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特開2024-30191流体測定装置、流体測定方法および流体測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030191
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】流体測定装置、流体測定方法および流体測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/20 20060101AFI20240229BHJP
   G01P 13/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01P5/20 F
G01P13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132815
(22)【出願日】2022-08-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日本エアロゾル学会、第38回エアロゾル科学・技術研究討論会プログラム、「YB303 複数断面内の二次元流れデータからの三次元流れ場の導出」、2021年8月26~27日 公益社団法人日本空気清浄協会、第39回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集、第161~163頁、「A-21 複数断面内の二次元流れデータからの三次元流れ場の導出」、2022年4月12~13日 日本エアロゾル学会、第39回エアロゾル科学・技術研究討論会講演要旨集、「YP13 複数断面内の二次元流れデータからの三次元流れ場の導出(2)」、2022年8月3~5日
(71)【出願人】
【識別番号】512094410
【氏名又は名称】西華デジタルイメージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 好英
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】町井 潤
(72)【発明者】
【氏名】安木 政史
【テーマコード(参考)】
2F034
【Fターム(参考)】
2F034AA03
2F034AB03
2F034DA07
2F034DA15
2F034DB07
2F034DB14
(57)【要約】
【課題】レーザシート光の面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる流体測定装置、流体測定方法および流体測定プログラムを提供すること。
【解決手段】流体測定装置2は、対象領域にレーザ光を照射しシート状のレーザシート光を形成するレーザ光照射部25と、レーザシート光が流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を撮像する撮像部27と、撮像部27により撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行しレーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における粒子の速度を算出するコンピュータ21と、を備える。コンピュータ21は、対象領域を複数のセルに分割し、解析アルゴリズムにより算出された速度に基づいてセルを流れる流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、その総和に基づいて速度を補正することにより測定断面に交差する方向における速度を算出する制御を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域を流れる流体の三次元流れ場を算出する流体測定装置であって、
前記対象領域にレーザ光を照射しシート状のレーザシート光を形成するレーザ光照射部と、
前記レーザシート光が前記流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し前記レーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における前記粒子の速度を算出するコンピュータと、
を備え、
前記コンピュータは、前記対象領域を複数のセルに分割し、前記解析アルゴリズムにより算出された前記速度に基づいて前記セルを流れる前記流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、前記総和に基づいて前記速度を補正することにより前記測定断面に交差する方向における前記速度を算出する制御を実行することを特徴とする流体測定装置。
【請求項2】
対象領域を流れる流体の三次元流れ場を算出する流体測定装置が実行する流体測定方法であって、
前記対象領域にレーザ光を照射しシート状のレーザシート光を形成する第1ステップと、
前記レーザシート光が前記流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を撮像する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し前記レーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における前記粒子の速度を算出する第3ステップと、
前記対象領域を複数のセルに分割し、前記解析アルゴリズムにより算出された前記速度に基づいて前記セルを流れる前記流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、前記総和に基づいて前記速度を補正することにより前記測定断面に交差する方向における前記速度を算出する第4ステップと、
を備えたことを特徴する流体測定方法。
【請求項3】
対象領域を流れる流体の三次元流れ場を算出する流体測定装置のコンピュータによって実行される流体測定プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記対象領域にレーザ光を照射しシート状のレーザシート光を形成する第1ステップと、
前記レーザシート光が前記流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を撮像する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し前記レーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における前記粒子の速度を算出する第3ステップと、
前記対象領域を複数のセルに分割し、前記解析アルゴリズムにより算出された前記速度に基づいて前記セルを流れる前記流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、前記総和に基づいて前記速度を補正することにより前記測定断面に交差する方向における前記速度を算出する第4ステップと、
を実行させることを特徴する流体測定プログラム。
【請求項4】
前記第4ステップは、前記総和が正である場合には前記流入流量を増加させるように前記速度を補正し、前記総和が負である場合には前記流出流量を増加させるように前記速度を補正する第1操作と、前記第1操作を前記複数のセルのすべてについて反復し、前記複数のセルのすべてにおける前記総和が所定閾値よりも小さくなると前記反復を停止する第2操作と、を実行することを特徴とする請求項3に記載の流体測定プログラム。
【請求項5】
前記第4ステップにおいて、前記対象領域を前記複数のセルに分割する際に、前記測定断面の一部を含む第1セルと、互いに隣り合う複数の前記測定断面の間に設定され前記測定断面を含まない第2セルと、を設定し、前記セルを流れる前記流体の前記流入流量と前記流出流量との前記総和に基づいて前記速度を補正することにより、前記速度のデータを持たない箇所においても連続の式を満たす三次元流れ場を算出することを特徴とする請求項3に記載の流体測定プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象領域を流れる流体の三次元流れ場を算出する流体測定装置、流体測定方法および流体測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された流体測定装置のように、トレーサ粒子等を混入させた流動場に対してレーザ光を照射し、レーザ光が照射された流体の粒子を含む空間をカメラで微小時間差をつけて撮像し、カメラによって撮像された複数の画像を解析することで、流動場の流速や圧力分布等を二次元的または三次元的に測定する装置が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたような流体測定装置の測定方式の例として、流動場にシート状のレーザ光を形成し、シート状のレーザ光が流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を1台のカメラが微小時間差をつけて撮像することで、シート状のレーザ光の面方向における粒子の速度等を測定する二次元二成分(2dimensional 2components)の方式が存在する。しかし、二次元二成分の方式の流体測定装置では、シート状のレーザ光の面方向における二次元速度データしか得られず、シート状のレーザ光の面に交差する方向における二次元速度データを得ることができないという点において改善の余地がある。さらに、連続の式が満たされないため、熱やガス(例えば汚染物質など)の分布すなわちスカラー分布を解析することができない点において改善の余地がある。
【0004】
また、流体測定装置の測定方式の他の例として、シート状のレーザ光が流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を2台のカメラのそれぞれが微小時間差をつけて撮像することで、所定の解析アルゴリズムを用いて、シート状のレーザ光の面方向と面に直交する方向の三速度成分を測定する二次元三成分(2dimensional 3components)の方式が存在する。また、三次元の流速等を測定する方法としては、流動場にレーザ光で立体的空間を形成して、立体的空間を複数のカメラで撮像し、所定の解析アルゴリズムを用いて三次元の三速度成分を測定する三次元三成分(3dimensional 3components)の方式が存在する。しかし、二次元三成分および三次元三成分の方式の流体測定装置では、2台以上のカメラが必要であるため、流体測定装置の小型化が困難である点や解析時間の短縮化が困難である点において改善の余地がある。また三次元三成分の流体測定方法では、三次元的な奥行き方向に分散する流体粒子を追跡する必要があるため、カメラの焦点深度以上に深い奥行きのある領域に適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-20789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、レーザシート光の面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる流体測定装置、流体測定方法および流体測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、対象領域を流れる流体の三次元流れ場を算出する流体測定装置であって、前記対象領域にレーザ光を照射しシート状のレーザシート光を形成するレーザ光照射部と、前記レーザシート光が前記流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し前記レーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における前記粒子の速度を算出するコンピュータと、を備え、前記コンピュータは、前記対象領域を複数のセルに分割し、前記解析アルゴリズムにより算出された前記速度に基づいて前記セルを流れる前記流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、前記総和に基づいて前記速度を補正することにより前記測定断面に交差する方向における前記速度を算出する制御を実行することを特徴とする流体測定装置である。
【0008】
本発明の第1態様によれば、コンピュータは、撮像部により撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し、シート状のレーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における流体の粒子の速度を算出する。また、コンピュータは、対象領域を複数のセルに分割し、解析アルゴリズムにより算出された速度すなわち測定断面に沿った方向における速度に基づいてセルを流れる流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、流入流量と流出流量との総和に基づいて速度を補正する。これにより、コンピュータは、測定断面に交差する方向における速度を算出する。つまり、コンピュータは、セルを流れる流体の流量の連続性を満足するように粒子の速度を補正することにより、複数の画像データに基づいた解析アルゴリズムでは算出できなかった速度すなわち測定断面に交差する方向における粒子の速度を導出することができる。これにより、本発明の第1態様に係る流体測定装置は、レーザシート光の面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる。また、算出された三次元流れ場の速度データが連続性を満足するため、本発明の第1態様に係る流体測定装置は、熱やガス(例えば汚染物質など)の分布すなわちスカラー分布を解析することができる。さらに、本発明の第1態様に係る流体測定装置は、1つの撮像部によって撮像された複数の画像データに基づいて、レーザシート光の面方向における二次元速度データから三次元流れ場を算出できるため、計算の収束の早期化を図り、解析時間の短縮化を図ることができる。
【0009】
本発明の第2態様は、対象領域を流れる流体の三次元流れ場を算出する流体測定装置が実行する流体測定方法であって、前記対象領域にレーザ光を照射しシート状のレーザシート光を形成する第1ステップと、前記レーザシート光が前記流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を撮像する第2ステップと、前記第2ステップにおいて撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し前記レーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における前記粒子の速度を算出する第3ステップと、前記対象領域を複数のセルに分割し、前記解析アルゴリズムにより算出された前記速度に基づいて前記セルを流れる前記流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、前記総和に基づいて前記速度を補正することにより前記測定断面に交差する方向における前記速度を算出する第4ステップと、を備えたことを特徴する流体測定方法である。
【0010】
本発明の第2態様によれば、撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し、シート状のレーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における流体の粒子の速度を算出する。また、対象領域を複数のセルに分割し、解析アルゴリズムにより算出された速度すなわち測定断面に沿った方向における速度に基づいてセルを流れる流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、流入流量と流出流量との総和に基づいて速度を補正する。これにより、測定断面に交差する方向における速度を算出する。つまり、セルを流れる流体の流量の連続性を満足するように粒子の速度を補正することにより、複数の画像データに基づいた解析アルゴリズムでは算出できなかった速度すなわち測定断面に交差する方向における粒子の速度を導出することができる。これにより、本発明の第2態様に係る流体測定方法では、レーザシート光の面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる。また、算出された三次元流れ場の速度データが連続性を満足するため、本発明の第2態様に係る流体測定方法では、熱やガス(例えば汚染物質など)の分布すなわちスカラー分布を解析することができる。さらに、本発明の第2態様に係る流体測定方法では、1つの撮像部によって撮像された複数の画像データに基づいて、レーザシート光の面方向における二次元速度データから三次元流れ場を算出できるため、計算の収束の早期化を図り、解析時間の短縮化を図ることができる。
【0011】
本発明の第3態様は、対象領域を流れる流体の三次元流れ場を算出する流体測定装置のコンピュータによって実行される流体測定プログラムであって、前記コンピュータに、前記対象領域にレーザ光を照射しシート状のレーザシート光を形成する第1ステップと、前記レーザシート光が前記流体の粒子に当たることにより発生した散乱光を撮像する第2ステップと、前記第2ステップにおいて撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し前記レーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における前記粒子の速度を算出する第3ステップと、前記対象領域を複数のセルに分割し、前記解析アルゴリズムにより算出された前記速度に基づいて前記セルを流れる前記流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、前記総和に基づいて前記速度を補正することにより前記測定断面に交差する方向における前記速度を算出する第4ステップと、を実行させることを特徴する流体測定プログラムである。
【0012】
本発明の第3態様によれば、コンピュータは、撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し、シート状のレーザシート光に含まれる測定断面に沿った方向における流体の粒子の速度を算出する。また、コンピュータは、対象領域を複数のセルに分割し、解析アルゴリズムにより算出された速度すなわち測定断面に沿った方向における速度に基づいてセルを流れる流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、流入流量と流出流量との総和に基づいて速度を補正する。これにより、コンピュータは、測定断面に交差する方向における速度を算出する。つまり、コンピュータは、セルを流れる流体の流量の連続性を満足するように粒子の速度を補正することにより、複数の画像データに基づいた解析アルゴリズムでは算出できなかった速度すなわち測定断面に交差する方向における粒子の速度を導出することができる。これにより、本発明の第3態様に係る流体測定装プログラムでは、レーザシート光の面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる。また、算出された三次元流れ場の速度データが連続性を満足するため、本発明の第3態様に係る流体測定プログラムでは、熱やガス(例えば汚染物質など)の分布すなわちスカラー分布を解析することができる。さらに、本発明の第3態様に係る流体測定プログラムでは、1つの撮像部によって撮像された複数の画像データに基づいて、レーザシート光の面方向における二次元速度データから三次元流れ場を算出できるため、計算の収束の早期化を図り、解析時間の短縮化を図ることができる。
【0013】
本発明の第4態様は、本発明の第3態様において、前記第4ステップは、前記総和が正である場合には前記流入流量を増加させるように前記速度を補正し、前記総和が負である場合には前記流出流量を増加させるように前記速度を補正する第1操作と、前記第1操作を前記複数のセルのすべてについて反復し、前記複数のセルのすべてにおける前記総和が所定閾値よりも小さくなると前記反復を停止する第2操作と、を実行することを特徴とする流体測定プログラムである。
【0014】
本発明の第4態様によれば、コンピュータは、流入流量と流出流量との総和が正である場合すなわちセルから流出する流量がセルに流入する流量よりも多い場合には、セルに流入する流量を増加させるように速度を補正する。一方で、コンピュータは、流入流量と流出流量との総和が負である場合すなわちセルに流入する流量がセルから流出する流量よりも多い場合には、セルから流出する流量を増加させるように速度を補正する。また、コンピュータは、このような補正を複数のセルのすべてについて反復し、複数のセルのすべてにおける流入流量と流出流量との総和が所定閾値よりも小さくなると補正の反復を停止する。これにより、コンピュータは、セルを流れる流体の流量の連続性をより高い精度で満足するように粒子の速度を補正することができ、複数の画像データに基づいた解析アルゴリズムでは算出できなかった速度すなわち測定断面に交差する方向における粒子の速度をより高い精度で導出することができる。これにより、本発明の第4態様に係る流体測定プログラムでは、レーザシート光の面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場をより高い解像度で算出することができる。また、コンピュータは、対象領域の全体にわたってレーザシート光の面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場をより高い解像度で算出することができる。
【0015】
本発明の第5態様は、本発明の第3態様または第4態様において、前記第4ステップにおいて、前記対象領域を前記複数のセルに分割する際に、前記測定断面の一部を含む第1セルと、互いに隣り合う複数の前記測定断面の間に設定され前記測定断面を含まない第2セルと、を設定し、前記セルを流れる前記流体の前記流入流量と前記流出流量との前記総和に基づいて前記速度を補正することにより、前記速度のデータを持たない箇所においても連続の式を満たす三次元流れ場を算出することを特徴とする流体測定プログラムである。
【0016】
本発明の第5態様によれば、速度ベクトルの空間分解能を測定データ以上に高めることができる。
【0017】
具体例を説明すると、複数のセルが、第1測定断面から第2測定断面を介し第3測定断面に向かってこの順に形成されている。第1セルは、第1測定断面の一部を含む。第1セルの第2端部は、第1測定断面と第2測定断面との中間よりも第1測定断面に寄った位置に存在する。
【0018】
第2セルは、互いに隣り合う第1測定断面と第2測定断面との間に設定され、いずれの測定断面を含まない。つまり、第2セルに含まれる断面は、第1測定断面および第2測定断面の一部ではない。
【0019】
第3セルは、第2測定断面の一部を含む。第3セルの第1端部は、第1測定断面と第2測定断面との中間よりも第2測定断面に寄った位置に存在する。第3セルの第2端部は、第2測定断面と第3測定断面との中間よりも第2測定断面に寄った位置に存在する。
【0020】
第4セルは、互いに隣り合う第2測定断面と第3測定断面との間に設定され、いずれの測定断面を含まない。つまり、第4セルに含まれる断面は、第2測定断面および第3測定断面の一部ではない。
【0021】
第5セルは、第3測定断面の一部を含む。第5セルの第1端部は、第2測定断面と第3測定断面との中間よりも第3測定断面に寄った位置に存在する。
【0022】
本具体例に係る流体測定装置によれば、複数のセルは、測定断面の一部を含むセル(第1セル、第3セル、第5セル)と、互いに隣り合う複数の測定断面の間に設定され測定断面を含まないセル(第2セル、第4セル)と、の両方を有する。これにより、コンピュータは、対象領域において三次元流れ場の空間補間を行うことができ、三次元流れ場をより一層高い解像度で算出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レーザシート光の面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる流体測定装置、流体測定方法および流体測定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る流体測定装置の要部構成を表す斜視図である。
図2】本実施形態に係る流体測定装置の要部構成を表すブロック図である。
図3】本実施形態に係る流体測定方法を説明するフローチャートである。
図4】本実施形態の測定断面とセルとを表す斜視図である。
図5】本実施形態のコンピュータが三次元流れ場を算出する計算の概要を説明するセル模式図である。
図6】セルから流出する流量がセルに流入する流量よりも多い場合を説明するセル模式図である。
図7】セルに流入する流量がセルから流出する流量よりも多い場合を説明するセル模式図である。
図8】互いに隣接するセルを説明するセル模式図である。
図9】本実施形態の測定断面の生成形態の第1具体例を表す斜視図である。
図10】本実施形態の測定断面の生成形態の第2具体例を表す斜視図である。
図11】本実施形態の複数のセルの生成形態の他の例を表す斜視図である。
図12】気体が発熱体から自然対流により流れる具体例を説明する模式図である。
図13】PIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルを例示する図である。
図14図13に表した範囲A31を流体の主流の方向に沿って眺めたときの図である。
図15】本発明者が実施した解析の結果の第1例を例示する図である。
図16】本発明者が実施した解析の結果の第2例を例示する図である。
図17】本発明者が実施した解析の結果の第3例を例示する図である。
図18】本発明者が実施した解析の結果の第4例を例示する図である。
図19】本発明者が実施した解析の結果の第5例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る流体測定装置の要部構成を表す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る流体測定装置の要部構成を表すブロック図である。
【0027】
本実施形態に係る流体測定装置2は、二次元二成分(2dimensional 2components)の方式で流速を測定する装置である。図1に表したように、流体測定装置2は、トレーサ粒子などが混入された対象領域(流動場)5にレーザ光LBを照射し、被撮像空間にシート状のレーザシート光SPを形成する。そして、流体測定装置2は、対象領域5を流れる流体の粒子にレーザシート光SPが当たることにより発生した散乱光をカメラ27で撮像し、レーザシート光SPの面方向における粒子の速度を測定する。本実施形態のカメラ27は、本発明の「撮像部」の一例である。
【0028】
より具体的に説明すると、図2に表したように、流体測定装置2は、コンピュータ21と、コントローラ22と、レーザ電源23と、レーザ発振部24と、レーザ光照射部25と、カメラ電源26と、カメラ27と、記憶部28と、を備える。
【0029】
コンピュータ21は、カメラ27により撮像された複数の画像データに基づいて解析アルゴリズムを実行し、レーザシート光SPに含まれる測定断面3に沿った方向における粒子の速度を算出する。すなわち、コンピュータ21は、微小時間差をおいて照射されたレーザ光LBの照射タイミングと同じタイミングで撮像されカメラ27から送信された2枚の画像データを解析することにより、レーザシート光SPに含まれる測定断面3に沿った方向における粒子の速度を算出する。
【0030】
コンピュータ21は、記憶部28に格納(記憶)されているプログラム281を実行することにより、前述した解析アルゴリズムを実行する。コンピュータ21によって実行されるプログラム281は、本発明の「流体測定プログラム」の一例である。流体測定装置2のプログラム281は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に予め格納され頒布されてもよく、あるいはネットワークを介して流体測定装置2にダウンロードされてもよい。
【0031】
本実施形態のコンピュータ21とは、パソコンには限定されず、流体測定装置2に含まれる演算処理装置やマイコンなどを含み、プログラムによって本実施形態の機能を実現することが可能な機器や装置を総称している。記憶部28としては、例えば、流体測定装置2に内蔵された半導体メモリなどが挙げられる。あるいは、記憶部28としては、流体測定装置2に接続可能なCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、RAM(Random access memory)、ROM(Read only memory)、ハードディスク、メモリカードなどの種々の記憶媒体が挙げられる。
【0032】
コントローラ22は、カメラ電源26とレーザ電源23とを同期させることで、レーザ発振部24がレーザ光を発振するタイミングと、カメラ27が被撮像空間を撮影するタイミングと、を同期させている。これにより、レーザ光LBの照射タイミングと、カメラ27の撮像タイミングと、が互いに合致する。また、コントローラ22は、コンピュータ21に接続され、カメラ27によって撮影された画像データをコンピュータ21に送信する。
【0033】
レーザ電源23は、レーザ発振部24に電源を供給し、パルスレーザのパルス幅に対応して通電する。また、レーザ電源23は、コントローラ22に接続されている。
レーザ発振部24は、レーザ光を発振させる装置である。レーザ発振部24が発振したレーザ光は、例えば光ファイバーケーブルなどを介して、対象領域5の被撮像空間に向かって面状のレーザ光LBとなるように照射される。本実施形態のレーザ光LBとしては、ダブルパルスレーザなどが挙げられ、具体的には例えば532nmの波長のYAGレーザなどが挙げられる。
【0034】
レーザ光照射部25は、例えば光ファイバーケーブルを介してレーザ発振部24から導かれたレーザ光をシート状のレーザシート光SPとして照射する。レーザ光照射部25は、シート光形成部(図示せず)と、屈曲光学部(図示せず)と、を有する。シート光形成部は、レーザシート光SPを生成するための光学系であり、例えば凸シリンドリカルレンズなどの光学系レンズを有する。屈曲光学部は、図1に表したように、レーザ発振部24から導かれたレーザ光を屈曲させ、被撮像空間に向けてレーザ光LBを照射するための光学系であり、例えばプリズムやキューブミラーなどを有する。
【0035】
図1に表したように、レーザ光照射部25は、対象領域5を流れる流体の主流A1、A2、A3を横断する方向に沿った測定断面3を有するレーザシート光SPを生成する。主流A1、A2、A3を横断する方向とは、すなわち主流A1、A2、A3に交差する方向である。あるいは、レーザ光照射部25は、対象領域5を流れる流体の主流A1、A2、A3の方向に沿った測定断面3を有するレーザシート光SPを生成する。後述するように、測定断面3の生成方向は、任意である。
【0036】
カメラ電源26は、カメラ27に電気的に接続されており、カメラ27に電源を供給する。また、カメラ電源26は、カメラ27との間で信号の送受信を行う。さらに、カメラ電源26は、コントローラ22に接続されている。
カメラ27は、対象領域5を流れる流体の粒子にレーザシート光SPが当たることにより発生した散乱光を撮像する。カメラ27としては、デジタル式のCOMSカメラやCCDカメラなどが挙げられる。
【0037】
ここで、本実施形態に係る流体測定装置2のような二次元二成分の方式の流体測定装置では、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データしか得られず、レーザシート光SPの面に交差する方向における二次元速度データを得ることができない。また、連続の式が満たされないため、熱やガス(例えば汚染物質など)の分布すなわちスカラー分布を解析することができない。一方で、二次元三成分(2dimensional 3components)の方式の流体測定装置によれば、レーザシート光SPの面方向とレーザシート光SPの面に直交する方向の三速度成分を測定することができる。しかし、二次元三成分の方式の流体測定装置では、2台以上のカメラが必要であるため、流体測定装置の小型化が困難である。
【0038】
これに対して、本実施形態に係る流体測定装置2のコンピュータ21は、対象領域5を複数のセル4(図4参照)に分割し、前述した解析アルゴリズムにより算出された粒子の速度に基づいてセル4を流れる流体の流量の変化を算出し、流量の変化に基づいて粒子の速度を補正することにより測定断面3に交差する方向における粒子の速度を算出する制御を実行する。
【0039】
これにより、本実施形態に係る流体測定装置2は、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる。また、算出された三次元流れ場の速度データが連続性を満足するため、本実施形態に係る流体測定装置2は、熱やガス(例えば汚染物質など)の分布すなわちスカラー分布を解析することができる。さらに、本実施形態に係る流体測定装置2は、1つのカメラ27によって撮像された複数の画像データに基づいて、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データから三次元流れ場を算出できるため、計算の収束の早期化を図り、解析時間の短縮化を図ることができる。
【0040】
以下、本実施形態に係る流体測定装置2の動作すなわち本実施形態に係る流体測定方法を、図面を参照してさらに説明する。
図3は、本実施形態に係る流体測定方法を説明するフローチャートである。
図4は、本実施形態の測定断面とセルとを表す斜視図である。
図5は、本実施形態のコンピュータが三次元流れ場を算出する計算の概要を説明するセル模式図である。
図6は、セルから流出する流量がセルに流入する流量よりも多い場合を説明するセル模式図である。
図7は、セルに流入する流量がセルから流出する流量よりも多い場合を説明するセル模式図である。
図8は、互いに隣接するセルを説明するセル模式図である。
【0041】
図3に表したステップS11において、まず、レーザ光照射部25は、対象領域5にレーザ光LBを照射し、シート状のレーザシート光SPを形成する。本実施形態のステップS11は、本発明の「第1ステップ」の一例である。図1に関して前述したように、レーザシート光SPは、測定断面3を含んでいる。続いて、ステップS12において、対象領域5を流れる流体の粒子に当たることにより発生した散乱光をカメラ27が撮像する。本実施形態のステップS12は、本発明の「第2ステップ」の一例である。ステップS11およびステップS12の処理は、図1および図2に関して前述した通りである。
【0042】
続いて、ステップS13において、コンピュータ21は、カメラ27により撮像された画像データに基づいてPIV(Particle Image Velocimetry)解析のアルゴリズムを実行し、レーザシート光SPに含まれる測定断面3に沿った方向における流体の粒子の速度(速度ベクトル)を算出する。本実施形態のステップS13は、本発明の「第3ステップ」の一例である。PIVは、粒子画像流速計などと呼ばれ、空間上の粒子に対しシート状のレーザ光を短時間の間に2回連続で照射し、照射と同じタイミングで撮影された連続する2枚の粒子群画像を解析することで、例えば二次元速度データや時系列データを取得することができる流体の可視化手法である。PIV解析のアルゴリズムは、図1および図2に関して前述した解析アルゴリズムの一例である。
【0043】
対象領域5においてレーザシート光SPとカメラ27とを移動させ、前記操作と同様の撮像およびPIV解析操作を行うことにより、流体の粒子の速度(速度ベクトル)を算出する。これによって対象領域5内の複数断面における二次元速度データを得る。
【0044】
続いて、ステップS14において、コンピュータ21は、対象領域内の所定数の測定断面のすべてについてステップS11~S13に関して前述した処理を実行したか否かを判断する。対象領域内の所定数の測定断面のすべてについてステップS11~S13に関して前述した処理を実行していない場合には(ステップS14:NO)、コンピュータ21は、ステップS11~S13に関して前述した処理を繰り返し実行する。
【0045】
一方で、対象領域内の所定数の測定断面のすべてについてステップS11~S13に関して前述した処理を実行した場合には(ステップS14:YES)、ステップS15において、コンピュータ21は、対象領域5の三次元領域を複数のセル4に分割する。例えば図4に表したように、コンピュータ21は、測定断面31と測定断面33との間に形成された測定断面32の一部321を含むセル4を生成する。図4に表したセル4は、本発明の「第1セル」の一例であり、対象領域5を分割した複数のセル4のうちの1つである。
【0046】
セル4の第1端部41は、互いに隣り合う測定断面31と測定断面32との中間に存在する。セル4の第2端部42は、互いに隣り合う測定断面32と測定断面33との中間に存在する。なお、セル4の第1端部41は、必ずしも測定断面31と測定断面32との中間に存在していなくともよく、測定断面31と測定断面32との間の任意の位置に存在していてもよい。また、セル4の第2端部42は、必ずしも測定断面32と測定断面33との中間に存在していなくともよく、測定断面32と測定断面33との間の任意の位置に存在していてもよい。
【0047】
続いて、図3に表したステップS16において、コンピュータ21は、PIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルを測定箇所に対応する各セル4にセットする。例えば図5に表したセル4において、速度ベクトルu(i,j,k)、u(i+1,j,k)、w(i,j,k)およびw(i,j,k+1)は、測定断面32の一部321に沿った方向における速度ベクトルであり、PIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルである。PIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルは、実測された速度ベクトルと等価である。そこで、コンピュータ21は、PIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルu(i,j,k)、u(i+1,j,k)、w(i,j,k)およびw(i,j,k+1)が真の速度ベクトルであるとして、これらの速度ベクトルを測定箇所(図5に表した例では測定断面32の一部321)に対応するセル4にセットする。
【0048】
一方で、速度ベクトルv(i,j,k)およびv(i,j+1,k)は、測定断面32の一部321を横断する方向すなわち測定断面32の一部321に交差する方向における速度ベクトルであり、PIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度ベクトルである。
【0049】
続いて、図3に表したステップS17において、コンピュータ21は、各セル4における流体の流入流量と流出流量との総和を計算する。具体的には、コンピュータ21は、以下の式で表されるdivU(発散量)を計算する。以下の式で表されるように、流出流量が流入流量よりも多い場合には、本願明細書における「総和」は、「正」となる。一方で、流入流量が流出流量よりも多い場合には、本願明細書における「総和」は、「負」となる。なお、以下の式では、流入流量と流出流量との総和を、セルの体積で正規化した発散量(divU(i,j,k))として表記してある。

【数1】
【0050】
コンピュータ21による計算の結果として、次の式が成立する場合には、セル4における流体の流量の連続性が満たされるため、コンピュータ21は、流体の流入流量と流出流量との総和に基づいた速度の補正を特には実行しない。

【数2】
【0051】
コンピュータ21による計算の結果として、次の式が成立する場合には、セル4における流体の流入流量と流出流量との総和が「正」である、すなわちセル4から流出する流量がセル4に流入する流量よりも多いため、セル4の内部における圧力が低下する。

【数3】
そこで、セル4から流出する流量がセル4に流入する流量よりも多い場合には、コンピュータ21は、図6に表した矢印A11~A16に表したように、セル4に流入する流量を増加させるようにセルを構成する6面の速度に対し、外向きに一律の補正値を加えて補正する。このようにして、コンピュータ21は、セル4における流体の流量の連続性を満足させる。
【0052】
一方で、コンピュータ21による計算の結果として、次の式が成立する場合には、セル4における流体の流入流量と流出流量との総和が「負」である、すなわちセル4に流入する流量がセル4から流出する流量よりも多いため、セル4の内部における圧力が増加する。

【数4】
そこで、セル4に流入する流量がセル4から流出する流量よりも多い場合には、コンピュータ21は、図7に表した矢印A21~A26に表したように、セル4から流出する流量を増加させるようにセルを構成する6面の速度に対し、内側向きに一律の補正値を加えて補正する。このようにして、コンピュータ21は、セル4における流体の流量の連続性を満足させる。
【0053】
続いて、コンピュータ21は、全てのセル4(i=1~max,j=1~max,k=1~max)についてステップS17に関して前述した補正を実行する。ここで、コンピュータ21が互いに隣接するセル4についてステップS17に関して前述した補正を実行すると、ステップS17に関して前述した補正を直前に実行したセル4における流体の流量の連続性が失われる。すなわち、図8に表したように、互いに隣接するセル4Aおよびセル4Bが存在する場合において、セル4BについてステップS17に関して前述した補正を実行すると、ステップS17に関して前述した補正を直前に実行したセル4Aにおける流体の流量の連続性が失われる。具体的には、セル4BについてステップS17に関して前述した補正を実行すると、セル4Bに流入する速度ベクトルu(i+1,j,k)が補正されるため、セル4AについてステップS17に関して前述した補正を実行しセル4Aにおける流体の流量の連続性を満足させたにもかかわらず、セル4Aの流体の流量の連続性が失われる。しかしこの連続性の損失は後述するステップS18の反復計算処理によって修正される。
【0054】
本実施形態に係る流体測定装置2では、図3に表したステップS18において、コンピュータ21は、対象領域5内にある全てのセル4(i=1~max,j=1~max,k=1~max)についてステップS17に関して前述した補正を実行する。
【0055】
この時点では、前述した理由により全てのセル4は、完全には連続性を満足しない。そこで、ステップS16~S18に関して前述した処理を反復的して実行する。ステップS16においてもPIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルを測定箇所に対応する各セル4にセットすることになるので、これによってもセル4Aの流体の流量の連続性が失われる。しかしステップS17による反復の度にステップS17の補正がおこなわれ、対象領域5内にある全てのセル4は徐々に連続性を満足していく。
【0056】
ステップS16~S18に関する反復計算処理により、全てのセル4(i=1~max,j=1~max,k=1~max)のdivUが所定閾値よりも小さくなっていない場合には(ステップS19:NO)、ステップS16~S18に関して前述した処理を実行する。一方で、全てのセル4(i=1~max,j=1~max,k=1~max)のdivUが所定閾値よりも小さくなった場合には(ステップS19:YES)、コンピュータ21は、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データに基づいた三次元流れ場の算出を終了する。このようにして、本実施形態のコンピュータ21は、複数のセル4のすべてについてステップS17に関して前述した補正を実行するとともに反復し、複数のセル4のすべてにおけるdivU(すなわち流体の流量の変化)が所定閾値よりも小さくなると補正の反復を停止する。本実施形態のステップS15~S19は、本発明の「第4ステップ」の一例である。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る流体測定装置2によれば、コンピュータ21は、カメラ27により撮像された複数の画像データに基づいてPIV解析のアルゴリズムを実行し、シート状のレーザシート光SPに含まれる測定断面3に沿った方向における流体の粒子の速度を算出する。また、コンピュータ21は、対象領域5を複数のセル4に分割し、PIV解析のアルゴリズムにより算出された速度すなわち測定断面3に沿った方向における速度に基づいてセル4を流れる流体の流入流量と流出流量との総和を算出し、流入流量と流出流量との総和に基づいて速度を補正する。これにより、コンピュータ21は、測定断面3に交差する方向における速度を算出する。つまり、コンピュータ21は、セル4を流れる流体の流量の連続性を満足するように粒子の速度を補正することにより、複数の画像データに基づいたPIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度すなわち測定断面3に交差する方向における粒子の速度を導出することができる。これにより、本実施形態に係る流体測定装置2は、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる。また、算出された三次元流れ場の速度データが連続性を満足するため、本実施形態に係る流体測定装置2は、熱やガス(例えば汚染物質など)の分布すなわちスカラー分布を解析することができる。さらに、本実施形態に係る流体測定装置2は、1つのカメラ27によって撮像された複数の画像データに基づいて、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データから三次元流れ場を算出できるため、計算の収束の早期化を図り、解析時間の短縮化を図ることができる。
【0058】
また、コンピュータ21は、セル4を流れる流体の流入流量と流出流量との総和が正である場合すなわちセル4から流出する流量がセル4に流入する流量よりも多い場合には、セル4に流入する流量を増加させるように速度を補正する。一方で、コンピュータ21は、セル4を流れる流体の流入流量と流出流量との総和が負である場合すなわちセル4に流入する流量がセル4から流出する流量よりも多い場合には、セル4から流出する流量を増加させるように速度を補正する。これにより、コンピュータ21は、セル4を流れる流体の流量の連続性をより高い精度で満足するように粒子の速度を補正することができ、複数の画像データに基づいたPIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度すなわち測定断面3に交差する方向における粒子の速度をより高い精度で導出することができる。これにより、本実施形態に係る流体測定装置2は、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場をより高い解像度で算出することができる。
【0059】
また、コンピュータ21は、複数のセル4のすべてについて速度の補正を実行するとともに反復し、複数のセル4のすべてにおける流体の流入流量と流出流量との総和が所定閾値よりも小さくなると補正の反復を停止する。そのため、コンピュータ21は、対象領域5の全体にわたってレーザシート光SPの面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる。また、コンピュータ21は、三次元流れ場をより高い解像度で算出することができる。
【0060】
次に、本実施形態の測定断面3を、図面を参照してさらに説明する。
図9は、本実施形態の測定断面の生成形態の第1具体例を表す斜視図である。
【0061】
図9に表したように、本具体例では、複数の測定断面31~36が設定されている。全ての測定断面31~36は、対象領域5を流れる流体の主流A4、A5、A6を横断する方向に沿っている。本具体例の場合には、PIV解析のアルゴリズムによって算出される速度ベクトルは、測定断面31~36の面方向すなわち流体の主流A4、A5、A6を横断する方向における速度ベクトルである。一方で、PIV解析のアルゴリズムでは算出できない速度ベクトルは、測定断面31~36の面に交差する方向すなわち流体の主流A4、A5、A6に沿った方向における速度ベクトルである。
【0062】
本具体例に係る流体測定装置2によれば、コンピュータ21は、図3に関して前述した制御を実行することにより、流体の主流A4、A5、A6の方向に沿った測定断面を設定しなくとも、PIV解析のアルゴリズムでは算出できない速度すなわち流体の主流A4、A5、A6に沿った方向における速度を導出することができ、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる。
【0063】
なお、図9に表した具体例では、6つの測定断面が設定された場合を例に挙げている。但し、測定断面の数は、6つに限定されるわけではなく、2つ以上、5つ以下であってもよく、7つ以上であってもよい。
【0064】
図10は、本実施形態の測定断面の生成形態の第2具体例を表す斜視図である。
図10に表したように、本具体例では、複数の測定断面31~35が設定されている。測定断面31~34は、対象領域5を流れる流体の主流A4、A5、A6を横断する方向に沿っている。測定断面31~34について、PIV解析のアルゴリズムによって算出される速度ベクトルは、測定断面31~34の面方向すなわち流体の主流A4、A5、A6を横断する方向における速度ベクトルである。一方で、測定断面31~34について、PIV解析のアルゴリズムでは算出できない速度ベクトルは、測定断面31~34の面に交差する方向すなわち流体の主流A4、A5、A6に沿った方向における速度ベクトルである。
【0065】
測定断面35は、対象領域5を流れる流体の主流A4、A5、A6の方向に沿っている。測定断面35について、PIV解析のアルゴリズムによって算出される速度ベクトルは、測定断面35の面方向すなわち流体の主流A4、A5、A6の方向における速度ベクトルである。一方で、測定断面35について、PIV解析のアルゴリズムでは算出できない速度ベクトルは、測定断面35の面に交差する方向すなわち流体の主流A4、A5、A6に交差する方向における速度ベクトルである。
【0066】
本具体例に係る流体測定装置2によれば、コンピュータ21は、図3に関して前述した制御を実行することにより、測定断面31~34については、PIV解析のアルゴリズムでは算出できない速度すなわち流体の主流A4、A5、A6に沿った方向における速度を導出することができる。また、コンピュータ21は、図3に関して前述した制御を実行することにより、測定断面35については、PIV解析のアルゴリズムでは算出できない速度すなわち流体の主流A4、A5、A6に交差する方向における速度を導出することができる。これにより、コンピュータ21は、三次元流れ場をより一層高い解像度で算出することができる。
【0067】
なお、図10に表した具体例では、対象領域5を流れる流体の主流A4、A5、A6を横断する方向に沿った4つの測定断面31~34と、対象領域5を流れる流体の主流A4、A5、A6の方向に沿った測定断面35と、が設定された場合を例に挙げている。この具体例では、測定対象とする流れの形態に合わせ、任意方向の測定断面を組み合わせて二次元速度データから三次元流れ場を算出できることを示している。但し、各方向に沿った測定断面の数は、これだけに限定されるわけではない。対象領域5を流れる流体の主流A4、A5、A6を横断する方向に沿った測定断面の数は、2つ以上、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。また、対象領域5を流れる流体の主流A4、A5、A6の方向に沿った測定断面の数は、2つ以上であってもよい。
【0068】
次に、本実施形態の対象領域を複数のセル4に分割する他の例を、図面を参照してさらに説明する。
図11は、本実施形態の複数のセルの生成形態の他の例を表す斜視図である。
図4に関して、複数のセル4の生成形態の例を前述した。図11に表した複数のセル4の生成形態は、図4に関して前述した複数のセル4の生成形態の他の例である。
【0069】
図11に表した具体例では、複数のセル4A、4B、4C、4Dが、測定断面31から測定断面32を介し測定断面33に向かってこの順に形成されている。
セル4Aは、測定断面31の一部311を含む。セル4Aの第2端部42は、測定断面31と測定断面32との中間よりも測定断面31に寄った位置に存在する。本実施形態のセル4Aは、本発明の「第1セル」の一例である。
【0070】
セル4Bは、互いに隣り合う測定断面31と測定断面32との間に設定され、いずれの測定断面を含まない。つまり、図11に表した断面43は、セル4Bに含まれており、測定断面31および測定断面32の一部ではない。本実施形態のセル4Bは、本発明の「第2セル」の一例である。
【0071】
セル4Cは、測定断面32の一部321を含む。セル4Cの第1端部41は、測定断面31と測定断面32との中間よりも測定断面32に寄った位置に存在する。セル4Cの第2端部42は、測定断面32と測定断面33との中間よりも測定断面32に寄った位置に存在する。本実施形態のセル4Cは、本発明の「第1セル」の一例である。
【0072】
セル4Dは、互いに隣り合う測定断面32と測定断面33との間に設定され、いずれの測定断面を含まない。つまり、図11に表した断面44は、セル4Dに含まれており、測定断面32および測定断面33の一部ではない。本実施形態のセル4Dは、本発明の「第2セル」の一例である。
【0073】
セル4Eは、測定断面33の一部331を含む。セル4Eの第1端部41は、測定断面32と測定断面33との中間よりも測定断面33に寄った位置に存在する。本実施形態のセル4Eは、本発明の「第1セル」の一例である。
【0074】
本具体例に係る流体測定装置2によれば、複数のセルは、測定断面の一部を含む第1セル(セル4A、4C、4E)と、互いに隣り合う複数の測定断面の間に設定され測定断面を含まない第2セル(4B、4D)と、の両方を有する。これにより、コンピュータ21は、対象領域5において三次元流れ場の空間補間を行うことができ、三次元流れ場をより一層高い解像度で算出することができる。
【0075】
図12は、気体が発熱体から自然対流により流れる具体例を説明する模式図である。
本具体例の説明では、床面62、天井63、第1壁面64および第2壁面65で囲まれた領域を例に挙げる。図12に表したように、発熱体61が、床面62に設置されている。そして、図12に表した矢印A7、A8、A9のように、空気が発熱体61から自然対流により天井63に向かって流れている。
【0076】
本具体例に係る流体測定装置2は、図12に表したように、空気が自然対流により流れる領域を対象領域5として設定することにより、二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出することができる。二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出する方法は、図3図8に関して前述した通りである。
【0077】
ここで、流体解析などと呼ばれる数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)では、境界条件として領域の境界面(床面62、天井63、第1壁面64および第2壁面65)の情報を入力する必要がある。境界条件を入力しなければ、解析結果の精度を確保することが困難である。
【0078】
これに対して、本実施形態に係る流体測定装置2では、コンピュータ21は、カメラ27により撮像された複数の画像データに基づいてPIV解析のアルゴリズムを実行し、シート状のレーザシート光SPに含まれる測定断面3に沿った方向における流体の粒子の速度を算出する。そして、コンピュータ21は、対象領域5を複数のセル4に分割し、PIV解析のアルゴリズムにより算出された速度すなわち測定断面3に沿った方向における速度に基づいてセル4を流れる流体の流量の変化を算出し、流量の変化に基づいて速度を補正する。これにより、コンピュータ21は、複数の画像データに基づいたPIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度すなわち測定断面3に交差する方向における粒子の速度を導出する。このように、コンピュータ21は、PIV解析のアルゴリズムによって算出された速度を真の速度として処理しつつPIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度を導出する。そのため、本実施形態に係る流体測定装置2は、領域の境界面(床面62、天井63、第1壁面64および第2壁面65)などの境界条件を設定しなくとも、レーザシート光SPの面方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場をより高い解像度で算出することができる。実用問題では、明確な境界条件を定義できない場合や、明確な境界条件を含めようとすると対象領域が必要以上に大きくなってしまう場合が多く、このような場合には、流れの一部のみをクローズアップして可視化することとなる。本発明はこのような場合についても適用が可能であり、非常に有効な解析手段となることを示している。
【0079】
次に、本発明者が実施した解析の結果の例を、図面を参照して説明する。
この実施例では、噴流を含む対象領域について、図9と同様に噴流を横断する方向に設定した複数の測定断面についてPIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルから三次元流れ場を算出している。
図13は、PIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルを例示する図である。
図14は、図13に表した範囲A31を流体の主流の方向に沿って眺めたときの図である。
図15は、本発明者が実施した解析の結果の第1例を例示する図である。
図16は、本発明者が実施した解析の結果の第2例を例示する図である。
図17は、本発明者が実施した解析の結果の第3例を例示する図である。
図18は、本発明者が実施した解析の結果の第4例を例示する図である。
なお、図13は、流体の主流を横断する方向に沿って眺めたときの図である。
【0080】
図13に表したように、本発明者は、初速度2m/secで斜め下向きに吹き出す三次元噴流を解析対象とした。そして、本発明者は、図9と同様に噴流を横断する方向に複数の測定断面を設定し、図3図8に関して前述した流体測定方法により、図13に表した二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出した。このような流れに対しては、主流の方向に沿った測定断面(例えば図10に表した測定断面35参照)で可視化することが一般的であるが、本発明者は、主流を横断する方向に沿った測定断面を設定し、主流の方向に沿った流れ場(すなわち速度データ)を再現できるかを検討している。
【0081】
本解析では、測定断面が主流を横断する方向に沿って設定されているため、図13および図14に表したように、PIV解析のアルゴリズムによって算出された速度ベクトルは、主流を横断する方向における速度ベクトルのみである。つまり、主流の方向における速度ベクトルは、PIV解析のアルゴリズムでは算出されていない。そして、図3図8に関して前述した流体測定方法により、図13に表した二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出した結果は、図15図17に表した通りである。
【0082】
すなわち、図15に表した解析結果の例では、主流を横断する方向に沿った測定断面の数は、7つである。7つの測定断面は、主流の方向において互いに離れて設定されている(図9参照)。図15に表した解析結果の例によれば、PIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度ベクトルすなわち測定断面に交差する方向における粒子の速度ベクトルを導出できており、主流を横断する方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出できることを確認できた。
【0083】
図16に表した解析結果の例では、主流を横断する方向に沿った測定断面の数は、11つである。11つの測定断面は、主流の方向において互いに離れて設定されている(図9参照)。図16に表した解析結果の例によれば、PIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度ベクトルすなわち測定断面に交差する方向における粒子の速度ベクトルを導出できており、図15に表した解析結果と比較して、主流を横断する方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を高い解像度で算出できることを確認できた。
【0084】
図17に表した解析結果の例では、主流を横断する方向に沿った測定断面の数は、20である。20の測定断面は、主流の方向において互いに離れて設定されている(図9参照)。図17に表した解析結果の例によれば、PIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度ベクトルすなわち測定断面に交差する方向における粒子の速度ベクトルを導出できており、図15および図16に表した解析結果と比較して、主流を横断する方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を高い解像度で算出できることを確認できた。
【0085】
図18に表した解析結果の例では、主流を横断する方向に沿った測定断面の数は、40である。40の測定断面は、主流の方向において互いに離れて設定されている(図9参照)。図18に表した解析結果の例によれば、PIV解析のアルゴリズムでは算出できなかった速度ベクトルすなわち測定断面に交差する方向における粒子の速度ベクトルを導出できており、図15図17に表した解析結果と比較して、主流を横断する方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を高い解像度で算出できることを確認できた。
【0086】
なお、本発明者の検討の結果、測定断面の数が20以上、40以下の場合、算出された三次元流れ場における速度は、互いにほとんど変化しないことを確認できた。また、測定断面の数が7つの場合であっても、元データ(三次元CFD解析結果)と、算出された三次元流れ場における速度と、の差は0.1m/sec未満(初速度2m/secに対して5%未満の誤差)であり、主流を横断する方向における二次元速度データに基づいて三次元流れ場を高い解像度で算出できることを確認できた。
【0087】
図19は、本発明者が実施した解析の結果の第5例を例示する図である。
本発明者は、図13に関して前述した三次元噴流の流れ場に障害物66、67を置いた場合についても、主流を横断する方向に沿った測定断面を設定し、主流の方向に沿った流れ場(すなわち速度データ)を再現できるかを検討している。解析対象は、障害物66、67の存在を除いて、図13に関して前述した解析対象と同じである。
【0088】
図3図8に関して前述した流体測定方法により、図13に表した二次元速度データに基づいて三次元流れ場を算出した結果は、図19に表した通りである。すなわち、図19に表したように、本解析では障害物66、67の存在箇所に関する境界条件等の処理を全く行っていないにもかかわらず、流体が障害物66、67を避けて流れる状況が高い精度で再現されていることを確認できた。
【0089】
前述したように、数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)では、流れ場に障害物が存在する場合、その存在を境界条件として入力する必要があり、通常は境界条件を入力しなければ、解析結果の精度を確保することが困難である。この作業には、障害物の位置や寸法についての情報を事前に把握しておく必要がある。しかし本発明者が実施した解析では、これらの情報を一切使用していない。すなわち、各測定断面における二次元速度データは、障害物を避けて流れを生じる様子が得られており、障害物部分には有意な速度を有していない。このため、本発明によれば障害物の位置や寸法についての情報を事前に把握し入力する必要はない。この点は、たとえば障害物の形状や位置が刻々変化するような流れ場を解析する場合には非常に有効な解析手段となることを示している。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0091】
2:流体測定装置、 3:測定断面、 4:セル、 4A:セル、 4B:セル、 4C:セル、 4D:セル、 4E:セル、 5:対象領域、 21:コンピュータ、 22:コントローラ、 23:レーザ電源、 24:レーザ発振部、 25:レーザ光照射部、 26:カメラ電源、 27:カメラ、 28:記憶部、 31:測定断面、 32:測定断面、 33:測定断面、 34:測定断面、 35:測定断面、 36:測定断面、 41:第1端部、 42:第2端部、 43:断面、 44:断面、 61:発熱体、 62:床面、 63:天井、 64:第1壁面、 65:第2壁面、 66:障害物、 67:障害物、 281:プログラム、 311:一部、 321:一部、 331:一部、 LB:レーザ光、 SP:レーザシート光
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