したものや、ポーラスポリマー(例えばアンバーライトXAD-2)のカラムにて吸着させた後、メタノールまたはエタノールで溶出し、濃縮したものも使用することができる。また分配法、例えば水/酢酸エチルで抽出した抽出物等も用いられる。
【0030】
ある実施態様によれば、高麗人参の根部を例えば水又は水性有機溶剤中に浸漬し、室温又は80~100℃にて抽出する。抽出処理により得られた抽出液をろ過後、そのまま又は必要に応じて濃縮若しくは乾固して使用することができる。なお、この抽出処理の際には、高麗人参の根は細断又は粉砕したものを用いてもよい。また、生の根又は乾燥した根を用いてもよいし、焙煎した根を用いてもよい。焙煎方法は特に限定されるものではないが、100~150℃で0.5~2時間焙煎する方法があげられる。
【0031】
経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤、又は経口摂取用の肌の黄色み低減剤における前記高麗人参若しくはその抽出物は、高麗人参の根部若しくはその抽出物であることが好ましい。
【0032】
このようにして得た高麗人参若しくはその抽出物は、安全性が高く、優れた肌の透明感向上作用を有する。高麗人参若しくはその抽出物を経口摂取することで、肌の透明感向上作用が得られることはこれまで知られておらず、本発明者によってこの作用をもつことが初めて確認されたものである。
【0033】
経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤、又は経口摂取用の肌の黄色み低減剤における高麗人参若しくはその抽出物の配合量は、剤全量に対し、乾燥質量として、0.001~10質量%であることが好ましく、0.01~1.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることがさらに好ましい。なお、経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤、又は経口摂取用の肌の黄色み低減剤は、高麗人参若しくはその抽出物のみからなるものであってもよい。
【0034】
経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤、又は経口摂取用の肌の黄色み低減剤は、各種飲食品に配合し摂取することができ、また、医薬製剤として投与することができる。
【0035】
摂取(投与)する高麗人参若しくはその抽出物の量は、摂取(投与)する方法や剤型等に応じて、適宜選択することができるが、1日当たり100~250mgであることが好ましい。
【0036】
経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤、又は経口摂取用の肌の黄色み低減剤の摂取(投与)頻度は、毎日継続的に摂取してもよいし、間隔を空けて断続的に摂取してもよい。また、1日における摂取回数は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。
【0037】
経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤、又は経口摂取用の肌の黄色み低減剤を飲食品に配合する場合には、必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。添加剤としては機能性素材、賦形剤、呈味剤などを含ませることができる。
【0038】
機能性素材としては、例えば、パントテン酸、葉酸、ビオチンなど各種ビタミン類、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄など各種ミネラル類、アミノ酸、オリゴ糖、プロポリス、ローヤルゼリー、イチョウ葉、ウコン、EPA、DHA、コエンザイムQ10、コンドロイチン、乳酸菌、ラクトフェリン、イソフラボン、プルーン、キチン、キトサン、グルコサミン、α-リポ酸、アガリクス、ガルシニア、プロポリス、コラーゲン、アスタキサンチン、フォースリン、カテキン、セサミン、セラミド、モロヘイヤ、スピルリナ、キャッツクローなどが挙げられる。これらの機能性素材は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
賦形剤としては、所望の剤型としたときに通常用いられるものを適宜選択することができ、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。これら賦形剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
呈味剤としては、例えば、ボンタンエキス、ライチエキス、ゆずエキス等の各種果汁エキス、リンゴ果汁、オレンジ果汁、レモン果汁等の各種果汁、ピーチフレーバー、ウメフレーバー、ヨーグルトフレーバー等の各種フレーバー、アセスルファムK、スクラロース、エリスリトール、オリゴ糖類、マンノース、キシリトール、異性化糖類等の各種甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の各種酸味料、緑茶、ウーロン茶、バナバ茶、杜仲茶、鉄観音茶、ハトムギ茶、アマチャヅル茶、マコモ茶、昆布茶等の各種茶成分等が挙げられる。これら呈味剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
その他の着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤等については、食品等に使用される公知のものを適宜選択して使用できる。
【0042】
飲食品の形態としては、例えば、液体状、固形状、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状など任意に選択することができる。
【0043】
飲食品の具体例としては、例えば、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、スープ、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、クッキー、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、ドリンク剤などの栄養補助飲食品、特定保健用飲食品、機能性飲食品、健康飲食品などが挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0044】
経口摂取用の肌の透明感向上剤、経口摂取用の肌の光透過性向上剤、又は経口摂取用の肌の黄色み低減剤を医薬製剤として用いる場合、剤型としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経液体製剤等が挙げられる。これらの医薬製剤には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。
【実施例0045】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0046】
高麗人参エキスパウダーMF(丸善製薬社製)を打錠にし、試験用食品とした。
【0047】
試験は、女性36名(30~55歳)を対象として行った。女性18名(30~55歳)は、試験用食品を1日1回8週間にわたり経口摂取し、摂取前と摂取後4週間及び8週間での左上腕内側部の肌の光透過性(肌の透明度)及び左頬の肌の色味を測定した(実施例1、以下「高麗人参摂取群」と称することがある。)。なお、試験用食品の摂取量は、高麗人参エキスの量として、1日あたり180mgとした。残りの女性18名(30~55歳)は比較のために、高麗人参エキスパウダーMFを含まない食品を摂取し、摂取前と摂取後4週間及び8週間での左上腕内側部の肌の光透過性(肌の透明度)及び左頬の肌の色味を測定した(比較例1、以下「プラセボ群」と称することがある。)。
【0048】
(肌の透明感の測定-1)
肌の透明感の評価の1つとして、肌の光透過性(肌の透明度)について、透明度測定装置を使用して皮膚の内部から反射した光を受光し、皮膚の透明度指標(1/C)を算出することにより評価した(特開2009-240644号公報)。
【0049】
図1に、透明度測定装置の概略図を示す。透明度測定装置(2)は、底面(3a)に開口部(3b)を有する筐体(3)内に、ハロゲンランプ(4)、光学フィルター(5)、集光レンズ(6)、ミラー(7)、集光レンズ(8)、遮断板(9)、スリット(10)、集光レンズ(11)、CCDカメラ(12)が設けられている。
透明度測定装置(2)の筐体(3)の底面(3b)を皮膚(1)に接触させることにより、皮膚(1)の透明度を測定することができる。具体的には、まず、ハロゲンランプ(4)から放射された光は、光学フィルター(5)により、特定の波長範囲の光が除去された後、集光レンズ(6)で集光され、ミラー(7)で反射される。次に、ミラー(7)で反射された光は、集光レンズ(8)で集光された後、スリット(10)を経て、皮膚(1)の表面の垂線に対して60度の角度で照射される。このとき、皮膚(1)の表面で反射された光は、遮断板(9)で遮断されるため、CCDカメラ(12)により受光されない。次に、皮膚(1)の内部で拡散した光は、光が照射された位置とは異なる位置から放射され、開口部(3b)を経て、集光レンズ(11)で集光された後、CCDカメラ(12)により受光される。なお、スリットの幅は0.2mmとした。
【0050】
CCDカメラ(12)には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各原色の透明度指標を算出するパーソナルコンピュータ(不図示)が接続されている。パーソナルコンピュータは、CCDカメラ(12)が検出した遮蔽板(9)からの距離xに対するR、G、Bの各原色の輝度yの分布について数値解析を行うものとし、下記式で非線形曲線にフィッティングし、透明度指標1/Cを算出する演算機能を有する。なお、CCDカメラは、通信ネットワークと接続することにより、パーソナルコンピュータと接続することもできる。
y=Cexp(-Cx)
(式中、Cは定数であり、Cは透明度指標の逆数である。)
【0051】
上記の透明度測定装置により得られた透明度指標1/Cに基づいて、試験用食品の肌の光透過性を向上する効果(皮膚内透明度を増加する効果)について評価した。
なお、図2は、上記の透明度測定装置による測定を説明するための図である。
【0052】
上記の透明度測定装置による評価結果を図3及び4に示す(平均値±標準偏差(SD))。図3は透明度指標1/Cの値(縦軸(透明度(1/C)))の推移を示したものである。図4は透明度指標1/Cの値の変化量を示したものであり、「4週-0週」は摂取後4週間における1/Cの値と摂取前における1/Cの値との差(縦軸(Δ透明度(1/C)))を示し、「8週-0週」は摂取後8週間における1/Cの値と摂取前における1/Cの値との差(縦軸(Δ透明度(1/C)))を示す。
【0053】
図3及び4に示したように、試験用食品を摂取することで、有意な透明度の改善傾向(肌の光透過性向上傾向)が確認された。なお、図4中、「#」は「p=0.07」(t検定(母平均の差に関する検定))を示す。
【0054】
(肌の透明感の測定-2)
また、肌の光透過性(肌の透明度)について、市販の皮膚透明度測定装置(TransluDerm TRD、ORION Concept社製)を用いて評価した。
【0055】
上記の皮膚透明度測定装置による評価結果を図5~7に示す(平均値±SD)。図5は表層透明度(Superficial transparency index)の値(縦軸、単位:Arbitraty Unit(a.u.))の推移を示したものである。図6は深層透明度(Deep transparency index)の値(縦軸、単位:a.u.)の推移を示したものである。図7は深層透明度の値の変化量を示したものであり、「4週-0週」は摂取後4週間における深層透明度の値と摂取前における深層透明度の値との差(縦軸、単位:a.u.)を示し、「8週-0週」は摂取後8週間における深層透明度の値と摂取前における深層透明度の値との差(縦軸、単位:a.u.)を示す。
【0056】
図5に示したように、試験用食品を摂取することで、表層透明度が有意に改善した。なお、図中、「*」は「p=0.05」(t検定(母平均の差に関する検定))を示す。
【0057】
また、図6及び7に示したように、試験用食品を摂取することで、深層透明度が有意に改善または改善傾向を示した。図6中、「**」は「p=0.01」(ボンフェローニ検定(対応あり))を示し、図7中、「#」は「p=0.08」(t検定(母平均の差に関する検定))を示す。
【0058】
皮膚に照射された光は皮膚内を反射し伝搬して、再び皮膚から放出されるが、皮膚内の透明指標が向上すると、放出される光が増加し、肌の透明感を視認し実感することができる。
【0059】
(肌の透明感の測定-3)
市販の分光測色計(CM-700d、コニカミノルタ社製)を用いて、肌の色味を評価した。
【0060】
上記の分光測色計による評価結果を図8に示す(平均値±SD)。図8は色度bの値(縦軸)の推移を示したものである。
【0061】
図8に示したように、bの値に関し、試験用食品を摂取することで、摂取後4週間及び摂取後8週間では、摂取前に対して優位に改善し、また、視覚によっても黄色みの低減が認められた。また、なお、図8中、「*」は「p=0.05」(ボンフェローニ検定(対応あり)を示す。
【0062】
肌の透明感の測定-1~3の結果から、高麗人参若しくはその抽出物を経口摂取することにより、肌の透明感が向上する効果が認められた。
【0063】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 皮膚
2 透明度測定装置
3 筐体
3a 底面
3b 開口部
4 ハロゲンランプ
5 光学フィルター
6、8、11 集光レンズ
7 ミラー
9 遮断板
10 スリット
12 CCDカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8