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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030145
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】在庫管理発注システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/40 20180101AFI20240229BHJP
   G06Q 30/0601 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
G16H40/40
G06Q30/06 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132741
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】507220361
【氏名又は名称】株式会社オプテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 茂之
(72)【発明者】
【氏名】若松 聡志
(72)【発明者】
【氏名】細川 仁志
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049BB63
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】医療機関で必要とされる医療材料の在庫を管理し、医療材料の発注量を適正化することが可能な在庫管理発注システムを提供する。
【解決手段】在庫管理発注システム3は、医療機関で使用される医療材料の種類及び量を予測することで、医療機関で管理される医療材料の在庫を予測する材料予測部10と、医療機関で払い出される医療材料の種類及び量を統計的に予測する払出部11と、医療機関で予約される処置で払い出される医療材料を予約する払出予約部12と、払い出しが予約された医療材料が使用されることで、予約された処置が行われる時に医療機関の在庫にある医療材料の量が不足すると判定した場合に、予約された処置が行われるまでに医療機関に医療材料が入荷するように、不足すると判定された医療材料を補う量の医療材料を発注する発注部13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関で使用される医療材料の種類及び量を予測することで、前記医療機関で管理される前記医療材料の在庫を予測する材料予測部と、
前記材料予測部により予測された前記医療材料の種類及び量に基づいて、前記医療機関で払い出される前記医療材料の種類及び量を予測する払出部と、
前記材料予測部により予測された前記医療材料の種類及び量に基づいて、前記医療機関で予約される処置で払い出される前記医療材料を予約する払出予約部と、
払い出しが予約された前記医療材料が使用されることで、予約された処置が行われる時に前記医療機関の在庫にある前記医療材料の量が不足すると判定した場合に、予約された処置が行われるまでに前記医療機関に前記医療材料が入荷するように、不足すると判定された前記医療材料を補う量の前記医療材料を発注する発注部と、を備える
在庫管理発注システム。
【請求項2】
前記払出部は、前記医療機関で払い出される前記医療材料の予測量と、前記医療機関で払い出された前記医療材料の実使用量とが異なる場合に、前記医療材料の実使用量に合わせて前記医療材料の予測量を訂正する
請求項1に記載の在庫管理発注システム。
【請求項3】
前記医療材料の在庫である前記医療材料の種類及び量を前記医療機関ごとに管理するデータベースを備え、
前記払出部は、前記医療材料の使用量の累積値が、前記医療材料の払出単位量と同じ又は超えたと判定した場合に、前記医療材料が払い出し済みになったことを前記データベースに記録する
請求項2に記載の在庫管理発注システム。
【請求項4】
前記払出予約部は、前記医療機関から取得する処置の予約情報と、処置を受ける患者の患者情報とに基づいて、前記医療材料を予約する
請求項3に記載の在庫管理発注システム。
【請求項5】
前記発注部は、前記医療機関で管理される前記医療材料の在庫を所定期間ごとに集計し、前記医療材料の在庫が不足することを判定した場合に、前記払出予約部により予約された前記医療材料を発注する
請求項4に記載の在庫管理発注システム。
【請求項6】
前記払出部は、前記医療機関で行われる処置に対して前記患者ごとに作成されるカルテの情報を管理するカルテシステムから取得した前記処置の実施内容に基づいて、前記医療材料の種類及び量を予測し、
前記払出予約部は、前記カルテシステムから取得した、前記処置の予約内容に基づいて前記医療材料を予約する
請求項5に記載の在庫管理発注システム。
【請求項7】
前記払出部は、前記医療機関で使用される前記医療材料の在庫情報を管理する在庫管理システムから取得した前記在庫情報の変化に基づいて、前記医療材料の種類及び量を予測し、
前記払出予約部は、前記在庫管理システムから取得した前記在庫情報の変化に基づいて、前記医療材料を予約する
請求項5に記載の在庫管理発注システム。
【請求項8】
前記医療材料の在庫量を予測する材料予測モデルが定義されるモデル定義部と、
前記医療機関の在庫である前記医療材料の種類及び量と、過去に前記医療機関で実施された医療ごとに使用された前記医療材料の種類及び量とを学習データとして、前記モデル定義部から読み出した前記材料予測モデルに学習させ、学習済みの前記材料予測モデルを前記モデル定義部に保存する学習部と、
前記払出部又は前記払出予約部の処理に応じて前記モデル定義部から学習済みの前記材料予測モデルを読み出し、学習済みの前記材料予測モデルを用いて予測した前記医療材料の在庫量を前記払出部又は前記払出予約部に出力する予測部と、を備える
請求項1~7のいずれか一項に記載の在庫管理発注システム。
【請求項9】
前記払出部は、実際に払い出された前記医療材料の払出日時、払出数量及び使用数量を学習した前記学習済みの材料予測モデルにより、前記医療材料ごとに前記医療機関で払い出される医療材料の種類及び量を予測し、
前記払出予約部は、実際に使用された前記医療材料の使用数量を学習した前記学習済みの材料予測モデルにより、前記医療機関で予約される処置で払い出される前記医療材料を予約する
請求項8に記載の在庫管理発注システム。
【請求項10】
前記医療機関から取得する前記医療材料の種類及び量と、前記払出部が予測した前記医療機関で払い出される前記医療材料の種類及び量とを集計し、前記医療材料の想定使用量を、近似した実際の使用量で補正する集計部を備える
請求項8に記載の在庫管理発注システム。
【請求項11】
前記医療機関ごとに発注した前記医療材料の価格、又は前記医療材料の使用量を分析した分析結果を前記医療機関に提供する分析部を備える
請求項8に記載の在庫管理発注システム。
【請求項12】
医療機関で使用される医療材料の種類及び量を予測することで、前記医療機関で管理される前記医療材料の在庫を予測する手順と、
予測された前記医療材料の種類及び量に基づいて、前記医療機関で払い出される医療材料の種類及び量を統計的に予測する手順と、
予測された前記医療材料の種類及び量に基づいて、前記医療機関で予約される処置で払い出される前記医療材料を予約する手順と、
払い出しが予約された前記医療材料が使用されることで、予約された処置が行われる時に前記医療機関の在庫にある前記医療材料の量が不足すると判定した場合に、予約された処置が行われるまでに前記医療機関に前記医療材料が入荷するように、不足すると判定された前記医療材料を補う量の前記医療材料を発注する手順と、を
コンピューターに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫管理発注システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医院では、歯科商店へ歯科材料の発注を日々定期的に行っている。歯科医院で日常的に取り扱っている歯科材料(薬品、医療器具等を含む)は約150~200種類程度である。従来は、どの棚にどの歯科材料が収納されているかを医療従事者(歯科医師、歯科衛生士等の医療スタッフを含む)が目視で確認したり、歯科材料に付されたバーコードをバーコードリーダーで読み込ませたりして、歯科材料の在庫を管理していた。ただし、医療従事者は診療業務で多忙な中で、数多くある歯科材料の在庫状況を確認し、次回の処置で不足する歯科材料の発注作業を行わなければならない。歯科材料の発注には、発注ノートへの記入や、発注用紙のFAX等が用いられていた。医療従事者は、歯科材料の在庫確認、及び発注量等の確認を目視で行わなくてはならず、これらの作業が医療従事者の負担となっていた。
【0003】
歯科医院における作業を省力化するために、歯科材料の発注管理システムが提供されている。医療従事者は、発注管理システムを利用することで、歯科材料の在庫を把握したり、歯科材料の発注作業の手間を軽減したりすることが可能となると考えられていた。
【0004】
特許文献1には、歯科技工物を発注するユーザー端末装置と、歯科技工物の加工を受注する加工拠点端末装置と、サーバ装置とを備えた、歯科技工物のWEB受発注管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-021075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された受発注管理システムを用いても、発注担当者がミスしたり、発注作業に不慣れな医療従事者が発注作業を行ったりすると、余剰在庫の発生や処置に必要な歯科材料が欠品してしまうなどの在庫管理が適正に行われないという課題を解決できなかった。例えば、医療従事者が使用した歯科材料の払出処理を都度行うのは手間のかかる作業であった。ここで、歯科材料の払出とは、例えば、歯科医院の棚の在庫である歯科材料が開封され、使用可能な状態になったことをいう。新品の歯科材料が1ダースごとに箱に入っている場合、この箱が開封され、1つずつ歯科材料が取り出し可能になると、この箱が1つ払い出されたことになる。ただし、一度の処置で、払い出された歯科材料が全て使われるとは限らない。払い出された歯科材料は、他の処置でも使用されることがある。このため、本明細書では、払出と使用を異なる意味で用いる。
【0007】
従来の発注管理システムには、歯科医院で確認された歯科材料の在庫数が一定量を下回った場合に自動発注を行なう仕組みがあった。ただし、在庫数に対して比較される一定量は、熟練の発注担当者による経験や勘で決められていた。このため、発注担当者以外の医療従事者は、発注管理システムで発注された歯科材料の発注量が適切であるのか、一定量が適正なのか、発注自体が必要なのか、その発注量で充分なのかが分からなかった。このような課題は、歯科医院以外の医療サービスを提供する医療機関でも同様なので、各医療機関で使用される医療材料の発注量や発注タイミングを適正化することが求められていた。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、医療機関で払い出される医療材料の発注量と発注タイミングを適正化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る在庫管理発注システムは、医療機関で使用される医療材料の種類及び量を予測することで、医療機関で管理される医療材料の在庫を予測する材料予測部と、材料予測部により予測された医療材料の種類及び量に基づいて、医療機関で払い出される医療材料の種類及び量を予測する払出部と、材料予測部により予測された医療材料の種類及び量に基づいて、医療機関で予約される処置で払い出される医療材料を予約する払出予約部と、払い出しが予約された医療材料が使用されることで、予約された処置が行われる時に医療機関の在庫にある医療材料の量が不足すると判定した場合に、予約された処置が行われるまでに医療機関に医療材料が入荷するように、不足すると判定された医療材料を補う量の医療材料を発注する発注部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、医療機関で払い出される医療材料の発注量と発注タイミングが適正化される。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る受発注管理システムの全体構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るカルテシステムから在庫管理発注システムに送信される各情報の例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る各マスタの構成例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る履歴データの例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るリスト及び表の例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る材料予測部の学習処理と予測処理を行う機能ブロックの構成例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る学習データの一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る計算機のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図9】本発明の一実施形態に係る払出処理の例を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態に係る医療従事者が、予測された使用材料と使用量を確認する処理の例を示すフローチャートである。
図11】本発明の一実施形態に係る払出登録処理の例を示すフローチャートである。
図12】本発明の一実施形態に係る払出予約処理の例を示すフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係る発注処理の例を示すフローチャートである。
図14】本発明の一実施形態に係る発注登録処理の詳細な例を示すフローチャートである。
図15】本発明の一実施形態に係る入荷処理の例を示すフローチャートである。
図16】本発明の一実施形態に係る分析処理を説明するための発注履歴データと処置-材料対応表の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
[一実施形態]
図1は、一実施形態に係る受発注管理システム1の全体構成例を示すブロック図である。受発注管理システム1は、カルテシステム2、在庫管理発注システム3、及び受注システム4を備える。
【0014】
カルテシステム2は、医療従事者が患者の診察に用いるシステムである。カルテシステム2は、例えば、歯科医院のサーバに設置され、歯科医院のPC(Personal Computer)、タブレット端末を通じて各種情報の入出力が可能である。このため、複数のカルテシステム2が在庫管理発注システム3に接続される。ただし、カルテシステム2は、受発注管理システム1を各社に提供する事業者によってクラウドサーバに設置され、クラウドサーバにアクセスした歯科医院のPCやタブレット端末を通じて各種情報が入出力されるようにしてもよい。歯科医院は、歯科処置を専門に行う医療機関の一例である。
【0015】
歯科医院で医療従事者が用いるPC又はタブレット端末には、カルテシステム2のユーザインターフェースであるカルテ登録画面(不図示)が表示される。医療従事者は、カルテ登録画面を通じて、患者ごとの処置の内容と、処置で用いられた歯科材料の種類及び数量を登録する。登録された各種情報は、カルテシステム2にカルテ情報22(後述する図2を参照)として保存される。歯科医院では、様々な種類の材料、医薬品、医療機器等を「歯科材料」と総称して説明する。歯科材料は、歯科処置で用いられる医療材料の一例である。
【0016】
また、医療従事者は、カルテシステム2を操作して、患者の症状、処置内容を登録する。処置内容は、処置に要する歯科材料の種類、使用量等の情報を含むカルテ情報22により明らかとなる。また、医療従事者は、カルテシステム2を通じて、患者自身の情報(患者情報21)を入力したり、患者の診療予約の情報や予定する処置内容の情報(予約情報23)を入力したりする。患者情報21、カルテ情報22及び予約情報23は、カルテシステム2への登録時に、カルテシステム2から在庫管理発注システム3に送信される。
【0017】
受注システム4は、歯科材料を取り扱う材料商社によって用いられるシステムである。受注システム4は、在庫管理発注システム3から発注された歯科材料の発注情報を受信すると、その発注情報に基づいて歯科材料を商店やメーカーから集め、歯科医院に届ける処理を行う。
【0018】
在庫管理発注システム3は、カルテシステム2から受信する患者情報21、カルテ情報22、及び予約情報23に基づいて歯科医院ごとの歯科材料の在庫、今後の処置で用いられる歯科材料の種類及び数等を管理する。そして、在庫管理発注システム3は、今後の処置により不足すると予測した歯科材料の種類及び数に基づいて、必要な歯科材料の種類及び数量が記録された発注情報を受注システム4に自動発注する。この在庫管理発注システム3は、受発注管理システム1を各社で利用可能とする事業者によってクラウドサーバに設置されるシステムである。以下の説明では、在庫管理発注システム3を管理する事業者のユーザーを「システム管理者」と呼ぶ。この在庫管理発注システム3は、材料予測部10等の機能ブロックと、各種のデータ及びリストを含むデータベース40とを備える。データベース40は、歯科材料の在庫である歯科材料の種類及び量を歯科医院ごとに管理される。
【0019】
材料予測部10は、歯科医院で使用される歯科材料の種類及び量を予測することで、歯科医院で管理される歯科材料の在庫を予測する。このため、材料予測部10は、AI(Artificial Intelligence)を用いてデータベース40から読み出した各種のデータを学習することで、医院ごとに歯科材料の在庫量を予測する機能を有する。材料予測部10は、在庫量の予測時にカルテシステム2から受信する患者情報21、カルテ情報22及び予約情報23に基づいて、次回の予約された処置で払い出され、使用される歯科材料の種類及び量を予測する。
【0020】
また、材料予測部10は、過去に実際に行われた処置における歯科材料の種類、使用量等に基づいて、次回の予約された処置で使用される歯科材料の種類、使用量を予測する。このように材料予測部10は、各歯科医院における歯科材料の在庫を管理する。このため、払出部11と払出予約部12は、材料予測部10によって予測された歯科材料の在庫量に基づいて、払出処理と払出予約処理を行うことができる。
【0021】
また、データベース40は、医院マスタ31、商社マスタ32、材料マスタ33、材料価格表34といったマスタ情報と、払出履歴データ41、発注履歴データ42、入荷履歴データ43といった履歴データと、使用済み材料リスト44、使用予定材料リスト45、材料納期表46及び処置-材料対応表47といったリスト情報及び表情報とを備える。
【0022】
ここで、カルテシステム2から在庫管理発注システム3に送信されるデータについて、図2を参照して説明する。
図2は、カルテシステム2から在庫管理発注システム3に送信される各情報の例を示す図である。ここでは、患者情報21、カルテ情報22及び予約情報23の構成例を説明する。
【0023】
患者情報21には、患者の情報が記録される。この患者情報21は、患者ID、医院ID、患者氏名、生年月日、性別の項目で構成される。
患者ID項目には、カルテシステム2が患者ごとに割り振った一意の識別情報が患者IDとして格納される。
医院ID項目には、在庫管理発注システム3が歯科医院ごとに割り振った一意の識別情報が医院IDとして格納される。患者情報21の医院IDは、在庫管理発注システム3が、どの医院の患者であるかを識別するために用いられる。
患者氏名項目には、患者の氏名が格納される。
生年月日項目には、患者の生年月日が格納される。
性別項目には、患者の性別が格納される。
【0024】
カルテ情報22には、カルテに記載された内容が患者ごとに記録される。このカルテ情報22は、患者ID、医院ID、処置日、部位、病名、処置の項目で構成される。
患者ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
医院ID項目は、既に説明した通りである。カルテ情報22の医院IDは、在庫管理発注システム3が、どの医院の患者のカルテであるかを識別するために用いられる。
処置日項目には、患者に処置が行われた処置日が格納される。
部位項目には、処置が行われた部位が格納される。
病名項目には、患者の病名が格納される。
処置項目には、処置における処置が格納される。
【0025】
予約情報23には、次回の予約で予定される処置の内容等が記録される。この予約情報23は、患者ID、医院ID、次回予定日時、枠時間、処置部位、担当医、担当衛生士の項目で構成される。
患者ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
医院ID項目は、既に説明した通りである。予約情報23の医院IDは、在庫管理発注システム3が、どの医院の患者の予約情報であるかを識別するために用いられる。
次回予定日時項目には、処置が予約された次回の来院予定の日時が格納される。
枠時間項目には、予約された処置に要する時間(分)が枠時間として格納される。
処置部位項目には、予約された処置の処置部位が格納される。
担当医項目には、予約された処置を担当する歯科医師が担当医として格納される。
担当衛生士項目には、予約された処置を担当する歯科衛生士が担当衛生士として格納される。
【0026】
このように予約情報23には、予約された次回の処置に関する情報が含まれるが、その処置で用いられる歯科材料の種類及び量の情報は含まれていない。しかし、在庫管理発注システム3は、患者情報21、カルテ情報22を受信することで、予約された次回の処置で用いられる歯科材料の種類及び量を予測し、歯科医院で不足する歯科材料を自動発注する。
【0027】
次に、在庫管理発注システム3のシステム管理者によって予め登録される各マスタについて、図3を参照して説明する。
図3は、各マスタの構成例を示す図である。ここでは、医院マスタ31、商社マスタ32、材料マスタ33、材料価格表34の構成例を説明する。
【0028】
医院マスタ31は、歯科医院の情報が登録されたマスタ情報である。医院マスタ31は、医院ID、歯科医院名、住所、電話番号の項目で構成される。
医院ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
歯科医院名項目には、歯科医院名が格納される。
住所項目には、歯科医院の住所が格納される。
電話番号項目には、歯科医院の電話番号が格納される。
【0029】
商社マスタ32は、材料商社の情報が登録されたマスタ情報である。商社マスタ32は、商社ID、商社名、住所、電話番号の項目で構成される。
商社ID項目には、材料商社ごとに割り振られた一意の識別情報が商社IDとして格納される。
商社名項目には、材料商社の商社名が格納される。
住所項目には、材料商社の住所が格納される。
電話番号項目には、材料商社の電話番号が格納される。
【0030】
材料マスタ33は、歯科材料の情報が登録されたマスタ情報である。材料マスタ33は、材料ID、材料名、メーカー、カテゴリ、発注単位の項目で構成される。
材料ID項目には、歯科材料ごとに割り振られた一意の識別情報が材料IDとして格納される。材料IDは、JAN(Japanese Article Number)コード等が利用される。
材料名項目には、歯科材料の材料名が格納される。
メーカー項目には、歯科材料のメーカー名が格納される。
カテゴリ項目には、歯科材料のカテゴリが格納される。
発注単位項目には、歯科材料の発注単位が格納される。発注単位としては、個(1個ずつ)、箱(1箱ずつ)といった歯科材料がどのように納品されるかといった形態がある。
【0031】
材料価格表34は、歯科材料の価格が登録された表である。材料価格表34は、医院ID、商社ID、材料ID、価格の項目で構成される。
医院ID項目には、医院IDが格納される。
商社ID項目には、商社IDが格納される。
材料ID項目には、商社IDで特定される材料商社に発注された歯科材料が材料IDとして格納される。材料IDは、材料マスタ33の材料IDと同じ情報としてよい。
価格項目には、材料商社に発注された歯科材料の発注価格が格納される。
【0032】
材料商社が商店に発注する歯科材料の価格は、同じ歯科材料であっても歯科医院ごとに異なる場合がある。このため、材料価格表34には、歯科医院ごとに発注材料の価格が格納されている。
【0033】
次に、在庫管理発注システム3の各機能部の内容について、図1のブロック図と、図4及び図5のデータ構成図とを参照して説明する。図4は、履歴データの例を示し、図5は、リスト及び表の例を示す図である。
【0034】
<払出部の機能説明>
払出部11は、材料予測部10により予測された歯科材料の種類及び量に基づいて、歯科医院で払い出される歯科材料の種類及び量を予測する。この際、払出部11は、歯科医院で行われる処置に対して患者ごとに作成されるカルテの情報を管理するカルテシステム2から取得した処置の実施内容に基づいて、歯科材料の種類及び量を予測する。そして、払出部11は、歯科医院で在庫が管理される歯科材料が処置で払い出されたことを払出履歴データ41に記録する。また、払出部11は、医療行為により払い出され、使用された歯科材料を使用済み材料リスト44に記録する。
【0035】
図4には、払出履歴データ41の例が示される。払出履歴データ41は、医院ID、払出日時、払出材料ID、払出数量、払出単位、払出確認者IDの項目で構成される。
医院ID項目には、歯科医院ごとに割り振られた一意の識別情報が医院IDとして格納される。
払出日時項目には、払出材料IDで特定される歯科材料が払い出された日時が払出日時として格納される。
払出材料ID項目には、払い出された歯科材料ごとに割り振られた一意の識別情報が払出材料IDとして格納される。払出材料IDは、材料マスタ33の材料IDと同じ情報としてよい。
【0036】
払出数量項目には、払い出された歯科材料の払出数量が格納される。
払出単位項目には、払い出された歯科材料の払出単位が格納される。払出単位としては、1個、1本であったり、複数個がまとめて納められた箱の1箱であったりする。
払出確認者ID項目には、払い出された歯科材料を確認した医療従事者ごとに割り振られた一意の識別情報が払出確認者IDとして格納される。図示しないが、カルテシステム2には、医療従事者についても、歯科医院ごとに割り振られた一意の識別情報が医療従事者IDとして格納された医療従事者マスタが設けられており、払出確認者IDは医療従事者IDと同じ情報が用いられる。
【0037】
図5には、使用済み材料リスト44の例が示される。使用済み材料リスト44は、医院ID、使用済み日時、使用材料ID、使用数量、使用単位、払出フラグの項目で構成される。上述したように「払出」に対する「使用」とは、医療従事者が、払い出した歯科材料のうち、実際の処置で歯科材料を使用したことをいう。例えば、12個の歯科材料が入った箱が払い出され、その箱から2個の歯科材料が使用された場合、払出数が1個、使用数量が2個となる。また、1つの薬瓶が払い出されても、複数人の患者の処置に対して、その払い出された1つの薬瓶の同じ薬品が使用されることもある。カルテ情報22には、払い出された歯科材料の払出数量と、使用された歯科材料の使用数量が記載される。
【0038】
医院ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
使用済み日時項目には、歯科材料が使用済みとなった日時が使用済み日時として格納される。
使用材料ID項目には、使用された歯科材料ごとに割り振られた一意の識別情報が使用材料IDとして格納される。使用材料IDは、材料マスタ33の材料IDと同じ情報としてよい。
【0039】
使用数量項目には、使用された歯科材料の使用数量が格納される。
使用単位項目には、使用された歯科材料の使用単位が格納される。使用単位としては、1個、1本、1袋である。
払出フラグ項目には、払い出された歯科材料が「払出済み」又は「払出未完了」のいずれであるかが払出フラグとして格納される。所定単位の歯科材料が払い出された後、この歯科材料が全て使用された場合、払出フラグが「払出済み」となる。
一方、歯科材料が払い出されたものの、未使用の歯科材料が残っている場合、払出フラグが「払出未完了」となる。なお、払い出された後、品質期限前の歯科材料が残っていれば払出フラグが「払出未完了」であるが、未使用の歯科材料の品質期限が切れた場合には払出フラグが「払出済み」となる。なお、払出部11が、歯科材料の品質期限が切れているかを判断するためには、例えば、材料の製造ロットごとの使用期限日や、材料ごとの使用可能日数(30日間など)のデータが材料マスタ33に追加されることが望ましい。
【0040】
<払出予約部の機能説明>
次に、図1に戻って在庫管理発注システム3の払出予約部12の機能を説明する。
払出予約部12は、払出部11により予測された歯科材料の種類及び量に基づいて、歯科医院で予約される処置で払い出される歯科材料を予約する。この際、払出予約部12は、カルテシステム2から取得した、処置の予約内容に基づいて歯科材料を予約する。そこで、払出予約部12は、処置の予約情報23に基づいて、予約された処置で払出が予測される歯科材料を事前に予約する。このように予約された処置で予測した歯科材料の払出を予約することを「払出予約」と呼ぶ。そして、払出予約部12は、払出予約した情報を使用予定材料リスト45に書き込む。
【0041】
図5には、使用予定材料リスト45の例が示される。使用予定材料リスト45は、歯科医院ごとに患者の診療予約に基づいて、使用が予定される材料がリスト化されたものである。この使用予定材料リスト45は、医院ID、使用予定日時、使用材料ID、使用数量、及び使用単位の項目で構成される。
【0042】
医院ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
使用予定日時項目には、歯科材料が使用される予定日時が使用予定日時として格納される。使用予定日時は、診療の予約日時である。
使用予定材料ID項目は、使用予定の歯科材料ごとに割り振られた一意の識別情報が使用予定材料IDとして格納される。使用予定材料IDは、材料マスタ33の材料IDと同じ情報としてよい。
使用予定数量項目には、使用予定の歯科材料の使用数量が格納される。
使用予定単位項目には、使用予定の歯科材料の使用単位が格納される。
【0043】
<発注部の機能説明>
次に、図1に戻って在庫管理発注システム3の発注部13の機能を説明する。
発注部13は、払出予約部12により払い出しが予約された歯科材料が使用されることで、予約された処置が行われる時に歯科医院の在庫にある歯科材料の量が不足すると判定した場合に、予約された処置が行われるまでに歯科医院に歯科材料が入荷するように、不足すると判定された歯科材料を補う量の歯科材料を発注する。
このため、発注部13は、払い出した予約された歯科材料と、歯科医院における歯科材料の在庫とに基づいて、必要な量の歯科材料を受注システム4に発注する機能を有する。そして、発注部13は、発注した歯科材料に関する情報を発注履歴データ42に書き込む。
【0044】
図4には、発注履歴データ42の例が示されている。発注履歴データ42には、これまでの材料商社に対する発注履歴が記録される。この発注履歴データ42は、医院ID、発注日時、発注材料ID、発注数量発注単位、発注確認者ID、発注商店ID、発注単価、入荷予定日時の項目で構成される。
【0045】
医院ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
発注日時項目には、発注部13が受注システム4に歯科材料の発注を行った日時が発注日時として格納される。
発注材料ID項目には、発注部13が発注する歯科材料ごとに割り振られた一意の識別情報が発注材料IDとして格納される。発注材料IDは、材料マスタ33の材料IDと同じ情報としてよい。
【0046】
発注数量項目及び発注単位項目には、発注部13が発注する歯科材料の発注数量と発注単位が格納される。
発注確認者ID項目には、発注部13が発注する歯科材料の発注内容を確認した医療従事者ごとに割り振られた一意の識別情報が発注確認者IDとして格納される。
発注商店ID項目には、発注部13が発注した商店ごとに割り振られた一意の識別情報が発注商店IDとして格納される。ある発注材料に対して、異なる複数の商店が異なる価格で取り扱うことが多い。このため、発注部13が発注した歯科材料は、どの商店に発注されたかを特定する必要があるので、発注商店IDが設けられている。
【0047】
発注単価項目には、発注部13が発注する歯科材料の発注単価[円]が格納される。
入荷予定日時項目には、発注部13が発注した歯科材料の入荷予定日時が格納される。
【0048】
なお、在庫管理発注システム3から受注システム4に送信される材料発注情報には、発注履歴データ42に示される各項目の情報が含まれている。そして、受注システム4は、受信した材料発注情報に基づいて、メーカーから歯科材料を取り寄せ、歯科医院に歯科材料を納品する。
【0049】
図5には、材料納期表46の例が示される。材料納期表46は、医院ID、材料ID、商店ID、納期の項目で構成される。
医院ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
材料ID項目には、歯科材料ごとに割り振られた一意の識別情報が材料IDとして格納される。材料IDは、材料マスタ33の材料IDと同じ情報としてよい。
商店ID項目には、受注システム4を管理する商店ごとに割り振られた一意の識別情報が商店IDとして格納される。商店IDは、発注商店IDと同じとしてよい。
納期項目には、歯科材料を受注した商店が、歯科医院に歯科材料を納品可能な納期が格納される。納期項目に格納される納期とは、一般的に歯科材料の納品にかかる日数の目安である。
【0050】
<入荷部の機能説明>
次に、図1に戻って在庫管理発注システム3の入荷部14の機能を説明する。
入荷部14は、材料商社が受注した歯科材料が商店から歯科医院に入荷した時に、入荷履歴データ43に対して商品ごとに入荷の情報を記録する。このため、発注部13により発注された歯科材料が歯科医院に入荷した後、入荷した歯科材料の情報がカルテシステム2から在庫管理発注システム3に送信される。
入荷した歯科材料の情報が在庫管理発注システム3に送信される方法としては、カルテシステム2以外にも、FAX、メール等を用いてもよい。そして、入荷部14は、歯科医院に入荷した歯科材料の情報を入荷履歴データ43に記録する。
【0051】
図4には、入荷履歴データ43の例が示される。入荷履歴データ43は、医院ID、入荷日時、入荷材料ID、入荷数量、入荷単位、入荷確認者ID、入荷商店IDの項目で構成される。
医院ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
入荷日時項目には、商店から材料商社に入荷される入荷材料の入荷日時が格納される。
入荷材料ID項目には、材料商社に入荷される歯科材料(「入荷材料」と呼ぶ)ごとに割り振られた一意の識別情報が入荷材料IDとして格納される。入荷材料IDは、材料マスタ33の材料IDと同じ情報としてよい。
【0052】
入荷数量項目には、材料商社に入荷される歯科材料の入荷数量が格納される。
入荷単位項目には、材料商社に入荷される歯科材料の入荷単位(個、本、グラム等)が格納される。
入荷確認者ID項目には、材料商社に入荷する歯科材料を確認した材料商社の担当者ごとに割り振られた一意の識別情報が入荷確認者IDとして格納される。
入荷商店ID項目には、歯科材料を入荷する商店ごとに割り振られた一意の識別情報が入荷商店IDとして格納される。入荷商店IDは、発注商店IDと同じとしてよい。
【0053】
<処置-材料対応表の説明>
図1図5に示す処置-材料対応表47は、歯科医院で行われる処置内容である処置と、その処置に必要な材料の情報が管理される表である。
【0054】
図5には、処置-材料対応表47の例が示される。処置-材料対応表47は、医院ID、処理、処置単位、材料ID、材料使用量、材料使用単位の項目で構成される。
医院ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
処置項目には、歯科医院で患者に行われた処置の名称が格納される。
処置単位項目には、歯科医院で処置が行われた際に使用された歯科材料の材料使用量の単位が格納される。例えば、処置が行われる1本の歯に対して、1個の歯科材料が使用される場合に、「1歯あたり」が処置単位項目に格納される。
【0055】
材料ID項目には、歯科材料ごとに割り振られた一意の識別情報が材料IDとして格納される。材料IDは、材料マスタ33の材料IDと同じ情報としてよい。
材料使用量項目には、1回の処置で使用された材料の使用量が格納される。
材料使用単位項目には、1回の処置で使用された材料の使用単位が格納される。
【0056】
<材料予測部の処理の説明>
次に、材料予測部10が学習処理と予測処理を行う例について説明する。
図6は、材料予測部10の学習処理と予測処理を行う機能ブロックの構成例を示す図である。図1に示した各データ、リスト等はデータベース40として総称される。データベース40には、処置で払出され、使用された歯科材料の種類及び数量等を含むデータが含まれる。
【0057】
材料予測部10がAIとして用いられ、機械学習を行うことで、図1に示した払出部11、払出予約部12及び発注部13の各部の機能が更新される。材料予測部10の機械学習の処理に注目すると、材料予測部10は、モデル定義部51、学習部52及び予測部53を備える。
【0058】
在庫管理発注システム3のシステム管理者は、モデル定義部51に機械学習モデルの一例である材料予測モデルを予め定義しておく。材料予測モデルは、歯科材料の在庫量の予測結果を得るために用いられる機械学習モデルである。材料予測モデルは、複数の層ごとに複数のノードが配置され、各層のノードが隣の層のノードに接続された構成のニューラルネットワークである。
【0059】
学習部52は、「材料予測モデル」というフレームと学習データ50とを合わせることで、歯科材料の在庫量の変化を材料予測モデルに学習させる。材料予測モデルには、学習部52が学習に用いる重みやバイアス等のパラメータが定義されている。
【0060】
そこで、学習部52は、歯科医院の在庫である歯科材料の種類及び量と、過去に歯科医院で実施された処置ごとに使用された歯科材料の種類及び量とを学習データ50として、モデル定義部51から読み出した材料予測モデルに学習させ、「学習済み材料予測モデル」を生成する。
【0061】
このため、学習部52は、モデル定義部51に定義された材料予測モデルと、データベース40に蓄積された学習データ50を用いて、材料予測モデルの最適なパラメータを調整し、ネットワーク構成を変更する。学習部52が材料予測モデルのパラメータを調整し、ネットワーク構成を変更する処理を「学習」と呼ぶ。学習部52は、例えば、ディープラーニングの一種であるRNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)等の技術を使ってモデルを学習する。学習部52が学習し、パラメータを最適化した材料予測モデルを、上述した「学習済み材料予測モデル」と呼ぶ。そして、学習部52は、生成した学習済み材料予測モデルをモデル定義部51に保存する。
【0062】
予測部53は、払出部11と払出予約部12により材料予測部10が呼び出された時に、モデル定義部51から読み出した学習済み材料予測モデルを用いて歯科材料の種類及び量を予測する。そして、予測部53は、データベース40から読み出した各種データを学習済み材料予測モデルに入力し、歯科医院ごとに予測された歯科材料の在庫量を学習済み材料予測モデルから得る。予測部53は、学習済み材料予測モデルを用いて予測した歯科材料の在庫量等を、呼び出し元の払出部11と払出予約部12に出力する。
【0063】
ここで、材料予測部10の処理について、初期処理、学習処理、予測処理に分けて説明する。
<初期処理>
学習部52の学習初期時には、在庫管理発注システム3のシステム管理者により定義された材料予測モデルがモデル定義部51に格納される。学習初期時にモデル定義部51に定義される材料予測モデルの構成、重み等は最適化されていない。このため、学習処理の前、すなわち初期処理として、データベース40に実際のデータを蓄積する作業が必要である。データベース40には、例えば、数百~数千件の歯科医院から収集された各データ(図2を参照)が蓄積される。
【0064】
<学習処理>
データベース40に十分な量のデータが蓄積されると、学習処理が開始される。学習部52は、データベース40から大量の学習データ50を読み込んで、モデル定義部51から読み出した材料予測モデルにデータを入力する。学習部52は、学習データ50を用いて、材料予測モデルが出力したデータが、実際のデータに合うように材料予測モデルのパラメータを調整する。
【0065】
ここで、学習データ50の構成例について、図7を参照して説明する。
図7は、学習データ50の一例を示す図である。
学習データ50は、医院ID、性別、年齢、部位、病名、処置内容、使用材料の項目で構成される。学習部52は、学習時にデータベース40から読み出したデータを用いて、学習データ50を作成する。この学習データ50は、患者に対する1回の処置ごとに作成される。
【0066】
医院ID項目は、既に説明した通りなので、説明を省略する。
性別項目には、患者の性別が格納される。
年齢項目には、患者の年齢が格納される。
部位項目には、患者の処置部位が格納される。
病名項目には、患者の病名が格納される。
処置内容項目には、処置内容が格納される。処置内容項目には、初診を示す情報、症状を示す情報も格納されるが、再診を示す情報は格納されない。
使用材料項目には、使用材料が格納される。使用材料としては歯科材料の種類、使用数量が含まれる。
【0067】
なお、図7には示されていないが、学習データ50には、処置回数、処置日時等の情報、歯科材料の払出数量、払出単位、予約情報23等の情報も格納される。
【0068】
図6に戻って、学習処理の説明を続ける。
上述したように学習部52は、データベース40から取得する学習データ50を用いて、材料予測モデルを学習する。ここで、学習部52は、学習データ50の全てを学習処理に用いるのでなく、学習データ50をランダムに分けた80%のデータを訓練データとし、残りの20%のデータを評価データとして用いる。
そして、学習部52は、訓練データを用いて、材料予測モデルの出力が、訓練データの内容と一致するように材料予測モデルの学習処理を行う。この時、訓練データに合わせて材料予測モデルのパラメータが調整される。
【0069】
<評価処理>
学習部52は、材料予測モデルの学習を終えると、学習後の材料予測モデルを評価するための評価処理を行う。評価処理では、評価データが用いられる。そして、学習部52は、訓練データを用いてパラメータを調整した材料予測モデルに対して、データベース40から取得する評価データを用いて、材料予測モデルの動作を評価する。例えば、評価データに示される、ある処置に対して実際に払い出された歯科材料の払出数が2個である場合に、材料予測モデルから出力されたデータで予測される歯科材料の払出数が2個であれば、正しい予測を行う材料予測モデルとなっている。
【0070】
学習部52は、学習中の材料予測モデルが特定の訓練データだけに最適化された過学習に陥ることを防ぎ、訓練データ以外の他のデータでも出力が妥当であるかを評価する必要がある。そこで、学習部52は、訓練データを用いた学習処理と評価データを用いた評価処理を、材料予測モデルに対して、複数回にわたって行う。この時、訓練データと評価データは、各回の学習処理と評価処理で異なるデータが用いられる。
【0071】
例えば、No.1~10の10個のデータがあると仮定する。1回目の学習処理では「No.1,3,4,6,7,8,9,10」のデータが訓練データとして用いられ、評価処理では残りの「No.2,5」のデータが評価データとして用いられる。2回目の学習処理では「No.2,3,4,5,7,8,10」のデータが訓練データとして用いられ、評価処理では残りの「No.1,6」のデータが評価データとして用いられる。このように学習処理と評価処理では、回ごとに異なる訓練データと評価データが用いられる。
【0072】
複数回の学習処理と評価処理が行われた材料予測モデルは、大量のデータを用いてパラメータが調整された学習済み材料予測モデルとして用いられる。予測部53が学習済み材料予測モデルを使うことで、システム管理者が個別に材料予測モデルのパラメータを調整しなくても、正しい予測を行うことが可能な学習済み材料予測モデルがモデル定義部51に保存される。
【0073】
<予測処理>
予測部53は、払出部11又は払出予約部12の処理に応じて、モデル定義部51から学習済み材料予測モデルを読み出す。そして、予測部53は、データベース40から読み出したデータを学習済み材料予測モデルに入力し、出力データを得る。この出力データは、材料予測部10の呼び出し元である払出部11又は払出予約部12に戻される。
【0074】
予測処理において、払出部11は、実際に払い出された歯科材料の払出日時、払出数量及び使用数量を学習した学習済み材料予測モデルにより、歯科材料ごとに歯科医院で払い出される歯科材料の種類及び量を予測する。また、払出予約部12は、実際に使用された歯科材料の使用数量を学習した学習済み材料予測モデルにより、歯科医院で予約される処置で払い出される歯科材料を予約することができる。
【0075】
上述した学習処理及び評価処理は、任意のタイミングで実行される。例えば、学習処理及び評価処理が1週間ごとに実行されてもよいし、1月ごとに実行されてもよい。学習処理及び評価処理が繰り返し実行されることで、学習部52は実行時点での最新のデータに基づいた材料予測モデルの学習が可能となる。また、予測部53は、最新のデータに基づいて学習された学習済み材料予測モデルを用いることで、各種データの予測処理の精度を向上させることができる。
【0076】
また、材料予測部10は、多数の歯科医院から集めたデータを学習データ50として用いることで、ある処置に対する歯科材料の種類及び量の一般的な値を出力可能な学習済み材料予測モデルを得ることができる。
【0077】
ただし、特定の歯科医院では、学習済み材料予測モデルが予測した歯科材料の在庫量が実際の在庫量と乖離することがある。このような歯科医院では、一般的な値を出力可能な学習済み材料予測モデルを用いると、歯科材料の発注量が過剰又は過少となるおそれがある。そこで、材料予測部10は、特定の歯科医院専用の材料予測モデルを学習して得た学習済み材料予測モデルを用いて、特定の歯科医院における歯科材料の在庫量を予測してもよい。
【0078】
また、これまで発注されたことのない新しい歯科材料が用いられる時は、この歯科材料のデータはデータベース40に蓄積されていない。このため、材料予測部10の学習部52は、新しい歯科材料に対する各歯科医院での発注履歴データ42等が十分に蓄積されると、モデル定義部51から読み出した材料予測モデルに対して、この歯科材料に対する学習処理及び評価処理を行う。この結果、新しい歯科材料であっても、予測部53がモデル定義部51から読み出した学習済み材料予測モデルを用いて、適切なタイミングかつ適正量で発注することができる。
【0079】
<計算機のハードウェア構成例>
次に、在庫管理発注システム3を構成する計算機100のハードウェア構成を説明する。
図8は、計算機100のハードウェア構成例を示すブロック図である。計算機100は、本実施の形態に係る在庫管理発注システム3として動作可能なコンピューターとして用いられるハードウェアの一例である。本実施の形態に係る在庫管理発注システム3は、計算機100(コンピューター)がプログラムを実行することにより、図1に示した各機能ブロックが連携して行う在庫管理発注方法を実現する。
【0080】
計算機100は、バス104にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、及びRAM(Random Access Memory)103を備える。さらに、計算機100は、表示装置105、入力装置106、不揮発性ストレージ107及びネットワークインターフェイス108を備える。
【0081】
CPU101は、本実施の形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM102から読み出してRAM103にロードし、実行する。RAM103には、CPU101の演算処理の途中で発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメータ等がCPU101によって適宜読み出される。ただし、CPU101に代えてMPU(Micro Processing Unit)を用いてもよく、CPU101とGPU(Graphics Processing Unit)を併用してもよい。在庫管理発注システム3の材料予測部10、払出部11等の各ブロックの機能は、CPU101により実現される。
【0082】
表示装置105は、例えば、液晶ディスプレイモニターであり、計算機100で行われる処理の結果等を、在庫管理発注システム3のシステム管理者に表示する。入力装置106には、例えば、キーボード、マウス等が用いられ、システム管理者が所定の操作入力、指示を行うことが可能である。
【0083】
不揮発性ストレージ107としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ又は不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージ107には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、計算機100を機能させるためのプログラムが記録されている。ROM102及び不揮発性ストレージ107は、CPU101が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録しており、計算機100によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記憶媒体の一例として用いられる。在庫管理発注システム3の各データ、マスタ等のデータベース40は、不揮発性ストレージ107に構成される。
【0084】
ネットワークインターフェイス108には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、NICの端子に接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを装置間で送受信することが可能である。在庫管理発注システム3は、ネットワークインターフェイス108を通じて、カルテシステム2及び受注システム4と相互に通信することが可能である。
【0085】
次に、在庫管理発注システム3の各部の処理の例について、図9図15のフローチャートを参照して説明する。
【0086】
<払出処理の例>
図9は、払出処理の例を示すフローチャートである。払出処理は、カルテ情報22と連携し、カルテに記載され、カルテシステム2に登録された処置内容に基づいて、払出部11が、処置で使用される歯科材料(以下、「使用材料」と呼ぶ)とその使用量を予測し、使用材料を払出す処理である。
【0087】
始めに、医療従事者は、カルテシステム2を通じて患者の処置内容を入力する(S1)。カルテシステム2に入力された処置内容はカルテ情報22として在庫管理発注システム3に送信される。また、カルテシステム2から在庫管理発注システム3には、患者情報21も送信される。
【0088】
在庫管理発注システム3の材料予測部10は、カルテシステム2から受信した患者情報21とカルテ情報22に基づいて、患者への処置で使用された歯科材料(以下、「使用材料」と呼ぶ)と、歯科材料の使用量とを予測する(S2)。この際、材料予測部10は、図5に示した処置-材料対応表47を補完的に用いて、使用材料と使用量を予測する。そして、材料予測部10は、予測した使用材料と使用量の正誤を医療従事者に確認してもらうため、予測した使用材料と使用量をカルテシステム2に送信する。
【0089】
医療従事者は、カルテシステム2が在庫管理発注システム3から受信した、予測された使用材料と使用量を確認する(S3)。ステップS3の確認処理では、材料予測部10が予測した歯科医院で払い出される歯科材料の予測量と、歯科医院で払い出された歯科材料の実使用量とが異なる場合に、歯科材料の実使用量に合わせて歯科材料の予測量を訂正する処理が行われる。ここで、ステップS3の確認処理について、図10を参照して説明する。
【0090】
図10は、医療従事者が、予測された使用材料と使用量を確認する処理の例を示すフローチャートである。
【0091】
始めに、カルテシステム2は、材料予測部10によって予測された使用材料と使用量を医療従事者に通知する(S11)。この通知は、カルテシステム2が歯科医院にあるPCのモニタに使用材料と使用量を表示することで行われる。医療従事者は、通知された使用材料と使用量を確認し、払出部11により予測された使用材料と使用量が正しいか否かを判定する(S12)。
【0092】
医療従事者は、材料予測部10により予測された使用材料と使用量が正しいと判定した場合(S12のYES)、ステップS14に進む。この場合、医療従事者により正しいと判定された情報がカルテシステム2から在庫管理発注システム3に送信される。
【0093】
医療従事者は、予測された使用材料と使用量が誤っていると判定した場合(S12のNO)、正しい使用材料と使用量に訂正する(S13)。この場合、医療従事者により訂正された情報がカルテシステム2から在庫管理発注システム3に送信される。
【0094】
ステップS12のYES、又はステップS13の後、カルテシステム2は、材料予測部10に対して正しい使用材料と使用量を学習させる(S14)。この時、図6の学習部52は、正しいと判定された使用材料と使用量のデータ、又は訂正された使用材料と使用量のデータを、学習データ50としてデータベース40から読み出し、材料予測モデルを再学習する。そして、在庫管理発注システム3は、図9のステップS4に処理を戻す。
【0095】
次に、払出部11は、図5に示した使用済み材料リスト44に使用材料と使用量を登録する(S4)。ここで、使用済み材料リスト44の払出フラグの初期値は、「払出未完了」となっている。つまり、払い出された歯科材料が全て使い切られていなければ、払出フラグは「払出未完了」のままである。払い出された歯科材料が全て使い切られると、払出フラグが「払出済み」となる。
【0096】
次に、払出部11は、使用済み材料リスト44に基づいて、各使用材料の払出登録処理を行い(S5)、本処理を終了する。ステップS5の払出登録処理において、払出部11は、歯科材料の使用量の累積値が、歯科材料の払出単位量と同じ又は超えたと判定した場合に、歯科材料が払い出し済みになったことをデータベース40に記録する。ここで、ステップS5の払出登録処理について、図11を参照して説明する。
【0097】
図11は、払出登録処理の例を示すフローチャートである。
始めに、払出部11は、払出が行われる使用材料(図では「当該材料」と記載)の払出単位量と使用単位量は等しいか否かを判定する(S21)。例えば、歯科材料の払出単位が1ダースであっても、1回の使用量が1袋のように単位が異なることがある。また、払出単位が「1箱」の場合、使用単位は「1/12箱」であることも想定される。そこで、これらの量を、それぞれ「払出単位量」と「使用単位量」と呼ぶ。払出部11は、払出単位量と使用単位量が異なる歯科材料については、カルテ情報22を参照して、歯科材料の使用回数を鑑みて適宜払出処理を行う。
【0098】
例えば、歯科医院で払い出された歯科材料(セメント等)が3日間使用された後、新たに別のセメントが払い出されたことが分かると、一度払い出された歯科材料の使用期間は3日間であることも分かる。このため、ある期間又はある回数で歯科材料が使用されると、払い出された歯科材料が完全に使用され、無くなったものとして払出処理が行われる。
【0099】
当該材料の払出単位量と使用単位量が等しければ(S21のYES)、払出部11は、ステップS24に処理を進める。この場合、払出部11は、使用済み材料リスト44の払出フラグの項目を「払出済み」に更新する。
【0100】
一方、当該材料の払出単位量と使用単位量が異なっていれば(S21のNO)、払出部11は、使用済み材料リスト44を参照し、払出未完了である当該材料の使用量の累計が払出単位量を超えたか否かを判定する(S22)。例えば、払出部11は、今回の使用量の累計が払出単位である12袋を超えたか否かを判定する。
【0101】
ステップS22にて当該材料の使用量の累計が払出単位量を超えていないと判定されると(S22のNO)、本処理を終了する。この時、図9のステップS5の処理も終了する。
【0102】
ステップS22にて当該材料の使用量の累計が払出単位量を超えたと判定されると(S22のYES)、払出部11は、使用済み材料リスト44の当該材料の払出フラグを「払出済み」に変更する(S23)。また、払出部11は、払出単位量を超えた分の当該材料に対して、新たに別の払い出しを行い、その払い出した当該材料の払出フラグを「払出未完了」にする。
【0103】
ステップS21のYES、又はステップS23の後、払出部11は、図4に示す払出履歴データ41に当該材料の払出履歴を登録し(S24)、本処理を終了する。この時、図9のステップS5の処理も終了する。
【0104】
なお、図9に示したステップS2,S3の処理は、十分な学習データが蓄積された後、材料予測部10が学習済み材料予測モデルを用いて行う処理であり、在庫管理発注システム3の初期時にはスキップされる。
【0105】
<払出予約処理の例>
図12は、払出予約処理の例を示すフローチャートである。払出予約処理は、払出予約部12が予約情報23と連携して予約された処置で用いられる歯科材料と使用量を予測する処理である。払出予約部12は、歯科医院から取得する処置の予約情報23と、処置を受ける患者の患者情報21とに基づいて、歯科材料を予約する。払出予約部12が歯科材料を予約することで、予約された次回の処置で歯科材料が不足する場合には、発注部13により歯科材料の自動発注が行われる。
【0106】
始めに、医療従事者は、カルテシステム2を通じて患者の予約内容を入力する(S31)。カルテシステム2に入力された予約内容は予約情報23として、在庫管理発注システム3に送信される。そして、在庫管理発注システム3の材料予測部10が予約情報23を受信する。
【0107】
次に、材料予測部10は、学習済み材料予測モデルを用いて、予約情報23から取り出した、患者情報21と予定処置内容に基づいて、次回の処置で用いられる歯科材料の使用材料と使用量を予測する(S32)。そして、払出予約部12は、予測した使用材料と使用量を、使用予定材料リスト45の使用予定材料ID、使用予定数量及び使用予定単位の各項目に登録し(S33)、本処理を終了する。
【0108】
払出予約部12は、処置予約が行われた時点で払出予約処理を自動的に行って、次回予約された処置で必要となる使用材料と使用量を予測する。そして、発注部13は、次回の処置時に必要な使用材料と使用量が歯科医院の在庫に無ければ、予め発注することができる。次に、発注部13の処理について説明する。
【0109】
<発注処理の例>
図13は、発注処理の例を示すフローチャートである。発注処理は、歯科医院の在庫量と、今後の使用予定量とに基づいて、歯科医院における使用材料の欠品を予測し、欠品が予測される使用材料を自動的に発注する処理である。発注部13は、歯科医院で管理される歯科材料の在庫を所定期間ごとに集計し、歯科材料の在庫が不足することを判定した場合に、払出予約部12により予約された歯科材料を発注する。
【0110】
始めに、医療従事者は、カルテシステム2を通じて在庫予測を行う期間と集計単位時間とを設定する(S41)。カルテシステム2に設定された在庫予測を行う期間と集計単位時間は、在庫管理発注システム3に送信され、材料予測部10が在庫予測を行う期間と集計単位時間を受信する。例えば、在庫予測を行う期間が「2022/07/01~2022/07/03」と設定され、集計単位時間が24時間(1日)と設定される。このように、集計単位時間として24時間(1日)が設定されると、日ごとに在庫が予測されることになる。
【0111】
次に、発注部13は、設定された各時点における各使用材料の在庫量を集計する(S42)。この時、発注部13は、図4に示した払出履歴データ41、発注履歴データ42、入荷履歴データ43、図5に示した使用済み材料リスト44、使用予定材料リスト45を参照して、設定された各時点(7月1日、2日、3日)における使用材料の在庫量と不足量を集計する。
【0112】
次に、発注部13は、設定された各時点における各使用材料の在庫量をカルテシステム2に通知する(S43)。この通知は、カルテシステム2から医療従事者に対してなされる。そして、発注部13は、発注登録処理を行い(S44)、本処理を終了する。
【0113】
図14は、ステップS44の発注登録処理の詳細な例を示すフローチャートである。
始めに、医療従事者は、カルテシステム2を用いて、発注部13から通知された歯科材料の発注処理をするか否かを判断し(S51)、カルテシステム2に判断結果を入力する。医療従事者は、発注部13から通知された歯科材料の発注処理をしないと判断した場合(S51のNO)、本処理を終了する。この時、図13のステップS44の処理も終了する。歯科材料の発注処理をしないことの情報は、カルテシステム2から在庫管理発注システム3に送信され、発注部13の発注処理が中止される。
【0114】
一方、医療従事者は、発注部13から通知された歯科材料の発注処理をすると判断した場合(S51のYES)、発注許可の情報がカルテシステム2から在庫管理発注システム3に送信される。そして、発注部13は、発注する歯科材料と発注量を指定する(S52)。
【0115】
発注部13が発注を指定した歯科材料と発注量は、カルテシステム2に送信される。なお、指定された歯科材料と発注量は、医療従事者により発注前に発注内容が確認されるようにしてもよいし、発注部13により医療従事者による事前確認なしで自動発注されてもよい。医療従事者による事前確認なしで自動発注された場合、例えば、自動発注された内容が3日ごとにカルテシステム2に送信され、医療従事者により発注内容が確認される。医療従事者による発注内容の確認が終わると、発注内容を確認したことを示す情報が在庫管理発注システム3に送信される。そして、発注履歴データ42の発注確認者IDに発注内容を確認した医療従事者のIDが書き込まれる。
【0116】
次に、発注部13は、材料商社の受注システム4に対して材料発注情報を送信する(S53)。そして、発注部13は、発注した歯科材料と発注量を発注履歴データ42に登録し(S54)、本処理を終了する。この時、図13のステップS44の処理も終了する。
【0117】
このように発注部13は、発注単位に応じた発注処理を自動的に行うことが可能である。例えば、品質期限が短い歯科材料が封入されたチューブが1本払い出されると、直ちに次の1本を発注する処理が行われる。また、プリンターのトナーのように、開封後、1月程度の期間で使い続けられるものであれば、例えば、2週間程度の所定期間が経過してから次の1本を発注する処理が行われる。また、発注部13は、歯科材料の品質期限と在庫量に応じて発注頻度を変えることができる。また、発注部13は、よく予約される処置で用いられる特定の材料を多めに発注することもできる。
【0118】
図15は、入荷処理の例を示すフローチャートである。入荷処理は、発注部13が発注した歯科材料が歯科医院に入荷されたことを記録する処理である。
【0119】
始めに、入荷部14は、発注履歴データ42と入荷履歴データ43とに基づいて、未入荷材料リスト(不図示)を作成する(S61)。未入荷材料リストは、発注済みであって、歯科医院に未入荷である歯科材料のリストである。例えば、発注履歴データ42に書き込まれた本数の歯科材料が、入荷履歴データ43に書き込まれた本数に満たなければ、差分の本数が未入荷材料リストに書き込まれる。
【0120】
発注された歯科材料が入荷すると、システム管理者は、未入荷材料リストに基づいて、入荷した歯科材料の入荷数を入力する(S62)。そして、入荷部14は、入荷履歴データ43に入荷した歯科材料の入荷数量等を登録し(S63)、本処理を終了する。
【0121】
<処置-材料対応表の補正処理>
次に、図1に示した集計部15の処理について説明する。
集計部15は、歯科医院から取得する歯科材料の種類及び量と、払出部11が予測した歯科医院で払い出される歯科材料の種類及び量とを集計し、歯科材料の想定使用量を、近似した実際の使用量で補正する。そこで、集計部15は、カルテシステム2から受信するカルテ情報22と、データベース40の払出履歴データ41とに基づいて、処置の回数と、処置に対応した歯科材料の払出の数量とを集計する。そして、集計部15は、下記の手順(a)~(e)で、処置-材料対応表47に記録されているある一定期間の材料使用量の値を統計的に補正する。
【0122】
(a)処置-材料対応表47には、ある処置(例:処置A)を実施したときの使用材料(例:材料B)と想定使用量(材料使用量の項目の情報)が記録されている。
(b)集計部15は、カルテ情報22に基づいて、ある期間(例:期間P)における、処置Aが実施された回数(例:N回)を集計する。
(c)集計部15は、発注履歴データ42に基づいて、処置Aの実施回数が集計された期間Pにおける材料Bの総発注量(例:M)を集計する。
(d)集計部15は、処置Aが実施された回数(例:N回)と、期間Pにおける材料Bの総発注量(例:M)を次式(1)に入れて、処置Aが実施された期間Pにおける材料Bの実近似使用量を算出する。
実近似使用量 = M ÷ N …(1)
式(1)は単純化して記載しているが、実際には集計部15が「処置単位」も考慮して歯科材料の使用量を計算する。
(e)集計部15は、処置-材料対応表47の想定使用量(材料使用量の項目)を、式(1)で計算した実近似使用量で更新(補正)する。この結果、処置-材料対応表47の想定使用量が実データに基づいて補正される。
【0123】
<分析処理>
次に、図1に示した分析部16の処理について、図16を参照して説明する。
分析部16は、歯科医院ごとに発注した歯科材料の価格、又は歯科材料の使用量を分析した分析結果を歯科医院に提供する。例えば、分析部16は、各歯科医院のカルテシステム2から収集し、データベース40に蓄積した歯科材料の利用データを分析する。そして、分析部16は、各歯科医院の経営コストを比較し、歯科材料の利用傾向を分析する。このため、分析部16は、分析結果をカルテシステム2に通知して、歯科医院での歯科材料の適正な使用量をアドバイスすることができる。
【0124】
図16は、分析処理を説明するための発注履歴データ42と処置-材料対応表47の例を示す図である。
分析部16は、発注履歴データ42を参照して、歯科医院ごとに歯科材料の購入価格を分析する。そして、分析部16は、歯科材料の購入価格が市場価格と比較して高いか又は低いかという情報を歯科医院に提供することができる。
【0125】
図16に示すように、医院IDが「1」~「4」の4つの歯科医院について、同じ発注材料IDで識別される同じ歯科材料が発注されたとする。ここで、ある歯科材料(発注材料ID=12345678)の1回取引あたりの発注単価の平均価格は121.8円、中央価格は122.5円、最低価格は117円、最高価格は125円であるとする。ある歯科医院(医院ID=4)は、歯科材料(発注材料ID=12345678)を、他の歯科医院(医院ID=1~3)と比べて安価(117円)で購入していることが分かる。このため、分析部16は、発注履歴データ42を参照することで歯科材料の市場価格の違いを医療従事者に提示することもできる。また、歯科医院(医院ID=4)が歯科材料を安価に購入できているのは、他の歯科医院と比べて発注数量が多いためであるので、分析部16は、発注数量を増やすように他の歯科医院にアドバイスすることも可能である。
【0126】
また、分析部16は、処置-材料対応表47を参照して、医療従事者がある処置をした際の使用材料を分析することができる。例えば、ある歯科医院(医院ID=1)では、処置Aのときに材料ID=12345678の歯科材料が多く使われ、他の歯科医院では、材料ID=12345000の歯科材料が多く使われていることが分かる。このため、分析部16は、発注履歴データ42と処置-材料対応表47を参照することで、歯科医院で使用される歯科材料が他の歯科医院と比べて多すぎる又は少なすぎるといった情報を提示することもできる。
【0127】
また、在庫管理発注システム3は、各材料商社で使用される受注システム4に歯科材料を発注する。このため、在庫管理発注システム3は、各材料商社で取り扱われる歯科材料を把握し、歯科医院に最適な材料商社を選択して発注することができる。
【0128】
なお、払出部11は、処置を担当した医療従事者の情報を使用済み材料リスト44に付与することもできる。このため、分析部16は、医療従事者ごとの材料使用量を分析することも可能である。
【0129】
また、カルテ情報22には、医療従事者ごとの業務記録を結び付けることができる。このため、分析部16は、医療従事者ごとに歯科材料をどのように使用しているかを分析し、使用される歯科材料が多すぎると判定した医療従事者ごとに、適正量の歯科材料を使用するようにアドバイスすることも可能となる。
【0130】
以上説明した一実施の形態に係る在庫管理発注システム3は、カルテシステム2から受信するカルテ情報22を利用し、学習済み材料予測モデルを用いた歯科材料の在庫管理を行うことができる。この時、各歯科医院における歯科材料の払出処理が自動的に行われるので、各歯科医院における払出処理の手間が軽減される。また、在庫管理発注システム3は、カルテシステム2から受信する予約情報23を利用して、今後必要となる歯科材料の種類と使用量を予測し、必要な量の歯科材料を自動発注する。このため、歯科医院では、歯科材料の適正在庫を確保できる。
【0131】
また、在庫管理発注システム3は、多数のカルテ情報22を集めることで処置ごとに歯科材料の適正な種類、量を管理し、把握する。このため、ある歯科医院で過剰な量の歯科材料が使われていることも分かる。また、在庫管理発注システム3は、カルテ情報22と払出履歴データ41及び使用済み材料リスト44を結び付けることで、医療従事者ごとに歯科材料がどのように使われたかも分かる。このため、在庫管理発注システム3からカルテシステム2を通じて医療従事者に対して、歯科材料の使用状況、適正な使用量等を通知し、注意喚起することもできる。
【0132】
また、上述した実施形態では、歯科医院における歯科処置で払い出され、又は使用される歯科材料について説明した。しかし、歯科医師以外の医師、薬剤師、看護師、理学療法士、柔道整復師、介護職員等による各種の医療行為、医療補助行為で使用される歯科材料の払い出し、又は使用における歯科材料の在庫管理及び発注処理に適用してもよい。また、歯科医院に限らず、様々な診療科を備えた総合病院等であっても本実施の形態に係る受発注管理システム1及び在庫管理発注システム3を用いることができる。
【0133】
なお、上述した在庫管理発注システム3は、カルテシステム2を用いなくても歯科材料の予測が可能である。例えば、歯科医院で歯科材料の在庫情報を管理する在庫管理システムが使用されているとする。この場合、払出部11は、在庫管理システムから取得した在庫情報の変化に基づいて、歯科材料の種類及び量を予測する。そして、払出予約部12は、在庫管理システムから取得した在庫情報の変化に基づいて、歯科材料を予約することもできる。
【0134】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1…受発注管理システム、2…カルテシステム、3…在庫管理発注システム、4…受注システム、10…材料予測部、11…払出部、12…払出予約部、13…発注部、14…入荷部、15…集計部、16…分析部、21…患者情報、22…カルテ情報、23…予約情報、40…データベース、41…払出履歴データ、42…発注履歴データ、43…入荷履歴データ、44…使用済み材料リスト、45…使用予定材料リスト、46…材料納期表、47…処置-材料対応表、50…学習データ、51…モデル定義部、52…学習部、53…予測部
図1
図2
図3
図4
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