(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030172
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240229BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/64 Z
H03H9/25 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132779
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 健太
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097BB15
5J097CC05
5J097GG03
5J097JJ06
5J097JJ09
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】 信頼性に優れた弾性波装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置は、第1圧電性基板および第1圧電性基板に配置された複数の第1共振子を備えた第1弾性波フィルタ51と、第2圧電性基板および第2圧電性基板に配置された複数の第2共振子を備えた第2弾性波フィルタ51とを備え、複数の第1共振子と複数の第2共振子とが間隙を隔てて対向するように配置されている。複数の第1共振子および複数の第2共振子は、それぞれ、信号印加時に発熱領域が最も高い温度となる発熱共振子を含み、平面視において、これらの発熱共振子の発熱領域は互いに重なっていない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧電性基板と、前記第1圧電性基板に配置された複数の第1共振子とを有する第1弾性波フィルタと、
第2圧電性基板と、前記第2圧電性基板に配置された複数の第2共振子とを有する第2弾性波フィルタと、
を備え、前記複数の第1共振子と前記複数の第2共振子とが対向するように、前記第1圧電性基板と前記第2圧電性基板とが所定の距離を隔てて配置された弾性波装置であって、
前記複数の第1共振子は、使用時に、前記第1弾性波フィルタ内において最も高い温度となる第1発熱共振子を含み、
前記複数の第2共振子は、使用時に、前記第2弾性波フィルタ内において最も高い温度となる第2発熱共振子を含み、
平面視において、前記第1発熱共振子の発熱領域と前記第2発熱共振子の発熱領域とは互いに重なっていない、弾性波装置。
【請求項2】
前記第1発熱共振子の発熱領域は、前記複数の第1共振子の発熱領域のなかで、最も小く、
前記第2発熱共振子の発熱領域は、前記複数の第2共振子の発熱領域のなかで、最も小さい、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記第1発熱共振子の発熱領域は、前記複数の第1共振子の直列に分割されていない共振子の発熱領域のなかで、最も小さく、
前記第2発熱共振子の発熱領域は、前記複数の第2共振子の直列に分割されていない共振子の発熱領域のなかで、最も小さい、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記第1弾性波フィルタは、前記第1弾性波フィルタに信号が入力される第1入力端子を有し、
前記第1発熱共振子は、前記複数の第1共振子のなかで、前記第1入力端子から最初に前記信号が入力され、
前記第2弾性波フィルタは、前記第2弾性波フィルタに信号が入力される第2入力端子を有し、
前記第2発熱共振子は、前記複数の第2共振子のなかで、前記第2入力端子から最初に前記信号が入力される、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第1入力端子と前記第2入力端子とは電気的に接続されている、請求項4に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記第1入力端子と前記第2入力端子とは電気的に接続されていない、請求項4に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記複数の第1共振子は、ラダー回路を構成しており、前記第1発熱共振子は、前記ラダー回路の直列腕共振子であり、
前記複数の第2共振子は、ラダー回路を構成しており、前記第2発熱共振子は、前記ラダー回路の直列腕共振子である、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記複数の第1共振子は、ラダー回路を構成しており、前記第1発熱共振子は、前記ラダー回路の並列腕共振子であり、
前記複数の第2共振子は、ラダー回路を構成しており、前記第2発熱共振子は、前記ラダー回路の並列腕共振子である、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記第2圧電性基板は、前記第1主面と反対側に位置する第2主面と、前記第2主面に位置する複数の外部端子を有し、
前記複数の端子は第1外部端子および第2外部端子を含み、
前記第1発熱共振子は、前記複数の端子のうち、前記第1外部端子に最も近接しており、
前記第2発熱共振子は、前記複数の端子のうち、前記第2外部端子に最も近接している、
請求項1から8のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記第1弾性波フィルタは、受信用フィルタおよび送信用フィルタからなる群から選ばれる一方であり、前記第2弾性波フィルタは、前記受信用フィルタおよび送信用フィルタからなる群から選ばれる他方である、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項11】
第1圧電性基板と、前記第1圧電性基板に配置された複数の第1共振子とを有する第1弾性波フィルタと、
第2圧電性基板と、前記第2圧電性基板に配置された複数の第2共振子とを有する第2弾性波フィルタと、
を備え、前記複数の第1共振子と前記複数の第2共振子とが対向するように、前記第1圧電性基板と前記第2圧電性基板とが所定の距離を隔てて配置された弾性波装置であって、
前記複数の第1共振子はそれぞれ発熱領域を有し、
前記複数の第2共振子はそれぞれ発熱領域を有し、
前記複数の第1共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域と前記第2共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域とは、平面視において重なっていない、弾性波装置。
【請求項12】
前記複数の第1共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域および前記第2共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域は、直列分割された共振子の発熱領域ではない、請求項11に記載の弾性波装置。
【請求項13】
第1圧電性基板と、前記第1圧電性基板に配置された複数の第1共振子とを有する第1弾性波フィルタと、
第2圧電性基板と、前記第2圧電性基板に配置された複数の第2共振子とを有する第2弾性波フィルタと、
を備え、前記複数の第1共振子と前記複数の第2共振子とが対向するように、前記第1圧電性基板と前記第2圧電性基板とが所定の距離を隔てて配置された弾性波装置であって、
前記第1弾性波フィルタは、前記第1弾性波フィルタに信号が入力される第1入力端子を有し、
前記第2弾性波フィルタは、前記第2弾性波フィルタに信号が入力される第2入力端子を有し、
前記複数の第1共振子のなかで、前記第1入力端子から最初に前記信号が入力される第1共振子の発熱領域と、前記複数の第2共振子のなかで、前記第2入力端子から最初に前記信号が入力される第2共振子の発熱領域とは、平面視において重なっていない、弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術の進歩に伴い、より高速で大容量のデータ通信を行うことが可能な携帯通信網の重要性が高まっている。また、携帯通信網で使用される携帯端末には、より高周波数で、多くのバンドに対応できることが求められている。弾性波フィルタは、このような携帯端末に好適な特性を備えており、弾性波フィルタの重要性も高まってきている。
【0003】
例えば特許文献1は、弾性波フィルタなどの弾性波装置の一形態として、2つの圧電性基板にそれぞれIDT電極を配置して弾性波フィルタを構成し、IDT電極同士が対向するように2つの圧電性基板を保持するパッケージ技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、信頼性に優れた弾性波装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態による弾性波装置は、第1圧電性基板と、前記第1圧電性基板に配置された複数の第1共振子とを有する第1弾性波フィルタと、第2圧電性基板と、前記第2圧電性基板に配置された複数の第2共振子とを有する第2弾性波フィルタと、を備え、前記複数の第1共振子と前記複数の第2共振子とが対向するように、前記第1圧電性基板と前記第2圧電性基板とが所定の距離を隔てて配置された弾性波装置であって、前記複数の第1共振子は、使用時に、前記第1弾性波フィルタ内において最も高い温度となる第1発熱共振子を含み、前記複数の第2共振子は、使用時に、前記第2弾性波フィルタ内において最も高い温度となる第2発熱共振子を含み、平面視において、前記第1発熱共振子の発熱領域と前記第2発熱共振子の発熱領域とは互いに重なっていない。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、信頼性に優れた弾性波装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態による弾性波装置の断面構造の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態による弾性波装置の第1弾性波フィルタの平面構造を、上方側から見た模式的平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態による弾性波装置の第2弾性波フィルタの平面構造を、上方側から見た模式的平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態による弾性波装置の平面構造を上方側から見た模式的平面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態による弾性波装置の等価回路図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態による弾性波装置の第1共振子の構造を示す模式的平面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態による弾性波装置の第1弾性波フィルタの平面構造を、上方側から見た模式的平面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態による弾性波装置の第2弾性波フィルタの平面構造を、上方側から見た模式的平面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態による弾性波装置の平面構造を上方側から見た模式的平面図である。
【
図10】
図10は、第2本実施形態による弾性波装置の等価回路図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態による弾性波装置の第1弾性波フィルタの平面構造を、上方側から見た模式的平面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態による弾性波装置の第2弾性波フィルタの平面構造を、上方側から見た模式的平面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態による弾性波装置の平面構造を上方側から見た模式的平面図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態による弾性波装置の等価回路図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態による弾性波装置の第1弾性波フィルタの平面構造を、上方側から見た模式的平面図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態による弾性波装置の第2弾性波フィルタの平面構造を、上方側から見た模式的平面図である。
【
図17】
図17は、第4実施形態による弾性波装置の平面構造を上方側から見た模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特許文献1に開示される弾性波装置のように、2つの弾性波フィルタをパッケージに収める場合、弾性表面波が励起する空間を確保するため、IDT電極が対向するように2つの圧電性基板が保持される。しかし、本願発明者がこのような弾性波装置の構造を詳細に検討したところ、2つの弾性波フィルタが同時に使用される場合、弾性波フィルタに生じる発熱の影響が顕著になることが分かった。具体的には、対向するIDT電極が互いに熱の影響を及ぼし合うことによって、IDT電極を構成する金属のマイグレーションが発生したり、IDT電極の劣化などが生じやすくなること、あるいは、耐電力性が十分ではなくなることが分かった。
【0010】
本願発明者はこのような課題に鑑み、信頼性あるいは耐電力性を向上させることができる、弾性波装置を想到した。
【0011】
以下本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されていたり、一部の構成部材が省略されていたりする場合がある。特に、IDT電極の電極指の数は、分かりやすさのため、少なく示されている場合がある。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0012】
[第1実施形態]
本実施形態の弾性波装置を詳細に説明する。
図1は、本実施形態の弾性波装置101の断面構造の一例を示す模式図である。本実施形態の弾性波装置101は、例えば、700MHzから2500MHz帯で使用される弾性波装置であり、特に表面波弾性を利用したフィルタなどに用いられる。弾性波装置101は、第1弾性波フィルタ51と第2弾性波フィルタ52とを含む。
図2は第1弾性波フィルタの平面構造を
図1における上方側から見た模式的平面図であり、
図3は、第2弾性波フィルタの平面構造を
図1における上方側から見た模式的平面図である。
図4は、弾性波装置101の平面構造を
図1における上方側から見た模式的平面図であり、
図5は、弾性波装置101の等価回路図である。
【0013】
なお、
図1は、
図2および
図3のA-A線の位置における断面を示している。また、
図3において示される構造は上方側ではなく、下方側に配置されているが、分かりやすさのため、上方側から透視して実線で示している。
図4において、重なりの分かりやすさのため、
図2に示されている構成要素の一部をグレーで示している。また、
図4では、共振子と内部端子以外の構成要素は示していない。
【0014】
第1弾性波フィルタ51は、第1圧電性基板10と複数の第1共振子11とを含む。第1圧電性基板10は、第1主面10aおよび第1主面10aと反対側に位置する第2主面10bとを有しており、圧電特性を備えている。第1圧電性基板10は、例えば、LiTaO3、LiNbO3などの圧電性単結晶によって構成されている。第1圧電性基板10は圧電性セラミックスによって構成されていてもよい。また、第1圧電性基板10は、支持基板上に圧電性薄膜が配置された積層構造体などであってもよい。本実施形態では、例えば、第1圧電性基板10は、回転YカットのLiTaO3基板であり、回転角が116°以上136°以下の範囲内であることが好ましい。
【0015】
複数の第1共振子11は第1圧電性基板10の第1主面10aに位置している。複数の第1共振子11はそれぞれIDT電極を含んでいる。本実施形態では、
図5に示すように、複数の第1共振子11はラダー回路を構成している。具体的には、複数の第1共振子11は、互いに直列に接続された直列腕共振子S11、S12、S13、S14と、直列腕共振子に対して並列に接続された並列腕共振子P11、P12、P13とを含む。
図2に示すように、各第1共振子11は、第1主面10aに位置する配線12によって電気的に接続されている。なお、配線12は接続関係のみを模式的に示しており、実際の導電体のパターンを示すものではない。また、
図2などの平面図において、各第1共振子11は矩形で模式的に示されている。以下の図で説明する第2弾性波フィルタ52についても、第2共振子および配線は模式的に示されている。
【0016】
複数の第1共振子11は、第1弾性波フィルタ51の通過帯域を構成している。具体的には、各第1共振子11は、その反共振周波数が通過帯域に存在している並列腕共振子、または、その共振周波数が通過帯域内に存在している直列腕共振子である。第1弾性波フィルタ51の通過帯域は、挿入損失のピーク値(最も小さな値)を基準とした場合、挿入損失の値がピーク値から3dB以内となる範囲で規定される。
【0017】
各第1共振子11は、少なくとも1つのIDT電極を含む。
図6は、複数の第1共振子11のうちの1つの構造を模式的に示す平面図である。
図6に示す第1共振子11は、第1圧電性基板10に位置するIDT電極40を含んでいる。IDT電極40は、一対の櫛歯電極41および42を含む。櫛歯電極41は、y軸方向に伸びる複数の電極指41aと、複数の電極指41aの一端に接続されたバスバー41bとを含む。櫛歯電極42は、y軸方向に伸びる複数の電極指42aと、複数の電極指42aの一端に接続されたバスバー42bとを含む。
【0018】
一対の櫛歯電極41および42は、互いの電極指41aおよび42aが電極指の伸びる方向と垂直な方向であるx軸方向において互いに重なるように、第1圧電性基板10上に配置されている。櫛歯電極41および42に信号が供給されると、第1圧電性基板10に弾性波が励起され、x軸方向に弾性波が伝搬する。弾性波が励起される際、電磁気的エネルギが力学的エネルギに変換される。この時、誘電体損失や振動損失等の要因によって熱が発生する。
【0019】
この弾性波が励起され、発熱する領域を発熱領域Rhと呼ぶ。発熱領域Rhは、櫛歯電極41の電極指41aおよび櫛歯電極42の電極指42aがx軸方向に重なる領域である。発熱領域Rhのy軸方向における外縁は、電極指41aの先端をつなぐ直線Laおよび電極指42aの先端をつなぐ直線Lbで規定される。また、発熱領域Rhのx軸方向における外縁は、IDT電極40のうちx軸方向において最も外側に位置する一対の電極指の外側に位置する外縁LcおよびLdで規定される。発熱領域Rhは、
図6では矩形形状を有している。また、
図2~
図4など平面図において、発熱領域Rhは、一点鎖線で示している。
【0020】
IDT電極40には、アポダイズが施されていてもよい。この場合、電極指41aと電極指42aとが重なる領域の幅はx軸方向において変化するため、発熱領域Rhのy軸方向の外縁LaおよびLbは、折れ線または曲線となる。
【0021】
各第1共振子11において、弾性波の伝搬方向に1以上のIDT電極が配置されていてもよい。また、各第1共振子11は、IDT電極40を挟む反射器43をさらに備えていてもよい。IDT電極40および反射器43は、1層または複数層の金属層によって構成されている。金属層は、Al、Pt、Au、Cu、W、Mo、Ta、NiおよびCrからなる群から選ばれる1種、また、これらの群からなる少なくとも1種を含む合金によって構成される。
【0022】
上記説明から明らかなように、発熱領域Rhには、反射器43は含まれない。また、IDT電極40のうち、バスバー41bおよび42b、バスバー41bから電極指41aの先端までの間隙、および、バスバー42bから電極指42aの先端までの間隙は発熱領域Rhには含まれない。
【0023】
図2に示すように、第1弾性波フィルタ51は、第1主面10aに配置された内部端子12A、12B、12C、12D、12E、12Fと第2主面10bに配置された外部端子13A、13B、13C、13D、13E、13Fとを更に備えている。内部端子12Aと外部端子13Aとは第1圧電性基板10内に設けられたビア導体14によって電気的に接続されている。同様に、内部端子12B~12Fと外部端子13B~13Bとがビア導体14によってそれぞれ電気的に接続されている。本実施形態では外部端子13Dはアンテナに接続される端子であり、外部端子13Cは、送信回路に接続される端子である。また、外部端子13Fは受信回路に接続される端子である。
【0024】
本実施形態では、例えば、第1弾性波フィルタ51は送信用フィルタであり、直列腕共振子S11の一端が内部端子12Dに電気的に接続されている。また、直列腕共振子S14の一端が内部端子12Cに電気的に接続されている。以下において詳細に説明するように、第1弾性波フィルタ51の複数の第1共振子11において、直列腕共振子S14の発熱領域Rhは、最も小さい面積を有している。
【0025】
第2弾性波フィルタ52は、第2圧電性基板20と複数の第2共振子21とを含む。第2圧電性基板20も第1圧電性基板10と同様の材料によって構成されている。第2圧電性基板20を構成する材料と第1圧電性基板10を構成する材料は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
複数の第2共振子21は第2圧電性基板20の第1主面20aに位置している。複数の第2共振子21もそれぞれIDT電極を含んでいる。第1弾性波フィルタ51と同様、複数の第2共振子21はラダー回路を構成している。具体的には、複数の第2共振子21は、互いに直列に接続された直列腕共振子S21、S22、S23、S24と、直列腕共振子に対して並列に接続された並列腕共振子P21、P22、P23とを含む。
図3に示すように、各第2共振子21は、第1主面20aに位置する配線22によって電気的に接続されている。複数の第2共振子21も第1共振子11と同様の構造を有し、同様の材料によって構成されている。また、各第2共振子21は発熱領域Rhを有している。
【0027】
第2弾性波フィルタ52は、第1主面20aに配置された内部端子22A、22B、22C、22D、22E、22Fを含む。
【0028】
本実施形態では、例えば、第2弾性波フィルタ52は受信用フィルタであり、直列腕共振子S21の一端が内部端子22Dに電気的に接続されている。また、直列腕共振子S24の一端が内部端子22Fに電気的に接続されている。第2弾性波フィルタ52の複数の第2共振子21において、直列腕共振子S21の発熱領域Rhは、最も小さい面積を有している。
【0029】
図1に示すように、第1弾性波フィルタ51と第2弾性波フィルタ52とは、複数の第1共振子11と複数の第2共振子21とが互いに間隙dを介して対向するように配置されている。つまり、第1圧電性基板10の第1主面10aと第2圧電性基板20の第1主面10aとが対向している。間隙dは、例えば、10μm以上50μm程度である。
【0030】
対向して配置された第1圧電性基板10と第2圧電性基板20との間には、支持部材31が配置されている。支持部材31は、第1圧電性基板10と第2圧電性基板20の外縁に沿って、複数の第1共振子11、複数の第2共振子21、内部端子12A~12Fおよび内部端子12A~12Fを囲むように伸びており、複数の第1共振子11と複数の第2共振子21とを封止している。第1圧電性基板10と、第2圧電性基板20と、支持部材31に囲まれた空間には、空気や、窒素などの不活性気体が位置している。
【0031】
また、内部端子12A~12Fと内部端子12A~12Fとの間には、導体32がそれぞれ配置され、内部端子12A~12Fと内部端子12A~12Fとをそれぞれ電気的に接続されている。
【0032】
図1および
図4に示すように、平面視において、第1弾性波フィルタ51の直列腕共振子S14は第2弾性波フィルタの直列腕共振子S24と重なっている。第2弾性波フィルタ52の直列腕共振子S21は第1弾性波フィルタ51の直列腕共振子S11と重なっている。しかし、第1弾性波フィルタ51の直列腕共振子S14の発熱領域Rhと、第2弾性波フィルタの直列腕共振子S21の発熱領域Rhとは重なっていない。なお、本実施形態では、直列腕共振子S14および直列腕共振子S21は、発熱領域Rh以外の領域においても、互いに重なっていない。互いの発熱領域Rhをより遠ざけるという観点では、このように、直列腕共振子S14の全体と、直列腕共振子S21の全体とが平面視において互いに重ならないように配置してもよい。
【0033】
弾性波装置101は、例えば、周波数分割複信(Frequency Division Duplex、FDDと略される。)方式の通信に用いられるデュプレクサである。上述したように第1弾性波フィルタ51は送信用フィルタであり、第2弾性波フィルタ52は受信用フィルタである。
【0034】
通信時には、第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52が同時に使用され、第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52に同時に信号が印加される。ここで、「同時」とは、例えば、通信方式上、受信と送信とを同時に行い得ることを意味し、常に送信と受信とが同時に行われている場合に限られない。例えば、FDD方式で二者が通信を行っている場合、双方が同時に発話をし、かつ、相手の音声を聞き取る時間がある。また、一方が発話をし、他方が発話をせずに相手の音声を聞き取っている時間もあり得る。また、キャリアアグリゲーションなどによって、帯域の異なる複数のバンドを用いて通信を行う通信方式における、複数のバンドの使用状態を「同時」という。
【0035】
第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52に信号が印加されると、第1共振子11および第2共振子21の発熱領域Rhにおいて、熱が発生する。第1弾性波フィルタ51において、信号は、外部端子13Cから内部端子12Cを介して直列腕共振子S14、S13、S12、S11に順に入力され、内部端子12Dを介して外部端子13Dに接続されるアンテナから電磁波として放射される。この時、直列腕共振子S14、S13、S12、S11には、同程度の電流が流れるので、発熱領域Rhの面積が最も小さい直列腕共振子S14において、発熱領域Rhにおける単位面積あたりの発熱量が最も多くなる。その結果、
図2においてハッチングで示す直列腕共振子S14(本実施形態における第1発熱共振子、)の発熱領域Rhが最も高い温度になる。
【0036】
同様に、第2弾性波フィルタ52において、信号は、アンテナに接続される外部端子13Dから内部端子22Dを介して直列腕共振子S21、S22、S23、S24に順に入力され、内部端子22Fを介して外部端子13Fに接続される受信回路に入力される。この時、直列腕共振子S21、S22、S23、S24には、同程度の電流が流れるので、発熱領域Rhの面積が最も小さい直列腕共振子S21において、発熱領域Rhにおける単位面積あたりの発熱量が最も多くなる。その結果、
図3においてハッチングで示す直列腕共振子S21(本実施形態における第2発熱共振子、)の発熱領域Rhが最も高い温度になる。
【0037】
しかし、信号印加時にそれぞれ最も高温になる直列腕共振子S14の発熱領域Rhと直列腕共振子S21の発熱領域Rhとは、平面視において重なっていない。つまり、直列腕共振子S14の発熱領域Rhの一部または全部と直列腕共振子S21の発熱領域Rhの一部または全部とが、間隙dで近接することがない。このため、狭い領域で発熱源が近接して熱がこもり、直列腕共振子S14および直列腕共振子S21がより高温となることが抑制される。
【0038】
したがって、弾性波装置101によれば、第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52に同時に信号が印加される場合でも、それぞれの共振子による発熱が蓄積され、共振子のIDT電極を構成する金属のマイグレーションが発生したり、IDT電極の熱による劣化などを信頼性特性が低下するのを抑制することができる。また、熱によるIDT電極の劣化が抑制できるため、弾性波装置101に、信頼性の低下を抑制しながら、大電力の信号を印加することができ、耐電力性を向上させることができる。
【0039】
なお、信号の印加時に第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52のどの共振子の発熱領域が最も高い温度となるかについては、例えば、信号を印加した状態で、第1弾性波フィルタおよび第2弾性波フィルタ52のサーモグラフィーを取得し、得られた画像から各共振子の温度を推定することができる。あるいは、第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52の設計データから、シミュレーションによって発熱量を計算できる場合には、シミュレーションによって求めた値を用いてもよい。
【0040】
[第2実施形態]
本実施形態の弾性波装置を詳細に説明する。
図7は、本実施形態の弾性波装置102の第1弾性波フィルタの平面構造を、上面側から見た模式的平面図であり、
図8は、第2弾性波フィルタの平面構造を
図1における上面側から見た模式的平面図である。
図9は、弾性波装置102の平面構造を
図1における上面側から見た模式的平面図であり、
図10は、弾性波装置102の等価回路図である。
【0041】
本実施形態の弾性波装置102は、第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52が、直列に分割された共振子を含んでいる点で、第1実施形態と異なる。直列に分割された共振子とは、複数の共振子が、間に他の共振子を有する信号経路への分岐点を含まずに直列に接続された共振子である。
【0042】
第1弾性波フィルタ51の複数の第1共振子11において、直列腕共振子S12、S13では、それぞれ、2つのIDT電極が直列に接続されている。また、並列腕共振子P12では、3つのIDT電極が直列に接続されている。直列腕共振子S12、S13は、他の共振子を有する信号経路への分岐点を含んでいない。並列腕共振子P12も、他の共振子を有する信号経路への分岐点を含んでいない。
【0043】
また、第2弾性波フィルタ52において、直列腕共振子S21、S22、S24では、それぞれ、3つのIDT電極が直列に接続され、直列腕共振子S23では、2つのIDT電極が直列に接続されている。直列腕共振子S21、S22、S24は、他の共振子を有する信号経路への分岐点を含んでいない。また、並列腕共振子P22では、3つのIDT電極が直列に接続され、並列腕共振子P23では、4つのIDT電極が直列に接続されている。並列腕共振子P22およびP23も、他の共振子を有する信号経路への分岐点を含んでいない。
【0044】
これらの共振子では、共振子が分割されていることによって、熱の集中が抑制されている。このため、弾性波装置102において、信号印加時に最も高温になるのは、直列に分割されていない共振子である。第1弾性波フィルタ51では、直列に分割されていない直列腕共振子S11、S14および並列腕共振子P11、P13うち、並列腕共振子P13の発熱領域Rhが最も小さい面積を有しているため、複数の共振子のうち、
図6においてハッチングで示す並列腕共振子P13(本実施形態における第1発熱共振子)の発熱領域Rhが最も高温になる。また、第2弾性波フィルタ52では、
図7においてハッチングで示す並列腕共振子P21(本実施形態における第2発熱共振子)が直列に分割されておらず、並列腕共振子P21の発熱領域は、最も小さい面積を有している。
【0045】
このため、弾性波装置102では、並列腕共振子P13の発熱領域Rhと並列腕共振子P21の発熱領域Rhとが平面視において、重ならないように配置されている。
【0046】
弾性波装置102によれば、第1共振子11のうち、並列腕共振子P13は、直列に分割されていない共振子のなかで、最も小さい発熱領域を有しており、弾性波装置102の使用中、第1共振子11の中では最も高温になり得る。また、第2共振子のうち、並列腕共振子P21は、直列に分割されていない共振子のなかで、最も小さい発熱領域を有しており、弾性波装置102の使用中、第2共振子21の中では最も高温になり得る。第1の実施形態と同様、並列腕共振子P13の発熱領域Rhと並列腕共振子P21の発熱領域Rhが、平面視において、重なっていないことにより、それぞれの共振子による発熱が蓄積されるのが抑制される。よって、弾性波装置102は、優れた信頼性および耐電力性を備える。
【0047】
[第3実施形態]
本実施形態の弾性波装置を詳細に説明する。
図11は、本実施形態の弾性波装置103の第1弾性波フィルタの平面構造を、上面側から見た模式的平面図であり、
図12は、第2弾性波フィルタの平面構造を
図1における上面側から見た模式的平面図である。
図13は、弾性波装置102の平面構造を
図1における上面側から見た模式的平面図であり、
図14は、弾性波装置102の等価回路図である。
【0048】
弾性波装置103は、例えば、キャリアアグリゲーションを用いた通信方式に用いられる受信用フィルタである。したがって、第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52は受信用フィルタである。
【0049】
本実施形態の弾性波装置103は、第1弾性波フィルタ51の内部端子12D(第1入力端子)に接続された直列腕共振子S11の発熱領域Rhと、第2弾性波フィルタ52の内部端子22D(第2入力端子)に接続された直列腕共振子S21の発熱領域Rhとが、平面視において重なっていない点で、第1実施形態と異なっている。
【0050】
内部端子12Dと内部端子22Dは第1実施形態で説明したようにビア導体14によって互いに電気的に接続され、さらに外部端子13Dに電気的に接続されている。このため、アンテナによって受信された電波による信号は、外部端子13Dおよび内部端子12Dを介して、第1弾性波フィルタ51において、直列腕共振子S11に最初に入力される。他の共振子を介さずに信号が入力されることによって、他の共振子における誘電体損失や機械損失が生じておらず、信号が減衰していない。このため、第1弾性波フィルタ51の中では直列腕共振子S11の発熱領域Rh(本実施形態における第1発熱共振子)が最も高い温度になり得る。
【0051】
同様に、アンテナによって受信された電波による信号は、外部端子13Dおよび内部端子22Dを介して、第2弾性波フィルタ52において、直列腕共振子S21に最初に入力される。他の共振子を介さずに信号が入力されることによって、他の共振子における誘電体損失や機械損失が生じておらず、信号が減衰していない。このため、第2弾性波フィルタ52の中では直列腕共振子S21(本実施形態における第2発熱共振子)の発熱領域rhが最も高い温度になり得る。
【0052】
本実施形態の弾性波装置103では、第1弾性波フィルタ51の直列腕共振子S11の発熱領域Rhと、第2弾性波フィルタ52の直列腕共振子S21の発熱領域Rhとが、平面視において重なっていないないため、それぞれの共振子による発熱が蓄積されるのが抑制される。よって、弾性波装置103は、優れた信頼性および耐電力性を備える。
【0053】
なお、弾性波装置103は、キャリアアグリゲーションを用いた通信方式に用いられる送信用フィルタであってもよい。この場合、互いに電気的に接続されていない外部端子13Cおよび外部端子13Fにそれぞれ送信回路が接続され、第1弾性波フィルタ51において、内部端子12C(第1入力端子)から直列腕共振子S14に最初に信号が入力され、第2弾性波フィルタ52において、内部端子22F(第2入力端子)から直列腕共振子S24に最初に信号が入力される。これらの共振子の発熱領域が信号印加時にもっとも高温になる場合には、直列腕共振子S14の発熱領域Rhと直列腕共振子S24の発熱領域とが平面視において重ならないように、直列腕共振子S14および直列腕共振子S24を配置すればよい。
【0054】
また、弾性波装置103は、第1実施形態で説明したようなデュプレクサまたはダイプレクサであってもよい。例えば、第1弾性波フィルタ51が送信用フィルタであり、第2弾性波フィルタ52が受信用フィルタであってもよい。この場合、直列腕共振子S14は、第1弾性波フィルタ51において、内部端子12C(第1入力端子)から最初に信号が入力される共振子である。また直列腕共振子S21は、第2弾性波フィルタ52において、内部端子22D(第2入力端子)から最初に信号が入力される共振子である。内部端子12Cと、内部端子22Dとは電気的に接続されていない。直列腕共振子S14は、内部端子12Cを介して外部端子13Cに接続され、さらに、外部の送信回路に接続される。一方、直列腕共振子S21は、内部端子22Dを介して外部端子13Dに接続され、アンテナに接続される。
【0055】
上述した理由から、直列腕共振子S14(第1発熱共振子)の発熱領域Rhと、直列腕共振子S21(第2発熱共振子)の発熱領域Rhとは、第1弾性波フィルタ51および第2弾性波フィルタ52において、最も高温になり得る。したがって、直列腕共振子S14の発熱領域Rhと、直列腕共振子S21の発熱領域Rhとが、平面視において重ならないように配置されていることによって、それぞれの共振子による発熱が蓄積されるのが抑制される。よって、弾性波装置103は、優れた信頼性および耐電力性を備えることができる。
【0056】
[第4実施形態]
本実施形態の弾性波装置を詳細に説明する。
図15は、本実施形態の弾性波装置104の第1弾性波フィルタ51の平面構造を、上面側から見た模式的平面図であり、
図16は、第2弾性波フィルタ52の平面構造を、上面側から見た模式的平面図である。
図17は、弾性波装置104の平面構造を上面側から見た模式的平面図である。
【0057】
本実施形態の弾性波装置104は、第1弾性波フィルタ51において、信号印加時に発熱領域Rhが最も高温になる直列腕共振子S11と、第2弾性波フィルタ52において、信号印加時に発熱領域Rhが最も高温になる直列腕共振子S21とが、異なる外部端子に近接している点で、第3実施形態と異なっている。
【0058】
直列腕共振子S11は、平面視において、外部端子13A~13Fのなかで外部端子13Aに最も近接しており、直列腕共振子S21は、平面視において、外部端子13A~13Fのなかで外部端子13Dに最も近接している。このため、直列腕共振子S11で発生した熱は、第1圧電性基板10およびビア導体14を介して外部端子13Aから弾性波装置104が実装される外部の基板等へ放散する。一方、直列腕共振子S21で発生した熱は、第1圧電性基板10およびビア導体14を介して外部端子13Dから弾性波装置104が実装される外部の基板等へ放散する。このように、異なる外部端子に直列腕共振子S11および直列腕共振子S21で発生する熱を放散させてやることによって、より熱の蓄積を抑制することができる。
【0059】
[他の形態]
本開示の弾性波装置は上記実施形態に限られず、種々の改変が行われてもよい。例えば、上記第1から第4の実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【0060】
また、本開示の弾性波装置では、第1弾性波フィルタにおいて信号印加時に最も高温となる共振子と、第2弾性波フィルタにおいて信号印加時に最も高温となる共振子とが、平面視において重なっていないことで、上記実施形態で説明したように信頼性の向上や耐電力性の向上を図ることができる。この条件を満たす限り、本開示の弾性波装置は、上記実施形態に限られない。
【0061】
また、信号印加時における、第1弾性波フィルタで最も高温となる共振子、および、第2弾性波フィルタで最も高温となる共振子は、それぞれ1つずつに限られない。例えば、信号印加時に、第1弾性波フィルタにおいて、最も高温となる共振子と次に高温となる共振子との温度差が小さい場合には、次に高温となる共振子も最も高温となる共振子に含めてもよい。つまり、この場合、最も高温となる共振子は2つである。例えば、最も高温となる共振子および次に高温となる共振子をT1およびT2とした場合、(T1-T2)/T1≦0.05程度(温度差が5%程度以下)であれば、次に高温となる共振子も最も高温となる共振子として扱ってよい。この場合、平面視において、第1弾性波フィルタの最も高温となる共振子および次に高温となる共振子が、第2弾性波フィルタの最も高温となる共振子と重ならないように配置してもよい。
【0062】
本開示の弾性波装置は、以下のようにも説明することができる。
【0063】
第1の構成に係る弾性波装置は、第1圧電性基板と、第1圧電性基板に配置された複数の第1共振子とを有する第1弾性波フィルタと、第2圧電性基板と、第2圧電性基板に配置された複数の第2共振子とを有する第2弾性波フィルタと、を備え、複数の第1共振子と複数の第2共振子とが対向するように、第1圧電性基板と第2圧電性基板とが所定の距離を隔てて配置された弾性波装置であって、複数の第1共振子は、使用時に、第1弾性波フィルタ内において最も高い温度となる第1発熱共振子を含み、複数の第2共振子は、使用時に、第2弾性波フィルタ内において最も高い温度となる第2発熱共振子を含み、平面視において、第1発熱共振子と第2発熱共振子とは互いに重なっていない。
【0064】
第1の構成によれば、第1弾性波フィルタで発生する熱と第2弾性波フィルタで発生する熱との発生位置を遠ざけることによって、熱の蓄積を抑制できる。このため、弾性波装置の信頼性を高め、また、耐電力性を高めることができる。
【0065】
第2の構成に係る弾性波装置は、第1の構成において、第1発熱共振子の発熱領域は、複数の第1共振子のなかで、最も小さく、第2発熱共振子は、複数の第2共振子の発熱領域なかで、最も小さてもよい。面積が小さい共振子は、発熱しやすいため、この構成によって、弾性波装置の信頼性を高め、また、耐電力性を高めることができる。
【0066】
第3の構成に係る弾性波装置は、第1の構成において、第1発熱共振子の発熱領域は、複数の第1共振子の直列に分割されていない共振子のなかで、最も小さく、第2発熱共振子の発熱領域は、複数の第2共振子の直列に分割されていない共振子のなかで、最も小さくてもよい。直列に分割されていない共振子は、分割されている共振子に比べて発熱しやすいため、この構成によって、弾性波装置の信頼性を高め、また、耐電力性を高めることができる。
【0067】
第4の構成に係る弾性波装置は、第1の構成において、第1弾性波フィルタは、第1弾性波フィルタに信号が入力される第1入力端子を有し、第1発熱共振子は、複数の第1共振子のなかで、第1入力端子から最初に信号が入力され、第2弾性波フィルタは、第2弾性波フィルタに信号が入力される第2入力端子を有し、第2発熱共振子は、複数の第2共振子のなかで、第2入力端子から最初に信号が入力されてもよい。入力端子の初段に位置する共振子は発熱しやすいため、この構成によって、弾性波装置の信頼性を高め、また、耐電力性を高めることができる。
【0068】
第5の構成に係る弾性波装置は、第4の構成において、第1入力端子と第2入力端子とは電気的に接続されていてもよい。
【0069】
第6の構成に係る弾性波装置は、第4の構成において、第1入力端子と第2入力端子とは電気的に接続されていなくてもよい。
【0070】
第7の構成に係る弾性波装置は、第1~第6の構成のいずれか1つにおいて、複数の第1共振子は、ラダー回路を構成しており、第1発熱共振子は、ラダー回路の直列腕共振子であり、複数の第2共振子は、ラダー回路を構成しており、第2発熱共振子は、ラダー回路の直列腕共振子であってもよい。
【0071】
第8の構成に係る弾性波装置は、第1~第6の構成のいずれか1つにおいて、複数の第1共振子は、ラダー回路を構成しており、第1発熱共振子は、ラダー回路の並列腕共振子であり、複数の第2共振子は、ラダー回路を構成しており、第2発熱共振子は、ラダー回路の並列腕共振子であってもよい。
【0072】
第9の構成に係る弾性波装置は、第1~第8の構成のいずれか1つにおいて、第2圧電性基板は、第1主面と反対側に位置する第2主面と、第2主面に位置する複数の外部端子を有し、複数の端子は第1外部端子および第2外部端子を含み、第1発熱共振子は、複数の端子のうち、第1外部端子に最も近接しており、第2発熱共振子は、複数の端子のうち、第2外部端子に最も近接していてもよい。第1発熱共振子および第2発熱共振子が異なる外部端子に近接していることによって、それぞれ別の経路で熱を外部に放出されることができ、より熱の蓄積を抑制することができる。
【0073】
第10の構成に係る弾性波装置は、第1~第9構成のいずれか1つにおいて、第1弾性波フィルタは、受信用フィルタおよび送信用フィルタからなる群から選ばれる一方であり、第2弾性波フィルタは、受信用フィルタおよび送信用フィルタからなる群から選ばれる他方であってもよい。
第11の構成に係る弾性波装置は、第1圧電性基板と、第1圧電性基板に配置された複数の第1共振子とを有する第1弾性波フィルタと、第2圧電性基板と、第2圧電性基板に配置された複数の第2共振子とを有する第2弾性波フィルタと、を備え、複数の第1共振子と複数の第2共振子とが対向するように、第1圧電性基板と第2圧電性基板とが所定の距離を隔てて配置された弾性波装置であって、複数の第1共振子はそれぞれ発熱領域を有し、複数の第2共振子はそれぞれ発熱領域を有し、複数の第1共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域と第2共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域とは、平面視において重なっていない。
第11の構成によれば、第1共振子および第2共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域は、それぞれ単位面積あたりの発熱量が多くなり得るため、これら2つの発熱領域が平面視におて重ならないように、第1共振子および第2共振子を配置することによって、熱の蓄積を抑制できる。このため、弾性波装置の信頼性を高め、また、耐電力性を高めることができる。
第12の構成に係る弾性波装置は、第11の構成において、複数の第1共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域および第2共振子のうちの最も面積が小さい発熱領域は、直列分割された共振子の発熱領域でなくてもよい。
第13の構成に係る弾性波装置は、第1圧電性基板と、第1圧電性基板に配置された複数の第1共振子とを有する第1弾性波フィルタと、第2圧電性基板と、第2圧電性基板に配置された複数の第2共振子とを有する第2弾性波フィルタと、を備え、複数の第1共振子と複数の第2共振子とが対向するように、第1圧電性基板と第2圧電性基板とが所定の距離を隔てて配置された弾性波装置であって、第1弾性波フィルタは、第1弾性波フィルタに信号が入力される第1入力端子を有し、第2弾性波フィルタは、第2弾性波フィルタに信号が入力される第2入力端子を有し、複数の第1共振子のなかで、第1入力端子から最初に信号が入力される第1共振子の発熱領域と、複数の第2共振子のなかで、第2入力端子から最初に信号が入力される第2共振子の発熱領域とは、平面視において重なっていない。第1弾性波フィルタおよび第2弾性波フィルタにおいて、信号が最初に入力される共振子はより発熱しやすいため、この構成によって、熱の蓄積を抑制し、弾性波装置の信頼性を高め、また、耐電力性を高めることができる。
【符号の説明】
【0074】
10…第1圧電性基板、10a,20a…第1主面、10b…第2主面、11…第1共振子、12…配線、12A~12F,22A~22F…内部端子、13A~13F…外部端子、14…ビア導体、22…配線、31…支持部材、32…導体、51…第1弾性波フィルタ、52…第2弾性波フィルタ、101~104…弾性波装置、P11~P13,P21~P23…並列腕共振子、S11~S14,S21~S24…直列腕共振子、20…第2圧電性基板、21…第2共振子