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特開2024-301放射性廃棄物固化体の製造方法及び放射性廃棄物固化体
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  • 特開-放射性廃棄物固化体の製造方法及び放射性廃棄物固化体 図1
  • 特開-放射性廃棄物固化体の製造方法及び放射性廃棄物固化体 図2
  • 特開-放射性廃棄物固化体の製造方法及び放射性廃棄物固化体 図3
  • 特開-放射性廃棄物固化体の製造方法及び放射性廃棄物固化体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000301
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】放射性廃棄物固化体の製造方法及び放射性廃棄物固化体
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20231225BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G21F9/30 515A
G21F9/36 511F
G21F9/30 515H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099020
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 哲一
(57)【要約】
【課題】放射性廃棄物の固化体の養生中であっても収納容器内の圧力上昇を抑制することができる放射性廃棄物固化体の製造方法を提供すること。
【解決手段】収納容器10内に放射性廃棄物11を収納し、モルタル12を用いて固化した固化体13を養生する放射性廃棄物固化体の製造方法であって、収納容器10に充填されたモルタル12の流動性がなくなって硬化が始まる状態の時に、通気孔を有する貫入筒1をモルタル12に貫入させておく。モルタル12の硬化後に貫入筒1をモルタルから取り除いて固化体13内に貫通孔を形成するようにしてもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器内に収納した放射性廃棄物をモルタル又はコンクリートを用いて固化した放射性廃棄物固化体の製造方法であって、
気体が内部を通過可能とされた棒状体を前記モルタル又はコンクリートに埋設された状態で配置し、前記モルタル又はコンクリートを養生することを特徴とする放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項2】
前記モルタル又はコンクリートの硬化後に前記棒状体を前記モルタル又はコンクリートから取り除いて孔を形成することを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項3】
前記棒状体は、周囲に通気孔が形成された筒部と、先端が錐状をなした錐体部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項4】
収納容器と、
前記収納容器に格納された放射性廃棄物と、
前記収納容器の内部で前記放射性廃棄物を固化するモルタル又はコンクリートと、
を有する放射性廃棄物固化体であって、
前記モルタル又はコンクリートに埋設された、気体が内部を通過可能とされた棒状体をさらに有することを特徴とする放射性廃棄物固化体。
【請求項5】
前記棒状体は、周囲に通気孔が形成された筒部と、先端が錐状をなした錐体部と、を有することを特徴とする請求項4に記載の放射性廃棄物固化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物の固化体の養生中であっても収納容器内の圧力上昇を抑制することができる放射性廃棄物固化体の製造方法及び放射性廃棄物固化体に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設から排出される放射性廃棄物はドラム缶などの収納容器の中でセメントを用いて固化され、低レベル放射性廃棄物として廃棄されている。レベルの高い放射性廃棄物を固化した場合は、固化体に含まれる水分が放射線により分解し水素が発生する。そして、時間とともに固化体中に水素が蓄積され、保管時間の長い廃棄物には多くの水素が含まれるため、長期間の埋設処分中の収納容器内の圧力上昇を抑制又は防止して、処分場の健全性を長期間にわたって確保する必要がある。
【0003】
特許文献1には、放射性廃棄物と、水硬性無機固化材と、骨材とを混練した後、収納容器に供給して固化体を形成する固化体形成ステップと、収納容器内の固化体を養生した後、加熱及び/又は減圧により収納容器内の固化体から水分を除去する水分除去ステップと、水分除去ステップを経た後、収納容器に蓋をして密閉する収納容器密閉ステップと、を有する放射性廃棄物の固化処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-47033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放射性廃棄物の固化体は養生中であっても固化体に水素が蓄積され、収納容器内の圧力上昇が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、放射性廃棄物の固化体の養生中であっても収納容器内の圧力上昇を抑制することができる放射性廃棄物固化体の製造方法及び放射性廃棄物固化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、収納容器内に収納した放射性廃棄物をモルタル又はコンクリートを用いて固化した放射性廃棄物固化体の製造方法であって、気体が内部を通過可能とされた棒状体を前記モルタル又はコンクリートに埋設された状態で配置し、前記モルタル又はコンクリートを養生することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の発明において、前記モルタル又はコンクリートの硬化後に前記棒状体を前記モルタル又はコンクリートから取り除いて孔を形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記棒状体は、周囲に通気孔が形成された筒部と、先端が錐状をなした錐体部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、収納容器と、前記収納容器に格納された放射性廃棄物と、前記収納容器の内部で前記放射性廃棄物を固化するモルタル又はコンクリートと、を有する放射性廃棄物固化体であって、前記モルタル又はコンクリートに埋設された、気体が内部を通過可能とされた棒状体をさらに有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記棒状体は、周囲に通気孔が形成された筒部と、先端が錐状をなした錐体部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射性廃棄物の固化体の養生中であっても収納容器内の圧力上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態である放射性廃棄物固化体の製造方法に用いる、気体が内部を通過可能とされた棒状体である貫入筒の構成を示す図である。
図2】貫入筒を用いた放射性廃棄物固化体の製造方法を説明する説明図である。
図3】貫入筒が固化体に貫入された状態を示す平面図である。
図4】放射性廃棄物が粉状である場合において貫入筒が固化体に貫入された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
<貫入筒>
図1は、本実施の形態である放射性廃棄物固化体の製造方法に用いる、気体が内部を通過可能とされた棒状体である貫入筒1の構成を示す図である。図1に示すように、貫入筒1は、周囲に通気孔4が形成された筒部2と、先端が錐状をなした錐体部3とを有する。
【0016】
<放射性廃棄物固化体の製造方法>
図2は、貫入筒1を用いた放射性廃棄物固化体の製造方法を説明する説明図である。図2に示すように、まず、収納容器10内にガラや配管などの塊状の放射性廃棄物11を収納し、この状態でセメントなどを含むモルタル12を収納容器10に充填する(図2(a))。なお、本実施の形態では、モルタル12を使用したが、これに限らず、モルタル12の代わりにセメントと砂などの骨材などを含むコンクリートを用いてもよい。その後、モルタル12の流動性が低くなって硬化が始まる状態の時に、錐体部3を先端として貫入筒1をモルタル12に深く突き刺し、モルタル12に貫入筒1の一部を埋設する(図2(b))。このとき、貫入筒1は、筒部2の錐体部3に繋がる一端側と反対側に位置する他端側は、モルタル12から露出し、完全にモルタル12の中に埋設しない状態とする。
【0017】
なお、貫入筒1の貫入をモルタル12の流動性が低くなって硬化が始まる状態の時としたのは、貫入時期が早すぎると流動性が高く、貫入筒1の通気孔4の中にモルタル12が入って通気孔4が塞がってしまい、また貫入時期が遅すぎると、充填されたモルタル12の硬化強度が高いため、貫入筒1を貫入するのに労力を要するからである。具体的な硬化始まり時期の判定は、貫入筒1などの棒を貫入し、一旦引き抜いた場合に、棒を入れた孔が1分以内に塞がらなければよい。
【0018】
これにより、モルタル12及び放射性廃棄物11からなる固化体13内の水の放射線分解で発生した水素は、貫入筒1に開けられた通気孔4及び筒部2内を通って収納容器10内の固化体13から外に排出される。この結果、固化体13の水素濃度を長期に渡り、低く抑えることができ、長期の養生が可能になる。
【0019】
なお、本実施の形態では、収納容器10内にガラや配管などの塊状の放射性廃棄物11を収納した後、モルタル12を収納容器10に充填し、貫入筒1をモルタル12に突き刺す工程を行った。しかし、これに限らず、収納容器10内にガラや配管などの塊状の放射性廃棄物11を収納し、貫入筒1を収納容器10に配置した後、モルタル12を収納容器10に充填する工程としてもよい。この工程とした場合では、貫入筒1を動かすことなく、貫入筒1の一部をモルタル12に埋設することができるため、貫入筒1に設けられた通気孔4がモルタル12で目詰まりすることを抑制できる。
【0020】
なお、図3は、貫入筒1が固化体に配置された状態を示す平面図である。図3に示すように、貫入筒1は、固化体13に対して平均的に分散して配置される。
【0021】
また、図2では、塊状の放射性廃棄物11であったが、図4に示すように、切断などで生じた粉体状の放射性廃棄物21であってもよい。
【0022】
なお、貫入筒1は、貫入したままでもよいし、固化体の硬化後に取り除いてもよい。貫入筒1を取り除いても、発生した水素は、貫入筒1が除去されることによって形成された孔により外部に放出されるからである。
【0023】
貫入筒1は、プラスチック系材料、アルミニウム、鉄、ステンレスなどを用いることができる。プラスチック系材料と鉄は耐腐食性が低いため、長期に渡り固化体13中に貫入されていると腐食により貫入筒1としての形状を維持できなくなることが考えられるが、固化体13は貫入筒1が形成した貫通孔を有した状態で固化しているので、腐食により貫入筒1が形状を維持できなくなっても問題はない。
【0024】
なお、通気孔4は、多孔質形状であってもよい。例えば、貫入筒1が金属で形成される場合はポーラス金属であってもよい。貫入筒1を構成するポーラス金属の連通孔によって、水素が脱気されるからである。したがって、貫入筒1の筒部2は、内部が中空となった筒形状に限らず、気体が内部を通過可能とされていればよい。また、貫入筒1の錐体部3は、貫入筒1がモルタル12に突き刺す際に、突き刺し易くするものである。このため、収納容器10内に貫入筒1を配置した後、モルタル12を収納容器10に充填して固化体13を形成する場合にあっては、錐体部3を有さない筒部2だけの貫入筒1を用いてもよい。
【0025】
また、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 貫入筒
2 筒部
3 錐体部
4 通気孔
10 収納容器
11,21 放射性廃棄物
12 モルタル
13 固化体
図1
図2
図3
図4