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特開2024-30144ヒンジキャップ付きケース、及び、ヒンジキャップ付きケースの製造方法
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  • 特開-ヒンジキャップ付きケース、及び、ヒンジキャップ付きケースの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030144
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ付きケース、及び、ヒンジキャップ付きケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/04 20060101AFI20240229BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240229BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240229BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240229BHJP
   B65D 83/06 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B65D83/04 F
B29C45/00
B29C44/00 D
B29C33/42
B65D83/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132740
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】三田 とも子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翔平
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AB02A
4F202AG20
4F202AG28
4F202AG30
4F202AH56
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK12
4F206AB02A
4F206AG20
4F206AG28
4F206AG30
4F206AH56
4F206AR12
4F206JA04
4F206JF04
4F206JL02
4F206JM04
4F206JM05
4F206JN25
4F206JQ81
4F214AB02A
4F214AH56
4F214UA08
4F214UB01
4F214UC12
4F214UL25
4F214UM81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用する樹脂の量を低減させると共に嵌合力を損ねることがないヒンジキャップ付きケースを提供する。
【解決手段】ヒンジキャップ付きケース1は、底板20、及び、第1側壁を有する本体部材2と、天板30、及び、第2側壁を有する蓋部材3と、第1側壁及び第2側壁にまたがって形成されている開口部に対して開閉可能なヒンジキャップと、を備える。底板20の内面には、円筒形状を有するボス22が形成されており、天板30の内面には、円筒形状を有するピン32が形成されている。底板20及び天板30の少なくとも一方の厚みは、0.70mm以下であり、底板20の厚みに対するボス22の筒部の厚みの比率が1.7以上4.0以下であり、天板30の厚みに対するピン32の筒部の厚みの比率が1.7以上4.0以下である。ボス22及びピン32の少なくとも一方の内部には独立気泡が形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板、及び、前記底板の周縁から上方に延在する第1側壁を有する樹脂製の本体部材と、
前記本体部材を覆う天板、及び、前記天板の周縁から下方に延在する第2側壁を有する樹脂製の蓋部材と、
前記第1側壁又は前記第2側壁に設けられると共に前記第1側壁及び前記第2側壁にまたがって形成されている開口部に対して開閉可能なヒンジキャップと、を備え、
前記本体部材及び前記蓋部材は、互いに嵌合することでケースを形成し、
前記底板及び前記天板は、長辺方向の長さが12cm以下で且つ短辺方向の長さが7cm以下の略矩形形状であり、
前記底板の内面には、筒形状を有する第1嵌合構造が形成され、
前記天板の内面には、筒形状を有し、前記第1嵌合構造と嵌合する第2嵌合構造が形成され、
前記第1嵌合構造及び前記第2嵌合構造は、ボス又は前記ボスの内孔に嵌合するピンのいずれか一方と他方であり、
前記底板及び前記天板の少なくとも一方の厚みは、0.70mm以下であり、
前記底板の厚みに対する前記第1嵌合構造の筒部の厚みの比率が1.7以上4.0以下であり、
前記天板の厚みに対する前記第2嵌合構造の筒部の厚みの比率が1.7以上4.0以下であり、
前記第1嵌合構造及び前記第2嵌合構造の少なくとも一方の内部には独立気泡が形成されている、ヒンジキャップ付きケース。
【請求項2】
前記底板及び前記天板の少なくとも一方の内面には、薄肉凹部が形成され、
前記薄肉凹部は、前記薄肉凹部が形成されている前記底板又は前記天板の内面において、前記薄肉凹部が形成されていない部分よりも厚みが薄くなるように構成され、
前記薄肉凹部の厚みが0.40mm以下である、
請求項1に記載のヒンジキャップ付きケース。
【請求項3】
前記第1嵌合構造は、前記底板の内面から上方に延在する第1土台部と、前記第1土台部の先端から上方に延在する第1先端部とから構成され、
前記第1土台部の外径は、前記第1先端部の外径よりも大きく、
前記第2嵌合構造は、前記天板の内面から下方に延在する第2土台部と、前記第2土台部の先端から下方に延在する第2先端部とから構成され、
前記第2土台部の外径は、前記第2先端部の外径よりも大きい、
請求項1に記載のヒンジキャップ付きケース。
【請求項4】
前記ピンの基端における外径は、前記ボスの先端における内径より大きく、
前記ピンの外径が前記ピンの基端から前記ピンの先端に向かうにつれて減少する、
請求項1に記載のヒンジキャップ付きケース。
【請求項5】
(A)請求項1~4の何れか一項に記載のヒンジキャップ付きケースに対応する金型を準備する工程と、
(B)樹脂材料と、超臨界状態の二酸化炭素又は窒素のいずれか一方とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、
(C)前記溶融樹脂組成物を前記ヒンジキャップ付きケースに対応する前記金型のキャビティ内に射出する工程と、
(D)前記工程(C)後、前記キャビティを保圧するとともに冷却する工程と、
(E)成形物を前記金型から回収する工程と、
を含み、
前記工程(B)では、前記溶融樹脂組成物における前記樹脂材料の質量を100質量部としたとき、前記超臨界状態の二酸化炭素又は窒素のいずれか一方の量が0.5質量部以上3質量部以下となるように前記溶融樹脂組成物を調整する、
ヒンジキャップ付きケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップ付きケース、及び、ヒンジキャップ付きケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清涼用粒状物等を入れて小出し使用するためのヒンジキャップ付きケースが知られている。特許文献1及び2に記載のヒンジキャップ付きケースは、トレイ状の底部材と蓋部材とが互いに嵌合してなるカード型のケースである。このケースでは、底部材と一体成形されたヒンジキャップを開閉できる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-315468号公報
【特許文献2】特開平10-329877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載のヒンジキャップ付きケースでは、底部材と蓋部材との間の嵌合力により、底部材と蓋部材とが容易に外れないように構成されている。この嵌合力は、ヒンジキャップ付きケースの耐久性を担保する観点から、設計変更が生じても容易に損なわれないことが望ましい。その一方、環境への配慮から、設計変更等を通じて、ヒンジキャップ付きケースの製造に使用する樹脂の使用量を低減させることが望まれている。
【0005】
本発明は、使用する樹脂の量を低減させつつ嵌合力を損ねることがないヒンジキャップ付きケース、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、一側面として、ヒンジキャップ付きケースに関する。このヒンジキャップ付きケースは、底板、及び、底板の周縁から上方に延在する第1側壁を有する樹脂製の本体部材と、本体部材を覆う天板、及び、天板の周縁から下方に延在する第2側壁を有する樹脂製の蓋部材と、第1側壁又は第2側壁に設けられると共に第1側壁及び第2側壁にまたがって形成されている開口部に対して開閉可能なヒンジキャップと、を備える。このヒンジキャップ付きケースでは、本体部材及び蓋部材は、互いに嵌合することでケースを形成し、底板及び天板は、長辺方向の長さが12cm以下で且つ短辺方向の長さが7cm以下の略矩形形状である。このヒンジキャップ付きケースでは、底板の内面には、筒形状を有する第1嵌合構造が形成され、天板の内面には、筒形状を有し、第1嵌合構造と嵌合する第2嵌合構造が形成されている。第1嵌合構造及び第2嵌合構造は、ボス又はボスの内孔に嵌合するピンのいずれか一方と他方である。このヒンジキャップ付きケースでは、底板及び天板の少なくとも一方の厚みは、0.70mm以下であり、底板の厚みに対する第1嵌合構造の筒部の厚みの比率が1.7以上4.0以下であり、天板の厚みに対する第2嵌合構造の筒部の厚みの比率が1.7以上4.0以下である。このヒンジキャップ付きケースでは、第1嵌合構造及び第2嵌合構造の少なくとも一方の内部に独立気泡が形成されている。
【0007】
このヒンジキャップ付きケースでは、本体部材又は蓋部材のなかでも広い面積を占める底板又は天板の厚みが0.70mm以下となっている。これにより、底板又は天板の厚みを薄くすることができる。したがって、ヒンジキャップ付きケースを製造するために使用する樹脂の量を少なくすることができる。また、このヒンジキャップ付きケースでは、第1嵌合構造及び第2嵌合構造を構成するボス及びピンの少なくとも一方の内部に独立気泡が形成されている。独立気泡が内部に形成されたボス又はピンは、曲げ弾性率が小さくなることで柔軟性を有する。これにより、ボスのボス穴に他のピンが挿入される際は、ボス及びピンが当接し合うことでボス及びピンの少なくとも一部が凹むように曲がる。曲がったボス又はピンには復元力が働くので、ボス及びピンが強固に当接し合う。したがって、本体部材と蓋部材との間の嵌合力が損なわれない。以上より、このヒンジキャップ付きケースによれば、使用する樹脂の量を低減させると共に、本体部材と蓋部材との間の嵌合力を損ねることがない。
【0008】
[2]上記[1]のヒンジキャップ付きケースでは、底板及び天板の少なくとも一方の内面には、薄肉凹部が形成され、薄肉凹部は、薄肉凹部が形成されている底板又は天板の内面において、薄肉凹部が形成されていない部分よりも厚みが薄くなるように構成され、薄肉凹部の厚みが0.40mm以下であってもよい。これにより、薄肉凹部が形成された底板又は天板の容積は、薄肉凹部が形成された分だけ減少する。したがって、使用する樹脂の量をより低減させることができる。
【0009】
[3]上記[1]又は[2]のヒンジキャップ付きケースでは、第1嵌合構造は、底板の内面から上方に延在する第1土台部と、第1土台部の先端から上方に延在する第1先端部とから構成されてもよく、第1土台部の外径は、第1先端部の外径よりも大きくてもよい。上記[1]又は[2]のヒンジキャップ付きケースでは、第2嵌合構造は、天板の内面から下方に延在する第2土台部と、第2土台部の先端から下方に延在する第2先端部とから構成されてもよく、第2土台部の外径は、第2先端部の外径よりも大きくてもよい。これにより、第1嵌合構造及び第2嵌合構造を構成するボス及びピンの先端部の厚さが薄い場合でも、ボス及びピンの強度が確保される。したがって、ボス及びピンの耐久性を向上させることができる。
【0010】
[4]上記[1]~[3]の何れかのヒンジキャップ付きケースでは、ピンの基端における外径は、ボスの先端における内径より大きくてもよく、ピンの外径がピンの基端からピンの先端に向かうにつれて減少していてもよい。これにより、本体部材と蓋部材とが嵌合する際、ピンがボスのボス穴に挿入されるにつれて、ピンの外周面がボス穴の内周面と強固に当接する。したがって、本体部材と蓋部材との間の嵌合力を向上させることができる。
【0011】
[5]本発明は、別の側面として、ヒンジキャップ付きケースの製造方法に関する。この製造方法は、(A)上記[1]~[4]の何れかのヒンジキャップ付きケースに対応する金型を準備する工程と、(B)樹脂材料と、超臨界状態の二酸化炭素又は窒素のいずれか一方とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程と、(C)溶融樹脂組成物をヒンジキャップ付きケースに対応する金型のキャビティ内に射出する工程と、(D)工程(C)の後、キャビティを保圧するとともに冷却する工程と、(E)成形物を金型から回収する工程と、を含む。この製造方法においては、工程(B)では、溶融樹脂組成物における樹脂材料の質量を100質量部としたとき、超臨界状態の二酸化炭素又は窒素のいずれか一方の量が0.5質量部以上3質量部以下となるように溶融樹脂組成物を調整する。
【0012】
この製造方法では、工程(B)において、超臨界状態の二酸化炭素又は窒素のいずれか一方が樹脂材料に添加されている。これにより、溶融樹脂組成物の粘度が低下する。よって、溶融樹脂組成物が金型のキャビティ内部に流れ込みやすくなる。したがって、溶融樹脂組成物がキャビティ内の流動末端にまで至らない現象(ショートショット)の発生を抑制しつつ、薄板状の本体部材と蓋部材を製造することができる。また、この製造方法では、工程(D)においてキャビティを保圧すると共に冷却する際、底板又は天板よりボス及びピンの壁のほうが厚いことから、底板又は天板からボス及びピンにかけて保圧力の低下が生じやすい。これにより、ボス及びピンでは超臨界流体である二酸化炭素等が発泡し、ボス及びピンの少なくとも一方の内部に独立気泡を形成することができる。したがって、ボス及びピンの少なくとも一方に柔軟性を付与することができ、本体部材と蓋部材との間の嵌合力を損ねることがない。以上より、この製造方法によれば、使用する樹脂の量を低減させると共に、本体部材と蓋部材との間の嵌合力を損ねることがないヒンジキャップ付きケースを製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒンジキャップ付きケースの製造に使用する樹脂の量を低減させると共に、ヒンジキャップ付きケースの嵌合力を損ねることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係るヒンジキャップ付きケースを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すヒンジキャップ付きケースが備える本体部材の斜視図である。
図3図3は、図1に示すヒンジキャップ付きケースが備える蓋部材の斜視図である。
図4図4は、図3に示す蓋部材のピンが有する土台部の変形例を示す斜視図である。
図5図5は、ボスにピンを嵌合する嵌合方法を順に示す断面図であり、(a)は、嵌合する前の状態を示し、(b)は、嵌合した後の状態を示す。
図6図6は、ピンがその一部に凸部を有している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るヒンジキャップ付きケースについて図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1の構成を示している。ヒンジキャップ付きケース1は、図1に示すように、本体部材2と、本体部材2を覆う蓋部材3と、ヒンジキャップ4とを備えている。ヒンジキャップ付きケース1は、本体部材2と蓋部材3とが互いに嵌合することで形成された略矩形形状のケースである。ヒンジキャップ付きケース1は、側面の一部に開口部5を有しており、開口部5から収納物を取り出すことができる。開口部5は、本体部材2の第1側壁21及び蓋部材3の第2側壁31にまたがって形成されている(図2及び図3を参照)。本体部材2には、薄肉で折り曲げ可能なヒンジ(不図示)を介してヒンジキャップ4が一体成形されており、ヒンジキャップ4により開口部5を開閉することができる。
【0017】
ヒンジキャップ付きケース1の大きさとしては、矩形の長辺方向の長さが12cm以下、かつ、短辺方向の長さが7cm以下である。長辺方向の長さは11cm以下であってもよく、10cm以下であってもよい。短辺方向の長さは6cm以下であってもよく、5cm以下であってもよい。下限としては、長辺方向の長さは6cm以上であってもよく、7cm以上であってもよく、8cm以上であってもよい。短辺方向の長さは3cm以上であってもよく、4cm以上であってもよく、5cm以上であってもよい。
【0018】
図2は、ヒンジキャップ付きケース1が備える本体部材2の斜視図である。本体部材2は、図2に示されるように、底板20と、底板20の周縁から上方に延在する第1側壁21と、底板20の内面に形成された複数のボス22(第1嵌合構造)と、を有する樹脂製の部材である。本体部材2は、蓋部材3と嵌合されることで、ヒンジキャップ付きケース1の下部を形成すると共に、ヒンジキャップ付きケース1の内部の収納物を保持する。
【0019】
図3は、ヒンジキャップ付きケース1が備える蓋部材3の斜視図である。蓋部材3は、図3に示されるように、天板30と、天板30の周縁から上方に延在する第2側壁31と、天板30の内面に形成された複数のピン32(第2嵌合構造)と、を有する樹脂製の部材である。蓋部材3は、本体部材2と嵌合されることで、ヒンジキャップ付きケース1の上部を形成すると共に、ヒンジキャップ付きケース1の内部の収納物を保持する。
【0020】
ヒンジキャップ4は、図1及び図2に示されるように、本体部材2の第1側壁21に設けられた、中空構造を有する略半円柱形状の部材である。ヒンジキャップ4の側面には、一対の突起4a(一方は不図示)が設けられている。一対の突起4aは、第2側壁31に設けられた一対の突起31dと係合する。一対の突起4aが一対の突起31dと係合することで、ヒンジキャップ4が開口部5を閉じた状態を維持することができる。一方、一対の突起4aと一対の突起31dとの係合状態を解除することで、開口部5を開くことができる。
【0021】
次に、本体部材2をより詳細に説明する。図2に示すように、底板20は、本体部材2の底部を形成している板部材である。底板20は、上方から視た場合において、4つの角部を有すると共に、上述したように長辺方向が12cm以下で且つ短辺方向が7cm以下の略矩形形状を呈している。ここで略矩形形状とは、4つの角部のそれぞれの形状が、直角形状、又は、角R形状であることを含むものとする。本実施形態では、底板20の4つの角部は角R形状を呈している。
【0022】
底板20の内面には、底板20の上方から視た場合において、底板20の長辺方向に延びた長方形形状を呈している薄肉凹部20a,20b,20cが形成されている。薄肉凹部20a,20bは、底板20の一対の長辺に沿ってそれぞれ形成されている。薄肉凹部20cは、薄肉凹部20aと薄肉凹部20bとの間に形成されている。薄肉凹部20cでは、底板20の上方から視た場合において、薄肉凹部20cの長辺方向の長さは薄肉凹部20a,20bの長辺方向の長さより短く、薄肉凹部20cの短辺方向の幅は薄肉凹部20a,20bの短辺方向の幅より狭くなっている。薄肉凹部20a~20cは、薄肉凹部20a~20cが形成されていない底板20の部分よりも厚みが薄くなるように構成されている。薄肉凹部20a~20cの厚みは、例えば0.40mm以下であり、一例として0.35mmである。底板20における薄肉凹部20a~20c以外の部分の厚みは、例えば0.70mm以下であり、一例として0.5mmである。薄肉凹部20a~20cは、後述する射出成形においてヒケや反りの発生を抑制するためのものである。
【0023】
底板20の上方から視た場合、薄肉凹部20a~20cのそれぞれに相当する長方形の面積の合計は、底板20に相当する略矩形の面積(薄肉凹部の部分と薄肉凹部ではない部分との合計面積)を100%として、10%~80%であってもよく、15%~70%であってもよく、20%~60%であってもよい。
【0024】
第1側壁21は、本体部材2の側部を形成している板部材である。第1側壁21は、底板20の周縁に沿って、蓋部材3に向かって(上方に)延びるように形成されている。第1側壁21の一部は、本体部材2の内側へ凹んだ凹部21aとなっており、凹部21aの底の一部には開口部21bが形成されている。開口部21bと後述する蓋部材3の第2側壁31の開口部31bとが合わさって、開口部5を形成する。第1側壁21の上方の端部には、上方に向かって段が上あがるような段上げ部21cが設けられている。段上げ部21cは、本体部材2と蓋部材3とが互いに嵌合する際に、後述する蓋部材3の第2側壁31の段下げ部31cと当接して本体部材2と蓋部材3とを密閉する役割を果たす。
【0025】
ボス22のそれぞれは、底板20の内面から上方に向かって突出する円筒形状の嵌合構造である。ボス22では、円筒形状の壁に囲まれた部分がボス穴(内孔)となっている。ボス22は、ボス穴に後述するピン32を挿入することで、ピン32と嵌合する。ボス穴の深さはボス22の高さに一致している。複数のボス22は、本実施形態では、例えば、7つのボス(ボス22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g)から構成されている。7つのボス22a~22gのうち、4つのボス22a,22b,22d,22eは、底板20の内面の4つ角部の近くにそれぞれ形成されている。他の2つのボス22c,22fは、底板20の内面の長辺に沿った部分であって、開口部21b側に寄った2箇所に形成されている。残り1つのボス22gは、底板20の内面の中央付近であって、上方から視た場合に薄肉凹部20cと重なるように形成されている。ボス22a~22gは、後述するピン32a,32b,32c,32d,32e,32f,32gとそれぞれ嵌合する。
【0026】
なお、ボス22は、底板20の内面から上方に延在する第1土台部と、第1土台部の先端から上方に延在する第1先端部とから構成されてもよい。この場合において、第1土台部の外径は、第1先端部の外径よりも大きくてよい。本体部材2が複数のボス22を有する場合、一部のボス22のみが第1土台部と第1先端部とから構成されていてもよい。
【0027】
天板30は、図3に示されるように、蓋部材3の上部を形成している板部材である。天板30は、下方から視た場合において、4つの角部を有すると共に、上述したように長辺方向が12cm以下で且つ短辺方向が7cm以下の略矩形形状を呈している。ここで略矩形形状とは、底板20と同様に、4つの角部のそれぞれの形状が、直角形状、又は、角R形状であることを含むものとする。本実施形態では、天板30の4つの角部は角R形状を呈している。
【0028】
天板30の内面には、天板30の上方から視た場合(蓋部材3を本体部材2に取り付け場合においては天板30の下方から視た場合に相当)に、天板30の長辺方向に延びた長方形形状を呈している薄肉凹部30a,30b,30cが形成されている。薄肉凹部30a,30bは、天板30の一対の長辺に沿ってそれぞれ形成されている。薄肉凹部30cは、薄肉凹部30aと薄肉凹部30bとの間に形成されている。薄肉凹部30cでは、天板30の上方から視た場合において、薄肉凹部30cの長辺方向の長さは薄肉凹部30a,30bの長辺方向の長さより短く、薄肉凹部30cの短辺方向の幅は薄肉凹部30a,30bの短辺方向の幅より狭くなっている。薄肉凹部30a~30cは、薄肉凹部30a~30cが形成されていない天板30の部分よりも厚みが薄くなるように構成されている。薄肉凹部30a~30cの厚みは、例えば0.40mm以下であり、一例として0.35mmである。天板30における薄肉凹部30a~30c以外の部分の厚みは、例えば0.70mm以下であり、一例として0.5mmである。薄肉凹部30a~30cは、薄肉凹部20a等と同様に、後述する射出成形においてヒケや反りの発生を抑制するためのものである。
【0029】
天板30の上方から視た場合、薄肉凹部30a~30cのそれぞれに相当する長方形の面積の合計は、天板30に相当する略矩形の面積(薄肉凹部の部分と薄肉凹部ではない部分との合計面積)を100%として、10%~80%であってもよく、15%~70%であってもよく、20%~60%であってもよい。
【0030】
第2側壁31は、蓋部材3の側部を形成している板部材である。第2側壁31は、天板30の周縁に沿って、本体部材2に向かって延びるように形成されている。第2側壁31の一部は、蓋部材3の内側に凹んだ凹部31aとなっており、凹部31aの底の一部には開口部31bが形成されている。開口部31bと本体部材2の第1側壁21の開口部21bとが合わさって、開口部5を形成する。第2側壁31の上方の端部には、下方に向かって段が下がるような段下げ部31cが設けられている。段下げ部31cは、本体部材2と蓋部材3とが互いに嵌合する際に、本体部材2の第1側壁21の段上げ部21cと当接して本体部材2と蓋部材3とを密閉する役割を果たす。第2側壁31の凹部31aに面した断面には、一対の突起31dが形成されている。一対の突起31dは、ヒンジキャップ4の一対の突起4aと係合する。
【0031】
ピン32のそれぞれは、天板30の内面から上方に突出する円筒形状の嵌合構造である。ピン32では、円筒形状の壁に囲まれた部分が円柱状の空間となっており、その深さはピン32の高さに一致している。ピン32は、ボス22のボス穴に挿入されることで、ボス22と嵌合する。ピン32は、7つのピン(ピン32a,32b,32c,32d,32e,32f,32g)から構成されている。7つのピン32a~32gのうち、4つのピン32a,32b,32d,32eは、天板30の内面の4つ角部の近くにそれぞれ形成されている。他の2つのピン32c,32fは、天板30の内面の長辺に沿った部分であって、開口部31b側に寄った2箇所に形成されている。残り1つのピン32gは、天板30の内面の中央付近であって、上方から視た場合に薄肉凹部30cと重なるように形成されている。ピン32a~32gは、ボス22a~22gとそれぞれ嵌合する。
【0032】
ピン32gは、他のピンとは異なり、天板30の内面から上方に延在する土台部321gと、土台部321gの先端から上方に延在する先端部322gとから構成されていてもよい。ピン32gの内部に、先端部322gと土台部321gとを貫くようにして円筒状の空間が形成されており、その深さはピン32gの高さに一致している。ピン32gでは、土台部321gの外径は先端部322gの外径より大きくなっている。これにより、ピン32gの先端部322gの厚さが薄い場合でも、ピン32gの強度を確保することができる。他のピンは、土台部321gを有しておらず、先端部322gに相当する太さの円筒が突設されてなるものである。
【0033】
なお、ピン32gの土台部の形状は、図3に示すような土台部321gの形状(円筒形状)以外であってもよく、例えば図4に示す土台部323gの形状であってもよい。図4は、図3に示す蓋部材3のピン32gが有する土台部321gの変形例(土台部323g)を示す斜視図である。土台部323gは、図4に示すように、円筒324gと円筒324gの外周に沿って4箇所に設けられた略直方体形状の壁325gとから構成されている。4箇所のうち2箇所の壁325gは、上方から視た場合、円筒324gを挟みこむように天板30の長辺方向に沿って2箇所に設けられている。他の2箇所の壁325gは、上方から視た場合、円筒324gを挟みこむように天板30の短辺方向に沿って2箇所に設けられている。
【0034】
なお、ピン32a~32fは、ピン32gと同様に、天板30の内面から上方に延在する第2土台部と、第2土台部の先端から上方に延在する第2先端部とから構成されてもよい。この場合、第2土台部の外径は、第2先端部の外径よりも大きくてよい。
【0035】
次に各部の厚みについて、図5を用いて説明する。底板20の薄肉凹部でない部分の厚みT1(以下、「底板20の厚みT1」という。)、及び、天板30の薄肉凹部でない部分の厚みT2(以下、「天板30の厚みT2」という。)は0.70mm以下である。底板20の厚みT1及び天板30の厚みT2は、0.65mm以下であってもよく、0.60mm以下であってもよく、0.55mm以下であってもよく、0.50mm以下であってもよく、0.45mm以下であってもよく、0.40mm以下であってもよく、0.35mm以下であってもよい。
【0036】
底板20の薄肉凹部20a,20b,20cの厚みT3(以下、「底板20の薄肉凹部の厚みT3」という。)、及び、天板30の薄肉凹部30a,30b,30cの厚みT4(以下、「天板30の薄肉凹部の厚みT4」という。)は、0.40mm以下であってもよく、0.35mm以下であってもよく、0.30mm以下であってもよく、0.25mm以下であってもよい。底板20の薄肉凹部の厚みT3は、底板20の厚みT1の80%以下であってもよく、75%以下であってもよく、70%以下であってもよい。天板30の薄肉凹部の厚みT4は、天板30の厚みT2の80%以下であってもよく、75%以下であってもよく、70%以下であってもよい。
【0037】
第1側壁21の厚みは、段上げ部21cが形成されている部分を除き、底板20の厚みT1と同一であってよい。あるいは、第1側壁21の厚みは、段上げ部21cが形成されることを考慮して、底板20の厚みT1の110%~180%であってもよく、130%~150%であってもよい。第2側壁31の厚みは、天板30の厚みT2と同一であってよい。あるいは、第2側壁31の厚みは、段下げ部31cが形成されることを考慮して、天板30の厚みT2の110%~180%であってもよく、130%~150%であってもよい。
【0038】
ボス22a~22gにおいて、円筒状の壁の厚みT5(以下、「ボスの厚みT5」という。)は、0.60mm~1.00mmであってもよく、0.60mm~0.90mmであってもよく、0.80mm~0.90mmであってもよく、0.60mm~0.80mmであってもよい。
【0039】
ピン32g以外のピン32a~32fにおいて、円筒状の壁の厚みT6(以下、「ピンの厚みT6」という。)は、0.60mm~1.00mmであってもよく、0.60mm~0.90mmであってもよく、0.80mm~0.90mmであってもよく、0.60mm~0.80mmであってもよい。ピン32gの先端部322gの厚みは、ピンの厚みT6と同一であってもよい。ピン32gの土台部321gの厚みT7(以下、「ピンの土台部の厚みT7」という。)は、0.60mm~1.40mmであってもよい。
【0040】
次に各部の厚みの関係について説明する。底板20の厚みとボス22の厚みとの関係について、底板20の厚みT1又は底板20の薄肉凹部の厚みT3に対するボスの厚みT5の比率は、1.7以上4.0以下である。天板30の厚みとピン32の厚みとの関係について、天板30の厚みT2又は天板30の薄肉凹部の厚みT4に対するピンの厚みT6の比率は1.7以上4.0以下、あるいは、天板30の厚みT2又は薄肉凹部の厚みT4に対するピンの土台部の厚みT7の比率は1.7以上4.0以下である。これら比率を満たすように、底板20の厚みT1、天板30の厚みT2、底板20の薄肉凹部の厚みT3、天板30の薄肉凹部の厚みT4、ボスの厚みT5、ピンの厚みT6及びピンの土台部の厚みT7は、上述のそれぞれの厚みの範囲から選択される。これにより、ヒンジキャップ付きケース1では、ボス22の嵌合構造における壁(周壁)が底板20の少なくとも一部に対して厚く、ピン32の嵌合構造における壁が天板30の少なくとも一部に対して厚い構成となっている。
【0041】
このようなボス22又はピン32の内部には、後述する超臨界流体成形を用いた製造方法により、複数の独立気泡(独立気泡群とも称す)が形成されている。独立気泡が内部に形成されたボス22又はピン32は、曲げ弾性率が小さくなることで柔軟性を有する。独立気泡とは、個々に独立して存在する気泡をいい、隣接する気泡と繋がっていない限りにおいては隣接する気泡と接している気泡も含むものである。ボス22及びピン32に形成される独立気泡のそれぞれは、各気泡の重心を通る最も長い辺を気泡長さとした場合に、10μm以上3000μm以下の気泡長さを有している。そして、複数の独立気泡の単位体積当たりの気泡数は、0.3個/mm以上8.5個/mm以下であってもよい。
【0042】
また、独立気泡が形成されるボス22又はピン32の円筒状の壁の厚みが十分に薄くて光を透過可能な場合は、単位面積当たりの気泡数で規定することもできる。この場合、ボス22又はピン32における複数の独立気泡の単位面積当たりの気泡数は、0.1個/mm以上2.5個/mm以下であってもよい。一方、光を透過しない材料から形成される場合、ボス22又はピン32を切断して切断面に存在する単位面積当たりの気泡数を数えてもよい。この場合、ボス22又はピン32における複数の独立気泡の単位面積当たりの気泡数は、上記同様、0.1個/mm以上2.5個/mm以下であってもよい。上述した気泡数の算出は、光学顕微鏡により測定されてもよく、また、得られた画像から直接算出してもよいし、得られた画像に二値化などの所定の画像処理などを施して算出してもよい。光学顕微鏡により観察を行う際は、ボス22又はピン32が突出する方向に沿った断面画像を取得することが好ましいが、ボス22又はピン32が突出する方向に垂直な方向の断面画像でもよい。また、光学顕微鏡により観察を行う際は、観察可能な程度にボス22又はピン32を薄く切断することが好ましい。
【0043】
図5を用いて、ボス22とピン32の嵌合方法を説明する。ここでは、ボス22g及びピン32gの嵌合方法を説明するが、他のボス及び他のピンの嵌合方法も同様である。まず、図5の(a)に示すようなボス22gとピン32gとが離れた状態から、ボス22gとピン32gとを互いに近づけることで、ピン32gがボス穴224gに挿入される。ピン32gをボス穴224gの奥へさらに挿入することで、図5の(b)に示すように、ピン32gの外周面326gとボス穴224gの内周面225gとが当接し合う。この際、ボス22g又はピン32gが柔軟性を有していることから、ボス22g及びピン32gの少なくとも一部が凹むように曲がる。このように曲がったボス22g又はピン32gには復元力が働くので、挿入された後にボス22g及びピン32gが強固に当接し合う。これにより、ボス22gとピン32gとが強く嵌合される。ここで、ピン32の基端における外径は、ボス22の先端における内径より大きくてもよく、ピン32の外径がピン32の基端からピン32の先端に向かうにつれて減少していてもよい。これにより、ピン32がボス22のボス穴に挿入されるにつれて、ピン32の外面がボス穴の内面と強固に当接する。したがって、本体部材2と蓋部材3との間の嵌合力を向上させることができる。
【0044】
なお、上述したようにボス22が第1土台部及び第1先端部から構成されている場合は、少なくとも第1先端部に独立気泡が形成されていれば、ボス22とピン32とが強く嵌合される。この際、第1土台部に独立気泡が形成されてもよい。同様に、ピン32が第2土台部及び第2先端部から構成されている場合は、少なくとも第2先端部に独立気泡が形成されていれば、ボス22とピン32とが強く嵌合される。この際、第2土台部に独立気泡が形成されていてもよい。
【0045】
次に各部の材料について説明する。本体部材2及び蓋部材3を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、特に、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましい。ヒンジキャップ付きケース1を射出成形により形成する場合、熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、好ましくは15g/10分以上であり、より好ましくは20~40g/10分であり、更に好ましくは25~36g/10分である。この値が15g/10分以上であることで、射出成形においてショートショットの発生を抑制しやすい傾向にあり、他方、40g/10分以下であることで、落下耐性に優れる成形物を製造できる傾向にある。なお、ここでいうメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1:2014に記載の方法に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定された値を意味する。
【0046】
次にヒンジキャップ付きケース1の製造方法を説明する。本実施形態に係る製造方法は以下の工程を含む。
(A)ヒンジキャップ付きケース1に対応する金型を準備する工程。
(B)樹脂材料と、超臨界状態の二酸化炭素又は窒素のいずれか一方とを含む溶融樹脂組成物を調製する工程。
(C)溶融樹脂組成物をヒンジキャップ付きケース1に対応する金型のキャビティ内に射出する工程。
(D)工程(C)の後に、キャビティを保圧するとともに冷却する工程。
(E)成形物を金型から回収する工程。
【0047】
工程(B)から工程(E)の一連の工程は、例えば、MuCell射出成形機(「MuCell」はTrexel.Co.Ltdの登録商標)を使用して実施できる(例えば、特許第6085729号や特許第6430684号を参照)。
【0048】
[工程(A)]
はじめに、ヒンジキャップ付きケース1の形状に対応する金型を用意する。具体的には、ヒンジキャップ4が一体成形された本体部材2と、蓋部材3とのそれぞれの形状に対応する金型を用意する。金型は、本体部材2又は蓋部材3の形状に基づいて、金型の材料である鋼材を加工処理することにより用意する。
【0049】
[工程(B)]
続いて、樹脂材料と、超臨界流体とを含む溶融樹脂組成物を調製する。樹脂材料としては、上で挙げた熱可塑性樹脂を用いることができる。樹脂材料100質量部に対して0.5~3質量部の超臨界状態の二酸化炭素又は窒素のいずれか一方を、熱可塑性樹脂等に添加する。樹脂材料100質量部に対して2~3質量部の超臨界状態の窒素を、熱可塑性樹脂等に添加してもよい。添加した二酸化炭素又は窒素の量が0.5質量部以上であることで、成形ショット毎の充填圧のばらつきを小さくできるとともに、二酸化炭素又は窒素の添加による溶融樹脂組成物の粘度低下により、ショートショットの発生を抑制することができる。これに加え、超臨界状態の二酸化炭素又は窒素に起因する発泡を促すことで成形物の内部に空隙を形成することができる。他方、添加した二酸化炭素又は窒素の量が3質量部以下であることで、工程(D)における保圧圧力を比較的低く設定することができ、後膨れを抑制できる傾向にある。
【0050】
溶融樹脂組成物の温度(スクリューシリンダ温度)は、樹脂材料の融点又はMFRに応じて設定すればよい。ポリプロピレン樹脂を使用する場合、この温度は210~230℃程度であることが好ましい。ポリエチレン樹脂を使用する場合、この温度は220~240℃程度であることが好ましい。この温度が下限値以上であることで、キャビティ内において樹脂が流動しやすく、他方、上限値以下であることで、樹脂の焦げ付きを抑制できる傾向にある。
【0051】
溶融樹脂組成物は、樹脂材料及び超臨界流体以外の成分を含んでもよい。すなわち、溶融樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、フィラー、着色剤、スリップ剤、帯電防止剤などを更に含んでもよい。
【0052】
[工程(C)]
工程(B)で調製した溶融樹脂組成物を、工程(A)で用意した金型のゲートを通じてキャビティ内に射出する。射出速度は、好ましくは60mm/秒以上であり、より好ましくは200mm/秒以上であり、更に好ましくは250mm/秒以上である。射出速度が60mm/秒以上であることで、流動末端まで樹脂を到達させやすく、ショートショットの発生を抑制できる傾向にある。射出速度の上限値は、例えば、350mm/秒である。
【0053】
キャビティのゲートから、最も遠い流動末端までの距離(以下、「最大流動長」という。)が60mm以上であっても、流動末端にまで溶融樹脂組成物が至ることが好ましい。最大流動長は、例えば、70mm以上又は80mm以上であってもよい。最大流動長の上限値は、例えば、120mmである。ショートショットの発生を抑制する観点から、成形する底板20の薄肉凹部の厚みT3に対する最大流動長Lの比率は、100以上300以下であることが好ましい。同様に、成形する天板30の薄肉凹部の厚みT4に対する最大流動長Lの比率は、100以上300以下であることが好ましい。
【0054】
[工程(D)]
上記工程(C)後、キャビティを15~80MPaの圧力条件で保圧するとともに、冷却する。この圧力が15MPa以上であることで、ショートショットの発生を抑制することができ、他方、80MPa以下であることで、後膨れの発生を抑制することができる傾向にある。この値は、好ましくは15~50MPaであり、より好ましくは15~30MPaである。保圧時間は、例えば0.1~1.0秒とすればよい。
【0055】
保圧の際には、成形する底板20に対して成形するボス22の壁が厚いことから、底板20からボス22にかけて保圧力の低下が生じやすい。同様に、成形する天板30に対して成形するピン32の壁が厚いことから、天板30からピン32にかけて保圧力の低下が生じやすい。これにより、成形するボス22及びピン32では超臨界流体である二酸化炭素等が発泡し、ボス22及びピン32の少なくとも一方の内部に、上述したように、独立気泡を容易に形成することができる。
【0056】
薄肉の部分を作製する観点から、キャビティ内の圧力を低下させるための「コアバック」と称される工程を実施しないことが好ましい。コアバックは、キャビティに充填された溶融樹脂組成物が固化し終わる前に、金型の可動部を移動させてキャビティの容積を拡大させる工程である(特許6085729号公報参照)。
【0057】
[工程(E)]
金型内の成形物(底部材又は蓋部材)の温度が30~60℃程度に下がった時点で、成形物を金型から回収する。本実施形態においては、工程(D)で保圧を実施するとともに、上述のように「コアバック」を実施しないため、本実施形態の成形物には目視で確認できるような大きな空隙があまり形成されない。ただし、肉眼では目視できない程度の小さな空隙が存在しないわけではない。本実施形態の成形物は、空隙による軽量化よりも、薄肉化による軽量化を主に目指したものであると言うことができる。
【0058】
以上の製造方法によって製造した本体部材2と蓋部材3とを嵌合させることで、ヒンジキャップ付きケース1が得られる。より具体的には、蓋部材3のピン32a~32gを本体部材2のボス22a~22gに嵌合することで、蓋部材3を本体部材2に取り付ける。本実施形態の製造方法によれば、溶融樹脂組成物の流動性がよくショートショットの発生を抑制することができるので、薄形状の本体部材2と蓋部材3とを製造することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1によれば、本体部材2又は蓋部材3のなかでも広い面積を占める底板20又は天板30の厚みが0.70mm以下となっている。これにより、底板20又は天板30の厚みを薄くすることができる。したがって、ヒンジキャップ付きケース1を製造するために使用する樹脂の量を少なくすることができる。また、本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1によれば、嵌合構造であるボス22及びピン32の少なくとも一方の内部には、独立気泡が形成されている。独立気泡が内部に形成されたボス22又はピン32は、曲げ弾性率が小さくなることで柔軟性を有する。これにより、ボス22のボス穴に他のピン32が挿入される際、ボス22及びピン32が当接し合うことでボス22及びピン32の少なくとも一部が凹むように曲がる。曲がったボス22又はピン32には復元力が働くので、ボス22及びピン32が強固に当接し合う。したがって、本体部材2と蓋部材3との間の嵌合力が損なわれない。なお、ボス22及びピン32の両方の内部に独立気泡が形成されていることが好ましい。以上より、本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1によれば、使用する樹脂の量を低減させると共に、本体部材2と蓋部材3との間の嵌合力を損ねることがない。
【0060】
また、本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1では、底板20及び天板30の少なくとも一方の内面には、薄肉凹部20a~20c又は30a~30cが形成されている。薄肉凹部20a~20c又は30a~30cは、薄肉凹部20a~20c又は30a~30cが形成されている底板20又は天板30の内面において、薄肉凹部20a~20c又は30a~30cが形成されていない部分よりも厚みが薄くなるように構成されている。そして、薄肉凹部20a~20c又は30a~30cの厚みが0.40mm以下である。これにより、薄肉凹部20a~20c又は30a~30cが形成された底板20又は天板30の容積は、薄肉凹部20a~20c又は30a~30cが形成された分だけ減少する。したがって、使用する樹脂の量をより低減させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1では、ボス22(第1嵌合構造)は、底板20の内面から上方に延在する第1土台部と、第1土台部の先端から上方に延在する第1先端部とから構成されてもよく、第1土台部の外径は、第1先端部の外径よりも大きくてもよい。本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1では、ピン32(第2嵌合構造)は、天板30の内面から下方に延在する第2土台部と、第2土台部の先端から下方に延在する第2先端部とから構成されてもよく、第2土台部の外径は、第2先端部の外径よりも大きくてもよい。これにより、ボス22及びピン32の先端部の厚さが薄い場合でも、ボス22及びピン32の強度が確保される。したがって、ボス22及びピン32の耐久性を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1では、ピン32の基端における外径は、ボス22の先端における内径より大きくてもよく、ピン32の外径がピン32の基端からピン32の先端に向かうにつれて減少していてもよい。これにより、本体部材2と蓋部材3とが嵌合する際、ピン32がボス22のボス穴に挿入されるにつれて、ピン32の外面がボス穴の内面と強固に当接する。したがって、本体部材2と蓋部材3との間の嵌合力を向上させることができる。
【0063】
本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1の製造方法では、工程(B)において、超臨界状態の二酸化炭素又は窒素のいずれか一方が樹脂材料に添加されている。これにより、溶融樹脂組成物の粘度が低下する。よって、溶融樹脂組成物が金型のキャビティ内部に流れ込みやすくなる。したがって、溶融樹脂組成物がキャビティ内の流動末端にまで至らない現象(ショートショット)の発生を抑制しつつ、薄板状の本体部材と蓋部材を製造することができる。また、本実施形態に係るヒンジキャップ付きケース1の製造方法では、工程(D)においてキャビティを保圧すると共に冷却する際、底板20又は天板30よりボス22及びピン32の壁のほうが厚いことから、底板20又は天板30からボス22及びピン32にかけて保圧力の低下が生じやすい。これにより、ボス22及びピン32では超臨界流体である二酸化炭素等が発泡し、ボス22及びピン32の少なくとも一方の内部に独立気泡を形成することができる。したがって、ボス22及びピン32の少なくとも一方に柔軟性を付与することができ、本体部材2と蓋部材3との間の嵌合力を損ねることがない。以上より、この製造方法によれば、使用する樹脂の量を低減させると共に、本体部材2と蓋部材3との間の嵌合力を損ねることがないヒンジキャップ付きケース1を製造することができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明に係るヒンジキャップ付きケース、及び、ヒンジキャップ付きケースの製造方法は、上記の実施形態に限られず、様々な変形を適用することができる。例えば、図6に示すように、ピン32の形状は、図3及び図5に示すピン32の形状以外であってもよい。図6は、ピン32aがその一部に凸部を有している状態を示す断面図である。ピン32aは、図6に示すように、円筒の一部が他の部分より厚くなるように当該一部に凸部321aを有していてもよい。これにより、ピン32aはボス22aとより強固に当接することから、本体部材2と蓋部材3との間の嵌合力をより高めることができる。なお、ピン32a以外のピン32が同様に凸部を有していてもよい。
【0065】
また、底板20と天板30とには、長方形形状の薄肉凹部がそれぞれ3本形成されていたが、薄肉凹部形状は長方形以外の形状としてもよく、数は3本でなくてもよい。底板20と天板30とにヒケや反りが発生しにくい場合には、薄肉凹部を設けない態様としてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、本体部材2に複数のボス22が設けられ、蓋部材3に複数のピン32が設けられていたが、本体部材2の底板20に複数のピン32を設け、蓋部材3の天板30に複数のボス22を設ける構成であってもよい。
【0067】
また、底板20と天板30とは目視で確認できない大きさの気泡を含んでいてもよい。これにより、薄型の成形体で発生しやすい反りの発生を抑制しやすくなる。
【0068】
また、上記の実施形態では、ヒンジキャップ4が本体部材2に設けられていたが、ヒンジキャップ4を蓋部材3に設ける構成であってもよい。この場合、ヒンジキャップ4の一対の突起4aが係合する一対の突起31dを本体部材2の凹部21aに設ける。
【符号の説明】
【0069】
1…ヒンジキャップ付きケース、2…本体部材、3…蓋部材、4…ヒンジキャップ、4a…突起、5…開口部、20…底板、20a,20b,20c…薄肉凹部、21…第1側壁、21a…凹部、21b…開口部、21c…段上げ部、22,22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g…ボス、30…天板、30a,30b,30c…薄肉凹部、31…第2側壁、31a…凹部、31b…開口部、31c…段下げ部、31d…突起、32,32a,32b,32c,32d,32e,32f,32g…ピン、224g…ボス穴、225g…内周面、321a…凸部、321g,323g…土台部、322g…先端部、324g…円筒、325g…壁、326g…外周面、T1…底板20の厚み、T2…天板30の厚み、T3…底板20の薄肉凹部の厚み、T4…天板30の薄肉凹部の厚み、T5…ボスの厚み、T6…ピンの厚み、T7…ピンの土台部の厚み。
図1
図2
図3
図4
図5
図6