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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003016
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】代謝工学
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20231228BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/61 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231228BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20231228BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/82 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/74 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/79 20060101ALI20231228BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20231228BHJP
   C12P 7/40 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C12N15/29 ZNA
C12N15/53
C12N15/61
C12N5/10
A01H5/00 A
C12N1/19
C12N15/82 Z
C12N15/70 Z
C12N15/74 Z
C12N15/79 Z
A01H1/00 A
C12P7/40
【審査請求】有
【請求項の数】44
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023180377
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2020524403の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】1721600.3
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】500039647
【氏名又は名称】プラント・バイオサイエンス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン,アン
(72)【発明者】
【氏名】リード,ジェームズ
(57)【要約】
【課題】QAを合成するための新規システムが当該技術分野に貢献をもたらす。
【解決手段】 本発明は概して、宿主において異種ヌクレオチド配列を発現させることによって宿主においてキラ酸を生合成するための材料及び方法であって、その異種ヌクレオチド配列の各々はQA生合成活性を組み合わせて有するポリペプチドをコードする材料及び方法に関する。例示的なポリペプチドは(i)ベータ-アミリンシンターゼ、(ii)C-28位においてベータ-アミリン又はその酸化誘導体をカルボン酸に酸化することができる酵素、(iii)C-16α位においてベータ-アミリン又はその酸化誘導体をアルコールに酸化することができる酵素、及び(iv)C-23位においてベータ-アミリン又はその酸化誘導体をアルデヒドに酸化することができる酵素を含む。好ましいヌクレオチド配列はQ.サポナリアから得られるか又はそれに由来する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主を、前記宿主が2,3-オキシドスクアレン(OS)からのキラ酸(QA)生合成を実行できない表現型から、前記宿主が前記QA生合成を実行できる表現型に変換する方法であって、
前記宿主又はその1つ又は複数の細胞内で異種核酸を発現させる工程であって、前記核酸を前記宿主又はいずれかの祖先に導入する前工程の後の工程を含み、
前記異種核酸が、各々が前記QA生合成活性を組み合わせて有するポリペプチドをコードする複数のヌクレオチド配列を含む、方法。
【請求項2】
前記核酸が、以下のポリペプチド
(i)トリテルペンへのOSの環化のためのβ-アミリンシンターゼ(bAS)、
(ii)C-28位においてβ-アミリン又はその酸化誘導体をカルボン酸に酸化することができる酵素(「C-28オキシダーゼ」)、
(iii)C-16α位においてβ-アミリン又はその酸化誘導体をアルコールに酸化することができる酵素(「C-16αオキシダーゼ」)、及び
(iv)C-23位においてβ-アミリン又はその酸化誘導体をアルデヒドに酸化することができる酵素(「C-23オキシダーゼ」)
の全てをコードし、
前記ポリペプチドの各々が任意選択によりQ.サポナリアから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記C-28オキシダーゼ、C-16αオキシダーゼ及びC-23オキシダーゼが、全てCYP450酵素である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(i)前記C-28オキシダーゼがCYP716であり、
(ii)前記C-16αオキシダーゼが、CYP716又はCYP87であり、
(iii)前記C-23オキシダーゼが、CYP714、CYP72又はCYP94である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記bAS、C-28オキシダーゼ、C-16αオキシダーゼ及びC-23オキシダーゼポリペプチドが、表1又は2におけるそれぞれのポリペプチド、又は任意選択により表4に規定されている、前記ポリペプチドのいずれかの実質的に相同なバリアント若しくは断片から選択されるか、或いは表1又は2におけるそれぞれのポリヌクレオチド、又は任意選択により表4に規定されている、前記ポリヌクレオチドのいずれかの実質的に相同なバリアント若しくは断片によってコードされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、
(i)配列番号2に示されるβ-アミリンシンターゼ(bAS)、
(ii)配列番号4若しくは18に示されるか、又は配列番号19~28のいずれかによってコードされるC-28オキシダーゼ、
(iii)配列番号6、10若しくは12に示されるC-16αオキシダーゼ、
(iv)配列番号8、14若しくは16に示されるC-23オキシダーゼ
又は前記ポリペプチドのいずれかの実質的に相同なバリアント若しくは断片
からなるリストから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、
(i)配列番号2に示されるβ-アミリンシンターゼ(bAS)、
(ii)配列番号4に示されるC-28オキシダーゼ、
(iii)配列番号6に示されるC-16αオキシダーゼ、
(iv)配列番号8に示されるC-23オキシダーゼ
又は前記ポリペプチドのいずれかの実質的に相同なバリアント若しくは断片
からなるリストから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記核酸が、以下のポリペプチド:
(i)HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)、
(ii)スクアレンシンターゼ(SQS)、
のうちの1つ又は複数をさらにコードし、
前記HMGR又はSQSは、任意選択により表3におけるそれぞれのポリペプチド又は前記ポリペプチドのいずれかの実質的に相同なバリアント若しくは断片から選択されるか、或いは表3におけるそれぞれのポリヌクレオチド、又は前記ポリヌクレオチドのいずれかの実質的に相同なバリアント若しくは断片によってコードされる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヌクレオチド配列が、2つ又はそれ以上の異なる核酸分子に存在する、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記核酸分子が、各々が前記核酸分子の1つ又は複数を保有する複数のアグロバクテリウム・ツメファシエンス株の共インフィルトレーションによって導入される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸分子が一過性発現ベクターである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記一過性発現ベクターの各々が、
(i)プロモーターであって、以下と作動可能に連結されている、プロモーター、
(ii)RNA-2ゲノムセグメントにおける標的開始部位が突然変異されている、二分RNAウイルスの前記RNA-2ゲノムセグメントに由来するエンハンサー配列、
(iii)前記QA生合成活性を組み合わせて有する前記ポリペプチドのうちの1つをコードするヌクレオチド配列、
(iv)転写終結配列、及び任意選択により
(v)前記転写終結配列の上流に位置する3’UTR
を含む発現カセットを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
異種核酸を含有するか又は前記異種核酸で形質転換された宿主細胞であって、前記異種核酸が、各々がQA生合成活性を組み合わせて有するポリペプチドをコードする複数のヌクレオチド配列を含み、
前記核酸の発現が、前記形質転換された宿主にQA生合成を実行する能力を付与する、宿主細胞。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
前記核酸を含む複数の組換え構築物を、それを一過性発現するための細胞に共インフィルトレーションさせることによって請求項13又は14に記載の宿主細胞を産生するプロセス。
【請求項16】
ベクターを介して前記核酸を細胞に導入し、前記核酸をゲノムに導入するために前記ベクターと前記細胞ゲノムとの間で組換えを引き起こすか、又は可能にすることによって前記細胞を異種核酸で形質転換することによって請求項13又は14に記載の宿主細胞を産生するプロセス。
【請求項17】
トランスジェニック植物を産生する方法であって、
(a)請求項16に記載のプロセスを実施する工程であって、前記宿主細胞が植物細胞である、工程、
(b)形質転換された植物細胞から植物を再生する工程
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法によって得ることができるトランスジェニック植物、又は前記トランスジェニック植物のクローン、又は自家若しくは雑種後代、又は他の子孫であるトランスジェニック植物であって、
前記異種核酸の発現が、それ以外の点で前記トランスジェニック植物に対応する野生型植物と比較して、QA生合成を実行する増加した能力を付与する、トランスジェニック植物。
【請求項19】
作物又は蘚類である、請求項18に記載の植物。
【請求項20】
微生物である、請求項13又は14に記載の宿主細胞。
【請求項21】
酵母である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
各々が植物シトクロムP450レダクターゼ(CPR)であるポリペプチドをコードする1つ又は複数のヌクレオチド配列を含む異種核酸をさらに含有するか、又は前記異種核酸で形質転換されている、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
前記CPRが、配列番号35に示されるか、又は前記ポリペプチドの実質的に相同なバリアント若しくは断片である、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
細胞懸濁培養物に存在する、請求項13、14又は20から23のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項25】
異種宿主においてQA又はその誘導体である産生物を産生する方法であって、請求項13、14又は20から24のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養し、それから産生物を精製することを含む、方法。
【請求項26】
異種宿主においてQA又はその誘導体である産生物を産生する方法であって、請求項18又は19に記載の植物を成長させ、次いで前記植物を採取し、それから産生物を精製することを含む、方法。
【請求項27】
アジュバントとしての、又はアジュバントの調製における、請求項25又は26に記載の方法によって得られるQA又はその誘導体の使用。
【請求項28】
Q.サポナリア由来のQAヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、前記QAヌクレオチド配列が、
(i)配列番号2、4、6又は8の全て又は一部をコードするか、
(ii)配列番号2、4、6又は8と少なくとも約60%の同一性を共有するそれらの配列番号のいずれかの相同性バリアントであるバリアント配列をコードするか、及び/又は
(iii)配列番号1、3、5若しくは7又はそれらのゲノム等価物から選択される、核酸分子。
【請求項29】
前記QAヌクレオチド配列が、1つ又は複数のアミノ酸の付加、挿入、欠失又は置換によって、配列番号2、4、6又は8に示されるアミノ酸配列の誘導体をコードする、請求項28に記載の核酸。
【請求項30】
請求項28又は29に記載の核酸によってコードされる単離されたポリペプチド。
【請求項31】
請求項28に記載の核酸を修飾する工程を含む、請求項30に記載の核酸を産生するプロセス。
【請求項32】
請求項28又は29に記載の核酸を含む組換えベクター。
【請求項33】
前記核酸が、宿主細胞における転写のためのプロモーターと作動可能に連結され、前記プロモーターが任意選択により誘導性プロモーターである、請求項32に記載のベクター。
【請求項34】
植物ベクター又は微生物ベクターである、請求項32又は33に記載のベクター。
【請求項35】
(i)プロモーターであって、以下と作動可能に連結されている、プロモーター、
(ii)RNA-2ゲノムセグメントにおける標的開始部位が突然変異されている、二分RNAウイルスのRNA-2ゲノムセグメントに由来するエンハンサー配列、
(iii)QAヌクレオチド配列、
(iv)転写終結配列、及び任意選択により
(v)前記転写終結配列の上流に位置する3’UTR
を含む発現カセットを含む、請求項34に記載のベクター。
【請求項36】
請求項32から35のいずれか1項に記載のベクターを宿主細胞に導入する工程を含む、方法。
【請求項37】
請求項32から35のいずれか1項に記載のベクターを含有するか、又は前記ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項38】
微生物であり、任意選択により酵母細胞である、請求項37に記載の宿主細胞。
【請求項39】
その染色体内に請求項28又は29に記載の異種核酸を有する、植物細胞である宿主細胞。
【請求項40】
請求項32から34のいずれか1項に記載のベクターを宿主細胞に導入する工程、及び前記宿主細胞を形質転換するように前記ベクターと前記宿主細胞ゲノムとの間で組換えを引き起こすか、又は可能にする工程を含む、方法。
【請求項41】
トランスジェニック植物を産生する方法であって、
(a)請求項40に記載の方法を実施する工程であって、前記宿主細胞が植物細胞である、工程、
(b)形質転換された植物細胞から植物を再生する工程
を含む、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法によって得ることができるトランスジェニック植物、又は前記トランスジェニック植物のクローン、又は自家若しくは雑種後代、又は他の子孫であるトランスジェニック植物であって、各々の場合、請求項32から34のいずれか1項に記載の異種核酸を含む、トランスジェニック植物。
【請求項43】
請求項84に記載の植物又は請求項80から82のいずれか1項に記載の宿主細胞であって、
(i)配列番号2に示されるβ-アミリンシンターゼ(bAS)、
(ii)配列番号4に示されるC-28オキシダーゼ、
(iii)配列番号6に示されるC-16αオキシダーゼ、
(iv)配列番号8に示されるC-23オキシダーゼ
又は前記ポリペプチドのいずれかの実質的に相同なバリアント若しくは断片
の全てを含む異種核酸を含む。
【請求項44】
細胞においてQA生合成に影響又は作用を与える方法であって、前記細胞内で請求項32から34のいずれか1項に記載の異種核酸の発現を引き起こすか、又は可能にする工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、宿主細胞におけるキラ酸産生又は加水分解を操作又は修飾する際に有用性を有する遺伝子及びポリペプチドに関する。本発明はさらに、これを利用するシステム、方法及び産生物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、メバロン酸(MVA)経路の主要産生物である、ステロール及びトリテルペノイドなどの多種多様な環状トリテルペンを産生する。
【0003】
QS-21は、チリの木であるキラヤ・サポナリア(Quillaja サポナリア)(マメ目)によって合成された複合トリテルペノイドサポニンである。
【0004】
コアQS-21トリテルペン骨格はキラ酸(「QA」)であり、この足場は、C-3位に存在する分枝三糖及びC-28位における直鎖四糖により修飾されている。C-28直鎖四糖はまた、複合アラビノシル化アシル鎖を特徴とする(図1)。
【0005】
QS-21は、免疫刺激アジュバントとしての有用性を有する。しかしながら、QS-21の生物学的供給源は限られており、その構造の複雑性及びQAの複雑性に起因して、化学合成は困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、とりわけQS-21の調製において有用性を有する、QAを合成するための新規システムが当該技術分野に貢献をもたらすことが、理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
QS-21のコアアグリコン(キラ酸)は、単純なトリテルペンである、β-アミリンの誘導体であり、そしてβ-アミリンはオキシドスクアレンシクラーゼ(OSC)による普遍的直鎖前駆体2,3-オキシドスクアレン(OS)の環化によって合成される(図2)。
【0008】
β-アミリン足場はさらに、C-16α、C-23及びC-28位においてそれぞれアルコール、アルデヒド及びカルボン酸により酸化されてキラ酸を形成する。このために提案された直鎖生合成経路を図2に示すが、これらの酸化反応は異なる中間体を介して異なる順序で起こり得ることが理解される(図11参照)。
【0009】
したがって、OSからのQA生合成は少なくとも4つの異なる酵素段階を含む。関与する酵素は以下を含む:
・ オキシドスクアレンシクラーゼ、
・ C-28位においてβ-アミリン又はその酸化誘導体をカルボン酸に酸化することができる酵素、
・ C-16α位においてβ-アミリン又はオレアノール酸などのその酸化誘導体をアルコールに酸化することができる酵素、
・ C-23位においてβ-アミリン又はエキノシスト酸などのその酸化誘導体をアルデヒドに酸化することができる酵素。
【0010】
これらの酵素による連続酸化から生じるβ-アミリンの酸化誘導体を図11に示し、以下の表にまとめる:
【0011】
【表1】
【0012】
例として、図2の例示的なスキームを使用すると、これらの酵素はそれぞれ以下であってもよい:
・ β-アミリンシンターゼ、
・ β-アミリンをオレアノール酸に酸化することができる酵素、
・ オレアノールをエキノシスト酸に酸化することができる酵素、
・ エキノシスト酸をQAに酸化することができる酵素。
【0013】
本発明者らは、そうでなければQA生産者ではない異種生物内でQA生合成経路全体を操作することに成功した。具体的には、本発明者らは、ベンサミアナタバコ(N.benthamiana)に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株を共インフィルトレーション(co-infiltration)することによって本発明を実証した。これは、生合成遺伝子の共発現によって達成されたキラ酸の異種産生の最初の記載であり、当該技術分野に対する大きな貢献を表す。
【0014】
より具体的には、本発明者らは、最低でも4つの付加遺伝子がQA生合成に十分であることを実証した(bAS及び3つのCYP450)。これらは有利には任意選択のHMG-CoAレダクターゼと組み合わせると産生物レベルを増加させた。
【0015】
さらに、当該技術分野に対するさらなる貢献において、本発明者らは、QA生合成に作用するポリペプチドをコードするキラヤ・サポナリアにおける遺伝子を同定した。
【0016】
本明細書に記載される方法及び材料は、とりわけ、野生型宿主によって天然に産生されないとしても、QAを産生することができる組換え宿主生物(例えば植物又は微生物)を産生するために使用することができる。
【0017】
本発明によるキラ酸のデノボ操作は、例えば、QS-21のさらなる化学合成のために後で使用することができる、多量のQAを含有する植物又は微生物を産生することができる[18]。
【0018】
したがって、本発明の一態様では、宿主を、宿主がOSからのQA生合成を実行できない表現型から、宿主が前記QA生合成を実行できる表現型に変換する方法であって、
宿主又はその1つ又は複数の細胞内で異種核酸を発現させる工程であって、核酸を宿主又はいずれかの祖先に導入する前工程の後の工程を含み、
その異種核酸は、各々が前記QA生合成活性を組み合わせて有するポリペプチドをコードする複数のヌクレオチド配列を含む、方法が提供される。
【0019】
好ましくは、核酸は以下の酵素:
・ トリテルペンへの普遍的な直鎖前駆体2,3-オキシドスクアレン(OS)の環化のためのβ-アミリンシンターゼ(bAS)、
・ C-28位においてβ-アミリン又はその酸化誘導体をカルボン酸に酸化することができるCYP450、C-16α位においてβ-アミリン又はオレアノール酸などのその酸化誘導体をアルコールに酸化することができるCYP450、
・ C-23位においてβ-アミリン又はエキノシスト酸などのその酸化誘導体をアルデヒドに酸化することができるCYP450
のうちのいくつか又は全て(1つ、2つ、3つ又は4つ)をコードする。
【0020】
ある特定の実施形態では、これらのCYP450酵素は、
・ C-28位においてβ-アミリンを、オレアノール酸を形成するカルボン酸に酸化することができるCYP450、
・ C-16α位においてオレアノール酸を、エキノシスト酸を形成するアルコールに酸化することができるCYP450、
・ C-23位においてエキノシスト酸を、QAを形成するアルデヒドに酸化することができるCYP450
であってもよい。
【0021】
他の可能性がある中間体は、本明細書の開示及び特に図11に照らして当業者によって理解される。
【0022】
簡潔さのために、これらの酵素は、本明細書において、それぞれ「bAS」、「C-28オキシダーゼ」、「C-16αオキシダーゼ」及び「C-23オキシダーゼ」と称することがある。
【0023】
さらなる簡潔さのために、これらの酵素は、本明細書においてまとめて「QAポリペプチド」と称することがある。
【0024】
一実施形態では、QAポリペプチドのうちの少なくとも1つは、Q.サポナリア(Q.サポナリア)が起源である(に由来する)。好ましくは、QAポリペプチドのうちの2つ、3つ又は4つ全ては、Q.サポナリアが起源である。
【0025】
一実施形態では:
C-28オキシダーゼは、CYP716である
【0026】
C-16αは、CYP716又はCYP87である
【0027】
C-23オキシダーゼは、CYP714、CYP72又はCYP94である
【0028】
本発明の実施に使用するための好ましい遺伝子又はポリペプチドは配列付録に示される。
【0029】
好ましい実施形態では、それぞれのポリペプチドのうちの1つ、2つ、3つ又は4つは、例えば以下のように表1に記載されるQ.サポナリア配列から選択される:
β-アミリンシンターゼ(bAS)=配列番号2
C-28オキシダーゼ=配列番号4
C-16αオキシダーゼ=配列番号6
C-23オキシダーゼ=配列番号8
又は以下に説明されるようなこれらのバリアント若しくは断片。
【0030】
他の実施形態では、それぞれのポリペプチドのうちの1つ、2つ又は3つは、例えば以下のように表2a、2b又は2cに記載される非Q.サポナリア配列から選択される:
C-28オキシダーゼ=配列番号18
C-16αオキシダーゼ=配列番号10若しくは12
C-23オキシダーゼ=配列番号14若しくは16
又は以下に説明されるようなこれらのバリアント若しくは断片。
【0031】
ある特定の実施形態では、QAポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15若しくは17のうちのいずれかに示されるヌクレオチド配列、又は以下に説明されるようなこれらのバリアント若しくは断片によってコードされる。
【0032】
他の実施形態では、C-28オキシダーゼは、配列番号19~28:(VvCYP716A15、VvCYP716A17、PgCYP716A52v2、MlCYP716A75、CqCYP716A78、CqCYP716A79、BvCYP716A80、BvCYP716A81、MdCYP716A175又はCrCYP716AL1)として表2dに記載される非Q.サポナリア受託のうちの1つによってコードされるポリペプチド又は以下に説明されるようなこれらのバリアント若しくは断片である。これらのヌクレオチド配列はそれぞれ本明細書において配列番号19~28と称される。
【0033】
簡潔さのために、表1及び2のいずれかのヌクレオチド配列は本明細書において「QA遺伝子」と称することある。
【0034】
バリアント
これらのQA遺伝子(及びポリペプチド)の使用に加えて、本発明はこれらの遺伝子(及びポリペプチド)のバリアントの使用を包含する。
【0035】
「バリアント」QA核酸又はQAポリペプチド分子は、本明細書に説明されるQA遺伝子又はポリペプチドの全て又は一部と相同性を共有するか、又はそれらと同一である。
【0036】
バリアントポリペプチドは天然QAポリペプチドの関連する生物活性を共有する。バリアント核酸は関連するバリアントポリペプチドをコードする。
【0037】
この文脈において、QAポリペプチドの「生物活性」は図2に示され、上記されているそれぞれの反応を触媒する能力である(すなわち、シクラーゼ又はオキシダーゼ活性)。関連する生物活性は、in vitroで図2に示される反応(又は例えば図11のような対応する酸化反応)に基づいてアッセイすることができる。或いはそれらは、実施例に記載されるようにin vivoでの活性によって、すなわちQAを生成するための複数の異種構築物の導入によってアッセイすることができ、QAはLC-MSなどによってアッセイすることができる。
【0038】
表8は、Clustal Omega(https://www.ebi.ac.ukを介してアクセスしたバージョン1.2.4)を使用して得られた、本明細書に記載されるP450酵素の一対比較を示す。
【0039】
本明細書に開示されている配列のバリアントは、好ましくは少なくとも50%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、65%、又は70%、又は80%の同一性、最も好ましくは少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を共有する。このようなバリアントは、本明細書において「実質的に相同」と称することがある。
【0040】
好ましいバリアントは以下であり得る:
(i)天然に存在する核酸、例えば対立遺伝子(1つ又は複数の塩基において多型又は突然変異を含む)又は偽対立遺伝子(本発明のQA遺伝子と密接した遺伝子座において生じ得る)。また、本発明のQA遺伝子と同じファミリーに属するパラログ、イソ遺伝子、又は他の相同遺伝子も含まれる。また、他の植物種由来のオルソログ又はホモログも含まれる。
【0041】
表4は、1KPデータセットにおいて見出された遺伝子配列と、本開示におけるQ.サポナリア植物からPCRによって得られた配列決定クローンとの間で同定されたわずかな配列の相違を示す。これは、約1500bpのOQHZ-2012090でも、19個の変異(1%超の変異)が同定されたことを実証する。具体的には、それぞれの配列における表4に記載される変異の1つ又は複数を含むQA遺伝子又はポリペプチドの使用が本開示によって想定される。さらに、本発明のQA遺伝子のホモログであるアミノ酸配列をコードする核酸分子が本発明の範囲内に含まれる。相同性は、以下に説明されるように、ヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列レベルであり得る。
【0042】
(ii)本開示に照らして当業者によって調製することができる、人工核酸。このような誘導体は、例えば、部位特異的若しくはランダム突然変異誘発によって、又は直接合成によって調製することができる。好ましくは、バリアント核酸は、本発明のQA遺伝子の配列の全て又は一部を有する元の核酸から直接的又は間接的のいずれかによって(例えば、1つ又は複数の増幅又は複製工程を介して)生成される。
【0043】
また、上記の核酸に対応するが、3’又は5’末端において伸長された核酸も含まれる。
【0044】
本明細書に使用されている場合、「QAバリアント核酸」という用語は、これらの可能性の全てを包含する。ポリペプチド又はタンパク質の文脈において使用されている場合、それはバリアント核酸のコードされた発現産物を示す。
【0045】
各々の場合において、好ましいQA生合成修飾核酸は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15及び17のいずれか、又はこれらの実質的に相同なバリアントである。
【0046】
好ましいQA生合成修飾ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16及び18のいずれか、又はこれらの実質的に相同なバリアントである。
【0047】
本発明に使用するための他の好ましいQA生合成修飾核酸は、配列番号19~28のいずれか、又はこれらの実質的に相同なバリアント若しくは断片である。他の好ましいQA生合成修飾ポリペプチドは、これらの配列又はバリアント若しくは断片のいずれかによってコードされるポリペプチドである。
【0048】
補足遺伝子
本発明の実施形態では、本明細書に記載される本発明のQA遺伝子及びバリアント核酸に加えて、QA産生のフラックスに作用し得る付加遺伝子を導入することが好ましいことがある。
【0049】
例えば、MVAはトリテルペノイド合成における重要な中間体である。したがって、QAの収率を最大にするために、宿主内での律速MVA経路遺伝子の発現が望ましいことがある。
【0050】
HMG-CoAレダクターゼ(HMGR)は、MVA経路における律速酵素であると考えられている。
【0051】
HMGR(tHMGR)の組換えフィードバック非感受性短縮型の使用は、ベンサミアナタバコにおける一過性発現に際してトリテルペン(β-アミリン)含量を増加させることが実証されている[5]、同様に図10
【0052】
したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に記載されるQA遺伝子と共に異種HMGR(例えば、フィードバック非感受性HMGR)の使用を含む。HMGRコード又はポリペプチド配列の例には、配列番号29~32、又はこれらのバリアント若しくは断片が含まれる。バリアントは、上記されているQA遺伝子又はポリペプチドに関連して説明されるように、ホモログ、対立遺伝子、又は人工誘導体などであってもよい。例えば、利用される宿主に固有のHMGR、例えば、酵母宿主中の酵母HMGRなどが好ましいことがある。HMGR遺伝子は当該技術分野において公知であり、本開示に照らして適切に選択することができる。
【0053】
また、スクアレンシンターゼ(SQS;図10参照)が潜在的な律速段階であることも報告されている[5]。
【0054】
したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に記載されるQA遺伝子及び任意選択によりHMGRと共に異種SQSの使用を含む。
【0055】
SQSコード又はポリペプチド配列の例には、配列番号33~34又はそれらのバリアント若しくは断片が含まれる。バリアントは、上記されているQA遺伝子又はポリペプチドに関連して説明されるように、ホモログ、対立遺伝子又は人工誘導体などであってもよい。例えば、利用される宿主に固有のSQS、例えば酵母宿主中の酵母SQSなどが好ましいことがある。SQS遺伝子は当該技術分野において公知であり、必要に応じて本開示に照らして適切に選択することができる。
【0056】
ある特定の宿主(例えば、酵母)を使用する場合、QA産生のフラックスを改善するために付加遺伝子を導入することが望ましいことがある。例には、導入されたP450に対するレドックスパートナーとして役立つ1つ又は複数の植物シトクロムP450レダクターゼ(CPR)が含まれ得る。したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に記載されるQA遺伝子と共に、AtATR2(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)シトクロムP450レダクターゼ2)などの異種シトクロムP450レダクターゼの使用を含む。HAtATR2コード又はポリペプチド配列の例には、配列番号35~36又はこれらのバリアント若しくは断片が含まれる。バリアントは、上記されているQA遺伝子又はポリペプチドに関連して説明されるように、ホモログ、対立遺伝子又は人工誘導体などであってもよい。
【0057】
付加遺伝子が、さらなる活性を提供し、及び/又は発現若しくは活性を改善するために本発明の実施に利用され得ることは、本開示に照らして当業者によって理解される。これらには、補因子若しくはヘルパータンパク質、又は他の因子を発現するものが含まれる。例には、QAからのQS-21の合成に関与する遺伝子が含まれ得る。
【0058】
簡潔さのために、これらの核酸配列(「本発明のQA遺伝子」及び「QAバリアント核酸」、さらにQA合成をもたらす他の遺伝子、又はQAに対する二次修飾)のいずれも、本明細書において「QA核酸」又は「QA生合成修飾核酸」と称することがある。同様に、コードされたポリペプチドは、本明細書において「QAポリペプチド」又は「QA生合成修飾ポリペプチド」と称することがある。
【0059】
これらの総称がいずれかの態様又は実施形態に関して使用される場合、その意味は、これらの配列のいずれかに個別に適用されると解釈されることが理解される。
【0060】
ベクター
本発明の一態様として、上記に説明されている生合成経路におけるそれらの協調発現のための上記に説明されているQA核酸の1つ又は複数を各々保有している複数のアグロバクテリウム・ツメファシエンス株の共インフィルトレーションを利用する方法が開示されている。
【0061】
一部の実施形態では、例えばQA核酸を各々保有する少なくとも3つ又は4つの異なるアグロバクテリウム・ツメファシエンス株が共インフィルトレーションされる。
【0062】
これらの遺伝子は一過性発現ベクターから提示され得る。
【0063】
好ましい発現系は、WO2009/087391に記載される「高翻訳可能(Hyper-Translatable)」ササゲモザイクウイルス(「CPMV-HT」)系と呼ばれているものを利用し、その開示は、CPMV-HT系、例えばpEAQ-HT発現プラスミドに基づくベクターを使用する実施形態の支持として本明細書に具体的に組み込まれる。
【0064】
したがって、本発明に使用するためのベクター(典型的にバイナリーベクター)は、典型的に
(i)プロモーターであって、以下と作動可能に連結されている、プロモーター、
(ii)RNA-2ゲノムセグメントにおける標的開始部位が突然変異されている、二分RNAウイルスのRNA-2ゲノムセグメントに由来するエンハンサー配列、
(iii)上記されているQA核酸配列、
(iv)転写終結配列、及び任意選択により
(v)前記転写終結配列の上流に位置する3’UTR
を含む発現カセットを含む。
【0065】
本発明の実施に有用なベクター及び発現系のさらなる例は、本明細書以下により詳細に記載されている。
【0066】
宿主
本発明の態様では、宿主は、宿主がOSからの効果的なQA生合成を実行できない表現型から、宿主が前記QA生合成を実行できる表現型に変換され得、その結果、QAは宿主から回収され得るか、又は下流産生物を合成するためにin vivoで利用され得る。宿主の例には、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)などの植物及び酵母などの微生物が含まれる。これらは以下により詳細に説明されている。
【0067】
本発明は、ベクターを介してQA核酸を宿主細胞に導入し、本発明による核酸をゲノムに導入するためにベクターと宿主細胞ゲノムとの間で組換えを引き起こすか、又は可能にすることによって、宿主を上記されている異種核酸で形質転換することを含むことができる。
【0068】
本発明の別の態様では、異種核酸で形質転換された宿主細胞であって、異種核酸が、各々が前記QA生合成活性を組み合わせて有するポリペプチドをコードする複数のヌクレオチド配列を含み、
前記核酸の発現は、形質転換された宿主にOSからのQA生合成を実行する能力を付与するか、又は宿主における前記能力を改善する、宿主細胞が提供される。
【0069】
本発明はさらに、上記されている核酸又はベクターで形質転換された宿主細胞(例えば、QA生合成修飾ヌクレオチド配列を含む)、特に植物又は微生物細胞を包含する。トランスジェニック宿主細胞(すなわち、問題の核酸についてのトランスジェニック)において、導入遺伝子は、ゲノム外ベクターにあってもよいか、又はゲノム中に、好ましくは安定に組み込まれてもよい。一倍体ゲノム当たり1つより多い異種ヌクレオチド配列が存在してもよい。
【0070】
本明細書に記載される方法及び材料は、とりわけ、QAを蓄積する安定な作物を生成するために使用され得る。
【0071】
本発明による植物細胞を含む植物も提供される。
【0072】
産生物の産生
上記されている方法は、異種宿主においてQAを生成するために使用され得る。QAは一般に、それらが導入される種において天然に存在しない。
【0073】
本発明の植物又は方法からのQAは、単離され、商業的に利用され得る。
【0074】
上記の方法は、宿主においてQS-21を産生する方法の一部を形成することができ、場合によってはその方法における1つの工程を形成することができる。この方法は、宿主(それが微生物である場合)を培養する工程、又は宿主(それが植物である場合)を成長させ、次いでそれを収集し、それからQA又はQS-21産生物を精製する工程を含むことができる。このように産生された産生物は本発明のさらなる態様を形成する。QA又はQS-21産生物の有用性は上記されている。
【0075】
或いは、QAはQS-21のさらなる化学合成を可能にするために回収されてもよい[18]。
【0076】
本発明の新規遺伝子
本発明の支持として、本発明者らは、その種におけるQAの合成に関与すると考えられるQ.サポナリア由来の配列(配列番号1~8参照)を新たに特徴付けた。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、本発明のこれらの新たに特徴付けられたQA核酸(例えば、1つ、2つ、3つ又は4つのこのようなQA核酸)の1つ又は複数の使用を、任意選択により、当該技術分野において公知のQA生合成に作用する他の遺伝子の操作と併用して含む。
【0078】
Q.サポナリア由来のこれらの新たに特徴付けられたQA配列(配列番号1~8)は、これらの配列に由来するバリアント及びこれらの配列の材料、並びにそれらを使用する方法と同様に、それら自体で本発明の態様を形成する。
【0079】
ここで、本発明のいくつかの態様及び実施形態をより詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0080】
種々の実施形態では、本発明は、微生物又は植物などの宿主細胞におけるQAの総レベルを操作する手段を提供する。
【0081】
本発明の一態様では、上記されているQA生合成修飾核酸は、組換え、好ましくは複製可能なベクターの形態である。
【0082】
「ベクター」は、とりわけ、自己伝達性若しくは可動性であってもよく、又は自己伝達性若しくは可動性でなくてもよく、細胞ゲノムへの組み込み又は染色体外の存在(例えば、複製起点を有する自己複製プラスミド)のいずれかによって原核生物又は真核生物宿主を形質転換することができる、二本鎖又は一本鎖の線状又は環状形態の任意のプラスミド、コスミド、ファージ又はアグロバクテリウムバイナリーベクターを含むと定義される。
【0083】
当業者に周知のように、「バイナリーベクター」系は、(a)所望のヌクレオチド配列の植物細胞ゲノムへの移入を可能にする境界配列;(b)(ii)必要に応じて標的配列及び/又はエンハンサーと作動可能に連結された(i)植物活性プロモーターの発現カセットを一般に含む、所望のヌクレオチド配列自体を含む。所望のヌクレオチド配列は、境界配列の間に位置し、適切な条件下で植物ゲノムに挿入され得る。バイナリーベクター系は一般に、組み込みを行うために他の配列(A.ツメファシエンスに由来する)を必要とする。一般に、これは、アグロバクテリウム媒介一過性形質転換を使用する、いわゆる「アグロインフィルトレーション(agro-infiltration)」の使用によって達成され得る。簡潔に述べると、この技術は、そのDNAの一部(「T-DNA」)を、それが核DNAに組み込まれ得る宿主細胞に移入するアグロバクテリウム・ツメファシエンスの特性に基づく。T-DNAは、約21~23ヌクレオチド長である左右の境界配列によって規定される。インフィルトレーションは、例えば、注射基(葉において)又は真空(植物全体)によって達成され得る。本発明では、境界配列は一般に、アグロインフィルトレーションにより植物材料に1つ又は複数のベクターを導入した所望のヌクレオチド配列(T-DNA)付近に含まれる。
【0084】
一般的に、当業者は、ベクターを構築し、組換え遺伝子発現のためのプロトコールを設計することが十分に可能である。プロモーター配列、転写終結断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び必要に応じて他の配列を含む、適切な調節配列を含有する適切なベクターを選択又は構築することができる。さらなる詳細に関しては、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:第2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press or Current Protocols in Molecular Biology、第2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992年参照。
【0085】
具体的には、放線菌及び関連種、細菌及び真核生物(例えば、高等植物、蘚類、酵母又は真菌細胞)から選択され得る、2つの異なる宿主生物における複製を天然に又は設計によって可能とするDNAビヒクルを意味するシャトルベクターが含まれる。
【0086】
本発明による核酸を含むベクターは、特にベクターがゲノムへの組換えのために核酸を細胞に導入するために使用される場合、プロモーター又は他の調節配列を含む必要はない。
【0087】
好ましくは、ベクター内の核酸は、微生物、例えば、酵母及び細菌、又は植物細胞などの宿主細胞における転写のための適切なプロモーター又は他の調節エレメントの制御下にあり、それらと作動可能に連結されている。ベクターは、複数の宿主において機能する二機能性発現ベクターであってもよい。ゲノムDNAの場合、これは、それ自体のプロモーター又は他の調節エレメントを(任意選択により、以下の実施例に説明されている35Sエンハンサーなどの異種エンハンサーと組み合わせて)含有することができる。天然プロモーターを使用する利点は、これが多面的応答を回避することができることである。cDNAの場合、これは、宿主細胞における発現のための適切なプロモーター又は他の調節エレメントの制御下にあり得る。
【0088】
「プロモーター」とは、下流に(すなわち、二本鎖DNAのセンス鎖上の3’方向において)作動可能に連結されたDNAの転写が開始され得るヌクレオチドの配列を意味する。
【0089】
「作動可能に連結された」とは、プロモーターから開始される転写のために適切に配置され、配向された同じ核酸分子の一部としての結合を意味する。プロモーターと作動可能に連結されたDNAは、プロモーターの「転写開始調節下」にある。
【0090】
好ましい実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0091】
プロモーターに適用される場合、「誘導性」という用語は、当業者によって十分に理解されている。本質的に、誘導性プロモーターの制御下での発現は、与えられた刺激に応答して「オンに切り替えられる」か、又は増加する。刺激の性質は、プロモーター間で変化する。一部の誘導性プロモーターは、適切な刺激の非存在下で、少し又は検出できないレベルの発現を引き起こす(又は発現を引き起こさない)。他の誘導性プロモーターは、刺激の非存在下で検出可能な構成的発現を引き起こす。発現のレベルは刺激の非存在下であるかにかかわらず、あらゆる誘導性プロモーターからの発現は正確な刺激の存在下で増加する。
【0092】
したがって、本発明による核酸は、発現を使用者の制御下に設定するために外部誘導性遺伝子プロモーターの制御下に配置され得る。特に細胞が植物に含まれる場合、異種遺伝子の植物細胞への導入の利点は、選択に従って、遺伝子発現、それによるQA生合成に影響を与えることができるように、選んだプロモーターの制御下で遺伝子の発現を設定する能力である。さらに、例えば、野生型よりも高い又は低い活性を有する、野生型遺伝子の突然変異体及び誘導体を内在性遺伝子の代わりに使用することができる。
【0093】
したがって、本発明のこの態様は、本発明によって提供されるヌクレオチド配列、例えばQA生合成修飾遺伝子、最も好ましくは以下に記載されるQs QA核酸のうちの1つ、又はこれらの誘導体と作動可能に連結されたプロモーター(任意選択により誘導性)を含む、遺伝子構築物、好ましくは複製可能なベクターを提供する。
【0094】
本発明の文脈において特に興味深いものは、植物ベクターとして作動する核酸構築物である。植物に広く成功して以前に使用されていた特定の手順及びベクターは、Guerineau及びMullineaux(1993年)(Plant transformation and expression vectors. In: Plant Molecular Biology Labfax (Croy RRD ed) Oxford, BIOS Scientific Publishers, pp 121-148)によって記載されている。適切なベクターには、植物ウイルス由来ベクターが含まれ得る(例えば、EP-A-194809参照)。
【0095】
好ましくは、植物において使用するための本発明のベクターは、発現カセットの植物ゲノムへの移入及び組み込みを可能にする境界配列を含む。好ましくは、構築物は植物バイナリーベクターである。好ましくは、バイナリー形質転換ベクターはpPZPに基づく(Hajdukiewicz, et al. 1994)。他の例示的な構築物には、pBin19が含まれる(Frisch, D. A., L. W. Harris-Haller, et al. (1995). 「Complete Sequence of the binary vector Bin 19.」 Plant Molecular Biology 27: 405-409参照)。
【0096】
植物において作動する適切なプロモーターには、カリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35S)が含まれる。他の例は、Lindsey & Jones(1989年)「Plant Biotechnology in Agriculture」 Pub.OU Press、Milton Keynes、UKの120頁に開示されている。プロモーターは、発現の発生及び/又は組織特異的調節制御を付与する1つ又は複数の配列モチーフ又はエレメントを含むように選択され得る。誘導性植物プロモーターには、Caddickら、(1998年)、Nature Biotechnology 16:177~180頁のエタノール誘導性プロモーターが含まれる。
【0097】
所望の場合、抗生物質又は除草剤(例えば、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノトリシン(phosphinotricin)、クロルスルフロン、メトトレキサート、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、イミダゾリノン及びグリホサート)に対する耐性などの選択可能な表現型を付与するものなどの選択可能な遺伝子マーカーが構築物に含まれ得る。Haldrupら、1998年、Plant molecular Biology 37、287~296頁に記載されるものなどの陽性選択系を使用して抗生物質に依存しない構築物を作製することができる。
【0098】
上記に解説されているように、好ましいベクターは、WO2009/087391に記載されるような「CPMV-HT」ベクターである。以下の実施例は、これらのpEAQ-HT発現プラスミドの使用を実証する。
【0099】
本発明に使用するためのこれらのベクター(典型的にバイナリーベクター)は、典型的に
(i)プロモーターであって、以下と作動可能に連結されている、プロモーター、
(ii)RNA-2ゲノムセグメントにおける標的開始部位が突然変異されている、二分RNAウイルスのRNA-2ゲノムセグメントに由来するエンハンサー配列、
(iii)上記されているQA核酸配列、
(iv)転写終結配列、及び任意選択により
(v)前記転写終結配列の上流に位置する3’UTR
を含む発現カセットを含む。
【0100】
本明細書において称されている「エンハンサー」配列(又はエンハンサーエレメント)は、標的開始部位が突然変異されているコモウイルスなどの二分RNAウイルスのRNA-2ゲノムセグメントに由来する(又はそれと相同性を共有する)配列である。このような配列は、それらが結合している異種ORFの下流発現を増強することができる。限定されないが、このような配列は、転写RNAに存在する場合、それらが結合している異種ORFの翻訳を増強することができると考えられる。
【0101】
本明細書において称されている「標的開始部位」は、問題のエンハンサー配列が由来し、野生型RNA-2ゲノムセグメントによってコードされる2つのカルボキシ共末端タンパク質の長い方の産生(翻訳)のための開始部位として役立つ、二分ウイルス(例えば、コモウイルス)の野生型RNA-2ゲノムセグメントにおける開始部位(開始コドン)である。
【0102】
典型的に、RNAウイルスは本明細書以前に記載されるコモウイルスである。
【0103】
最も好ましいベクターは、遺伝子サイレンシングのサプレッサー及びNPTIIカセットも含有するT-DNAに位置する、本発明の翻訳エンハンサーを含む発現カセットの5’リーダーと3’UTRとの間のポリリンカーの使用によって直接クローニングバージョンを可能にするWO2009/087391のpEAQベクターである。
【0104】
このような遺伝子発現系における遺伝子サイレンシングのサプレッサーの存在が好ましいが、必須ではない。遺伝子サイレンシングのサプレッサーは当該技術分野において公知であり、WO/2007/135480に記載されている。それらには、ジャガイモYウイルス由来のHcPro、TEV由来のHe-Pro、TBSV由来のP19、rgsCam、FHV由来のB2タンパク質、CPMVの小コートタンパク質、及びTCV由来のコートタンパク質が含まれる。安定なトランスジェニック植物を産生する場合の好ましいサプレッサーは、R43W突然変異を組み込んでいるP19サプレッサーである。
【0105】
本発明はまた、植物細胞又は微生物(例えば、細菌、酵母又は真菌)細胞へのこのような構築物の導入、及び/又は適切な刺激、例えば効果的な外因性誘導因子の適用によって植物細胞内での構築物の発現の誘導を含む方法も提供する。
【0106】
微生物の代替として、蘚類のヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)も含む、QA産生植物種の細胞懸濁培養物を発酵タンク中で培養することもできる(例えば、Grotewold et al. (Engineering Secondary Metabolites in Maize Cells by Ectopic Expression of Transcription Factors, Plant Cell, 10, 721-740, 1998参照)。
【0107】
本発明のさらなる態様では、本発明による異種構築物を含有する宿主細胞、特に植物又は微生物細胞が開示される。
【0108】
異種生物におけるQA生合成の再構成に関する上記の宿主細胞の説明をここで準用する。
【0109】
したがって、本発明のさらなる態様は、上記されている構築物の植物細胞への導入に関与し、本発明による核酸をゲノムに導入するためにベクターと植物細胞ゲノムとの間で組換えを引き起こすか、又は可能にする植物細胞を形質転換する方法を提供する。
【0110】
本発明はさらに、本発明による核酸又はベクター(例えば、QA生合成修飾ヌクレオチド配列を含む)で形質転換された宿主細胞、特に植物又は微生物細胞を包含する。トランスジェニック植物細胞(すなわち、問題の核酸についてのトランスジェニック)において、導入遺伝子は、ゲノム外ベクターにあってもよいか、又はゲノム中に、好ましくは安定に組み込まれてもよい。一倍体ゲノム当たり1つより多い異種ヌクレオチド配列が存在してもよい。
【0111】
酵母はトリテルペン産生宿主として広範に利用されており[6~8、19~22]、したがってQA生合成に十分に適合する可能性がある。
【0112】
したがって、一実施形態では、宿主は酵母である。このような宿主については、上記されているQA産生のフラックスを改善するために付加遺伝子を導入することが望ましいことがある。例には、導入されたP450に対するレドックスパートナーとして役立つ1つ又は複数の植物シトクロムP450レダクターゼ(CPR)[6]、並びにHMGRが含まれ得る。
【0113】
上記されているように形質転換された植物細胞を含む植物は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0114】
所望の場合、植物細胞の形質転換後、植物は、当該技術分野において標準的であるように、例えば、単細胞、カルス組織又は葉片から再生され得る。ほぼあらゆる植物は、植物の細胞、組織及び器官から完全に再生され得る。利用可能な技術は、Vasilら、Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、Vol I、II及びIII、Laboratory Procedures and Their Applications、Academic Press、1984年並びにWeissbach及びWeissbach、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、1989年に概説されている。
【0115】
再生植物に加えて、本発明は以下の全てを包含する:このような植物、種子、自家又は雑種後代及び子孫(例えば、F1及びF2子孫)のクローン。本発明はまた、このような植物からの植物栄養繁殖体、すなわち、挿し木、種子などを含む、生殖又は繁殖、有性又は無性において使用され得る任意の部分も提供する。本発明はまた、これらの植物の任意の部分も提供し、それらは全ての場合において、上記されている植物細胞又は異種QA生合成修飾DNAを含む。
【0116】
本発明はまた、開示されているコードQA生合成修飾核酸配列のいずれかの発現産物、及びコード核酸からの発現によって、したがって適切な宿主細胞にあり得る、適切な条件下で発現産物を作製する方法も包含する。
【0117】
以下に記載されるように、上記のもののような植物背景は、例えば、QA生合成に関連する、又はそうでなければその表現型若しくは形質に作用する、1つ又は複数の他の遺伝子について天然又はトランスジェニックであってもよい。
【0118】
宿主表現型を修飾する際に、本明細書に記載されるQA核酸は、QAの速度若しくは収率、又はその修飾、又は任意の他の表現型形質若しくは所望の特性に作用する導入遺伝子などの任意の他の遺伝子と組み合わせて使用されてもよい。
【0119】
遺伝子の組合せの使用によって、植物又は微生物(例えば、細菌、酵母又は真菌)は、所望の前駆体の産生を増強するか、又は望ましくない代謝を減少させるように調整され得る。
【0120】
代替として、宿主における遺伝子の下方制御は、例えば、QA収率に影響を与え得る望ましくない代謝又はフラックスを減少させるために所望され得る。
【0121】
このような下方制御は、当該技術分野において公知の方法、例えば、アンチセンス技術を使用することによって達成され得る。
【0122】
遺伝子発現を下方制御するためにアンチセンス遺伝子又は部分遺伝子配列を使用する際に、転写が、標的遺伝子の「センス」鎖から転写された正常なmRNAに相補的なRNAを生じるように、ヌクレオチド配列はプロモーターの制御下に「逆方向」に配置される。例えば、Rothsteinら、1987年;Smithら、(1988年)Nature 334、724~726頁;Zhangら、(1992年)The Plant Cell 4、1575~1588頁、Englishら、(1996年)The Plant Cell 8、179~188頁参照。アンチセンス技術は、Bourque、(1995年)、Plant Science 105、125~149頁、及びFlavell、(1994年)PNAS USA 91、3490~3496頁においても概説されている。
【0123】
アンチセンスの代替は、共抑制によって標的遺伝子の発現の減少を達成するために、センス、すなわち標的遺伝子と同じ方向に挿入された標的遺伝子の全て又は一部の複製を使用することである。例えば、van der Krolら、(1990年)The Plant Cell 2、291~299頁;Napoliら、(1990年)The Plant Cell 2、279~289頁;Zhangら、(1992年)The Plant Cell 4、1575~1588頁、及びUS-A-5,231,020参照。遺伝子サイレンシング又は共抑制技術のさらなる改良は、WO95/34668(Biosource);Angell & Baulcombe(1997年)The EMBO Journal 16、12:3675~3684頁;及びVoinnet & Baulcombe(1997年)Nature 389:553頁に見出され得る。
【0124】
二本鎖RNA(dsRNA)は、センス鎖のみ又はアンチセンス鎖のみの両方よりも遺伝子サイレンシングにおいてさらにいっそう有効であることが見出されている(Fire A. et al Nature, Vol 391, (1998))。dsRNA媒介サイレンシングは、遺伝子特異的であり、多くの場合、RNA干渉(RNAi)と呼ばれている(Fire (1999) Trends Genet. 15: 358-363, Sharp (2001) Genes Dev. 15: 485-490, Hammond et al. (2001) Nature Rev. Genes 2: 1110-1119 and Tuschl (2001) Chem. Biochem. 2: 239-245も参照)。
【0125】
RNA干渉は2段階プロセスである。まず、dsRNAを細胞内で切断して、5’末端リン酸塩及び3’ショートオーバーハング(約2nt)を有する約21~23nt長の低分子干渉RNA(siRNA)を得る。siRNAは、破壊に特異的な対応するmRNA配列を標的とする(Zamore P.D. Nature Structural Biology, 8, 9, 746-750, (2001))。
【0126】
標的配列の下方制御のための当該技術分野において公知の別の方法論は、例えば、Schwabら、2006年、Plant Cell 18、1121~1133頁に記載されるような「マイクロRNA」(miRNA)の使用である。この技術は、適切なオリゴヌクレオチド配列を組み込んでいるステムループ前駆体によってコードされ得る人工miRNAを利用し、この配列は、本明細書の開示に照らして十分に規定された規則を使用して生成され得る。
【0127】
本発明の方法は、1つ又は複数のQAのin vitro及びin vivoでの産生又は操作の両方を包含する。例えば、QAポリペプチドは、例えば、大腸菌(E.coli)、酵母及び糸状菌などのような微生物における発現を介する発酵に利用され得る。一実施形態では、本発明の1つ又は複数の新たに特徴付けられたQs QA配列は、1つ又は複数の他の生合成遺伝子と併用してこれらの生物において使用され得る。
【0128】
in vivo方法は上記に広範に記載され、概して、QAポリペプチドをコードする組換え核酸分子の転写、次いでその組換え核酸分子からの翻訳を引き起こすか又は可能にする工程を含む。
【0129】
本発明の他の態様では、QAポリペプチド(酵素)は、in vitroで、例えば、単離された、精製された、又は半精製された形態で使用され得る。任意選択により、それらは組換え核酸分子の発現産物であってもよい。
【0130】
上記に解説されているように、QS-21は、ワクチン抗原に応答する免疫系の能力を増強する精製された植物抽出物である。
【0131】
QS-21は、体液性及び細胞媒介性免疫の両方を増強すると考えられている免疫学的アジュバントとして有用性を有する。QS-21は、HIV、マラリア及びがんに対するワクチンを含む、種々の試験ワクチンについての添加物として臨床評価段階にある。それは、FDAが承認したシングリックス(Shingrix)帯状疱疹ワクチンの成分である。
【0132】
キラヤ・サポナリア由来の新たに特徴付けられた配列
上記のように、本発明の支持として、本発明者らは、QA生合成に作用するポリペプチドをコードすると考えられているQ.サポナリア由来の遺伝子を同定した(表1の配列番号1~8参照)。
【0133】
本発明のある特定の態様では、QA核酸は、Q.サポナリア(配列番号1~8)に由来する。QA産生(トリテルペンの合成及び酸化)のための本明細書に記載される重要な工程は、小胞体の細胞質側表面において起こる可能性が高いと考えられるが、これらの天然の植物遺伝子は、これらの宿主の適切な区画において最も効果的にプロセシングされ得、機能し得るので、このような遺伝子は特に安定なトランスジェニック植物宿主の調製における使用のために好ましいことがある。
【0134】
Q.サポナリア由来の上記の新たに特徴付けられたQA生合成遺伝子。
したがって、それら自体で本発明の態様を形成する。
【0135】
本発明のさらなる態様では、QA核酸のバリアントである核酸は、上記に説明されているQ.サポナリアに由来することが開示される。
【0136】
本明細書に説明される天然のQA遺伝子と同様に、このようなバリアントは、本明細書に開示されている方法によって評価されるように、植物のQA含量を変化させるために使用され得る。例えば、バリアント核酸は、上記に説明されるように、天然のQAポリペプチドの関連する生物活性を共有するバリアントQAポリペプチドをコードする配列を含み得る。例には、配列番号2、4、6又は8のいずれかのバリアントが含まれる。
【0137】
誘導体
本明細書に記載されるのは、上記に開示されている本発明のQA遺伝子のいずれか、特にQ.サポナリア由来のQA配列を修飾する工程を含む、誘導体核酸を産生する方法である。
【0138】
変更は、多くの理由のために望ましいことがある。例えば、変更により、制限エンドヌクレアーゼ部位を導入することができる若しくは取り除くことができるか、又はコドン使用頻度を変化させることができる。これは、Qs遺伝子が、代替宿主、例えば、酵母などの微生物宿主において発現される場合に特に望ましいことがある。この目的のためのコドン最適化遺伝子の方法は当該技術分野において公知である(例えば、Elena, Claudia, et al. 「Expression of codon optimized genes in microbial systems: current industrial applications and perspectives.」 Frontiers in microbiology 5 (2014)参照)。したがって、酵母発現を最大化するためにコドン修飾を含む本明細書に記載される配列は、本発明の特定の実施形態を表す。
【0139】
或いは、配列に対する変化は、コードされたポリペプチドにおける1つ又は複数(例えば、いくつか)のアミノ酸の付加、挿入、欠失又は置換を導く、核酸における1つ又は複数のヌクレオチドの付加、挿入、欠失又は置換のうちの1つ又は複数(例えば、いくつか)によって、誘導体を産生することができる。
【0140】
このような変更は、コードされたポリペプチドにおける切断部位;リン酸化のためのコードされたポリペプチドにおけるモチーフなどのような翻訳後修飾に必要とされる部位を修飾することができる。微生物系から発現タンパク質を単離することが所望される場合、リーダー又は他のターゲティング配列(例えば、膜又はゴルジ位置決め配列)が、発現後にその位置を決定するために発現タンパク質に付加されてもよい。
【0141】
他の望ましい突然変異は、コードされたポリペプチドの活性(例えば、特異性)又は安定性を変化させるためのランダム又は部位特異的突然変異誘発であり得る。変更は、保存的変異、すなわち、イソロイシン、バリン、ロイシン若しくはメチオニンなどの1つの疎水性残基の別の残基への置換、又は1つの極性残基の別の残基への置換、例えば、アルギニンのリシンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、若しくはグルタミンのアスパラギンへの置換によるものであってもよい。当業者に周知であるように、保存的置換によってポリペプチドの一次構造を変化させることは、配列に挿入されるアミノ酸の側鎖が、置換されて除かれたアミノ酸の側鎖と類似した結合及び接触を形成することができるので、そのペプチドの活性を有意に変化させることはない。これは、置換がペプチド立体配座を決定する際に重要である領域にある場合でさえそうである。また、非保存的置換を有するバリアントも含まれる。当業者に周知であるように、ペプチドの立体配座を決定する際に重要ではないペプチドの領域に対する置換は、それらがペプチドの三次元構造を大きく変化させないので、その活性に大きく作用することはない。ペプチド立体配座又は活性を決定する際に重要である領域において、このような変更はポリペプチドに有利な特性を付与することができる。実際に、上記されているもののような変更は、ペプチドにわずかに有利な特性、例えば、変化した安定性又は特異性を付与することができる。
【0142】
断片
本発明は、上記に開示されている本発明のQA遺伝子をコードするポリペプチドの断片、特にQ.サポナリア由来のQA配列を利用することができる。
【0143】
したがって、本発明は、本明細書に開示されている本発明の全長QAポリペプチドの断片、特にその活性部分の産生及び使用を提供する。ポリペプチドの「活性部分」は、前記全長ポリペプチド未満であるが、その本質的な生物活性を保持するペプチドを意味する。
【0144】
ポリペプチドの「断片」は、少なくとも約5~7個の連続するアミノ酸、多くの場合少なくとも約7~9個の連続するアミノ酸、典型的に少なくとも約9~13個の連続するアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約20~30個又はそれ以上の連続するアミノ酸の一続きのアミノ酸残基を意味する。ポリペプチドの断片は、本明細書に開示されているアミノ酸配列のいずれかの一部に対する抗体を惹起するのに有用な1つ又は複数のエピトープを含み得る。好ましいエピトープは、抗体が特異的に結合することができるエピトープであり、これは、他のポリペプチドの親和性の少なくとも約1000倍である親和性で本発明のポリペプチド又はその断片に結合すると解釈され得る。
【0145】
本明細書に開示されている特定の断片は、CYP716-2012090のより短いアイソフォームであり、これは、配列番号6の中に示され、すなわち、配列付録において下線を引いたN末端21アミノ酸を欠くものである。
【0146】
簡潔さのために、Q.サポナリア由来のこれらのQA配列又はバリアント(例えば、その断片などの誘導体)のいずれかは、「Qs QA配列(又は核酸、又はポリペプチド)」と称することがある。これらのQs QAポリペプチド、及びそれらをコードする核酸は、本発明の一態様を形成する。
【0147】
この用語が一般的に使用される場合、それはまた、これらの配列のいずれかに個別に適用されることが理解される。
【0148】
したがって、本発明の一態様では、これらのポリペプチド(2、4、6、又は8)のいずれかをコードする単離された核酸が開示される。好ましくは、これは1、3、5、又は7の配列を有し得る。本発明の他の核酸には、これらと縮重的に等価であるもの、又はこれらの相同バリアント(例えば、誘導体)が含まれる。
【0149】
本発明の態様はさらに、本明細書以下に説明されている配列のいずれかに相補的である配列を含む単離された核酸を包含する。
【0150】
Qs QA配列を使用してそのそれぞれの生物活性を触媒することは(図1に記載される)、本発明の別の態様を形成する。簡潔さのために、これらの配列のいずれかは、「Qs QA配列」と称することがある。
【0151】
したがって、本発明はさらに、植物などの宿主におけるQA生合成に影響又は作用を与える方法であって、植物の細胞内で上記に説明されている異種Qs QA核酸の転写を引き起こすか、又は可能にする工程を含む、方法を提供する。この工程の前に、Qs QA核酸を植物の細胞又はその祖先に導入する前工程を行ってもよい。
【0152】
このような方法は、通常、植物などの宿主においてQAを産生する方法の一部、場合によりその方法における1つの工程を形成する。好ましくは、この方法は、上記されている本発明のQA修飾ポリペプチド(例えば、表1)若しくはその誘導体、又はいずれかをコードする核酸を利用する。
【0153】
さらなる実施形態では、本発明のQs QAポリペプチド又はペプチドに対して惹起された抗体が提供される。
【0154】
上記に説明されている生合成経路の異種再構成に関連する本発明のいくつかの態様が、ここでより詳細に説明される。
【0155】
本発明による「核酸」は、cDNA、RNA、ゲノムDNA及び修飾核酸又は核酸類似体(例えば、ペプチド核酸)を含み得る。例えば、図を参照して、DNA配列が特定される場合、文脈が他に必要としない限り、存在する場合、TをUに置換したRNA等価物が包含される。本発明による核酸分子は、それらの天然環境から、実質的に純粋若しくは均質な形態で、又は起源の種及び二本鎖若しくは一本鎖の他の核酸を含まないか若しくは実質的に含まずに単離及び/又は精製されて提供され得る。本明細書に使用されている場合、「単離された」という用語は、これらの可能性の全てを包含する。核酸分子は完全に又は部分的に合成されてもよい。特に、それらは、天然に一緒に見出されない(連続して伸びていない)核酸配列が、ライゲーションされているか、又はそれ以外の方法で人工的に組み合わされているという点で組換えであってもよい。核酸は、本明細書以下に説明されている配列のいずれかを含んでもよく、それらからなってもよく、又はそれらから実質的になってもよい。
【0156】
「異種」という用語は、問題のヌクレオチドの遺伝子/配列(例えば、QA生合成修飾ポリペプチドをコードする)が、遺伝子工学を使用して、すなわちヒトの介入によって、宿主又はその祖先の前記細胞に導入されていることを示すために本明細書において広範に使用される。宿主細胞に対して異種の核酸は、その型、種類又は種について細胞において天然に存在しない。したがって、異種核酸は、異なる型の植物細胞又は植物の種若しくは種類の状況に置かれた、特定の型の植物細胞又は植物の種若しくは種類のコード配列を含み得るか、又はそれらに由来し得る。さらなる可能性は、核酸配列がそれ又はホモログが天然に見出される細胞内に配置されることであるが、その核酸配列は、その型又は植物の種若しくは種類についてその細胞又は複数の細胞内に天然に存在しない核酸に連結され及び/又は隣接し、例えば、発現の制御のためのプロモーター配列などの1つ又は複数の調節配列と作動可能に連結される。
【0157】
この文脈における「形質転換された」とは、異種核酸のヌクレオチド配列が、例えば、QA生合成に関して、細胞の特徴、したがって表現型のうちの1つ又は複数を変化させることを意味する。このような形質転換は、一過性であってもよく又は安定であってもよい。
【0158】
「QA生合成を実行できない」とは、変換前に、宿主が、宿主の正常な代謝環境下で検出可能又は回収可能なレベルのQAを天然に産生しないか、又は産生しないと考えられることを意味する。
【0159】
本明細書に提供されているヌクレオチド配列情報は、プロービング又は増幅のためのプローブ及びプライマーを設計するために使用され得る。プロービング又はPCRに使用するためのオリゴヌクレオチドは、約30又はそれ以下のヌクレオチド長(例えば、18、21又は24)であり得る。一般に、特異的プライマーは14ヌクレオチド長を超える。最適な特異性及び費用対効果のために、16~24ヌクレオチド長のプライマーが好ましいことがある。当業者は、PCRなどのプロセスに使用するためのプライマーの設計に精通している。必要に応じて、プロービングは、本明細書に開示されている遺伝子の制限断片全体を用いて行うことができ、それは100又はさらに1000ヌクレオチド長であってもよい。必要な場合、「コンセンサス」又は「縮重」プライマーを産生するためにわずかな変異を配列に導入してもよい。
【0160】
プロービングは、標準的なサザンブロッティング技術を利用することができる。例えば、DNAを細胞から抽出し、異なる制限酵素で消化することができる。次いで、制限断片を、変性前にアガロースゲル上での電気泳動によって分離し、ニトロセルロースフィルターに移すことができる。標識されたプローブはフィルター上の一本鎖DNA断片にハイブリダイズすることができ、結合を決定することができる。プロービングのためのDNAは、細胞由来のRNA調製物から調製することができる。プロービングは任意選択により、いわゆる「核酸チップ」によって行うことができる(概説に関して、Marshall & Hodgson (1998) Nature Biotechnology 16: 27-31参照)。
【0161】
一実施形態では、本発明に従ってQA生合成修飾ポリペプチドをコードするバリアントは、以下を含む方法によって得ることができる:
(a)例えば、植物細胞から核酸の調製物を準備する工程。試験核酸は、ゲノムDNA、cDNA若しくはRNA、又はこれらのいずれかの混合物として、好ましくは適切なベクターにおけるライブラリーとして、細胞から準備され得る。ゲノムDNAが使用される場合、プローブは、本明細書以下に記載されるように、遺伝子の非転写領域(例えば、プロモーターなど)を同定するために使用され得る、
(b)上記に説明されているプローブ又はプライマーである核酸分子を準備する工程、
(c)前記調製物におけるいずれかの前記遺伝子又はホモログとの前記核酸分子のハイブリダイゼーションのための条件下で前記調製物における核酸を前記核酸分子と接触させる工程、及び
(d)存在する場合、前記核酸分子とのそのハイブリダイゼーションによって前記遺伝子又はホモログを同定する工程。標的核酸(例えば、DNA)とのプローブの結合は、当業者が自由に使える種々の技術のいずれかを使用して測定することができる。例えば、プローブは、放射性標識され、蛍光標識され、又は酵素的に標識されてもよい。プローブの標識化を利用しない他の方法は、PCR(以下を参照)、RN’ase切断及び対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプロービングを使用する増幅を含む。成功したハイブリダイゼーションの同定の後に、ハイブリダイズした核酸の単離が続き、これは、適切な宿主におけるベクターのPCR又は増幅の1つ又は複数の工程を含み得る。
【0162】
低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることによって予備実験を実施することができる。プロービングに関して、好ましい条件は、陽性と同定された少数のハイブリダイゼーションで単純なパターンが存在するのに十分にストリンジェントである条件であり、その条件はさらに調査することができる。
【0163】
例えば、ハイブリダイゼーションは、Sambrookら(以下)の方法に従って、5×SSC(ここで、「SSC」=0.15M塩化ナトリウム;0.15Mクエン酸ナトリウム;pH7)、5×デンハルト試薬、0.5~1.0%SDS、100μg/ml変性断片化サケ精子DNA、0.05%ピロリン酸ナトリウム及び50%以下のホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液を使用して実施することができる。ハイブリダイゼーションは、37~42℃にて少なくとも6時間実行する。ハイブリダイゼーション後、フィルターを以下のように洗浄する:(1)2×SSC及び1%SDS中で室温にて5分;(2)2×SSC及び0.1%SDS中で室温にて15分;(3)1×SSC及び1%SDS中で37℃にて30分~1時間;(4)1×SSC及び1%SDS中で42~65℃にて2時間、溶液を30分ごとに交換する。
【0164】
特定の配列相同性を有する核酸分子間のハイブリダイゼーションを達成するために必要とされるストリンジェンシー条件を計算するための1つの一般的な式は、(Sambrook et al., 1989):T=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.41(G+C%)-0.63(ホルムアミド%)-600/二重鎖における#bpである。
【0165】
上記の式の例として、42%のGC含量及び200塩基の平均プローブサイズで[Na+]=[0.368]及び50%ホルムアミドを使用して、Tは57℃である。DNA二重鎖のTは、相同性が1%減少するごとに1~1.5℃減少する。したがって、約75%を超える配列同一性を有する標的は、42℃のハイブリダイゼーション温度を使用して観察される。このような配列は、本発明の核酸配列と実質的に相同であるとみなされる。
【0166】
少数の陽性クローンのみが残るまでハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを徐々に増加させることは、当該技術分野において周知である。他の適切な条件には、例えば、約80~90%同一である配列の検出に関して、0.25M NaHPO、pH7.2、6.5%SDS、10%硫酸デキストラン中での42℃にて一晩のハイブリダイゼーション及び0.1×SSC、0.1%SDS中での55℃での最終洗浄が含まれる。約90%を超える同一性である配列の検出に関して、適切な条件には、0.25M NaHPO、pH7.2、6.5%SDS、10%硫酸デキストラン中での65℃にて一晩のハイブリダイゼーション及び0.1×SSC、0.1%SDS中での60℃での最終洗浄が含まれる。
【0167】
さらなる実施形態では、バリアントとの核酸分子のハイブリダイゼーションは、例えば、核酸増幅反応、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、間接的に決定又は同定され得る。PCRは、標的核酸を特異的に増幅させるために2つのプライマーの使用を必要とし、したがって、好ましくは、本発明のQA遺伝子の配列特性を有する2つの核酸分子が利用される。RACE PCRを使用して、1つのこのようなプライマーのみが必要とされ得る(「PCR protocols; A Guide to Methods and Applications」, Eds. Innis et al, Academic Press, New York, (1990)参照)。
【0168】
したがって、本発明による核酸を得る際のPCRの使用を含む方法は、以下を含むことができる:
(a)例えば、種子又は他の適切な組織若しくは器官から植物核酸の調製物を準備する工程、
(b)PCRに有用な(すなわち、適切な)一対の核酸分子プライマーを準備する工程であって、前記プライマーの少なくとも1つは上記に説明されている本発明によるプライマーである、工程、
(c)PCRを実施するための条件下で前記調製物における核酸を前記プライマーと接触させる工程、
(d)PCRを実施し、増幅されたPCR産物の存在又は非存在を決定する工程。増幅されたPCR産物の存在は、バリアントの同定を示し得る。
【0169】
上記の全ての場合、必要であれば、調査において同定されたクローン又は断片は伸長され得る。例えば、それらが不完全であることが疑われる場合、元のDNA起源(例えば、クローンライブラリー、mRNA調製物など)は、例えば、重複配列を含有する他のクローンを同定するために既に得られた部分に基づく配列、プローブ又はプライマーを使用して、欠失部分を単離するために再検討され得る。
【0170】
例えば、そのためのコード核酸からの発現によって組換えにより産生された本発明による精製されたタンパク質、又はその断片、突然変異体、誘導体若しくはバリアントは、当該技術分野において標準的である技術を利用して抗体を惹起するために使用され得る。抗体の抗原結合断片を含む抗体及びポリペプチドは、以下にさらに説明されるように他の種からホモログを同定する際に使用され得る。
【0171】
抗体を産生する方法は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジ又はサル)をタンパク質又はその断片で免疫化することを含む。抗体は、当該技術分野において公知の種々の技術のいずれかを使用して免疫化動物から得ることができ、好ましくは、目的の抗原への抗体の結合を使用してスクリーニングすることができる。例えば、ウェスタンブロッティング技術又は免疫沈降が使用され得る(Armitage et al, 1992, Nature 357: 80-82)。抗体は、ポリクローナルであってもよいか、又はモノクローナルであってもよい。
【0172】
哺乳動物を免疫化するための代替又は補足として、適切な結合特異性を有する抗体を、例えば、それらの表面に機能的免疫グロブリン結合ドメインを提示するラムダバクテリオファージ又は糸状バクテリオファージを使用して、発現された免疫グロブリン可変ドメインの組換えにより産生されたライブラリーから得ることができる;例えばWO92/01047参照。
【0173】
ポリペプチド又はペプチドに対して惹起された抗体は、相同ポリペプチド、次いでコード遺伝子の同定及び/又は単離に使用され得る。
【0174】
抗体は多くの方法で修飾することができる。実際に、「抗体」という用語は、必要な特異性を有する結合ドメインを有するいずれかの特異的結合物質を包含と解釈されるべきである。したがって、この用語は、天然であるか、又は合成であるかにかかわらず、免疫グロブリン結合ドメインを含むいずれかのポリペプチドを含む、抗体の抗体断片、誘導体、機能的等価物及びホモログを包含する。
【0175】
本発明及び本発明が関係する技術水準をより完全に記載し、開示するために多くの特許及び刊行物が本明細書に引用される。これらの参考文献の各々は、各個々の参考文献が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に、本開示にその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体にわたって、文脈が別段の要求をしない限り、「含む(comprise)」という語、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を包含するが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を排除しないことを示すものと理解される。
【0177】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用されている場合、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数の参照を含むことに留意されなければならない。したがって、例えば、「医薬担体」への参照は、2つ又はそれ以上のこのような担体の混合物などを含む。
【0178】
範囲は、多くの場合、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして本明細書において表現される。このような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」を使用することによって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。
【0179】
本明細書における任意のサブタイトルは、便宜上のためだけに含まれ、いかなる方法においても本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0180】
ここで、本発明を以下の非限定的な図面及び実施例を参照してさらに記載する。本発明の他の実施形態は、これらに照らして当業者に想起される。
【0181】
本発明を実施するために当業者によって使用され得る限り、本明細書に引用される全ての参考文献の開示は、相互参照によって本明細書に具体的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0182】
図1】QS-21を示す図である。
図2】一般的な普遍的前駆体からの、β-アミリンを介するキラ酸の産生を示す図である。β-アミリンからの経路は、3つ(C-16α、C-23及びC-28)の位置での酸化を必要とする。これらの酸化工程は、単純化のためだけに直線的に示されているが、上記に解説したように、それらは原則として他の順序で進行することができる(図11参照)。
図3】Q.サポナリアの葉(L)及び根(R)組織における候補遺伝子のPCR増幅を示す図である。両方の組織において大部分の候補のための産生物を得ることが可能であった。
図4】ベンサミアナタバコにおけるQ.サポナリアβ-アミリンシンターゼ(QsbAS)の発現を示す図である。葉抽出物のGC-MS分析は、クローニングされたβ-アミリンシンターゼを発現する葉においてβ-アミリンのみの産生を明らかにするが、対照(GFP)葉においてはそうではない。
図5】Q.サポナリアからのP450によるβ-アミリンの変換を示す図である。CYP716ファミリーにおける2つのP450が、β-アミリンを酸化することが見出された。左側:CYP716-2073932がβ-アミリンの大部分を12.08分にてオレアノール酸として同定された新規産生物に変換したことを示しているベンサミアナタバコ葉抽出物のGC-MS分析。真正のオレアノール酸標準物に対するこの産生物についての質量スペクトルを右側に示す。CYP716-2012090(長い及び短い両方のアイソフォーム)は、16α-ヒドロキシ-β-アミリンと推定的に同定された少量のβ-アミリンを変換した(でマークしている)。この産生物についての質量スペクトルを図5sに示す。 [図5s]推定16α-ヒドロキシ-β-アミリンについてのEI質量スペクトルを示す図である。微量のこの産生物が、QsbAS及びCYP716-2012090の同時発現の際に形成された。
図6A】CYP716-2012090によるオレアノール酸のエキノシスト酸への変換を示す図である。左側:QsbAS及びCYP716-2073932とのQ.サポナリア由来の2つのCYP716メンバーの同時発現が、12.42分にてエキノシスト酸として同定された産生物の蓄積を生じることを示しているベンサミアナタバコ葉抽出物のGC-MS分析。真正のエキノシスト酸標準物に対するこの化合物についての質量スペクトルを右側に示す。
図6B】OQHZ-2018687によるオレアノール酸のヘデラゲニンへの変換を示す図である。オレアノール酸酸化活性についてC-23オキシダーゼ候補をスクリーニングする。候補#6及び#7(本明細書においてCYP714-7とも称される同じ酵素を保有する)を発現する試料において、新規産生物が観察されたことが明らかになった。この新規産生物は、23-ヒドロキシ-オレアノール酸(ヘデラゲニン)標準物と同一の保持時間及び質量スペクトルを有し、この酵素がC-23オキシダーゼであることを示唆している。
図7】QsbASと、Q.サポナリア由来のC-28(CYP716-2073932)、C-16α(CYP716-2012090)及びC-23(CYP714-7)オキシダーゼとの組合せを発現するベンサミアナタバコの葉抽出物のLC-MS分析を示す図である。キラ酸(19.886分)は、3つ全てのP450を発現する試料においてのみ観察された。19.886分における種々の試料についての質量スペクトルをキラ酸標準物と共に以下に示す。
図8】異なるC-23オキシダーゼを発現する植物試料間のキラ酸産生の比較を示す図である。全ての試料は、tHMGR、QsbAS、並びにQ.サポナリアC-28(CYP716-2073932)及びC-16α(CYP716-2012090)オキシダーゼを発現する葉に由来する。C-23オキシダーゼは、Q.サポナリア(CYP714-7、一番上)、タルウマゴヤシ(M.truncatula)(CYP72A68、下二番目)又はA.ストリゴサ(A.strigosa)(CYP94D65、下三番目)のいずれかに由来した。 CADクロマトグラムを上部に示す。目的の質量スペクトル(ネガティブモード)を下部に示す。 m/z485(赤色で示す)を有する共通イオンは、tHMGR/QsbAS/CYP716-2073932/CYP716-2012090/CYP94D65試料においてキラ酸標準物及び新規ピークの両方に共通であった。このイオンはキラ酸の予測分子量(マイナスH)に適合する。第2の化合物は、カウフィロゲニン(cauphyllogenin)(キラ酸に見られるようなアルデヒドの代わりにC-23アルコールを特徴とする)と推定的に同定されたm/z487を有する高存在量で見出された。これらの産生物についての質量スペクトルを図8sに示す。 C-23アルコール(カウフィロゲニン(cauphylogenin))及び酸(16α-ヒドロキシ-ギプソゲン酸(16OH-GA))を含む、より少ない別のC-23酸化副産物が、Q.サポナリアC-23発現試料において見出され、アルデヒド産生に対するより高い特異性を示唆している。
図9】酵母におけるQ.サポナリア遺伝子の発現を示す図である。GC-MSトレースを異なる株について上部に示し、目的のピークについての質量スペクトルを下部に示す。
図10】A)トリテルペン生合成に必要なメバロン酸(MVA)経路及び潜在的律速酵素の簡略化した概観を示す図である。B)ベンサミアナタバコにおけるβ-アミリン含量は、オーツ麦β-アミリンシンターゼ(AsbAS)とのtHMGR又はSQSの共発現から改善され得ることを示す図である。C)tHMGRとのSQSの共発現は、tHMGR単独よりもβ-アミリン含量をさらに改善することを示す図である。
図11】β-アミリンの酸化誘導体を示す図である。
図12】2,3-オキシドスクアレンからのキラ酸及びQ.サポナリア由来の関連酵素の生合成を示す図である。酸化工程は正確にこの順序で起こらなくてもよい。
図13】キラ酸(上側)を作製するのに必要とされるQ.サポナリア由来の4種の特徴的な酵素を発現する代表的な葉のLC-CAD分析を示す図である。対照として、C-16αオキシダーゼを除外し(下側)、代わりに前駆体ギプソゲニンを蓄積する(図12参照)。
図14】ベンサミアナタバコから単離された産生物に対するキラ酸標準物のLC分析を示す図である。A)単離された産生物(真ん中)及びキラ酸標準物(下側)の分析を示すLC-CADトレース。両方の試料は19.5分で主要なピークを示した。メタノールのみのブランクランを一番上のトレースに示す。B)ポジティブ(上側)及びネガティブ(下側)モードの両方における19.5分での産生物のMS(ESI/APC)分析。単離された産生物を左に示し、キラ酸標準物を右に示す。
図15】ベンサミアナタバコから単離された産生物に対するキラ酸標準物のGC-MS分析を示す図である。A)標準物を下側のトレースに示し、単離された産生物を上側のトレースに示す。両方の試料は15.3分で主要なピークを示した。B)15.3分での2つの産生物のEI質量スペクトルの比較。単離された産生物を上部に示し、キラ酸標準物を下部に示す。
図16】ベンサミアナタバコから単離された産生物(上部)に対するキラ酸標準物(下部)のH NMR(メタノールd)比較を示す図である。
【実施例0183】
実施例1 - Q.サポナリアトランスクリプトームにおけるキラ酸生合成遺伝子候補についてのマイニング
最近、Q.サポナリアからのトランスクリプトームデータセットが、1KPプロジェクトを通じて利用可能になった[1]。このデータセットは、Q.サポナリア葉組織のHiSeqシークエンシング(Illumina)に由来する。
【0184】
QS-21の商業的供給源は、通常、樹皮に由来するが、葉組織もまた、QS-21及び他のサポニンの十分な供給源であることが示されているので[2]、本発明者らは、関連する生合成遺伝子がこのデータベースに存在するかもしれないと推論した。トランスクリプトームデータセットを潜在的生合成遺伝子についてマイニングした。
【0185】
β-アミリンシンターゼ
最初に検索した候補はβ-アミリンシンターゼ(bAS)OSCであった。関連するマメ目の種由来を含む、多数のbAS酵素を特徴付けする。
【0186】
スペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra)由来のbAS酵素(Genbank ID Q9MB42.1)を、OSC配列を同定するためのクエリーとして使用した。これは、トリテルペンシンターゼであると予測される単一の全長配列(OQHZ-2074321)(本明細書以下、QsbASと称する)を戻した。
【0187】
他の部分OSC配列もまた、このデータセットにおいて同定したが、これらはステロール(シクロアルテノール)シンターゼであると予測され、割り引かれた。
【0188】
QsbASの全ヌクレオチド及び予測されるタンパク質配列は、配列付録Aにおいて配列番号1及び2として示される。
【0189】
β-アミリンオキシダーゼ
本発明者らは、β-アミリンの酸化に関与する可能性の高いクラスの酵素はシトクロムP450(P450)であると推測した。これらの酵素は、通常、単一の植物ゲノムにおいて200を超える代表がある、非常に大きな遺伝子スーパーファミリーによってコードされる。
【0190】
配列相同性に基づいて機能を予測することは困難なことが多いが、近年、CYP716ファミリーは、トリテルペンオキシダーゼの卓越したファミリーとして現れている[3]。これまでに11のCYP716が、β-アミリンC-28オキシダーゼとして特徴付けられていた(配列付録B)。これらのP450は、分類学的に明確な種(マメ目の種を含む)から単離され、Q.サポナリアにおけるC-28β-アミリンオキシダーゼがこのファミリーのメンバーによって触媒される可能性があり得ることを示唆している。
【0191】
さらに、CYP716酵素はまた、ミシマサイコ(Bupleurum falcatum)(配列付録B)からの1つのC-16αオキシダーゼ(CYP716Y1)を含む、β-アミリン足場周囲の他の(非C-28)位置において酸化を触媒することができることが示されている。2つの全長CYP716を、検索クエリーとしてタルウマゴヤシ(Medicago truncatula)C-28オキシダーゼCYP716A12を使用して、トランスクリプトームデータセットにおいて同定した。これらは、OQHZ-2073932及びOQHZ-2012090(本明細書においてCYP716-2073932及びCYP716-2012090と称することがある)である。
【0192】
(CYP716-2073932はまた、P450命名委員会によって正式にCYP716A224と指定されていることに留意されたい[3])。これらのCYP716の全ヌクレオチド及び予測されるタンパク質配列は、配列付録Aにおいて配列番号3及び4として示される。
【0193】
実施例2 - Q.サポナリア由来のクローニング候補遺伝子
Q.サポナリアの木は、UK内の種苗場(Burncoose Nurseries, Cornwall)から得た。[26]に詳述されている改変プロトコールによって、Qiagen RNeasy Plant RNA抽出キットを使用してRNAを単一の木の葉及び根から抽出した。このRNAを、製造業者の説明書に従ってSuperscript III(Invitrogen)を使用してcDNA合成についての鋳型としてさらに使用した。
【0194】
標的遺伝子の増幅のために、上記されている4つの遺伝子(配列番号1、3、5及び7)の各々についてのプライマーを設計した。CYP716-2012090については、N末端において21アミノ酸だけ異なる、タンパク質の長い及び短いアイソフォームの両方のクローニングを可能にする2セットのプライマーを設計した。これは、この領域と他の特徴付けられたCYP716との不十分なアラインメントによるものであった。
【0195】
プライマーの各々は、方向性Gateway(登録商標)ベースのクローニングを可能にするために5’末端においてattBアダプターを組み込んだ。これらのアダプターは5’末端において斜体で示され、遺伝子特異的配列は5’→3’方向に続く。
【0196】
【表2】
【0197】
鋳型として葉又は根のcDNAのいずれかを利用して、各遺伝子について2つのPCR反応を実施した。上記されているように、異なるフォワードプライマーを利用して、CYP716-2012090の別々の反応のために2セットのPCRを設定した。PCRは、製造業者の説明書に従って、HF緩衝液と共にiProof(BioRad)を使用して50μLの総体積で実施した。QsbAS及びCYP716酵素の増幅のために、PCR熱サイクルは、98℃(30秒)での初期変性工程、続いて30サイクルの変性(98℃、10秒)、アニーリング(50℃、10秒)及び伸長(72℃、3分)を含み、72℃(5分)での最終伸長を伴った。これらのパラメーターは、30サイクルの間の伸長時間が2分に短縮されたことを除いて、CYP714の増幅について同一であった。
【0198】
全ての遺伝子の首尾良い成功が、PCR鋳型として根及び葉組織の両方からcDNAを使用して観察された(図3)。葉cDNAに由来するPCR産物をさらに精製し、以前に記載されるようにpDONR207エントリーベクターに組換えた[5]。得られたプラスミドをEurofins Genomicsによって配列決定して挿入遺伝子の存在及び配列を検証した。単一の代表的なプラスミドを各遺伝子について選択し、バイナリーベクターpEAQ-HT-DEST1に組換え[4]、その後、以前に記載されるようにコンピテントアグロバクテリウム・ツメファシエンスに形質転換した[5]。ベンサミアナタバコにおける一過性発現のために、A.ツメファシエンス株を成長させ、以前に記載されるようにインフィルトレーションのために調製した[5、27]。
【0199】
実施例3 - ベンサミアナタバコにおけるにおけるQ.サポナリア遺伝子の一過性発現
QsbASは単機能性β-アミリンシンターゼである
種々のクローニングした遺伝子の一過性発現をベンサミアナタバコにおいて実施した。全ての組合せは、A.ストリゴサHMG-CoAレダクターゼ(tHMGR)のフィードバック非感受性切断型を保有する株の共インフィルトレーションを含んだ。この酵素は、ベンサミアナタバコにおける一過性発現時にトリテルペン含量を増加させることが実証されている[5]。利用した配列を配列番号29~32として示す。
【0200】
以前に記載されるように、葉を採取し、抽出し、GC-MSによって分析した[5]。QsbASを発現する葉のGC-MS分析により、β-アミリン標準物の保持時間及び質量スペクトルの比較によってβ-アミリンとして同定した化合物の存在が明らかとなった(図4)。他の新規産生物はクロマトグラムにおいて見出されず、QsbASが単機能性β-アミリンシンターゼであることを示唆している。
【0201】
C-28及びC-16αオキシダーゼの発見
次に、QsbASを種々のP450の組合せにより試験した。これにより、CYP716酵素の両方がβ-アミリンに対して活性を示すことが明らかになった。CYP716-2073932はC-28オキシダーゼであることが見出され、β-アミリンの大部分をオレアノール酸に変換した。CYP716-2012090は、少量のβ-アミリンを、16α-ヒドロキシ-β-アミリンとして推定的に同定した産生物に変換した(以前に公開された質量スペクトルとの比較に基づく[6、7])(図5図5s)。
【0202】
これらの2つのCYP716酵素を組み合わせると、β-アミリン、さらにC-28カルボン酸及びC-16αアルコールからなるキラ酸の中間体であるエキノシスト酸と同一の保持時間及び質量スペクトルを有する第3の産生物が同定された(図6A)。
【0203】
実施例4 - Q.サポナリア由来のC-23オキシダーゼの発見
C-28及びC-16αオキシダーゼの発見に続いて、傑出したQ.サポナリアC-23オキシダーゼに注目した。C-28及びC-16αオキシダーゼの同定は、公知のトリテルペン酸化P450の相同性に基づく検索によって促進された。他の候補は、2つのCYP72ファミリーメンバー(OQHZ-2012357及びOQHZ-2019977)を含む、公知のトリテルペンオキシダーゼとの相同性に基づいて考慮され、その候補に関して、関連するマメ科の種であるタルウマゴヤシにおいてC-23オキシダーゼが同定されている。しかしながら、植物体においてクローニング及び試験をすると、これらの候補のいずれも、β-アミリン、又はそのC-28/C-16α酸化誘導体に対して明らかな活性を示さなかった(データは示さず)。
【0204】
その結果、傑出したQ.サポナリアC-23オキシダーゼは、以前にトリテルペン酸化に関与していなかったP450ファミリー内にある可能性があることが推測された。
【0205】
したがって、1KPトランスクリプトームデータを、全ての推定シトクロムP450について検索した。
【0206】
約150個のP450をコードするコンティグがデータセットにおいて見出された。これらのうち、35個が全長酵素をコードしているようであった(約1500bp、表5参照)。
【0207】
【表3】
【0208】
表5:Q.サポナリア1KPデータセットにおいて表した35個全ての全長シトクロムP450のリスト。推定ファミリー/クラン(clan)をGenbank BLAST検索に基づいて割り当てた。一次代謝に関与すると予測される候補は、それ以上検討しなかった。この結果、25個の最終候補が得られた(「クイックリファレンス」欄)。ここで使用した候補の名称は、独立してアセンブルされたトランスクリプトームのコンティグ数から導き出されることに留意されたい。その結果、この数は、CYP716/CYP72酵素について以前に使用されたものとは異なる命名システムになる。
【0209】
これらの全長コンティグの中には、上記されているC-28及びC-16αオキシダーゼが存在した。したがって、傑出したC-23オキシダーゼもまた、これらの配列内に表されている可能性があることが推論された。
【0210】
35個のP450候補を、他の種由来の命名したP450に対するそれらの相同性に基づいて推定クラン及びファミリーにさらに割り当てた(表5)。多くの候補は一次代謝に関与することが予測され(そしてシロイヌナズナ属などの関連していない種由来の酵素に対して高度の配列保存性を共有していた)、この後、リストから除外した。
【0211】
これにより、25個の候補の最終リストが得られ、それらについてクローニングプライマーを注文した。参照を容易にするために、これらは、表5において1~25の番号が付けられ、これらの番号を使用して本明細書に記載している。
【0212】
次に25個の候補のPCR増幅を試みた。以前の候補と同様に、2つのPCRを、それぞれ葉(L)及び根(R)の両方に由来するcDNA鋳型を使用して各候補について実施した。強力なPCR産物を、25個の候補のうち20個について首尾良く産生した(データは示さず)。続いて、これらを(葉cDNA鋳型試料から)精製し、Gateway(登録商標)エントリーベクターpDONR207にクローニングした。
【0213】
候補を配列決定して、正確な遺伝子がクローニングされていることを検証した。ほとんどの場合、クローニングした配列は予測された配列とほぼ一致した。いくらかの冗長性がクローンの間で見出された;#6及び#7の配列は、#16及び#17と同様に同一であることが見出された。元のトランスクリプトームデータにおける予測配列をチェックすると、これらの対についてのコンティグは非常に類似しており、プライマーはそれらを区別するように設計されていなかったことが分かった。それにもかかわらず、クローンを別々として処理し、pEAQ-HT-DEST1バイナリーベクターにクローニングし、その後、A.ツメファシエンスにおいて形質転換した。
【0214】
次に、15個の候補をベンサミアナタバコにおいて一過性発現させた。まず、候補を、Q.サポナリアβ-アミリンシンターゼ(QsbAS)との共発現によってβ-アミリンを酸化するそれらの可能性について評価した。新規産生物は、GC-MS分析によってこれらの試料では検出されなかった。したがって、QsbAS及びC-28オキシダーゼ(CYP716-2073932)との共発現によって、オレアノール酸を酸化するそれらの能力について候補をさらに評価した。このときに、候補#6及び#7を発現する葉の抽出物において明確な新規産生物を検出することができた(6及び7は上記されているように同じ酵素をコードする)。新規産生物は、23-ヒドロキシ-オレアノール酸(別名ヘデラゲニン)の標準物と同一の保持時間及び質量スペクトルを有した。候補#7によってコードされた酵素は、CYP714ファミリーメンバー(まだ正式に命名されていない)であると予測される。現在特許請求されている優先日以前には、このファミリーのメンバーは、トリテルペンオキシダーゼであると報告されていないと考えられる。優先日以降、他の例が報告されている(例えば、Kim et. al (2018). 「A Novel Multifunctional C-23 Oxidase, CYP714E19, Is Involved in Asiaticoside Biosynthesis」. Plant Cell Physiol.)1200~1213頁。
【0215】
配列は、配列番号7及び8として付録Aに含まれる。
【0216】
C-23候補はこのデータの本発明者ら自身のアセンブリから誘導されたので、1KPデータセットにおける対応する配列をBLASTnによって検索した(https://db.cngb.org/blast4onekp/)。驚くべきことに、#7はこのデータベースにおいて全長配列によって表されていないが、いくつかのより小さいコンティグが戻される(表6)。これらからのトップヒットは、OHQZ-2018687、821bpコンティグである。
【0217】
【表4】
【0218】
表6:C-23オキシダーゼのBLASTnクエリーから戻される1KPデータセットからのコンティグのリスト。トップスコアのヒットはOQHZ-2018687である。
【0219】
実施例5 - Q.サポナリア酵素によるコンビナトリアル生合成はベンサミアナタバコにおけるキラ酸の合成を可能にする
上記されているQ.サポナリア由来のβ-アミリンシンターゼ並びにC-28、C-16α及びC-23オキシダーゼは、一緒に発現される場合、キラ酸を産生するのに十分でなければならない(図2参照)。
【0220】
Q.サポナリア由来のC-23オキシダーゼを試験する前に、Q.サポナリア由来の他の候補遺伝子を、他の種から特徴付けたC-23 β-アミリンオキシダーゼ、すなわち、タルウマゴヤシ(バーレル・メディック(barrel medic))由来のCYP72A68v2及びアウェナ・ストリゴサ(Avena strigosa)(ブラックオーツ麦(black oat))由来のCYP94D65(配列番号13~16)と組み合わせた。
【0221】
この最初の実験では、Q.サポナリア由来のQsbAS及び2つのCYP716酵素を、ベンサミアナタバコにおける一過性発現を使用してタルウマゴヤシ及びA.ストリゴサC-23オキシダーゼと組み合わせて、キラ酸をこれらの試料において観察することができるかどうかを決定した。LC-MS-CAD分析により、
・tHMGR/QsbAS/CYP716-2073932/CYP716-2012090/CYP72A68v2
・tHMGR/QsbAS/CYP716-2073932/CYP716-2012090/CYP94D65
の組み合わせの両方のセットが、キラ酸標準物の保持時間及び質量スペクトルに一致する新規産生物の出現をもたらすことが明らかになった(結果は示さず)。
【0222】
キラ酸の存在量は、CYP72A68v2を発現する試料において最も多いようであった。
【0223】
他の関連産生物もまた、これらの試料において観察された:オーツ麦C-23オキシダーゼ(CYP94D65)を発現する組合せでは、最も豊富な新たなピークはカウフィロゲニン(キラ酸に見られるアルデヒドの代わりにC-23アルコール)と同定されたが、ウマゴヤシ属(Medicago)C-23オキシダーゼ(CYP72A68v2)は、16α-ヒドロキシギプソゲニン(キラ酸に見られるアルデヒドの代わりにC-23カルボン酸)の十分な蓄積を生じた。
【0224】
Q.サポナリア酵素の排他的使用によりベンサミアナタバコにおいてキラ酸が産生され得ることを検証するために、QsbAS酵素をP450の種々の組合せにより一過性発現させた。予測されるように、全てのP450と共にQsbASを共発現する葉の分析により、キラ酸標準物の保持時間及び質量スペクトルに一致するピークの出現がもたらされた。このピークは、全経路よりも少ない経路を発現する葉由来の試料には存在しなかった(図7)。
【0225】
さらに、酵素の完全なQ.サポナリア相補体を発現する本発明の試料と、タルウマゴヤシ及びオーツ麦由来のC-23オキシダーゼが使用されている同等の(保存された)試料との間で比較を行った。これにより、Q.サポナリアC-23オキシダーゼを発現する試料においてキラ酸の量が最も多いようであることが明らかになった(図8)。Q.サポナリアC-23オキシダーゼを発現する試料はまた、望ましくない推定副産物であるカウフィロゲニン及び16α-ヒドロキシギプソゲン酸をかなり少なく含有するようであった(図8)。これらの代謝産物は、オーツ麦及びウマゴヤシ属の酵素の異なるC-23オキシダーゼ特異性を反映し、それらはそれぞれ主にC-23アルコール及び酸を作製する。したがって、Q.サポナリアC-23オキシダーゼは、QS-21生合成におけるその予測される機能を反映して、C-23アルデヒドに対してさらにいっそう特異的であるようである。
【0226】
実施例6 - 酵母におけるQ.サポナリア遺伝子の発現
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、商業的QA産生のための宿主体(host chassis)として利用することができる。
【0227】
したがって、本発明者らは、クローニングしたキラヤ遺伝子がこの宿主において活性であることを実証した。S288C(遺伝子型:MATa/MATα;ura3Δ0/ura3Δ0;leu2Δ0/leu2Δ0;his3Δ1/his3Δ1;met15Δ0/MET15;LYS2/lys2Δ0;YHR072w/YHR072w::kanM)に由来するS.セレビシエの株を使用し、これは3つ以下のプラスミドからの遺伝子の発現を可能にする3つの栄養要求性選択マーカー(-URA/-HIS/-LEU)を含有する。
【0228】
pYES-DEST52(ウラシル選択)、pAG423(ヒスチジン選択)及びpAG435(ロイシン選択)を含む、3つのGateway適合性酵母発現ベクターを利用した。
【0229】
Q.サポナリア酵素を、表7に記載されるようにこれらのベクター内に組換えた。簡潔に述べると、β-アミリンシンターゼ(QsbAS)をpYES-DEST52ベクター内に組換え、一方、C-28オキシダーゼ(CYP716-2073932)及びC-16αオキシダーゼ(長い(L)及び短い(S)アイソフォームの両方)をpAG423内に組換えた。
【0230】
シトクロムP450の機能効率を高めるために、第3のプラスミド(pAG435)を使用してシロイヌナズナシトクロムP450レダクターゼ2(AtATR2)酵素を発現させた。これは、植物P450を還元して基質酸化後に活性状態に戻すための補酵素として役立つ。全てのベクターは、挿入遺伝子を発現するためのガラクトース誘導性プロモーターを含有する。
【0231】
【表5】
【0232】
表7:生成した酵母株のリスト。
【0233】
酵母株を、ガラクトースを含む合成酵母培地中で培養し、30℃にて2日間インキュベートした。株を遠心分離によってペレット化し、鹸化し、代謝産物を酢酸エチルで抽出した。GC-MS分析により、全ての株が10.6分にてβ-アミリンと同定されたピークを蓄積したことが明らかとなった(図9)。株63(C-28オキシダーゼを発現する)は、オレアノール酸(12.01分)及び中間体C-28アルコールエリトロジオール(11.51分)を含む、C-28酸化β-アミリン誘導体と同定された少量のさらなる産生物を蓄積することが見出された(図9、上から2番目のトレース)。株64又は65(C-16αオキシダーゼアイソフォームを発現する)において、16-ヒドロキシ-β-アミリンと容易に同定され得る産生物は同定されず、このことは、この酵素についての最適な基質ではないかもしれないことを意味する。
【0234】
上記のデータは、酵母がキラ酸前駆体を産生するように操作され得ることを実証する。
【0235】
実施例7 - 安定な形質転換によるQAの産生
トリテルペンは、操作されたトランスジェニック植物系統(例えば、シロイヌナズナ属、小麦)を使用して以前に産生されている。多重遺伝子ベクターの構築を可能にし、全経路の単一遺伝子座への組込みを可能にする一連のGolden Gate[23]ベクターが報告されている。これらは、本明細書の開示に照らして、本発明に類似的に適用することができる。
【0236】
実施例8 - 実施例1~7からの結論
キラ酸はトリテルペノイドであり、キラヤ・サポナリアによって産生されるサポニンQS-21の重要な前駆体である。
【0237】
ここで、Q.サポナリア由来の4つの酵素(β-アミリンシンターゼ並びにC-16α、C-23及びC-28オキシダーゼ)を同定し、それらは、ベンサミアナタバコにおいて一過性発現させると、キラ酸を産生することができた。これらの酵素は、キラ酸足場の生成に必要とされる、QS-21生合成経路の初期段階に関与することが予測される(図1)。
【0238】
本明細書に記載される産生物の同定は、真正標準物の使用によって検証され、これらの結果に高い信頼度を与えた。
【0239】
キラ酸の生合成におけるβ-アミリンシンターゼ(QsbAS)並びにC-28、C-23及びC-16α位にてβ-アミリンを酸化する3つのシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(monoxygenase)(それぞれ、本明細書においてCYP716-2073932、CYP714-7及びCYP716-2012090と称する)の活性を図12に模式的に示す。
【0240】
実施例9 - ベンサミアナタバコにおけるキラ酸産生の推定
一過性発現後のベンサミアナタバコにおけるキラ酸産生を推定するために、LC-CADによる分析を実行した。Q.サポナリアβ-アミリンシンターゼ並びにC-16α、C-23及びC-28オキシダーゼを使用して、以前に記載されるように、アグロインフィルトレーションを実施した。対照として、2つのみの(C-23及びC-28)オキシダーゼをインフィルトレーションされた葉を使用し、キラ酸の代わりにギプソゲニンを蓄積させた(図12)。
【0241】
オーツ麦HMG-CoAレダクターゼ(tHMGR)もまた、β-アミリンの産生を増加させるので、全てのインフィルトレーションに含まれた。これらの試料からの代表的なクロマトグラムを図13に示す。異なる植物からの3つの葉を、生物学的複製物として各試験条件について使用した。
【0242】
これらの葉におけるキラ酸の産生を推定するために、キラ酸ピークの面積を、内部標準物(1.1mg/g乾燥葉重量に含まれる)の面積と比較した。3つの複製物からの平均値は、1.44mg/gであることが見出された。
【0243】
実施例10 - ベンサミアナタバコからのキラ酸の精製
キラ酸産生がベンサミアナタバコにおいて達成されていることを明確に決定するために、産生物の精製を行った。
【0244】
Q.サポナリアβ-アミリンシンターゼ、C-16α、C-23及びC-28オキシダーゼを有するpEAQ-HT-DEST1構築物を保有するA.ツメファシエンスを、合計209個のベンサミアナタバコ植物にバキュームインフィルトレーションした。オーツ麦tHMGRもまた、収率を高めるために含んだ。インフィルトレーションの4日後に葉を収集し、凍結乾燥後に150.3gの乾燥物質を得た。Buchi Speed Extractor E-914を使用して代謝産物をエタノールで抽出し、数ラウンドのシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用して合計30mgの産生物を単離した。単離した産生物は、LC-MS(図14)及びGC-MS(図15)によって真正キラ酸標準物(Extrasynthese)のものと同一の保持時間及び質量スペクトルを有することが見出された。さらに、単離した産生物のH NMR分光分析もまた、キラ酸標準物と一致した(図16)。
【0245】
このことにより、キラ酸が、Q.サポナリア酵素の一過性発現を介するベンサミアナタバコにおける一過性発現を介して産生され得ることが確認される。産生物の単離収率は0.2mg/g乾燥重量の範囲であったが、試料中には少量の不純物が検出された。この収率は、実施例9におけるLC-CADからの推定収率よりも低く、この単離プロセスの間の産生物の喪失を示す。それにもかかわらず、これは、現在特徴付けられている酵素を使用してベンサミアナタバコから実用的な量のキラ酸を産生し、単離することができることを実証している。
【0246】
方法
インフィルトレーション
以前に記載される(Reed et al., 2017)、無針注射器を使用してアグロインフィルトレーションを実施した。全ての遺伝子は、A.ツメファシエンスLBA4404においてpEAQ-HT-DEST1バイナリー発現ベクター(Sainsbury et al., 2009)から発現させた。全ての植物は、オーツ麦tHMGR、キラヤβ-アミリンシンターゼ(QsbAS)、並びにβ-アミリンC-28(CYP716-2073932)及びC-16α(CYP716-2012090S)オキシダーゼを共発現した。キラ酸産生のために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を対照の代わりに使用しながら、C-23(CYP714-7)オキシダーゼも共発現させた。細菌及び植物の培養は、(Reed et al., 2017)に記載される通りである。試験条件ごとに3つの植物がインフィルトレーションされ、生物学的複製物として別々に分析した。
【0247】
LC-MS分析
葉をアグロインフィルトレーションの5日後に収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した葉材料(試料当たり10mg)を1000rpmにて1分間粉砕した(Geno/Grinder 2010, Spex SamplePrep)。抽出は、ジギトキシン(内部標準物;Sigma)20μg/mLを含む80%メタノール550μL中で、40℃にて20分間、1400rpmにて振盪(Thermomixer Comfort, Eppendorf)しながら実行した。試料をヘキサン400μLで2回分配した。水相を真空下で40℃にて乾燥させた(EZ-2 Series Evaporator、Genevac)。乾燥材料を100%メタノール75μL中で再懸濁し、12,500gにて30秒間濾過した(0.2μm, Spin-X, Costar)。濾過した試料をガラスバイアルに移し、以下に詳述するように分析した。
【0248】
ベンサミアナタバコ葉抽出物の調製
シングル四重極質量分析計LCMS-2020(Shimadzu)及びCorona Veo RS荷電化粒子検出器(CAD)(Dionex)を備えるProminence HPLCシステムを使用して分析を実行した。検出:MS(デュアルESI/APCIイオン化、DL温度250℃、ネブライザーガス流量15L.min-1、ヒートブロック温度400℃、スプレー電圧ポジティブ4.5kV、ネガティブ-3.5kV)CAD:データ収集速度10Hz、フィルター定数3.6秒、925エバポレーター温度35℃、イオントラップ電圧20.5V。方法:溶媒A:[HO+0.1%ギ酸]溶媒B:[アセトニトリル(CHCN)+0.1%ギ酸。注入量:10μL。勾配:15%[B]0~1.5分、15%~60%[B]1.5~26分、60%~100%[B]26~26.5分、100%[B]26.5~28.5分、100%~15%[B]28.5~29分、35%[B]29~30分。0.3mL.min-1の流速及びKinetexカラム2.6μm XB-C18 100Å、50×2.1mm(Phenomenex)を使用して方法を実施した。
【0249】
ベンサミアナタバコ葉抽出物の分析
LabSolutionsソフトウェア(Shimadzu)を使用して分析を実施した。産生物収率の推定値を得るために、キラ酸についてのピーク面積(CADによって決定した)を内部標準物(ジギトキシン、1.1μg/mg乾燥葉組織)の面積で割った。結果を3つの複製物から平均化した。キラ酸と同じ保持時間を有する内因性ベンサミアナタバコ産生物についての微小ピークが対照において観察された(計算した平均値0.25μg/mg)。したがって、この値を推定キラ酸収率から差し引いた。
【0250】
ラージスケールインフィルトレーション
tHMGR、QsbAS、CYP716-2073932、CYP716-2012090S及びCYP714-7オキシダーゼを使用して上記に詳述したようにアグロインフィルトレーションを実行した。合計209個の植物が以前に記載されるように(Reed et al., 2017)真空によってインフィルトレーションされ、4日後に収集した。
【0251】
ベンサミアナタバコからのキラ酸の精製
ラージスケールインフィルトレーションからの葉を収集し、凍結乾燥し、プログラムが4サイクル(100℃及び130バール圧力)を含むことを除いて、(Reed et al., 2017)に詳述されているようにSpeedExtractor E-914(Buchi)を使用して抽出を実施した。サイクル1(ヘキサン)は保持時間がゼロであり、サイクル2~4(エタノール)は保持時間が5分であった。2分の溶媒フラッシュ及び6分のNフラッシュで運転を終了した。抽出物のヘキサン部分を捨て、後続のフラッシュクロマトグラフィーについてエタノール部分を使用し、以下に示した個々のカラムの詳細と共にIsolera One(Biotage)を使用して実施した。各カラム後のキラ酸について、(Reed et al., 2017)に詳述されているようにGC-MS及び薄層クロマトグラフィー(TLC)によって画分をチェックした。各段階において、最も純粋な画分をプールし、後続のカラムへ負荷するためにシリカゲル60(Material Harvest)上で乾燥させた。カラム1:SNAP Ultra 50g(Biotage)、流速:100mL/分、以下の勾配による90mL画分:溶媒A:[ヘキサン]溶媒B:[酢酸エチル];勾配:10カラム体積にわたって5%[B]~100%[B]、及びさらに5カラム体積について100%[B]にて保持。カラム2:SNAP Ultra 50gカラム(Biotage)、流速100mL/分、以下の勾配による90mL画分:溶媒A:[ジクロロメタン]溶媒B:[酢酸エチル];10カラム体積にわたって10%[B]~60%[B]、及びさらに2カラム体積について100%[B]にて保持。カラム3:SNAP Ultra 10g(Biotage)、流速:36mL/分、カラム2と同じ勾配による17mL画分。カラム3の後、画分を活性炭により処理して着色不純物を除去し、カラム4に負荷した。カラム4:20カラム体積にわたってジクロロメタン中の15%酢酸エチルのイソクラティック移動相を用いたSNAP Ultra 10gカラム(Biotage)(36mL/分、17mL画分)。プールした画分を、TLCプレート上のストリーキングを減少させるのに役立つ少量のHCl(エタノール約40mL中の濃HCl400μL)により処理した。カラム5:30カラム体積にわたってジクロロメタン中の15%酢酸エチルのイソクラティック移動相を用い、5カラム体積にわたって100%酢酸エチルの最終フラッシュを用いたSNAP Ultra 10gカラム(Biotage)(36mL/分、17mL画分)。最も純粋な画分をプールし、乾燥させて、少量の黄色不純物を含む30mgの白色粉末を得た。これを以下のようにGC-MS、LC-MS及びNMRによって分析した。
【0252】
精製したキラ酸のGC-MS、LC-MS及びNMR分析。
GC-MS分析を、(Reed et al., 2017)に記載されるように実施した。LC-MS分析をキラ酸定量について上記のように実施した。NMRスペクトルを、重水素化メタノール中のH NMRについて400MHzの公称周波数にてフーリエ変換モードにおいて記録した。各分析法について、キラ酸標準物(Extrasynthese)を比較のために使用した。
【0253】
材料及び方法についての参考文献
Reed J, Stephenson MJ, Miettinen K, Brouwer B, Leveau A, Brett P, Goss RJM, Goossens A, O'Connell MA, Osbourn A. 2017. A translational synthetic biology platform for rapid access to gram-scale quantities of novel drug-like molecules. Metab Eng 42: 185-193.
Sainsbury F, Thuenemann EC, Lomonossoff GP. 2009. pEAQ: versatile expression vectors for easy and quick transient expression of heterologous proteins in plants. Plant Biotechnol J 7(7): 682-693.
【0254】
他の参考文献
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3. Miettinen, K., et al., The ancient CYP716 family is a major contributor to the diversification of eudicot triterpenoid biosynthesis. Nat Commun, 2017. 8: p. 14153.
4. Sainsbury, F., E.C. Thuenemann, and G.P. Lomonossoff, pEAQ: versatile expression vectors for easy and quick transient expression of heterologous proteins in plants. Plant Biotechnol J, 2009. 7(7): p. 682-93.
5. Reed, J., et al., A translational synthetic biology platform for rapid access to gram-scale quantities of novel drug-like molecules. Metab Eng, 2017.
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【0255】
付録A:配列表及び配列
表1-Q.サポナリア配列
クローン数とは、元の1KPトランスクリプトームアセンブリからのコンティグ数を指す(https://db.cngb.org/blast4onekp/)
【0256】
【表6】
【0257】
表2-非Q.サポナリア配列
キラル酸に見出される関連位置(16α、28、23)においてβ-アミリン(又はその誘導体)を酸化するシトクロムP450。太字で命名された酵素は、ベンサミアナタバコにおける一過性発現によって試験され、参照された研究によって報告されたものと一致する産生物を生成することが見出された。
【0258】
最初の前にある遺伝子名は以下の通りの種である:As-アウェナ・ストリゴサ、At-シロイヌナズナ、Bf-ミシマサイコ、Bv-ハルザキヤマガラシ(Barbarea vulgaris)、Cq-キヌア(Chenopodium quinoa)、Cr-ニチニチソウ(Catharanthus roseus)、Md-リンゴ(Malus domestica)、Ml-マエサ・ランセオラタ(Maesa lanceolata)、Mt-タルウマゴヤシ、Pg-オタネニンジン(Panax ginseng)、Vv-ヨーロッパ・ブドウ(Vitis vinifera)。
【0259】
【表7】
【0260】
【表8】
【0261】
【表9】
【0262】
【表10】
【0263】
表3-アクセサリー酵素
【0264】
【表11】
【0265】
表4-1KPデータセットにおいて見出された遺伝子配列と、本開示におけるQ.サポナリア植物からPCRによって得られた配列決定クローンとの比較
【0266】
【表12】
【0267】
表8
Clustal Omega(バージョン1.2.4-https://www.ebi.ac.ukを介してアクセスした)を使用して18個のP450のペアワイズアラインメントを行った。表の数字は遺伝子間のアミノ酸同一性パーセンテージを表す。配列を機能に従って体系化し、本明細書において特徴付けたQ.サポナリア遺伝子を太字で示す。全てのペアワイズ値を2回表し、したがって冗長配列を灰色の背景で表に右上に示す。表は、提示を容易にするために2頁に分割されている。
【0268】
【表13】
【0269】
表8(続き)
【0270】
【表14】
【0271】
配列番号1-Q.サポナリアβ-アミリンシンターゼ、QsbAS(OQHZ-2074321)コード配列(2277bp):
【0272】
【化1】
【0273】
配列番号2-QsbAS(OQHZ-2074321)翻訳ヌクレオチド配列(758aa):
【0274】
【化2】
【0275】
配列番号3-QsCYP716_2073932(OQHZ-2073932)(以前にCYP716A224と命名されたC-28オキシダーゼ[3])コード配列(1443bp):
【0276】
【化3】
【0277】
配列番号4-QsCYP716_2073932(OQHZ-2073932)翻訳ヌクレオチド配列(480aa):
【0278】
【化4】
【0279】
配列番号5-QsCYP716_2012090(OQHZ-2012090)(C-16αオキシダーゼ)コード配列(1506bp/1443bp):
本明細書に記載されるNBの長い及び短いアイソフォームは、以下の配列において下線を引いている最初の63ヌクレオチド(21アミノ酸)の存在によって区別される。
【0280】
【化5】
【0281】
配列番号6-QsCYP716_2073932翻訳ヌクレオチド配列(501aa/480aa):
【0282】
【化6】
【0283】
配列番号7-QsCYP714_c36368(C-23候補#7)コード配列(1524bp):
【0284】
【化7】
【0285】
配列番号8-QsCYP714_c36368(C-23候補#7)翻訳ヌクレオチド配列(507aa):
【0286】
【化8】
【0287】
配列番号9;BfCYP716Y1(ミシマサイコC-16αオキシダーゼ)コード配列(1437bp):
【0288】
【化9】
【0289】
配列番号10;BfCYP716Y1(ミシマサイコC-16αオキシダーゼ)コード配列(478aa):
【0290】
【化10】
【0291】
配列番号11;MlCYP87D16(マエサ・ランセオラタC-16αオキシダーゼ)コード配列(1428bp):
【0292】
【化11】
【0293】
配列番号12;MlCYP87D16(マエサ・ランセオラタC-16αオキシダーゼ)コード配列(475aa):
【0294】
【化12】
【0295】
配列番号13;MtCYP72A68v2(タルウマゴヤシC-23オキシダーゼ)コード配列(1563bp):
【0296】
【化13】
【0297】
配列番号14;MtCYP72A68v2(タルウマゴヤシC-23オキシダーゼ)翻訳ヌクレオチド配列(520aa):
【0298】
【化14】
【0299】
配列番号15;AsCYP94D65(アウェナ・ストリゴサC-23オキシダーゼ)コード配列(1551bp):
【0300】
【化15】
【0301】
配列番号16;AsCYP94D65(アウェナ・ストリゴサC-23オキシダーゼ)翻訳ヌクレオチド配列(516aa):
【0302】
【化16】
【0303】
配列番号17;MtCYP716A12(タルウマゴヤシC-28オキシダーゼ)コード配列(1440bp):
【0304】
【化17】
【0305】
配列番号18;MtCYP716A12(タルウマゴヤシC-28オキシダーゼ)コード配列(479aa):
【0306】
【化18】
【0307】
配列番号29;AsHMGR(アウェナ・ストリゴサHMG-CoAレダクターゼ)コード配列(1689bp):
NB:全長HMGR配列を以下に提供する。5’領域(下線)を除去して切断型フィードバック非感受性形態(tHMGR)を生成することができる。tHMGRについての配列もまた、以下に別々に示す。
【0308】
【化19】
【0309】
配列番号30;AsHMGR(アウェナ・ストリゴサHMG-CoAレダクターゼ)翻訳ヌクレオチド配列(562aa):
【0310】
【化20】
【0311】
配列番号31;AstHMGR(アウェナ・ストリゴサ切断型HMG-CoAレダクターゼ)コード配列(1275bp):
【0312】
【化21】
【0313】
配列番号32;AstHMGR(アウェナ・ストリゴサ切断型HMG-CoAレダクターゼ)翻訳ヌクレオチド配列(424aa):
【0314】
【化22】
【0315】
配列番号33;AsSQS(アウェナ・ストリゴサスクアレンシンターゼ)コード配列(1212bp):
【0316】
【化23】
【0317】
配列番号34;AsSQS(アウェナ・ストリゴサスクアレンシンターゼ)翻訳ヌクレオチド配列(403aa):
【0318】
【化24】
【0319】
配列番号35;AtATR2(シロイヌナズナシトクロムP450レダクターゼ2)コード配列(2325bp):
【0320】
【化25】
【0321】
配列番号36;AtATR2(シロイヌナズナシトクロムP450レダクターゼ2)翻訳ヌクレオチド配列(774aa):
【0322】
【化26】
図1
図2
図3
図4
図5
図5S
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2024003016000001.xml
【外国語明細書】