(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030103
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】開閉体システム及び開閉体システムの非常電源装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/82 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E06B9/82 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132673
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】若井 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大助
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042CA01
2E042CA12
2E042CA13
2E042CB11
(57)【要約】
【課題】停電後に切替機能を備えたシャッター水圧開放装置を用いて入力電源の仕様の異なる複数の開閉体装置へ動作用電力を供給する。
【解決手段】複数の開口部周縁部にそれぞれ設置された複数の開閉体装置の開閉駆動手段の入力電源がそれぞれ異なる場合に、停電時に非常電源装置から出力される電源の仕様を開閉駆動手段の入力電源に対応した出力電源の仕様に時間的に切り替えて電力供給する。単相100Vのシートシャッター装置と、三相200Vの鋼製シャッター装置のように入力電源の仕様が異なる2台の開閉体装置が同一間口又は近傍に設置されている場合は、それぞれの入力電源の仕様が異なるので、非常電源装置の出力電源の仕様をその入力電源の仕様に対応させて、単相100Vと三相200Vを時間的に切り替えて2台の開閉体装置をそれぞれ制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部周縁部にそれぞれ設置された複数の開閉体装置の開閉駆動手段に対して、停電時に水圧開放装置に内蔵された非常電源装置から出力される電力を時間的に切り替えて供給することによって、前記複数の開閉体装置の開閉体を順次開放するように構成された開閉体システムにおいて、
前記複数の開閉体装置の開閉駆動手段の入力電源がそれぞれ異なる場合に、前記非常電源装置の出力電源の仕様を前記入力電源に対応した出力電源の仕様に切り替えて前記開閉駆動手段に電力供給するように構成したことを特徴とする開閉体システム。
【請求項2】
本発明の開閉体システムの第1の特徴は、前記非常電源装置は、前記開閉駆動手段の入力電源に対応した専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータを記憶領域に記憶したメモリを用いて所定の処理を実行して前記開閉駆動手段の異なる入力電源に対して出力電源を供給するように構成されたインバータ手段を備え、前記専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータの中から前記入力電源に対応したものを前記メモリから読み出して前記インバータ手段の出力電源を時間的に切り替えて前記開閉駆動手段に供給することを特徴とする開閉体システム。
【請求項3】
複数の開口部周縁部にそれぞれ設置された複数の開閉体装置の開閉駆動手段に対して、停電時に水圧開放装置に内蔵された非常電源装置から出力される電力を時間的に切り替えて供給することによって、前記複数の開閉体装置の開閉体を順次開放するように構成された開閉体システムの非常電源装置において、
前記複数の開閉体装置の開閉駆動手段の入力電源が異なる場合に、前記入力電源に対応して前記非常電源装置の出力電源を時間的に切り替えて前記開閉駆動手段に電力供給するように構成したことを特徴とする開閉体システムの非常電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉体システムの非常電源装置において、
前記非常電源装置は、前記開閉駆動手段の入力電源に対応した専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータを記憶領域に記憶したメモリを用いて所定の処理を実行して前記開閉駆動手段の異なる入力電源に対して出力電源を供給するように構成されたインバータ手段を備え、前記専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータの中から前記入力電源に対応したものを前記メモリから読み出して前記インバータ手段の出力電源を時間的に切り替えて前記開閉駆動手段に供給することを特徴とする開閉体システムの非常電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、工場、倉庫などの建物を含む構造物躯体の開口部などをシャッターなどの開閉体を用いて仕切るように構成された開閉体システム及び開閉体システムの非常電源装置に係り、特に水圧開放装置を介して複数の開閉体装置へ電力を供給できる開閉体システム及び開閉体システムの非常電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッターカーテンなどのような開閉体装置は、住宅、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物を含む構造物躯体の開口部や窓部あるいは内部の通路や空間などの開口部に設置され、その開閉体を移動させることによってその開口部を開放、閉鎖するものである。この開閉体装置は、多数の短冊状のスラット材からなるスラットカーテン、多数のパイプ材をリンク材などで連結させてなるパイプグリルカーテン、一枚状あるいは多数連結されたパネル材からなるパネルカーテン、ネット材からなるネットカーテン、合成樹脂あるいは布繊維製のシート材からなるシートカーテン、あるいはこれらの複合部材などからなる複合カーテンなどの開閉体を、開口部の上部から繰り出し下降させて開口部全体を閉鎖するように構成されている。このような開閉体装置は、開閉体の開閉動作を電動で行なう場合が多い。電動の開閉体装置としては、電動シャッター装置、電動ドア装置、電動オーニング装置などがある。
【0003】
このような電動の開閉体装置の中には、火災による停電時でも消防隊のホースを給水口(送水口)に連結し放水することによって、開閉体装置を電動にて動作させて開閉体を非常開放するように構成された水圧開放装置を備えたものがある。このような水圧開放装置を備えた開閉体装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水圧開放装置を備えた開閉体装置の中には非常電源装置を備えたものがある。非常電源装置は、バッテリからなる予備電源を搭載しており、直流又は交流電圧をモータの定格に応じた電力に変換するためのインバータ回路などの電子部品などを備えて構成されている。この非常電源装置には、開閉体装置の自動閉鎖装置、障害物感知装置、危害防止用連動中継器、起動ボタンを備えた操作スイッチ及び水圧スイッチ(水圧開放装置)などの外部機器や外部電源線などが接続されている。
【0006】
非常電源装置は、停電等によって外部電源線からの電力供給が停止した場合、電力の供給元を商用電源から予備電源に切り替えるだけで、外部機器にいつでも電力を供給することが可能な状態にある。従って、停電等によって外部電源線からの電力供給が停止した状態で、非常電源装置の起動ボタンが人為的に操作された場合又は水圧スイッチ(水圧開放装置)からの作動信号が非常電源装置に入力した場合、非常電源装置から外部機器に対して動作用電力を供給するように構成されている。
【0007】
水圧開放装置用の非常電源装置の中には2台の開閉体装置を順次制御可能に構成された2連切替機能を備えたシャッター水圧開放装置がある。このように1台の非常電源装置で2台の開閉体装置を上昇させる場合、商用電源による起動時には2台を同時に上昇させることは可能であるが、停電時などのように予備電源を用いたインバータ回路では、開閉体装置を同時に上昇させることが困難な場合が多いので、一定時間毎に出力先を切り替えて、2台の開閉体装置を交互に上昇させている。
【0008】
2台の開閉体装置が同じ大きさの開口部に同じ入力電源の仕様のものが設置されている場合は、2連切替機能を備えたシャッター水圧開放装置を用いて一定時間毎に交互に切り替えて上昇させることでほぼ同時に開口部を全開させることが可能である。すなわち、水圧開放装置の電源の種類は通常1種類であるため、2台の開閉体装置の入力電源の仕様が同じ場合は、2連切替機能を備えたシャッター水圧開放装置1台で2台の開閉体装置を上昇させることが可能である。
しかしながら、単相100Vのシートシャッター装置と、三相200Vの鋼製シャッター装置等のように入力電源の仕様が異なる2台の開閉体装置が同一間口又は近傍に設置されている場合は入力電源の仕様の違いにより、2連切替機能を備えたシャッター水圧開放装置1台で2台の開閉体装置を制御することは困難なので、水圧開放装置を2台設置する必要があり、水圧用の設備費用が増大化するという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、停電後に切替機能を備えたシャッター用水圧開放装置を用いて入力電源の仕様の異なる複数の開閉体装置へ動作用電力を供給することのできる開閉体システム及び開閉体システムの非常電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の開閉体システムの第1の特徴は、複数の開口部周縁部にそれぞれ設置された複数の開閉体装置の開閉駆動手段に対して、停電時に非常電源装置から出力される電力を時間的に切り替えて供給することによって、前記複数の開閉体装置の開閉体を順次開放するように構成された開閉体システムにおいて、前記複数の開閉体装置の開閉駆動手段の入力電源がそれぞれ異なる場合に、前記非常電源装置の出力電源の仕様を前記入力電源に対応した出力電源の仕様に切り替えて前記開閉駆動手段に電力供給するように構成したことにある。
【0011】
水圧開放装置の非常電源装置の中には2台以上の開閉体装置を制御可能に構成されたものがある。例えば、1台の水圧開放装置の非常電源装置で2台の開閉体装置を上昇させる場合、商用電源による起動時には2台を同時に上昇させることは可能である。しかし、停電時などのように予備電源を用いたインバータ回路では、2台の開閉体装置を同時に上昇させることは困難であったので、従来は一定の切り替え時間毎に出力先を切り替えて、2台の開閉体装置を交互に上昇させていた。一方、インバータ回路は、専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータを記憶したメモリを備えており、起動ボタンが操作された場合や水圧スイッチからの作動信号を入力した場合に、それぞれのプログラム及びパラメータに応じた仕様の出力電源を出力するように構成されている。
【0012】
この発明は、複数の開口部周縁部にそれぞれ設置された複数の開閉体装置の開閉駆動手段の入力電源がそれぞれ異なる場合に、停電時に非常電源装置から出力される電源の仕様を開閉駆動手段の入力電源に対応した出力電源の仕様に時間的に切り替えて電力供給するようにした。例えば、単相100Vのシートシャッター装置と、三相200Vの鋼製シャッター装置等のように入力電源の仕様が異なる2台の開閉体装置が同一間口又は近傍に設置されている場合は、それぞれの入力電源の仕様が異なるので、非常電源装置の出力電源の仕様をその入力電源の仕様に対応させて、単相100Vと三相200Vを時間的に切り替えて2台の開閉体装置をそれぞれ制御する。これによって、1台の非常電源装置を用いて2台(又はそれ以上)のそれぞれ入力電源の仕様が異なる開閉体装置を制御することが可能となる。非常電源装置がインバータ回路を内蔵している場合は、その設定パラメータを変更することによって入力電源の仕様を切り替える。非常電源装置から出力される電源の仕様が1種類の場合は、その出力を変圧器によって所望の仕様の出力電源に変換して供給する。
【0013】
本発明の開閉体システムの第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体システムにおいて、前記非常電源装置は、前記開閉駆動手段の入力電源に対応した専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータを記憶領域に記憶したメモリを用いて所定の処理を実行して前記開閉駆動手段の異なる入力電源に対して出力電源を供給するように構成されたインバータ手段を備え、前記専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータの中から前記入力電源に対応したものを前記メモリから読み出して前記インバータ手段の出力電源を時間的に切り替えて前記開閉駆動手段に供給することにある。
これは、非常電源装置がインバータ手段を内蔵している場合に、その専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータの中から入力電源に対応したものをメモリから読み出してインバータ手段の出力電源を時間的に切り替えて開閉駆動手段に供給するようにしたものである。
【0014】
本発明の開閉体システムの非常電源装置の第1の特徴は、複数の開口部周縁部にそれぞれ設置された複数の開閉体装置の開閉駆動手段に対して、停電時に水圧開放装置に内蔵された非常電源装置から出力される電力を時間的に切り替えて供給することによって、前記複数の開閉体装置の開閉体を順次開放するように構成された開閉体システムの非常電源装置において、前記複数の開閉体装置の開閉駆動手段の入力電源が異なる場合に、前記入力電源に対応して前記非常電源装置の出力電源を時間的に切り替えて前記開閉駆動手段に電力供給するように構成したことにある。
これは、前記開閉体システムの第1の特徴に対応した開閉体システムの非常電源装置の発明である。
【0015】
本発明の開閉体システムの非常電源装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体システムの非常電源装置において、前記開閉駆動手段の入力電源に対応した専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータを記憶領域に記憶したメモリを用いて所定の処理を実行して前記開閉駆動手段の異なる入力電源に対して出力電源を供給するように構成されたインバータ手段を備え、前記専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータの中から前記入力電源に対応したものを前記メモリから読み出して前記インバータ手段の出力電源を時間的に切り替えて前記開閉駆動手段に供給することにある。
これは、前記開閉体システムの第2の特徴に対応した開閉体システムの非常電源装置の発明である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、停電後に2連切替機能を備えたシャッター水圧開放装置を用いて入力電源の仕様の異なる複数の開閉体装置へ動作用電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るシャッター装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明に係る開閉体装置を構成する制御システムの回路構成の概略を示す図である。
【
図3】
図1及び
図2の非常電源装置の停電発生後の処理の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下添付図面に従って本発明に係る開閉体装置の好ましい実施の形態について説明する。この実施の形態では開閉手段として上下に開閉動作される2台のシャッター装置を例に説明する。
図1は、本発明に係る2台のシャッター装置の概略構成の一例を示す図である。
図1において、開閉体装置10a,10bは異なる高さの出入口の開口部を上下に開閉するシャッター装置である。開閉体装置10aは、単相100Vを入力電源とするシャッター装置であり、開閉装置10bは三相200Vを入力電源とするシャッター装置である。
【0019】
開閉体装置10a,10bは、建物の異なる高さの開口部に設けられている。例えば、開閉体装置10aの設けられる開口部の高さは約3[m]であり、移動速度は3[m/分]である。開閉体装置10bの設けられる開口部の高さは約9[m]であり、移動速度は6[m/分]である。開閉体装置10a,10bは、基本的にシャッターケース11a,11b、シャッターカーテン12a,12b、ガイドレール13a,13b,14a,14b、巻取シャフト15a,15b、チェーン16a,16b、モータ17a,17b、制御装置18a,18b、操作スイッチ19a,19b及び障害物感知器185a,185bなどを含んで構成される。2台の開閉体装置10a,10bに対して、非常電源装置20及び水圧スイッチ30が共通に設けられている。すなわち、非常電源装置20及び水圧スイッチ30は、2連切替機能を備えたシャッター用水圧開放装置を構成している。
【0020】
この開閉体装置10a,10bは、通常時には、操作スイッチ19a,19bの操作に応じて、開閉機であるモータ17a,17bを駆動して別々に開閉制御されるようになっている。さらに、この開閉体装置10a,10bでは、シャッターカーテン12a,12bが巻取シャフト15a,15bに巻き取られている開放状態を機械的な保持機構(図示せず)によって保持しており、この開放状態で外部から火災の発生などを示す非常信号BSなどが制御装置18a,18bに入力された場合には、その保持機構による開放状態の保持が解除されて、シャッターカーテン12a,12bは、その自重で自然降下して開口部を自動閉鎖する機能を備えている
【0021】
ガイドレール13a,13b,14a,14bは、シャッターカーテン12a,12bの両端部に接するように建物の開口部の両端側に設けられ、まぐさ部から床面まで掛け渡された断面形状がコの字型の案内溝を有する金属製部材又はこれと同等の部材で構成されている。シャッターカーテン12a,12bは、このガイドレール13a,13b,14a,14bの各案内溝に沿って上昇下降し、開口部の開閉動作を行う。
【0022】
巻取シャフト15a,15bは、シャッターケース11a,11bの両端側に回動可能に設けられ、シャッターカーテン12a,12bを巻き取ったり巻き戻したりする。チェーン16a,16bは、モータ17a,17bの回転軸に設けられた主動スプロケットと巻取シャフト15a,15bの回転軸に設けられた従動スプロケットとを連結している。従って、モータ17a,17bの回転駆動力は、チェーン16a,16bを介して巻取シャフト15a,15b側に伝達され、モータ17a,17bが回転すると、チェーン16a,16bを介して巻取シャフト15a,15bが回転し、シャッターカーテン12a,12bの開閉動作が制御されるようになっている。
【0023】
モータ17a,17bには、その回転位置すなわちシャッターカーテン12a,12bの開閉位置と開閉状態を検出するための位置検出装置(図示せず)が設けられている。この位置検出装置は、パルス発生型のロータリーエンコーダ等で構成される。モータ17a,17bの回転に応じたパルス信号が制御装置18a,18bに出力されるので、モータ17a,17bの回転位置やシャッターカーテン12a,12bの閉鎖側先端部の開口部における位置などはこのパルスの発生状況に基づいて制御装置18a,18bが演算にて求めることになる。
【0024】
制御装置18a,18bは、マイクロコンピューター構成になっており、非常電源装置20を介して電源ラインACからの電力が供給されている。制御装置18a,18bは、操作スイッチ19a,19b上の各操作ボタンの操作状態に対応した制御信号やモータ17a,17bに設けられた位置検出装置からの信号やプロテクタからの信号などに基づいてモータ17a,17bの回転を制御したり、非常信号BSに基づいて保持機構を解除したりする。
【0025】
操作スイッチ19a,19bは、開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして、上昇(開)ボタン19a1,19b1、停止(停)ボタン19b1,19b2、下降(閉)ボタン19c1,19c2をそれぞれ有し、これら各ボタンの操作状態に応じた制御信号を制御装置18a,18bに出力する。また、図示していないが、操作スイッチ19a,19bは、自動閉鎖機能を作動させるための作動信号を出力する作動スイッチ、この作動スイッチによる信号を解除して自動閉鎖機能を復旧させるための復旧信号を出力する復旧スイッチ、非常電源装置20を起動させるための起動信号を出力する起動ボタン、非常電源装置20から出力される移報信号を開放するための解除スイッチ等を具備している。
【0026】
非常信号BSは、火災発生などの非常時に外部の制御室などから供給される電圧24[V]の信号であり、制御装置18a,18b内の危害防止用連動中継器(
図1では図示していない)に入力される。なお、外部からの非常信号BSの入力と併せて、又は代わりにシャッターケース11a,11bの内側であって、まぐさ部の開口部近傍すなわちシャッターカーテン12a,12bが昇降する部分に温度感知器などを設けてもよい。この温度感知器としては、常時接点がオン状態にあり、接点が所定温度(摂氏100~300度の範囲の任意温度)に達した時点で接点を開きオフ状態となるB接点の自動復帰型の高温度用バイメタル式サーモスタットなどで構成され、接点が開いた場合には火災などが発生したことを示す信号を非常電源装置20に出力し、非常電源装置20から非常信号BSに相当する信号を出力するようにしてもよい。
【0027】
障害物感知器185a,185bは、送信機がシャッターカーテン12a,12bの下端部(座板)に設けられたもので、障害物感知時には、内蔵された座板スイッチの移動に対応した感知信号を制御装置18a,18bに送信し、また、その後の障害物の除去により座板スイッチの復帰移動時には、復帰信号を送信する構成となっている。障害物感知器185a,185bの送信機から制御装置18a,18bへの信号の送信は、図のような有線方式に限らず、電池を電源として作動する無線方式のものでもよい。また、シャッターカーテン12a,12bの下端部に障害物の接触で移動する座板スイッチを設け、障害物接触時の座板の移動力でガイドレールの高さ方向に沿って設けられたテープスイッチを押圧する構成や、テープスイッチから制御手段に対し感知信号を有線出力する構成としてもよい。この他、開口部に光電管やLED等の投受光センサを設け、画像認識等により障害物を非接触で感知する構成としてもよい。
【0028】
水圧スイッチ30は、建物外部に設けられた送水口(図示せず)に火災時などに消火用ホースが接続され、そこから送水(注入)が開始され、その水圧(水流の勢い)が所定範囲内の大きさのときに作動するスイッチであり、その作動信号を非常電源装置20に出力する。この作動信号を入力した非常電源装置20は、移報信号を障害物感知装置制御盤184aに出力する。水圧スイッチ30を作動させる水圧の範囲は、想定される消防隊の放水能力を考慮して適宜設定されている。送水口には火災時などに消火用ホースが接続されるものである。送水口から送水された水は、水圧スイッチ30を経由して図示しない排水口から排水されるようになっている。
【0029】
図2は、本発明に係る開閉体装置を構成する制御システムの回路構成の概略を示す図である。制御装置18aは、マイクロコンピューターによってそれぞれ制御されるものであり、開閉機制御装置181a、危害防止用連動中継器182a、自動閉鎖装置183a及び障害物感知装置制御盤184aを備えて構成されており、操作スイッチ19a、障害物感知器185a、水圧スイッチ30等から入力される信号や非常電源装置20から出力される電力及び各種信号を処理して、モータ17aおよび自動閉鎖装置183aを制御する。なお、制御装置18bは、制御装置18aと同じ構成なので、制御装置18aについて説明し、制御装置18bについては図示及び説明は省略する。
【0030】
開閉機制御装置181aは、電源ラインからの商用電源の入力断を示す入力断信号を入力することによって非常電源装置20によって切替られて電源ラインを介して供給される交流電圧によって動作する。すなわち、通常、モータ17aには、商用電源からの電力が供給されているが、停電時などの非常時において商用電源からの電力供給が停止した入力断となった場合などには、開閉機制御装置181aが非常電源装置20の出力回路204から交流電圧の供給を受けるようになっている。なお、開閉機制御装置181aの中には、電源ラインから入力される直流又は交流電圧をモータ17aの定格に応じた電力源に変換するためのインバータ回路を内蔵しているものもある。インバータ回路は、専用のプログラムやデータ及びその処理実行に必要な各種パラメータを記憶したメモリを備えており、起動ボタンが操作された場合や水圧スイッチからの作動信号を入力した場合に、それぞれのプログラム及びパラメータに応じた仕様の出力電源を出力するように構成されている。このインバータ回路は、モータ17aに設けられた位置検出装置172aからのシャッター位置情報を示す信号を受信し、それに基づいて直流電圧から交流電圧への変換動作を制御する。なお、
図2では、制御装置18a以外への電源ラインの接続関係については図示を省略する。
【0031】
危害防止用連動中継器182aは、非常信号BSまたは操作スイッチ19aからの作動信号を受けた際に、自動閉鎖装置183aを作動させるための電源(例えばDC24V等)を、商用電源又は非常電源装置20から出力するものである。危害防止用連動中継器182aは、通常は、商用電源を使用して出力するが、停電時などには非常電源装置20からの電力によって自動閉鎖装置183aへ直流24V信号を出力する。
【0032】
自動閉鎖装置183aは、危害防止用連動中継器182aを介して供給される直流24V信号に応じて保持機構171aを解放し、巻取り状態にあるシャッターカーテン12aを自重で下降させ自動的に開口部を閉鎖するように動作する。自動閉鎖装置183aは、直流24V信号が供給された際に、モータの回転力により押圧作動部材を突出させるように構成してある。この押圧作動部材は、その突端部で保持機構171aの操作レバーを押圧操作するように配置されている。自動閉鎖装置183aは、非常時には、操作スイッチ19aに設けられた非常閉鎖ボタンの操作に応じて、シャッターカーテン12aを自重で降下させることもある。自動閉鎖装置183aは、危害防止用連動中継器182aからの直流24V信号が供給されている間、保持機構171aを解放するが、障害物感知装置制御盤184aの障害物感知信号がある場合には、その間保持機構171aを復帰するようになっている。なお、危害防止用連動中継器182aからの電力供給(直流24V信号)がなくなった場合に保持機構171aを復帰するものもある。
【0033】
非常電源装置20は、マイクロコンピューターによってそれぞれ制御されるものであり、電源切替回路201、充電回路202、予備電源(蓄電池)203及び出力回路204等を備えて構成されている。電源切替回路201は、電源ラインを介して供給される商用電源ACを開閉機制御装置181aに供給すると共に充電回路202に電力を供給する。また、電源切替回路201は、電源ラインから供給される商用電源ACの入力断となったことを検出した時点で出力回路204へ商用電源の入力断となったことを示す入力断信号を出力する。充電回路202は、電源切替回路201から供給される電力を用いて予備電源(蓄電池)203を充電する。予備電源(蓄電池)203は、リチウムイオン充電池やその他のバッテリ(充電式以外にも乾電池のように使い切るタイプの電源も含む)などから構成され、停電時に出力回路204を介して、開閉機制御装置181aなどへ電力を供給する。
【0034】
出力回路204は、電源切替回路201から商用電源の入力断を示す入力断信号を入力することによって予備電源203からの直流電圧を接続される外部機器の仕様に応じてインバータ回路を用いて所定の交流電圧に変換して供給する。すなわち、出力回路204は、インバータ回路を内蔵しており、外部機器の仕様に応じて交流電圧を供給可能になっている。インバータ回路には交流電圧発生時に動作する内部メモリが内蔵してあるので、非常電源装置20は、この内部メモリに異常がないか否かの判定テスト(Read/Writeテスト又はMarch-Cテストなど)を常時行っている。通常、開閉機制御装置181a,181bには、商用電源からの電力が供給されているが、停電時などの非常時において商用電源からの電力供給が停止した入力断となった場合などには、出力回路204のインバータ回路が予備電源203の直流電圧を所定の交流電圧に変換して開閉機制御装置181a,181bに供給する。
【0035】
上述のように開閉体装置10aは、単相100Vを入力電源とし、開閉装置10bは三相200Vを入力電源としているので、出力回路204の内部メモリに直流電圧を単相100Vに変換するインバータ回路動作用のパターンデータ又はパラメータを書き込み、直流電圧を単相100Vの交流電圧に変換して、開閉体装置10aの開閉機制御装置181aに供給する。開閉体装置10aの開閉動作が終了した時点で、出力回路204は、その内部メモリに直流電圧を三相200Vに変換するインバータ回路動作用パターンデータ又はパラメータを書き込み、直流電圧を三相200Vの交流電圧に変換して、開閉体装置10bの開閉機制御装置181bに供給する。
【0036】
図3は、
図1及び
図2の非常電源装置の停電発生後の処理の一例を示すフローチャート図である。停電発生後に非常電源装置は処理をスタートするが、停電発生直後に水圧スイッチ30からの作動信号が入力した場合に実行する処理の詳細について説明する。
【0037】
ステップS31では、停電に伴って商用電源の入力断となったことを示す入力断信号を電源切替回路201が出力回路204へ出力する。
ステップS32では、出力回路204の内部メモリに、直流電圧を単相100Vに変換するインバータ回路動作用のパラメータを設定する。これによって、出力回路204のインバータ回路は開閉体装置10aの入力電源に対応した単相100Vの交流電圧を出力可能となる。
【0038】
ステップS33では、第1シャッターとなる開閉体装置10aに対して出力回路204のインバータ回路から単相100Vの交流電圧を出力し、水圧スイッチ30からの作動信号に対応した非常開放処理を実行する。
ステップS34では、第1シャッターとなる開閉体装置10aに対する非常開放処理によって開閉体装置10aが全開したか否かの判定行い、全開(yes)の場合は次のステップS35に進み、全開していない(no)場合はステップS33の開閉体装置10aに対する非常開放処理を継続して実行する。
【0039】
ステップS35では、開閉体装置10aに対する非常開放処理が終了したので、出力回路204の内部メモリに、直流電圧を三相200Vに変換するインバータ回路動作用のパラメータを設定する。これによって、出力回路204のインバータ回路は開閉体装置10bの入力電源に対応した三相200Vの交流電圧を出力可能となる。
ステップS36では、第2シャッターとなる開閉体装置10bに対して出力回路204のインバータ回路から三相200Vの交流電圧を出力し、水圧スイッチ30からの作動信号に対応した非常開放処理を実行する。
ステップS37では、第2シャッターとなる開閉体装置10bに対する非常開放処理によって開閉体装置10bが全開したか否かの判定行い、全開(yes)の場合は処理を終了し、全開していない(no)場合はステップS36の開閉体装置10bに対する非常開放処理を継続して実行する。
【0040】
上述の実施の形態では、開閉体装置10a,10bの開閉速度が異なる場合について説明したが、開閉速度が同じでもよい。また、互いに鋼製シャッターカーテンシート状シャッターカーテンのように入力電源が異なる開閉体装置にも適用可能である。
上述の実施の形態では、1台の非常電源装置で2台の開閉体を制御する場合について説明したが、1台の非常電源装置で3台以上の開閉体を制御する場合も同様に適用することができる。
【0041】
上述の実施の形態では、上下昇降方式で繰り出されるシャッターカーテンを例に説明したが、シャッター状の開閉部材が横引き方式で繰り出されたり、あるいは水平方式で繰り出されたりするものであっても同様に適用することができる。また、開閉体装置としては、例えば、シャッター装置、窓シャッター装置、ブラインド装置、ロールスクリーン装置、垂れ幕装置、引戸装置、移動間仕切装置、オーニング装置、防水板装置などにも適用可能である。
【0042】
上述の実施の形態では、インバータ回路204がパラメータを時間的に切り替えることによって、異なる仕様の出力電源を出力する場合について説明したが、インバータ回路204から出力される電源の仕様が1種類の場合は、その出力を変圧器によって所望の仕様の出力電源に変換してから供給するようにしてもよい。また、異なる仕様の出力電源を出力するインバータ回路を複数設けて、それぞれ対応する開閉体装置に電力供給してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10a,10b…開閉体装置
11a,11b…シャッターケース
12a,12b…シャッターカーテン
13a,13b,14a,14b…ガイドレール
15a,15b…巻取シャフト
16a,16b…チェーン
17a,17b…モータ
171a…保持機構
172a…位置検出装置
18a,18b…制御装置
181a…開閉機制御装置
182a…危害防止用連動中継器
183a…自動閉鎖装置
184a…障害物感知装置制御盤
185a,185b…障害物感知器
19a,19b…操作スイッチ
19a1,19b1…上昇(開)ボタン
19a2,19b2…停止(停)ボタン
19a3,19b3…下降(閉)ボタン
20…非常電源装置
201…電源切替回路
202…充電回路
203…予備電源
204…出力回路
30…水圧スイッチ