(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030176
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B23Q1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132786
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】水谷 大輔
【テーマコード(参考)】
3C048
【Fターム(参考)】
3C048AA07
(57)【要約】
【課題】刃物台の回転によってセンサケーブルにねじれが生じることを抑制できる工作機械を提供すること。
【解決手段】本開示の工作機械は、工具を取り付け可能な複数のホルダを有する刃物台と、刃物台の回転中心に取り付けられる中継器と、センサの検出信号を処理する処理装置と、刃物台のホルダに取り付けられるセンサと処理装置を接続し、且つ、中継器を経由してセンサと処理装置を接続するセンサケーブルと、を備え、中継器は、刃物台に対して回転可能に取り付けられ、且つ、所定の姿勢を維持する力を付与する付勢部を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を取り付け可能な複数のホルダを有する刃物台と、
前記刃物台の回転中心に取り付けられる中継器と、
センサの検出信号を処理する処理装置と、
前記刃物台の前記ホルダに取り付けられる前記センサと前記処理装置を接続し、且つ、前記中継器を経由して前記センサと前記処理装置を接続するセンサケーブルと、
を備え、
前記中継器は、
前記刃物台に対して回転可能に取り付けられ、且つ、所定の姿勢を維持する力を付与する付勢部を有する、工作機械。
【請求項2】
前記刃物台に取り付けられる基部を、さらに備え、
前記中継器は、
前記基部により回転可能に保持され、前記センサケーブルを保持するケーブル保持部を有し、
前記付勢部は、
前記ケーブル保持部に取り付けられる重りであり、自重によって前記ケーブル保持部の姿勢を所定の姿勢に維持する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記付勢部は、
前記ケーブル保持部の下面に取り付けられる被取付部と、
上下方向に直交する方向で且つ前記刃物台の半径方向の両側に向かって前記被取付部から突出する一対の突出部と、
を有し、
一対の前記突出部及び前記被取付部は、
前記センサケーブルと離間した状態で配置される、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記中継器から前記ホルダに向かって配設される前記センサケーブルに取り付けられるケーブル案内部材を、さらに備え、
前記ケーブル案内部材は、
第1端部を前記中継器に取り付けられ、前記第1端部から前記刃物台の前記回転中心を取り囲むように巻かれて第2端部まで配設され、
前記ケーブル案内部材の前記第2端部は、
前記刃物台の半径方向において、前記刃物台の複数の前記ホルダのうち前記センサを取り付ける前記ホルダと、前記中継器との間の位置に取り付けられる、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記刃物台の回転を制御する制御装置を、さらに備え、
前記刃物台は、
前記半径方向の外側の外周面に、周方向に並ぶ複数の前記ホルダを有し、
前記制御装置は、
前記刃物台を回転させ、前記ホルダに取り付けられた複数の前記工具のうち、ワークの加工に使用する前記工具を作業位置に配置し、且つ、前記センサを前記ホルダに取り付けた状態では前記刃物台の回転範囲を、前記センサを前記作業位置に配置する回転位置を含む所定の回転範囲に制限する、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記刃物台に取り付けられ、前記中継器を収容する収容部材を、さらに備え、
前記収容部材は、
前記刃物台の回転軸に沿った方向において、前記刃物台の先端側となる先端面に取り付けられる、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項7】
前記中継器は、
前記センサケーブルを挿入され、前記センサケーブルを前記収容部材の外に引き出すコネクタを有し、
前記収容部材は、
前記回転軸と平行な方向において前記先端面と互いに対向する位置に配置されるカバー部材を有し、
前記カバー部材は、
前記コネクタの位置に合わせて貫通孔が形成され、前記コネクタとは離間した状態で配置される、請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記中継器に取り付けられる金属製のフレキシブルカバーを、さらに備え、
前記フレキシブルカバーは、
前記センサケーブルを挿入され、前記中継器から前記刃物台が配置された加工室の側壁まで配設される、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項9】
前記加工室において前記刃物台を移動させる移動装置を、さらに備え、
前記加工室の側壁には、
前記フレキシブルカバーを取り付ける側壁側コネクタが設けられ、
前記側壁側コネクタは、
前記刃物台の前記回転中心よりも上方となる位置に取り付けられ、
前記フレキシブルカバーは、
前記移動装置を駆動して前記刃物台を前記側壁側コネクタに最も近づけた状態でも前記加工室の内壁と離間した状態で配置される長さである、請求項8に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械の刃物台のセンサを接続するセンサケーブルを配置する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、旋回軸を有する旋回装置の外周側と中心側との間に配置した複数の配線をガイドする配線ガイド機構を備えるマシニングセンタについて記載されている。特許文献1の配線ガイド機構は、複数の配線を並列に並べてクランプするクランパと、クランパによりクランプされた配線の直下においてクランパ同士を水平方向に連結するリンクとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したマシニングセンタは、B軸旋回テーブルの内部に、旋回軸が設けられている。旋回軸は、軸方向を鉛直方向(B軸方向)にしてスライドテーブル上に固定されている。複数の配線は、旋回軸の周りに配置された円盤状の旋回面の上に配置され、旋回軸を中心に螺旋状に配置されている。従って、特許文献1の配線及び配線ガイド機構は、水平な平面上に配置されている。しかしながら、装置の構成や配線の配置によっては、配線を水平面上に配置することが困難な場合がある。この場合、配線は、装置の旋回動作や自重に応じて向きや配置が変更され、ねじれが発生する虞がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、刃物台の回転によってセンサケーブルにねじれが生じることを抑制できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、工具を取り付け可能な複数のホルダを有する刃物台と、前記刃物台の回転中心に取り付けられる中継器と、センサの検出信号を処理する処理装置と、前記刃物台の前記ホルダに取り付けられる前記センサと前記処理装置を接続し、且つ、前記中継器を経由して前記センサと前記処理装置を接続するセンサケーブルと、を備え、前記中継器は、前記刃物台に対して回転可能に取り付けられ、且つ、所定の姿勢を維持する力を付与する付勢部を有する、工作機械を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の工作機械によれば、中継器は、刃物台の回転中心に取り付けられており、刃物台の回転の影響を受け難い。また、中継器は、付勢部によって所定の姿勢を維持する力を付与される。センサケーブルは、この中継器を経由して、処理装置からセンサまで配設されている。このため、センサを取り付けたホルダの回転位置が変更された場合にも、センサケーブルは、中継器を中継する部分を所定の向きで維持され、ねじれの発生を抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】第1加工装置、第2加工装置、ベッドの斜視図。
【
図4】変位センサを取り付けた第1及び第2刃物台の正面図。
【
図5】変位センサを取り付けた第1刃物台の斜視図。
【
図6】変位センサを取り付け、カバー部材を取り外した第1刃物台の斜視図。
【
図7】
図4に示すI-I線で切断し、矢印の方向から見た矢視図。
【
図8】
図5に示す状態のセンサ保持部及び収容部材等を、左右方向に平行な直線で切断した断面斜視図。
【
図9】
図5に示す状態の収容部材等を、上下方向に平行な直線で切断した断面斜視図。
【
図10】ホルダ番号1~6の回転範囲の間で回転する収容部材及びセンサケーブルの状態を示す模式図。
【
図11】別実施例の中継器を取り付けた第1刃物台を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の工作機械を具体化した一実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例の工作機械10の正面図を示している。
図2は、工作機械10のブロック図を示している。
図3は、工作機械10が備える第1加工装置11、第2加工装置12、ベッド18の斜視図を示している。尚、
図3は、ベッド18を模式的に図示している。また、
図3は、後述する変位センサ48,49、センサケーブル55に係わる収容部材61、中継器74等を取り外し、全てのホルダ51(
図5参照)に工具47を取り付けた状態を示している。以下の説明では、
図1に示すように、工作機械10を正面から見た方向を基準とし、工作機械10の設置面7に垂直な方向を上下方向、設置面7に平行で工作機械10の機械幅方向を左右方向、上下方向及び左右方向に垂直な方向を前後方向と称して説明する。
【0010】
図1~
図3に示すように、工作機械10は、第1加工装置11、第2加工装置12、第1及び第2処理装置13,14、ローダ15、操作盤16、制御装置17、ベッド18等を備えている。第1及び第2加工装置11,12は、ワーク(図示略)に対する加工を実行する装置である。ユーザは、工作機械10の装置カバー19の正面に設けられた正面扉19Aを開けることで、第1及び第2加工装置11,12の加工スペースにアクセスでき、ワークの加工状態の確認、工具47(
図3参照)の交換などを実行する。第1及び第2加工装置11,12の詳細については後述する。
【0011】
第1及び第2処理装置13,14は、後述する第1及び第2加工装置11,12に取り付けられる変位センサ48,49(
図4参照)と接続され、変位センサ48,49の検出信号を処理する。変位センサ48,49は、例えば、非接触式のセンサであり、後述する第1及び第2主軸装置21,31に保持されたワークとの間の距離に応じた信号を出力する。第1及び第2処理装置13,14は、正面扉19Aの上方であって、左右方向の両端の各々に取り付けられている。第1及び第2処理装置13,14の各々は、制御装置17に接続されている。第1及び第2処理装置13,14の各々は、例えば、アンプやコントローラを有し、変位センサ48,49の各々の検出信号をアンプで増幅し、増幅した検出信号が示す値、即ち、ワークとの間の距離をコントローラで演算し判断する。第1処理装置13は、第1加工装置11に取り付けられた変位センサ48と接続され、変位センサ48の検出信号が示す距離を判断し、判断結果を制御装置17へ出力する。第2処理装置14は、第2加工装置12に取り付けられた変位センサ49と接続され、変位センサ49の検出信号が示す距離を判断し、判断結果を制御装置17へ出力する。尚、第1及び第2処理装置13,14が実行する上記処理の内容は一例である。例えば、第1及び第2処理装置13,14は、検出信号が示す距離の演算や判断を実行せず、増幅のみを実行しても良い。この場合、検出信号が示す値の演算・判断を、制御装置17が実行しても良い。あるいは、変位センサ48,49と制御装置17を直接接続しても良い。そして、制御装置17が、検出信号の増幅・演算・判断を実行しても良い。この場合、制御装置17は、本開示の処理装置の一例である。また、工作機械10は、第1及び第2処理装置13,14を備えなくとも良い。
【0012】
また、変位センサ48,49は、本開示のセンサの一例である。変位センサ48,49の検出方式は特に限定されず、電磁誘導を用いた方式、磁気を用いた方式、静電容量の変化を検出する方式などを採用できる。また、本開示のセンサは、非接触式の変位センサに限らず、ワークとの距離を光で測定する距離センサ、ワークとの接触を検出するタッチプローブ、ワークの温度を検出する温度センサなどでも良い。また、本開示の処理装置は、信号を増幅するアンプに限らず、例えば、ノイズを除去するフィルタ、信号を選択するセレクタ、信号を合成する加算器など、検出信号を処理する他の処理装置でも良い。
【0013】
また、第1及び第2処理装置13,14の各々には、表示操作部13A,14Aが設けられている。表示操作部13A,14Aは、例えば、液晶パネルと、複数の押しボタンを備えている。第1処理装置13は、変位センサ48の検出信号に基づいて演算した距離、即ち、変位センサ48(第1刃物台22Bに取り付けられた工具47)と、第1主軸装置21に保持されたワークとの距離を表示操作部13Aに表示する。同様に、第2処理装置14は、例えば、変位センサ49の検出信号に基づいて演算した距離を表示操作部14Aに表示する。
【0014】
また、第1及び第2処理装置13,14の各々は、表示操作部13A,14Aを操作することで、検出信号が示す距離を判断するための閾値を設定可能となっている。例えば、第1処理装置13は、変位センサ48の検出信号をアンプで増幅し、コントローラによって増幅した検出信号からワークとの間の距離を演算する。第1処理装置13は、例えば、演算した距離を判断するための上限値、下限値を、表示操作部13Aの押しボタンを操作することで設定できる。第1処理装置13は、演算した距離が、設定された上限値と下限値が示す基準範囲内であるか否かを判断する。この基準範囲は、正しい位置・姿勢でワークを第1加工装置11の第1主軸装置21に取り付けた場合に、ワークと変位センサ48との間の距離として発生し得る距離である。第1処理装置13は、距離が所定の基準範囲内であれば、距離が正常であると判断し、基準範囲外であれば距離が異常であると判断する。第1処理装置13は、判断結果を表示操作部13Aに表示するとともに、制御装置17にも送信する。また、第2処理装置14は、第1処理装置13と同様に、変位センサ49で検出した距離を、設定された上限値及び下限値で判断し、判断結果の表示等を実行する。尚、第1及び第2処理装置13,14は、エラーの発生等の他の情報を表示操作部13A,14Aに表示しても良い。また、第1及び第2処理装置13,14は、表示操作部13A,14Aを備えない構成でも良い。
【0015】
制御装置17は、例えば、後述する第1及び第2主軸装置21,31にワークを配置した場合など、ワークとの距離を判断したい所定のタイミング(動作や工程)に応じて、第1及び第2処理装置13,14に測定・判断を指示する。第1及び第2処理装置13,14は、制御装置17の指示に基づいて検出信号の判断を実行し、判断結果を制御装置17に出力する。制御装置17は、例えば、判断結果を操作盤16のタッチパネル16A(
図2参照)に表示する。また、制御装置17は、判断結果に基づいて次の動作を決定する。制御装置17は、例えば、距離が正常である旨の判断結果を入力すると、ワークの着座状態が正常であると判断し、ワークに対する加工を開始する。また、制御装置17は、例えば、距離が正常でない旨の判断結果を入力すると、エラー等を報知する。
【0016】
ローダ15は、例えば、ガントリ式のワーク搬送装置であり、工作機械10の上部に設けられている。ローダ15は、装置カバー19内に設けられたフレーム部材(図示略)の上部に固定されたレール台15Aと、レール台15Aに取り付けられた昇降装置15Bと、ワークを把持するヘッド(図示略)等を有する。ローダ15は、レール台15Aや昇降装置15Bによりヘッドを左右方向、上下方向、前後方向へスライド移動させる。ローダ15は、左右方向等におけるヘッドの位置を変更し、第1及び第2加工装置11,12などとの間でワークの受け渡しを実行する。
【0017】
操作盤16は、ユーザインタフェースであり、タッチパネル16Aや操作スイッチ16B等を備えている。操作盤16は、タッチパネル16Aや操作スイッチ16Bを介してユーザからの操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に応じた信号を制御装置17に出力する。また、操作盤16は、制御装置17の制御に基づいて、タッチパネル16Aの表示内容等を変更する。尚、工作機械10が備えるユーザインタフェースは、上記した構成に限らない。例えば、ユーザインタフェースは、液晶パネルと操作スイッチを備え、液晶パネルに表示された項目を操作スイッチで選択する構成でも良い。
【0018】
(第1及び第2加工装置11,12について)
図2及び
図3に示すように、第1及び第2加工装置11,12は、ベッド18の上に載置され、左右方向に並んで配置されている。尚、
図3は、後述する加工室99を覆う(区画する)側壁101や内壁105(
図4参照)等のカバーとなる部材の図示を省略している。ベッド18は、第1ベッド41と、第2ベッド43とを有している。第1加工装置11は、第1ベッド41の上に載置されている。第2加工装置12は、第2ベッド43の上に載置されている。第1加工装置11及び第1ベッド41は、例えば、正面からベッド18を見た場合に、右側に配置され、左右方向におけるベッド18の中央を通り上下方向に沿った直線に対して第2加工装置12及び第2ベッド43と線対称な構造をなしている。即ち、工作機械10は、対称な構造で左右方向に並ぶ一対の第1及び第2加工装置11,12と、対称な構造で左右方向に並ぶ一対の第1及び第2ベッド41,43を備えている。このため、以下の説明では、第1ベッド41及び第1加工装置11について主に説明し、第2ベッド43及び第2加工装置12についての説明を適宜省略する。
【0019】
第1及び第2加工装置11,12は、前後方向を主軸方向(Z軸方向)とする所謂、平行2軸型の旋盤である。第1加工装置11は、第1主軸装置21と、第1タレット装置22、第1X軸スライド装置24、及び第1Z軸スライド装置25を備えている。同様に、第2加工装置12は、第2主軸装置31と、第2タレット装置32、第2X軸スライド装置34、及び第2Z軸スライド装置35を備えている。
【0020】
第1ベッド41は、例えば、前後方向に長く、上下方向に所定の厚みを有し、下面に設けられた脚部45を介して設置面7の上に配置されている。第1ベッド41の上には、第1タレット装置22、第1X軸スライド装置24、第1Z軸スライド装置25、及び第1主軸装置21が配置されている。第1Z軸スライド装置25は、第1主軸装置21の右側であって、第1主軸装置21よりも前方までZ軸案内レール25Bを伸ばし、第1ベッド41によって保持されている。第1X軸スライド装置24及び第1Z軸スライド装置25の上には、第1タレット装置22が配置されている。
【0021】
第1X軸スライド装置24は、第1タレット装置22を左右方向(X軸方向という場合がある)へ移動させる装置である。第1Z軸スライド装置25は、第1タレット装置22を前後方向へ移動させる装置である。第1Z軸スライド装置25は、例えば、第1Z軸用モータ25A(
図2参照)と、第1ベッド41の上に配置されたZ軸案内レール25Bと、Z軸案内レール25Bに対してスライド移動可能なZ軸スライド25Cを備えている。Z軸案内レール25Bは、前後方向(Z軸方向という場合がある)と平行な方向に配設され、Z軸スライド25CをZ軸方向へスライド移動可能に保持する。第1Z軸スライド装置25は、第1Z軸用モータ25Aの回転出力を、伝達機構(例えば、ボールネジ機構など)を介してZ軸スライド25Cに伝達し、Z軸スライド25CをZ軸方向に移動させる。
【0022】
制御装置17(
図2参照)は、駆動回路20を介して第1Z軸用モータ25Aに接続されている。駆動回路20は、例えば、第1Z軸用モータ25A等の各モータへ供給する電力を制御するアンプ回路、操作盤16の信号を処理する処理回路等である。また、第1Z軸スライド装置25は、第1Z軸用モータ25Aの回転位置等のエンコーダ情報を出力するZ軸エンコーダ(図示略)を備えている。制御装置17は、Z軸エンコーダのエンコーダ情報(回転位置情報など)に基づいて、駆動回路20を介して第1Z軸用モータ25Aの回転速度等を制御するフィードバック制御を実行する。制御装置17は、第1Z軸用モータ25Aを制御し、Z軸スライド25CをZ軸方向における任意の位置へ移動させる。
【0023】
また、第1X軸スライド装置24は、例えば、第1X軸用モータ24A(
図2参照)、Z軸スライド25Cの上に設けられたX軸案内レール24Bを備えている。尚、以下の第1X軸スライド装置24の説明において、上記した第1Z軸スライド装置25と同様の構成についてはその説明を適宜省略する。X軸案内レール24Bは、X軸方向と平行な方向に配設され、第1タレット装置22をX軸方向へスライド移動可能に保持する。第1X軸スライド装置24は、第1X軸用モータ24Aの駆動に応じて第1タレット装置22をX軸方向へ移動させる。制御装置17は、第1X軸スライド装置24のX軸エンコーダ(図示略)のエンコーダ情報に基づいて、駆動回路20を介して第1X軸用モータ24Aを制御し、第1タレット装置22をX軸方向における任意の位置へ移動させる。従って、制御装置17は、第1X軸スライド装置24及び第1Z軸スライド装置25を制御することで、第1タレット装置22(工具47や変位センサ48(
図4参照))を前後方向及び左右方向の任意の位置に移動させることができる。第2加工装置12は、第1加工装置11と同様に、第2X軸スライド装置34の第2X軸用モータ34A(
図2参照)及び第2Z軸スライド装置35の第2Z軸用モータ35A(
図2参照)を制御することで、第2タレット装置32を前後方向及び左右方向の任意の位置に移動させる。
【0024】
第1タレット装置22は、第1タレット用モータ22A(
図2参照)と、複数の工具47(切削工具やドリルなど)を取り付け可能な第1刃物台22Bを備えている。第1刃物台22Bは、第1タレット用モータ22Aの回転に基づいて、前後方向と平行な方向に沿った回転軸を中心に回転する。第1タレット装置22は、制御装置17の制御に基づいて第1タレット用モータ22Aを駆動し、第1刃物台22Bに取り付けられた複数の工具47の中から使用する工具47を、ワークに対する作業を実行する作業位置52(
図4参照)に割り出す。第1タレット装置22は、割り出した工具47により第1主軸装置21に保持されたワーク(図示略)に対する加工を実行する。第2タレット装置32は、第1タレット装置22と同様に、第2タレット用モータ32A(
図2参照)を駆動し、第2刃物台32Bの工具47を割り出す。第2タレット装置32は、割り出した工具47により第2主軸装置31に保持されたワーク(図示略)に対する加工を実行する。尚、第1及び第2タレット装置22,32の各々は、ドリルやエンドミルなどの回転工具を取り付けできず、切削工具等のみを取り付け可能な構成でも良い。
【0025】
(第1及び第2主軸装置21,31)
ベッド18は、左右方向における中央部に、第1及び第2主軸装置21,31が載置されている。第1主軸装置21は、第1主軸用モータ21Aを備え、制御装置17の制御に基づいて第1主軸用モータ21Aを駆動する。第1主軸装置21は、前面に取り付けられるチャック機構(図示略)によってワークを把持し、第1主軸用モータ21Aの駆動に基づいて、前後方向と平行な方向に沿った主軸を中心にワークを回転させる。第2主軸装置31は、第1主軸装置21と同様に、第2主軸用モータ31Aの駆動に基づいて、前後方向と平行な方向に沿った主軸、例えば、第1主軸装置21の主軸と平行で且つ同じ高さの主軸を中心にワークを回転させる。
【0026】
(制御装置17)
制御装置17は、CPU17Aを備えコンピュータを主体とする処理装置であり、数値制御やシーケンス制御を実行し工作機械10の動作を統括的に制御する。制御装置17は、工作機械10の各装置(第1主軸用モータ21A等)と電気的に接続され、各装置の動作を制御可能となっている。また、制御装置17は、記憶装置17Bを備えている。記憶装置17Bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク等を備えている。記憶装置17Bには、各種の制御データD1が記憶されている。
【0027】
制御データD1は、例えば、第1及び第2主軸装置21,31や第1及び第2タレット装置22,32の動作を制御するプログラム、生産するワークの種類、作業に使用する工具47の種類、作業時におけるワークに対する工具47の位置等のデータが設定されている。ここで言うプログラムとは、例えば、シーケンス制御のプログラム(ラダー回路)やNCプログラムなどである。また、制御データD1には、変位センサ48,49から入力した判断結果を判断するプログラムが記憶されている。制御装置17は、制御データD1のプログラムをCPU17Aで実行し、工作機械10の動作を統括的に制御する。尚、以下の説明では、制御装置17が制御データD1のプログラムを実行して各装置を制御することを、単に装置名で記載する場合がある。例えば、「制御装置17が第1X軸用モータ24Aを制御する」とは、「制御装置17が制御データD1のプログラムをCPU17Aで実行し、プログラムに基づいて第1X軸用モータ24Aを制御する」ことを意味している。
【0028】
(変位センサ48,49について)
本実施例の工作機械10は、第1及び第2刃物台22B,32Bの各々に変位センサ48,49を取り付け可能となっている。
図4は、変位センサ48を第1刃物台22Bに取り付け、変位センサ49を第2刃物台32Bに取り付けた状態の正面図を示している。尚、
図4は、後述する収容部材61のカバー部材64(
図5参照)を取り外した状態を示している。また、
図4は、一部の部材を透過的に図示している。また、変位センサ49を第2刃物台32Bに取り付ける構造と、変位センサ48を第1刃物台22Bに取り付ける構造とは、例えば、左右方向における工作機械10の中央を通り上下方向と平行な直線に対して左右方向で線対称な構造となっている。このため、以下の説明では、変位センサ48及び第1刃物台22Bについて主に説明し、変位センサ49及び第2刃物台32Bについての説明を適宜省略する。
【0029】
図5は、変位センサ48を取り付けた第1刃物台22Bを左前方から見た斜視図である。
図6は、変位センサ48を取り付けてカバー部材64を取り外した状態の第1刃物台22Bを右前方から見た斜視図である。
図4~
図6に示すように、第1刃物台22Bには、複数のホルダ51が設けられている。本実施例の第1刃物台22Bは、例えば、前後方向に所定の厚みを有し、正面視において正十角形をなしている。第1刃物台22Bの外周面(各辺)の各々には、ホルダ51が合計で10個設けられている。各ホルダ51には、工具47を取り付けるボルトを螺合するためのネジ穴や回転工具の伝動軸を挿入するための挿入穴が形成されている。尚、
図5及び
図6は、ホルダ51のネジ穴や挿入穴の図示を省略し、簡略化している。また、第1刃物台22Bが備えるホルダ51の数は、10個に限らず、他の複数個でも良い。また、第1刃物台22Bは、外周の全周に亘ってホルダ51を有しなくとも良い。例えば、第1刃物台22Bは、後述する制限された回転範囲内のみにホルダ51を有しても良い。
【0030】
変位センサ48は、工具47と同様にホルダ51に取り付け可能となっている。複数のホルダ51には、例えば、1~10のホルダ番号が付与されている。
図4に示すように、第1刃物台22Bの前面である先端面65には、各ホルダ51の位置に合わせてホルダ番号が標記されている。制御装置17は、このホルダ番号によってユーザからの指示の受け付けや工具47の管理を実行する。
図4に示す例では、1番のホルダ番号のホルダ51に変位センサ48,49がそれぞれ取り付けられている。また、
図4は、ワークに対する作業を実行する作業位置52に変位センサ48,49を配置した状態を示している。この作業位置52は、複数のホルダ51の各々に取り付けられ工具47のうち、ワークの加工に使用する工具47を割り出す位置である。第1及び第2加工装置11,12は、作業位置52に割り出した工具47を用いてワークに対する加工を実行する。
【0031】
1番のホルダ51には、センサ保持部53が取り付けられている。
図6~
図8に示すように、センサ保持部53は、第1刃物台22Bの半径方向の外側(
図6では左方向)に長い部材であり、半径方向の内側をボルト54によってホルダ51に固定されている。半径方向に沿ったセンサ保持部53の長さは、例えば、
図4に示す第1刃物台22Bに取り付けた工具47の最大旋回範囲56(旋回可能な許容範囲)に収まる長さとなっている。ボルト54は、例えば、上記したホルダ51のネジ穴に螺合される。変位センサ48は、センサケーブル55を介して第1処理装置13に接続されている。同様に、変位センサ49は、センサ保持部53によって第2刃物台32Bのホルダ51に取り付けられ、センサケーブル55を介して第2処理装置14に接続されている(
図4参照)。センサ保持部53の先端部(半径方向の外側の部分)には、センサケーブル55を挿入する挿入孔53A(
図8参照)が形成されている。挿入孔53Aは、例えば、センサ保持部53をホルダ51に取り付けた状態において、前後方向と平行な方向に形成された貫通孔である。
【0032】
センサ保持部53の前面側には、ケーブルカバー57が取り付けられている。ケーブルカバー57は、複数のボルト58によってセンサ保持部53に固定されている。ケーブルカバー57は、センサ保持部53に取り付けられた状態では、第1刃物台22Bの半径方向に長い略直方体形状をなす中空の部材である。ケーブルカバー57の先端且つ後方側の面には、挿入孔53Aと連通する開口57B(
図8参照)が形成されている。また、第1刃物台22Bには、収容部材61が取り付けられている。センサケーブル55は、ケーブルカバー57を通じて収容部材61内まで配設されている。センサケーブル55は、後述する中継器74を介して第1処理装置13まで配設されている。
【0033】
収容部材61は、底部カバー62、側壁カバー63、カバー部材64を有し、例えば、正面視において略正十角形をなし、全体として中空の箱形形状をなしている。底部カバー62は、例えば、正面視において正十角形をなす板状の金属部材である。底部カバー62は、第1刃物台22Bの回転軸(本実施例では前後方向)において、第1刃物台22Bの先端側となる先端面65に取り付けられている。先端面65は、第1刃物台22Bの前面に形成された平面であり、正面視において正十角形をなしている。底部カバー62の外周部分には、複数の取付部62Aが設けられている。複数の取付部62Aの各々は、底部カバー62の外周端から外側に突出した平板である。底部カバー62は、複数の取付部62Aの各々に挿入されたボルト67を第1刃物台22Bに螺合されることで、先端面65に固定されている。底部カバー62の中心は、例えば、先端面65の中心、即ち、第1刃物台22Bの回転中心69(
図7参照)と一致している。
【0034】
側壁カバー63は、正面視において略正十角形をなす筒状の金属部材である。側壁カバー63は、半径方向に薄く前後方向を短辺とする長方形の板を側面(辺)として周方向に並べた板を連結され、回転中心69を取り囲むように筒状に形成されている。側壁カバー63の外周部分であって後方側の端部には、複数の取付部63Aが設けられている。複数の取付部63Aの各々は、側壁カバー63の外周端から外側に突出した平板であり、第1刃物台22Bの周方向において取付部62Aと同じ回転位置に形成されている。第1刃物台22Bの周方向における取付部63Aの幅は、例えば、周方向における取付部62Aの幅の半分となっている。複数の取付部63Aの各々は、複数の取付部62Aの各々の前面に重ねられ、ボルト71によって取付部62Aとともに第1刃物台22Bに対し共締めされる。これにより、側壁カバー63は、先端面65に固定される。側壁カバー63の中心は、例えば、回転中心69と一致している。
【0035】
例えば、取付部63Aは、取付部62Aの外縁の位置に合わせるようにして周方向の一端側に重ね合わされている。このため、取付部62Aは、前面の半分を取付部63Aによって覆われている。これにより、底部カバー62を先端面65に取り付けた後、取り付けた底部カバー62の取付部62Aに取付部63Aの位置を合わせる作業が容易となる。尚、上記した取付部62A,63Aの数、位置、形状等は一例である。
【0036】
底部カバー62と側壁カバー63とは、同一の大きさで形成され、回転中心69から各辺までの長さ等が同一となっている。側壁カバー63の後方側の開口は、底部カバー62によって閉塞されている。取付部62A,63Aは、第1刃物台22Bのホルダ51が設けられた外縁から若干だけ内側の位置に取り付けられている。底部カバー62及び側壁カバー63は、半径方向において取付部62A,63Aの長さだけ内側となる位置まで広がっている。換言すれば、底部カバー62及び側壁カバー63は、先端面65において取付部62A,63Aを取り付ける幅だけを残して半径方向の外側に広がっている。これにより、収容部材61の容量(体積)を大きくして、センサケーブル55や後述するケーブル案内部材75と、収容部材61の接触を回避できる。尚、
図6~
図8に示す収容部材61の大きさは一例である。
【0037】
また、側壁カバー63の前方側の開口には、複数の取付部63Bが設けられている。複数の取付部63Bは、開口の内側に形成され、本実施例ではホルダ番号の「1、3、4,6、8、9」のホルダ51に対し半径方向の内側となる位置に形成されている。カバー部材64は、例えば、一対の同一形状の金属板(以下、分割体という)64A,64Bで構成され、全体として正十角形をなす金属板である。分割体64A,64Bの各々は、ボルト72によって複数の取付部63Bの各々に固定されている。カバー部材64は、側壁カバー63の前方側の開口を閉塞した状態で側壁カバー63に固定されている。カバー部材64は、第1刃物台22Bの回転軸と平行な方向において先端面65と互いに対向する位置に配置されている。
【0038】
尚、上記した収容部材61の形状等は一例である。例えば、底部カバー62は、側壁カバー63よりも大きい正十角形でも良い。また、底部カバー62、側壁カバー63、カバー部材64は、十角形以外の多角形でも良く、円形等でも良い。例えば、底部カバー62は、回転中心69と中心とする円板でも良い。また、底部カバー62、側壁カバー63等の中心は、回転中心69からずれていても良い。また、収容部材61の材料は、金属に限らず、樹脂等でも良い。また、各部材を固定する方法は、ボルトを用いる方法に限らず、ネジで固定する方法でも良く、溶接により固定する方法でも良い。以下の他の部材(基部73等)の固定方法についても同様である。
【0039】
上記したように、収容部材61は、第1刃物台22Bに固定されることで、先端面65の前面に閉塞された空間を形成する。
図9は、
図5に示す状態の収容部材61等を、上下方向と平行な直線で切断した断面斜視図である。
図9は、例えば、回転中心69を通る直線で切断されている。
図6~
図9に示すように、収容部材61内には、基部73、中継器74、ケーブル案内部材75が設けられている。基部73は、円環形状の部材であり、底部カバー62の前面に配置され、複数のボルト77によって底部カバー62に固定されている。基部73の中心は、例えば、回転中心69と一致している。基部73には、中継器74を回転可能に支持する回転支持部材として、例えば、ボールベアリング73Aが設けられている。尚、中継器74を回転可能に支持する回転支持部材は、ボールベアリングに限らず、ニードルベアリングや軸受メタル等の他の軸受機構でも良い。
【0040】
中継器74は、例えば、金属製の部材であり、ケーブル保持部78と、付勢部79とを有している。ケーブル保持部78は、挿入部78Aと、軸部78Bとを有している。挿入部78Aは、例えば、略立方体形状をなしている。挿入部78Aには、上面に貫通する貫通孔78Cと、前面に貫通する貫通孔78Dとが形成されている。貫通孔78Cは、上面を上下方向に貫通する円形の穴であり、貫通孔78Dは、前面を前後方向に貫通する円形の穴である。挿入部78A内には、空間が形成されており、この空間を介して貫通孔78C,78Dが互いに繋がっている。
【0041】
軸部78Bは、挿入部78Aの背面から後方に突出し、円柱形状をなし、基部73のボールベアリング73Aに挿入されている。軸部78Bにおける後方側の先端には、雄ネジが外周面に形成されている。軸部78Bは、ボールベアリング73Aから後方に突出させた部分にナット81(
図7参照)を取り付けられ、ボールベアリング73Aからの抜けを抑制されている。尚、
図8、
図9は、ナット81の図示を省略している。中継器74は、ケーブル保持部78の軸部78Bを基部73に回転可能に保持されることで、例えば、回転中心69を中心に回転可能となっている。即ち、第1刃物台22Bと中継器74とは、同一の回転軸を中心に回転可能となっている。
【0042】
付勢部79は、第1刃物台22Bに対して回転可能に取り付けられた中継器74を、所定の姿勢で維持する力を付与する重りである。詳述すると、付勢部79は、被取付部79Aと、一対の突出部79Bを有している。被取付部79Aは、下方から挿入された複数(本実施例では2本)のボルト83(
図7参照)によってケーブル保持部78の下面に取り付けられている。
図4、
図6~
図9の中継器74は、回転可能な中継器74を、付勢部79の自重によって所定の姿勢とした状態を示している。この所定の姿勢とは、
図4等に示すように、重りである付勢部79をケーブル保持部78の下方に配置し、例えば、左右方向におけるケーブル保持部78及び付勢部79の中央が、回転中心69を通り上下方向と平行な直線上に配置された姿勢である。所定の姿勢では、一対の突出部79Bは、左右方向(第1刃物台22Bの半径方向)の両側に向かって被取付部79Aから突出している。所定の姿勢では、付勢部79は、全体として下向きの矢印のような形状をなしている。所定の姿勢では、一対の突出部79Bの各々における上面は、前後方向及び左右方向と平行な平面となっている。また、一対の軸部78Bの各々における側面(左右方向の外側の面)は、上下方向及び前後方向と平行な平面となっている。また、付勢部79の下面は、上方から下方に向かうに従って細くなる先細り形状となっている。
【0043】
側壁カバー63は、変位センサ48を取り付けたホルダ51(本実施例では1番のホルダ)の位置に合わせて貫通孔63C(
図7参照)が形成されている。また、ケーブルカバー57は、センサ保持部53の先端から側壁カバー63まで延びている。ケーブルカバー57の側壁カバー63側の面と、側壁カバー63とは、接触又は僅かな隙間を空けて近接している。ケーブルカバー57の側壁カバー63側の面には、貫通孔63Cの位置に合わせて貫通孔57A(
図7参照)が形成されている。従って、ケーブルカバー57内の空間と、収容部材61内の空間とは、貫通孔63C,57Aを通じて繋がっている。センサケーブル55は、この貫通孔63C,57Aを通じてケーブルカバー57から収容部材61内に配設されている。
【0044】
収容部材61内に設けられたケーブル案内部材75は、貫通孔63Cから収容部材61内に配設されたセンサケーブル55を取り付けられ、中継器74まで案内する。詳述すると、ケーブル案内部材75は、樹脂製の部材であり、前後方向に所定の幅を有する薄い帯状(長方形の板状)の部材であり、湾曲可能な部材である。ケーブル案内部材75の材料としては、例えば、ジュラコン(登録商標)を採用できる。尚、ケーブル案内部材75の材料は、ジュラコン(登録商標)に限らず、シリコンゴムやテフロン(登録商標)などの他の材料でも良い。また、ケーブル案内部材75は、ゴムなどの弾性部材でも良く、ステンレスなどの金属部材でも良い。
【0045】
前後方向におけるケーブル案内部材75の幅は、例えば、前後方向におけるケーブル保持部78の幅と略同一となっている。長さ方向におけるケーブル案内部材75の第1端部75Aは、挿入部78Aの左側面に、複数のボルト85によって固定されている。ケーブル案内部材75は、第1端部75Aから第1刃物台22Bの回転中心69や中継器74を取り囲むように時計回り方向へと、「の」の字に巻かれて第2端部75Bまで配設されている。
【0046】
底部カバー62の前面には、第2端部75Bを固定する位置に合わせて保持具87が取り付けられている。保持具87は、第2端部75Bを第1刃物台22Bに固定する部材であり、例えば、L字に曲がった金属製の板部材である。第2端部75Bは、第1刃物台22Bの半径方向において、変位センサ48を取り付けた1番のホルダ51と、中継器74との間の位置に取り付けられる。より具体的には、保持具87は、変位センサ48を作業位置52に配置した場合、上下方向において、センサケーブル55が引き出される貫通孔63Cよりも下方となる位置で、1番と10番のホルダ51の境界部分に配置されている。保持具87は、L字に曲がった一辺を底部カバー62の前面に、複数のボルト89によって固定され、もう一方の辺の内側に第2端部75Bが固定されている。第2端部75Bは、複数のボルト91によって先端を保持具87に固定されている。従って、ケーブル案内部材75は、第1端部75Aを回転中心69の近傍に固定され、変位センサ48を取り付けたホルダ51の近くに第2端部75Bを固定され、時計回り方向に巻き付くようにして取り付けれている。
【0047】
センサケーブル55は、貫通孔63Cから収容部材61内に引き込まれた後、ケーブル案内部材75の内側に取り付けられる。例えば、ケーブル案内部材75には、図示を省略した貫通孔が所定の間隔で複数形成されている。センサケーブル55は、ケーブル案内部材75の複数の貫通孔の各々に挿入された結束バンド(図示略)によってケーブル案内部材75に対して取り付けられている。結束バンドは、樹脂性のものが好ましいが、金属製のものでも良い。また、センサケーブル55をケーブル案内部材75に固定する方法は、上記した方法に限らず、例えば、波縫いのように、センサケーブル55をケーブル案内部材75の複数の穴に通しても良い。あるいは、センサケーブル55を挿入して保持する弾性部材を、ケーブル案内部材75に複数取り付け、センサケーブル55を弾性部材に挿入して保持しても良い。
【0048】
センサケーブル55は、ケーブル案内部材75によって貫通孔63Cの近傍から反時計回りに案内され、第1端部75A付近でケーブル案内部材75と分離し貫通孔78Cに挿入される。中継器74は、センサケーブル55を収容部材61の外に引き出すコネクタ93を有する。コネクタ93は、金属製の筒状の部材であり、略90度に湾曲したL字形状の部材である。貫通孔78Dには、内周面に雌ねじが形成されており、コネクタ93の一端を螺合される。コネクタ93は、貫通孔78Dに螺合された状態では、ケーブル保持部78から前方に向かって突出した後、下方に向かって折れ曲がった状態で取り付けられる。中継器74が、重りとして機能する付勢部79によって所定の姿勢を維持されるため、コネクタ93も、上記した前方に折れ曲がる姿勢を維持される。そして、センサケーブル55は、貫通孔78Cに挿入された後、ケーブル保持部78内の空間を通じで貫通孔78Dからコネクタ93内に引き出される。これにより、センサケーブル55は、ケーブル保持部78やコネクタ93によって所定の向きを維持され、第1刃物台22Bの回転によってねじれが発生することを抑制される。
【0049】
カバー部材64(一対の分割体64A,64B)は、中央部分、即ち、回転中心69に、前後方向に貫通する貫通孔64Cが形成されている。ケーブル保持部78とコネクタ93とは、この貫通孔64C付近で互いに螺合されている。貫通孔64Cは、分割体64A,64Bの各々の半円形状の切り欠きを合わせることで、円形の貫通孔として構成される。貫通孔64Cの内径は、ケーブル保持部78とコネクタ93の接続部分よりも若干だけ大きく形成されている。従って、カバー部材64は、ケーブル保持部78やコネクタ93との間に僅かな隙間を空けて取り付けられている。これにより、コネクタ93及びその中のセンサケーブル55を収容部材61から引き出しつつ、収容部材61内への切粉等の進入を抑制できる。
【0050】
コネクタ93は、貫通孔78Dと接続される端部とは反対側の端部に、金属製のフレキシブルカバー95が取り付けられている。フレキシブルカバー95は、所謂、フレキシブルケーブルあるいはフレキシブルホースであり、ステンレスなどの金属で形成された円筒形状をなし、湾曲可能に構成されている。フレキシブルカバー95の両端には、アダプタ97,98(
図5参照)がそれぞれ取り付けられている。アダプタ97,98は、例えば、フレキシブルカバー95の先端に取り付けられたナットである。フレキシブルカバー95は、アダプタ97をコネクタ93の下方側の先端に螺合されることで、コネクタ93に対して固定されている。センサケーブル55は、コネクタ93内へ中継器74から引き出されることで、収容部材61の外に引き出される。センサケーブル55は、コネクタ93からフレキシブルカバー95内に挿入される。フレキシブルカバー95は、中継器74のコネクタ93から第1刃物台22Bが配置された加工室99の側壁101まで配設される(
図5参照)。
【0051】
図4及び
図5に示すように、加工室99を区画する側壁101には、フレキシブルカバー95を取り付ける側壁側コネクタ103が設けられている。側壁側コネクタ103は、例えば、コネクタ93と同様に、金属製の筒状の部材であり、略90度に湾曲したL字形状の部材である。第1タレット装置22から引き出されたフレキシブルカバー95は、右側の側壁101の側壁側コネクタ103に接続される。第2タレット装置32から引き出されたフレキシブルカバー95は、左側の側壁101の側壁側コネクタ103に接続される(
図4参照)。右側の側壁101に取り付けられた側壁側コネクタ103は、上側の端部を側壁101に螺合され、側壁101から左側の下方へと折れ曲がった状態で取り付けられている。フレキシブルカバー95は、側壁側コネクタ103の下方側の端部にアダプタ98を螺合することで、側壁側コネクタ103に対して固定されている。
【0052】
フレキシブルカバー95及びセンサケーブル55は、コネクタ93及び側壁側コネクタ103のそれぞれから下方へと引き出され、吊り下げられるようにして取り付けられている。側壁側コネクタ103は、第1刃物台22Bの回転中心69、即ち、コネクタ93よりも上方となる位置に取り付けられている。フレキシブルカバー95及びセンサケーブル55は、側壁側コネクタ103から下方へと引き出され、コネクタ93よりも下方まで下がった後、上方に折れ曲がってコネクタ93に接続される。
【0053】
フレキシブルカバー95は、第1X軸スライド装置24及び第1Z軸スライド装置25の駆動に応じて第1刃物台22Bを側壁側コネクタ103に最も近づけた状態でも加工室99を区画する内壁105と離間した状態で配置される長さとなっている。詳述すると、第1刃物台22Bは、第1X軸スライド装置24の駆動に基づいて左右方向に移動し、第1Z軸スライド装置25の駆動に基づいて前後方向に移動する。例えば、側壁側コネクタ103は、第1刃物台22Bに対して左前方の上方となる位置に取り付けられている。この場合、移動可能な範囲内において、第1刃物台22Bを最も前方に移動させ、且つ最も右側に移動させた場合、フレキシブルカバー95は、
図5の破線で示すように、最も弛んだ状態となる。
【0054】
本実施例の工作機械10は、例えば、第1及び第2加工装置11,12の各々が加工を実行する加工室99が分離されている。2つの加工室99は、
図4に示すように左右方向の中央に設けられた分離シャッタ107によって左右に区画されている。内壁105は、例えば、箱形形状の加工室99の一部を区画する部材であり、左右の側壁101を含み、下側、上側、後ろ側の壁である。フレキシブルカバー95は、最も弛んだ状態でも、側壁101を含む内壁105(下側の壁など)と離間した状態を維持される。このため、フレキシブルカバー95は、第1刃物台22Bを移動できるどの位置に配置しても、内壁105、中央の分離シャッタ107、前面の装置カバー19などの他の部材と接触しない。これにより、第1刃物台22Bの移動に伴うフレキシブルカバー95の摩耗やセンサケーブル55が受ける衝撃を低減できる。尚、分離シャッタ107を開閉式にしてローダ15の移動に合わせて開閉しても良い。
【0055】
また、フレキシブルカバー95は、側壁側コネクタ103から最も離れた位置に配置された場合に、一定の余裕を持たせた長さとなっている。詳述すると、例えば、移動可能な範囲内において、第1刃物台22Bを最も後方に移動させ、且つ最も左側に移動させた場合、フレキシブルカバー95は、最も引っ張られた状態となる。フレキシブルカバー95は、最も引っ張られた状態でも、コネクタ93と側壁側コネクタ103との間で直線状とならず、下方に向かって一定量だけ撓んだ状態となる。これにより、第1刃物台22Bの移動に伴ってフレキシブルカバー95やセンサケーブル55に生じる張力の増大を抑制できる。センサケーブル55やフレキシブルカバー95の損傷を抑制できる。尚、センサケーブル55は、第1刃物台22Bの位置によっては内壁105等と接触する長さでも良い。また、側壁側コネクタ103は、上下方向において、回転中心69と同一高さ又は回転中心69よりも低い位置に配置されても良い。また、側壁側コネクタ103を、コネクタ93よりも後方の位置に配置しても良く、第1刃物台22Bの上方(上側の内壁105)に配置しても良い。あるいは、側壁側コネクタ103を、第1刃物台22Bの下方(下側の内壁105)に配置しても良い。また、フレキシブルカバー95の長さは、第1刃物台22Bを最も側壁側コネクタ103から離した場合に、直線状に引っ張られる長さでも良い。
【0056】
(加工動作)
制御装置17は、上記した構成により各装置を制御してワークに対する加工を実行する。例えば、制御装置17は、前工程の装置からローダ15に受け取ったワークを、第1加工装置11の第1主軸装置21に受け渡す。本実施例の工作機械10は、第1及び第2刃物台22B,32Bの各々に変位センサ48,49を取り付け可能となっている。制御装置17は、例えば、第1主軸装置21にワークが適切に保持されているか否かを、第1処理装置13の判断結果、即ち、第1刃物台22Bに取り付けた変位センサ48の検出信号に基づいて判断する。第1処理装置13は、例えば、制御装置17の指示に基づいて変位センサ48の検出信号を判断する。第1処理装置13は、第1刃物台22Bに取り付けた変位センサ48と、第1主軸装置21に保持されたワークとの距離を、変位センサ48の検出信号に基づいて演算する。第1処理装置13は、演算した距離と、設定された上限値等を比較し、演算した距離が、所定の基準範囲内であるか否かを判断する。この基準範囲は、上記した通り、正しい位置・姿勢でワークを第1主軸装置21に取り付けた場合に、ワークと変位センサ48との間の距離として発生し得る距離である。仮に、ワークの脱落などによってワークが正しく第1主軸装置21に保持されていない場合、変位センサ48によって検出される距離は、基準範囲外となる。この場合、第1処理装置13は、距離が異常であると判断し、表示操作部13Aの表示や制御装置17への通知を実行する。制御装置17は、操作盤16へエラーを報知し、動作の停止等を実行する。一方、制御装置17は、距離が正常である旨の判断結果を第1処理装置13から入力すると、ワークが第1主軸装置21に正しい位置や姿勢で保持されていると判断し、第1主軸装置21や第1タレット装置22を駆動してワークに対する加工を実行する。制御装置17は、第1刃物台22Bを回転させて使用する工具47を作業位置52に割り出し、割り出した工具47によってワークに対する加工を実行する。制御装置17は、第2処理装置14及び第2加工装置12についても同様の制御を実行し加工を実行する。制御装置17は、加工が終了するとローダ15によって加工後のワークの排出を実行し、新たなワークの搬入を実行する。
【0057】
制御装置17は、上記した変位センサ48及び工具47の変更において、第1刃物台22Bの回転範囲を制限して加工を実行する。具体的には、
図10は、第1刃物台22Bの回転に伴って回転する収容部材61の状態を示している。
図10中の「ホルダ番号1~6」の文字は、作業位置52に各ホルダ51に取り付けた変位センサ48又は工具47を配置していることを示している。尚、
図10は、図面が煩雑となるのを避けるため、第1刃物台22B等の図示を省略している。
図10に示すように、制御装置17は、変位センサ48(
図4参照)が取り付けられた1番のホルダ51を含む1~6番のホルダ51の範囲で、第1刃物台22Bを回転させる。本実施例の正十角形の第1刃物台22Bの場合、回転範囲は、例えば、216度(=36度*6ホルダ)である。換言すれば、制御装置17は、変位センサ48を取り付けた状態では、7~10番のホルダ51を使用しない。
【0058】
回転範囲を制御する方法として、例えば、NCプログラムにおいて回転範囲を制限する方法を採用できる。第1刃物台22Bを制御するNCプログラムにおいて、使用するホルダ番号や回転方向として、1~6番のホルダ51の範囲内で移動するように設定しても良い。あるいは、制御装置17は、回転範囲を制限するモードと、制限しないモードを備え、操作盤16に対する操作入力に応じてモードを変更しても良い。例えば、ユーザは、変位センサ48、収容部材61、フレキシブルカバー95等を取り付ける場合は、回転範囲を制限するモードに設定することで、後述するケーブル案内部材75の過剰な折れ曲がりを抑制できる。制御装置17は、制限するモードにおいて、1~6番のホルダ51の範囲外の移動を実行するNCプログラムが読み込まれた場合、エラーを通知しても良い。また、ユーザは、変位センサ48等を取り外した場合は、制限しないモードに設定することで、1~10番に取り付けた全ての工具47を使用することができる。また、工作機械10は、ロック機構など、ハード構成で回転範囲を制限しても良い。
【0059】
図10に示すように、制御装置17は、例えば、ホルダ番号1からホルダ番号6へ第1刃物台22Bを回転させる場合、第1刃物台22Bを反時計回り方向に回転させて工具47(ホルダ51)を変更する。また、制御装置17は、例えば、ホルダ番号6からホルダ番号2へ第1刃物台22Bを回転させる場合、第1刃物台22Bを時計回り方向に回転させて工具47を変更する。従って、制御装置17は、1~6番のホルダ番号の範囲において、数字が増加する切り替えの場合は反時計回り方向に回転させ、数字が減少する切り替えの場合は時計回り方向に回転させる。7~10番のホルダ51は、作業位置52を通過しないこととなる。
【0060】
また、ケーブル案内部材75は、ホルダ番号が1~6の順に変わるに従って湾曲する。
図10に示す例では、ケーブル案内部材75は、第1刃物台22Bを反時計回り方向へ回転するのにともなって、中継器74の上部に折り畳まれるように、且つ左側へと大きく湾曲する。センサケーブル55は、ケーブル案内部材75の移動や変位にともなって移動する。これに対し、中継器74は、上記した1~6番のホルダ51の切り替えにおいて、所定の姿勢を維持する。中継器74は、ケーブル案内部材75の第1端部75A(
図6参照)が固定されているため、ケーブル案内部材75の変形に応じて回転する力を付与される。例えば、
図10に示す例では、中継器74は、1~6番のホルダ51に変更して行くに従って、反時計回り方向へ回転する外力として、より大きい外力をケーブル案内部材75から付与される。コネクタ93からフレキシブルカバー95側において、センサケーブル55は、結束バンド等で保持されておらず、挿入された状態となっている。このため、仮に中継器74が回転すると、センサケーブル55のねじれが発生する虞がある。これに対し、中継器74は、基部73により第1刃物台22Bに対して回転可能に取り付けられており、且つ、重りとして機能する付勢部79を有する。このため、ケーブル案内部材75から付与される外力に抗して付勢部79の重さが作用するため、中継器74(ケーブル保持部78)を所定の姿勢で維持できる。結果として、中継器74やコネクタ93が回転せず、センサケーブル55のねじれの発生を抑制できる。換言すれば、付勢部79の重さは、6番のホルダ51を作業位置52に配置するように、ケーブル案内部材75から中継器74に付与される外力として最も大きい外力が発生する場合でも、所定の姿勢を維持できる重さが好ましい。
【0061】
また、付勢部79は、左右方向に向かって被取付部79Aから突出する一対の突出部79Bを有している。一対の突出部79B及び被取付部79Aは、
図10に示す第1刃物台22Bが回転するどの状態においても、変形するセンサケーブル55と離間した状態を維持される。付勢部79をこのような形状とすることで、左右方向に広がって上下方向の幅を抑え必要な重さを確保しつつ、センサケーブル55と付勢部79との接触を回避できる。センサケーブル55が付勢部79と接触しないため、センサケーブル55の摩耗や損傷の発生を抑制できる。
【0062】
また、ケーブル案内部材75は、中継器74から1番のホルダ51に向かって配設され、第1端部75Aから回転中心69を取り囲むように巻かれて第2端部75Bまで配設されている。第2端部75Bは、第1刃物台22Bの半径方向において、変位センサ48を取り付けたホルダ51と、中継器74との間の位置に取り付けられいる。仮に、貫通孔63Cと回転中心69を結ぶ直線上にセンサケーブル55を配置した場合、第1刃物台22Bの回転にともなって、センサケーブル55と中継器74(付勢部79など)が接触する可能性が高くなる。その結果、センサケーブル55の損傷が発生する虞がある。これに対し、上記したようにセンサケーブル55をケーブル案内部材75と共に巻くように配置することで、収容部材61内においてセンサケーブル55をケーブル案内部材75で保護できるとともに、センサケーブル55を一定の長さだけ確保できる。センサケーブル55と中継器74の接触を回避し、センサケーブル55の損傷の発生を抑制できる。
【0063】
また、上記したように、制御装置17は、変位センサ48をホルダ51に取り付けた状態では第1刃物台22Bの回転範囲を、変位センサ48を作業位置52に配置する回転位置(
図10の左上の回転位置)を含む所定の回転範囲(
図10の範囲)に制限する。これにより、ケーブル案内部材75やセンサケーブル55が過剰に折れ曲がることを抑制できる。
【0064】
また、収容部材61は、第1刃物台22Bの回転軸に沿った方向において、第1刃物台22Bの先端側となる先端面65に取り付けられ、中継器74を収容している。これにより、中継器74やセンサケーブル55に切粉が衝突する、あるいは切削油が降りかかることを抑制でき、センサケーブル55等の損傷・劣化の発生を抑制できる。
【0065】
また、中継器74は、センサケーブル55を収容部材61の外に引き出すコネクタ93を有している。カバー部材64は、前後方向において先端面65と互いに対向する位置に配置され、コネクタ93の位置に合わせて貫通孔64Cが形成され、コネクタ93とは離間した状態で配置されている。これにより、収容部材61からセンサケーブル55を引き出し可能にしつつ、収容部材61内へ切粉や切削油が進入することを抑制できる。
【0066】
また、フレキシブルカバー95は、センサケーブル55を挿入され、中継器74から加工室99の側壁101まで配設されている。従って、センサケーブル55は、収容部材61から引き出された後、加工室99内において金属製のフレキシブルカバー95に覆われている。これにより、切粉や切削油がセンサケーブル55に当たることを回避し、センサケーブル55の損傷や劣化の発生を抑制できる。
【0067】
尚、上記した説明では、第1刃物台22Bについて主に説明したが、第2刃物台32Bについても同様に、中継器74を用いることで、変位センサ49に接続されたセンサケーブル55のねじれの発生を抑制できる。また、
図4に示すように、第2刃物台32B及びそれに取り付けられた収容部材61等は、第1刃物台22B及びそれに取り付けられた収容部材61等と左右方向で対称な構造となっている。第2刃物台32Bのセンサケーブル55は、変位センサ49を作業位置52に配置した場合、回転中心69から反時計回り方向及び外側に広がるように巻かれている。このように左右対称な構造とすることで、変位センサ48,49を取り付けて回転範囲を制限した場合にも、工具47を取り付ける位置や、回転範囲を直感的に認識し易くすることができる。より具体的には、
図4の場合であれば、変位センサ48,49を作業位置52に配置した場合に、上方側の1~6番に工具47を取り付けることを左右の刃物台で統一できる。
【0068】
因みに、第1及び第2刃物台22B,32Bは、本開示の刃物台の一例である。変位センサ48,49は、センサの一例である。第1及び第2処理装置13,14は、処理装置の一例である。第1X軸スライド装置24、第1Z軸スライド装置25、第2X軸スライド装置34、第2Z軸スライド装置35は、移動装置の一例である。
【0069】
以上、上記した本実施例によれば以下の効果を奏する。
本実施例の一態様では、センサケーブル55は、第1刃物台22Bのホルダ51に取り付けられた変位センサ48と第1処理装置13を、中継器74を経由して接続する。そして、中継器74は、第1刃物台22Bに対して回転可能に取り付けられ、且つ、所定の姿勢を維持する力を付与する付勢部79を有している。これによれば、第1刃物台22Bの回転によって変位センサ48と共にセンサケーブル55が回転したとしても、中継器74において所定の位置・姿勢でセンサケーブル55を保持できる。このため、第1刃物台22Bの回転によってセンサケーブル55にねじれが発生することを抑制できる。例えば、第1及び第2刃物台22B,32Bの内部や、第1及び第2刃物台22B,32Bを支持する回転軸内や近傍には、回転工具を回転させる駆動軸や刃物台の位置をロックするロック機構などが設けられる場合があり、センサケーブル55を刃物台内等に配設することが困難な場合がある。これに対し、上記した構成とすることで、第1刃物台22Bの外でセンサケーブル55を良好に保持できる。
【0070】
尚、本開示は上記の実施例に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施例の工作機械10の構成は、一例である。第1及び第2刃物台22B,32Bは、回転軸が上下方向と直交する前後方向と並行な方向であったが、これに限らない。第1刃物台22Bの回転軸を、上下方向、前後方向、左右方向に対して所定の角度をなす方向としても良い。例えば、第1刃物台22Bの回転軸に沿った方向が、左右方向に対して左下方に45度傾いた方向でも良い。
また、中継器74を取り付ける位置は、第1刃物台22Bの回転中心69から、半径方向等にずれた位置でも良い。
また、上記実施例では、本開示の付勢部として、重りとして機能する付勢部79を採用したが、これに限らない。
図11は、別実施例の中継器111を取り付けた第1刃物台22Bを模式的に示している。尚、
図11は、カバー部材64や底部カバー62の図示を省略している。例えば、
図11に示すように、中継器111は、重りである付勢部79を備えずに、ケーブル保持部78を備えている。また、中継器111は、一対の付勢部113を備えている。一対の付勢部113の各々は、例えば、圧縮バネである。一対の付勢部113は、左右方向におけるケーブル保持部78の両側に取り付けられている。このような構成では、ケーブル保持部78に対して回転する方向の力が加えられたとしても、左右方向の両側の付勢部113によって、中継器111は、所定の姿勢(
図11に示す姿勢)に戻る力を付与される。これにより、中継器111は、第1刃物台22Bの回転動作にともなうセンサケーブル55やケーブル案内部材75の移動に対して(
図10参照)、所定の姿勢を維持できる。
【0071】
中継器74は、ケーブル保持部78の貫通孔78C,78Dにセンサケーブル55を挿入して保持したが、保持の方法はこれに限らない。例えば、中継器74は、センサケーブル55を係合させる係合爪を備え、センサケーブル55を係合爪で保持しても良い。即ち、センサケーブル55を、中継器74に挿入しなくとも良い。
付勢部79を、ケーブル保持部78の下に取り付けずに、左右方向の両側面に取り付けても良い。即ち、付勢部79の取り付け位置は、適宜変更可能である。また、重りである付勢部79の形状は、上記した矢印型に限らない。
また、センサケーブル55を保護する観点では、第1刃物台22Bの回転動作にともなって、ケーブル保持部78や付勢部79が、センサケーブル55やケーブル案内部材75と接触せず離間することが好ましい。しかしながら、装置の大きさの制限で小型化が必要な場合など、接触する構成としても良い。
基部73を第1刃物台22Bと別の部材としたが、ボールベアリングなどの軸受けを先端面65の一部として設け、第1刃物台22Bで中継器74を直接回転可能に支持しても良い。この場合、基部73は省略できる。
【0072】
第1刃物台22Bは、収容部材61やケーブル案内部材75を備えなくとも良い。
図12は、別実施例の第1刃物台22Bを模式的に示している。
図12に示すように、例えば、ケーブルカバー57と中継器74とを結ぶ金属製のフレキシブルカバー115を取り付けても良い。フレキシブルカバー115は、上記実施例のフレキシブルカバー95と同様の部材であり、例えば、一端をケーブルカバー57の貫通孔57Aに螺合され、もう一端を中継器74の貫通孔78Cに螺合されている。センサケーブル55は、フレキシブルカバー115に挿入され、ケーブルカバー57から中継器74までフレキシブルカバー115によって覆われている。このような構成であっても、ケーブルカバー57から中継器74までのセンサケーブル55を保護しつつ、中継器74によってセンサケーブル55のねじれの発生を抑制できる。
【0073】
また、
図12に示す構成において、フレキシブルカバー115を保持する保持部材117を、ケーブルカバー57付近、フレキシブルカバー115の途中、中継器74付近等に設けても良い。保持部材117は、例えば、第1刃物台22Bの先端面65に固定され、フレキシブルカバー115を挿入可能な穴を持つ部材である。これにより、第1刃物台22Bの回転によって移動するフレキシブルカバー115を一定の範囲で保持できる。尚、
図12に示す構成において、保持部材117を設けなくとも良い。この場合、フレキシブルカバー115は、中継器74とケーブルカバー57によって支持される。
【0074】
また、上記実施例において、ケーブル案内部材75の第2端部75Bを、左右方向における1番のホルダ51と、中継器74の間に配置しなくとも良い。例えば、変位センサ48を1番のホルダ51に取り付けた場合でも、第2端部75Bを、半径方向において2番のホルダ51と中継器74の間や、9番のホルダ51と中継器74の間に取り付けても良い。
また、制御装置17は、変位センサ48,49を取り付けられた場合でも、第1及び第2刃物台22B,32Bの回転範囲を制限しなくとも良い。
また、第1及び第2刃物台22B,32Bは、1番から6番のホルダ51のみを備える構成でも良い。即ち、変位センサ48,49を取り付けた場合に使用できるホルダ51のみを備える構成でも良い。
また、収容部材61を、第1及び第2刃物台22B,32Bの後方側の面に取り付けても良い。
【0075】
また、工作機械10は、コネクタ93やフレキシブルカバー95を備えなくとも良い。
コネクタ93及び側壁側コネクタ103は、下向きの形状でなくとも良い。例えば、コネクタ93は、中継器74から真っ直ぐ前方に延びる形状でも良い。
また、ベッド18に載置する加工装置の数は、2台に限らず、1台又は3台以上でも良い。
また、工作機械10は、ワークを反転させるワーク反転装置を加工室99の上方に備えても良い。
また、第1及び第2加工装置11,12としては、正面2軸の旋盤に限らず、例えば、横型旋盤、立型旋盤など、様々な構成を採用できる。
【0076】
尚、本開示の範囲は、特許請求の範囲に記載された従属関係に限定されない。例えば、本明細書では、請求項4において「請求項1又は請求項2に記載の工作機械」を「請求項1~3の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。また、本明細書では、請求項6において「請求項1又は請求項2に記載の工作機械」を「請求項1~5の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。また、本明細書では、請求項8において「請求項1又は請求項2に記載の工作機械」を「請求項1~7の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0077】
10 工作機械、13 第1処理装置(処理装置)、14 第2処理装置(処理装置)、17 制御装置、22B 第1刃物台(刃物台)、24 第1X軸スライド装置(移動装置)、25 第1Z軸スライド装置(移動装置)、32B 第2刃物台(刃物台)、34 第2X軸スライド装置(移動装置)、35 第2Z軸スライド装置(移動装置)、47 工具、48,49 変位センサ(センサ)、51 ホルダ、52 作業位置、55 センサケーブル、64 カバー部材、64C 貫通孔、65 先端面、69 回転中心、73 基部、74,111 中継器、75 ケーブル案内部材、75A 第1端部、75B 第2端部、78 ケーブル保持部、79,113 付勢部、79A 被取付部、79B 突出部、93 コネクタ、95 フレキシブルカバー、99 加工室、101 側壁、103 側壁側コネクタ。