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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030147
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】保持具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20240229BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61M25/02
A61M25/09 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132745
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA29
4C267AA31
4C267BB31
4C267CC08
(57)【要約】
【課題】長尺デバイスの着脱が容易で、長尺デバイスを堅固に保持可能な保持具を提供する。
【解決手段】可撓性を有する医療用のガイドワイヤ60をコイル状に巻いた状態で保持する保持具10であって、両端の開口部22、23と、両端の開口部22、23の間に延びる内腔24と、を有する一方に湾曲した筒状の本体部20を有し、本体部20は、湾曲内側で両端の開口部22、23の間に延びるスリット部25と、内腔24の開口部22、23近傍に設けられる把持部27と、を有する保持具10である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持する保持具であって、
両端の開口部と、前記両端の開口部の間に延びる内腔と、を有する一方に湾曲した筒状の本体部を有し、
前記本体部は、湾曲内側で前記両端の開口部の間に延びるスリット部と、前記内腔の前記開口部近傍に設けられる把持部と、を有する保持具。
【請求項2】
前記スリット部の両側の縁部は、前記内腔が延びる方向に沿って波形形状を有する請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記スリット部は、一方の前記縁部のうち他方の前記縁部側に最も突出した位置から前記本体部の長軸方向に延びる線と、他方の前記縁部のうち一方の前記縁部側に最も突出した位置から前記本体部の長軸方向に延びる線との距離が、前記長尺デバイスの外径より小さい請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
前記スリット部は、前記本体部の長軸方向の同一位置における一方の前記縁部と他方の前記縁部との距離が、前記長尺デバイスの外径より大きい請求項2に記載の保持具。
【請求項5】
前記把持部は、前記内腔の周方向において前記スリット部と90°の角度をなす位置に配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載の保持具。
【請求項6】
前記把持部は、一方の前記開口部近傍に設けられる第1把持部と、他方の前記開口部近傍に設けられる第2把持部と、を有し、
前記第1把持部と前記第2把持部は、前記内腔の周方向において互いに180°の角度をなすように配置されている請求項5に記載の保持具。
【請求項7】
前記第1把持部は、前記長尺デバイスの先端部を把持し、
前記第2把持部は、前記長尺デバイスの基端部を把持する請求項6に記載の保持具。
【請求項8】
前記把持部は、互いに離間して配置された一対の平板によって形成され、前記本体部の内表面から立ち上がる基部と、前記基部の突出先端側で他方の平板から離れるように傾斜した開放部と、を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持する保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療では、ガイドワイヤやカテーテルなどの様々な医療用の長尺デバイスが使用される。血管内治療の手技中、術者は、ガイドワイヤを体外に抜去し、再び血管内に挿入することがある。体外に抜去されたガイドワイヤは、再挿入されるまでの間、コイル状に巻かれ、液体で満たされた容器内に一時的に保管される。
【0003】
ガイドワイヤの基端部は、剛性および弾性が高い材料で形成されている。これにより、ガイドワイヤは、コイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとし、液体で満たされた容器内から意図せずに飛び出して汚染されてしまうことがある。そのため、ガイドワイヤなどの長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で保持する手段が提案されている。
【0004】
特許文献1には、第1部分と、第1部分の外表面に沿って延びるアームとを有し、第1部分の外表面と、アームの内表面に形成された凹部との間の空間に、コイル状に巻いた状態の長尺デバイスのループを保持するクリップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第2018/0133433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のクリップは、凹部に挿入された長尺デバイスがアーム先端の開口部から滑り落ちることを防ぐため、開口部の幅を長尺デバイスの幅より小さく設定している。そのため、クリップに長尺デバイスを着脱する際には、開口部を広げる操作を行う必要がある。また、長尺デバイスの外径が小さい場合や、コイル状に巻いたループの巻き数が少ない場合、凹部と長尺デバイスとの間の空間が大きくなるため、ガイドワイヤがコイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻って、容器から飛び出す可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、長尺デバイスの着脱が容易で、長尺デバイスを堅固に保持可能な保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る(1)保持具は、可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持する保持具であって、両端の開口部と、前記両端の開口部の間に延びる内腔と、を有する一方に湾曲した筒状の本体部を有し、前記本体部は、湾曲内側で前記両端の開口部の間に延びるスリット部と、前記内腔の前記開口部近傍に設けられる把持部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した保持具は、コイル状に巻いた状態の長尺デバイスのループを、本体部のスリット部から内腔に挿入し、把持部に長尺デバイスの端部を把持させることで、長尺デバイスを容易かつ堅固に保持できる。保持具の内腔に挿入された長尺デバイスは、コイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとする復元力により、湾曲外側の内表面に沿うように配置される。これにより、長尺デバイスは、本体部の湾曲内側に配置されるスリット部から滑り落ちにくい。また、保持具は、把持部から取り外した長尺デバイスの端部を本体部の開口部から抜き取ることで、保持具から長尺デバイスを容易に取り外すことができる。
【0010】
(2)上記(1)の保持具において、前記スリット部の両側の縁部は、前記内腔が延びる方向に沿って波形形状を有してもよい。これにより、保持具は、本体部の内腔に挿入された長尺デバイスがスリット部から滑り落ちることを抑制できる。
【0011】
(3)上記(2)の保持具において、前記スリット部は、一方の前記縁部のうち他方の前記縁部側に最も突出した位置から前記本体部の長軸方向に延びる線と、他方の前記縁部のうち一方の前記縁部側に最も突出した位置から前記本体部の長軸方向に延びる線との距離が、前記長尺デバイスの外径より小さくてもよい。これにより、保持具は、内腔に挿入された長尺デバイスが、スリット部から滑り落ちることを抑制できる。
【0012】
(4)上記(2)または(3)の保持具において、前記スリット部は、前記本体部の長軸方向の同一位置における一方の前記縁部と他方の前記縁部との距離が、前記長尺デバイスの外径より大きくてもよい。これにより、保持具は、長尺デバイスをスリット部から内腔に挿入可能とすることができる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの保持具において、前記把持部は、前記内腔の周方向において前記スリット部と90°の角度をなす位置に配置されていてもよい。これにより、保持具は、内腔に挿入された長尺デバイスが本体部の内表面に沿ってスリット部側に移動しても、把持部に引っ掛かってスリット部に到達しないため、長尺デバイスがスリット部から滑り落ちることを抑制できる。
【0014】
(6)上記(5)の保持具において、前記把持部は、一方の前記開口部近傍に設けられる第1把持部と、他方の前記開口部近傍に設けられる第2把持部と、を有し、前記第1把持部と前記第2把持部は、前記内腔の周方向において互いに180°の角度をなすように配置されていてもよい。これにより、保持具は、内腔に挿入された長尺デバイスが本体部の内表面に沿っていずれの方向に移動しても、いずれかの把持部に引っ掛かってスリット部に到達しないため、長尺デバイスがスリット部から滑り落ちることを抑制できる。
【0015】
(7)上記(6)の保持具において、前記第1把持部は、前記長尺デバイスの先端部を把持し、前記第2把持部は、前記長尺デバイスの基端部を把持してもよい。これにより、保持具は、長尺デバイスの両端部を把持できるので、長尺デバイスが長軸方向に移動することをより抑制できる。
【0016】
(8)上記(1)~(7)のいずれかの保持具において、前記把持部は、互いに離間して配置された一対の平板によって形成され、前記本体部の内表面から立ち上がる基部と、前記基部の突出先端側で他方の平板から離れるように傾斜した開放部と、を有してもよい。これにより、保持具は、把持部に長尺デバイスを挿入しやすく、また、平板の弾性により生じる把持力で長尺デバイスを堅固に把持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における保持具の斜視図である。
図2】保持具のスリット部の部分拡大正面図である。
図3】保持具の両端面図であって、(a)は保持具の第1開口部の端面図、(b)は保持具の第2開口部の端面図である。
図4】保持具によって保持されているコイル状に巻いたガイドワイヤの正面図である。
図5】ガイドワイヤを保持した保持具の第1開口部の端面図である。
図6】変形例に係る保持具の斜視図である。
図7】固定機構を有する保持具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
本発明の実施形態に係る保持具10は、ガイドワイヤ60などの可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するものである。なお、本明細書では、ガイドワイヤ60の血管に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0020】
図1に示すように、保持具10は、一方に湾曲した筒状の本体部20を有している。本体部20は、一端の第1開口部22と、他端の第2開口部23と、第1開口部22と第2開口部23との間に延びる内腔24と、を有している。本体部20は、湾曲内側に、第1開口部22と第2開口部23との間に本体部20の全長にわたって延びるスリット部25を有している。本体部20は、内腔24の第1開口部22の近傍と第2開口部23の近傍に、それぞれガイドワイヤ60を把持する把持部27として第1把持部28と第2把持部29とを有している。保持具10は、コイル状に巻いたガイドワイヤ60のループが、スリット部25から内腔24に挿入され、把持部27でガイドワイヤ60の端部近傍を把持することで、ガイドワイヤ60を保持できる。
【0021】
本体部20の湾曲は、保持するガイドワイヤ60のループが有する曲率と同等の曲率を有するように形成される。本体部20の曲率半径は、50mm以上300mm以下、好ましくは、100mm以上250mm以下である。本体部20が湾曲していることで、ガイドワイヤ60を内腔24に挿入した際、ガイドワイヤ60は、コイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとする復元力により、本体部20の湾曲外側の内表面に沿うように配置される(図5参照)。これによって、ガイドワイヤ60は、内腔24においてスリット部25から離れた位置に配置されるので、スリット部25から滑り落ちにくい。
【0022】
本体部20の内径は、ガイドワイヤ60の最大外径より大きい。本体部20の内径は、1mm以上6mm以下である。また、本体部20の壁の厚みは、0.5mm以上1.5mm以下である。本体部20の長軸方向に沿う長さは、10mm以上60mm以下、好ましくは、20mm以上40mm以下である。本体部20が一定の長さを有することで、本体部20に保持されたガイドワイヤ60は、長軸方向に移動しにくい。
【0023】
本体部20を形成する材料は、各種の金属または樹脂である。金属の場合、本体部20は、ステンレス鋼、ニッケルチタンのパイプなどで形成できる。樹脂の場合、本体部20は、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、塩化ビニルなど、あるいは、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴムなどの各種ゴム材料、熱可塑性エラストマーなどの弾性を有する材料などで形成できる。
【0024】
本体部20の内表面、特にスリット部25と対向する表面は、ガイドワイヤ60の外表面との間に生じる摩擦力を大きくする表面形状を有していてもよい。このような表面形状は、本体部20の内表面に凹凸形状、縦縞形状、横縞形状などの模様を設ける、あるいは、粗面化処理を施すなどによって、形成できる。これにより、保持具10は、ガイドワイヤ60が本体部20の内表面に沿ってスリット部25に向かって移動し、スリット部25から滑り落ちることを抑制できる。
【0025】
スリット部25は、両側の縁部25aが波形形状を有している。両側の縁部25aの波形形状は、同じ周期および位相となるように形成されている。このため、両側の縁部25aの互いに対向する位置における接線は、本体部20の長軸方向のどの位置においても平行である。
【0026】
図2に示すように、一方の縁部25aのうち他方の縁部25a側に最も突出した位置Aから本体部20の長軸方向に延びる線L1と、他方の縁部25aのうち一方の縁部25a側に最も突出した位置Bから本体部20の長軸方向に延びる線L2との距離は、D1である。また、本体部20の長軸方向における同一位置における一方の縁部25aと他方の縁部25aとの距離は、D2である。ガイドワイヤ60の外径をD0とすると、D1はD0より小さく、D2はD0より大きいことが好ましい。スリット部25は、D2がD0より大きいので、ガイドワイヤ60をスリット部25から内腔24に挿入可能である。また、スリット部25は、D1がD0より小さいので、内腔24に挿入されたガイドワイヤ60が、スリット部25から滑り落ちることを抑制できる。D1およびD2は、それぞれ0.3mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0027】
把持部27である第1把持部28と第2把持部29は、本体部20の内表面から内腔24に向かって突出するように形成される。図3(a)に示すように、第1把持部28は、互いに離間して配置された一対の平板によって形成されている。第1把持部28は、本体部20の内表面から立ち上がる基部27aと、基部27aの突出先端側で他方の平板から離れるように傾斜した開放部27bとを有している。第1把持部28は、開放部27bを有していることで、第1把持部28にガイドワイヤ60を挿入しやすい。また、第2把持部29も第1把持部28と同様の形状を有している。
【0028】
第1把持部28は、ガイドワイヤ60の基端部61を把持し、第2把持部29は、ガイドワイヤ60の先端部62を把持する。これにより、ガイドワイヤ60が長軸方向に移動しにくくなり、コイル状に巻いたガイドワイヤ60のループがほどけることを抑制できる。
【0029】
第1把持部28は、基部27a間の距離が、ガイドワイヤ60の基端部61の最大外径よりわずかに小さい。また、第2把持部29は、基部27a間の距離が、ガイドワイヤ60の先端部62の最大外径よりわずかに小さい。このため、2つの基部27a間にガイドワイヤ60を押し込んだ際、把持部27は、平板の弾性により、2つの平板間の距離が大きくなると同時に、ガイドワイヤ60を把持する把持力を生じる。したがって、把持部27は、ガイドワイヤ60を把持できる。
【0030】
第1把持部28は、内腔24の周方向において、スリット部25と90°の角度をなす位置に配置されている。第2把持部29は、内腔24の周方向において、第1把持部28と180°の角度をなす位置に配置されている。このため、第2把持部29は、内腔24の周方向において、スリット部25とは270°の角度をなす位置に配置されている。
【0031】
このように、把持部27は、第1把持部28と第2把持部29とが、内腔24の周方向においてスリット部25を挟んで互い違いに配置されている。すなわち、第1把持部28と第2把持部29は、内腔24に突出する方向が逆である。前述のように、保持具10に保持されたガイドワイヤ60は、本体部20の湾曲外側の内表面に沿うように位置する。ガイドワイヤ60は、本体部20の湾曲外側の内表面から本体部20の内表面に沿ってスリット部25側に移動した場合、周方向のいずれの向きであっても、第1把持部28または第2把持部29に引っ掛かって移動が停止する。このため、保持具10は、ガイドワイヤ60がスリット部25から滑り落ちることを抑制できる。
【0032】
把持部27の内腔24への突出長さは、内腔24の半径以下、好ましくは内腔24の半径の0.5倍以上1倍以下である。これにより、術者は、ガイドワイヤ60のループをスリット部25から挿入し、把持部27を超えて内腔24の奥側まで挿入しやすい。
【0033】
第1把持部28と第2把持部29は、内腔24の周方向において、いずれもスリット部25と90°の角度をなす位置に配置されてもよい。すなわち、第1把持部28と第2把持部29は、内腔24に突出する方向が同じであってもよい。この場合、第1把持部28と第2把持部29の内腔24への突出長さは、内腔24の半径以上であってもよく、内腔24の半径の0.5倍以上2倍未満とすることができる。
【0034】
把持部27は、ガイドワイヤ60の基端部61を把持する第1把持部28のみ有していてもよい。ガイドワイヤ60は、基端部61の方が先端部62より復元力が大きいため、保持具10は、第1把持部28のみでもガイドワイヤ60の長軸方向への移動をある程度抑制できる。
【0035】
保持具10の使用方法について説明する。保持具10を使用する前に、術者は、予めガイドワイヤ60をコイル状に巻き、複数のループを形成する。次に、術者は、ガイドワイヤ60のループを、本体部20のスリット部25から内腔24に挿入する。このとき、術者は、ガイドワイヤ60を把持部27よりも内腔24の奥側まで挿入する。内腔24に挿入されたガイドワイヤ60は、図5に示すように、自身の復元力によって各ループの直径が大きくなり、本体部20の湾曲外側の内表面に沿うように配置される。これにより、ガイドワイヤ60が本体部20の内表面に沿ってスリット部25側に移動しても、把持部27に引っ掛かってスリット部25に到達しないため、ガイドワイヤ60がスリット部25から滑り落ちることを抑制できる。
【0036】
ガイドワイヤ60を内腔24に配置したら、術者は、ガイドワイヤ60の基端部61を第1把持部28の2つの基部27a間に挿入する。これによって、ガイドワイヤ60の基端部61は、第1把持部28に把持される。また、術者は、ガイドワイヤ60の先端部62を第2把持部29の2つの基部27a間に挿入する。これによって、ガイドワイヤ60の先端部62は、第2把持部29に把持される。図4に示すように、コイル状に巻いたガイドワイヤ60は、ループ部分が保持具10の内腔24に、基端部61が第1把持部28に、先端部62が第2把持部29に、それぞれ配置されることにより、保持具10に堅固に保持される。
【0037】
ガイドワイヤ60を保持具10から取り外す際は、第1把持部28からガイドワイヤ60の基端部61を、第2把持部29からガイドワイヤ60の先端部62を、それぞれ取り外し、ガイドワイヤ60を第1開口部22または第2開口部23から抜き取る。このように、保持具10は、ガイドワイヤ60の取り外し操作が容易である。なお、ガイドワイヤ60は、スリット部25から取り外されてもよい。
【0038】
保持具の変形例について説明する。図6に示すように、保持具30は、本体部31の内腔24の第1開口部32近傍と第2開口部33近傍に、それぞれ圧縮部材37を有していてもよい。圧縮部材37は、圧縮されることで変形する材料で形成されている。圧縮部材37は、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。また、圧縮部材37は、発泡体やスポンジなどの多孔質体であってもよい。
【0039】
保持具30は、圧縮部材37を有することで、第1開口部32と第2開口部33の内径を小さくすることができる。また、保持具30は、圧縮部材37の変形により、ガイドワイヤ60を保持する。このため、保持具30は、ガイドワイヤ60が長軸方向に移動しにくくなり、コイル状に巻いたガイドワイヤ60のループがほどけることを抑制できる。
【0040】
保持具10は、本体部20が第1開口部32と第2開口部33に向かってテーパ状に縮径していてもよい。これにより、保持具10は、第1開口部32と第2開口部33の内径が小さくなるため、ガイドワイヤ60の長軸方向への移動を抑制できる。
【0041】
保持具10は、保持具10を外部の対象物に固定するための固定機構40を有していてもよい。図7に示すように、保持具10に設けられる固定機構40は、本体部20に設けられる保持具固定部42と、外部の対象物に接着固定される接着面43aを有する外部固定部43と、保持具固定部42と外部固定部43との間を連結するワイヤ状の連結部41とを有している。外部固定部43が固定される外部の対象物は、ガイドワイヤ60を保管するための液体を満たした容器や、手術用のドレープ、手術台などである。外部固定部43は、接着面43aを有するものに限られず、外部の対象物を挟むことができるクリップなどであってもよい。固定機構40を有する保持具10は、ガイドワイヤ60を保持した保持具10が容器や手術台から落下することを防止できる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る(1)保持具10は、可撓性を有する医療用のガイドワイヤ60をコイル状に巻いた状態で保持する保持具10であって、両端の開口部22、23と、両端の開口部22、23の間に延びる内腔24と、を有する一方に湾曲した筒状の本体部20を有し、本体部20は、湾曲内側で両端の開口部22、23の間に延びるスリット部25と、内腔24の開口部22、23近傍に設けられる把持部27と、を有する。このように構成した保持具10は、コイル状に巻いた状態のガイドワイヤ60のループを、本体部20のスリット部25から内腔24に挿入し、把持部27にガイドワイヤ60の端部を把持させることで、ガイドワイヤ60を容易かつ堅固に保持できる。保持具10の内腔24に挿入されたガイドワイヤ60は、コイル状に巻かれた状態から直線状の状態に戻ろうとする復元力により、湾曲外側の内表面に沿うように配置される。これにより、ガイドワイヤ60は、本体部20の湾曲内側に配置されるスリット部25から滑り落ちにくい。また、保持具10は、把持部27から取り外したガイドワイヤ60の端部を本体部20の開口部22、23から抜き取ることで、保持具10からガイドワイヤ60を容易に取り外すことができる。
【0043】
(2)上記(1)の保持具10において、スリット部25の両側の縁部25aは、内腔24が延びる方向に沿って波形形状を有してもよい。これにより、保持具10は、本体部20の内腔24に挿入されたガイドワイヤ60がスリット部25から滑り落ちることを抑制できる。
【0044】
(3)上記(2)の保持具10において、スリット部25は、一方の縁部25aのうち他方の縁部25a側に最も突出した位置から本体部20の長軸方向に延びる線と、他方の縁部25aのうち一方の縁部25a側に最も突出した位置から本体部20の長軸方向に延びる線との距離が、ガイドワイヤ60の外径より小さくてもよい。これにより、保持具10は、内腔24に挿入されたガイドワイヤ60が、スリット部25から滑り落ちることを抑制できる。
【0045】
(4)上記(2)または(3)の保持具10において、スリット部25は、本体部20の長軸方向の同一位置における一方の縁部25aと他方の縁部25aとの距離が、ガイドワイヤ60の外径より大きくてもよい。これにより、保持具10は、ガイドワイヤ60をスリット部25から内腔24に挿入可能とすることができる。
【0046】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの保持具10において、把持部27は、内腔24の周方向においてスリット部25と90°の角度をなす位置に配置されていてもよい。これにより、保持具10は、内腔24に挿入されたガイドワイヤ60が本体部20の内表面に沿ってスリット部25側に移動しても、把持部27に引っ掛かってスリット部25に到達しないため、ガイドワイヤ60がスリット部25から滑り落ちることを抑制できる。
【0047】
(6)上記(5)の保持具10において、把持部27は、一方の開口部22近傍に設けられる第1把持部28と、他方の開口部23近傍に設けられる第2把持部29と、を有し、第1把持部28と第2把持部20は、内腔24の周方向において互いに180°の角度をなすように配置されていてもよい。これにより、保持具10は、内腔24に挿入されたガイドワイヤ60が本体部20の内表面に沿っていずれの方向に移動しても、いずれかの把持部27に引っ掛かってスリット部25に到達しないため、ガイドワイヤ60がスリット部25から滑り落ちることを抑制できる。
【0048】
(7)上記(6)の保持具10において、第1把持部28は、ガイドワイヤ60の先端部を把持し、第2把持部29は、ガイドワイヤ60の基端部を把持してもよい。これにより、保持具10は、ガイドワイヤ60の両端部を把持できるので、ガイドワイヤ60が長軸方向に移動することをより抑制できる。
【0049】
(8)上記(1)~(7)のいずれかの保持具10において、把持部27は、互いに離間して配置された一対の平板によって形成され、本体部20の内表面から立ち上がる基部27aと、基部27aの突出先端側で他方の平板から離れるように傾斜した開放部27bと、を有してもよい。これにより、保持具10は、把持部27にガイドワイヤ60を挿入しやすく、かつ、平板の弾性により生じる把持力でガイドワイヤ60を堅固に把持する把持できる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。上述の実施形態において医療用の長尺デバイスはガイドワイヤ60であるが、カテーテルなど他の長尺デバイスであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 保持具
20 本体部
22 第1開口部
23 第2開口部
24 内腔
25 スリット部
25a 縁部
27 把持部
27a 基部
27b 開放部
28 第1把持部
29 第2把持部
60 ガイドワイヤ
61 基端部
62 先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7