(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030192
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】顔料分散体及び塗膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
C09B 67/46 20060101AFI20240229BHJP
C09B 57/04 20060101ALI20240229BHJP
C09B 29/15 20060101ALI20240229BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09B67/46 A
C09B57/04
C09B29/15
C09D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132816
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】布施谷 次郎
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA30
4J037CC29
4J037EE08
4J037FF03
(57)【要約】
【課題】着色力が改善された顔料分散体及び当該顔料分散体の各成分を含む塗膜形成用組成物を提供すること。
【解決手段】赤色有機顔料R、黄色有機顔料Y、樹脂型分散剤、分散樹脂及び溶剤を含む顔料分散体であって、前記赤色有機顔料Rが、カラーインデックス ピグメント レッド 63:1であり、前記赤色有機顔料Rと前記黄色有機顔料Yの重量比R/Yが69/31~26/74であり、前記樹脂型分散剤が、4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するブロック共重合体であり、前記分散樹脂が、酸価を有するアルカリ可溶性樹脂である、顔料分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色有機顔料R、黄色有機顔料Y、樹脂型分散剤、分散樹脂及び溶剤を含む顔料分散体であって、
前記赤色有機顔料Rが、カラーインデックス ピグメント レッド 63:1であり、
前記赤色有機顔料Rと前記黄色有機顔料Yの重量比R/Yが69/31~26/74であり、
前記樹脂型分散剤が、4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するブロック共重合体であり、
前記分散樹脂が、酸価を有するアルカリ可溶性樹脂である、顔料分散体。
【請求項2】
前記黄色有機顔料Yがカラーインデックス ピグメント イエロー 139である、請求項1記載の顔料分散体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の顔料分散体に含まれる、前記赤色有機顔料R、前記黄色有機顔料Y、前記樹脂型分散剤、前記分散樹脂及び前記溶剤と、塗膜形成成分とを含む、塗膜形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散体及び塗膜形成用組成物に関し、特に赤色有機顔料としてカラーインデックス ピグメント レッド 63:1を含む顔料分散体及び塗膜形成用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば固体撮像素子や表示装置等に使用されるカラーフィルタは、顔料などを含む塗膜形成用組成物を用いて微細なパターンを形成することで作製される。近年、固体撮像素子や表示装置等に対する高画質化、高精細化の更なる向上が求められている。カラーフィルタには、各種の色特性や色分離の性能が要求されるが、高画質化、高精細化により画素サイズが小さくなるにつれて、その要求を満たすカラーフィルタの製造が困難になることが懸念される。例えば、画素サイズが小さくなることで、画素パターンを作製する際に残渣が発生し、色特性や色分離の性能が要求を満たさないなどの問題が生じることが懸念される。
【0003】
この画素パターンを作製する際に生じる残渣の改善策として、特許文献1には、イソインドリン系顔料を含む着色剤、特定のバインダー樹脂などを含むカラーフィルタ用着色組成物が提案されている。この着色組成物を用いることで、アルカリ現像液に浸漬しても色落ちしないカラーフィルタ用着色組成物を提供することができ、残渣も少なく現像性良好なカラーフィルタを提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カラーフィルタ用途に使用される赤色顔料は、種々知られているが、着色力が高いことが知られているカラーインデックス(以下、「C.I.」と略称する。) ピグメント レッド(以下、「PR」と略称する。) 177が選択される場合がある。特に、高画質化、高精細化などの観点から、カラーフィルタの色特性や色分離の性能を向上する観点から、赤色顔料としてC.I.PR177を用いる場合がある。特許文献1においても、イソインドリン系顔料と組み合わせて用いる赤色有機顔料として、高着色力を得る観点から、C.I.PR177を用いることが記載されている。そのため、特許文献1に記載のカラーフィルタ用着色組成物によると、着色剤としてイソインドリン系顔料とC.I.PR177を組合わせて用いた場合に、アルカリ現像液に浸漬した際にある程度色落ちが抑制され、相応に高画質、高精細のカラーフィルタが得られると考えられる。しかし、近年の高画質化及び高精細化の要求に応えるには改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、着色力が改善された顔料分散体及び当該顔料分散体の各成分を含む塗膜形成用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前述の課題解決のため、鋭意検討を行った。その結果、黄色有機顔料Yと組み合わせて用いる赤色有機顔料RとしてC.I.PR63:1を採用し、それらの重量比R/Yを所定の範囲とし、かつ、これらの有機顔料R、Yと、特定の樹脂型分散剤及び分散樹脂とを組み合わせて用いることで、前述の課題が解決されることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
本発明の第一は、赤色有機顔料R、黄色有機顔料Y、樹脂型分散剤、分散樹脂及び溶剤を含む顔料分散体であって、前記赤色有機顔料Rが、カラーインデックス ピグメント レッド 63:1であり、前記赤色有機顔料Rと前記黄色有機顔料Yの重量比R/Yが69/31~26/74であり、前記樹脂型分散剤が、4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するブロック共重合体であり、前記分散樹脂が、酸価を有するアルカリ可溶性樹脂である、顔料分散体に関する。
【0009】
前記黄色有機顔料Yは、カラーインデックス ピグメント イエロー 139であってもよい。
【0010】
本発明の第二は、前記顔料分散体に含まれる、前記赤色有機顔料R、前記黄色有機顔料Y、前記樹脂型分散剤、前記分散樹脂及び前記溶剤と、塗膜形成成分とを含む、塗膜形成用組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、着色力が改善された顔料分散体及び当該顔料分散体の各成分を含む塗膜形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(顔料分散体)
本願発明の実施形態に係る顔料分散体は、赤色有機顔料R(以下、「顔料R」と称する場合がある。)、黄色有機顔料Y(以下、「顔料Y」と称する場合がある。)、樹脂型分散剤、分散樹脂及び溶剤を含む。顔料Rは、C.I.PR63:1である。顔料Rと顔料Yの重量比R/Yは69/31~26/74である。樹脂型分散剤は、4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するブロック共重合体である。分散樹脂は、酸価を有するアルカリ可溶性樹脂である。
【0014】
赤色有機顔料Rは、C.I.PR63:1である。C.I.PR63:1は、カラーフィルタ用途として、実際には、これまで着目されていなかった顔料であるが、所定の条件を満たす顔料分散体とし、硬化膜を形成すると、良好な着色力を有することが明らかとなった。C.I.PR63:1は、CAS No.が6417-83-0であるモノアゾ顔料ある。C.I.PR63:1は、市販のものを用いることができる。
【0015】
黄色有機顔料Yは、特に限定はなく、例えばカラーフィルタ用途において使用されるものを選択可能である。このような黄色有機顔料Yは、C.I.番号で示すと、ピグメント イエロー(PY) 1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、86、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、125、126、127、127:1、128、129、133、134、136、137、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208等が挙げられる。このうち、高輝度および高色域の観点から、C.I.PY83、117、129、138、139、150、154、155、180、185が好ましく、83、138、139、180、185がより好ましく、139が特に好ましい。
【0016】
前述の顔料R及び顔料Y以外に、必要に応じて、他の色の顔料を含んでもよい。
【0017】
顔料分散体に含まれる各顔料の平均一次粒子径は、コントラスト等に影響がない範囲で適宜調整することができる。平均一次粒子径としては、10~100nmが好ましく、10~50nmがより好ましく、10~30nmが特に好ましい。一次粒子径は、例えば、顔料を透過型電子顕微鏡にて倍率10万倍で撮影した画像から測定できる。また、平均一次粒子径については、例えば、100個の粒子を測定し、その平均値を平均一次粒子径とすることができる。
【0018】
顔料の種類によっては、平均一次粒子径を調整する観点等から、予めミリング処理を行ってもよい。ミリング処理は顔料の種類等に応じて定法に従って行うことができる。このようなミリング処理としては、例えば、ソルベントソルトミリング法等が挙げられる。
【0019】
顔料Rと顔料Yの重量比R/Yは、固形分基準で、69/31~26/74であればよいが、64/36~36/64が好ましい。顔料Rと顔料Yの含有量(固形分として)は、顔料分散体中、合計で3~20重量%であるのが好ましい。また、顔料Rと顔料Y以外の顔料が含まれる場合は、顔料Rと顔料Yの含量が全顔料中合計で60~100重量%であるのが好ましい。
【0020】
樹脂型分散剤は、4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するブロック共重合体である。ブロック共重合体の主鎖構造は、特に限定はないが、ビニル系モノマーの付加重合により形成される主鎖構造が好ましい。このうち、4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するアクリル系ブロック共重合体が好ましい。4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するアクリル系ブロック共重合体としては、例えば、ビックケミー社製の、BYK-LPN21116等が挙げられる。
【0021】
樹脂型分散剤のアミン価は、50~100mgKOH/gが好ましい。また、酸価は0~50mgKOH/gが好ましく、0mgKOH/gがより好ましい。アミン価(固形分換算したときのアミン価)は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。酸価(固形分換算したときの酸価)は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
【0022】
樹脂型分散剤の分子量は、特に限定はないが、重量平均分子量が3000~100000であるのが好ましく、5000~20000がより好ましい。
【0023】
樹脂型分散剤の含有量は、特に限定はないが、分散安定性向上及び粘度の観点から、顔料分散体に含まれる顔料全体に対して、固形分基準で10~60重量%が好ましい。この場合、顔料全体には、顔料誘導体を含む場合はこれを含むものとする。
【0024】
分散樹脂は、顔料分散体中での顔料の分散性を向上させるため、及び、顔料分散体を用いて塗膜形成用組成物を形成する場合に、塗膜形成用組成物中の粒子の分散性を向上させるために用いられる。分散樹脂は、酸価を有するアルカリ可溶性樹脂であり、前述の所定の樹脂型分散剤と組み合わせて顔料などの分散性や粘度の安定性を確保可能であるものであれば特に限定はないが、酸価が50~200mgKOH/g以下であり、アミン価を持たない樹脂であるのが好ましい。酸価(固形分換算したときの酸価)は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。「アミン価を持たない」とは、アミン価(固形分換算したときのアミン価)を、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めた時の値が、0mgKOH/gである場合をいう。
【0025】
分散樹脂は、後述する塗膜形成用組成物において使用する塗膜形成成分が重合性成分、とりわけ、光重合性成分の場合に、塗膜形成用組成物内の粒子の良好な分散性に寄与する傾向にある。塗膜形成成分が後述する重合体の場合も重合性成分の場合と同様に良好な分散性に寄与することは勿論のことである。このような分散樹脂としては、所定範囲の酸価を有しアミン価を持たないアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。このようなアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、線状有機高分子重合体であって、分子中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。アルカリ可溶性樹脂の好適なものとしては、例えばアクリル系樹脂が挙げられる。
【0026】
分散樹脂の重量平均分子量は、樹脂型分散剤と併用時の顔料の分散安定性の観点から、3000~100000であるのが好ましく、5000~20000が好ましい。
【0027】
分散樹脂は、市販のものを使用することができる。例えば、綜研化学株式会社製、フォレット(登録商標)ZAH-110などが挙げられる。
【0028】
分散樹脂の顔料分散体中の濃度は、固形分基準で0.5~18重量%が好ましい。また、固形分基準で、顔料100重量部、他の顔料を含む場合は全顔料の合計100重量部に対して、10~60重量部が好ましい。顔料100重量部には、顔料誘導体を含む場合はこれを含むものとする。
【0029】
溶剤は、特に限定はないが、例えば、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系、アルコール系、脂肪族系等の各種の溶剤が挙げられる。塗膜形成性の観点からは、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系から選択される少なくとも1種が好ましく、グリコールエーテル系、エステル系から選択される少なくとも1種がより好ましい。グリコールエーテル系としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)などが挙げられる。エステル系としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMAまたはPGMEA)などが挙げられる。溶剤は、これらのうち1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種を組合わせる場合は、例えば、グリコールエーテル系溶剤とエステル系溶剤とを組み合わせて用いるのが好ましく、例えば、PMとPMAとを組み合わせるのが特に好ましい。
【0030】
顔料分散体において、溶剤の含有量は、特に限定はない。例えば、顔料分散体中60~90重量%とすることができる。
【0031】
顔料分散体は、必要に応じて、顔料誘導体を含んでもよい。顔料誘導体は、有機顔料を基本骨格とし、側鎖に酸性基や芳香族基を置換基として導入した化合物である。酸性基としては、硫酸基、カルボキシ基、リン酸基などが挙げられる。母体骨格となる有機顔料は、具体的には、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノリン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。また、母体骨格としては、一般に、色素と呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系、トリアジン系、キノリン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。顔料誘導体はこれらのうち1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。顔料誘導体としては、キノフタロン系顔料を母体骨格として有するものが好ましく、さらに側鎖に酸性基が置換基として導入されたキノフタロン系顔料がより好ましく、側鎖に硫酸基が導入されたキノフタロン系顔料がさらに好ましい。
【0032】
顔料分散体において、顔料誘導体の含有量は、特に限定はない。例えば、顔料全体100重量部に対して、固形分基準で2~18重量部とすることができる。また、赤色有機顔料Rと黄色有機顔料Yに対してそれぞれ顔料誘導体の含有量を考慮する場合、赤色有機顔料R100重量部に対して、固形分基準で2~18重量部とすることができ、黄色有機顔料Y100重量部に対して、固形分基準で2~18重量部とすることができる。
【0033】
顔料分散体には、前述した成分以外に、他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等が挙げられる。
【0034】
以上のような顔料分散体は、例えば、前述の各顔料、樹脂型分散剤、分散樹脂及び溶剤(必要に応じて他の成分)をビーズミル、サンドミル、ディスパー、ペイントコンディショナー等の公知の分散機に添加し、分散することにより得ることができる。或いは、赤色有機顔料Rと黄色有機顔料Yのそれぞれについて、樹脂型分散剤、分散樹脂および溶剤(必要により他の成分)を同様に分散機に添加し、分散させた後、赤色有機顔料Rの分散体と黄色有機顔料Yの分散体とを所望の比率で混合し、さらに分散処理或いは撹拌処理することでも得ることができる。また、粉砕媒体を用いて分散処理を行う場合は、必要に応じて粉砕媒体の大きさを変更して分散処理を複数回行ってもよい。また、必要に応じて、分散処理後にろ過処理を行ってもよいし、顔料濃度を調整するため溶剤を添加し、撹拌処理を行ってもよい。
【0035】
(塗膜形成用組成物)
本発明の実施形態に係る塗膜形成用組成物は、前述の顔料分散体に含まれる各成分及び塗膜形成成分を含む。
【0036】
塗膜形成成分としては、例えば、重合性成分、重合体、これらの混合物等が挙げられる。
【0037】
重合体としては、例えば、熱可塑性ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレン・マレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、カルド樹脂などが挙げられる。
【0038】
重合体の塗膜形成用組成物中における含有量としては、固形分基準で塗膜形成用組成物中3~10重量%が好ましい。塗膜形成用組成物中における重合体の含有量は、固形分基準で顔料分散体に含まれる分散樹脂との合計量である。重合体の分子量は適宜決定することができる。
【0039】
前述のような塗膜形成成分としての重合体のうち、アルカリ領域の溶液に溶解性を示すアルカリ可溶性樹脂が好ましい。アルカリ可溶性樹脂を含有すると、例えばカラーフィルタの製造時のフォトリソグラフィ工程において、パターン形成に顔料組成物を適用した際に、パターン形成性をより向上させることができる。このようなアルカリ可溶性樹脂としては、前述のものを用いることができる。また、顔料分散体の分散樹脂として用いるものと、塗膜形成成分として用いるものは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。重合体の重量平均分子量は、現像性の観点から、3000~50000が好ましい。
【0040】
塗膜形成成分として用いることが可能なアルカリ可溶性樹脂としては、種々のものが市販されており、その具体例は以下の通りであるが、これらに限定されるわけではない。
昭和電工株式会社製:リポキシ(登録商標)SPC-2000、
三菱ケミカル株式会社製:ダイヤナ-ル(登録商標)HRシリーズ、
株式会社ダイセル製:サイクロマー(登録商標)Pシリーズ、
ダイセル・オルネクス株式会社製:Ebecryl(登録商標)3700、
綜研化学株式会社製:フォレット(登録商標)ZAH-110等。
【0041】
重合性成分としては、現像(ネガ現像)により、パターニングを施すことが容易であることから、光重合性成分が好ましい。
【0042】
使用可能な光重合性成分としては、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む。このような光重合性化合物及び光重合開始剤は、例えば、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。詳述すると、このような光重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該技術分野において広く知られるものであり、これらを特に限定無く用いることができる。光重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0043】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0044】
光重合性化合物は、固形分基準で塗膜形成用組成物中、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは1~10重量%含まれる。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、光重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。
【0045】
前記光重合開始剤としても、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。
例えば、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(トリアジン系、オキサジアゾール系、クマリン系)、アクリジン系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等である。
これらの具体例は、ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
【0046】
光重合開始剤の塗膜形成用組成物中における含有量としては、塗膜形成用組成物中、固形分基準で0.1~10重量%が好ましい。光重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
【0047】
塗膜形成用組成物には、塗膜形成成分として光重合性成分を含む場合に、前述のアルカリ可溶性樹脂を、顔料分散体に含まれるものに加えて別途添加してもよい。
【0048】
塗膜形成用組成物には、必要に応じて、増感剤(増感色素)、連鎖移動剤、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、充填剤、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等の各種の添加剤を添加しても良い。
【0049】
塗膜形成用組成物は、例えば、前述の各成分(例えば、前述の顔料分散体と塗膜形成成分、顔料分散体を用いない場合それに含まれる前述の各成分と塗膜形成成分など)を所定の配合で、例えば、ディスパー、シェイカー等により混合、撹拌することで得ることができる。得られた混合液は、必要に応じてろ過処理を行ってもよいし、固形分濃度を調整するため溶剤を添加し、撹拌処理を行ってもよい。
【0050】
また、塗膜形成用組成物の各成分の含量は、顔料分散体を用いる場合、塗膜形成用組成物中の顔料濃度が固形分基準で8~60重量%となるように顔料分散体を配合し、塗膜形成用組成物中の固形分濃度が15~60重量%となるように塗膜形成成分を配合することができる。尚、顔料濃度には、顔料誘導体を用いる場合はこれを含むものとする。また、顔料分散体を用いない場合も、前述の顔料分散体の各成分の含量に準じて各成分の含量を決定することができる。
【0051】
以上のような塗膜形成用組成物は、加熱や紫外線等を照射するなどの定法に従って処理することで硬化膜とすることができる。この硬化膜は、良好な着色力を有し、例えば、固体撮像素子や表示装置等に使用されるカラーフィルタの構成材料として好適である。
【実施例0052】
以下、実施例に基づき本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0053】
(製造例A)
C.I.Pigment Yellow 138(固形分100重量%)20質量部と、98%濃硫酸300質量部とを500mLセパラブルフラスコに入れ、120℃で5時間反応させてフタルイミドキノフタロン化合物のスルホン化物を得た。反応混合物を、撹拌しながら水3000質量部中に注ぎ、フタルイミドキノフタロン化合物のスルホン化物を析出させて、30分撹拌した後、濾過、水洗を3回繰り返した。得られたウェットケーキを1%希硫酸300質量部で洗浄後、濾過し水洗した。熱風乾燥機中で乾燥させ、54質量部の下記式(1)で示される顔料誘導体1を得た。
得られた顔料誘導体1を、ヒューレットパッカード社製液体クロマトグラフィー質量分析機「LC/MS」(Electro Spray Ionization)により、質量分析を行った結果、m/z=773〔M-H〕-を検出した。
【0054】
【0055】
(製造例1)
赤色有機顔料RとしてPR63:1(固形分100重量%)12.22重量部、樹脂型分散剤(ビックケミー製、BYK-LPN21116、4級アンモニウム塩及び3級アミノ基を有する分散剤、酸価:0mgKOH/g、アミン価:75mgKOH/g、固形分40重量%)16.25重量部、分散樹脂(綜研化学株式会社製、フォレット(登録商標)ZAH-110、酸価:100mgKOH/g、アルカリ可溶性、アクリル系ポリマー、固形分:35.0重量%)18.57重量部、製造例Aで得られた顔料誘導体10.78重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)5.0重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)47.18重量部を配合しミルベースを得た。次に、そのミルベース100重量部に対し、直径0.8mmのジルコニアビーズを400重量部配合し、ペイントコンディショナーにより30分間分散処理を行った。その後、ミルベース100重量部に対し、直径0.05mmのジルコニアビーズを400重量部配合し、ペイントコンディショナーにより30分間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズを除去し、赤色顔料分散体を得た。
【0056】
(製造例2)
黄色有機顔料としてPY139(固形分100重量%)14.4重量部、樹脂型分散剤(ビックケミー製、BYK-LPN21116)9.38重量部、分散樹脂(綜研化学株式会社製、フォレット(登録商標)ZAH-110)10.71重量部、製造例Aで得られた顔料誘導体10.6重量部、PM5.0重量部、PMA59.91重量部を配合しミルベースを得た。次に、そのミルベース100重量部に対し、直径0.8mmのジルコニアビーズを400重量部配合し、ペイントコンディショナーにより30分間分散処理を行った。その後、ミルベース100重量部に対し、直径0.1mmのジルコニアビーズを400重量部配合し、ペイントコンディショナーにより30分間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズを除去し、黄色顔料分散体を得た。
【0057】
(製造例3)
赤色有機顔料Rとして、カラーインデックス ピグメント レッド 177(固形分100重量%)を用いた以外は、製造例1と同様にして、赤色顔料分散体を得た。
【0058】
(実施例1)
製造例1の赤色顔料分散体と製造例2の黄色顔料分散体とを、PR63:1及び顔料誘導体1の合計量(R’)とPY139及び顔料誘導体1の合計量(Y’)の重量比(R’/Y’、固形分基準)が50/50となるように混合し、ディスパーにより撹拌することで、実施例1の顔料分散体を得た。尚、PR63:1(R)とPY139(Y)の重量比(R/Y、固形分基準)は49/51である。
【0059】
(実施例2)
PR63:1及び顔料誘導体1の合計量(R’)とPY139及び顔料誘導体1の合計量(Y’)の重量比(R’/Y’、固形分基準)が60/40となるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の顔料分散体を得た。尚、PR63:1(R)とPY139(Y)の重量比(R/Y、固形分基準)は59/41である。
【0060】
(比較例1)
製造例1の赤色顔料分散体に替えて、製造例3の赤色顔料分散体を用いた以外は、実施例2と同様にして、比較例1の顔料分散体を得た。
【0061】
(評価)
<塗膜形成用組成物の製造>
実施例1、2及び比較例1の顔料分散体、塗膜形成成分としてアクリル系ポリマー(綜研化学株式会社製、フォレット(登録商標)ZAH-110)、及び、溶剤(PMA)を混合し、ディスパーにより撹拌し、それぞれ実施例1、2及び比較例1の塗膜形成用組成物を調製した。この際、塗膜形成用組成物の固形分が20重量%、固形分基準で塗膜形成用組成物における赤色有機顔料及び黄色有機顔料並びに顔料誘導体の濃度が50重量%となるように各成分を配合した。
【0062】
<硬化膜の製造>
実施例1、2及び比較例1の顔料分散体及び塗膜形成用組成物を用い、色度が、x=0.6830で、y=0.3130±0.0005となるように、スピンコータの回転数を調整し、基材(材質:ガラス)の表面に、各塗膜を形成した。表面に各塗膜が形成された基材(塗板)を、常温(23℃)で3分間乾燥した後、90℃で2.5分間加熱(プレベーク)し、続いて230℃で30分間加熱(ポストベーク)して基材上に実施例1、2及び比較例1の顔料分散体及び塗膜形成用組成物の硬化膜を作製した。
【0063】
<膜厚の測定>
実施例1、2及び比較例1の顔料分散体及び塗膜形成用組成物の硬化膜について、非接触膜厚計(FIKMETRICS社製、F-20EXR)により、膜厚を測定した。
【0064】
ポストベーク後の色度x(Rx)、y(Ry)及び膜厚の測定結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
表1に示すように、赤色有機顔料としてPR63:1を含み、所定条件を満たした顔料分散体及び塗膜形成用組成物を用いて得られた硬化膜は、従来、着色力が高いとされ、カラーフィルタ用途において一般的に使用されているPR177を用いた場合に比べて、同じ色度を得るのに膜厚が小さい、即ち、着色力が高いことが分かる。