(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003017
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】アウタロータ型モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/14 20060101AFI20231228BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20231228BHJP
H02K 1/28 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H02K7/14 A
F04D29/58 P
H02K1/28 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181125
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2021511764の分割
【原出願日】2019-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 直樹
(72)【発明者】
【氏名】水口 博
(57)【要約】
【課題】強度信頼性に優れたアウタロータ型モータを提供すること。
【解決手段】円筒状のロータヨークの内周面に磁石が配置されたロータを有するアウタロータ型モータは、ロータを回転可能に支持するモータ軸と、モータ軸の外周から径方向の外方へ向かって延設された基端部と、基端部の外周から径方向の外方へ向かって形成された外端部と、を有するロータ取付部材と、を備える。外端部は、モータ軸の外周面に比べて、ロータヨークの内周面に近い位置に形成され、ロータは外端部に取付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のロータヨークの内周面に磁石が配置されたロータを有するアウタロータ型モータであって、
前記ロータを回転可能に支持するモータ軸と、
前記モータ軸の外周から径方向の外方へ向かって延設された基端部と、前記基端部の外周から径方向の外方へ向かって形成された外端部と、を有するロータ取付部材と、
前記ロータヨークと同心円状に形成されたファンを用いた冷却機構として、第1のファンと第2のファンと、を備え、
前記ロータ及び前記第1のファンはファン取付部材によって前記外端部に取付けられ、前記第2のファンは、前記モータ軸の外周から延設された前記基端部の位置とは軸方向に異なる前記モータ軸の軸端側の位置に取付けられる
ことを特徴とするアウタロータ型モータ。
【請求項2】
前記外端部の径方向の中央部と前記ロータヨークの外周面との距離は、前記外端部の径方向の中央部と前記モータ軸の中心との距離に比べて、短い距離に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項3】
前記基端部は、前記モータ軸の外周から径方向の外方の前記外端部へ向かって、前記モータ軸の軸方向の肉厚が漸減するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項4】
前記基端部と前記外端部との間には、前記モータ軸の軸方向に沿って段部が形成されており、
前記ロータヨークの開口部が前記段部に嵌合した状態で、前記ロータは前記外端部に取付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項5】
前記円筒状のロータヨークは、
前記モータ軸の軸方向に対して交差する鉛直方向に沿って、前記外端部と重なり合うように形成された結合部と、
内周面に沿って前記磁石を配置可能に形成された筒部と、
前記結合部と前記筒部との間に複数の湾曲部が形成され、前記複数の湾曲部を介して、前記結合部と前記筒部とを接合する接合部と、を有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項6】
前記第1のファンと前記外端部との間に前記ロータヨークが取付けられた状態で、前記第1のファンは前記外端部に取付けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項7】
前記外端部には、前記ロータヨークを取付けるためのヨーク取付部材と係合可能な第1係合部と、前記第1のファンを取付けるための前記ファン取付部材と係合可能な第2係合部と、が同心円状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項8】
前記ロータヨークには、前記ロータ取付部材を挿通する貫通穴と、前記ファン取付部材を挿通する貫通穴と、が同心円状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項9】
前記円筒状のロータヨークは、
前記モータ軸の軸方向に対して交差する鉛直方向に沿って、前記外端部と重なり合うように形成された結合部と、
内周面に沿って前記磁石を配置可能に形成された筒部と、
前記結合部と前記筒部との間に複数の湾曲部が形成され、前記複数の湾曲部を介して、前記結合部と前記筒部とを接合する接合部と、を有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項10】
前記接合部は、前記複数の湾曲部として、
前記モータ軸の軸方向に対して鉛直方向に形成されている前記結合部と、前記軸方向に沿って形成されている前記筒部との間で、前記接合部を前記筒部側に向かって所定の第1角度で湾曲するように形成されている第1湾曲部と、
前記第1湾曲部により前記第1角度で湾曲した前記接合部を前記筒部に接合するように所定の第2角度で湾曲するように形成されている第2湾曲部と、
を有することを特徴とする請求項9に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項11】
前記第1のファンには、前記ロータヨークを前記外端部に取付けるヨーク取付部材との当接を回避するように形成された切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項12】
前記モータ軸の中心から前記外端部の径方向の中央部までの距離を第1距離、前記モータ軸の中心から前記ロータヨークの外周面までの距離を第2距離とした場合、
前記外端部は、前記第1距離 >0.5×前記第2距離の関係を満たす位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項13】
前記アウタロータ型モータのモータハウジングに取り付けられるモータカバーを更に有し、前記第2のファンは前記モータカバーに覆われることを特徴とする請求項1に記載のアウタロータ型モータ。
【請求項14】
前記第2のファンは前記第1のファンに比べて小径に形成されており、前記第2のファンの径方向の外方の位置に、カバー締結部材により前記モータカバーは前記モータハウジングに取り付けられることを特徴とする請求項13に記載のアウタロータ型モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウタロータ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ軸40の近傍に一体形成されたフランジ部43にロータ本体31を取付ける構造のアウタロータ型モータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアウタロータ型モータは、モータ軸40の近傍に一体形成されたフランジ部43にロータ本体31を取付けると共に、ロータ本体31の底部33の上面にインナーファン70を一体的に取付ける構造を有するものである。
【0005】
本発明は冷却性能に優れたアウタロータ型モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様のアウタロータ型モータは、円筒状のロータヨークの内周面に磁石が配置されたロータを有するアウタロータ型モータであって、
前記ロータを回転可能に支持するモータ軸と、
前記モータ軸の外周から径方向の外方へ向かって延設された基端部と、前記基端部の外周から径方向の外方へ向かって形成された外端部と、を有するロータ取付部材と、
前記ロータヨークと同心円状に形成されたファンを用いた冷却機構として、第1のファンと第2のファンと、を備え、
前記ロータ及び前記第1のファンはファン取付部材によって前記外端部に取付けられ、前記第2のファンは、前記モータ軸の外周から延設された前記基端部の位置とは軸方向に異なる前記モータ軸の軸端側の位置に取付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モータ軸の回転により第1のファン及び第2のファンが旋回すると、第1のファンは、アウタロータ型モータ内部の空気を循環させて、ロータおよびステータ等を冷却することができる。また、第2のファンは、モータカバーに設けられた吸気開口部(不図示)から取り込まれた空気をアウタロータ型モータの外壁(モータハウジング)側に送り、アウタロータ型モータの外壁を冷却する。第2のファンにより送られた空気(外部冷却空気)は、アウタロータ型モータの外壁を冷却すると共に、第1のファンによって内部を循環する内部循環空気と外壁との間で行われる熱交換を促進させることができる。
【0008】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るアウタロータ型モータの構成を示す断面図。
【
図3】第2実施形態に係るアウタロータ型モータの構成を示す断面図。
【
図4】第3実施形態に係るアウタロータ型モータの構成を示す断面図。
【
図5】外端部にファンを取付ける状態を模式的に示す図。
【
図7】外端部にロータヨークを取付ける状態を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、以下の実施形態によって限定されるわけではない。
【0011】
[第1実施形態]
(アウタロータ型モータの構成)
図1は第1実施形態に係るアウタロータ型モータの構成を示す断面図である。
図1に示すように、アウタロータ型モータ100は、円筒状のロータヨーク31の内周面に複数の磁石35が配置されたロータ30を有するアウタロータ型モータである。モータ軸10は、モータハウジング60内に設けられた軸受け82及び84により回転自在の支持されている。ロータヨーク31の内周面に配置される複数の磁石35は、周方向に交互に異なる磁極を形成するように配置されている。
【0012】
本実施形態において、ロータ取付部材20はモータ軸10と一体に形成されている。ロータ取付部材20は、モータ軸10の外周から径方向の外方へ向かって延設された基端部22と、基端部の外周から径方向の外方へ向かって形成された外端部24と、を有する。
【0013】
ここで、モータ軸10の中心から外端部24部の径方向の中央部(後述のヨーク取付部材37)までの距離を第1距離(=D1/2=R1)、モータ軸10の中心からロータヨーク31の外周面までの距離を第2距離(=D2/2=R2)とした場合、外端部24は、第1距離(R1)>0.5×第2距離(R2)の関係を満たす位置に形成されている。
【0014】
すなわち、ロータ取付部材20の外端部24(ヨーク取付部材37)は、モータ軸10の外周面(筒体34)に比べて、ロータヨーク31の内周面に近い位置(第1距離(R1)>0.5×第2距離(R2))に形成されおり、ロータ30は外端部24に取付けられる。モータ軸10はロータ30を回転可能に支持しており、外端部24に取付けられているロータ30はモータ軸10の回転により回転する。
【0015】
ロータ30が取付けられる外端部24を、モータ軸10の外周面に比べて、円筒状のロータヨーク31の内周面(筒体34)に近い位置に形成することにより、ロータの回転により生じ得る遠心力(荷重)の影響を低減し、強度信頼性に優れたアウタロータ型モータを提供することが可能になる。
【0016】
(ロータ取付部材20の詳細構造)
図2は、
図1のA部に示すロータ取付部材20の構造の拡大図であり、モータ軸10側における基端部22の部材厚さ(肉厚)はTH1であり、径方向の外方に延びる外端部24側における基端部22の部材厚さ(肉厚)はTH2である。基端部22は、モータ軸10の外周から径方向の外方の外端部24へ向かって、モータ軸10の軸方向(以下、単に軸方向ともいう)の肉厚が漸減するように形成されている。ロータが取付けられる外端部24の基礎となる部分の剛性を確保しつつ、ロータ30の回転により基端部22の固定端側の部位(モータ軸10側の部位)に局所的に生じ得る応力集中を分散させることが可能になる。
【0017】
剛性が確保され、かつ、応力集中が生じないように形成された基端部22の外周から径方向の外方へ向かって外端部24を形成することにより、外端部24を、モータ軸10の外周面に比べて、円筒状のロータヨーク31の内周面(筒体34)に近い位置に形成することが可能になり、これにより、ロータ30の回転により生じ得る遠心力(荷重)の影響を低減し、強度信頼性に優れたアウタロータ型モータを提供することが可能になる。
【0018】
図2に示すように、基端部22と外端部24との間には、モータ軸10の軸方向に沿って、肉厚の異なる段部26が形成されており、ロータヨーク31の開口部が段部26に嵌合した状態で、ロータ30は外端部24にヨーク取付部材37(例えば、ボルト)によって取付けられる。段部26を用いたインロー結合することで、ロータ30(ロータヨーク31)とロータ取付部材20との位置決めが容易になり、組み立て時における軸心の誤差を低減することが可能になる。また、インロー結合とすることにより、ロータヨーク31と、ロータ取付部材20の外端部24及び基端部22と、の接触面積を増やすことができるため、ロータ30が取付けられた状態で外端部24に作用する荷重を基端部22側に分散することが可能になる。
【0019】
(ロータヨーク31の構造)
説明を
図1に戻し、ロータヨーク31の断面構造を説明する。円筒状のロータヨーク31は、外端部24と重なり合うように形成された結合部32と、内周面に沿って磁石35を配置可能に形成された筒部34と、結合部32と筒部34との間に複数の湾曲部が形成され、複数の湾曲部を介して、結合部32と筒部34とを接合する接合部38と、を有する。
【0020】
ロータ取付部材20の外端部24は、モータ軸10の軸方向に対して交差する方向(以下、鉛直方向ともいう)において、結合部32と接触する部分が平面状に形成されており、ロータヨーク31の結合部32は、鉛直方向に沿って、外端部24と重なり合うように平面状に形成されている。また、ロータヨーク31の筒部34は円筒状に形成されており、筒部34の内周面には、周方向に交互に異なる磁極が形成された複数の磁石35が配置可能に構成されている。
【0021】
図1に示す例では、結合部32と筒部34との間に複数の湾曲部33、36が形成されており、接合部38は、複数の湾曲部33、36を介して、結合部32と筒部34とを接合するように形成されている。接合部38は、複数の湾曲部として、2つの湾曲部33、36を有する例を示しているが、湾曲部の構成例は、この例に限られず、2以上の湾曲部を形成することも可能である。
【0022】
湾曲部36(以下、「第1湾曲部」ともいう)は、モータ軸10の軸方向に対して鉛直方向に形成されている結合部32と、モータ軸10の軸方向に沿って形成(モータ軸10の軸方向に対して略平行に形成)されている筒部34との間で、接合部38を筒部34側に向かって所定の第1角度(鈍角)で湾曲するように形成されている。
【0023】
また、湾曲部33(以下、「第2湾曲部」ともいう)は、湾曲部36(第1湾曲部)により第1角度(鈍角)で湾曲した接合部38を筒部34に接合するように所定の第2角度(鈍角)で湾曲するように形成されている。
【0024】
湾曲部36、33において、第1角度及び第2角度は、いずれも鈍角であり、ロータヨーク31の形状設計(結合部32、筒部34等の構造)に基づいて設定することが可能である。すなわち、結合部32、筒部34等の構造に基づいて、接合部38における第1角度及び第2角度を同じ角度に設定したり、第1角度を第2角度より大きくなるように設定したり、あるいは、第1角度を第2角度より小さくなるように設定することが可能である。接合部38により結合部32と筒部34との間を接続することにより、ロータヨーク31は、筒部34の一方の開口が部分的に塞がれた円筒状として形成される。
【0025】
図1において、ステータ90は、略円環形状のコア本体を有するステータコアと、ステータコアに巻装された複数のコイルとを有しており、ステータ90は、ステータ締結部材92により、モータハウジング60の内部に固定される。ステータ90がモータハウジング60の内部に固定された状態で、ステータ90と筒部34の内周面に配置された磁石35とが対向した状態になる。
【0026】
ステータ90のコイルには、ケーブル93、電気接続部95を介して、外部のモータ制御装置(不図示)から駆動電流が供給され、駆動電流により生じる磁界によりロータ30が回転する。また、回転検出素子(不図示)で検出されるモータ軸10の回転情報は外部の制御装置に送信可能に構成されている。
【0027】
(ロータヨーク31の取付け構造)
図7はロータ取付部材20の外端部24にロータヨーク31を取付ける状態を模式的に示す図であり、ロータヨーク31には、ヨーク取付部材37(例えば、ボルト)を挿通する貫通穴39Bが形成されている。貫通穴39Bは、ヨーク取付部材37の直径(螺子径)よりも穴径が大きく形成されている。ヨーク取付部材37と、外端部24に形成されている第1係合部29B(螺子穴)とが係合して、ロータヨーク31が外端部24に取付けられる。
【0028】
図8のST81は、モータ軸10に形成されたロータ取付部材20(基端部22、外端部24)を、
図7の矢印71の方向から見た状態を示す図である。外端部24には、ロータヨーク31(ロータ30)を取付けるためのヨーク取付部材37と係合可能な第1係合部29B(螺子穴)と、ファン40を取付けるためのファン取付部材44と係合可能な第2係合部29A(螺子穴)と、が同心円状に形成されている。
【0029】
ロータヨーク31とファン40とを、ロータ取付部材20の外端部24に同心円状に取付ける、つまり平面状かつ円環状に形成された外端部24を用いてロータヨーク37とファン40とを取り付けることで、ファン40を取付けるための構造としてファン取付部を外端部24に別途設ける必要がなく、外端部24(外端部24の径方向の寸法)を小型化することが可能になる。
【0030】
図8のST82は、ロータヨーク31を外端部24に取付けた状態を
図7の矢印71の方向から見た状態を示す図である。ロータヨーク31の中央には開口部32Bが形成されており、開口部32Bに段部26(
図2)が嵌合した状態で、ロータヨーク31(ロータ30)が外端部24に取付けられる。
図8のST82において、貫通穴39Aは、ファン40を外端部24に取付けるためのファン取付部材44がロータヨーク31を挿通するために形成されており、ロータヨーク31には、ヨーク取付部材37を挿通する貫通穴39B(
図7)と、ファン取付部材44を挿通する貫通穴39Aと、が同心円状に形成されている。貫通穴39Aは、貫通穴39Bと同様に、ファン取付部材44の直径(螺子径)よりも穴径が大きく形成されている。
【0031】
(冷却用のファンの構造)
アウタロータ型モータ100は、モータの回転駆動力を利用した冷却機構として、ファン70(外部ファン)と、ファン40(内部ファン)とを有する。
【0032】
ファン70(外部ファン)は、キーなどの締結部材によってモータ軸10に対して取付けられている。また、ファン40(内部ファン)は、ロータヨーク31と同心円状に形成されており、ファン40と外端部24との間にロータヨーク31が取付けられた状態で、ファン40は外端部24に取付けられる。ファン40は、ボルトなどのファン取付部材44によって外端部24に取付けられる。
【0033】
アウタロータ型モータ100の側方は、モータカバー65が、カバー締結部材66(例えば、ボルトなど)によりモータハウジング60に取付けられており、モータカバー65によって、ファン70(外部ファン)は覆われている。
【0034】
モータ軸10の回転によりファン40(内部ファン)及びファン70(外部ファン)が旋回すると、ファン40(内部ファン)は、アウタロータ型モータ100内部の空気を循環させて、ロータ30およびステータ90等を冷却する。
【0035】
また、ファン70(外部ファン)は、モータカバー65に設けられた吸気開口部(不図示)から取り込まれた空気をアウタロータ型モータ100の外壁(モータハウジング60)側に送り、アウタロータ型モータ100の外壁を冷却する。ファン70(外部ファン)により送られた空気(外部冷却空気)は、モータ100の外壁を冷却すると共に、ファン40(内部ファン)によって内部を循環する内部循環空気と外壁との間で行われる熱交換を促進させる。
【0036】
(冷却用のファンの取付け構造)
図5はロータ取付部材20の外端部24にファン40を取付ける状態を模式的に示す図であり、外端部24とファン40との間に配置されるロータヨーク31には、ファン取付部材44(例えば、ボルト)を挿通する貫通穴39Aが形成されている。ファン取付部材44と、外端部24に形成されている第2係合部29A(螺子穴:
図8)とが係合して、ファン40が外端部24に取付けられる。
【0037】
図6のST61は、外端部24に取付けられたファン40を、
図5の矢印51の方向から見た状態を示す図である。また、
図6のST62は、ファン40単体を
図5の矢印51の方向から見た状態を示す図である。ファン40には、ファン取付部材44を挿通する貫通穴46が形成されている。貫通穴46は、貫通穴39Aと同様に、ファン取付部材44の直径(螺子径)よりも穴径が大きく形成されている。また、ファン40には、ロータヨーク31を外端部24に取付けるヨーク取付部材37との当接を回避するように、ヨーク取付部材37の外径よりも大きく形成された切り欠き部47が形成されている。
【0038】
図6のST61に示すように、外端部24にロータヨーク31がヨーク取付部材37により取付けられた状態で、更に、ファン取付部材44によりファン40が外端部24に取付けられる。ファン40が外端部24に取付けられた状態で、切り欠き部47によりヨーク取付部材37とファン40との当接は回避されている。
【0039】
ヨーク取付部材37とファン40とが当接していないので、ロータヨーク31を取付けた状態で、ファン取付部材44を取り外せば、ファン40のみを外端部24から取り外すことができる。すなわち、ロータヨーク31(ロータ30)をロータ取付部材20の外端部24に取付けた状態を維持しつつ、ファン40のみをロータ取付部材20の外端部24から取り外すことが可能になり、これにより、アウタロータ型モータにおける保守性を向上させることが可能になる。
【0040】
図5に示すように、ファン40は、ファン本体41と、円周方向に配置された複数の羽根部42とを有している。ファン40を外端部24に取付けられた状態で、ファン40の羽根部42は、複数の湾曲部33、36により湾曲した接合部38とファン本体41との間に形成された空間に配置される。
【0041】
例えば、接合部38において、湾曲部を設けずに、結合部32を鉛直方向に直線的に延ばした構造にした場合、接合部とファン本体41との間の空間は狭小なものとなり、ファンの羽根部のサイズは制限される。羽根部のサイズを
図1の羽根部42と同様に構成すると、ファン40の取付け位置は、モータ軸10の軸方向に沿って、
図1の紙面右側方向にシフトし、冷却機構は大型化する。
【0042】
複数の湾曲部33、36によって接合部38が湾曲して形成された空間に羽根部42を配置することで、モータの回転駆動力を利用した冷却機構付きアウタロータ型モータ100を、より小型化することができる。また、複数の湾曲部33、36により接合部38が湾曲することにより、
図1に示すように、羽根部42を配置することが可能な空間を拡大することができ、より小型化しつつ、かつ、より羽根部42の面積の大きい、冷却性能が向上したファン40を用いてアウタロータ型モータ100を冷却することが可能になる。
【0043】
[第2実施形態]
図3は第2実施形態に係るアウタロータ型モータ100の構成を示す断面図である。第1実施形態では、アウタロータ型モータ100の冷却機構として、ファン70(外部ファン)と、ファン40(内部ファン)とを、モータ軸10の一端側に配置した例を説明したが、この例に限られず、
図3のように、ファン70(外部ファン)をモータ軸10の一端側に配置して、ファン40(内部ファン)をモータ軸10の他端側に配置することも可能である。この場合、ロータ取付部材20及びロータ30の配置方向は
図1の配置方向に対して逆向きになるが、本実施形態においても第1実施形態におけるアウタロータ型モータ100と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
[第3実施形態]
図4は第3実施形態に係るアウタロータ型モータ100の構成を示す断面図である。第1実施形態及び第2実施形態では、例えば、鋳造や削り出しなどにより、ロータ取付部材20をモータ軸10に一体形成したアウタロータ型モータ100の構成例を説明したが、ロータ取付部材20と、モータ軸10とは別部品として構成することも可能である。
【0045】
この場合、例えば、
図4に示すように、モータ軸10にテーパ部11Aを設けておき、ロータ取付部材20側にテーパ部11Aと係合する係合穴11Bを設けておき、テーパ部11Aと係合穴11Bとにより、モータ軸10上の所定の位置にロータ取付部材20を位置決めすればよい。
【0046】
図4の例では、ファン70(外部ファン)をモータ軸10の一端側に配置して、ファン40(内部ファン)をモータ軸10の他端側に配置する例を示しているが、
図1のように、ファン70(外部ファン)と、ファン40(内部ファン)とを、モータ軸10の一端側に配置してもよく、本実施形態においても第1実施形態におけるアウタロータ型モータ100と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
[実施形態のまとめ]
構成1.上記実施形態のアウタロータ型モータは、円筒状のロータヨーク(例えば、
図1の31)の内周面に磁石(例えば、
図1の35)が配置されたロータ(例えば、
図1の30)を有するアウタロータ型モータ(例えば、
図1の100)であって、
前記ロータ(30)を回転可能に支持するモータ軸(例えば、
図1の10)と、
前記モータ軸(10)の外周から径方向の外方へ向かって延設された基端部(例えば、
図1の22)と、前記基端部(22)の外周から径方向の外方へ向かって形成された外端部(例えば、
図1の24)と、を有するロータ取付部材(例えば、
図1の20)と、を備え、
前記外端部(24)は、前記モータ軸(10)の外周面に比べて、前記ロータヨーク(31)の内周面に近い位置に形成され、
前記ロータ(10)は前記外端部(24)に取付けられる。
【0048】
構成1のアウタロータ型モータによれば、ロータ30が取付けられる外端部24を、モータ軸10の外周面に比べて、円筒状のロータヨーク31の内周面に近い位置に形成することにより、ロータ30の回転により生じ得る遠心力(荷重)の影響を低減し、強度信頼性に優れたアウタロータ型モータを提供することが可能になる。
【0049】
構成2.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記基端部(22)は、前記モータ軸(10)の外周から径方向の外方の前記外端部(24)へ向かって、前記モータ軸(10)の軸方向の肉厚が漸減するように形成されている。
【0050】
構成2のアウタロータ型モータによれば、ロータ取付部材20は、径方向の外方の外端部へ向かって、モータ軸の軸方向の肉厚が漸減するように形成されている基端部22を有することで、ロータ30が取付けられる外端部24の基礎となる部分の剛性を確保しつつ、ロータ30の回転により基端部22の固定端側の部位(モータ軸10側の部位)に局所的に生じ得る荷重(応力集中)を分散させることが可能になる。
【0051】
剛性が確保され、かつ、応力集中が生じないように形成された基端部の外周から径方向の外方へ向かって外端部を形成することにより、外端部を、モータ軸の外周面に比べて、円筒状のロータヨークの内周面に近い位置に形成することが可能になり、これにより、ロータの回転により生じ得る遠心力(荷重)の影響を低減し、強度信頼性に優れたアウタロータ型モータを提供することが可能になる。
【0052】
構成3.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記基端部と前記外端部との間には、前記モータ軸の軸方向に沿って段部(例えば、
図2の26)が形成され、
前記ロータヨーク(31)の開口部が前記段部(26)に嵌合した状態で、前記ロータ(30)は前記外端部(24)に取付けられる。
【0053】
構成3のアウタロータ型モータによれば、段部を用いたインロー結合(段付き嵌めあいにより結合)することで、ロータ30(ロータヨーク31)とロータ取付部材20との位置決めが容易になり、組み立て時における軸心の誤差を低減することが可能になる。また、インロー結合とすることにより、ロータヨーク31と、ロータ取付部材20の外端部24及び基端部22と、の接触面積を増やすことができるため、ロータ30が取付けられた状態で外端部24に作用する荷重を基端部22側に分散することが可能になる。
【0054】
構成4.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記円筒状のロータヨーク(31)は、
前記モータ軸の軸方向に対して交差する鉛直方向に沿って、前記外端部と重なり合うように形成された結合部(例えば、
図1の32)と、
内周面に沿って前記磁石を配置可能に形成された筒部(例えば、
図1の34)と、
前記結合部(32)と前記筒部(34)との間に複数の湾曲部(例えば、
図1の33、36)が形成され、前記複数の湾曲部(33、36)を介して、前記結合部(32)と前記筒部(34)とを接合する接合部(例えば、
図1の38)と、を有する。
【0055】
構成4のアウタロータ型モータによれば、複数の湾曲部を設けることで、結合部32と筒部34との間を、各湾曲部における湾曲角度を滑らかに鈍角で形成することができる。これにより、結合部32と筒部34との間を直角に折り曲げる場合に比べて、ロータヨーク31内部における応力集中を一層緩和することができる。
【0056】
構成5.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記ロータヨーク(31)と同心円状に形成されたファン(例えば、
図1の40)を更に備え、
前記ファン(40)と前記外端部(24)との間に前記ロータヨーク(31)が取付けられた状態で、前記ファン(40)は前記外端部(24)に取付けられる。
【0057】
構成6.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記外端部(24)には、前記ロータヨークを取付けるためのヨーク取付部材(例えば、
図7、8の37)と係合可能な第1係合部(例えば、
図8の29B)と、前記ファン(40)を取付けるためのファン取付部材(44)と係合可能な第2係合部(例えば、
図8の29A)と、が同心円状に形成されている。
【0058】
構成5及び構成6のアウタロータ型モータによれば、ロータヨーク31とファン40とを、ロータ取付部材20の外端部24に同心円状に取付けることで、ファン40を取付けるための構造としてファン取付部を外端部24に別途設ける必要がなく、外端部24(外端部24の径方向の寸法)を小型化することが可能になる。
【0059】
構成7.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記ロータヨーク(31)には、前記ロータ取付部材(37)を挿通する貫通穴(例えば、
図7の39B)と、前記ファン取付部材(44)を挿通する貫通穴(例えば、
図5の39A)と、が同心円状に形成されている。
【0060】
構成7のアウタロータ型モータによれば、ロータヨーク31の形状設計において、ファン40をロータヨーク31に取付けるための係合部の配置や断面形状の制約を考慮する必要がなくなる。例えば、ファン40をロータヨーク31に取付ける場合には、締結部材との係合を考慮して、ロータヨーク31の結合部32を直線的に延ばした底部を形成しなければならない等の形状設計上の制限を受けることになり得る。
【0061】
ファン40を、ロータ取付部材20の外端部24に取付ける構造としたことにより、ロータヨーク31の形状設計における自由度を向上させることが可能になる。例えば、
図1に示したようなロータヨーク31の断面形状のように、結合部32と筒部34との間に複数の湾曲部33、36を形成することが可能になる。これにより、ロータヨーク31の形状を応力集中の緩和が可能な形状とすることが可能になる。
【0062】
構成8.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記円筒状のロータヨーク(31)は、
前記モータ軸の軸方向に対して交差する鉛直方向に沿って、前記外端部と重なり合うように形成された結合部(例えば、
図1の32)と、
内周面に沿って前記磁石を配置可能に形成された筒部(例えば、
図1の34)と、
前記結合部(32)と前記筒部(34)との間に複数の湾曲部(例えば、
図1の33、36)が形成され、前記複数の湾曲部(33、36)を介して、前記結合部(32)と前記筒部(34)とを接合する接合部(例えば、
図1の38)と、を有し、
前記ファン(40)の羽根部(例えば、
図1の42)は、前記複数の湾曲部(33、36)により湾曲した前記接合部(38)と前記ファン(40)との間に形成された空間に配置される。
【0063】
構成9.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記接合部(38)は、前記複数の湾曲部として、
前記モータ軸(10)の軸方向に対して鉛直方向に形成されている前記結合部(32)と、前記軸方向に沿って形成されている前記筒部(34)との間で、前記接合部(38)を前記筒部側に向かって第1角度で湾曲するように形成されている第1湾曲部(例えば、
図1の36)と、
前記第1湾曲部(36)により前記第1角度で湾曲した前記接合部(38)を前記筒部(34)に接合するように第2角度で湾曲するように形成されている第2湾曲部(例えば、
図1の33)と、を有する。
【0064】
構成8及び構成9のアウタロータ型モータによれば、接合部38が湾曲して形成された空間に羽根部42を配置することで、モータの回転駆動力を利用した冷却機構(ファン)付きアウタロータ型モータを、より小型化することができる。
【0065】
また、複数の湾曲部33、36により接合部38が湾曲することにより、羽根部42を配置することが可能な空間を拡大することができ、より小型化しつつ、かつ、より羽根部42の面積の大きい、冷却性能が向上したファン40を用いてアウタロータ型モータ100を冷却することが可能になる。
【0066】
構成10.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記ファン(40)には、前記ロータヨーク(31)を前記外端部(24)に取付けるヨーク取付部材(37)との当接を回避するように形成された切り欠き部(例えば、
図6の47)が形成されている。
【0067】
構成10のアウタロータ型モータによれば、ロータヨーク31(ロータ30)をロータ取付部材20の外端部24に取付けた状態を維持しつつ、ファン40のみをロータ取付部材20の外端部24から取り外すことが可能になり、これにより、アウタロータ型モータにおける保守性を向上させることが可能になる。
【0068】
構成11.上記実施形態のアウタロータ型モータでは、前記外端部は、
前記モータ軸の中心から前記外端部の径方向の中央部までの距離を第1距離、前記モータ軸の中心から前記ヨークの外周面までの距離を第2距離とした場合、
前記第1距離>0.5×前記第2距離の関係を満たす位置に取付けられている。
【0069】
構成11のアウタロータ型モータによれば、ロータ30が取付けられる外端部24を、モータ軸10の外周面に比べて、円筒状のロータヨーク31の内周面に近い位置(第1距離>0.5×第2距離)に形成することにより、ロータ30の回転により生じ得る遠心力(荷重)の影響を低減し、強度信頼性に優れたアウタロータ型モータを提供することが可能になる。
【0070】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0071】
10:モータ軸、11A:テーパ部、11B:係合穴、20:ロータ取付部材、22:基端部、24:外端部、30:ロータ、31:ロータヨーク、32:結合部、33:湾曲部(第2湾曲部)、34:筒部、35:、36:湾曲部(第1湾曲部)、37:ロータ取付部材、38:接合部、39A:貫通穴、39B: 貫通穴、40:ファン、41:ファン本体、42:羽根部、44:ファン取付部材、47:切り欠き部、100:アウタロータ型モータ