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特開2024-30205更新セグメントと既設マンホールの補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030205
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】更新セグメントと既設マンホールの補修方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20240229BHJP
   E03F 5/02 20060101ALI20240229BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E02D29/12 Z
E03F5/02
E03F7/00
E02D29/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132861
(22)【出願日】2022-08-23
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】599024001
【氏名又は名称】株式会社サンリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 則男
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
【Fターム(参考)】
2D063DA30
2D063EA06
2D147BA21
2D147CA04
2D147CA05
2D147GB01
2D147GB05
2D147GB10
2D147NA16
(57)【要約】
【課題】
汎用性が高く様々な既設マンホールに対応可能であり、また地震などの外力に対抗可能な強度を有する更新セグメントと既設マンホールの補修方法の提供。
【解決手段】
既設マンホール71の内部表面を覆い隠す更新セグメント(11等)は、表面板41と側板44と塞ぎ板45、46と背面板48で構成することで、その形状や大きさを自在に調整可能であり、様々な既設マンホール71に対応でき、汎用性に優れている。しかも更新セグメント(11等)は、補強充填材51の注入によって強度と重量が増大するため、地震などの外力に対抗できるほか、既設マンホール71の浮き上がりを抑制できる。また隣接する更新セグメント(11等)同士はボルト57で連結するため、嵌め合わせ構造を導入する必要がなく、しかもボルト57は更新セグメント(11等)の内部に収容されるため、補修や点検の際、作業や昇降に支障をきたすことがない。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設マンホール(71)の内部の表面を覆い隠す更新セグメント(11乃至17)であって、隣接する該更新セグメント(11乃至17)同士はボルト(57)で連結され、
個々の前記更新セグメント(11乃至17)は、表面板(41、42)と側板(44)と塞ぎ板(45、46)とを有する中空状であり、該表面板(41、42)は、前記既設マンホール(71)の表面を覆い隠すように配置される部位であり、また該側板(44)と該塞ぎ板(45、46)は、いずれも該表面板(41、42)の端部から該既設マンホール(71)の表面に向けて突出しており、且つ該表面板(41、42)と該側板(44)と該塞ぎ板(45、46)で構成された内部空間には補強充填材(51)を注入してあり、
前記表面板(41、42)の背後に前記ボルト(57)を配置できるよう、該表面板(41、42)には窓(43)を設けてあり、且つ前記側板(44)と前記塞ぎ板(45、46)の両方またはいずれか一方には、該ボルト(57)の軸部を通すため、個々の該窓(43)に対応した連結穴(47)を設けてあり、さらに該窓(43)と該連結穴(47)に前記補強充填材(51)が流入することを防ぐため、対になる該窓(43)と該連結穴(47)の背後には、これらを一括して覆い隠す仕切体(53)を配置してあることを特徴とする更新セグメント。
【請求項2】
前記表面板(41、42)の反対側には背面板(48、49)を配置してあり、前記補強充填材(51)は、該表面板(41、42)と該背面板(48、49)で挟み込まれた内部空間に注入してあることを特徴とする請求項1記載の更新セグメント。
【請求項3】
既設マンホール(71)の内部には、請求項1または請求項2記載の更新セグメント(11乃至17)を複数配置し、隣接する該更新セグメント(11乃至17)同士を連結した状態において、該既設マンホール(71)の直壁(74)と該更新セグメント(11乃至17)には隙間を確保してあり、この隙間に接合充填材(52)を注入することを特徴とする既設マンホールの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道などの経路途中に設置されるマンホールの長寿命化を実現する更新セグメントと、この更新セグメントを使用した既設マンホールの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道は、生活排水や雨水を処理施設などに送り込む重要な役割を担い、人々の生活に必要不可欠な社会基盤となっており、国内においては、高度成長期を中心に大規模な整備が進められてきた。その結果、現在ではやマンホールや埋設管など、下水道に関する様々な設備の老朽化が深刻になっているが、これらの全面的な更新には多額の費用が必要になる。そのため既設の物を補修して長寿命化することが検討されており、マンホールの補修については、下記の特許文献のように、様々な技術開発が進められている。
【0003】
特許文献1では、施工効率が向上するほか、機械的強度が優れるなどの利点を有する下水道施設の再構築工事用治具などが開示されている。ここでの下水道施設は、下水管路網に設置されるコンクリート製のマンホールを想定しており、また工事用治具は、内枠部と外板部などで構成される円弧状であり、これを隙間なく敷き詰めることでマンホールの内面を被覆することができる。なお内枠部は、文字通りの枠状であり、その上下二辺は、湾曲端縁と称される円弧状の板材で構成されるほか、両側部は、非湾曲端縁と称される平面状の板材で構成され、非湾曲端縁については、隣接する工事用治具同士を結合するための連結部として機能する。そのほか外板部を合成樹脂製とすることで、工事用治具の軽量化が実現する。
【0004】
特許文献2では、下水道マンホールの更生方法が開示されている。この更生方法は、施工を容易且つ効率的に実施できることを特徴としており、劣化したマンホールの内面に内張り用ブロックを敷き詰めた上、この内張り用ブロックとマンホールとの隙間にモルタルを流し込み、内張り用ブロックをマンホールと一体化させている。そして内張り用ブロックは、鋳物製本体を合成樹脂で被覆した構成であり、しかもその側端部には、雌型係合部と雄型係合部を形成してあり、施工時はこれらを係合させることで、内張り用ブロック同士が自然に一体化することになる。
【0005】
特許文献3は、液状化現象などの地盤変化に対処する技術であり、マンホールの浮上防止装置が開示されている。液状化現象によるマンホールの浮上を防ぐため、マンホール周壁の内周側にブロック状の鋳物を積み上がる場合がある。しかしこの鋳物は、下水から発生するガスなどによる腐食が避けられない。そこでこの文献による浮上防止装置は、合成樹脂などを素材とする箱状の収容体と、その内部に収容する重りなどで構成されており、重りは収容体で保護されるため、腐食を防ぐことができる。そして多数の収容体をマンホール周壁の内周側に沿って配置することで、マンホール周壁の全域を覆い隠し、さらに収容された重りにより、マンホールの浮上を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-133175号公報
【特許文献2】特開2012-36655号公報
【特許文献3】特開2016-211354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの特許文献のように、既設マンホールの内部に新たな壁面を構築する技術は、様々な方式が提案されている。ただしこのような技術において、主要な部品に合成樹脂を使用した場合、その成形に専用の金型が必要になることから、様々な形状に対応することが難しく、汎用性や製造コストといった面で課題があるほか、強度にも課題がある。また、合成樹脂の代替として金属板を使用した場合、製造が容易になるほか、強度の向上も容易になるが、外力による変形を避けることはできず、地震などで過大な荷重が作用した後は、本来の機能を発揮できなくなる可能性がある。
【0008】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、汎用性が高く様々な既設マンホールに対応可能であり、また地震などの外力に対抗可能な強度を有する更新セグメントと既設マンホールの補修方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、既設マンホールの内部の表面を覆い隠す更新セグメントであって、隣接する該更新セグメント同士はボルトで連結され、個々の前記更新セグメントは、表面板と側板と塞ぎ板とを有する中空状であり、該表面板は、前記既設マンホールの表面を覆い隠すように配置される部位であり、また該側板と該塞ぎ板は、いずれも該表面板の端部から該既設マンホールの表面に向けて突出しており、且つ該表面板と該側板と該塞ぎ板で構成された内部空間には補強充填材を注入してあり、前記表面板の背後に前記ボルトを配置できるよう、該表面板には窓を設けてあり、且つ前記側板と前記塞ぎ板の両方またはいずれか一方には、該ボルトの軸部を通すため、個々の該窓に対応した連結穴を設けてあり、さらに該窓と該連結穴に前記補強充填材が流入することを防ぐため、対になる該窓と該連結穴の背後には、これらを一括して覆い隠す仕切体を配置してあることを特徴とする。
【0010】
本発明で想定している既設マンホールは、最下部に位置する底版と、この底版の外周部から地表面に向けて立ち上がる直壁で構成されており、これらに下水道管などの配管が接続されている。そして直壁や底版は、汚水から発生する腐食性ガスや経年などで劣化が進んでいくが、本発明では、この劣化した直壁や底版を撤去することなくそのまま活用し、その表面に沿って更新セグメントを隙間なく配置することでこれらを覆い隠し、以降の劣化を抑制する。なお既設マンホールの最上部は、マンホール蓋で塞がれているが、マンホール蓋を無制限に大きくすることはできない。そのため直壁とマンホール蓋との間には、先細り状の斜壁を設置し、横断面を徐々に変化させることがある。
【0011】
本発明による更新セグメントは、板状ではなく相応の厚さを有する箱状であり、直壁や底版の表面を覆い隠すように配置するが、地上から無理なく搬入可能な大きさにする必要がある。そして搬入後、複数の更新セグメントを水平方向と垂直方向の両方に隙間なく配置し、さらに隣接する更新セグメント同士をボルトで連結することで、配置された全ての更新セグメントを一体化する。なお更新セグメントは、直壁と底版の両方を覆い隠するように配置することもあれば、直壁だけを覆い隠すように配置することもある。
【0012】
個々の更新セグメントは、ステンレス鋼板など、耐食性に優れた板材を使用しており、この板材を板金加工などで箱状に仕上げることで、表面板および側板および塞ぎ板と称する表皮部分が形成される。そして更新セグメントを既設マンホールの内部に配置した際、この表面板は従来の直壁や底版の表面を覆い隠し、これが新たな表面として機能する。ただし更新セグメントは、相応の厚さを有するため、表面板は、従来の直壁や底版に対し、ある程度の距離が確保されることになる。
【0013】
側板は、表面板を直立させた状態において、表面板の側端部から突出しており、更新セグメントを既設マンホールの内部に配置した際、側板は、既設マンホールの表面に向けて伸びている。また塞ぎ板は、表面板を直立させた状態において、表面板の上端部や下端部から突出しており、これについても、更新セグメントを既設マンホールの内部に配置した際、既設マンホールの表面に向けて伸びている。そのため表面板と側板と塞ぎ板により、更新セグメントは相応の厚さを有する箱状になり、その内部には空間が確保されることになる。なお更新セグメントを実際に配置する際、その姿勢は自在であり、表面板が直立する場合もあれば、横倒しになる場合もある。
【0014】
ボルトは、既設マンホールの内部に複数の更新セグメントを隙間なく配置した際、隣接する更新セグメント同士を連結するために使用する。ただしこのボルトは、更新セグメントの内部に収容されることを前提としており、実際にボルトを収容した後、更新セグメントの側板などからボルトの先端部を突出させ、これを隣接する更新セグメントに差し込んだ後、ボルトの先端部にナットを螺合させ、更新セグメント同士を連結する。必然的にこの作業は、既設マンホールの中心側から行うことになる。そのため更新セグメントの表面板には、ボルトを収容するための窓を設けてある。
【0015】
窓と連結穴は、更新セグメント同士をボルトで連結するために設けてあり、そのうち窓は、表面板の外縁近傍に設けた切り抜きであり、そこから更新セグメントの内部にボルトを収容する。また連結穴は、窓に隣接する側板や塞ぎ板に設けてあり、そこからボルトの先端部を外部に突出させる。当然ながら窓と連結穴は対になっており、一箇所の窓の背後の空間には、一箇所の連結穴が露出することになる。なお一個の更新セグメントは、通常、複数の更新セグメントと面接触することになるため、一個の更新セグメントにおいて、窓と連結穴は複数組設けることになる。そのほか窓は、ボルトの差し込みや締め付けを無理なく行うことのできる大きさを確保する。
【0016】
補強充填材は、表面板と側板と塞ぎ板で構成される更新セグメントの内部空間に注入し、強度と重量を増大させる役割を担う。そのため補強充填材は、発泡性の合成樹脂ではなく、モルタルなど、凝固後に硬化するものを使用する。この補強充填材により、更新セグメントに過大な外力が作用した場合でも、それによる変形を防ぐことができる。また重量の増大により、液状化現象などによる既設マンホールの浮き上がりを抑制することができる。
【0017】
仕切体は、更新セグメントの内部に配置し、補強充填材が窓や連結穴に流入することを防ぐ箱状のものであり、更新セグメントの内部から見て、一組の窓と連結穴を一括して覆い隠すことができる大きさとする。そのため仕切体の一面は開放しており、この開放した面を窓の背後に配置する。また連結穴に重なる範囲は、あらかじめ何らかの切り抜きを設けておく。なお仕切体については、その素材として合成樹脂を使用することができ、補強充填材を注入するのに先立ち、接着剤で表面板や側板などに取り付けても構わない。
【0018】
個々の更新セグメントの形状は、補修される既設マンホールに応じて決めることになる。仮に既設マンホールの内部が円断面であれば、更新セグメントは、その直径に応じた円弧状になり、複数の更新セグメントを環状に並べ、さらにこれを垂直方向に積層させることで、既設マンホールの直壁は更新セグメントで覆い隠されることになるが、これはシールドトンネルと同様の構成である。そのほか、底版を覆い隠すように更新セグメントを配置する場合もあるが、これについては、搬入を考慮して複数に分割するほか、直壁を覆い隠す円弧状の更新セグメントとの接続を考慮する必要がある。
【0019】
また、補修される既設マンホールの内部が矩形断面であれば、個々の更新セグメントは単純な平面状になる。ただし、直壁と底版の両方を覆い隠すように更新セグメントを配置する場合、底版と直壁との接続部に対応するため、L字状に屈曲した更新セグメントを使用することになる。そのほか既設マンホールには、必ず何らかの配管が接続されている。したがって、この配管と重なるように配置される更新セグメントについては、穴や切り欠きを設けて流路を確保する。
【0020】
更新セグメントの具体的な製造方法は自在であり、表面板と側板と塞ぎ板を個別に切り出した後、これらを溶接などで一体化することもできれば、一枚の板材に板金加工を行い、表面板や側板などを区画した後、後の変形を防止するため、溶接などを行うこともある。いずれについても、外力に対抗できる強度を確保するほか、凝固前の補強充填材の漏れを防ぐ必要がある。
【0021】
このように、更新セグメントを表面板と側板と塞ぎ板で構成することで、その形状や大きさは、通常の板金加工などで自在に調整可能であり、多種多様な既設マンホールに無理なく対応することができる。しかも更新セグメントの内部空間に補強充填材を注入することで、重量が増大するため、既設マンホールの浮き上がりを抑制することができる。また、表面板と側板と塞ぎ板とからなる表皮部分と補強充填材により、更新セグメントは、鉄筋コンクリートなどと同様、引張荷重と圧縮荷重の両方に対して強度が増大するため、更新セグメントに様々な外力が作用した場合でも、それに対抗して変形を抑制できる。
【0022】
そのほか本発明では、隣接する更新セグメント同士をボルトで連結することから、隣接する更新セグメント同士を嵌め合わせるための凹凸などは不要であり、その分、更新セグメントの形状が単純化して製造が容易になる。またボルトは、更新セグメントの内部に収容される。そのため、更新セグメントを使用して既設マンホールの補修を行う際や、その後の点検の際、ボルトによって作業や昇降に支障をきたすことがない。
【0023】
請求項2記載の発明は、更新セグメントの構成を限定するものであり、表面板の反対側には背面板を配置してあり、補強充填材は、表面板と背面板で挟み込まれた内部空間に注入してあることを特徴とする。背面板は、表面板と対向するように配置されるため、必然的に背面板の外縁は、側板や塞ぎ板と接続することになる。また背面板を配置することで、更新セグメントは、開口部のない閉じた箱状になる。そのため補強充填材は、更新セグメントの製造途中で内部空間に注入する。なお、更新セグメントを既設マンホールの内部に配置した際、その背面板は、必然的に直壁や底版と対向することになる。
【0024】
背面板を配置することで、補強充填材が完全に覆い隠されるため、輸送時や作業時の衝撃などによる補強充填材の破損を抑制できるほか、仮に破損した場合でも、その破片などが外部に飛散することはないため、更新セグメントにおいて、圧縮荷重に対する強度はそのまま維持され、使用を継続することができる。そのほか、円弧状の更新セグメントを製造する際は、その表面板と背面板と塞ぎ板(下方のもの)により、内部空間の上方だけが開いた状態にすることができるため、補強充填材の注入が容易になる。
【0025】
請求項3記載の発明は、これまでに記載した更新セグメントを使用した既設マンホールの補修方法であり、既設マンホールの内部には、更新セグメントを複数配置し、隣接する更新セグメント同士を連結した状態において、既設マンホールの直壁と更新セグメントには隙間を確保してあり、この隙間に接合充填材を注入することを特徴とする。
【0026】
既設マンホールは劣化などで変形していることが多く、その直壁と接触するように更新セグメントを配置することは難しい。そこで直壁と更新セグメントについては、意図的に隙間を確保しており、全ての更新セグメントを配置した後、この隙間に接合充填材を注入することで、更新セグメントが直壁と一体化するほか、直壁の表面が覆い隠されることになる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明のように、更新セグメントを表面板と側板と塞ぎ板で構成することで、その形状や大きさは、通常の板金加工などで自在に調整可能であり、多種多様な既設マンホールに無理なく対応することができ、汎用性に優れている。しかも更新セグメントの内部空間に補強充填材を注入することで、重量が増大するため、既設マンホールの浮き上がりを抑制することができる。また、表面板と側板と塞ぎ板とからなる表皮部分と補強充填材により、更新セグメントは、鉄筋コンクリートなどと同様、引張荷重と圧縮荷重の両方に対して強度が増大するため、更新セグメントに様々な外力が作用した場合でも、それに対抗して変形を抑制できる。
【0028】
隣接する更新セグメント同士は、ボルトで連結する。したがって、隣接する更新セグメント同士を嵌め合わせるための凹凸などは不要であり、その分、更新セグメントの形状が単純化して製造が容易になる。なおボルトを収容するため、更新セグメントには窓や連結穴を設ける必要があるが、これらは極めて単純な形態であり、窓や連結穴の背後に配置する仕切体についても、合成樹脂などを素材とする単純な形態である。またボルトは、更新セグメントの内部に収容される。そのため、更新セグメントを使用して既設マンホールの補修を行う際や、その後の点検の際、ボルトによって作業や昇降に支障をきたすことがない。
【0029】
請求項2記載の発明のように、更新セグメントにおいて、表面板の反対側に背面板を配置することで、補強充填材が完全に覆い隠されるため、輸送時や作業時の衝撃などで補強充填材が破損することを抑制できる。また補強充填材が破損した場合でも、その破片などが外部に飛散することはないため、更新セグメントにおいて、圧縮荷重に対する強度はそのまま維持され、使用を継続することができる。そのほか、円弧状の更新セグメントを製造する際は、その表面板と背面板と塞ぎ板(下方のもの)により、内部空間の上方だけが開いた状態にすることができるため、補強充填材の注入が容易になる。
【0030】
請求項3記載の発明のように、既設マンホールの直壁と更新セグメントには隙間を確保してあり、この隙間に接合充填材を注入することで、更新セグメントが直壁と一体化し、直壁が補強された状態になり、経年劣化による強度の低下が解消され、当初の強度を回復することができる。しかも直壁の表面が覆い隠されるため、腐食性ガスとの接触も解消され、その後の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による更新セグメントの形状例と、この更新セグメントを使用した既設マンホールの補修方法の具体例を示す斜視図であり、図の上方では、一個の更新セグメントを拡大して描いてある。
図2図1の更新セグメントの構成要素を示す斜視図である。
図3図2の外周片と内周片を一体化する過程を示す斜視図だが、いずれも図2に対して表裏を反転させた状態で描いてある。
図4図3の後、更新セグメントを完成させる過程を示す斜視図である。
図5】流路を設けた更新セグメントの形状例を示す斜視図である。
図6】底版に載せる半円形の更新セグメントの詳細を示す斜視図である。
図7図4図5図6の更新セグメントを水平方向と垂直方向の両方に隙間なく並べ、隣接する更新セグメント同士を連結していく状態を示す斜視図である。
図8図4図5図6の更新セグメントを使用して円断面の既設マンホールを補修した状態を示す斜視図である。
図9】これまでの各図とは異なる平面状の更新セグメントについて、その製造過程の具体例を示す斜視図である。
図10図9の後、更新セグメントを完成させる過程を示す斜視図である。
図11】流路を設けた更新セグメントの形状例を示す斜視図である。
図12】既設マンホールの角部や隅部で使用する更新セグメントの形状例を示す斜視図である。
図13図10図11図12の更新セグメントの配置例を示す斜視図である。
図14図13と同じ構成で更新セグメントを配置し、既設マンホールを補修する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明による更新セグメント11、12、13の形状例と、この更新セグメント11、12、13を使用した既設マンホール71の補修方法の具体例を示しており、図の上方では、一個の更新セグメント11を拡大して描いてある。ここでの既設マンホール71の内部は円断面であり、その最下部は底版73で塞がれており、底版73の外周部から直壁74が立ち上がっており、さらに直壁74の上に斜壁76を載せてある。斜壁76は先細り形状であり、その最上部は地表面に到達しており、そこをマンホール蓋77で塞ぐ。
【0033】
この図の既設マンホール71は、経年などで劣化しているため、その直壁74を複数の更新セグメント11、12で覆い隠すが、ここで使用している更新セグメント11は同一形状であり、その詳細を図の上方に描いてある。更新セグメント11は、その表皮部分がステンレス鋼板で構成されており、そのうち既設マンホール71の中心側に位置するものを表面板41と称している。したがって表面板41は円弧状に屈曲した状態で直立する。そして表面板41の両端部からは側板44が突出している。側板44は、既設マンホール71の半径方向に伸びている。また、表面板41の上端部からは塞ぎ板45が突出しているほか、表面板41の下端部からは塞ぎ板46が突出しているが、この二枚の塞ぎ板45、46は、水平方向に展開している。そのほか更新セグメント11の外周側は、背面板48で覆われている。
【0034】
更新セグメント11の内部空間には隙間なく補強充填材51が注入されている。なお補強充填材51は、発泡性の合成樹脂のように柔軟性を有するものではなく、モルタルなど、凝固した際、硬質になるものを使用する。そのため更新セグメント11の重量が増大し、既設マンホール71の浮き上がりを抑制することができる。また、表面板41と側板44と塞ぎ板45、46と補強充填材51により、更新セグメント11は、鉄筋コンクリートなどと同様、引張荷重と圧縮荷重の両方に対して強度が増大し、様々な外力が作用した場合でも、変形を生じにくくなる。
【0035】
隣接する更新セグメント11同士を連結するため、ボルト57を使用しているが、このボルト57は更新セグメント11の内部に収容する。そしてこのボルト57の差し込みや締め付けは、既設マンホール71の内部に入り込んだ作業員が行うことになる。そのため表面板41の外縁近傍には、ボルト57を収容するための窓43を設けてあり、さらに収容されたボルト57の先端部を連結穴47から突出させ、隣接する更新セグメント11に差し込むことになる。したがって一箇所の窓43に対し、一箇所の連結穴47が配置されることになる。なお、窓43や連結穴47に補強充填材51が流入するのを防ぐため、窓43と連結穴47の背後には、箱状の仕切体53を配置してある。
【0036】
この図において、一個の更新セグメント11には窓43を六箇所に設けてあり、そのうち左右両端部に位置するものは、側板44に設けた連結穴47と対になっており、そこに収容されたボルト57により、水平方向に隣接する更新セグメント11同士を連結することができる。なお相手方の更新セグメント11については、その窓43の内部にボルト57の先端部が到達する。したがって、この窓43にはナット58を収容し、これをボルト57の先端部に螺合させた後、締め付けを行う。そして窓43は、表面板41の上端部と下端部にも配置してあり、上端部のものは塞ぎ板45の連結穴47と対になっており、下端部のものは塞ぎ板46の連結穴47と対になっており、垂直方向に隣接する更新セグメント11同士を連結することができる。
【0037】
この図の更新セグメント11は円弧状であり、その中心角を90度としてある。そのため、四個の更新セグメント11を水平方向に沿って円形に配置すると、隙間のない環状になる。そしてこの更新セグメント11を使用して既設マンホール71の補修を行う際は、更新セグメント11を一個ずつ搬入して底版73の上に並べていくが、その際、隣接する更新セグメント11同士をボルト57で連結していく。さらに更新セグメント11は、垂直方向に積層させていくが、上下に隣接する更新セグメント11同士は、中心から見て45度の差を設けて配置してあり、一方の更新セグメント11の側板44は、他方の更新セグメント11の表面板41の中央に位置しており、双方の側板44が上下に並ぶことはない。このような方法で更新セグメント11を斜壁76の近傍まで積層することで、最終的には直壁74のほぼ全域が覆い隠される。
【0038】
直壁74の下部には、下水管を接続するため、円形に切り抜いた通水路75を設けてある。そして通水路75を塞ぐように更新セグメント11を配置した場合、水の流れを阻害する。そこで通水路75と重なる箇所については、専用の更新セグメント12を配置する。この専用の更新セグメント12の中央には、円形に切り抜いた流路55を設けてあり、流路55と通水路75を同心に配置することで、水の流れを確保する。なおこの更新セグメント12は、隣接する更新セグメント11と同一形状であり、違いは流路55の有無だけである。
【0039】
この図の底版73には、更新セグメント13を載せている。この更新セグメント13は半円形だが、その外周部は筒状に直立しており、そこに円弧状の更新セグメント11、12を載せることができる。また二個の更新セグメント13により、底版73は完全に覆い隠されるが、この更新セグメント13も、ボルト57で連結可能な構造である。このように、様々な形状の更新セグメント11、12、13を使用することで、直壁74と底版73のほぼ全域を覆い隠すことができる。
【0040】
直壁74の内部で直立する更新セグメント11、12、13は、直壁74と接触することなく隙間を確保してあるため、更新セグメント11、12の積層作業を円滑に進めることができる。そして、全ての更新セグメント11、12、13をボルト57で一体化した後、更新セグメント11、12、13と直壁74との隙間に接合充填材52を注入し、更新セグメント11、12、13を直壁74と一体化させる。これにより直壁74が強化されるほか、直壁74や底版73に腐食性ガスなどが接触することを防ぐ。なお接合充填材52についても、自在に選択可能だが、通常はモルタルを使用するほか、接合充填材52が流路55や通水路75を塞ぐことがないよう、注入に先立ち、型枠の組み込みなどの対策を講じる。
【0041】
図2は、図1の更新セグメント11の構成要素を示している。この更新セグメント11は、上片22と外周片27と内周片21と下片25と仕切体53の各部品で構成されており、そのうち上片22と外周片27と内周片21と下片25は、ステンレス鋼板を切り出した後、板金加工で所定の形状に仕上げたものである。そして上片22は、扇形の塞ぎ板45を中心に構成され、その両端から縁部23が突出しているほか、塞ぎ板45には連結穴47を二箇所に設けてある。また下片25も同一形状であり、塞ぎ板46から縁部26が突出しているほか、連結穴47を二箇所に設けてある。
【0042】
次に外周片27は、円弧状に屈曲する背面板48を中心に構成され、その両側端部から中心側に向けて縁部28が突出しており、この縁部28に連結穴47を設けてある。また内周片21は、円弧状に屈曲する表面板41を中心に構成され、その両側端部から外周側に向けて側板44が突出しており、この側板44に連結穴47を設けてある。さらに表面板41には窓43を六箇所に設けてあり、個々の窓43の背後に仕切体53を取り付ける。なお、表面板41を円弧状に屈曲させる作業を円滑に行えるよう、全ての窓43は、外部に開放することのない閉じた構成にしてある。
【0043】
仕切体53は、一面だけが開放した箱状であり、合成樹脂などを素材とすることが多い。そして仕切体53において、開放した一面は窓43と同等の大きさを確保してあり、この面を窓43の背後に貼り付ける。また仕切体53には丸穴54を設けてある。丸穴54は、仕切体53によって連結穴47が塞がれることを防ぐために設けてあり、連結穴47と揃うように配置するが、図1のボルト57の頭部やナット58を収容可能な大きさを確保してある。
【0044】
図3は、図2の外周片27と内周片21を一体化する過程を示しているが、いずれも図2に対して表裏を反転させた状態で描いてある。内周片21において、個々の窓43の背後には、接着剤などで仕切体53を貼り付けるが、当然ながら仕切体53の開放面を窓43に揃える必要があり、さらに仕切体53の丸穴54は、連結穴47と揃うように配置する。なお内周片21の表面板41の側端部に取り付ける仕切体53は、その丸穴54を側板44の連結穴47と揃うように配置するが、表面板41の上端部に取り付ける仕切体53は、その丸穴54を上方に向け、表面板41の下端部に取り付ける仕切体53は、その丸穴54を下方に向ける。
【0045】
内周片21に仕切体53を貼り付けた後、外周片27と内周片21を一体化する。その際、外周片27の左右の縁部28は、内周片21の左右の側板44で挟み込む。そのため縁部28と側板44が接触する。さらに外周片27と内周片21の高さを揃えることで、縁部28と側板44の双方の連結穴47が同心に揃い、その後、外周片27と内周片21を溶接などで分離不能に一体化する。この状態において、更新セグメント11は、表面板41と側板44と背面板48だけで構成されており、その内部空間は開放されている。
【0046】
図4は、図3の後、更新セグメント11を完成させる過程を示している。先の図3のように、外周片27と内周片21を一体化した後、その底部に下片25を取り付けるが、下片25についても、溶接などで外周片27や内周片21と一体化する。これにより、外周片27と内周片21で構成される内部空間は、底が閉じた状態になり、以降、その内部空間に補強充填材51を注入していく。なお窓43や連結穴47は、仕切体53で塞がれており、そこから補強充填材51が漏れ出すことはない。そして補強充填材51を隙間なく注入した後、これを覆い隠すように上片22を嵌め込み、上片22についても溶接などで外周片27や内周片21と一体化することで、更新セグメント11が完成する。
【0047】
完成した更新セグメント11は、表面板41と側板44と上下の塞ぎ板45、46で覆われている。また図の左下のように、その内部空間には補強充填材51が隙間なく注入されており、強度と重量が増大する。そして窓43の背後は、仕切体53によって空間が確保されており、そこに連結穴47が露出している。なおここに描いた更新セグメント11は、あくまでも形状例を示すものであり、しかもその製造に際しても、諸条件を考慮して都度最適な方法を導入することができる。
【0048】
図5は、流路55を設けた更新セグメント12の形状例を示している。この更新セグメント12は、先の図4の更新セグメント11と同一形状だが、表面板41と背面板48のそれぞれの中央を円形に切り抜き、そこに円筒形の流路55を嵌め込んでおり、この流路55を下水管などと重なるように配置することで水の流れを確保する。そのため実際の流路55の大きさや配置は、下水管などに基づき、都度、決定することになる。なお流路55は、溶接などで表面板41や背面板48と一体化するほか、更新セグメント12が完成した際、流路55の外周は補強充填材51で取り囲まれる。
【0049】
図6は、底版73に載せる半円形の更新セグメント13の詳細を示している。底版73に載せる更新セグメント13は、この図のように専用のものが必要になる。ただし搬入との兼ね合いから底版73と同等の大きさにはできないため、二個の更新セグメント13で底版73を覆い隠しており、必然的に個々の更新セグメント13は半円形になる。そしてこの更新セグメント13は、図4図5に描いた円弧状の更新セグメント11、12を載せる土台としても機能する。そこでこの更新セグメント13の外周部には、円弧状に直立する部位を設けてある。そのため表面板41、42は、二区画に分割されており、水平方向に展開して底版73を覆い隠す表面板42のほか、この表面板42から直立して直壁74を覆い隠す表面板41が存在する。
【0050】
この更新セグメント13は、前記のように二区画の表面板41、42が存在しており、そのうち水平方向に展開する表面板42の反対側には、平面状の背面板49を配置してあり、この背面板49が底版73に接触する。また直立する表面板41の反対側には、円弧状の背面板48を配置してあり、この背面板48が直壁74と対向する。そして更新セグメント13の上部は、表面板41と背面板48との間を結ぶように塞ぎ板45を配置してあり、この塞ぎ板45には、図4図5に描いた円弧状の更新セグメント11、12が載る。そのほか半円形の更新セグメント13において、その弦に相当する側面には、側板44を配置してある。
【0051】
この更新セグメント13についても、内部空間に補強充填材51を注入してある点や、隣接する更新セグメント11、12、13との連結のため、窓43や連結穴47を設けてある点は、これまでと同様である。なおこの図の更新セグメント13は、二個で底版73を覆い隠しているが、これはあくまでも一例に過ぎず、実際には搬入などの都合から、分割数をより増やすことがある。
【0052】
図7は、図4図5図6の更新セグメント11、12、13を水平方向と垂直方向の両方に隙間なく並べ、隣接する更新セグメント11、12、13同士を連結していく状態を示している。この図では、最下段に図6の更新セグメント13を二個配置してあり、この更新セグメント13の側板44同士を接触させることで円形の土台が形成され、その上に円弧状の更新セグメント11、12を載せていく。そして円弧状の更新セグメント11、12は、その中心角が90度になっており、四個の更新セグメント11、12を水平方向に沿って円形に配置すると、これらが途切れることなく環状に並び、隣接する更新セグメント11、12同士は、双方の側板44が接触するほか、側板44に設けた連結穴47が同心に揃う。なお、最下段の更新セグメント13と直に接触する四個の更新セグメント11、12において、対向する二個に限っては、流路55を設けてある更新セグメント12を使用しているが、この四個の更新セグメント11、12よりも上方では、同様の方法で更新セグメント11を隙間なく積層していく。
【0053】
隣接する更新セグメント11、12、13同士は、ボルト57とナット58で連結するため、双方の窓43が隣接するよう、配慮してある。したがって一方の窓43にボルト57を収容し、その先端部を連結穴47に差し込んで相手方の窓43に到達させ、次にこの窓43にナット58を収容し、これをボルト57に螺合させて締め付けを行うと、更新セグメント11、12、13同士が連結される。なお円弧状の更新セグメント11、12の積層に際しては、レンガ積みと同様、上下の側板44を意図的に離して配置してあり、この図において、上下に隣接する更新セグメント11、12、13同士は、中心から見て45度の差を設けて配置してある。そのため、一方の更新セグメント11、12、13の側板44は、他方の更新セグメント11、12の中央に位置している。
【0054】
図8は、図4図5図6の更新セグメント11、12、13を使用して円断面の既設マンホール71を補修した状態を示している。既設マンホール71は、底版73と直壁74と斜壁76で構成されており、これらが経年や腐食性ガスで劣化した際は、既設マンホール71の内部に一個ずつ更新セグメント11、12、13を搬入していくが、まずは底版73に更新セグメント13を載せる。次に、この更新セグメント13を土台として円弧状の更新セグメント11、12を環状に並べ、以降、直壁74に沿って更新セグメント11を積層していく。なお個々の更新セグメント11、12、13は、搬入都度、隣接する更新セグメント11、12、13とボルト57で連結していく。
【0055】
全ての更新セグメント11、12、13を隙間なく並べ、隣接する更新セグメント11、12、13同士の連結を終えると、全ての更新セグメント11、12、13が一体化する。また更新セグメント11、12、13と直壁74には、意図的に隙間を確保してあり、そこにモルタルなどの接合充填材52を注入することで、更新セグメント11、12、13は直壁74と一体化し、直壁74が強化される。しかも底版73や直壁74の表面が完全に覆い隠されるため、腐食性ガスとの接触が解消され、以降の劣化が抑制され、費用を抑制しながら既設マンホール71の長寿命化が実現する。なお更新セグメント12の流路55は、直壁74の通水路75と重なるように配置してあり、水の流れを阻害することはない。ただしこの箇所に接合充填材52が流入しないよう、施工時に配慮を要する。
【0056】
図9は、これまでの各図とは異なる平面状の更新セグメント14について、その製造過程の具体例を示している。既設マンホール71の内部は様々であり、円断面ではなく矩形断面の場合もあり、そこで使用する更新セグメント14は、必然的にこの図のような平面状になるが、その場合においても、表面板41と側板44と上下の塞ぎ板45、46などで構成されることに変わりはない。そしてこの図の更新セグメント14は、表面板41と側板44と塞ぎ板45、46が一体化した原板31を素材としており、板金加工によって箱状になり、表面板41と側板44と塞ぎ板44、45が区画された状態になる。なお原板31については、腐食を防ぐため、ステンレス鋼板などを使用する。そのほか原板31において、側板44と塞ぎ板45、46になる区画の先端側には、縁部32を設けてある。縁部32は、板金加工の後、表面板41の背後で額縁状の枠を構成する。
【0057】
原板31を所定の形状に切り抜く際、窓43と連結穴47も一体で形成するが、窓43は表面板41の外縁近傍に六箇所配置してある。そしてこの更新セグメント14においても、これまでの各図と同様、個々の窓43に対応して連結穴47を配置してあり、窓43の背後には仕切体53を貼り付ける。なお図の左下には、板金加工によって側板44と塞ぎ板45、46を区画した後、個々の窓43の背後に仕切体53を貼り付けた状態を描いてある。このように板金加工を終えると、側板44と塞ぎ板45、46が隣接することになるが、後の変形を防ぐため、溶接などで双方を一体化する。
【0058】
図の右下には、板金加工の後において、その表面板41を背後に向けた状態を描いてある。このように縁部32は、額縁状の枠を構成しており、また仕切体53によって窓43と連結穴47が塞がれている。なお実際の製造時は、原板31が平面状の状態で縁部32だけを側板44などから直角に折り曲げ、その後、表面板41と側板44との境界などを折り曲げて箱状に仕上げていく。このように更新セグメント14は、原板31の切り出しと板金加工で製造可能であり、特別な設備を必要としないため、製造時の制約が少ない。しかも形状や大きさを自在に決めることができる。
【0059】
図10は、図9の後、更新セグメント14を完成させる過程を示している。原板31に板金加工を行った後、その表面板41を床面などに載せ、次に上方から補強充填材51を注入していき、それが凝固した後、縁部32を覆い隠すように背面板48を載せ、さらに背面板48を側板44などと一体化することで、平面状の更新セグメント14が完成する。なおこの更新セグメント14は、背面板48を省略することも可能である。その場合においても、補強充填材51は縁部32で拘束されるため、脱落することはない。また、隣接する更新セグメント14同士をボルト57で連結する点は、これまでのものと同様であり、ボルト57を窓43に収容し、その先端部を連結穴47から突出させる点も、これまでのものと同様である。
【0060】
図11は、流路55を設けた更新セグメント15の形状例を示している。この更新セグメント15は、図10の更新セグメント14と同様の平面状だが、流路55を構成するため、その一角を切り欠いてある。なおこの更新セグメント15において、切り欠かれた箇所を塞ぐため、円弧状に湾曲させた流路板35を取り付けているほか、最終的には内部空間に補強充填材51を注入する。そしてここでは、四個の更新セグメント15を長方形状に並べることで、その中央に流路55が形成されるが、このように複数の更新セグメント15で流路55を形成することで、その断面積を増大させることができる。
【0061】
図12は、既設マンホール71の角部や隅部で使用する更新セグメント16、17の形状例を示している。図10のような平面状の更新セグメント14は、壁状に直立させることもできれば、横倒しにすることもできる。ただし既設マンホール71の角部では、異なる方向に配置された更新セグメント14同士を円滑に連結できるよう、この図のように、断面がL字状の更新セグメント16、17を使用することがある。なお図の上方の更新セグメント16は、直交する二面が交差する角部で使用し、下方の更新セグメント17は、互いに直交する三面が集まる隅部で使用する。
【0062】
いずれの更新セグメント16、17についても、表面板41、42は二区画に分割されており、一方の表面板42は水平方向に展開しており、他方の表面板41は直立しているほか、それぞれの表面板41、42の反対側には、背面板48、49を配置してある。そして残る面についても、側板44と塞ぎ板45、46を配置してあり、しかもこれらで構成された内部空間には、補強充填材51を注入してある。なお表面板41、42には、これまでのものと同様、窓43を設けてあり、これに対応する連結穴47も設けてある。
【0063】
図13は、図10図11図12の更新セグメント14、15、16、17の配置例を示している。平面状の更新セグメント14は、この図のように、直立させて壁状に並べることもできれば、横倒しにして水平方向に並べることもできる。さらに更新セグメント15を使用することで、流路55を確保することができる。また、異なる方向に配置された更新セグメント14、15同士が隣接する箇所では、専用の更新セグメント16、17を使用している。当然ながら隣接する更新セグメント14、15、16、17同士は、ボルト57で連結する。なお更新セグメント14は、二個を段差なく並べることで、その外縁が正方形になるよう、各部の寸法を調整してある。そのため更新セグメント14を配置する際の自由度が向上する。
【0064】
図14は、図13と同じ構成で更新セグメント14、15、16、17を配置し、既設マンホール71を補修する状態を示している。この図の既設マンホール71の内部は矩形断面であり、その直壁74には通水路75を設けてあり、この既設マンホール71の内部を隙間なく覆い隠すため、先の図13と同じ構成で更新セグメント14、15、16、17を配置してある。なお通水路75と重なる箇所には、流路55を設けた更新セグメント15を使用している。また更新セグメント14、16、17は底版73に載るが、直立する更新セグメント14、15については、直壁74に対して隙間を確保してある。そしてこの隙間に接合充填材52を注入することで、全ての更新セグメント14、15、16、17が既設マンホール71と一体化する。
【符号の説明】
【0065】
11 更新セグメント(円弧状のもの)
12 更新セグメント(円弧状で流路を設けたもの)
13 更新セグメント(底版に載るもの)
14 更新セグメント(平面状のもの)
15 更新セグメント(平面状で流路を設けたもの)
16 更新セグメント(角部で使用するもの)
17 更新セグメント(隅部で使用するもの)
21 内周片
22 上片
23 縁部
25 下片
26 縁部
27 外周片
28 縁部
31 原板
32 縁部
35 流路板
41 表面板
42 表面板
43 窓
44 側板
45 塞ぎ板
46 塞ぎ板
47 連結穴
48 背面板
49 背面板
51 補強充填材
52 接合充填材
53 仕切体
54 丸穴
55 流路
57 ボルト
58 ナット
71 既設マンホール
73 底版
74 直壁
75 通水路
76 斜壁
77 マンホール蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14