(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030168
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20240229BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240229BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20240229BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20240229BHJP
C08K 5/3432 20060101ALI20240229BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C08L71/12
C08L25/04
C08L51/04
C08L55/02
C08K5/3432
C08K5/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132772
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 与一
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC052
4J002BC062
4J002BN142
4J002BN152
4J002CH071
4J002DH026
4J002ES007
4J002EW046
4J002EW156
4J002FD047
4J002FD136
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 難燃性に優れ、かつ、荷重たわみ温度が高い樹脂組成物、ならびに、樹脂組成物を用いたペレット、および、成形品の提供。
【解決手段】 (a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の合計100質量部に対して、(c)難燃剤15~20質量部と、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を0.4~3.0質量部を含む、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の合計100質量部に対して、(c)難燃剤15~20質量部と、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を0.4~3.0質量部を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が、式(HALS)で表される構造を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(HALS)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
【請求項3】
前記スチレン系樹脂が、ハイインパクトポリスチレンを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の合計100質量部に対して、(e)無機充填材10~60質量部を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(c)難燃剤が、リン系難燃剤を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(c)難燃剤と(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の質量比率である(d)/(c)が、0.02~0.2である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が、式(HALS)で表される構造を含み、
前記スチレン系樹脂が、ハイインパクトポリスチレンを含み、
さらに、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の合計100質量部に対して、(e)無機充填材10~60質量部を含み、
前記(c)難燃剤が、リン系難燃剤を含み、
前記(c)難燃剤と(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の質量比率である(d)/(c)が、0.02~0.2である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(HALS)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
【請求項8】
請求項1、2および7のいずれか1項に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項9】
請求項1、2および7のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項10】
請求項8に記載のペレットから形成された成形品。
【請求項11】
最薄肉部が0.5mm以上である、請求項9に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリフェニレンエーテル樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物(以下、「ポリフェニレンエーテル樹脂組成物」ということがある。)は、耐熱性、電気特性、寸法安定性、耐衝撃性、低比重性等の特長を有している。そして、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、環境負荷の大きなハロゲン系化合物やアンチモン化合物を用いることなく難燃化を図ることもできるため、各種の電気・電子部品、事務機器部品、自動車部品、建材、その他各種外装材や工業用品等の用途に広範に利用されている。
【0003】
ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の例としては、例えば、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリフェニレンエーテル樹脂に難燃剤を配合すると、一般的に難燃性は向上する。しかしながら、さらなる難燃性を求められる場合がある。また、無機充填材を配合する場合には、難燃剤を配合しても、難燃性が十分に発現しにくい場合もある。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の用途によっては、荷重たわみ温度が求められることがある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、難燃性に優れ、かつ、荷重たわみ温度が高い樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリフェニレンエーテル樹脂に、難燃剤と共に、NOR型ヒンダードアミン系酸化防止剤を配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>(a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の合計100質量部に対して、(c)難燃剤15~20質量部と、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を0.4~3.0質量部を含む、樹脂組成物。
<2>前記(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が、式(HALS)で表される構造を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(HALS)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
<3>前記スチレン系樹脂が、ハイインパクトポリスチレンを含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>さらに、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の合計100質量部に対して、(e)無機充填材10~60質量部を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記(c)難燃剤が、リン系難燃剤を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記(c)難燃剤と(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の質量比率である(d)/(c)が、0.02~0.2である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が、式(HALS)で表される構造を含み、
前記スチレン系樹脂が、ハイインパクトポリスチレンを含み、
さらに、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の合計100質量部に対して、(e)無機充填材10~60質量部を含み、
前記(c)難燃剤が、リン系難燃剤を含み、
前記(c)難燃剤と(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の質量比率である(d)/(c)が、0.02~0.2である、<1>に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(HALS)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
<8><1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<9><1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<10><8>に記載のペレットから形成された成形品。
<11>最薄肉部が0.5mm以上である、<9>または<10>に記載の成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、難燃性に優れ、かつ、荷重たわみ温度が高い樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたペレット、および、成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の合計100質量部に対して、(c)難燃剤15~20質量部と、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を0.4~3.0質量部を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、難燃性に優れ、かつ、荷重たわみ温度が高い樹脂組成物が得られる。これは、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が、樹脂の燃焼の際に発生する、ヒドロキシルラジカルをトラップすると共に、熱分解時に発生する複数のラジカル種に対して作用することで燃焼サイクルの進行を阻害するため、難燃性を向上させていると推測される。これに対し、同じヒンダードアミン系光安定剤であっても、NH型の場合、自身が酸化され、ニトロキソラジカルとなり、次いでアルキルラジカルを補足しなければ、ヒドロキシルラジカルをトラップすることができないため、難燃性の向上には寄与しにくいと推測された。また、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と難燃剤を組み合わせて使用することで、それぞれの難燃作用がより効果的に発揮される。そのため、樹脂組成物の荷重たわみ温度の低下を引き起こす難燃剤の添加量を最小限に抑えることが可能となり、結果として難燃性と荷重たわみ温度を高い水準で併せ持つ樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0010】
<(a)ポリフェニレンエーテル樹脂>
本実施形態の樹脂組成物に用いられる(a)ポリフェニレンエーテル樹脂は、公知のポリフェニレンエーテル樹脂を用いることができ、例えば、下記式で表される構成単位を主鎖に有する重合体が例示される。(a)ポリフェニレンエーテル樹脂は、単独重合体または共重合体のいずれであってもよい。
【0011】
【化3】
(式中、2つのR
aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭化水素オキシ基、またはハロゲン化炭化水素オキシ基を表し、2つのR
bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、炭化水素オキシ基、またはハロゲン化炭化水素オキシ基を表す。ただし、2つのR
aがともに水素原子になることはない。)
【0012】
RaおよびRbとしては、それぞれ独立に、水素原子、第1級もしくは第2級アルキル基、アリール基が好ましい。第1級アルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-アミル基、イソアミル基、2-メチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-、3-もしくは4-メチルペンチル基またはヘプチル基が挙げられる。第2級アルキル基の好適な例としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基または1-エチルプロピル基が挙げられる。特に、Raは第1級もしくは第2級の炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。Rbは水素原子であることが好ましい。
【0013】
好適な(a)ポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)等の2,6-ジアルキルフェニレンエーテルの重合体が挙げられる。共重合体としては、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリエチルフェノール共重合体、2,6-ジエチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体、2,6-ジプロピルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体等の2,6-ジアルキルフェノール/2,3,6-トリアルキルフェノール共重合体、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
【0014】
本実施形態における(a)ポリフェニレンエーテル樹脂としては、特に、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノール/2,3,6-トリメチルフェノールランダム共重合体が好ましい。また、特開2005-344065号公報に記載されているような末端基数と銅含有率を規定したポリフェニレンエーテル樹脂も好適に使用できる。
【0015】
(a)ポリフェニレンエーテル樹脂は、クロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.2~0.8dL/gのものが好ましく、0.3~0.6dL/gのものがより好ましい。固有粘度を0.2dL/g以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にあり、0.8dL/g以下とすることにより、流動性がより向上し、成形加工がより容易になる傾向にある。また、固有粘度の異なる2種以上の(a)ポリフェニレンエーテル樹脂を併用して、この固有粘度の範囲としてもよい。
【0016】
本実施形態に使用される(a)ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って、例えば、2,6-ジメチルフェノール等のモノマーをアミン銅触媒の存在下、酸化重合する方法を採用することができ、その際、反応条件を選択することにより、固有粘度を所望の範囲に制御することができる。固有粘度の制御は、重合温度、重合時間、触媒量等の条件を選択することにより達成できる。
【0017】
本実施形態の樹脂組成物における(a)ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は、樹脂組成物中、30質量%であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが一層好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリフェニレンエーテル樹脂が本来的に有する耐熱性、難燃性、寸法安定性といった優れた性能を効果的に奏し、樹脂組成物としての各種性能がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物における(a)ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は、樹脂組成物中、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性が向上し、射出成形時の成形性が良化する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0018】
<(b)スチレン系樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、スチレン系樹脂を含んでいてもよい。スチレン系樹脂を含むことにより、樹脂組成物の流動性や、耐衝撃性が向上する傾向にある。
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の重合体、スチレン系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体およびスチレン系グラフト共重合体等が挙げられる。
【0019】
本実施形態で使用されるスチレン系樹脂としては、ポリスチレン樹脂(PS)、ハイインパクトポリスチレン(ゴム変性スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、HIPSともいう)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン・IPN(Inter Penetration Network)型ゴム共重合体等、または、これらの混合物が挙げられる。
本実施形態で用いられるスチレン系樹脂は、ハイインパクトポリスチレンを含むことがより好ましい。
本実施形態で用いるハイインパクトポリスチレンは、例えば、ゴムの存在下で、少なくともスチレン単量体を重合して得られる。ハイインパクトポリスチレンでは、スチレン系重合体のマトリックス中に、微細なゴム状粒子がブレンドまたはグラフト重合されている。
ゴムとしては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。
スチレン系重合体としては、ポリスチレンおよびスチレンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられ、ポリスチレンが好ましい。スチレン系重合体としては、下記式で示される繰返単位からなる重合体、および、下記式で示される繰返単位を50質量%以上含む、他の共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0020】
【化4】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、Zは水素原子、炭素数1~4のアルキル基またはハロゲン原子を表し、nは1~5の整数である。)
スチレン系以外の単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどのビニル系単量体が挙げられる。
【0021】
ハイインパクトポリスチレン中のゴム質重合体成分の含有率は、1質量%以上が好ましく、さらに好ましくは3質量%以上であり、また、40質量%以下が好ましく、さらに好ましくは30質量%以下である。また、スチレン系単量体以外の単量体成分を含む場合、ハイインパクトポリスチレン中のゴム質重合体成分およびスチレン系単量体成分含有率の和は、90質量%以上とするのが好ましく、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0022】
ハイインパクトポリスチレンの分子量を反映するメルトフローレート(MFR)としては、温度200℃、荷重5kgの条件下での測定値が、0.5~15g/10分の範囲が好ましく、さらに好ましくは1.0~10g/10分の範囲である。
ハイインパクトポリスチレンの重量平均分子量は、50,000以上が好ましく、100,000以上がより好ましく、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましい。
ハイインパクトポリスチレンの市販品としては、PSジャパン社製、HT478が例示される。
尚、本実施形態の樹脂組成物は、(b)スチレン系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0023】
<(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂のブレンド形態>
本実施形態の樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂を、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂85~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~15質量%の割合で含む。好ましくは、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の合計100質量%に対し、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂の割合が、88質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましく、94質量%以上であることがさらに好ましく、96質量%以上であることが一層好ましく、98質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、荷重たわみ温度がより高くなる傾向にある。(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の合計100質量%に対し、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂の割合の上限値は、100質量%以下であることが好ましい。
【0024】
本実施形態の樹脂組成物における(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の総量は、樹脂組成物中、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、55質量%以上であることがより一層好ましい。また、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の総量は、樹脂組成物中、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以下であることが一層好ましく、65質量%以下であることがより一層好ましい。
【0025】
<(c)難燃剤>
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を含む。難燃剤を含むことにより、難燃性に優れた樹脂組成物が得られる。
本実施形態で用いる(c)難燃剤の種類は特に定めるものではなく、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、有機金属系難燃剤等が用いられ、リン系難燃剤が好ましく、縮合リン酸系難燃剤がより好ましい。
【0026】
リン系難燃剤としては、例えば、エチルホスフィン酸金属塩、ジエチルホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物等が挙げられ、中でも、縮合リン酸エステルまたはホスファゼンが好ましく、縮合リン酸エステルがより好ましい。
リン系難燃剤の分子量は、300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、また、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
【0027】
縮合リン酸エステルは、下記の式(1)で表される化合物が好ましい。
式(1)
【化5】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して水素原子または有機基を表す。ただし、R
1、R
2、R
3およびR
4が全て水素原子の場合を除く。Xは2価の有機基を表し、rは1~3の整数を表す。)
【0028】
上記の式(1)において、有機基とは、例えば、置換基を有する、または置換基を有しない、アルキル基(例えば、炭素数1~5のアルキル基)、シクロアルキル基(例えば、炭素数6~12のシクロアルキル基)、アリール基(例えば、炭素数6~12のアリール基)が挙げられ、アリール基が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。またこれらの置換基を組み合わせた基、あるいはこれらの置換基を酸素原子、イオウ原子、窒素原子などにより結合して組み合わせた基などでもよい。また2価の有機基とは、上記の有機基から水素原子1個を除いてできる2価以上の基をいう。例えば、アルキレン基(例えば、炭素数1~5のアルキレン基)、フェニレン基、置換フェニレン基(例えば、(例えば、炭素数1~5のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基)、ビスフェノール類から誘導されるような多核フェニレン基などが挙げられる。
本実施形態においては、式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基(好ましくはメチル基)で置換されていてもよいフェニル基が好ましい。
式(1)中、Xは、フェニレン基、または、フェニレン基とアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましい。
式(1)中、rは、1または2が好ましく、1がより好ましい。
式(1)で表される化合物は、rが1~3である化合物の混合物であってもよい。
【0029】
上記の式(1)で示される縮合リン酸エステルの具体例としては、例えば、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリクレジルフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、ジイソプロピルフェニルフォスフェート、トリス(クロルエチル)フォスフェート、トリス(ジクロルプロピル)フォスフェート、トリス(クロルプロピル)フォスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)フォスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3-ジクロルフォスフェート、ビス(クロルプロピル)モノオクチルフォスフェート、ビスフェノールAテトラフェニルフォスフェート、ビスフェノールAテトラクレジルジフォスフェート、ビスフェノールAテトラキシリルジフォスフェート、ヒドロキノンテトラフェニルジフォスフェート、ヒドロキノンテトラクレジルフォスフェート、ヒドロキノンテトラキシリルジフォスフェート等の種々のものが例示される。
また、市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、大八化学工業(株)より「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、「PX-200」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))、ADEKA社より「アデカスタブFP-900L」(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオールとフェノールとのリン酸エステル)といった商品名で販売されており、容易に入手可能である。
【0030】
ホスファゼン化合物は、分子中に-P=N-結合を有する有機化合物であり、好ましくは、式(2)で表される環状ホスファゼン化合物、式(3)で表される鎖状ホスファゼン化合物、ならびに、式(2)および式(3)からなる群より選択される少なくとも一種のホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋ホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0031】
式(2)
【化6】
式(2)中、aは3~25の整数であり、R
1およびR
2は、同一または異なっていてもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリール基またはアルキルアリール基を示す。
【0032】
式(3)
【化7】
式(3)中、bは3~10000の整数であり、R
3およびR
4は、同一または異なっていてもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリロキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリール基またはアルキルアリール基を示す。
R
5は、-N=P(OR
3)
3基、-N=P(OR
4)
3基、-N=P(O)OR
3基、-N=P(O)OR
4基から選ばれる少なくとも1種を示し、R
6は、-P(OR
3)
4基、-P(OR
4)
4基、-P(O)(OR
3)
2基、-P(O)(OR
4)
2基から選ばれる少なくとも1種を示す。
【0033】
上記式(2)および式(3)中、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。
【0034】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5~14のシクロアルキル基が挙げられ、炭素数5~8のシクロアルキル基が好ましい。
【0035】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等の炭素数2~8のアルケニル基が挙げられる。シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5~12のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0036】
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~8のアルキニル基やエチニルベンゼン基等のアリール基を置換基として有するアルキニル基等も挙げられる。
【0037】
アリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル(即ち、トリル)基、ジメチルフェニル(即ち、キシリル)基、トリメチルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6~20のアリール基が挙げられるが、なかでも炭素数6~10のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0038】
アルキルアリール基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数6~20のアラルキル基が挙げられるが、なかでも炭素数7~10のアラルキル基が好ましく、ベンジル基が特に好ましい。
【0039】
なかでも、式(2)におけるR1およびR2、式(3)におけるR3およびR4が、アリール基、アリールアルキル基であるものが好ましい。このような芳香族ホスファゼンを用いることで、熱可塑性樹脂組成物の熱安定性を効果的に高めることができる。このような観点より、上記R1、R2、R3およびR4は、アリール基であることがより好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
【0040】
式(2)および式(3)で表される環状および/または鎖状ホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、o-トリルオキシホスファゼン、m-トリルオキシホスファゼン、p-トリルオキシホスファゼン等の(ポリ)トリルオキシホスファゼン、o,m-キシリルオキシホスファゼン、o,p-キシリルオキシホスファゼン、m,p-キシリルオキシホスファゼン等の(ポリ)キシリルオキシホスファゼン、o,m,p-トリメチルフェニルオキシホスファゼン、フェノキシo-トリルオキシホスファゼン、フェノキシm-トリルオキシホスファゼン、フェノキシp-トリルオキシホスファゼン等の(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m-キシリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p-キシリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p-キシリルオキシホスファゼン等(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p-トリメチルフェニルオキシホスファゼン等が例示でき、好ましくは環状および/または鎖状フェノキシホスファゼン等である。
【0041】
式(2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R1およびR2がフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120~130℃の温度で反応させて得られる環状および直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。また、前記環状フェノキシホスファゼン化合物は、式(2)中のaが3~8の整数である化合物が好ましく、aの異なる化合物の混合物であってもよい。
【0042】
上記aの平均は、3~5であることが好ましく、3~4であることがより好ましい。また、なかでも、a=3のものが50質量%以上、a=4のものが10~40質量%、a=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
【0043】
式(3)で表される鎖状ホスファゼン化合物としては、R3およびR4がフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220~250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3~10000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。前記直鎖状フェノキシホスファゼン化合物の、式(3)中のbは、好ましくは3~1000、より好ましくは3~100、さらに好ましくは3~25である。
【0044】
架橋ホスファゼン化合物としては、例えば、4,4'-スルホニルジフェニレン(すなわち、ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2-(4,4'-ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4'-オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4'-チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4'-ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
【0045】
また、架橋ホスファゼン化合物としては、式(2)においてR1、R2がフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が上記架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物、または、上記式(3)においてR3、R4がフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が上記架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物が難燃性の点から好ましく、環状フェノキシホスファゼン化合物が上記架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、式(2)で表される環状ホスファゼン化合物および/または式(3)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基およびフェニレン基数を基準として、通常50~99.9%、好ましくは70~90%である。また、前記架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
【0046】
本実施形態においては、ホスファゼン化合物は、式(2)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物、および、式(3)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物よる成る群から選択される少なくとも1種であることが、熱可塑性樹脂組成物の難燃性および機械的特性の点から好ましい。
ホスファゼン化合物の市販品としては、FP-110、伏見製薬社製が例示される。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物における(c)難燃剤の含有量は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の合計100質量部に対し、15質量部以上であり、16質量部以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、難燃性がより向上する傾向にある。また、前記(c)難燃剤の含有量は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の合計100質量部に対し、20質量部以下であり、19質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(c)難燃剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0048】
<(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤>
本実施形態の樹脂組成物は、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を含む。(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を含むことにより、難燃性に優れ、かつ、荷重たわみ温度が高い樹脂組成物が得られる。
(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤とは、ヒンダードアミン系化合物であって、ヒンダードアミンの窒素原子に、OR(Rは有機基)が結合している化合物である。
本実施形態における(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、式(HALS)で表される構造を含むことが好ましい。
【化8】
(式(HALS)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~11のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
式(HALS)中、Rは炭素数3~12のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10のシクロアルキル基であることがより好ましく、シクロヘキシル基であることがさらに一層好ましい。
R
xはメチル基であることが好ましい。
mは0であることが好ましい。
式(HALS)はトリアジン環を有する基に結合または、エステル結合を形成していることが好ましく、トリアジン環を有する基に結合していることがより好ましい。
【0049】
本実施形態における(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、一分子中に、式(HALS)で表される構造を2つ以上含むことが好ましく、3つ以上含むことがより好ましく、4つ以上含むことがさらに好ましく、また、10つ以下含むことが好ましく、8つ以下含むことがより好ましく、7つ以下含むことがさらに好ましい。
本実施形態における(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、下記で表されることがより好ましい。
【化9】
上記式において、n1およびn2はそれぞれ独立に1~3の整数であり、1が好ましい。
本実施形態における(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の分子量は600以上、また、5000以下であることが好ましい。
【0050】
本実施形態における(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の合計100質量部に対して、0.4質量部以上であり、0.5質量部以上であることが好ましく、0.6質量部以上であることがより好ましく、0.7質量部以上であることがさらに好ましく、0.8質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、機械的強度がより向上する傾向にある。また、前記(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の含有量の上限は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の合計100質量部に対して、3.0質量部以下であり、2.5質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましく、1.5質量部以下であることが一層好ましく、1.0質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的強度や荷重たわみ温度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0051】
本実施形態の樹脂組成物において、(c)難燃剤と(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の質量比率である(d)/(c)は、0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.04以上であることがさらに好ましく、また、0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本実施形態の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0052】
<(e)無機充填材>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の合計100質量部に対し、(e)無機充填材10~60質量部を含むことが好ましい。(e)無機充填材を含むことにより、得られる成形品の機械的強度を高めることができる。また、樹脂組成物に(e)無機充填材、特に、繊維状の無機充填材が含まれると、成形品中の繊維状の無機充填材と樹脂の隙間を樹脂由来の燃焼性の分解ガスが通過しやすいと推測される。本実施形態では、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を配合することにより、気相中での燃焼反応を阻害できると共に、樹脂の分解に由来するガスの発生を効果的に抑制できるため、無機充填材、特に、繊維状の無機充填材を配合した樹脂組成物において、効果的に難燃性を高めることができる。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物で用いる含有され得る(e)無機充填材としては、樹脂に配合することにより得られる樹脂組成物の機械的性質を向上させる効果を有するものであり、常用のプラスチック用無機充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の無機充填材を用いることができる。また、炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状または無定形の充填材;タルク等の板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の無機充填材を用いることもできる。中でも、機械的強度、および、耐熱性の点から、繊維状の充填材、特にはガラス繊維を用いるのが好ましい。ガラス繊維としては、丸型断面形状または異形断面形状のいずれをも用いることができる。
(e)無機充填材は、樹脂との密着性を向上させるためカップリング剤等の表面処理剤によって表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れる傾向にある。
【0054】
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系やチタネート系等の種々のカップリング剤が好ましく挙げられる。これらの中では、アミノシラン系、エポキシシラン系、ビニルシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシド キシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。シラン化合物は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよい。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
【0055】
本実施形態におけるガラス繊維とは、繊維状の無機材料を意味し、より具体的には、1,000~10,000本のガラス繊維を集束し、所定の長さにカットされたチョップド形状が好ましい。
本実施形態におけるガラス繊維は、数平均繊維長(長さ)が0.5~10mmのものが好ましく、1~5mmのものがより好ましい。このような数平均繊維長のガラス繊維を用いることにより、機械的強度をより向上させることができる。数平均繊維長は光学顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維長を測定する対象のガラス繊維をランダムに抽出してその長辺を測定し、得られた測定値から数平均繊維長を算出する。観察の倍率は20倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。数平均繊維長は、概ね、カット長に相当する。
また、ガラス繊維の断面は、円形、楕円形、長円形、長方形、長方形の両短辺に半円を合わせた形状、まゆ型等いずれの形状であってもよいが、円形が好ましい。ここでの円形は、幾何学的な意味での円形に加え、本実施形態の技術分野において通常円形と称されるものを含む趣旨である。
ガラス繊維の数平均繊維径(直径)は、下限が、4.0μm以上であることが好ましく、4.5μm以上であることがより好ましく、5.0μm以上であることがさらに好ましい。ガラス繊維の数平均繊維径の上限は、15.0μm以下であることが好ましく、14.0μm以下であることがより好ましい。このような範囲の数平均繊維径を有するガラス繊維を用いることにより、より機械的強度に優れた成形品が得られる傾向にある。なお、ガラス繊維の数平均繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のガラス繊維をランダムに抽出し、中央部に近いところで繊維径を測定し、得られた測定値から算出する。観察の倍率は1,000倍とし、測定本数は1,000本以上として行う。円形以外の断面を有するガラス繊維の数平均繊維径は、断面の面積と同じ面積の円に換算したときの数平均繊維径とする。
【0056】
ガラス繊維は、一般的に供給されるEガラス(Electricalglass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)、Dガラスおよび耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られる繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであれば使用可能であり、特に限定されない。本実施形態では、Eガラスを含むことが好ましい。
【0057】
ガラス繊維は市販品として入手できる。市販品としては、例えば、日本電気硝子社製、T-286H、T-756H、T-127、T-289H、T-852H、オーウェンスコーニング社製、DEFT2A、PPG社製、HP3540、日東紡社製、CSG3PA820等が挙げられる。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物が(e)無機充填材を含む場合、その含有量は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂と(b)スチレン系樹脂の合計100質量部に対し、10質量部以上であり、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、35質量部以上であることがさらに好ましく、40質量部以上であることが一層好ましく、45質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。また、前記無機充填材の含有量の上限値は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂90~100質量%と(b)スチレン系樹脂0~10質量%の合計100質量部に対し、60質量部以下であり、55質量部以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂の流動性を損なわず、成形加工性を維持しながら無機充填剤添加による効果を発揮することができる。
また、樹脂組成物中の(e)無機充填材の含有量は、25質量%以上であることが好ましく、また、37質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(e)無機充填材を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0059】
<(f)他の安定剤>
本実施形態の樹脂組成物は、熱安定剤や酸化防止剤等の(f)他の安定剤(以下、単に、「(f)安定剤」ということがある)を含んでいてもよい。なお、本発明においては、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、(f)安定剤には含めないものとする。
(f)安定剤としては、フェノール系安定剤、アミン系安定剤、リン系安定剤、チオエーテル系安定剤、酸化亜鉛等の無機熱安定剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、フェノール系安定剤および酸化亜鉛が好ましい。(f)安定剤については、国際公開第2019/026689号の段落0036、特開2022-001624号公報の段落0044~0046の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0060】
フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0061】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0062】
本実施形態の樹脂組成物における(f)安定剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上、一層好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。(f)安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、(f)安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、(f)安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0063】
<(g)着色剤>
本実施形態の樹脂組成物は、(g)着色剤を含んでいてもよい。(g)着色剤を含むことにより、得られる成形品に色味を持たせることができ、意匠性が向上する傾向にある。
(g)着色剤としては、顔料であっても染料であってもよいが、顔料であることが好ましい。
顔料は、無機顔料(カーボンブラックなどの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられ、無機顔料が好ましく、黒色顔料がより好ましく、カーボンブラックがさらに好ましい。
(g)着色剤を本実施形態の樹脂組成物に配合する場合、マスターバッチ化して配合してもよい。
本実施形態における樹脂組成物が(g)着色剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。また、前記(g)着色剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、10.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(g)着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0064】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。
具体的には、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂添加剤を含んでいてもよい。具体的には、内部潤滑剤(脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス等)、離型剤(シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸エステル等)、耐候性改良剤、増核剤、耐衝撃改良剤、可塑剤、流動性改良剤等を含んでいてもよい。これらの成分を含有する場合、その含有量は、配合する場合、合計で、樹脂組成物の0.01~5質量%の範囲とすることが好ましい。
【0065】
本実施形態の樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂、(b)スチレン系樹脂、(c)難燃剤、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤、および、(e)無機充填材、ならびに、必要に応じ配合される他の成分の合計が100質量%となるように調整される。さらに、本実施形態の樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂、(b)スチレン系樹脂、(c)難燃剤、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤、および、(e)無機充填材、(f)安定剤、および、(g)顔料の合計が樹脂組成物の95質量%以上を占めることが好ましく、97質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0066】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法が採用される。
例えば、(a)ポリフェニレンエーテル樹脂、(b)スチレン系樹脂、(c)難燃剤、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤等の各成分をV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。あるいは、二段階練込法として、予め、一部の成分を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットと他の成分を混合し、ベント付き押出機で溶融混練する方法が挙げられる。
(e)無機充填材を配合する場合は、サイドフィードしてもよい。
【0067】
<樹脂組成物の特性>
本実施形態の樹脂組成物は、特に以下の特性を満たすものとすることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、ISO3167:93A型試験片に成形したときのISO-75-1に準じた荷重たわみ温度(DTUL)が137℃以上であることが好ましく、139℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましく、142℃以上であることが一層好ましく、144℃以上であることがより一層好ましい。前記荷重たわみ温度の上限は、特に定めるものではないが、170℃以下が実際的であり、160℃以下であってもよい。このような荷重たわみ温度は、(c)難燃剤と(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を配合すること、および、(a)、(b)、(c)難燃剤と(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の配合量をそれぞれ精密に調整することによって達成される。
本実施形態の樹脂組成物は、UL94規格に準拠した5本1セットの垂直燃焼性試験(UL94V試験:1.5mmt)に基づく難燃性が、V-0を満たすことが好ましい。このような優れた難燃性は、(c)難燃剤と(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を配合すること、これらの配合量をそれぞれ精密に調整することによって達成される。
【0068】
<樹脂組成物の用途>
本実施形態の樹脂組成物の一形態は、ペレットである。
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物ないしペレットから形成される。
【0069】
本実施形態における、成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0070】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂、特に、ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂のブレンド物が一般的に用いられる用途に広く用いられる。
例えば、自動車外装・外板部品、自動車内装部品、自動車アンダーフード部品が挙げられる。具体的には、バンパー、フェンダー、ドアパネル、モール、エンブレム、エンジンフード、ホイルカバー、ルーフ、スポイラー、エンジンカバー等の外装・外板部品、アンダーフード部品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックストリム等の内装部品等に適している。
また、各種コンピューターおよびその周辺機器、その他のOA機器、テレビ、ビデオ、各種ディスクプレーヤー等のキャビネット、シャーシ、冷蔵庫、エアコン、液晶プロジェクター等としても用いることができる。
さらに、固体メタノール電池用燃料ケース、二次電池電槽、燃料電池配水管、水冷用タンク、ボイラー外装ケース、インクジェットプリンターのインク周辺部品・部材およびシャーシ、および水配管、継ぎ手などの成形品、として利用できる。
【0071】
本実施形態の成形品は、最薄肉部が0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上、1.5mm以上であることがより好ましい。また、本実施形態の成形品は、最薄肉部の厚みが3mm以下であることが好ましい。
【実施例0072】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0073】
1.原料
本実施例では以下の原料を用いた。
【表1】
【0074】
上記(d)成分の構造は下記の通りである。
【化10】
【0075】
2.実施例1~7、比較例1~4
下記表2および表3に示す割合(質量部基準)で各成分を混合し、二軸押出機(芝浦機械社製:TEM18SS)を用いて、シリンダー温度290℃、ダイヘッド温度300℃、スクリュー回転数300rpmで溶融混練を行い、樹脂組成物(ペレット)を得た。
得られた樹脂組成物(ペレット)を用いて、下記評価を行った。結果を表2および表3に示した。
【0076】
<難燃性>
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で2時間乾燥させた後、射出成形機(芝浦機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃の条件で、縦×横×厚さ=125mm×13mm×1.5mmの燃焼性試験用試験片を成形した。
得られた燃焼性試験用試験片について、UL94規格に準拠した5本1セットの垂直燃焼性試験(UL94V試験:1.5mmt)を2回ずつ行った。当該グレードは、良好なものから順にV-0、V-1、V-2と分類される。1セット毎に垂直燃焼性試験に基づくグレードで判定し、表2および表3に示した。尚、2回の試験結果が異なる場合、低難燃グレードの結果を採用した。
【0077】
<荷重たわみ温度(DTUL)(℃)>
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で2時間乾燥させた後、射出成形機(芝浦機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃の条件で、ISO-15103に準じて、ISO3167:93A型試験片(以下、「ISO試験片という」)を射出成形した。
ISO-75-2に準じて、上記ISO試験片の平行部を機械加工して作製した80mm×10mm×4mmtの短冊形状試験片を用いて、荷重1.80MPaにおける荷重たわみ温度(単位:℃)を測定した。
【0078】
<ノッチ付きシャルピー衝撃強さ>
上記で得られたISO試験片を、ISO-179-1およびISO179-2に準拠して、切削加工し両端のつかみ部分を切り取ると共に、中央にノッチ(切り欠き)を付けて、ノッチ付シャルピー衝撃試験片を成形した。得られたノッチ付シャルピー衝撃試験片について、耐衝撃性評価として、ISO-179-1およびISO179-2に準拠し、23℃におけるノッチ付シャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。
【0079】
<引張強さ(MPa)>
ISO-527に準じて、上記で得られたISO試験片を用いて、引張強さを測定した。
【0080】
<曲げ強さ(MPa)および曲げ弾性率(MPa)>
上記ISO試験片の平行部を機械加工して作製した80mm×10mm×4mmtの短冊形状試験片を用いて、ISO-178に準拠して、温度23℃、湿度50%の環境下で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0081】
【0082】
【0083】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、難燃性に優れ、かつ、荷重たわみ温度が高かった(実施例1~7)。
これに対し、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を含まない場合(比較例1)、あるいは、配合量が少ない場合(比較例2)、難燃性が劣っていた。特に、比較例1では、荷重たわみ温度も低かった。一方、(d)NOR型ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が多い場合(比較例3)、難燃性は優れていたが、荷重たわみ温度が低かった。さらに、機械的強度も劣る傾向にあった。また、スチレン系樹脂の含有量が多すぎる場合(比較例4)、難燃性が劣り、かつ、荷重たわみ温度も低かった。