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特開2024-30100車両用バッテリー冷却システムおよび電動車両
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  • 特開-車両用バッテリー冷却システムおよび電動車両 図1
  • 特開-車両用バッテリー冷却システムおよび電動車両 図2A
  • 特開-車両用バッテリー冷却システムおよび電動車両 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030100
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両用バッテリー冷却システムおよび電動車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20240229BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20240229BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240229BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240229BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240229BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240229BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240229BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240229BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01M10/6568
B60L58/26
B60L50/60
B60K11/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/633
H02J7/00 P
H02J7/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132668
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 義隆
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 智哉
【テーマコード(参考)】
3D038
5G503
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC11
3D038AC12
3D038AC22
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CB11
5G503FA01
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC19
5H125CD06
5H125DD02
5H125EE25
5H125EE55
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】利便性等を向上させつつ、バッテリーの冷却効率を向上させることが可能な車両用バッテリー冷却システム等を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る車両用バッテリー冷却システムは、電動車両内においてバッテリーの近傍に配置されており、バッテリーを冷却するための冷却水を蓄える貯水タンクと、外部設備からバッテリーへと電力を供給している際に、外部設備から供給される冷却水をバッテリーおよび貯水タンクを経由して循環させる循環機構と、この循環機構から供給される冷却水を、電動車両における車体の所定箇所へと噴射するノズルと、バッテリーと貯水タンクとの間の熱の移動を制御する可倒式の放熱フィンと、循環機構およびノズルの各動作と放熱フィンの開閉状態とをそれぞれ制御する制御部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に内蔵されるバッテリーを冷却するシステムであって、
前記電動車両内において前記バッテリーの近傍に配置されており、前記バッテリーを冷却するための冷却水を蓄える貯水タンクと、
外部設備から前記バッテリーへと電力を供給している際に、前記外部設備から供給される前記冷却水を、前記バッテリーおよび前記貯水タンクを経由して循環させる循環機構と、
前記循環機構から供給される前記冷却水を、前記電動車両における車体の所定箇所へと噴射するノズルと、
前記バッテリーと前記貯水タンクとの間の熱の移動を制御する、可倒式の放熱フィンと、
前記循環機構および前記ノズルの各動作と、前記放熱フィンの開閉状態とをそれぞれ制御する制御部と
を備えた車両用バッテリー冷却システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記バッテリーの温度と前記冷却水の温度との大小関係に応じて、
前記放熱フィンの開閉状態を制御する
請求項1に記載の車両用バッテリー冷却システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記バッテリーの温度が前記冷却水の温度よりも高い場合には、前記放熱フィンが開くように制御し、
前記バッテリーの温度が前記冷却水の温度よりも低い場合には、前記放熱フィンが閉じるように制御する
請求項2に記載の車両用バッテリー冷却システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電動車両のユーザの居住地を示す情報、または、前記電動車両を充電している際の現在地を示す情報が、寒冷地または沿岸部であるのか否かに応じて、
前記ノズルの動作を制御する
請求項1または請求項2に記載の車両用バッテリー冷却システム。
【請求項5】
電動車両に内蔵されるバッテリーを冷却する車両用バッテリー冷却システムを備え、
前記車両用バッテリー冷却システムは、
前記電動車両内において前記バッテリーの近傍に配置されており、前記バッテリーを冷却するための冷却水を蓄える貯水タンクと、
外部設備から前記バッテリーへと電力を供給している際に、前記外部設備から供給される前記冷却水を、前記前記バッテリーおよび前記貯水タンクを経由して循環させる循環機構と、
前記循環機構から供給される前記冷却水を、前記電動車両における車体の所定箇所へと噴射するノズルと、
前記バッテリーと前記貯水タンクとの間の熱の移動を制御する、可倒式の放熱フィンと、
前記循環機構および前記ノズルの各動作と、前記放熱フィンの開閉動作とをそれぞれ制御する制御部と
を有する電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用バッテリー冷却システム、および、そのような車両用バッテリー冷却システムを備えた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両に内蔵されるバッテリーを冷却するシステム(車両用バッテリー冷却システム)として、各種の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-99024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用バッテリー冷却システムでは、例えば、利便性等を向上させたり、バッテリーの冷却効率を向上させることが求められている。利便性等を向上させつつバッテリーの冷却効率を向上させることが可能な車両用バッテリーの冷却システム、および、そのような車両用バッテリー冷却システムを備えた電動車両を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る車両用バッテリー冷却システムは、電動車両に内蔵されるバッテリーを冷却するシステムであって、電動車両内においてバッテリーの近傍に配置されており、バッテリーを冷却するための冷却水を蓄える貯水タンクと、外部設備からバッテリーへと電力を供給している際に、外部設備から供給される冷却水をバッテリーおよび貯水タンクを経由して循環させる循環機構と、循環機構から供給される冷却水を、電動車両における車体の所定箇所へと噴射するノズルと、バッテリーと貯水タンクとの間の熱の移動を制御する可倒式の放熱フィンと、循環機構およびノズルの各動作と放熱フィンの開閉状態とをそれぞれ制御する制御部と、を備えたものである。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る電動車両は、上記本開示の一実施の形態に係る車両用バッテリー冷却システムを備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施の形態に係る電動車両等の概略構成例を表すブロック図である。
図2A】実施の形態に係る車両用バッテリー冷却システムの動作例を表す流れ図である。
図2B図2Aに続く動作例を表す流れ図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(電動車両内のバッテリーへの充電および冷却を行うシステムの例)
2.変形例
【0009】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る電動車両(電動車両1)の概略構成例を、ブロック図で表したものである。この電動車両1は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)またはハイブリッド自動車(HEV)により構成されている。
【0010】
電動車両1は、車体10、バッテリー11、接続部12、貯水タンク13、循環機構14、分岐流路14a~14c、放熱フィン15、ノズル16a~16c、温度センサ171,172および制御部18を、備えている。また、この電動車両1の近傍には、図1に示したように、地面G上に設置された外部設備としての充電給水器9が、設けられている。電動車両1では、詳細は後述するが、この充電給水器9との間で、接続ケーブル90およびプラグ91を介した、バッテリー11への充電(電力Pの供給)および冷却水Wの供給が、それぞれ行われるようになっている。
【0011】
なお、貯水タンク13、循環機構14、放熱フィン15、ノズル16a~16cおよび制御部18は、本開示における「車両用バッテリー冷却システム(電動車両に内蔵されるバッテリーを冷却するシステム)」の一具体例に対応している。また、充電給水器9は、本開示における「外部設備」の一具体例に対応している。
【0012】
バッテリー11は、電動車両1において使用される電力を貯蔵するものであり、例えばリチウムイオン電池等の各種の2次電池を用いて構成されている。
【0013】
接続部12は、図1に示したように、プラグ91が接続される部分である。これらのプラグ91および接続部12を介して、充電給水器9から接続ケーブル90を経由した電力Pが、電動車両1へと供給されると共に、充電給水器9から接続ケーブル90内の流路を経由した冷却水Wが、電動車両1へと供給されるようになっている。
【0014】
貯水タンク13は、図1に示したように、電動車両1内においてバッテリー11の近傍に配置されており、バッテリー11を冷却するための冷却水Wを蓄える部分である。
【0015】
循環機構4は、充電給水器9からからバッテリー11へと電力を供給している(バッテリー11への充電が行われている)際に、バッテリー11および貯水タンク13を経由して冷却水Wを循環させる機構(循環流路)である(図1中の破線の矢印参照)。この循環機構4は、具体的には、接続部12(プラグ91)からバッテリー11、後述する放熱フィン15、および貯水タンク13を経由して、接続部12まで冷却水Wを循環させるようになっている。
【0016】
なお、このような冷却水Wの循環が、バッテリー11への充電期間中に限定されているのは、貯水タンク13から後述する各ノズル16a~16cの間(以下の分岐流路14a~14c等)での、冷却水Wの凍結を防止するためである。つまり、バッテリー11への充電期間以外では、冷却水Wは貯水タンク13内に集約されるようになっている。
【0017】
分岐流路14a~14cはそれぞれ、循環機構14(循環流路)から分岐した部分であり、各ノズル16a~16cまで冷却水Wを供給する流路である。つまり、図1に示したように、分岐流路14aは、循環機構14からノズル16aへと冷却水Wを供給する流路である。同様に、分岐流路14bは、循環機構14からノズル16bへと冷却水Wを供給する流路であり、分岐流路14cは、循環機構14からノズル16cへと冷却水Wを供給する流路である。
【0018】
ノズル16a~16cはそれぞれ、循環機構14から各分岐流路14a~14cを介して供給される冷却水Wを、電動車両1における車体10の所定箇所へと噴射する部分である。具体的には、例えば図1に示したように、ノズル16aは、車体10の上部(例えば、前方のウィンドウ部分や、ルーフ部分の箇所など)に対して、冷却水Wを噴射するようになっている。また、ノズル16bは、車体10の前方部分へと冷却水Wを噴射し、ノズル16cは、車体10の下部へと冷却水Wを噴射するようになっている。詳細は後述するが、このような冷却水W(後述するようにして温められた冷却水W)が、車体10の所定箇所へと噴射されることで、車体10の融氷処理や除雪処理、洗浄処理等が行われるようになっている。
【0019】
放熱フィン15は、図1に示したように、バッテリー11と貯水タンク13との間に配置されている。この放熱フィン15は、可倒式の放熱フィンであり、バッテリー11と貯水タンク13との間の熱(図1中に示した熱Q1,Q2)の移動(移動速度等)を、制御する部材である。詳細は後述するが、このような放熱フィン15における開閉状態の設定(開状態と閉状態との間の切り替え)は、制御部18によって制御されるようになっている。
【0020】
温度センサ171は、図1に示したように、バッテリー11の温度T1を検知するセンサである。温度センサ172は、冷却水Wの温度T2を検知するセンサである。このようにして温度センサ171,172によって検知された温度T1,T2の情報はそれぞれ、制御部18へと供給されるようになっている。
【0021】
制御部18は、電動車両1における各種動作(走行動作、バッテリー11への充電動作、冷却水Wの供給動作や循環動作、各種部品の動作など)を制御したり、各種の演算処理を行ったりする部分である。具体的には、制御部18は、例えば、循環機構14およびノズル16a~16cの各動作と、放熱フィン15の開閉状態とを、それぞれ制御する。より具体的には、詳細は後述するが、制御部18は、上記したバッテリー11の温度T1と冷却水Wの温度T2との大小関係に応じて、放熱フィン15の開閉状態を制御するようになっている。
【0022】
また、制御部18は、詳細は後述するが、電動車両1のユーザ(運転手等)の居住地を示す情報、または、電動車両1を充電している際の現在地を示す情報が、寒冷地または沿岸部であるのか否かに応じて、ノズル16a~16cの各動作を制御するようになっている。
【0023】
このような制御部18は、例えば、プログラムを実行する1または複数のプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)と、これらのプロセッサに通信可能に接続される1または複数のメモリと、を含んで構成される。また、このようなメモリは、例えば、処理データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、および、プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等により構成される。
【0024】
[動作および作用・効果]
続いて、図1に加えて図2A図2Bを参照して、本実施の形態における動作および作用・効果について、詳細に説明する。
【0025】
まず、一般に、電動車両に搭載されるバッテリーへの充電中においては、充電に伴う熱により、バッテリの温度が上昇する。バッテリが高温となった場合、バッテリーの劣化が著しく進行してしまうおそれがある。
【0026】
そこで本実施の形態では、上記したように、充電給水器9からバッテリー11への充電が行われている際に、冷却水Wを用いてバッテリー11の冷却が行われることで、上記したバッテリーの劣化等が抑えられるようになっている。
【0027】
また、電動車両では一般に、車体の下部には、電動車両を駆動するのに必要となる部品やハーネスが、多数存在している。特に、ハーネスの端子部および車体の取付部は、汚れが堆積しやすい場所となっており、例えば寒冷地や沿岸部などでは、塩化物を含む汚れが端子付近に堆積し、腐食から脱落に至るケースが多数報告されている。
【0028】
更に、特に寒冷地の場合、電動車両において、ウィンドウの解凍や、ルーフに降り積もった雪下ろしなどの作業が必要となり、すぐに発車できないことが起こり得る。加えて、雪下ろしの作業の際に通常の水(真水)を使用する場合、水が凍っていることも推測される。一方、そのような作業の際に不凍液を使用する場合、不凍液に化学物質が含まれるため、そのまま垂れ流しにしてしまうと、環境汚染(土壌汚染)につながってしまうおそれがある。また、特にHEVの場合において、車体のフロントグリルに積もった雪が、例えばラジエーターを塞いでいる場合には、エンジンのオーバーヒートにもつながる。更に、寒冷地では暖房の使用量も増加することから、バッテリーの使用エネルギーも増加し、航続距離の減少にもつながる。
【0029】
(動作例)
そこで、本実施の形態の電動車両1では、以下詳述する各種の動作が、行われるようになっている。
【0030】
図2A図2Bはそれぞれ、本実施の形態の電動車両1(車両用バッテリー冷却システム)における動作例(制御部18による各種の制御処理例等)を、流れ図で表したものである。
【0031】
この図2A図2Bに示した一連の動作例では、まず、制御部18は、プラグ充電中(充電給水器9から接続ケーブル90およびプラグ91を介した、バッテリー11への充電期間中)であるのか否かを、判定する(図2AのステップS11)。なお、プラグ充電中ではないと判定された場合には(ステップS11:N)、図2A図2Bに示した一連の動作例が、終了となる。
【0032】
一方、プラグ充電中であると判定された場合には(ステップS11:Y)、次に制御部18は、循環機構4が正常に動作中であるのか否かを、判定する(ステップS12)。循環機構4が正常に動作していないと判定された場合には(ステップS12:N)、冷却水Wは使用せずに、バッテリー11への充電が継続されると共に、制御部18が、電動車両1のユーザに対して、循環機構4の故障の旨を通知する(ステップS13)。なお、その後は、図2A図2Bに示した一連の動作例が、終了となる。
【0033】
一方、循環機構4が正常に動作中であると判定された場合には(ステップS12:Y)、制御部18は、充電給水器9から接続ケーブル90およびプラグ91を介して供給された冷却水Wを、循環機構4を用いて電動車両1内で循環させる(ステップS14)。次いで、制御部18は、電動車両1のユーザの居住地が寒冷地または沿岸部であるのか否かについて、判定を行う(ステップS15)。なお、このようなユーザの居住地を示す情報は、例えば、ユーザによって予め入力された情報であったり、あるいは、GPS(Global Positioning System)を利用した位置情報に基づく情報である。
【0034】
ここで、ユーザの居住地が、寒冷地または沿岸部ではないと判定された場合には(ステップS15:N)、次に制御部18は、電動車両1を充電している際の現在地が寒冷地または沿岸部であるのか否かについて、判定を行う(ステップS16)。なお、このような現在地を示す情報も、例えば、GPSを利用した位置情報に基づく情報である。
【0035】
ここで、現在地も寒冷地または沿岸部ではないと判定された場合には(ステップS16:N)、制御部18はノズル16cを用いて、車体10の下部へと冷却水Wを噴射させることで、車体10の下部に対する洗浄処理を行う(図2BのステップS17)。また、この洗浄処理の際に残った冷却水Wは、プラグ91および接続ケーブル90を介して、充電給水器9側へと排水される。なお、その後は、図2A図2Bに示した一連の動作例が、終了となる。一方、現在地が寒冷地または沿岸部であると判定された場合には(ステップS16:Y)、後述するステップS22へと進むことになる。
【0036】
また、ユーザの居住地が、寒冷地または沿岸部であると判定された場合には(ステップS15:Y)、次に制御部18は、温度センサ172から取得した冷却水Wの温度T2が、所定の閾値温度Tth以上である(T2≧Tth)のか否かについて、判定を行う(ステップS18)。
【0037】
ここで、冷却水Wの温度T2が閾値温度Tth未満である(T2<Tth)と判定された場合には(ステップS18:N)、次に制御部18は、この冷却水Wの温度T2が0℃以下である(T2≦0℃)のか否かについて、判定を行う(ステップS19)。冷却水Wの温度T2が0℃以下であると判定された場合には(ステップS19:Y)、後述するステップS22へと進む。一方、冷却水Wの温度T2が0℃超過(T2>0℃)であると判定された場合には(ステップS19:N)、後述するステップS23へと進むことになる。
【0038】
また、冷却水Wの温度T2が閾値温度Tth以上であると判定された場合には(ステップS18:Y)、次に制御部18は、電動車両1のユーザから、温水(バッテリー11の熱によって温められた冷却水W)の使用要求があるのか否かについて、判定を行う(ステップS20)。ここで、ユーザから温水の使用要求がない場合には(ステップS20:N)、後述するステップS22へと進む。
【0039】
一方、ユーザから温水の使用要求がある場合には(ステップS20:Y)、制御部18は、ノズル16a~16cのうちの少なくとも1つを用いて、そのような要求がある箇所(電動車両1の車体10において、温水の使用要求がある箇所)へと、温水を供給する(ステップS21)。次いで、制御部18は、冷却水Wを貯水タンク13に貯水しておき(ステップS22)、その後、寒冷地または沿岸部を所定距離以上、走行したのか否かについて、判定を行う(図2BのステップS23)。
【0040】
ここで、寒冷地または沿岸部を所定距離以上、走行していないと判定された場合には(ステップS23:N)、上記したステップS22へと戻ることになる。一方、寒冷地または沿岸部を所定距離以上、走行したと判定された場合には(ステップS23:Y)、次に制御部18は、温度センサ171から取得したバッテリー11の温度T1が、上記した冷却水Wの温度T2よりも高い(T1>T2)のか否かについて、判定を行う(ステップS24)。なお、このステップS24における判定では、便宜上、温度T1,T2が互いに等しい場合(T1=T2)については、除外している。
【0041】
ここで、バッテリー11の温度T1が、冷却水Wの温度T2よりも高い(T1>T2)と判定された場合には(ステップS24:Y)、制御部18は以下のようにして、可倒式の放熱フィン15の開閉状態を、制御する。すなわち、この場合には制御部18は、放熱フィン15が開くように制御する(開状態に設定して、放熱フィン15を立たせる)ことで、バッテリー11から冷却水Wへの熱Q1の移動を、促進させる(ステップS25)。なお、その後は、後述するステップS27へと進む。
【0042】
一方、バッテリー11の温度T1が、冷却水Wの温度T2よりも低い(T1<T2)と判定された場合には(ステップS24:N)、制御部18は以下のようにして、可倒式の放熱フィン15の開閉状態を、制御する。すなわち、この場合には制御部18は、放熱フィン15が閉じるように制御する(閉状態に設定して、放熱フィン15を寝かせる)ことで、冷却水Wからバッテリー11への熱Q2の移動を、抑制させる(ステップS26)。なお、その後は、後述するステップS29へと進む。
【0043】
ここで、上記したステップS27では、制御部18は、電動車両1の車体10の一部に、積雪の可能性があるのか否かについて、判定を行う。車体10の一部に積雪の可能性があると判定された場合には(ステップS27:Y)、制御部18はノズル16a,16b等を用いて、以下の処理を行う。すなわち、この場合には制御部18は、車体10の所定箇所(積雪の可能性がある箇所)へと冷却水Wを噴射させることで、車体10の所定箇所における、融氷処理や除雪処理を行う(ステップS28)。なお、この場合には以上により、図2A図2Bに示した一連の動作例が、終了となる。
【0044】
一方、車体10の一部に積雪の可能性がないと判定された場合には(ステップS27:N)、制御部18はノズル16cを用いて、以下の処理を行う。すなわち、この場合には制御部18は、車体10の下部へと冷却水Wを噴射させることで、車体10の下部の洗浄処理を行う(ステップS29)。なお、この場合にも以上により、図2A図2Bに示した一連の動作例が、終了となる。
【0045】
(作用・効果)
このようにして本実施の形態の電動車両1では、充電給水器9からバッテリー11へと電力が供給されている際に、充電給水器9から供給される冷却水Wが、バッテリー11と、バッテリー11の近傍に配置されて冷却水Wを蓄える貯水タンク13とを経由して、循環する。これにより、冷却水Wの循環によってバッテリー11の冷却が行われる結果、バッテリー11の劣化が抑えられる。また、バッテリー11の冷却の際に、バッテリー11の熱が冷却水Wへと移動するため、冷却水Wとして不凍液を用いる必要が無くなり、真水を使用できるようになる。よって、冷却水Wのコスト削減が図られるとともに、前述したような、不凍液に含まれる化学物質による環境汚染(土壌汚染)も、回避される。
【0046】
また、本実施の形態では、循環機構4から供給される冷却水Wが、ノズル16a~16cによって、車体10における前述した所定箇所へと噴射される。これにより、バッテリー11の冷却の際に、バッテリー11の熱によって温められた冷却水W(温水)が、車体10の所定箇所へと噴射されることから、車体10の融氷処理や除雪処理、洗浄処理等を行うことができる。その結果、例えば、前述した車体10の下部における部品の腐食による脱落等を防止したり、前述したウィンドウの解凍やルーフに降り積もった雪下ろし等を実施することができる。
【0047】
更に、本実施の形態では、バッテリー11と貯水タンク13との間の熱(熱Q1,Q2)の移動を制御する、可倒式の放熱フィン15が設けられている。これにより、可倒式の放熱フィン15の開閉状態に応じて、バッテリー11と貯水タンク13との間の熱Q1,Q2の移動が、効果的に制御できるようになる。
【0048】
以上のことから、本実施の形態では、利便性等を向上させつつ、バッテリー11の冷却効率を向上させることが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態では、バッテリー11の温度T1が冷却水Wの温度T2よりも高い場合には、放熱フィン15が開くように制御すると共に、バッテリー11の温度T1が冷却水Wの温度T2よりも低い場合には、放熱フィン15が閉じるように制御することから、以下のようになる。すなわち、前者(T1>T2)の場合には、放熱フィン15を開くことで、バッテリー11から冷却水Wへの熱Q1の移動を促進させることできる。一方、後者(T1<T2)の場合には、放熱フィン15を閉じることで、冷却水Wからバッテリー11への熱Q2の移動を抑制することができる。よって、バッテリー11と貯水タンク13との間の熱Q1,Q2の移動を、更に効果的に制御できる結果、バッテリー11の冷却効率を更に向上させることが可能となる。
【0050】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、電動車両1等における各部材の構成(形式、形状、配置、個数等)については、上記実施の形態で説明したものには限られない。すなわち、これらの各部材における構成については、他の形式や形状、配置、個数等であってもよい。具体的には、例えばノズルの個数については、上記実施の形態で説明したように複数(3つ)ではなく、1つだけであったり、あるいは、2つまたは4つ以上であってもよい。また、各ノズルの配置位置についても、上記実施の形態で説明した配置位置には限られず、車体10における他の箇所に配置されているようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0053】
更に、上記実施の形態では、車両用バッテリー冷却システムの動作例(制御部による各種の制御処理例等)について、具体的に説明したが、この動作例(制御処理例等)には限られない。すなわち、例えば他の手法を用いて、制御処理例等を行うようにしてもよい。
【0054】
加えて、上記実施の形態で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0055】
また、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0056】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…電動車両、10…車体、11…バッテリー、12…接続部、13…貯水タンク、14…循環機構(循環流路)、14a~14c…分岐流路、15…放熱フィン、16a~16c…ノズル、171,172…温度センサ、18…制御部、9…充電給水器、90…接続ケーブル、91…プラグ、P…電力、W…冷却水、T1,T2…温度、Tth…閾値温度、Q1,Q2…熱、G…地面。
図1
図2A
図2B