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特開2024-30210クリップ、及びそのクリップを備える輸液ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030210
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】クリップ、及びそのクリップを備える輸液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/28 20060101AFI20240229BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61M39/28 100
A61M5/142
A61M39/28 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132883
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平 胤之
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066QQ15
4C066QQ26
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に比べて、より小型のクリップで使いやすいクリップを提供することを目的とする。
【解決手段】発明に係るクリップ(100)は、輸液ポンプ(500)に備えられているクリップ挿入部(510)に取り付けられ、輸液チューブ(560)を閉塞部(175)で押圧して輸液を閉塞し得るクリップ(100)であって、閉塞部(175)、及び閉塞部(175)を開方向に付勢する弾性部(172)を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液ポンプに備えられているクリップ挿入部に取り付けられ、輸液チューブを閉塞部で押圧して輸液を閉塞し得るクリップであって、
前記クリップは、前記閉塞部、及び前記閉塞部を開方向に付勢する弾性部を有している、クリップ。
【請求項2】
前記弾性部は平板状に形成された平板部を有しており、
前記平板部は、少なくとも前記クリップ挿入部への挿入方向に対し平行な部分を含む、請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記弾性部は、複数の平板部を含んでいる、請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記クリップを輸液チューブに係止し得る、前記閉塞部とは異なるチューブ保持部を有している、請求項3に記載のクリップ。
【請求項5】
前記クリップは、前記クリップの外面において、前記クリップが組み合わされる輸液セットの種類に応じて形成されている識別部を有している、請求項1~4の何れか一項に記載のクリップ。
【請求項6】
前記識別部は、前記クリップが組み合わされる輸液セットの種類に応じて、前記クリップ挿入部への挿入方向における位置が形成されている部分を含む、請求項5に記載のクリップ。
【請求項7】
請求項5に記載された前記クリップを備えており、
前記識別部を検出し、検出結果に応じて、輸液チューブの送液制御を行う輸液ポンプ。
【請求項8】
前記輸液ポンプは、前記クリップ挿入部を開閉自在に覆うドアを有し、
前記ドアの開閉に連動して前記クリップの閉塞部が操作される、請求項7に記載の輸液ポンプ。
【請求項9】
前記ドアは、前記ドアの開閉に応じて前記ドアに対して相対的に移動して前記ドアの動きを伝達する部材を有している、請求項8に記載の輸液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ポンプに取付けられるクリップ、及びそのクリップを備える輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、医療分野において、血液成分や薬液等の輸液剤を患者の体内に送る輸液ラインを利用する治療が行われている。輸液ラインは、輸液剤を保持する輸液バッグと、輸液チューブの外周面を順次押圧して輸液剤を送出する輸液ポンプがポールスタンドに固定される。輸液ラインは、輸液ラインの途中にクレンメが組み込まれ、輸液チューブを閉塞可能に構成されている。また、輸液ポンプは輸液ポンプのドアの開閉に連動して輸液チューブを閉塞する機構を備えており、ドアが開かれている時に輸液チューブ内を輸液剤が流れてしまうフリーフローを防いでいる。
【0003】
輸液チューブを閉塞する押圧機構は、輸液チューブを挟み込むクリップを押圧して輸液チューブを閉塞している。輸液チューブを閉塞するクリップは弾性部を有しており、輸液チューブを解放する時には、押圧機構の押圧力が解除されるとともに、弾性部の付勢力によりクリップが開いて、輸液チューブが解放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-212112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたクリップは、クリップの一方端に湾曲した弾性部、クリップの他方端に輸液チューブの閉塞状態を維持する係止機構が設けられており、それらの分、クリップの長手方向に対し垂直方向の寸法が大きくなっていた。そのため、クリップを収容する輸液ポンプのサイズもその分、大きくなり、小型化に限界があった。輸液ポンプは、ポールスタンドに2つ以上並べて取り付けられる場合があり、より小型の輸液ポンプが求められていた。輸液ポンプを小型化するために、クリップも小型化が求められていた。また、輸液バッグを交換する際には輸液チューブも変えられるため、取り扱いやすいクリップであることも必要である。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、従来に比べて、より小型で使いやすいクリップ、及びそのクリップを備える輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、輸液チューブを押圧して輸液を閉塞し得るクリップは、輸液チューブを押圧する閉塞部、及び閉塞部を開方向に付勢する弾性部を有している。
【0008】
本発明に係るクリップは、閉塞部を開方向に付勢する弾性部を有して構成されているため、従来に比べて、より小型で使いやすいクリップとすることができる。
【0009】
また、本発明に係るクリップの弾性部は平板状に形成された平板部を有し、平板部は、少なくとも輸液ポンプに備えられているクリップ挿入部への挿入方向に対し平行な部分を含んでいることが好ましい。
【0010】
本発明に係るクリップの弾性部は平板状に形成された平板部を有し、平板部は、少なくとも輸液ポンプに備えられているクリップ挿入部への挿入方向に対し平行な部分を含んでいるので、少なくともクリップ挿入方向に対し垂直な方向の寸法を抑えることができる。
【0011】
また、本発明に係るクリップが有する弾性部は、複数の平板部を含んでいることが好ましい。
【0012】
本発明に係るクリップが有する弾性部は複数の平板部を含んでいるので、クリップの薄型化を図りながら、輸液チューブの閉塞及び解除動作が適切に行えるように、弾性部の各平板部の長さ、厚さ、枚数を適宜決定して、輸液ポンプの構造に応じた弾性部を構成することができる。
【0013】
また、本発明に係るクリップは、クリップを輸液チューブに係止し得る、閉塞部とは異なるチューブ保持部を有していることが好ましい。
【0014】
本発明に係るクリップは、クリップを輸液チューブに係止し得る、閉塞部とは異なるチューブ保持部を有しているので、輸液チューブに係止して、輸液セットとして構成することができ、使いやすいクリップとすることができる。
【0015】
また、本発明に係るクリップは、前記クリップの外面において、前記クリップが組み合わされる輸液セットの種類に応じて形成されている識別部を有していることが好ましい。
【0016】
本発明に係るクリップは、前記クリップの外面において、前記クリップが組み合わされる輸液セットの種類に応じて形成されている識別部を有している。そのため、クリップは、クリップが取り付けられる輸液ポンプが輸液セットの種類を自動的に判定するための情報を備えることができる。したがって、効率的に輸液セットを交換でき、使いやすいクリップとすることができる。
【0017】
また、本発明に係るクリップの識別部は、組み合わされる輸液セットの種類に応じてクリップの輸液ポンプへの挿入方向の位置が形成されている部分を含むことが好ましい。
【0018】
本発明に係るクリップの識別部は、組み合わされる輸液セットの種類に応じてクリップの挿入方向の位置が形成されている部分を含んでいる。そのため、クリップは輸液セットの種類に関する情報を、確実に検出できるクリップの挿入方向の特定部位の位置として備えることができる。したがって、効率的に輸液セットを交換でき、使いやすいクリップとすることができる。
【0019】
また、本発明に係るクリップを備える輸液ポンプは、上記のクリップを備えており、識別部を検出し、検出結果に応じて、輸液チューブの送液制御を行うことが好ましい。
【0020】
本発明に係るクリップを備える輸液ポンプは、輸液チューブの種類に応じて輸液チューブの送液制御を行うことができるので、輸液チューブ交換時のセットの省力化、及び輸液チューブの種類の誤設定を省くことができ、使いやすい輸液ポンプとすることができる。
【0021】
また、本発明に係るクリップを備える輸液ポンプは、クリップ挿入部を開閉自在に覆うドアを有し、ドアの開閉に連動してクリップの閉塞部が操作されることが好ましい。
【0022】
本発明に係るクリップを備える輸液ポンプは、ドアの開閉に連動してクリップの閉塞部が操作されるので、使いやすい輸液ポンプとすることができる。
【0023】
また、本発明に係るクリップを備える輸液ポンプは、ドアの開閉に応じてドアに対して相対的に移動してドアの動きを伝達する部材を有しているドアを備えていることが好ましい
【0024】
本発明に係るクリップを備える輸液ポンプは、ドアの開閉に応じてドアに対して相対的に移動してドアの動きを伝達する部材をドアに有しているので、ドアの開閉に応じてクリップの閉塞部をより確実に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係るクリップが取り付けられた輸液ポンプのドアが閉じられた状態の断面図である。
図2図1の輸液ポンプのドアが開かれた状態の断面図である。
図3図1のクリップの斜視図である。
図4図3のクリップの正面図である。
図5図3のクリップの側面図である。
図6図3のクリップの別な角度の側面図である。
図7図1のクリップの折り曲げて組み立てる前の状態の正面図である。
図8図7のクリップの側面図である。
図9図1の輸液ポンプにクリップを取り付ける方法を示す断面図である。
図10】本発明の変形例の輸液ポンプを示す図であり、ドアが閉じられた状態の断面図である。
図11】本発明の別な変形例の輸液ポンプを示す図であり、ドアが閉じられた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施の形態>
[輸液ポンプ500の構造]
図1、及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係るクリップ100を説明する。図1、及び図2は、クリップ100が輸液ポンプ500に取り付けられている状態を示している。図1は輸液ポンプ500のドア505が閉じられている状態における、輸液ポンプ500の上面視による断面図、図2は輸液ポンプ500のドア505が開かれている状態における、輸液ポンプ500の上面視による断面図である。
【0027】
図1、及び図2は、輸液ポンプ500に取り付けられているクリップ100を通る水平面を断面とした断面図を示している。クリップ100を通る水平面を断面とした断面図とは、図4に示されている断面指示線I-Iによる断面図である。本発明の実施の形態に係るクリップ100の説明の前に、クリップ100が取り付けられる輸液ポンプ500の構造を説明する。
【0028】
輸液ポンプ500は、本体501、及びドアヒンジ506により本体501に回転自在に保持されているドア505を有し、輸液剤、又は輸血用血液(以下、輸液剤等と記す)が輸液チューブ560を通して患者の体内に送られるポンプである。輸液ポンプ500は、ドア505を開いた状態で、本体501の側面503において、複数個所に設けられている図視されないチューブガイドに輸液チューブ560がはめ込まれて、輸液チューブ560、クレンメ、等を含む輸液セットが取り付けられる。輸液セットの取り付け後、ドア505が閉じられ、本体501に備えられている図視されない送液機構の押圧部材が輸液チューブ560の側面を押圧して、輸液剤等を送出する。ドア505が開けられている状態では、送液機構に代わりクランプ機構がドア505の開状態に連動して輸液チューブ560を側面から押圧し、輸液剤等のフリーフローを防ぐように作動する。
【0029】
クランプ機構は、本体501に設けられている、クリップ100、クリップ挿入部510、クリップ検出部520、レバー機構530、及びドア505に設けられている係止解除機構550を有している。
【0030】
ドア505を開いた状態で露出される本体501の側面503には、クランプ機構取り付け部502が設けられている。側面503には、上端付近、及び下端付近にそれぞれ輸液チューブ560を保持する図視されないチューブガイドが設けられており、クランプ機構取り付け部502は、上端付近、及び下端付近のチューブガイドの間において、下方の位置に設けられている。クランプ機構取り付け部502は、側面503から本体501の内部側に伸びて形成されている略直方体状の空間を有している。クランプ機構取り付け部502は、その内部にクリップ挿入部510、クリップ検出部520、及び、レバー機構530が配置されている。
【0031】
クリップ挿入部510は、クランプ機構取り付け部502の水平方向においてほぼ中央に設けられている。クリップ挿入部510は、クリップ100が挿入される空間を有している。クリップ挿入部510が有する空間は、側面503から側面503に垂直に本体501の内部に延びている。クリップ挿入部510の側面503からの長さは、挿入されるクリップ100の全長の約50%~約70%であり、例えば約60%である。クリップ挿入部510の長手方向に垂直な断面の幅と高さは、クリップ100が容易に挿入できるように、かつ遊びがあまりない程度にクリップ100よりわずかに大きくされている。また、クリップ100はクリップ挿入部510に逆向きに挿入できない形状に形成されている。
【0032】
クリップ挿入部510のドアヒンジ506側には、クリップ挿入部510に隣接してクリップ検出部520が設けられている。クリップ検出部520は、輸液セットの種類に応じて形成されているクリップ100の所定部位を検出する。クリップ検出部520は、識別回路521、及び可動部522を有している。識別回路521は、クリップ挿入部510に挿入されるクリップ100の所定部位に接触して移動する可動部522の変位に応じて、出力信号を生成する。識別回路521は、例えば、可動部522の直線状変位に応じて出力電圧が変化するスライドボリュームである。識別回路521が出力する電圧値が輸液ポンプ500で判定され、挿入されているクリップ100の種類、すなわち取り付けられている輸液セットの種類が認識される。
【0033】
可動部522は、クリップ挿入部510の長手方向に沿って長く形成されている部材であり、可動部522の一方端は識別回路521の可動部取り付け部に取り付けられている。可動部522の他方端は、可動部522の長手方向に対して垂直方向に突出する突起523が形成されている。突起523はクリップ100の所定部位に係合し、クリップ100の挿入に伴って挿入方向に押されて移動する。
【0034】
クリップ挿入部510のドアヒンジ506側に対して反対側の隣接部には、レバー機構530が設けられている。レバー機構530は、ドア505の開閉操作に連動して、クリップ100の対応する部位の押圧、又は解除を行う。レバー機構530は、レバー531、枢軸532、第1付勢部材537を有している。
【0035】
レバー531は、クリップ100より長く形成されている板状部材であり、クリップ100の挿入方向に平行に配置されている。レバー531は、レバー531の長手方向のほぼ中間位置において、枢軸532により回転可能に保持されている。レバー531は、側面503側の一端部533、及び一端部533と反対側端の他端部534を有している。一端部533には、レバー531の長手方向に対して所定の角度で形成されている傾斜面535が設けられている。前記所定の角度は、ドア505の対応する部位と関連して決定され、約40°~約60°であり、例えば約50°である。他端部534には突起536が形成されており、他端部534に接して配置されている第1付勢部材537の一端側にはめ込まれている。第1付勢部材537の他端側は、クランプ機構取り付け部502内に固定されている。第1付勢部材537は、枢軸532を回転中心にしてレバー531の一端部533をクリップ100に押し付ける方向に、他端部534を付勢している。
【0036】
ドア505は、クランプ機構取り付け部502を含む本体501の側面503の全体を覆っており、本体501の側面503の左右方向何れかの一端部に設けられているドアヒンジ部504により、回転自在に保持されている。ドア505は、ドア505を閉じた時にクランプ機構取り付け部502に対向する位置に、係止解除機構550を備えている。係止解除機構550は、係止解除機構取り付け部507、第1解除部551、及び第2解除部552を有している。係止解除機構取り付け部507は、ドア505の側面503側が開口し、係止解除機構550を有している凹部空間である。第1解除部551、及び第2解除部552は、係止解除機構取り付け部507から対向するクランプ機構取り付け部502に向かって張り出して形成されている部分である。
【0037】
図1、及び図2には、係止解除機構550が有する第1解除部551、及び第2解除部552が示されている。第1解除部551、及び第2解除部552は、ドア505を閉じた状態で側面503に対して所定の角度を有して形成されている傾斜面553、554をそれぞれ有している。第1解除部551の傾斜面553は、側面503に対し平行な向きからドアヒンジ506側に所定角度、例えば約50°~約70°の角度で形成されており、ドア505を完全に閉じた状態において、クリップ100の所定部位を押圧する。一方、第2解除部552の傾斜面554は、側面503に対し平行な向きからドアヒンジ506に対して反対側に所定角度、例えば約15°~約35°の角度で形成されており、ドア505を完全に閉じた状態において、レバー531の所定部位を押圧する。ドア505を閉じた状態において、第1解除部551、及び第2解除部552がクリップ100、及びレバー531をそれぞれ押圧する作動については、後述する。
【0038】
[クリップ100の構造]
図3図8を参照して、クリップ100を説明する。図3図6は、クリップ100を一体成型後、折り曲げて組み立てた状態であり、使用状態のクリップ100である。図3図6は、それぞれクリップ100の斜視図、正面図、側面図、及び別な角度の側面図である。また、図7、及び図8は、クリップ100を一体成型後、折り曲げて組み立てる前の状態のクリップ100の正面図、及び側面図である。図4は、図1、及び図2において、矢視Aの方向視によるクリップ100の正面図である。図5は、図4において、矢視Bの方向視によるクリップ100の側面図である。図6は、図5において、矢視Cの方向視によるクリップ100の別な角度による側面図である。図7、及び図8は、それぞれ図4、及び図5と同じ方向視による側面図である。
【0039】
クリップ100は、第1部材110、第2部材160、及びヒンジ部170を備えている。クリップ100は、全体が一体的に成型された1つの樹脂成型品が、折り曲げて組み立てられている。
【0040】
図7、及び図8に示されている折り曲げられる前のクリップ100を参照しながら、クリップ100の構造を説明する。クリップ100は、第1部材110、ヒンジ部170、及び第2部材160が直線状に配置されて、一体的に成型されている。
【0041】
第1部材110は、第1基部111、係止部材130、及び組み立て部材140を有している。第1基部111は、第1部材110の基板部112、及び基板部112の端部上において、連続して設けられている壁部113、114、115、121、122を有している。
【0042】
クリップ100は略直方体形状に形成されており、基板部112は略直方体形状の外面の一部を構成する1つの面として形成されている。基板部112のヒンジ部170側の端部には、壁部122が基板部112から垂直に設けられており、ヒンジ部170の一方端が接続されている。基板部112の長手方向に平行な両端部上には、壁部122の両端部にそれぞれ接続し、かつ直交している壁部121が設けられている。壁部121は、壁部122の両端部から基板部112の略中央まで設けられている。壁部121、122の基板部112からの突出方向における第1接合面123は同一平面であり、基板部112からの第1接合面123の突出寸法はクリップ100の同一方向寸法の約1/3である。
【0043】
両方の壁部121の外面におけるヒンジ部170側には、位置決め部124が形成されている。位置決め部124は、クリップ100がクリップ挿入部510に挿入され、定位置に到達したときに、輸液ポンプ500の対応する部材と係合する部分である。位置決め部124は円形の溝であり、輸液ポンプ500の対応する部材は円形の溝にはまる突起である。位置決め部124に輸液ポンプ500の対応する部材が係合することで、使用者はクリック感を感じることができ、クリップ100がクリップ挿入部510の定位置に到達したことを認識することができる。
【0044】
位置決め部124と、輸液ポンプ500の対応する部材との組み合わせは、使用者がクリップ100の定位置への到達を認識できれば、どのようなものでもよい。位置決め部124と、輸液ポンプ500の対応する部材との溝と、突起は、上記と逆の設定でもよい。又は、位置決め部124はクリップ100の外面の何れかの位置に形成されたクリップ100の挿入方向に対して垂直な面を含む部材とし、輸液ポンプ500の対応する部材は、クリップ100が定位置において前記垂直な面を含む部材に当接する部材であってもよい。上記の垂直な面を含む部材は、クリップ100の挿入方向における奥側の面、すなわち壁部122の外面としてもよい。
【0045】
壁部121の、壁部122に対し反対側の端部には、それぞれ壁部115が壁部121に連続して一直線上に配置されている。壁部115の基板部112からの突出寸法は、基板部112から壁部121の第1接合面123の突出寸法の約3倍である。壁部115は、それぞれチューブ保持部117を有している。チューブ保持部117は貫通孔である。壁部115の第1部材110の長手方向における長さは、輸液チューブ560の外径より若干大きく形成されている。第1部材110の長手方向の略中央に位置する2つのチューブ保持部117には、1本の同じ輸液チューブ560が通される。壁部115の内面の先端側には、突条116が基板部112に対し平行に、それぞれ設けられている。なお、チューブ保持部117は、クリップ100が輸液チューブ560に保持されることが可能であれば、貫通孔以外の形態であってもよい。輸液チューブ560の外周面の全周を保持する孔に替えて、例えば、少なくとも輸液チューブ560の外周面に線状又は面状に接して、輸液チューブ560を挟むように保持する形態であってもよい。
【0046】
壁部115の、壁部121に対し反対側の端部には、それぞれ壁部113が壁部115に連続して一直線上に配置されている。壁部113の基板部112からの突出寸法は、壁部121の約2倍、壁部115の約2/3である。壁部113は、壁部115の端部から第1部材110のヒンジ部170と反対側の端部まで、壁部115に連続して一直線上に配置されている。壁部113の壁部115と反対側の両端部間には、壁部113のそれぞれの端部をつなぐように、壁部114が設けられている。すなわち、壁部122、壁部121、壁部115、壁部113、及び壁部114は、略同じ幅で形成されて、それぞれ対応する端部同士が接続されており、基板部112の外周端部上の全周を囲む縦壁を形成している。
【0047】
図8を参照して、係止部材130を説明する。第1部材110の2つの壁部113と、壁部114とに囲まれた空間には、係止部材130が形成されている。係止部材130は、後述する第2部材160の閉塞部175を閉塞状態に保持する部材である。係止部材130は、基端部131、水平部132、及び係止部133を有している。2つの壁部113、及び壁部114に囲まれた部分には、基板部112は形成されておらず、開口部119となっている。基端部131は板状の部材であり、基端部131の両端の下端部134は、壁部113のそれぞれの内面に固定されている。
【0048】
基端部131の先端側には、係止部133が設けられている。係止部133は、クリップ100の長手方向に平行な断面が略直角三角形である部材である。係止部133は、基端部131の先端部に係止部133の前記直角三角形の直角の角部が接続されている。係止部133の直角の角部が対向する面は摺動面135であり、ヒンジ部170側を向いて配置されている。係止部133の基板部112からの突出寸法は、壁部113の基板部112からの突出寸法より高く形成されている。
【0049】
基端部131の先端において、基端部131の係止部133側に対して反対側には、水平部132が設けられている。水平部132は板状の部材であり、基端部131の先端から基板部112に対して平行、かつヒンジ部170に対し反対方向に延びている。
【0050】
係止部材130の動きについて説明する。係止部材130は、前述のとおり、第1部材110の2つの壁部113、及び壁部114に囲まれた空間に配置されている。また、基端部131は板状部材であり、基端部131の下端部134の両端面は両方の壁部113の内面にそれぞれ固定されている。したがって、係止部材130の先端側、すなわち係止部133、又は水平部132に荷重が加わった時、基端部131はたわみ、係止部133、及び水平部132は、第1部材110の長手方向に対して平行に前方移動、又は後方移動することができる。係止部材130の動きと、輸液チューブ560の閉塞との関係は、後述する。
【0051】
図3、及び図4を参照して、組み立て部材140を説明する。組み立て部材140は、クリップ100を一体的に樹脂成形した後、折り曲げて組み立てる時に、第2部材160を第1部材110に折り曲げた状態で保持する部材である。組み立て部材140は、両方の壁部121に隣接するそれぞれの位置に、基板部112から垂直に延びて設けられた板状部材である。組み立て部材140は、組み立て部材140の基板部112側の外側面が壁部121の内面に接して固定されている。組み立て部材140の先端側は、壁部121の第1接合面123より突出して形成されている。組み立て部材140の先端には、クリップ100の外側に向けて突出し、クリップ100の長手方向に平行な突条141が形成されている。突条141の組み立て部材140の先端側面は、クリップ100の中心側からそれぞれの外側に向けて傾斜面142が形成されている。
【0052】
図5、及び図6を参照して、クリップ100に形成されている識別部150を説明する。基板部112の壁部113等が設けられている面とは反対側の面、すなわち基板部112の外面に、識別部150が設けられている。輸液チューブ560は、輸液等に応じて複数種類が存在する。クリップ100は輸液チューブ560に取り付けられて供給される。識別部150は、輸液チューブ560を含む輸液セットの種類を輸液ポンプ500が識別するための部分である。識別部150は、基板部112の外面のヒンジ部170側の端部から、識別部端部151まで、所定長さで、クリップ100の長手方向に平行、かつ溝幅一定で形成されている溝である。
【0053】
識別部150は、識別部150の長さ、すなわち、識別部端部151のヒンジ部170側からの位置が、輸液チューブ560の種類ごとに異なって形成されている。輸液ポンプ500は、クリップ100がクリップ挿入部510の定位置に挿入されている状態において、識別部端部151の位置の違いを検出し、輸液チューブ560の種類を認識する。例えば、識別部端部151が所定位置より1mm外側に位置していると検出された場合、PCV輸液セットであると認識する。また、識別部端部151が所定位置より3mm外側に位置していると検出された場合、NonPCV輸液セットであると認識する。
【0054】
図5、及び図7を参照して、第2部材160を説明する。第2部材160は、輸液チューブ560を閉塞可能な部材である。第2部材160は、第2基部161、及び閉塞部材171を有している。
【0055】
第2基部161は、閉塞部材171を支持しているU字状の部材である。第2基部161は、枠部162、及び枠部163を有している。枠部162は、ヒンジ部170に固定されている部材であり、クリップ100の長手方向に対し垂直方向に延び、対向する壁部122と同じ長さに形成されている。枠部162の両端部には、ヒンジ部170に対して反対方向に延び、クリップ100の長手方向に対し平行に、それぞれ形成されている枠部163が接続されている。両方の枠部163の先端側の内面側には、切り欠いて形成された凹部165がそれぞれ形成されている。枠部163の先端側の内面側に形成されている凹部165により、第2部材160を第1部材110に折り曲げて組み立てる際に、組み立て部材140の突条141を通すことができる所定の空間が設けられている。
【0056】
枠部162、163の一方面は同一平面として形成されており、第2接合面164を形成している。第2接合面164は、ヒンジ部170を中心に第2部材160を回転させて第1部材110に接近させた時に、第1部材110の壁部121、122の第1接合面123に接合することができる。枠部163の第2接合面164に対し反対面における凹部165の隣接箇所には、それぞれ凹部166が設けられている。凹部166は、第2部材160を折り曲げて第1部材110に接合した状態を維持するために、組み立て部材140の突条141が嵌められる部位である。
【0057】
図3、及び図7を参照して、閉塞部材171を説明する。閉塞部材171は、輸液チューブ560を押圧して閉塞する部材である。閉塞部材171は、弾性部172、及び閉塞部175を有している。弾性部172は、それぞれ板状部材である第1平板部173、及び第2平板部174を含んでいる。第1平板部173の一方端は、枠部162に固定されている。第1平板部173の他方端には、第2平板部173の一方端が接続されている。第1平板部173の基板部112に対向する側の面は、第2接合面164と同一の平面を形成している。また、第2平板部174は、第1平板部173に対し、約20°~約30°の角度、例えば25°の角度で保持されている。
【0058】
第1平板部173、及び第2平板部174の板厚は、同じ厚さに形成されている。両者は、第1平板部173の固定部位である第2基部161から両者が保持する閉塞部175までをつなぐように、形状、厚さが形成されている。両者は、閉塞部175が輸液チューブ560を閉塞する位置、及び解放する位置に閉塞部175を保持でき、閉塞と解放とを繰り返し行える最低限の強度耐久性を有する長さ、及び板厚を有すればよい。弾性部172は、上記要求が満たせれば、平板部材の枚数は2枚でなくてもよく、1枚、又は3枚以上でもよい。また、各板厚は同じでもよく、異なっていてもよい。また、各平板部材は、板厚を異ならせて互いの接続角度を0°、すなわち角度をつけずにつなげて接続されていてもよい。
【0059】
第2平板部174の他方端には、閉塞部175が設けられている。閉塞部175の外形は、クリップ100の長手方向に沿って長く形成されている多角形である。閉塞部175は、クリップ100の長手方向の両端に位置する2つの端面と、前記2つの端面の間に配置されている、クリップ100の長手方向に平行な6つの平面で形成されている。閉塞部175は、第2接合面164を第1接合面123に接合した状態において、基板部112に対向する面に押圧部176を有している。押圧部176は輸液チューブ560に当接する部位であり、平面である。押圧部176は、輸液チューブ560に当接し、閉塞している状態において、基板部112に対して略平行となるように形成されている。
【0060】
閉塞部175の押圧部176に対し反対面には、押圧部176と平行な面を含む入力部178が形成されている。入力部178は長方形形状の枠形状部材であり、前記枠形状の中に前記枠形状の長手方向に平行な2本の溝と、その溝の間に設けられている1本のリブ状部材が設けられている。入力部178は、閉塞部175の先端側に閉塞部当接部179を有している。閉塞部当接部179は、入力部178の先端側のR形状に形成されている角部である。
【0061】
閉塞部175の両側の側面には、閉塞部係止突条177がそれぞれ設けられている。閉塞部175の両側の側面は、閉塞部175が有する平面に対し垂直な面であり、前記側面の先端部分から閉塞部係止突条177が一直線状に所定長さ形成されている。閉塞部係止突条177は、第2部材160を折り曲げて第1部材110に接合した状態において、壁部115に設けられている突条116に係合する。閉塞部係止突条177は、弾性部172により付勢されている閉塞部175を輸液チューブ560の閉塞が解除されている位置に維持する。
【0062】
[クリップ100の組み立て、及び輸液ポンプ500への取り付け]
図7、及び図8を参照して、樹脂成型されたクリップ100を折り曲げて組み立てる方法を説明する。図7、及び図8に示されているクリップ100において、ヒンジ部170を中心に第2部材160を図8の矢印D方向に回転させ、第2部材160の第2接合面164を第1部材110の第1接合面123に接合する。その際、一対の組み立て部材140の先端部を第2部材160の一対の凹部165にそれぞれ通す。そして、組み立て部材140のそれぞれの先端部の一対の突条141を、それぞれ枠部163の凹部166に引っ掛ける。その後、閉塞部175の入力部178を押して、壁部115に形成されている一対の突条116の間を通す。そして、閉塞部175に形成されている一対の突条177を一対の突条116に引っ掛けて、閉塞部175を閉塞解除位置に保持する。クリップ100は、以上の方法により、使用状態に組み立てられる。
【0063】
図9は、クリップ100を輸液ポンプ500のクリップ挿入部510に挿入する様子が示している。クリップ100の取り付け時にはドア505が開いているため、クリップ100の取り付けが完了した時点で、輸液チューブ560が閉塞される。クリップ100、及びレバー531の作動に関しては、以下で説明する。
【0064】
[クリップ100、及びレバー531の作動]
図1、及び図2を参照して、ドア505の開閉に連動したクリップ100と、レバー531との作動を以下に説明する。以下の説明では、クリップ100の取り付け時、ドア505を閉じる時、及びドア505を開く時のそれぞれについて説明する。
【0065】
1.クリップ100の取り付け時
図9と、図1とを参照して、クリップ100の取り付けを説明する。図9に示されているように、ドア505を開き、輸液チューブ560に取り付けられた状態のままクリップ100を、所定の向きでクリップ挿入部510に挿入する。以降、図1も参照しながら説明する。クリップ100を挿入する過程で、レバー531の当接部538が閉塞部材171の入力部178を摺動しながら押圧する。閉塞部175は、閉塞部175の先端面181と押圧部176とがなす角部が係止部133の摺動面135を摺動しながら摺動面135を押圧し、係止部材130が外側にたわむ。閉塞部材171がレバー531の当接部538にさらに押圧されると、閉塞部当接部179が摺動面135を通り過ぎると閉塞部175が係止部133にはまり込んで、弾性力で戻らないようにロックされる。閉塞部175がロックされると同時に、クリップ100は定位置に収容されている図2の状態となり、クリップ100の取り付けは終了する。
【0066】
2.ドア505を閉じる時
ドアが開いている図2では、閉塞部材171が輸液チューブ560を押圧して、輸液等が輸液チューブ560内を流れないように閉塞している状態である。この状態からドア505を閉じると、ドア505に設けられている係止解除機構550が本体501に接近する。ドア505が本体501に接する直前に、係止解除機構550が有する第1解除部551、及び第2解除部552が、それぞれクリップ100、及びレバー531の所定部位に当接して押圧する。
【0067】
第2解除部552の傾斜面554は、レバー531の傾斜面535に当接する。傾斜面535は傾斜面554に押され、傾斜面554上に沿って摺動しながら図1中において下側に移動する。そのため、レバー531の一端部533側は、レバー531の他端部534を付勢している第1付勢部材537の付勢力に打ち勝って、図1中で左方向に回転する。レバー531の回転に伴い、当接部538は、閉塞部175の入力部178から離れる方向に動く。傾斜面554がレバー531の傾斜面535を押圧すると同時に、傾斜面553は係止部材130の水平部132の端部に接して押圧する。水平部132の端部を押圧された係止部材130はたわみ、係止部133が閉塞部175の保持を解除する方向に移動し、ついには閉塞部175の係止部133とのロックが解除される。すなわち、係止解除機構550の押圧に応じた、レバー531、及び係止部材130の動きにより、閉塞部材171がロック状態から解放される。すると、閉塞部175は弾性部172の付勢力により、輸液チューブ560から離れる方向に移動して、輸液チューブ560の閉塞状態が解除され、輸液等が輸液チューブ560内を流れることができるようになる。
【0068】
3.ドア505を開く時
輸液チューブ560の交換等で、ドア505を開く時は、以下のとおりである。ドア505を開くと、第1解除部551、及び第2解除部552は、それぞれクリップ100、及びレバー531の所定部位から離れる。すると、係止部材130は第1解除部551の押圧から解放され、自然状態の位置に戻る。また、レバー531は、レバー531の他端部534を付勢している第1付勢部材537の付勢力により、閉塞部175を押圧する方向に回転する。閉塞部175は押圧されて、係止部材130の係止部133に係止され、閉塞部175は輸液チューブ560を閉塞する。ドア505を開くと、以上のように輸液チューブ560が閉塞される。
【0069】
上記実施の形態は、構成の一部を置き替えて、以下のそれぞれの変形例とすることができる。
【0070】
図10を参照して、輸液セットの種類を認識するためのクリップの検出方法に関する変形例を説明する。図10は前記変形例の輸液ポンプ600の断面図であり、図1に相当する図である。上記で説明した実施の形態の輸液ポンプ500は、識別部150の長さに応じて出力電圧が変化するスライドボリュームを有するクリップ検出部520を有している。このクリップ検出部520を、クリップ200の外面に1つ以上設けられた識別部250を検出するクリップ検出部620としてもよい。輸液ポンプ600は、クリップ検出部620、及びクリップ200を備えていてもよい。
【0071】
輸液ポンプ600には、回路基板621と、センサ622とを含むクリップ検出部620が設けられている。回路基板621はクリップ200がクリップ挿入部510に挿入された状態において、第1基部211の外面に対して平行に配置されており、回路基板621はクリップ挿入部510を画定している壁部分の一部を構成している。回路基板621は、挿入された状態のクリップ200の1つ以上の識別部250が対向する位置にセンサ622がそれぞれ配置されている。各センサ622は、各識別部250の状態をそれぞれ検出する。センサ622は、識別部250を検出できるセンサであればどのような形式でもよく、例えば光センサ、又は識別部250の形状を物理的に検出する接触式センサであってよい。
【0072】
クリップ200の基本構造はクリップ100と共通であるが、クリップ200はクリップ200の第1部材210の第1基部211に識別部250が設けられている。識別部250は、第1基部211の外面側に直線状に配置された1つ以上の凹部であり、例えば穴である。識別部250は、輸液セットの種類に応じて、それぞれの穴の有無が異なって形成されている。例えば、個々のセンサ622は穴の有無を検出して、ON、又はOFFの2通りの信号を取得する。識別部250の穴は3つ形成され、センサ622は3つ設けられており、検出パターンは8通りとなる。なお、クリップ200がクリップ挿入部510の定位置まで挿入されているかを検出するために、3つの穴のうちの1つの穴、例えば一番奥の穴は、輸液セットの種類にかかわらず閉止状態に形成されていてもよい。その場合は、1つのセンサ622が閉止状態を検出し、他の2つのセンサ622が検出する検出パターンは4通りとなる。なお、識別部250は、穴に替えて凸部とし、凸部を検出するセンサ622と組み合わせてもよい。
【0073】
輸液ポンプ600は、装着されている輸液セットの種類、例えばPCV輸液セット、又はNonPCV輸液セット等を認識する。上記変形例は、スライドボリュームを有するクリップ検出部520に対して、回路基板621上にセンサ622を配置することで構成できるので、クリップ検出部620を薄型に作ることができる。また、識別部250は輸液が漏れた場合に対する防滴性が十分得られることで、輸液セットの誤識別等の誤作動を避けることができるように、識別部250の形状、及び位置が考慮されて設けられる。
【0074】
図11を参照して、係止部材130による閉塞部175のロック状態の解除方法の変形例を説明する。図11は前記変形例の輸液ポンプ700の断面図であり、図1に相当する図である。上記で説明した実施の形態の輸液ポンプ500は、ドア505に非可動式の係止解除機構550が設けられている。この非可動式の係止解除機構550を、可動式の係止解除機構750としてもよい。輸液ポンプ700は、ドア705に係止解除機構750を有している。輸液ポンプ700のドア705以外の構成は、輸液ポンプ500と共通である。係止解除機構750は、係止解除機構取り付け部707、伝達部材751、第2付勢部材752、及び第3解除部711を有している。係止解除機構取り付け部707は、ドア705に設けられ、係止解除機構750が設けられている部分である。
【0075】
伝達部材751は、ドア705の閉じ動作、及び開動作に連動して、係止部材130、及びレバー531をそれぞれ押圧、及び押圧解除する部材である。伝達部材751は、輸液ポンプ700の側面503に対し平行移動可能にドア705に保持されている。伝達部材751は、直線状の基部756、基部756のヒンジ506側の一方端から基部756に対して垂直に延びている入力部753、及び基部756の他方端周辺部から基部756に対して垂直に延びている出力部761を有している。入力部753が対向する係止解除機構取り付け部507の内面には、第2付勢部材752のヒンジ506側である一方端が固定されている。第2付勢部材752の他方端は、入力部753の第2付勢部材付勢面754を付勢している。それにより、伝達部材751は輸液ポンプ700の側面503に平行、かつヒンジ506から離れる方向に付勢されている。入力部753の第2付勢部材付勢面754に対する反対面には、ドア705の閉じ動作に連動してクリップ100のドア705側の角部に当接する斜面部755が設けられている。出力部761の先端部には、出力部761からヒンジ506側に向かって垂直に延びる出力突部762が設けられている。出力突部762は、ドア705の閉じ動作に連動して、係止部材130を押圧する。
【0076】
第3解除部711は、第3解除部基部712と、第3解除部基部712に連続して形成され、一方面に第3解除部斜面部714を有する第3解除部先端部713とを有している。第3解除部基部712は、ドア705に設けられている係止解除機構取り付け部707のドアヒンジ506に対し反対側の端部に設けられ、レバー531に向かって側面503に垂直に延びて形成されている。第3解除部先端部713は、第3解除部基部712の先端部から、ドアヒンジ506側に向かって延びており、第3解除部基部712に対し約50°~約60°の角度で形成されている。第3解除部先端部713のレバー531側の面には、第3解除部斜面部714がレバー531の傾斜部535に対向して設けられている。
【0077】
ドア705の閉時における係止解除機構750の作動について説明する。図11において破線で示されているドア705が閉じられると、第3解除部711の第3解除部斜面部714がレバー531の傾斜部535に当接して押圧する。それにより、レバー531は図11において枢軸532を中心に反時計回りに回転して、レバー531の当接部538が閉塞部175から離れる方向に徐々に移動する。また、クリップ100のドア705側の角部に斜面部755が当接する。その結果、伝達部材751は、第2付勢部材752の付勢力に打ち勝ってヒンジ506側に移動する。伝達部材751が移動すると、出力部761の出力突部762が係止部材130の水平部132を押圧する。水平部132が押圧された係止部材130は基端部131が湾曲して係止部133の先端側がクリップ100から離れる方向に持ち上がり、ロックされていた閉塞部175が外れて、チューブ560が連通可能になる。
【0078】
ドア705が開かれる時には、上記と逆の動作となる。ドア705が開かれると、第3解除部711、出力部761、及び入力部753は、それぞれレバー531、水平部132、及びクリップ100から離れる。レバー531は、第1付勢部材537により、枢軸532を中心に時計回りに回転して閉塞部175を押圧する。閉塞部175はチューブ560を完全に押圧した状態で、係止部材130の係止部133にロックされて保持される。上記変形例の可動式の係止解除機構750は、非可動式の係止解除機構550に対して構成部品は多くなるが、ドア閉時に連動した動きを無理なく伝達して、係止部材130による閉塞部175のロックとロック解除とを、より確実に行うことができる。
【0079】
本発明により、従来に比べて、より小型で使いやすいクリップ、及びそのクリップを備える輸液ポンプを提供することができる。
【符号の説明】
【0080】
100 クリップ、117 チューブ保持部、150 識別部、
172 弾性部、 175 閉塞部、 173,174 平板部、
500 輸液ポンプ、510 クリップ挿入部、560 輸液チューブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11