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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030209
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】給湯装置および給湯方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/30 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B22D17/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132882
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】進藤 浩二
(57)【要約】
【課題】減速機構の選定に特段の制約がなく、トルクカーブの変動に対応してラドル搬送用モータの負荷を低減させること。
【解決手段】給湯装置1は、ラドル4と、ラドル4を供給先へと搬送可能に構成される搬送部5と、搬送部5を駆動可能に構成される駆動部10と、駆動部10および搬送部5を支持する支持部としてのケーシング6とを備える。駆動部10は、搬送部5によるラドル4の搬送に必要とされる必要トルクTを主に負担するメインモータ11と、サーボモータであって、メインモータ11の容量よりも容量が小さく、メインモータ11と共に必要トルクTを負担するサブモータ12と、メインモータ11およびサブモータ12から出力されるトルクにより回転されて搬送部5を駆動する駆動軸10Dと、サブモータ12のサーボロック制御が可能に構成される駆動回路部122と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を供給先に供給する給湯装置であって、
前記溶湯を炉から汲み出して前記供給先に注入可能に構成されるラドルと、
前記ラドルを前記供給先へと搬送可能に構成される搬送部と、
前記搬送部を駆動可能に構成される駆動部と、
前記駆動部および前記搬送部を支持する支持部と、を備え、
前記駆動部は、
前記搬送部による前記ラドルの搬送に必要とされる必要トルクを主に負担するメインモータと、
サーボモータであって、前記メインモータの容量よりも容量が小さく、前記メインモータと共に前記必要トルクを負担するサブモータと、
前記メインモータおよび前記サブモータから出力されるトルクにより回転されて前記搬送部を駆動する駆動軸と、
前記サブモータのサーボロック制御が可能に構成される駆動回路部と、を備える、
給湯装置。
【請求項2】
前記サーボロック制御により、前記ラドルの搬送過程に対応するトルクカーブの一部の領域に亘り前記必要トルクの一部が負担され、
前記一部の領域としてのサーボロック制御領域は、前記トルクカーブにおけるピークのトルクを含む、
請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記サーボロック制御領域において、前記サブモータには、定格トルク以上の負荷が、前記サブモータの過負荷特性に基づき許容される時間よりも短い時間に亘り与えられる、
請求項2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記メインモータおよび前記サブモータの一方の出力軸は、前記駆動軸に一体に設けられ、
前記駆動部は、前記メインモータおよび前記サブモータの他方から出力されるトルクを所定の減速比に基づいて増加させて前記駆動軸に伝達する減速部を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記減速部は、
前記サブモータの出力軸が一体に設けられる第1ギヤと、前記メインモータの出力軸および前記駆動軸が一体に設けられる第2ギヤと、を含み、
前記サブモータから出力されるトルクを前記第1ギヤおよび前記第2ギヤを介して前記駆動軸に伝達する、
請求項4に記載の給湯装置。
【請求項6】
ラドルを搬送可能に構成される給湯装置により溶湯を供給先に供給する給湯方法であって、
前記ラドルの搬送過程に対応するトルクカーブに従い、前記ラドルの搬送に必要とされる必要トルクを主にメインモータに負担させるとともに、サーボモータであって前記メインモータの容量よりも容量が小さいサブモータにも前記必要トルクを負担させ、
前記トルクカーブにおける一部の領域においては、前記サブモータに備わるサーボロック制御により前記必要トルクの一部を負担させる、給湯方法。
【請求項7】
前記一部の領域としてのサーボロック制御領域には、前記トルクカーブにおけるピークのトルクを含め、
前記サーボロック制御領域において、前記サブモータには、定格トルク以上の負荷を、前記サブモータの過負荷特性に基づき許容される時間よりも短い時間に亘り与える、
請求項6に記載の給湯方法。
【請求項8】
前記ラドルを支持する搬送部を駆動する駆動軸には、前記メインモータの出力軸および前記サブモータの出力軸のうちの前記駆動軸と一体に設けられる一方からトルクを伝達するとともに、
前記駆動軸には、前記メインモータの出力軸および前記サブモータの出力軸のうちの他方から、所定の減速比に基づいてトルクを増加させる減速部を介してトルクを伝達する、
請求項6または7に記載の給湯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置および給湯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造に用いられる溶湯を例えばダイカストマシンに備わる射出スリーブに供給するため、炉から溶湯をラドルにより汲み出して供給先に搬送する給湯装置が使用されている。ラドルは、モータ、減速機、およびラドルを支持するリンク式アーム等を含む搬送機構により炉から供給先まで搬送される。
【0003】
溶湯の入ったラドルを供給先へと搬送する搬送モータの容量は、ラドルの可搬重量に応じて選定される。従来、可搬重量の大きい大型の給湯装置は、搬送モータの負荷を低減させるために、アームに設けられるカウンターウェイトを備えている。大容量のモータの調達コストは極端に高いので、モータ容量を抑えるためにカウンターウェイトが使用される。
しかしながら、カウンターウェイトの設置により、装置の外形・動作範囲がより大きくなるので、カウンターウェイトとの干渉を避けるために周辺の設備の配置が制約される。また、慣性力が大きくなるため走行制御が難しい。
【0004】
搬送モータの負荷を低減させるため、カウンターウェイトの他には、ばねやダンパー等が用いられる。例えば、特許文献1に記載の自動給湯機のモータ負荷軽減装置は、給湯アームを駆動する駆動軸に設けられるウォームギヤ(ウォームおよびウォームホイール)と、ねじりコイルばねとを備えている。かかる負荷軽減装置は、カウンターウェイトを備えていない。
【0005】
ラドルの搬送に必要なトルクは、搬送過程に亘り変化する。特許文献1によると、給湯アームがバランス状態となって搬送に必要なトルクが0となる軸角度である100度を基準として、正のトルクまたは負のトルクが要求されるところ、ねじりコイルばねは、自由状態となる100度を基準として、搬送モータの負荷の方向とは逆の方向にトルクを発生させる。つまり、ねじりコイルばねが、ねじられることで発生させるトルクの分だけ、搬送モータに必要なトルクを減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平7-23096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
給湯装置のアームを駆動する搬送モータの負荷を低減させるためにカウンターウェイト、ばね、ダンパー等を用いる場合は、所定の可搬重量のラドルの搬送に必要なトルクの特性に基づき、モータ、減速機、および負荷低減手段としてのばね等の機械要素を適切に設計する必要がある。
特許文献1のねじりコイルばねによりモータの負荷を低減させるためには、給湯アームの駆動軸の角度に対するトルクの特性(トルクカーブ)は変動しないことが条件となる。
【0008】
しかしながら、ラドルの交換等による可搬重量の増減、リンク機構のレバー比の変更によるラドルの搬送軌跡の調整、あるいは減速機の交換等により、トルクカーブは変動する。トルクカーブが変動すれば、特許文献1のねじりコイルばねによりトルクを発生させたとしても、必ずしもモータの負荷を低減させることはできない。特許文献1のリンク機構のレバー比を変更する一つの試算によれば、所定の軸角度領域に亘り、モータの負荷は増加してしまう。
【0009】
また、特許文献1のねじりコイルばねは、ウォームホイールと、駆動機構のケーシングとの間に設けられるので、特許文献1の負荷軽減装置には、減速機構としてウォームギヤを採用せざるを得ない。
【0010】
本発明は、ラドル搬送用モータと共に用いられる減速機構の選定に特段の制約がなく、トルクカーブの変動に対応してラドル搬送用モータの負荷を低減させることが可能な給湯装置、および給湯方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、溶湯を供給先に供給する給湯装置であって、溶湯を炉から汲み出して供給先に注入可能に構成されるラドルと、ラドルを供給先へと搬送可能に構成される搬送部と、搬送部を駆動可能に構成される駆動部と、駆動部および搬送部を支持する支持部と、を備える。
駆動部は、搬送部によるラドルの搬送に必要とされる必要トルクを主に負担するメインモータと、サーボモータであって、メインモータの容量よりも容量が小さく、メインモータと共に必要トルクを負担するサブモータと、メインモータおよびサブモータから出力されるトルクにより回転されて搬送部を駆動する駆動軸と、サブモータのサーボロック制御が可能に構成される駆動回路部と、を備える。
【0012】
本発明は、ラドルを搬送可能に構成される給湯装置により溶湯を供給先に供給する給湯方法であって、ラドルの搬送過程に対応するトルクカーブに従い、ラドルの搬送に必要とされる必要トルクを主にメインモータに負担させるとともに、サーボモータであってメインモータの容量よりも容量が小さいサブモータにも必要トルクを負担させ、トルクカーブにおける一部の領域においては、サブモータに備わるサーボロック制御により必要トルクの一部を負担させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ラドルの搬送に要する必要トルクをメインモータと、サーボロック制御が可能なサブモータとに按分させ、サーボロック制御の保持トルクにより必要トルクを抑えることによれば、カウンターウェイトやばね等を備えることなく、負荷を低減させてメインモータの容量を抑えることが可能となる。
そうすると、必要トルクを1台のモータのみで負担する場合のモータの調達コストと比べて、メインモータ、サブモータ、およびそれらに付随する減速機構の全体として調達コストを低減させることが可能になるとともに、モータおよび減速機構の小型化により給湯装置のサイズを抑えることができる。
【0014】
本発明によれば、従来、負荷を低減させるために使用されてきたカウンターウェイトや、ばね、ダンパー等を備える必要なく、モータの負荷低減を実現することができる。そのため、カウンターウェイトやばね等の負荷低減手段を備えることによる大型化を避けて、コンパクトな給湯装置を提供することが可能となる。給湯装置がコンパクトであるならば、周辺設備を給湯機に隣接して容易に配置することができる。
【0015】
サーボモータとしてのサブモータによる電気的な制御によれば、カウンターウェイトやばね等による機械的な力とは違い、ラドルの搬送過程における適宜な位置の範囲に亘り、駆動部の出力トルクを必要トルクに対して適切に制御することが可能となる。そのため、搬送部の変位の軌跡やレバー比の設計変更、可搬重量の増減等に起因して必要トルクのカーブが変動したとしても、負荷を低減させることが可能となる。
本発明によれば、トルクカーブにおいて、負荷を低減させたい領域の必要トルクのみを他の領域には影響なく低減させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、減速機構としてウォームギヤを採用する必要がないので、給湯装置の駆動部にウォームギヤが採用される場合の弊害を避けることができる。例えば、搬送部の動作制御不能により、搬送部が下降を続けて炉内の溶湯に浸かり、機械的ストッパーにより停止したとしても、ウォームギヤのセルフロック(自動締まり)が働く場合とは異なり、メインモータのブレーキを解放すれば炉内の溶湯から搬送部およびラドルを引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る給湯装置の正面図である。
図2】(a)~(d)は、搬送部を構成するリンク機構の動作によりラドルが前方の供給先に向けて搬送される過程を示す図である。
図3】給湯装置の側面模式図である。
図4】ラドルを支持する搬送部を駆動する駆動部の模式図である。
図5】ラドルの搬送過程に亘り、ラドルの搬送に必要なトルクの特性(トルクカーブ)を示すグラフである。
図6】サブモータの過負荷特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
〔全体構成〕
図1に示す給湯装置1は、鋳造に用いられる溶湯を例えばダイカストマシンの射出装置に備わる射出スリーブに供給する。給湯装置1は、図1に模式的に図示されている炉2に貯留されている溶湯3をラドル4により汲み出し、供給先としての図示しない射出スリーブの注湯用開口の位置まで搬送する。
本実施形態の給湯装置1は、ラドル4により搬送可能な溶湯3の重量(可搬重量が)大きい、大型の給湯装置に相当する。
【0019】
溶湯3は、例えば、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金等の溶融状態にある金属に相当する。炉2は、溶湯3を溶融状態に保持する保持炉、または金属を溶解させて溶融状態に保持する溶解兼保持炉に相当する。
【0020】
給湯装置1は、ラドル4と、ラドル4を供給先へと搬送可能に構成される搬送部5と、搬送部5を駆動可能に構成される駆動部10と、駆動部10および搬送部5を支持する支持部としてのケーシング6と、ラドル4を傾転させる図示しない傾転用モータと、湯面3Aを検知可能に構成される湯面検知センサ7とを備えている。
【0021】
〔搬送部の構成および作用〕
搬送部5は、図1に構成の一例が示されているように、駆動部10の駆動軸10Dに設けられるリンク機構5Lを含む。駆動軸10Dは水平に配置されている。リンク機構5Lは、複数のリンク50~54からなる。
駆動リンク50の一端部501は、ケーシング6に固定される駆動軸10Dに一体に設けられることが好ましい。本明細書において「一体に設けられる」ことは、一体形成されることのみを言わない。「一体に設けられる」ことには、例えばキーおよびキー溝によって一体に組み付けられることも含まれる。
駆動リンク50の他端部502には、第1リンク51がジョイントJ0により連結される。
【0022】
第1リンク51の一端部には、ジョイントJ1により第2リンク52が連結され、この第2リンク52はジョイントJ2により第3リンク53に連結される。ジョイントJ2は、ケーシング6に固定される。リンク機構5Lは、駆動軸10Dの位置およびジョイントJ2の位置の2点でケーシング6に固定される。
【0023】
第4リンク54は、第3リンク53にジョイントJ3により連結されるとともに、第1リンク51にジョイントJ4により連結される。ジョイントJ0は、ジョイントJ1とジョイントJ4との間に配置される。
第4リンク54は、ジョイントJ3からジョイントJ4の位置を超えて直線的に延在している。第4リンク54の先端部541には、ラドル4が傾転軸42を中心に傾転可能に支持される。
【0024】
湯面検知センサ7は、電圧が印加される一対の導体としての検知棒71,72を含む。一対の検知棒71,72は、第4リンク54に沿って配置され、第4リンク54に支持されている。炉2内の溶湯3に向けて搬送部5が下降し、検知棒71,72のそれぞれの下端が溶湯3に接触すると、検知棒71,72および溶湯3を含んで形成される閉回路を電流が流れることにより、湯面3Aの位置を検知可能である。この湯面3Aの位置に対してラドル4の進入深さを決めることができる。
なお、湯面検知センサ7は、溶湯3への接触により湯面3Aを検知するものには限らず、レーザー等を用いて湯面3Aを検知可能に構成される非接触式のセンサであってもよい。
【0025】
駆動リンク50は、駆動部10により駆動軸10Dに伝達されるトルクにより駆動軸10Dを中心に回転する。図1における時計回り方向D1に駆動リンク50が回転すると、搬送部5に支持されているラドル4が下降しつつ、炉2に向けて後退する。図1は、搬送部5が後退限RLにある状態を示している。反時計回り方向D2に駆動リンク50が回転すると、ラドル4は上昇しつつ、溶湯の供給先に向けて前進する。
【0026】
搬送部5およびラドル4は、例えばダイカストマシンの制御装置から駆動部10および傾転用モータに送られる指令に基づいて例えば以下のように動作する。
図1に示すように、後退限RLでラドル4を時計回り方向d1へと傾転させ、炉2内の溶湯3にラドル4を進入させた後、ラドル4を反時計回り方向d2へと傾転させることにより、鋳造する製品に応じた量の溶湯3をラドル4により汲み出す。
【0027】
その後は、図2(a)~(d)に搬送部5によるラドル4の搬送過程を示すように、駆動リンク50の回転に従いリンク機構5Lを変位させながらラドル4を前進限FL(図2(d)の位置)まで搬送する。そして、供給先における注湯位置(例えば射出スリーブの注湯用開口の上方)でラドル4を反時計回り方向d2に傾転させると、注ぎ口41から溶湯が例えば射出スリーブの内側に注入される。
【0028】
〔駆動部の構成〕
図1図3、および図4を参照し、駆動部10の構成について説明する。
駆動部10は、メインモータ11と、サブモータ12と、減速部13と、駆動軸10Dとを備えている。これらはいずれもケーシング6に設けられている。
図1に示すように、ケーシング6を駆動軸10Dの軸線方向に沿って見たとき(正面視I)、搬送部5は、ケーシング6の正面側6Fで駆動軸10Dに設けられている。一方、メインモータ11の出力軸11Aと、サブモータ12の出力軸12Aとは、図3に示すように、ケーシング6の背面側6Bに設けられ、それらの出力軸11Aと出力軸12Aとは、互いに平行に配置されている。
【0029】
(メインモータ)
メインモータ11は、ラドル4の搬送に必要なトルク(必要トルクT)を主に負担する。メインモータ11は、例えば三相交流が印加される誘導モータであり、モータ本体110と、モータ本体110の図示しない軸に接続される減速機111(ギヤヘッド)と、出力軸11Aと、駆動回路部112と、電磁ブレーキ113とを備えている。
メインモータ11が、汎用モータであって、駆動リンク50の回転角度を取得する場合には、駆動軸10Dには図示しないエンコーダが設けられる。メインモータ11がサーボモータである場合は、メインモータ11に備わるエンコーダを用いて駆動リンク50の回転角度を取得することができる。
【0030】
モータ本体110は、図示しないステータおよびロータと、ケース11Cとを有している。減速機111は、図示しない歯車列を含んでいる。出力軸11Aは、モータ本体110の軸に対して平行に配置される。
【0031】
電磁ブレーキ113は、湯面検知センサ7により湯面3Aが検知されると作動可能に構成される。ラドル4を炉2に進入させた後に搬送部5の下降を停止させる制御は、湯面検知センサ7の検知信号をトリガーとして行われる。このとき、例えばダイカストマシンの制御装置からの指令により電磁ブレーキ113への通電が遮断されると、電磁ブレーキ113が直ちに作動する。
【0032】
また、駆動回路部112等の故障によりメインモータ11の電源が遮断された場合にも、直ちに電磁ブレーキ113が作動する。そのため、故障時の搬送部5の自由落下を避けることができる。
【0033】
つまり、電磁ブレーキ113は無励磁作動型であり、詳細な図示を省略するが、例えば、ケース11Cに固定されるブレーキステータと、ブレーキアーマチュアと、ばね部材とを備えている。ブレーキステータのコイルへの通電が停止され、非励磁のとき、ブレーキアーマチュアはばね部材によりロータに押圧され、ブレーキアーマチュアの表面のライニングがロータに密着する。このとき、ライニングとロータとの摩擦力によりロータの回転が制動される。
ブレーキステータのコイルが励磁されている間は、磁力によりブレーキアーマチュアがばね部材の弾性力に抗してブレーキステータに吸引される。このとき電磁ブレーキ113は解放されており、ロータは回転可能である。
【0034】
図示しない交流電源および駆動回路部112によりメインモータ11の負荷に応じた電流がステータコイルに流れることで、ロータが回転し、モータ本体110からトルクが出力される。そのトルクは、減速機111の歯車列のギヤ比に応じた減速比に基づいて増加し、出力軸11Aから出力されて駆動軸10Dへと伝達される。出力軸11Aは駆動軸10Dに一体に設けられていることが好ましい。
【0035】
なお、メインモータ11および減速機111に代えて、減速機構としての歯車列をケース11Cに内蔵するギヤードモータをメインモータとして採用することができる。これはサブモータ12についても同様である。
【0036】
(サブモータ)
次に、サブモータ12は、メインモータ11と共に必要トルクTを負担する。サブモータ12の容量は、メインモータ11の容量よりも小さい。
このサブモータ12は、位置、速度、およびトルクのうち少なくとも位置を制御可能に構成されるサーボモータに相当する。
【0037】
サブモータ12は、例えば、三相交流が印加される誘導モータであり、モータ本体120と、モータ本体120の図示しない軸に接続される減速機121(ギヤヘッド)と、出力軸12Aと、エンコーダ12Eおよびトルクセンサ12Tと、駆動回路部122とを備えている。
【0038】
モータ本体120は、図示しないステータおよびロータと、ケース12Cとを有している。減速機121は、図示しない歯車列を含んでいる。出力軸12Aは、モータ本体120の軸に対して平行に配置される。
【0039】
図示しない交流電源および駆動回路部122によりサブモータ12の負荷に応じた電流がステータコイルに流れることで、ロータが回転し、モータ本体120からトルクが出力される。そのトルクは、減速機121の歯車列のギヤ比に応じた減速比に基づいて増加し、出力軸12Aから出力される。サブモータ12の出力トルクは、減速部13による減速によりさらに増加し、駆動軸10Dへと伝達される。
【0040】
(駆動回路部)
駆動回路部122は、エンコーダ12Eにより出力軸12Aの回転位置を検知しつつ、フィードバック制御等の位置制御を行う。本実施形態の駆動回路部122は、エンコーダ12Eを用いた位置検知による位置決め制御、およびトルクセンサ12Tを用いたトルク制御も可能である。
【0041】
駆動回路部122は、サーボロック制御の機能を備えている。サーボロック制御は、サーボモータを位置制御により停止位置(目標位置)に保持しようとすることを言う。駆動回路部122は、サーボロック制御の開始時の位置である目標位置から、外力によってサブモータ12の位置がずれると、目標位置に戻そうとステータコイルに電流を印加することで、外力に抵抗して目標位置に保持するための保持トルクを出力させる。
【0042】
本実施形態におけるサブモータ12のサーボロック制御は、必要トルクTの一部をサブモータ12に負担させるために行われる。この場合の外力は、メインモータ11から出力されるトルクにより、駆動軸10D、第2ギヤ132、および第1ギヤ131を介して出力軸12Aに伝達される外力である。
【0043】
また、駆動回路部122は、出力トルクの上限値を設定するトルク制限機能を備えていることが好ましい。トルク制限機能によれば、ラドル4の交換等による可搬重量の増減に対応することが可能である。可搬重量を増加させる場合、従来のように搬送部5にカウンターウェイトを追加する必要はなく、可搬重量の増加分に応じて、出力トルクの上限値を増加させれば良い。
【0044】
(減速部)
減速部13は、図4に構成の一例を示すように、サブモータ12の出力軸12Aが一体に設けられる第1ギヤ131と、メインモータ11の出力軸11Aおよび駆動軸10Dが一体に設けられる第2ギヤ132とからなる。第1ギヤ131および第2ギヤ132のいずれも、例えば平歯車であり、噛み合わせた状態でケーシング6の内側に設けられている。ケーシング6の内側には、出力軸11A,12Aおよび駆動軸10Dを支持する図示しない軸受も設けられている。
【0045】
第1ギヤ131の歯数をn1、第2ギヤ132の歯数をn2とすると、n1<n2である。第1ギヤ131と第2ギヤ132とのギヤ比は1:(n2/n1)であり、減速比は、1/(n2/n1)に相当する。そうすると、出力軸12Aから出力されるトルクは、基本的には(n2/n1)倍に増加する。
【0046】
出力軸11Aおよび出力軸12Aは、減速部13を介して、ケーシング6の背面側6Bで平行に配置されている。この場合は、2つのモータ11,12がケーシング6の同じ側(背面側6B)に設置されるので、モータ11,12を設置するためのスペースの低減に寄与する。
減速部13は、駆動部10の必須構成ではないが、駆動部10が減速部13を備えていない場合は、例えば、ケーシング6の背面側6Bに設けられたメインモータ11の出力軸11Aが駆動軸10Dの一端に接続され、ケーシング6の正面側6Fに設けられたサブモータ12の出力軸12Aが駆動軸10Dの他端に接続されるので、駆動部10が駆動軸10Dの方向に厚くなる。
しかも、モータ11,12のいずれか一方がケーシング6の正面側6Fに設置されるとすれば、例えば図2(c)、(d)に示すように、搬送部5の一部(第3リンク53または第4リンク54)が、駆動軸10Dと同一軸線上に設置されたモータと干渉してしまう。これを避けようとすれば搬送部5を含めて給湯装置1がさらに厚くなる。
【0047】
減速部13の機構には特段の制約がないので、減速部13の設計自由度は高い。例えば、第1ギヤ131および第2ギヤ132は、はすば歯車(helical gear)であってもよい。減速部13が、第1ギヤ131と第2ギヤ132との間でトルクを伝達可能な1つ以上の中間ギヤを備えていてもよい。
減速部13と接続されるモータ11,12の容量を抑えるため、減速部13の効率は出来るだけ高いことが好ましい。また、ケーシング6のサイズを抑えるため、減速部13の歯車列は出来る限りコンパクトに配置されることが好ましい。
ここで、メインモータ11およびサブモータ12の配置が本実施形態とは逆の構成、つまり、サブモータ12が駆動軸10Dに設けられ、メインモータ11が減速部13を介して駆動軸10Dにトルクを伝達する構成も許容される。但し、その場合は、減速部13にはモジュールの大きな歯車が必要となる。メインモータ11からサブモータ12に伝達される大トルクに適した大きなモジュールの歯車が必要となるためである。この場合、ギヤ比の関係から、歯車の径の大小関係が逆となる。つまり、本実施形態の第1ギヤ131の位置には大径のギヤが配置され、本実施形態の第2ギヤ132の位置には小径のギヤが配置されることとなる。
減速部13の歯車のサイズを出来るだけ抑えて、歯車のコストおよびバックラッシを抑える観点からは、本実施形態のように、メインモータ11の出力軸11Aが駆動軸10Dに設けられ、サブモータ12が減速部13を介して駆動軸10Dに接続される構成が有利である。本実施形態の減速部13は、第1ギヤ131から第2ギヤ132へと、大部分がメインモータ11により負担される必要トルクTの残余のトルクを伝達するので、第1ギヤ131および第2ギヤ132のモジュールは小さい。
【0048】
減速部13には、かさ歯車(例えばマイタギヤ)が含まれていてもよい。例えば、モータ本体110の出力軸が鉛直方向に配置される場合は、鉛直軸の周りに回転するトルクが、マイタギヤを介し、水平軸の周りに回転するトルクに変換されて駆動軸10Dに伝達されていてもよい。
なお、減速部13の機構としてウォームギヤを採用することは、後述する理由から避けることが好ましい。
【0049】
減速部13は、適宜な方法で潤滑される。潤滑方式としては、グリースを用いるグリース潤滑方式や、潤滑油の滴下、噴射、噴霧等による強制潤滑方式が採用されることが好ましい。こうした潤滑方式は、ウォームギヤに採用されるオイルバス(油浴)潤滑方式と比べて、炉2の近くの高温環境下における使用に適する。
【0050】
〔ラドルの搬送に必要なトルク特性、それに応じたモータの選定〕
ラドル4の搬送に必要とされる必要トルクTは、例えば図5に駆動リンク50の回転角度θに対応する必要トルクTの特性(トルクカーブ)の一例を示すように、搬送過程に亘り変化する。図5に示すトルクカーブは、解析および計算に基づく。
図5は、後退限RLから前進限FLに向けてラドル4を搬送する搬送過程に亘り、溶湯の入ったラドル4の搬送に必要とされる必要トルクTを示している。図5に示す(a)は、図2の(a)と対応している。(b)および(d)も同様である。
【0051】
必要トルクTは、搬送過程の途中で、駆動軸10Dに出力されるトルクとつり合い、「0」となる。図5においては、図2(b)に示すように駆動リンク50が鉛直方向に一致する回転角度θを基準としている。図5に示すトルクカーブにおいては、必要トルクTが出力軸11A,12Aから見て反時計回り方向D2の正の値となる領域(例えば(a)と(b)との間)と、(a)よりも後退限RL側のように、出力軸11A,12Aから見て時計回り方向D1の負の値となる領域とが存在する。後退限RL側の必要トルクTは、前進限FL側の必要トルクTと比べて相対的に絶対値が大きい。
ここで、(a)よりも後退限RL側では、基準回転角度θに対して回転角度θの絶対値が大きくなるほど必要トルクTは増加する。つまり、必要トルクTのピーク(以下ピークトルクP)は、後退限RLにある。
【0052】
モータを選定する際には、必要トルクTに対応する負荷と、モータの容量とが考慮される。種々のモータが存在するところ、総じて、モータの容量が大きいほど、モータの調達コストは増加する。特に、容量が5kW以上のモータについては、容量に対して調達に要するコストが指数関数的に増加してしまう。
そこで、本実施形態においては、必要トルクTを主に担うメインモータ11として、現実的なコストにより調達可能な範囲で、定格トルクが出来るだけ大きいモータを選定しつつ、必要トルクTの不足分をサブモータ12により補う。ここで、サーボロック制御による保持トルクを利用してサブモータ12を必要最小限の容量に抑えるため、サブモータ12としてサーボモータを採用する。そのサーボモータは、メインモータ11と比べて容量が十分に小さい、安価なモータであってよい。
メインモータ11の選定にあたっては、例えば、必要トルクTの平均値およびピーク値がメインモータ11の定格トルクを下回るように、定格に対する平均値およびピーク値のそれぞれの割合を設定する。
【0053】
必要トルクTの不足分は、例えば、図5に示すトルクカーブにおいて、ピークトルクPを含む領域12R(サーボロック制御領域)に相当する。この領域12Rに亘り、サブモータ12のサーボロック制御が行われる。そうすると、メインモータ11のトルクが出力される駆動軸10Dの回転に抗して、第1ギヤ131および第2ギヤ132の回転速度を減少させつつサブモータ12の保持トルクが発生する結果、領域12Rにおける必要トルクTの絶対値は、例えば図5に破線で示すように減少する。ピークトルクPは、ピークトルクPへと変化する。
なお、サーボロック制御領域12Rにおける値の変動は、搬送部5を動作させる際の慣性トルクによる。
【0054】
〔必要容量等の試算例〕
例えば、サブモータ12の定格トルク分、メインモータ11のトルクを負担させることができる。単一のモータを採用する場合と、メインモータ11およびサブモータ12を採用する場合との容量、トルク、および減速比に関する試算の一例を示す。
<メインモータ案1>
容量:8kW
定格トルク:75N・m
減速比:1/220
モータトルク:75×220=16500[N・m]
【0055】
<メインモータ案2>
容量:6kW
定格トルク:57N・m
減速比:1/220
モータトルク:57×220=12540[N・m]
【0056】
<サブモータによるトルク低減値>
下記条件を仮定した。
サブモータの定格トルク:10N・m
減速比:1/100
第1ギヤおよび第2ギヤによる減速比:1/5
トルク低減値:10×100×5=5000[N・m]
【0057】
ここで、1台のモータのみを採用する場合は、ピークトルクPを16000N・mと想定すれば、メインモータ案1のように8kWのモータが必要となる。しかし、本実施形態のようにメインモータ11とサブモータ12とを併用する場合は、サブモータ12によるトルク低減値を加味すると、ピークトルクPは、16000-5000=11000[N・m]となり、8kWに対して1サイズ下の6kWの容量のモータを採用可能となる。モータの容量と調達コストとの相関関係から、8kWから6kWへの容量減少により、大幅にコストを下げることができる。可搬重量が大きいために必要トルクTが大きくなるほど、モータ容量の減少によるコストメリットが大きくなる。例えば3.7kWから2.2kWへと容量を減少させる場合よりも、8kWから6kWへと減少させる方が大幅にコストを下げることができる。
【0058】
図6は、サブモータ12の過負荷特性を示すグラフである。横軸は、サブモータ12の負荷率を示し、対数軸である縦軸は、連続作動時に異常が発生するまでの所要時間を示している。実線L1は、サーボロック制御が行われない場合の過負荷特性を示し、破線L2は、サーボロック制御が行われる場合の過負荷特性を示している。
上述の領域12Rにおいて、サブモータ12には、定格トルク以上の負荷が与えられる。但し、領域12Rの回転角度範囲に相当する時間は、サブモータ12の過負荷特性に基づき許容される時間よりも短い。そのため、サブモータ12のサーボロック制御が必要トルクTの領域12Rに限って行われ、残りの領域においてはサーボロック制御が行われないことにより、サブモータ12の異常を回避することができ、かつ、メインモータ11に対して不必要な負荷を掛けないようにすることができる。
【0059】
〔本実施形態による効果〕
以下、本実施形態による主な効果を列記する。
ラドル4の搬送に必要なトルクTに対してメインモータ11の容量を抑えつつ、必要最小限の容量をサーボロック制御が可能なサブモータ12に与えて、両モータ11,12に必要トルクTを負担させることによれば、例えば可搬重量が50~100kg、あるいはそれ以上の大型の給湯装置1を駆動する駆動部10でありながら、カウンターウェイトや、ばねを備えることなく、負荷を低減させることができる。そのため、メインモータ11の容量を抑え、かつメインモータ11の減速機111の減速比を下げることが可能となる。
そうすると、必要トルクTを1台のモータのみで負担する場合のモータの調達コストと比べて、メインモータ11、サブモータ12、および減速部13の全体として調達コストを低減させることが可能になるとともに、モータ11および減速機111の小型化により給湯装置1のサイズを抑えることができる。
【0060】
本実施形態によれば、動作領域が拡大するカウンターウェイトや、駆動軸10Dの方向にケーシング6が厚くなりがちなばねやダンパー、あるいはウォームギヤを備えることによる大型化を避けて、コンパクトな給湯装置1を提供することが可能となる。給湯装置1がコンパクトであるならば、例えば、金型の清掃や金型への離型剤の塗布等に必要な装置(例えばスプレー装置等)、および作業床を含む周辺設備を給湯機1に隣接して容易に配置することができ、また、給湯装置1の梱包費や輸送費の節減に貢献する。
【0061】
サーボモータとしてのサブモータ12による電気的な制御によれば、カウンターウェイトやばね等による機械的な力とは違い、ラドル4の搬送過程における適宜な角度範囲に亘り、駆動部10の出力トルクを必要トルクTに対して適切に制御することが可能となる。そのため、リンク機構5Lの変位の軌跡やレバー比の設計変更、可搬重量の増減等に起因して必要トルクTのカーブが変動したとしても、負荷を低減させることが可能となる。
【0062】
特許文献1のように負荷低減手段としてねじりコイルばねを用いる場合は、リンク機構のレバー比によっては、例えば、トルクカーブの後退限RL側の領域において負荷を低減できるとしても前進限FL側の領域では負荷が増加することが起こりうる。それに対し、本実施形態によれば、負荷を低減させたい領域12Rの必要トルクTのみを他の領域には影響なく低減させることができる。
【0063】
特許文献1においては、ねじりコイルばねを設置するためにウォームギヤが用いられる。しかし、ウォームギヤは、特に、セルフロック(出力側からは回転しない)に起因する下記の理由から給湯装置1には不向きである。
搬送部5の動作制御不能により、後退限RLの位置で駆動リンク50がモータ11,12からの出力トルクにより回転を続けると、ラドル4と比べて耐熱性に劣る搬送部5の第4リンク54等が炉2内の溶湯3に浸かってしまう。このとき、減速部13にウォームギヤが採用されているのならば、ウォームホイール側からウォームへと回転を伝達することはできないので、炉2内の溶湯3に第4リンク54およびラドル4が浸かったままとなる。つまり、モータ11,12の回転によりウォームが回転しない限り、第4リンク54およびラドル4を溶湯3から引き上げることができない。
【0064】
本実施形態のように、減速部13にウォームギヤが採用されていないのならば、非常停止によりモータ11,12の回転が停止しても、電磁ブレーキ113を手動で解放し、第4リンク54およびラドル4を炉2内の溶湯3から手動で引き上げることができる。
【0065】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
搬送部5は、上記実施形態のような閉リンク式には限らず、例えば、特開2020-157356号公報に開示されているように、第1モータにより駆動されて揺動可能な第1アームと、第1アームに支持されるとともに、第2モータにより駆動されて揺動可能な第2アームとを備えるものであってもよい。
【0066】
〔付記〕
以上の開示より、以下の構成が把握される。
(1)溶湯を供給先に供給する給湯装置であって、
前記溶湯を炉から汲み出して前記供給先に注入可能に構成されるラドルと、
前記ラドルを前記供給先へと搬送可能に構成される搬送部と、
前記搬送部を駆動可能に構成される駆動部と、
前記駆動部および前記搬送部を支持する支持部と、を備え、
前記駆動部は、
前記搬送部による前記ラドルの搬送に必要とされる必要トルクを主に負担するメインモータと、
サーボモータであって、前記メインモータの容量よりも容量が小さく、前記メインモータと共に前記必要トルクを負担するサブモータと、
前記メインモータおよび前記サブモータから出力されるトルクにより回転されて前記搬送部を駆動する駆動軸と、
前記サブモータのサーボロック制御が可能に構成される駆動回路部と、を備える、
給湯装置。
【0067】
(2)前記サーボロック制御により、前記ラドルの搬送過程に対応するトルクカーブの一部の領域に亘り前記必要トルクの一部が負担され、
前記一部の領域としてのサーボロック制御領域は、前記トルクカーブにおけるピークのトルクを含む、(1)に記載の給湯装置。
【0068】
(3)前記サーボロック制御領域において、前記サブモータには、定格トルク以上の負荷が、前記サブモータの過負荷特性に基づき許容される時間よりも短い時間に亘り与えられる、(2)に記載の給湯装置。
【0069】
(4)前記メインモータおよび前記サブモータの一方の出力軸は、前記駆動軸に一体に設けられ、
前記駆動部は、前記メインモータおよび前記サブモータの他方から出力されるトルクを所定の減速比に基づいて増加させて前記駆動軸に伝達する減速部を備える、(1)から(3)のいずれか一項に記載の給湯装置。
【0070】
(5)前記減速部は、
前記サブモータの出力軸が一体に設けられる第1ギヤと、前記メインモータの出力軸および前記駆動軸が一体に設けられる第2ギヤと、を含み、
前記サブモータから出力されるトルクを前記第1ギヤおよび前記第2ギヤを介して前記駆動軸に伝達する、(4)に記載の給湯装置。
【0071】
(6)前記搬送部は、前記駆動軸の軸線方向に前記支持部を見るときの前記支持部の正面側で前記駆動軸に設けられ、
前記減速部を介して接続される前記メインモータの前記出力軸と前記サブモータの前記出力軸とは、前記支持部の背面側で平行に配置される、(4)または(5)に記載の給湯装置。
【0072】
(7)前記メインモータおよび前記サブモータはそれぞれ、減速機構を備えている、(1)から(6)のいずれか一項に記載の給湯装置。
【0073】
(8)前記炉内の湯面を検知可能に構成される湯面検知センサを備え、
前記メインモータは、前記湯面検知センサにより前記湯面が検知されると作動可能に構成される電磁ブレーキを備える、(1)から(7)のいずれか一項に記載の給湯装置。
【0074】
(9)ラドルを搬送可能に構成される給湯装置により溶湯を供給先に供給する給湯方法であって、
前記ラドルの搬送過程に対応するトルクカーブに従い、前記ラドルの搬送に必要とされる必要トルクを主にメインモータに負担させるとともに、サーボモータであって前記メインモータの容量よりも容量が小さいサブモータにも前記必要トルクを負担させ、
前記トルクカーブにおける一部の領域においては、前記サブモータに備わるサーボロック制御により前記必要トルクの一部を負担させる、給湯方法。
【0075】
(10)前記一部の領域としてのサーボロック制御領域には、前記トルクカーブにおけるピークのトルクを含め、
前記サーボロック制御領域において、前記サブモータには、定格トルク以上の負荷を、前記サブモータの過負荷特性に基づき許容される時間よりも短い時間に亘り与える、(9)に記載の給湯方法。
【0076】
(11)前記ラドルを支持する搬送部を駆動する駆動軸には、前記メインモータの出力軸および前記サブモータの出力軸のうちの前記駆動軸と一体に設けられる一方からトルクを伝達するとともに、
前記駆動軸には、前記メインモータの出力軸および前記サブモータの出力軸のうちの他方から、所定の減速比に基づいてトルクを増加させる減速部を介してトルクを伝達する、
(9)または(10)に記載の給湯方法。
【0077】
(12)前記ラドルの可搬重量の増減、または前記ラドルを支持する搬送部を構成するリンク機構のレバー比の変更に伴い、前記サブモータに備わるトルク制限値が調整される、(9)から(11)のいずれか一項に記載の給湯方法。
【符号の説明】
【0078】
1 給湯装置
2 炉
3 溶湯
3A 湯面
4 ラドル
5 搬送部
5L リンク機構
6 ケーシング(支持部)
6B 背面側
6F 正面側
7 湯面検知センサ
10 駆動部
10D 駆動軸
11 メインモータ
11A 出力軸
11C ケース
12 サブモータ
12A 出力軸
12C ケース
12E エンコーダ
12T トルクセンサ
12R 領域(サーボロック制御領域)
13 減速部
41 注ぎ口
42 傾転軸
50 駆動リンク
51 第1リンク
52 第2リンク
53 第3リンク
54 第4リンク
71,72 検知棒
110 モータ本体
111 減速機(減速機構)
112 駆動回路部
113 電磁ブレーキ
120 モータ本体
121 減速機(減速機構)
122 駆動回路部
131 第1ギヤ
132 第2ギヤ
501 駆動リンク50の一端部
502 駆動リンク50の他端部
541 先端部
D1,d1 時計回り方向
D2,d2 反時計回り方向
FL 前進限
RL 後退限
J0~J4 ジョイント
L1 実線
L2 破線
,P ピークトルク
必要トルク
θ 回転角度
θ 基準回転角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6