(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030201
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】消火装置およびこれを有する充放電検査装置、並びに消火方法
(51)【国際特許分類】
A62C 3/16 20060101AFI20240229BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20240229BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240229BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240229BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240229BHJP
【FI】
A62C3/16 C
H01M50/202 401F
H01M50/204 401F
H01M10/613
H01M10/6563
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132854
(22)【出願日】2022-08-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】原口 智生
(72)【発明者】
【氏名】石橋 輝人
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA37
5H040AY10
(57)【要約】
【課題】二次電池を水没させるための槽を設ける必要がなく、かつ単純な構造で、迅速な消火機能を実現し得る消火装置などを提供する。
【解決手段】消火装置1は、1つまたは複数の二次電池Bが載置されるプレート10と、プレート10に載置された二次電池Bの四方を囲うように設けられた囲い11と、プレート10または囲い11を昇降させ、プレート10と囲い11とを密着させる昇降部20と、プレート10および囲い11で形成された領域Tに消火剤を供給する供給部30と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の二次電池が載置されるプレートと、
前記プレートに載置された二次電池の四方を囲うように設けられた囲いと、
前記プレートまたは前記囲いを昇降させ、前記プレートと前記囲いとを密着させる昇降部と、
前記プレートおよび前記囲いで形成された領域に消火剤を供給する供給部と、
を有する消火装置。
【請求項2】
前記囲いは、前記プレートに載置された二次電池の四方および上部を囲うように設けられたものであり、
当該囲いまたは前記プレートの一部に、前記消火剤が投入されるための開口部
を有する請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記領域内に収容されるように設けられ、前記領域内にある二次電池を、前記領域外に向かって加圧する加圧部
を有する請求項1に記載の消火装置。
【請求項4】
1つの二次電池または厚み方向に並べられた複数の二次電池を搬送するコンテナを有し、前記プレートには、前記コンテナが載置される
請求項1または2に記載の消火装置。
【請求項5】
前記消火剤は液体であり、
前記プレートの下部に設けられ、前記領域から溢れた液体を受けるためのパン
を有する請求項1または2に記載の消火装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の消火装置と、
二次電池と接続するプローブユニットと、
前記プレートまたは前記プローブユニットを昇降させ、前記二次電池と前記プローブユニットとを接続させる昇降部と、
を有する充放電検査装置。
【請求項7】
前記プレートの上部に設けられ、二次電池を下方から冷却する冷却部
を有する請求項6に記載の充放電検査装置。
【請求項8】
1つまたは複数の二次電池をプレートに載置させる工程と、
前記プレートに載置された二次電池の四方を囲うように設けられた囲い降下させ、または前記プレートを上昇させて、前記プレートと前記囲いとを密着させる工程と、
前記プレートおよび前記囲いで形成された領域に、開口した部分から消火剤を供給する工程と、
を有する消火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に発生した火災を消火する消火装置およびこれを用いた充放電検査装置、並びに消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池に発生した火災を消火する従来技術として、例えば、特許文献1,2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、複数の二次電池が厚さ方向に並べて配置される電池トレイを複数収容して搬送するための二次電池搬送用トレイが記載されている。また、この二次電池搬送用トレイは、該二次電池搬送用トレイ内に水を溜める際に、開口部を水密に閉塞する蓋体を有している。
そして、特許文献1には、このような構成により、二次電池の過剰な発熱又は発火が発生した際に、二次電池搬送用トレイに水を供給することにより、多数の二次電池を同時に水没させて短時間で冷却又は消火を行うことができることが記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、電池の消火を行う消火装置の付設した電池充放電設備および電池充放電設備の消火方法が記載されている。また、この電池充放電設備は、スタッカークレーンによって電池が搬送される各試験棚に火災検知センサーが配置され、スタッカークレーンにはガス噴射式の一次消火器が設けられ、試験棚の一つには水没槽が設けられている。
そして、特許文献2には、火災検知センサーによって電池の火災を検知した場合は、一次消火器で消火を行い、この一次消火器を使って消火を行っても電池が鎮火しない場合には、スタッカークレーンを用いて電池を水没槽まで搬送して二次消火を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6741308号公報
【特許文献2】特許第5595332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の二次電池搬送用トレイは、複数の二次電池が配置される電池トレイを複数収容して搬送するものであるため、当然搬送対象の重量は大きくなり、高い搬送能力が求められる。また、この二次電池搬送用トレイは、水を溜める際に、複数の開口部を水密に閉塞する必要があるため(特許文献1の
図1)、構造が複雑になったり、消火を開始するまでに時間がかかったりする恐れがある。
【0007】
また、特許文献2に記載の電池充放電設備は、試験棚の一つにスペースを空けて水没槽を設ける必要や、電池をスタッカークレーンで搬送する必要があるため、こちらも構造が複雑になったり、消火を開始するまでに時間がかかったりする恐れがある。
【0008】
よって、本発明は、二次電池を水没させるための槽を設ける必要がなく、かつ単純な構造で、迅速な消火機能を実現し得る消火装置およびこれを有する充放電検査装置、並びに消火方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の消火装置は、1つまたは複数の二次電池が載置されるプレートと、プレートに載置された二次電池の四方を囲うように設けられた囲いと、プレートまたは囲いを昇降させ、プレートと囲いとを密着させる昇降部と、プレートおよび囲いで形成された領域に消火剤を供給する供給部と、を有する。
これにより、プレートまたは囲いが上昇または下降して、これらが互いに密着させられるため、プレートに載置された二次電池は、プレートおよび囲いで区切られた領域内に収納されることになる。そして、供給部により、当該領域内に消火剤が供給される。
【0010】
ここで、囲いは、プレートに載置された二次電池の四方および上部を囲うように設けられたものであり、当該囲いまたはプレートの一部に、消火剤が投入されるための開口部を有することが望ましい。
これにより、プレートに載置された二次電池を、四方に加えて上部まで覆うことができる。そして、二次電池が上部まで覆われてしまったとしても、開口部から、当該領域内に消火剤が供給される。
【0011】
また、消火装置は、領域内に収容されるように設けられ、領域内にある二次電池を、領域外に向かって加圧する加圧部を有することが望ましい。
これにより、領域内にある二次電池を、領域外に向かって加圧することができる。
【0012】
また、消火装置は、1つの二次電池または厚み方向に並べられた複数の二次電池を搬送するコンテナを有し、プレートには、コンテナが載置される構成であることが望ましい。
これにより、コンテナに収容されて搬送されてきた二次電池を、そのまま(コンテナに収容されたまま)プレートに載置することができる。
【0013】
また、消火剤は液体であり、消火装置は、プレートの下部に設けられ、領域から溢れた液体を受けるためのパンを有することが望ましい。
これにより、供給部から供給された液体である消火剤(例えば水)が領域から溢れ出たとしても、パンで水を受けることができる。
【0014】
なお、本発明の充放電検査装置は、これらの消火装置と、二次電池と接続するプローブユニットと、プレートまたはプローブユニットを昇降させ、二次電池とプローブユニットとを接続させる昇降部と、を有する。
これにより、プレートまたはプローブユニットが上昇または下降して、二次電池とプローブユニットとを接続したり、反対に接続を解除したりすることができるため、消火装置を備えた構成で充放電検査を行うことができる。
【0015】
特に、充放電検査装置は、プレートの上部に設けられ、二次電池を下方から冷却する冷却部を有することが望ましい。
これにより、冷却部により、プレートに載置された二次電池を下方から冷却することができる。
【0016】
一方、本発明の消火方法は、1つまたは複数の二次電池をプレートに載置させる工程と、プレートに載置された二次電池の四方を囲うように設けられた囲い降下させ、またはプレートを上昇させて、プレートと囲いとを密着させる工程と、プレートおよび囲いで形成された領域に、開口した部分から消火剤を供給する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明の消火装置は、1つまたは複数の二次電池が載置されるプレートと、プレートに載置された二次電池の四方を囲うように設けられた囲いと、プレートまたは囲いを昇降させ、プレートと囲いとを密着させる昇降部と、プレートおよび囲いで形成された領域に消火剤を供給する供給部と、を有する構成により、プレートまたは囲いが上昇または下降して、これらが互いに密着させられるため、二次電池はプレートおよび囲いで区切られた領域内に収納されることになる。そして、供給部により当該領域内に消火剤が供給されるため、当該領域外に消火剤が漏れることなく供給され、二次電池に発生した火災を消火することができる。
要するに、消火剤が水である場合、水が供給されるこの領域が槽(水没槽)となるため、本発明の消火装置は、二次電池を水没させるための槽を設ける必要がなく、かつ単純な構造で、迅速な消火機能を実現することができる。
【0018】
(2)囲いは、プレートに載置された二次電池の四方および上部を囲うように設けられたものであり、当該囲いまたはプレートの一部に、消火剤が投入されるための開口部を有する構成により、プレートに載置された二次電池は四方に加えて上部まで覆われ、かつ開口部から当該領域内に消火剤が供給されるため、より消火剤が外部に漏れずに消火剤を領域内に充満させることができ、さらに効率的な消火を実現することができる。
【0019】
(3)消火装置は、領域内に収容されるように設けられ、領域内にある二次電池を、領域外に向かって加圧する加圧部を有する構成により、領域内にある二次電池を、領域外に向かって加圧することができるため、充放電検査装置中に二次電池が膨らむことや、二次電池の膨張により電池ケースの変形することなどを防ぐことができる。
【0020】
(4)消火装置は、1つの二次電池または厚み方向に並べられた複数の二次電池を搬送するコンテナを有し、プレートには、コンテナが載置される構成により、コンテナに収容されて搬送されてきた二次電池をそのままプレートに載置することができるため、充放電検査における作業効率を向上させることができる。
【0021】
(5)消火剤は液体であり、消火装置は、プレートの下部に設けられ、領域から溢れた液体を受けるためのパンを有する構成により、供給部から供給された液体である消火剤が領域から溢れ出たとしても、パンで当該液体を受けることができるため、消火作業後の清掃作業の効率を上げることができたり、他の装置に当該液体がかかって故障したりすることなどを防止することができる。
【0022】
(6)本発明の充放電検査装置は、これらの消火装置と、二次電池と接続するプローブユニットと、プレートまたはプローブユニットを昇降させ、二次電池とプローブユニットとを接続させる昇降部と、を有する構成により、、プレートまたはプローブユニットが上昇または下降して、二次電池とプローブユニットとを接続したり、反対に接続を解除したりすることができるため、消火装置を備えた構成で充放電検査を行うことができ、充放電検査中に、二次電池に火災が発生したとしても迅速に消火作業を行うことができる。
【0023】
(7)充放電検査装置は、プレートの上部に設けられ、二次電池を下方から冷却する冷却部を有する構成により、冷却部により、プレートに載置された二次電池を下方から冷却することができるため、充放電検査中に、二次電池が発熱して膨らむことや、二次電池の膨張により電池ケースの変形することなどを防ぐことができる。
【0024】
一方、本発明の消火方法によれば、本発明の消火装置と同様の作用効果を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態に係る消火装置を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る消火装置を示す概略斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る充放電検査装置を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る充放電検査装置を示す概略構成図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る充放電検査装置を示す概略構成図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る充放電検査装置を示す概略構成図である。
【
図7】本発明の実施の別の形態に係る充放電検査装置を示す概略構成図である。
【
図8】本発明の実施の別の形態に係る充放電検査装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0027】
[消火装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る消火装置を示す概略斜視図である。
消火装置1は、二次電池Bが載置されるプレート10と、プレート10に載置された二次電池Bの四方を囲うように設けられた囲い11と、囲い11を昇降させ、プレート10と囲い11とを密着させる昇降部20(20a)と、を有する。また、消火装置1は、プレート10および囲い11で形成された領域(以下、単に「領域」と言う)Tに消火剤を供給する供給部30を有する。
【0028】
消火剤とは、二次電池に発生した火災を消火し得るものであり、例えば水である。水の他に、強化液(炭酸カリウム水溶液)、泡(化学泡、機械泡)、ガス(二酸化炭素、ハロゲン化物)、または粉末(炭酸水素塩等、リン酸塩類等)などを消火剤として採用することができる。
【0029】
プレート10には、1つまたは複数の二次電池が載置される。
図1に示す例においては、二次電池B1,B2と2つの二次電池がプレート10に載置されている。
【0030】
囲い11は、上述したように二次電池Bの四方を囲い、プレート10とで領域Tを形成するものである。囲い11は、水圧に耐え得るもの(消火剤が水である場合)、または後述する加圧部50(
図7参照)の加圧に耐えるものであれば、素材(金属製や樹脂製など)や寸法などは適宜設計変更可能である。
【0031】
昇降部20aは、囲い11を昇降させる機構である。昇降部20aには油圧シリンダーやエアシリンダーなどを採用することができ、囲い11を支持しつつ昇降させることができる機構であれば、特に制限はない。なお、
図1や他の図に示す昇降部20aは、あくまで昇降部の機能を説明するための概略図であり、詳細な構成の記載は省略している。
【0032】
また、プレート10および囲い11は、
図1(A)に示すように、略鉛直方向に離れて(一定の距離を空けて)設けられている。そのため、例えば横方向(水平方向)から二次電池Bを搬送して、プレート10に載置することができる。
【0033】
そして、
図1(A)に示す状態から、昇降部20aが囲い11を下降させ(
図1(A)の矢印参照)、
図1(B)に示すようにプレート10と囲い11とを密着させる。そうすると、プレート10と囲い11とで、二次電池Bの下方および四方を取り囲む領域Tが形成される。
【0034】
図1に示す例において、囲い11は二次電池B1,B2および昇降部20aをそれぞれ3つの領域に区切るように設けられているため、この場合、二次電池B1が収まる領域T1と、二次電池B2が収まる領域T2とがそれぞれ形成される。
【0035】
なお、密着性を向上させるため、プレート10と囲い11との接触面(接触部分)は樹脂やゴム板など密着性を向上させ得る素材を用いることが望ましい。この際、当該素材をプレート10側に用いてもよく、囲い11側に用いてもよく、両方に用いてもよい。
【0036】
ここで、
図1(B)からも分かるように、領域Tは二次電池Bの下方および四方を取り囲むように形成されるが、上方は開いている。よって、消火剤が水である場合、上方から供給部30により給水が行われると、領域Tには外部に漏れることなく水が溜められる。その結果、領域T内の二次電池Bは水没し、二次電池に発生した火災は消火される。
【0037】
また、消火剤が水以外、例えば泡(泡消火薬剤)である場合も、このような領域Tが形成されることで泡消火薬剤の流出が防止され、より効率的に燃焼物(二次電池)を覆って窒息消火させることができる。なお、消火剤が消火剤がガス(二酸化炭素)である場合も、二酸化炭素は空気より比重が大きいため、領域T内に留まりやすく、より効率的な消火を実現することができる。
【0038】
供給部30は、手動または火災を検知して自動で動作させることができる。例えば、領域Tの容積は予め分かっているため、消火剤が水である場合、供給部30は領域Tの容積が満杯になる程度の水を自動で供給することができる。
【0039】
また、
図2も、本発明の実施の形態に係る消火装置を示す概略斜視図である。
図2に示す消火装置1はさらに、二次電池Bの四方を囲う囲い11と、二次電池Bの上部を覆う天板11U(11U1,11U2)を有する。なお、
図1に基づいて既に説明した部分と同様の構成および作用効果を有する部分については、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
ここで、天板11Uは、供給部30から供給される消火剤が通過する開口部C(C1,C2)を有する(
図2(B)参照)。開口部Cは、言わば消火剤の投入口であり、その大きさや位置、形状などは適宜設計変更可能である。例えば、開口部Cは、囲い11側やプレート10側に設けられていてもよい。
【0041】
このように、
図2に示す消火装置1は、プレート10に載置された二次電池Bの四方および上部を囲うように設けられ、当該上部に開口部Cを有する囲い(囲い11および天板11U)を有するものである。このような構成とすることで、より消火剤を領域T内に充満させることができ、さらに効率的な消火を実現することができる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、天板11Uを領域T1,T2毎に複数設けているが(天板11U1,11U2)、天板11Uは1枚の天板で構成されていてもよい。また、囲い11と天板11Uは一体形成されていてもよい。
【0043】
さらに、後述するように、プローブユニットPと領域T内にある二次電池Bとが接続される場合(
図8(B)参照)、天板11Uに、局所的にプローブユニット用の開口部(図示せず)を設けることができる。つまり、開口部Cの他に、プローブユニットPが二次電池Bとが接続され得るような開口部を適宜設けることができる。
【0044】
なお、消火装置1は、上述した構成の他に、領域Tから溢れた水を受けるためのパン12(
図3参照)や加圧部50(
図7参照)などを有するが、これらの詳細な説明については後述する。
【0045】
[充放電検査装置]
図3~6は、本発明の実施の形態に係る充放電検査装置を示す概略構成図である。充放電検査装置100は、上述した消火装置1を有する。なお、既に説明した部分と同様の構成および作用効果を有する部分については、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
なお、以降の説明において、消火剤は水であるもの、そして供給部30は水を供給するものとして説明する。同時に、領域Tには水が溜められるため、領域T(領域T1,T2)を「水没槽T(水没槽T1,T2)」と称して説明する。
【0046】
図3に示すように、充放電検査装置100は支持部材Sで構成されており、消火装置1に加えて、プローブユニットPと、パン12と、昇降部20(20b)と、冷却部40と、を有する。
【0047】
プローブユニットPは、充放電検査において検査対象の二次電池に接続(装着)されるものである。具体的には、プローブユニットPの正極のプローブに二次電池Bの電極(正極)が接触し、プローブユニットPの負極のプローブに二次電池Bの電極(負極)が接触する。そして、ケーブル(図示せず)で接続された充放電電源(図示せず)からプローブユニットPを介して、二次電池Bに電力が供給される。
【0048】
また、パン12は、供給部30により水没槽Tに給水が行われて水が溜められる際、水没槽Tから溢れた水を受けるためのものである(
図6参照)。
図3に示す例においては、パン12はプレート10の下部に設けられているが、水没槽Tから溢れた水を受けることができれば、パンを設ける位置、パンの広さや深さ、パンの材質、またはパンが有する排水処理機能などは適宜設計変更可能である。
【0049】
また、冷却部40は、プレート10の上部に設けられ、二次電池Bを下方から冷却するものである。冷却部40には、例えば二次電池Bに冷風を送る冷却用ファンを採用することができる。
【0050】
なお、充放電検査装置100は、1つの二次電池または厚み方向に並べられた複数の二次電池を搬送するコンテナ(図示せず)を有する。そのため、コンテナに収容されて搬送されてきた二次電池を、そのままプレート10に載置することができる。
【0051】
そして、当該コンテナの下面には開口部を設けることができる。よって、例えば、冷却部40により当該開口部に向けて冷風を送ることで、コンテナに収容された二次電池Bを下方から冷却することができる。
【0052】
また、昇降部20bは、プレート10を昇降させる機構である。昇降部20bには油圧シリンダーやエアシリンダーなどを採用することができ、プレート10およびプレート10に載置された二次電池Bなどを支持しつつ昇降させることができる機構であれば、特に制限はない。
【0053】
なお、本実施の形態の昇降部20の説明において、便宜上、昇降部20aが囲い11を昇降させるもの、昇降部20bがプレート10を昇降させるもの、としている。
【0054】
[充放電検査装置の動作]
以下、
図3~6に基づいて、本実施の形態に係る充放電検査装置の動作を説明する。
まず、昇降部20aは、プレート10に二次電池Bが載置されている状態から、
図3に示す矢印方向に囲い11を下降させる。昇降部20aが囲い11を下降させると、
図4に示すように、プレート10と囲い11とが密着して、二次電池Bを取り囲む水没槽Tが形成される。
【0055】
次に、昇降部20bは、
図4に示す矢印方向にプレート10を上昇させる。昇降部20bがプレート10を上昇させると、
図5に示すように、プレート10およびプレート10に載置された二次電池Bや昇降部20aなども上昇する。
【0056】
それから、水没槽Tが形成された状態で、充放電検査が行われる。説明の便宜上、
図5においてプローブユニットPと二次電池Bは繋げていないが、昇降部20bはプローブユニットPと二次電池Bとが接続する位置までプレート10を上昇させることができる。
また、
図3に示すような昇降部20aにより囲い11が支持される位置を、もっと高くすることができる。例えば、昇降部20aは、昇降部20bがプレート10を上昇させて水没槽Tを形成する場合、プローブユニットPと二次電池Bとが接続される位置で囲い11を支持することができる。
【0057】
ここでもし、充放電検査の際に二次電池Bに火災が発生した場合、昇降部20bは、
図5に示す矢印方向にプレート10を下降させる。
【0058】
その後、
図6に示すように、供給部30により給水が行われることで水没槽Tに水が溜められ、水没槽T内の二次電池Bを水没させて消火を行う。
【0059】
以上のように、充放電検査が行われる際に消火装置1により水没槽Tが形成されるため、予め二次電池を水没させるための槽を設ける必要がなく、構造を単純化することができる。また、プレート10を下降させることで二次電池Bを移動させると共に、供給部30により水没槽Tに対して給水が行われるため、充放電検査中であっても迅速な消火作業を実現することができる。
【0060】
また、上述したように、水没槽Tは二次電池B毎に形成することができるので(例えば、
図1の水没槽T1,T2参照)、供給部30も、火災が発生している二次電池Bを収容する水没槽Tだけに給水することができる。これにより、火災が発生していない二次電池Bを水没させずに、有効利用することができる。
【0061】
なお、充放電検査の際に火災が発生しなかった場合は、例えば昇降部20aが囲い11を元の位置(
図2に示す位置)支持し続け、昇降部20bがプレート10およびプレート10に載置された二次電池Bを下降させることにより、元の状態(
図3に示す状態)に戻して充放電検査を完了させることができる。
【0062】
[加圧部]
図7,8は、本発明の実施の別の形態に係る充放電検査装置を示す概略構成図である。具体的には、消火装置1が加圧部50を含んだ構成である。なお、
図7,8は主に加圧部50について説明するものであるため、プレート10や囲い11を昇降させる昇降部の記載や、冷却部40の記載など一部の構成の記載は省略する。
【0063】
消火装置1はプレート10上に、加圧部50を有する(
図7(A)参照)。ここで、上述したような昇降部20a(
図1参照)により囲い11が下げられると、
図7(B)に示すように水没槽Tが形成される。そして、加圧部50は、二次電池Bと共にこの水没槽T内に収容される。つまり、加圧部50は、水没槽T内に収容されるようにプレート10に設けられる(
図7(A)参照)。
【0064】
水没槽Tが形成された後、加圧部50は、水没槽T内にある二次電池Bを水没槽T外に向かって加圧する。
図7(B)に示す例においては、加圧部50は水平方向(矢印参照)に伸びることで、その一端が二次電池Bと接触して(点線枠参照)、二次電池Bを水没槽T外に向かって加圧する。
【0065】
そうすると、
図7(C)に示すように、二次電池Bは囲い11の壁面Ts1にぴったりと押さえつけられる。一方、加圧部50も二次電池Bを加圧させつつ、その他端が壁面Ts1とは反対方向にある壁面Ts2にぴったりと押さえつけられる。
【0066】
このように、加圧部50により二次電池Bを加圧することで、充放電検査装置中に二次電池Bが膨らむことや、二次電池Bの膨張により電池ケースの変形することなどを防ぐことができる。
【0067】
その他、二次電池が加圧状態であれば、二次電池に異常が発生して破裂等した際の衝撃を緩和することができる。また、それらの衝撃を和らげることで、コンテナや正常な他の二次電池などへの二次被害を防止することができる。
【0068】
その後、上述したような昇降部20b(
図3参照)によりプレート10が上げられると(
図8(A)の矢印参照)、二次電池BはプローブユニットPと接続される(
図8(B)参照)。
【0069】
そして、充放電検査において火災が発生した場合は、昇降部20b(
図3参照)によりプレート10を下降させ、プローブユニットPと切り離した後、供給部30により消火を行うことができる(
図8(C)参照)。
【0070】
以上のように説明した本実施の形態はあくまで一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、消火装置1や充放電検査装置100の構成は適宜設計変更可能である。
【0071】
例えば、加圧部50は、水没槽T内にある二次電池Bを水没槽T外に向かって加圧できるものであれば、油圧シリンダーやエアシリンダー、またはその他の機構を採用することができる。
【0072】
また、
図1に示すように二次電池Bと囲い11との間には隙間があるため、加圧する方向も任意に設計することができる。例えば、
図7に示す例において、手前側から奥側に向かって二次電池Bを加圧するように加圧部50をプレート10に設けてもよい。
【0073】
さらに、昇降部20(20a,20b)の構成についても、以下の機能を実現し得るものであれば、昇降部の数や昇降部が設けられる位置、または昇降部自身の構成などは適宜設計変更可能である。
【0074】
水没槽を形成させるため、
(1)囲いを下降させ、下部にあるプレートと密着させる。
(2)プレートを上昇させ、上部にある囲いと密着させる。
【0075】
充放電検査を行うため、
(1)囲いおよびプレートを上昇させ、二次電池とプローブユニットとを接続させる。
(2)囲いおよびプレートを下降させ、二次電池とプローブユニットとを切り離す。
(3)プローブユニットを下降させ、二次電池とプローブユニットとを接続させる。
(4)プローブユニットを上昇させ、二次電池とプローブユニットとを切り離す。
【0076】
その他、本実施の形態における充放電検査は、プローブユニットを二次電池に接続し、充放電電源からプローブユニットを介して二次電池に電力を供給するものとしているが、消火装置1や充放電検査装置100は、エージング(電圧を印可して充電してから、数日かけて放電させる)など様々な検査方法を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、二次電池を水没させるための槽を設ける必要がなく、かつ単純な構造で、迅速な消火機能を実現し得る消火装置およびこれを有する充放電検査装置、並びに消火方法として利用することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 消火装置
10 プレート
11 囲い
11U,11U1,11U2 天板
12 パン
20 昇降部
20a 昇降部(囲い用)
20b 昇降部(プレート用)
30 供給部
40 冷却部
50 加圧部
100 充放電検査装置
T,T1,T2 領域(水没槽)
Ts1,Ts2 壁面
B,B1,B2 二次電池
P,P1,P2 プローブユニット
C,C1,C2 開口部
S 支持部材
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と接続するプローブユニットと、
1つまたは複数の前記二次電池が載置されるプレートまたは前記プローブユニットを昇降させ、前記二次電池と前記プローブユニットとを接続させる昇降部と、
加圧部と、を有する充放電検査装置に設けられる消火装置であり、
前記プレートと、
前記プレートに載置される前記二次電池の四方を囲うように設けられた囲いと、
前記プレートまたは前記囲いを昇降させ、前記プレートと前記囲いとを密着させる昇降部と、
前記プレートおよび前記囲いで形成された領域に消火剤として液体を供給する供給部と、
を有し、
前記加圧部は、前記領域内に収容されるように設けられ、前記領域内にある前記二次電池を、前記領域外に向かって加圧するものであり、
前記囲いは、前記供給部により供給される液体の水圧と、前記加圧部が加圧することにより前記二次電池および前記加圧部にかかる力とを受けるものであり、かつこれらに耐え得るものである消火装置。
【請求項2】
1つの二次電池または厚み方向に並べられた複数の二次電池を搬送するコンテナを有し、前記プレートには、前記コンテナが載置される
請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記プレートの下部に設けられ、前記領域から溢れた液体を受けるためのパン
を有する請求項1に記載の消火装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の消火装置と、
前記プローブユニットと、
前記プレートまたは前記プローブユニットを昇降させ、前記二次電池と前記プローブユニットとを接続させる前記昇降部と、
前記加圧部と、
前記プレートの上部に設けられ、前記二次電池を下方から冷却する冷却部と、
を有する充放電検査装置。
【請求項5】
二次電池と接続するプローブユニットと、
1つまたは複数の前記二次電池が載置されるプレートまたは前記プローブユニットを昇降させ、前記二次電池と前記プローブユニットとを接続させる昇降部と、
加圧部と、を有する充放電検査装置の消火方法であり、
前記二次電池を前記プレートに載置させる工程と、
前記プレートに載置される前記二次電池の四方を囲うように設けられた囲いであって、供給部により供給される液体の水圧と、前記加圧部が加圧することにより前記二次電池および前記加圧部にかかる力とを受けるものであり、かつこれらに耐え得る囲いを降下させ、または前記プレートを上昇させて、前記プレートと前記囲いとを密着させる工程と、
前記プレートおよび前記囲いで形成された領域内に収容されるように設けられた前記加圧部により、前記領域内にある前記二次電池を、前記領域外に向かって加圧する工程と、
前記領域内に、開口した部分から前記供給部により消火剤として液体を供給する工程と、
を有する消火方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
(1)本発明の消火装置は、1つまたは複数の二次電池が載置されるプレートと、プレートに載置された二次電池の四方を囲うように設けられた囲いと、プレートまたは囲いを昇降させ、プレートと囲いとを密着させる昇降部と、プレートおよび囲いで形成された領域に消火剤を供給する供給部と、を有する構成により、プレートまたは囲いが上昇または下降して、これらが互いに密着させられるため、二次電池はプレートおよび囲いで区切られた領域内に収納されることになる。そして、供給部により当該領域内に消火剤が供給されるため、当該領域内に供給される消火剤により二次電池に発生した火災を消火することができる。
要するに、消火剤が水である場合、水が供給されるこの領域が槽(水没槽)となるため、本発明の消火装置は、二次電池を水没させるための槽を設ける必要がなく、かつ単純な構造で、迅速な消火機能を実現することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
(6)本発明の充放電検査装置は、これらの消火装置と、二次電池と接続するプローブユニットと、プレートまたはプローブユニットを昇降させ、二次電池とプローブユニットとを接続させる昇降部と、を有する構成により、プレートまたはプローブユニットが上昇または下降して、二次電池とプローブユニットとを接続したり、反対に接続を解除したりすることができるため、消火装置を備えた構成で充放電検査を行うことができ、充放電検査中に、二次電池に火災が発生したとしても迅速に消火作業を行うことができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
ここで、
図1(B)からも分かるように、領域Tは二次電池Bの下方および四方を取り囲むように形成されるが、上方は開いている。よって、消火剤が水である場合、上方から供給部30により給水が行われると、領域T
に水が溜められる。その結果、領域T内の二次電池Bは水没し、二次電池に発生した火災は消火される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
また、消火剤が水以外、例えば泡(泡消火薬剤)である場合も、このような領域Tが形成されることで泡消火薬剤の流出が防止され、より効率的に燃焼物(二次電池)を覆って窒息消火させることができる。なお、消火剤がガス(二酸化炭素)である場合も、二酸化炭素は空気より比重が大きいため、領域T内に留まりやすく、より効率的な消火を実現することができる。