(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030110
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】洗浄対象物の浄化方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/72 20230101AFI20240229BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240229BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240229BHJP
B01F 31/80 20220101ALI20240229BHJP
B01F 23/2373 20220101ALI20240229BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20240229BHJP
B01D 53/58 20060101ALI20240229BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20240229BHJP
B08B 3/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C02F1/72 Z ZAB
C02F1/461 Z
B01J20/34 C
B01F31/80
B01F23/2373
B01D53/56 220
B01D53/58
B01D53/72 200
B08B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132680
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
3B201
4D002
4D050
4D061
4G035
4G036
4G066
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201BB01
3B201BB21
3B201BB89
3B201BB92
3B201BC05
4D002AA12
4D002AA13
4D002AA40
4D002BA02
4D002BA05
4D002CA01
4D002DA35
4D002DA51
4D050AA01
4D050AA08
4D050AA12
4D050AB06
4D050AB07
4D050AB11
4D050AB35
4D050AB37
4D050BB02
4D050BB20
4D061DA10
4D061DB09
4D061EA01
4D061EB04
4D061EB31
4D061ED12
4D061FA20
4G035AB04
4G036AB21
4G066AA05B
4G066CA01
4G066DA02
4G066GA11
(57)【要約】
【課題】従来より洗浄性に優れる洗浄対象物の浄化方法を提供しようとするもの。
【解決手段】洗浄水中にナノバブルを生成させる工程とオゾン含有水を電気分解する工程とを有し、前記ナノバブル電解水により洗浄するようにした。浸透性が高いナノバブルの微細気泡が破裂した際に発生する衝撃エネルギー(衝撃波)とオゾン含有水の電解により酸素ラジカル(・O)が生成した高い酸化力の相乗効果によって洗浄対象物をより低分子化して浄化することができる。前記ナノバブル電解水により活性炭を再生するようにしてもよい。前記電気分解工程はハロゲン化物イオンの共存下で行うようにしてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水中にナノバブルを生成させる工程とオゾン含有水を電気分解する工程とを有し、前記ナノバブル電解水により洗浄するようにしたことを特徴とする洗浄対象物の浄化方法。
【請求項2】
前記ナノバブル電解水により活性炭を再生するようにした請求項1記載の洗浄対象物の浄化方法。
【請求項3】
前記電気分解工程はハロゲン化物イオンの共存下で行うようにした請求項1又は2記載の洗浄対象物の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗浄性に優れる洗浄対象物の浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処理効率の向上と、処理コストの低減を実現できるという排ガス排水処理方法に関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、この排ガス排水処理方法は、排ガスを処理する洗浄水としてマイクロナノバブルを含有するマイクロナノバブル水を使用し、上記排ガスを処理した洗浄水を排水の処理に再使用する。
そして、この排ガス排水処理方法によれば、マイクロナノバブル水を洗浄水として排ガスを処理するので、マイクロナノバブルがもつ物体表面の高速洗浄機能により、排ガスを効率良く洗浄できる。
また、上記排ガスを処理した洗浄水を排水の処理に再使用することにより、この洗浄水に含まれるマイクロナノバブルを排水処理に役立てることができ、排水処理効率の向上を図れる。
すなわち、このマイクロナノバブルは、(1) 界面活性作用と殺菌作用、(2)汚れ成分の吸着機能、(3) 物体表面の高速洗浄機能、(4) 殺菌機能、(5) 触媒的作用,機能(6)微生物の活性を高める作用・機能などを有している、というものである。
しかし、より洗浄性に優れる洗浄対象物の浄化方法が得たいという要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来より洗浄性に優れる洗浄対象物の浄化方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の洗浄対象物の浄化方法は、洗浄水中にナノバブルを生成させる工程とオゾン含有水を電気分解する工程とを有し、前記ナノバブル電解水により洗浄するようにしたことを特徴とする。
【0006】
この洗浄対象物の浄化方法は、(洗浄対象物の)洗浄水中にナノバブル(この発明のナノバブルは直径が約50ミクロン(μm)以下のマイクロバブルと直径が数100nm以下のナノバブルとを両方含む概念とする)を生成させる工程とオゾン(O3)含有水(例えば洗浄水中にオゾンを圧入する)を電気分解する工程を有するので、オゾン(O3)含有水の電解により酸素ラジカル(・O)が生成したナノバブル電解水(洗浄対象物の洗浄水)を得ることができる。
【0007】
そして、前記ナノバブル電解水により洗浄するようにしたので、浸透性が高いナノバブルの微細気泡が破裂した際に発生する衝撃エネルギー(衝撃波)とオゾン含有水の電解により酸素ラジカル(・O)が生成した高い酸化力の相乗効果によって洗浄対象物をより低分子化して浄化することができる。
【0008】
オゾン(O3)含有水を電気分解すると3つの酸素ラジカル(・O)が生成するが、オゾンの酸化電位は2.07Vであるのに対し酸素ラジカル1つの酸化電位は2.42Vであり、酸素ラジカル3つでは2.42V×3=7.26Vとなり、もともとのオゾンの酸化電位2.07Vの3.5倍(7.26V÷2.07V=3.5)となり、これはオゾンが酸素ラジカルに変化することにより酸化力が増大することの指標である。
【0009】
また、洗浄水中に圧入するオゾン(O3)量によりオゾン水濃度(ppm)が把握可能であり、このオゾン含有水を電気分解することにより生成する酸素ラジカル(・O)量も推測可能であるので、元来 測定不能なヒドロキシラジカル(・OH)濃度の場合とは異なり、このナノバブル洗浄水の酸化力の評価ができ、ひいては洗浄対象の排水中のCODやアンモニアなどの分解量の推測が可能である。
【0010】
ここで、ナノバブル電解水による洗浄対象物として、排水、スイミングプールのプール水、スクラバー水(自体)、雨水その他の液体成分、排ガス(スクラバー内に噴霧して排ガスを取り込む)その他の気体成分、活性炭(微細孔に吸着した汚れ成分を分解して再生する)その他の固体成分、木材の表面、建築物等のコンクリートの表面、車のタイヤ、自衛隊などの特殊車両のキャタピラー、船舶の船底、トイレの便器に固着した尿石などを例示することができる。
【0011】
洗浄対象に含有される成分として、排水(洗浄対象物)中のアンモニア態窒素、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素(T-N成分)、有機物等のCOD成分、タンパク質、n-Hexane抽出物質、油分、クリンカしたシリカ成分などを例示することができる。
前記ナノバブルは超音波発生器により生成させることができ、オゾン(O3)はオゾナイザーにより発生させることができる。
【0012】
工程の順番として、ナノバブルを生成させる工程(この工程でオゾンを圧入することができる)の後にオゾン含有水を電気分解する工程としてもいいし、その逆(オゾン含有水の電解による酸素ラジカル生成後にナノバブルを生成させる)でもいいし、装置の機構上 同時に行うようにしてもよい。
酸素ラジカル(・O)は洗浄後には酸素(水の構成元素)に変化するので、ハロゲン化物イオン(F-、Cl-、Br-、I-)のような異物としては残留しないこととなる。
電気分解工程で生成した酸素ラジカル(・O)は、COD成分の分解作用や殺菌作用を有する。
【0013】
(2)前記ナノバブル電解水により活性炭を再生するようにしてもよい。
このように、ナノバブル電解水により(使用済み)活性炭(=洗浄対象物)を再生するようにすると、(吸着平衡が立った)活性炭の微細孔にナノバブル電解水が浸透し、この微細孔内に吸着した汚れ成分(有機物等)を、酸素ラジカルが生成した電解水で(温度をかけずにほぼ常温で)分解・浄化することができる。
【0014】
ここで、活性炭の賦活再生は一般的に約900℃×3時間 加熱することにより行うが、この洗浄対象物の浄化方法によると、大きな熱エネルギーをかけることなくナノバブル電解水により活性炭の再生(汚れ成分の分解・浄化)を行うことができる。
【0015】
(3)前記電気分解工程はハロゲン化物イオンの共存下で行うようにしてもよい。
このように、電気分解工程はハロゲン化物イオン(F-、Cl-、Br-、I-)の共存下で行うようにすると、ナノバブル電解水中に次亜ハロゲン酸(例えばHOF、HOCl、HOBr、HOI)を生成させることができ、電解水中の次亜ハロゲン酸による酸化分解作用を洗浄対象物に対して及ぼすことができる。次亜塩素酸の酸化電位は0.9Vである。
【0016】
(4)ナノバブル電解水は、洗浄作用の他に殺菌作用を発揮させることができる。そして、洗剤・洗浄剤を利用せずに洗浄作用を発揮させることができる。
ナノバブル電解水は、加温(例えば60℃程度)して洗浄利用することもできる。また、洗浄対象物の塗装面の塗膜をいためないようマイルドな洗浄作用を発揮させるように調整することができる。ナノバブル電解水に洗浄対象物への浸透性を発揮させることもできる。
電気分解工程の電極は、白金電極よりも寿命が長いセラミック電極を好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
浸透性が高いナノバブルの微細気泡が破裂した際に発生する衝撃エネルギー(衝撃波)とオゾン含有水の電解により酸素ラジカル(・O)が生成した高い酸化力の相乗効果によって洗浄対象物をより低分子化して浄化することができるので、従来より洗浄性に優れる洗浄対象物の浄化方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
(実施形態1)
この実施形態の洗浄対象物の浄化方法は、洗浄水中にナノバブルを生成させる工程とオゾン含有水(洗浄水中にオゾンを圧入した)を電気分解する工程とを有し、前記ナノバブル電解水により洗浄するようにした。
前記ナノバブルは超音波発生器により生成させ、オゾン(O3)はオゾナイザーにより発生させた。電気分解工程の電極はセラミック電極を使用した。
【0019】
ナノバブル電解水による洗浄対象物として、排水、排ガス(ナノバブル電解水をスクラバー内に噴霧して排ガスをスクラバー水中に取り込んだ)を浄化した。洗浄対象に含有される成分として、排水中、排ガス中のアンモニア態窒素、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、有機物等のCOD成分を分解した。
【0020】
次に、この実施形態の洗浄対象物の浄化方法の使用状態を説明する。
この洗浄対象物の浄化方法は、洗浄対象物の洗浄水中にナノバブルを生成させる工程とオゾン(O3)含有水を電気分解する工程を有するので、オゾン(O3)含有水の電解により酸素ラジカル(・O)が生成したナノバブル電解水(洗浄対象物の洗浄水)を得ることができた。
【0021】
そして、前記ナノバブル電解水により洗浄するようにしたので、浸透性が高いナノバブルの微細気泡が破裂した際に発生する衝撃エネルギー(衝撃波)とオゾン含有水の電解により酸素ラジカル(・O)が生成した高い酸化力の相乗効果によって洗浄対象物をより低分子化して浄化することができ、従来より洗浄性に優れたものであった。
【0022】
(実施形態2)
この実施形態では、電気分解工程はハロゲン化物イオンの共存下で行うようにした。
具体的には、電気分解工程はハロゲン化物イオン(Cl-)の共存下で行うようにしたので、ナノバブル電解水中に次亜ハロゲン酸(HOCl)を生成させることができ、電解水中の次亜ハロゲン酸による酸化分解作用を洗浄対象物に対して及ぼすことができた。
【0023】
(実施形態3)
この実施形態では、ナノバブル電解水により活性炭を再生した。
具体的には、実施形態1のナノバブル電解水により使用済み活性炭を再生しており、吸着平衡が立った活性炭の微細孔にナノバブル電解水が浸透し、この微細孔内に吸着した汚れ成分(有機物等)を、酸素ラジカルが生成した電解水で温度をかけずに常温で分解・浄化することができた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
従来より洗浄性に優れることによって、種々の洗浄対象物の浄化方法の用途に適用することができる。