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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030220
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】管材接続具及び接続方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/12 20060101AFI20240229BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20240229BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20240229BHJP
   H02G 9/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F16L41/12
F16L5/00 E
H02G9/06
H02G9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132919
(22)【出願日】2022-08-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593170241
【氏名又は名称】株式会社立基
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】石井 清孝
【テーマコード(参考)】
3H019
5G369
【Fターム(参考)】
3H019DA01
3H019DA09
5G369BA04
5G369BA06
5G369DC04
5G369DC09
5G369DD02
5G369EA01
(57)【要約】
【課題】作業者が、ロック体11の締め付け状態の確認を行うことが可能で、作業者に対して締付完了のサインとなる構成を備えた管材接続具等を実現する。
【解決手段】ロック体11とマウス体21とを備えた管材接続具10である。ロック体11は、波付管材5の外周面側と螺合する外筒部12と、外筒部12の先端側に形成された外フランジ部13と、波付管材5の外周面側の螺旋凹凸と螺合する第1係合部14と、外フランジ部13に取り付けられた第1パッキン部15と、第1パッキン部16に接合された圧潰パッキン部16とを備える。圧潰パッキン部16は、波付管材5の外周面に螺合されたロック体11を構造物1の方向へ締め付けたときの締付圧によって押し潰される。圧潰パッキン部16の厚みが薄くなったこと、もしくは、圧潰パッキン部16が視認できなくなったことにより、作業者がロック体11の締付状態の確認を行うことができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の貫通孔に、内周面および外周面に凹凸が螺旋状に形成された波付管材を、ロック体とマウス体とを用いて前記貫通孔の周囲の壁を挟み込むことにより接続固定する管材接続具であって、
前記ロック体は、前記波付管材の外周面側と螺合する外筒部と、前記外筒部の先端側に形成された外フランジ部と、前記外筒部の内側に形成され、前記波付管材の外周面側の螺旋凹凸と螺合する第1係合部と、前記外フランジ部に取り付けられた第1パッキン部と、前記第1パッキン部に接合された圧潰パッキン部とを備えており、
前記マウス体は、前記波付管材の内周面側と螺合する内筒部と、前記内筒部の先端側に形成された内フランジ部と、前記内筒部の外側に形成され、前記波付管材の内周面側の螺旋凹凸と螺合する第2係合部と、前記内フランジ部に取り付けられた第2パッキン部とを備えており、
前記圧潰パッキン部は、前記波付管材の外周面に螺合された前記ロック体を前記構造物の方向へ締め付けたときの締付圧によって押し潰され、前記圧潰パッキン部の厚みが薄くなったこと、もしくは、前記圧潰パッキン部が視認できなくなったことにより、作業者が前記ロック体の締付状態の確認を行うことができるものである、管材接続具。
【請求項2】
前記圧潰パッキン部は、少なくとも前記波付管材の外周面に螺合された状態において作業者から見える位置に着色領域を有している、請求項1に記載の管材接続具。
【請求項3】
前記圧潰パッキン部は、連続気泡の軟質ウレタンフォームであって、前記軟質ウレタンフォームは、密度が26kg/m3以上で36kg/m3以下の範囲のものである、請求項1又は2に記載の管材接続具。
【請求項4】
前記圧潰パッキン部は、前記ロック体の締め付けを行ったときに、前記圧潰パッキン部の周縁部が、前記締付圧によって外径が拡大した前記第1パッキン部の周縁部で覆われた状態となることにより、前記圧潰パッキン部が視認できない状態となる、請求項1又は2に記載の管材接続具。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の管材接続具を用いて、前記貫通孔に前記波付管材を接続固定する管材接続方法であって、
前記波付管材の内周面に前記マウス体を螺合して、前記マウス体の前記内フランジ部に取り付けた前記第2パッキン部を、前記貫通孔の周囲の構造物に押し付けて当接した状態とする工程と、
前記波付管材の外周面に前記ロック体を螺合して、前記ロック体の前記外フランジ部に取り付けた前記第1パッキン部及び前記圧潰パッキン部を、前記貫通孔の周囲の構造物に押し付けて当接した状態とする工程と、
前記ロック体を前記構造物の方向へ締め付けたときの締付圧によって前記圧潰パッキン部が押し潰される工程と、
前記圧潰パッキン部の厚みが薄くなったこと、もしくは、前記圧潰パッキン部が視認できなくなったことにより、前記ロック体の締付状態の確認を行う工程と、
を含む、管材接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドホール、地中梁などの構造物に形成された貫通孔に、波形管材を接続して固定する管材接続具等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信ケーブル、給電ケーブルなどの各種ケーブルを挿通して地中に埋めることが可能な管材として、波付硬質合成樹脂管(以下、波付管材、又は、FEP管(Flexible Electric Pipe)ともいう。)が利用されている。
【0003】
図10に示すように、例えばハンドホール1の地中に埋められる部分には、波形管材を挿通するために複数の貫通孔2が設けられている。従来、ハンドホール1の貫通孔2の周囲の壁に波付管材を接続して固定するための管材接続具が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1の管材接続具では、螺旋型の波付管材の外周面に、図11(b)に示すような締め付け用部材101が螺合され、貫通孔2の周囲の壁面に締め付け用部材101が押し付けられる。一方、螺旋型の波付管材の内周面には、図11(a)に示すようなベルマウス102が螺合され、貫通孔2の周囲の壁面にベルマウス102のフランジ部が押し付けられる。このように、特許文献1の管材接続具は、締め付け用部材101とベルマウス102によって貫通孔2の周囲の壁を挟み込むことで、貫通孔2に波付管材を接続固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-90884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の管材接続具は、本出願人が出願したものであり、種々の作業現場で実用されている。
【0007】
ところが、本出願人が調査したところ、作業現場では、従来の管材接続具は、締め付け用部材101の回転を進めて締め付けを行うときに、どの程度まで締め付けを行えば締付完了と判断してよいのかが分かりにくいという課題があることが判明した。
【0008】
締め付け用部材101は、過剰に締め付けを行うと、ロック体のフィン部が破損するリスクが生じてしまう。一方で、締め付けが不足していると、管材接続具としての本来の性能を発揮できないため、止水性が不完全となるおそれがある。
【0009】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、管材接続具を用いて波付管材の接続固定を行う際に、作業者が、締め付け用部材の締め付け状態の確認を行うことが可能で、作業者に対して締付完了のサインとなる構成を備えた管材接続具等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の管材接続具は、
構造物の貫通孔に、内周面および外周面に凹凸が螺旋状に形成された波付管材を、ロック体とマウス体とを用いて貫通孔の周囲の壁を挟み込むことにより接続固定する管材接続具である。
【0011】
本発明では、ロック体は、波付管材の外周面側と螺合する外筒部と、外筒部の先端側に形成された外フランジ部と、外筒部の内側に形成され、波付管材の外周面側の螺旋凹凸と螺合する第1係合部と、外フランジ部に取り付けられた第1パッキン部と、第1パッキン部に接合された圧潰パッキン部とを備えており、マウス体は、波付管材の内周面側と螺合する内筒部と、内筒部の先端側に形成された内フランジ部と、内筒部の外側に形成され、波付管材の内周面側の螺旋凹凸と螺合する第2係合部と、内フランジ部に取り付けられた第2パッキン部とを備えている。
【0012】
本発明では、圧潰パッキン部は、波付管材の外周面に螺合されたロック体を構造物の方向へ締め付けたときの締付圧によって押し潰され、圧潰パッキン部の厚みが薄くなったこと、もしくは、圧潰パッキン部が視認できなくなったことにより、作業者がロック体の締付状態の確認を行うことができるものである。
【0013】
本発明では、圧潰パッキン部は、少なくとも波付管材の外周面に螺合された状態において作業者から見える位置に着色領域を有している構成を採用してもよい。
【0014】
本発明では、圧潰パッキン部は、連続気泡の軟質ウレタンフォームであって、軟質ウレタンフォームの密度は31±5kg/m3である構成を採用してもよい。
【0015】
本発明では、圧潰パッキン部は、ロック体の締め付けを行ったときに、圧潰パッキン部の周縁部が、締付圧によって外径が拡大した第1パッキン部の周縁部で覆われた状態となることにより、圧潰パッキン部が視認できない状態となる構成を採用してもよい。
【0016】
本発明の管材接続方法は、本発明の管材接続具を用いて、貫通孔に波付管材を接続固定する方法であって、
波付管材の内周面にマウス体を螺合して、マウス体の内フランジ部に取り付けた第2パッキン部を、貫通孔の周囲の構造物に押し付けて当接した状態とする工程と、
波付管材の外周面にロック体を螺合して、ロック体の外フランジ部に取り付けた第1パッキン部及び圧潰パッキン部を、貫通孔の周囲の構造物に押し付けて当接した状態とする工程と、
ロック体を構造物の方向へ締め付けたときの締付圧によって圧潰パッキン部が押し潰される工程と、
圧潰パッキン部の厚みが薄くなったこと、もしくは、圧潰パッキン部が視認できなくなったことにより、ロック体の締付状態の確認を行う工程と、
を含むものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ロック体は、波付管材の外周面側と螺合する外筒部と、外筒部の先端側に形成された外フランジ部と、外筒部の内側に形成され、波付管材の外周面側の螺旋凹凸と螺合する第1係合部と、外フランジ部に取り付けられた第1パッキン部と、第1パッキン部の面のうち貫通孔の周囲の壁を挟み込む側の面に接合された圧潰パッキン部とを備えている。一方、マウス体は、波付管材の内周面側と螺合する内筒部と、内筒部の先端側に形成された内フランジ部と、内筒部の外側に形成され、波付管材の内周面側の螺旋凹凸と螺合する第2係合部と、内フランジ部のうち貫通孔の周囲の壁を挟み込む側の面に取り付けられた第2パッキン部とを備えている。
【0018】
本発明では、圧潰パッキン部は、波付管材の外周面に螺合されたロック体を構造物の方向へ締め付けたときの締付圧によって押し潰される。そして、圧潰パッキン部の厚みが薄くなったこと、もしくは、圧潰パッキン部が視認できなくなったことにより、作業者がロック体の締付状態の確認を行うことができるように、圧潰パッキン部の形状及び材質が決められている。
【0019】
従来の管材接続具は、どの程度まで締め付けを行えば締付完了と判断してよいのかが分からず、作業員の経験や技能に頼るしかなかった。本発明は、上記構成の圧潰パッキン部を備えているので、管材接続具を用いて波付管材の接続固定を行う際に、作業者が、ロック体の締め付け状態の確認を行うことが可能となる。本発明では、ロック体の締め付けを行うときに、圧潰パッキン部の厚みが薄くなったこと、もしくは、圧潰パッキン部が視認できなくなったことが、締付完了と判断してよい目途となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の管材接続具について、図1(a)はマウス体を正面方向から見た図、図1(b)はマウス体を側方から見た図、図1(c)はロック体を側方から見た図である。
図2】実施形態のロック体の外筒部及び外フランジ部について、図2(a)は側方から見た図、図2(b)は正面方向から見た図、図2(c)は先端側斜め上方から見た斜視図、図2(d)は縦断面図である。
図3】実施形態のマウス体の内筒部及び内フランジ部について、図3(a)は側方から見た図、図3(b)は正面方向から見た図、図3(c)は先端側斜め上方から見た斜視図、図3(d)は縦断面図である。
図4図4は、波付管材の外周面にロック体を螺合して取り付け後、構造物の貫通孔に波付管材の先端部を挿入し、波形管材の内周面にマウス体を螺合して取り付けた状態を側方から見た図である。
図5図5(a)はロック体の締め付けを開始する前で、圧潰パッキン部が潰れていない状態を側方から見た図、図5(b)はロック体の締め付けを完了し、圧潰パッキン部が潰れて視認できなくなった状態を側方から見た図である。
図6図6は、図4の状態からロック体の外筒部の締め付けを完了した状態における縦断面図である。
図7図7(a)~図7(c)は、ロック体の締め付けを行ったときに、圧潰パッキン部の周縁部が、締付圧によって外径が拡大した第1パッキン部の周縁部で覆われた状態となることを説明する図である。
図8図8(a)~図8(d)は、実施形態の第1変形例に係る管材接続構造について、波形管材の周囲に巻付係止材を巻き付け、貫通孔の内部に取り付ける手順を説明する図である。
図9】実施形態の第1変形例に係る管材接続構造について、図9(a)はマウス体側からコーキング材を注入する様子を示す図、図9(b)は巻付係止材とマウス体の間にコーキング材が充填された状態を側方から見た図である。
図10図10は、複数の貫通孔が形成されたハンドホール等の構造物を斜め上方から見た斜視図である。
図11図11(a)~図11(b)は、従来の管材接続具の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
[概要]
本実施形態の管材接続具10は、例えばハンドホールなどの地中に埋められる部分を含む構造物1に形成された貫通孔2に、内周面および外周面に凹凸が螺旋状に形成された波形管材5を、ロック体11とマウス体21とを使用して接続固定するものである。本実施形態では、波形管材5にはFEP管を用いている。ロック体11は、筒状の外筒部12を備え、外筒部12が波形管材5の外周に螺合される。作業現場で作業者がロック体11を回転すると、ロック体11は波形管材5の軸方向に移動する。マウス体21は、筒状の内筒部22を備え、内筒部22を波形管材5の管内に先端側から挿入する。これにより、マウス体21は、波形管材5の内周に螺合され、波形管材5の管内からの抜け出しが規制される。マウス体21を波形管材5の先端に取り付けた後、ロック体11をマウス体21の方向に締め付けると、ロック体11の外フランジ部13とマウス体21の内フランジ部23とによって貫通孔2の周囲の壁が挟み込まれた状態となり、波形管材5が貫通孔2に接続固定される。以下、図1図7を参照し、構造物1と波形管材5について説明した後、管材接続具10を構成するロック体11、マウス体21の構成について説明する。
【0023】
[構造物の構成について]
構造物1は、コンクリート製のハンドホールであり、例えば地中配管の分岐部分に施工される。図4において、紙面左側がハンドホールの内部、紙面右側は外部である。構造物1の外側の波付管材5は、土が盛られて地中に埋められた状態となる。構造物1には、直線状の貫通孔2が設けられている。貫通孔2は、例えばコアドリルによって形成されたものである。
【0024】
[波形管材について]
本実施形態では、波付管材5としては、適度に撓むことが可能なFEP管を使用している。波付管材5の外径は、貫通孔2の内径より小さい。波付管材5の外周面および内周面の各々には、規則的な螺旋状の凹凸が形成されている。具体的に、図4及び図6に示すように、波付管材5の外周面には外周螺旋凹凸6aが、波付管材5の内周面には内周螺旋凹凸6bが、それぞれ螺旋状に形成されている。
【0025】
波付管材5の材質は、適度な可撓性を有する軟質または硬質の樹脂であり、例えばポリエチレン、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレン等の種々の材質を採用できる。波付管材5の内部には、種々のケーブル類が挿通される。例えば、光信号又は電気信号が流れる通信ケーブルや、電力が送電される給電用ケーブルなどである。
【0026】
[ロック体の構成]
ロック体11は、図1(c)に示すように、外筒部12、外フランジ部13、第1パッキン部15、圧潰パッキン部16、フィン部17を備える。外筒部12、外フランジ部13、フィン部17は、例えば樹脂等の硬質の材質によって形成され、具体的には、例えば硬質のポリエチレン、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレン等、ほとんど撓まない硬質の材料によって形成されている。外筒部12は、図2(b)に示すように、中央部に開孔12aを備えている。外筒部12は、波形管材5の外径よりも僅かに内径が大きい円筒状の部材である。
【0027】
外フランジ部13は、外筒部12の先端部(図2(d)の左端)の全周から外側に向けて円板状に延出した部材である。外フランジ部13の先端面には、接着剤などによって環状の第1パッキン部15が取り付けられている。
【0028】
本実施形態では、図1(c)において、符号eで示す第1パッキン部15の厚みと、符号fで示す圧潰パッキン部16の厚みの比率は、5:1としている。
【0029】
第1パッキン部15は、クッション性及び可撓性を有する部材で、例えばウレタン製などで、内部の気泡が独立気泡である。本実施形態では、下記物性のウレタンフォームを使用している。第1パッキン部15は、水の浸透を防止する機能を備えている。具体的に、第1パッキン部15は、外フランジ部13、圧潰パッキン部16と共に、貫通孔2の周囲の構造物1の表面を密封し、構造物1との間の水の浸透を防止する。
〈第1パッキン部15の物性〉
密 度 85±15 kg/m3
圧縮硬さ(25%) 19.6±10 N
圧縮硬さ(50%) 39.2±10 N
引張強度 196以下 kPa
伸 び 250以下 %
引裂強度 7.8以下 N/cm
圧縮残留歪(50%圧縮) 5以上
たわみ率 80 %
通気性 2.0 cc/cm2/sec
【0030】
圧潰パッキン部16は、波付管材5の外周面に螺合されたロック体11を構造物1の方向へ締め付けたときの締付圧によって押し潰され、圧潰パッキン部16の厚みが薄くなったこと、もしくは、圧潰パッキン部16が視認できなくなったことにより、作業者がロック体11の締付状態の確認を行えるようにするための部材である。圧潰パッキン部16はロック体11を締め付ける前の段階では、第1パッキン部15の1/5程度の厚みを有しているが、ロック体11を締め付けて外フランジ部13と構造物1の貫通孔2の周囲の壁との間に挟まれて押し潰されたときは、厚みが例えば1~2mm以下にまで薄くなる。
【0031】
圧潰パッキン部16は、第1パッキン部15の一方の面(外フランジ部12と接着されている面とは反対側の面)に接着剤によって接合されている。本実施形態では、下記物性の軟質ウレタンフォームを使用している。圧潰パッキン部16は、上記した第1パッキン部15の物性とは異なる物性を有しており、圧力を加えると第1パッキン部15よりも容易に変形する。圧潰パッキン部16の軟質ウレタンフォームの気泡は、互いに繋がっている連続気泡である。
〈圧潰パッキン部16の物性〉
密 度 31±5 kg/m3
セル数 35±10 個/25mm
引張強度 98以上 kPa (1.0以上 kg/cm2
伸 び 100以上 %
引裂強度 4.90以上 N/cm (0.5以上 kg/cm)
【0032】
本実施形態の圧潰パッキン部16は、上記のとおり、連続気泡の軟質ウレタンフォームであって、その軟質ウレタンフォームは、密度が26kg/m3以上で36kg/m3以下の範囲のものである。
【0033】
圧潰パッキン部16は、少なくとも波付管材5の外周面に螺合された状態において作業者から見える位置に着色領域を有している。作業者から見える位置とは、例えば圧潰パッキン部16の側面部である。着色領域は、圧潰パッキン部16の全部(上面部、底面部、側面部を含むすべて)であってもよいし、側面部の全周にあってもよいし、側面部の一部にあってもよい。また、圧潰パッキン部16の着色領域は、作業現場で視認しやすい色彩であることが好ましい。視認しやすい色彩とは、例えば黄色であるが、赤色、青色、緑色など、どのような色彩でもよい。なお、圧潰パッキン部16の着色領域の色彩は、隣接する第1パッキン部15の色彩とは異なるものである。
【0034】
外筒部12を波付管材5の外周に螺合させるために、外筒部12の内面には第1係合部14が設けられている(図6を参照)。図2(b)に示すように、本実施形態では、外筒部12の内周面において互いに対向する位置に、一対の第1係合部14が中心に向けて突出している。そのため、波付管材5に対するロック体11の螺合が安定して行われる。
【0035】
ロック体11の周囲には、長手方向に延びるフィン部17が一定の間隔を空けて複数形成されている。それぞれのフィン部17の先端は、外フランジ部12に繋がっている。これにより、フィン部17は、ロック体11の強度を高めている。また、フィン部17は、作業者がロック体11を回転させる際に、滑り止めとしても機能も発揮する。
【0036】
[マウス体の構成]
マウス体21は、図1(b)に示すように、内筒部22、内フランジ部23、第2パッキン部24を備える。内筒部22、内フランジ部23は、例えば樹脂などの硬質または僅かに可撓性を有する材質によって形成され、具体的には、例えばポリエチレン、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレンなどの硬質または僅かに可撓性を有する材料によって形成されている。内筒部22は、図3(b)に示すように、中央部に開孔22aを備えている。内筒部22は、波形管材5の内径よりも僅かに外径が小さい円筒状の部材である。内筒部22は、図4に示すように、波付管材5の管内に先端側から挿入され、波形管材5の先端部の内周面に螺合される。
【0037】
内フランジ部23は、内筒部22の先端部(図3(d)の左端)の全周から外側に向けて円板状に延出した部材である。内フランジ部23の先端面と反対側の面には、接着剤などによって環状の第2パッキン部25が接合されている。
【0038】
第2パッキン部25は、クッション性及び可撓性を有する部材で、例えばウレタン製などで、内部の気泡が独立気泡である。本実施形態では、上記した第1パッキン部15と同じ物性のウレタンフォームを使用している。第2パッキン部25は、水の浸透を防止する機能を備えている。具体的に、第2パッキン部25は、内フランジ部23と共に、貫通孔2の周囲の構造物1の表面を密封し、構造物1との間の水の浸透を防止する。
【0039】
内筒部22を波付管材5の内周面に螺合させるために、内筒部22の外周面には第2係合部24が設けられている(図6を参照)。図3(a)に示すように、本実施形態では、内筒部22の内周面に連続した螺旋状の第2係合部24が突設されている。マウス体21は、波付管材5の先端側(ロック体11の締め付け方向と反対側)から入れられ、波付管材5の内側に螺合していく。
【0040】
第2パッキン部25と内フランジ部23との間には、可撓性を有する止水材29が充填されている。第2パッキン部25の形状は環状であり、より具体的には円環状である。第2パッキン部25は、可撓性を有し、内フランジ部23と構造物1の間の水の浸透を防止する。止水材29は、第2パッキン部25の内側に充填されている。止水材29は粘着性を有しており、凹凸に沿うように充填されるので、隙間を生じさせない。従って、長期間にわったって、防水性・止水性が低下せず、波形管材5内のケーブル類を水から守り故障を防ぐことができる。
【0041】
[本実施形態の効果等]
図4図7を参照しながら、本実施形態の管材接続具10の効果について説明する。マウス体21は、内筒体22の外周面に形成された第2係合部24が、波付管材5の内周螺旋凹凸6bと螺合しながら回転していくことができる。マウス体21は、図4に示すように、左方から波付管材5の先端部の内側に挿入される。波付管材5の内周面にマウス体21が螺合されることで、マウス体21の内フランジ部23の内側に設けた第2パッキン部25が、貫通孔2の周囲の構造物1に押し付けられて、当接した状態となる。
【0042】
ロック体11は、外筒部12の内周面に形成された第1係合部14が、波付管材5の外周螺旋凹凸6aと螺合しながら回転していくことができる。波付管材5の外周面にロック体11が螺合されることで、貫通孔5の周囲の壁面に対し、ロック体11が押し付けられる。マウス体21を取り付けた状態で、ロック体11を更に締め付けると、マウス体21とロック体11の距離が更に縮まり、ロック体11の外フランジ部12に接合された第1パッキン部15及び圧潰パッキン部16と、マウス体21の内フランジ部23に接合された第2パッキン部25とで、貫通孔2の周囲の構造物1が挟まれた状態となる。
【0043】
ここで、作業現場では、ロック体11側からどの程度まで締め付けを行えば締付完了と判断してよいのかが分かりにくいという課題がある。この課題に対応するため、本実施形態の管材接続具10では、図5(a)に示すように、第1パッキン部15と構造物1との間に、黄色の色彩を施した厚みが5mmの圧潰パッキン部16を接着して取り付けるようにした。本実施形態では、圧潰パッキン部16の全体が黄色である。
【0044】
第1パッキン部15と圧潰パッキン部16は、作業者がロック体11に対して最適な量の締め付けを行う過程で、図7(a)~図7(c)に示すように、それぞれの形状が次第に変化して行く。
【0045】
本実施形態では、先ず、ロック体11の締め付けを開始する時点では、図7(a)に示すように、圧潰パッキン部16の径は第1パッキン部15の径よりも僅かに短くなるようにしている。そのため、圧潰パッキン部の周縁部16aは、第1パッキン部15の周縁部15bよりも、圧潰パッキン部16の中心側に位置している。
【0046】
次に、ロック体11の締め付けがある程度進むと、図7(b)に示すように、第1パッキン部15の厚みは1/2程度に圧縮され、圧潰パッキン部16の厚みは1~2mm程度にまで圧縮される。第1パッキン部15の端部は外側方向に湾曲し始める。また、圧潰パッキン部の周縁部16aの位置は、第1パッキン部15の周縁部15bの位置とほぼ同じとなる。
【0047】
続いて、ロック体11の締め付け量が最も適切な段階に至ると、図7(c)に示すように、第1パッキン部15の厚みは1/5程度にまで圧縮され、圧潰パッキン部16の厚みは極めて薄く1mm以下になるまで圧縮される。第1パッキン部15の端部は更に外側方向に湾曲が進む。そして、圧潰パッキン部16の周縁部16aは、締付圧によって外径が僅かに拡大した第1パッキング部15の周縁部15aによって覆われた状態となる。
【0048】
本実施形態では、ロック体11の締め付けが完了するまでの間に、第1パッキン部15と圧潰パッキン部16に、概ね上記のような変化が現れるように、第1パッキン部15と圧潰パッキン部16の形状及び材質を決めている。そのため、作業者からは、締め付けを完了する前には存在していた圧潰パッキン部16の側面の黄色のラインが、徐々に幅が細くなって、最終的には黄色のラインが消失したように見える。
【0049】
すなわち、本実施形態では、ロック体11の締め付けを行ったときに、圧潰パッキン部16の周縁部16aが、締付圧によって外径が拡大した第1パッキン部15の周縁部15aで覆われた状態となることで、圧潰パッキン部16が視認できない状態となるように、圧潰パッキン部16と第1パッキン部15の形状及び材質を決めている。本実施形態によれば、単に圧潰パッキン部16の厚みが薄くなるだけでなく、完全に見えなくなる状態ができるように構成することで、作業者に対し、より明確に、締付完了のサインを示すことができる。
【0050】
これにより、作業者は、圧潰パッキン部16の黄色のラインが消失したことを目印として、ロック体11の締め付けを適切に行えるようになる。図5(b)と図6は、圧潰パッキン部16の黄色のラインが見えなくなった状態を示しており、ロック体11の締め付けの程度が良好な状態に至ったことを示している。ロック体11の第1パッキン部15及びマウス体21の第2パッキン部25の厚みは、締め込みを完了したときには、締付前と比較すると1/5程度にまで圧縮されている。そして、この状態では、第1パッキン部15及び圧潰パッキン部16が貫通孔2の周囲の構造物1に強く密着されて、止水性・防水性がより強固にされる。
【0051】
一方、マウス体21側では、第2パッキン部25が、貫通孔2の周囲の構造物1の表面を密封し、構造物1との間の水の浸透を防止すると共に、止水材29が環状の第2パッキン部25の中心部分に充填されているので、止水性・防水性がより強固にされる。
【0052】
以上に説明した本実施形態は、管材接続具10を用いて貫通孔2に波付管材5を接続固定する管材接続方法を含むものである。
【0053】
本実施形態の管材接続方法は、
波付管材5の内周面にマウス体12を螺合して、マウス体12の内フランジ部23に取り付けた第2パッキン部25を、貫通孔2の周囲の構造物1に押し付けて当接した状態とする第1工程と、
波付管材5の外周面にロック体11を螺合して、ロック体11の外フランジ部13に取り付けた第1パッキン部15及び圧潰パッキン部16を、貫通孔2の周囲の構造物1に押し付けて当接した状態とする第2工程と、
ロック体1を構造物1の方向へ更に締め付けたときの締付圧によって、圧潰パッキン部16が押し潰される第3工程と、
圧潰パッキン部16の厚みが薄くなったこと、もしくは、圧潰パッキン部16が視認できなくなったことにより、ロック体11の締付状態の確認を行う第4工程と、
を含むものである。
【0054】
上記第3工程は、ロック体1を構造物1の方向へ締め付けたときの締付圧によって圧潰パッキン部16が押し潰されると共に、圧潰パッキン部16の周縁部16aが、締付圧によって外径が拡大した第1パッキン部15の周縁部15aで覆われた状態となることにより、圧潰パッキン部16が視認できない状態となる工程としてもよい。その場合、上記第4工程は、圧潰パッキン部16の厚みが視認できなくなったことをサインとして、ロック体11の締付を完了する工程としてもよい。
【0055】
[その他の効果]
管材接続具10は、基本的には、波付管材5の外周面に取り付けたロック体11側を締め付けることにより、ロック体11とマウス体21との間の距離が短くなり、貫通孔2の周囲の構造物1が挟まれることで、波付管材5の接続固定が完了する。しかし、本実施形態の管材接続具10の適用範囲を地中梁にも拡大すると、構造物1の作業現場では、ロック体11の締め付けが完了した後でも、マウス体21の側から増し締めを行いたいという要望を受けることがある。
【0056】
そこで、本実施形態の管材接続具10では、マウス体21側からの増し締めを可能とするために、図1(a)および図3(b)に示すように、マウス体21の内フランジ部23は、第2パッキン部25が取り付けられる面とは反対側の面に、増し締め用の治具と係合させることが可能な係合部26を備えている。
【0057】
係合部26は、図3(c)に示すように、内フランジ部23の直径上の両端に切り欠き部を設けることによって構成することができる。係合部26の2つの切り欠き部に、作業者がそれぞれドライバーの先端を係合させ、各ドライバーを時計方向に回転することで、マウス体21側からの増し締めが行える。なお、ドライバーは、増し締め用治具に相当するものである。
【0058】
また、切り欠き部によって形成された係合部26の周囲は、厚みを増した隆起部27となっている。係合部26の周囲は、隆起部27によって、内フランジ部23の他の部分の厚みよりも厚みを増しているため、作業者はドライバーの先端を係合させやすくなると共に、係合部26が破損するおそれも低減できる。
【0059】
[実施形態の第1変形例]
次に、図8図9を参照して、本実施形態の第1変形例に係る管材接続構造について説明する。例えば、構造物1が地中梁である場合、梁の幅が厚く、貫通孔2の長さは長いため、貫通孔2の内部空間をコーキング材ですべて埋めることは経済的でない上、作業時間も長くかかる。そのため、コーキング材を効率的に短時間で埋め込むことができる管材接続構造が求められる。
【0060】
本変形例の管材接続構造は、上述した管材接続具10と、波付管材5の外周面に巻き付けて係止させることが可能な所要の長さを有する巻付係止材41と、コーキング材43とを用いて、構造物1に形成された貫通孔2に、波付管材5を接続固定するものである。本変形例では、巻付係止材としては軟質のウレタンフォーム材を用いている。
【0061】
本変形例では、図8(a)に示すように、波付管材5の先端部付近の外周面にロック体11を螺合すると共に、図8(b)に示すように、波付管材5の先端からマウス体21を螺合して取り付ける。ここまでの工程は、上述の実施形態と変わるところはないが、本変形例では、次の工程で、図8(c)に示すように、マウス体21の近傍の位置で巻付係止材41を波形管材5の外周面に巻き付けて係止する。ここで、巻付係止材41を波付管材5の所要の位置に係止して固定させる方法は、単に巻き付けるだけでもよいし、必要であれば結び付けてもよい。
【0062】
本変形例では、ロック体11側からの締め付け工程が完了したときには、図8(d)に示すように、巻付係止材41は、貫通孔2の内部の所要の位置において、波付管材5の外周面に巻き付けられた状態で固定されている。そのため、巻付係止材41が、貫通孔2の内部で壁(土手)の役割を果たすことができる。そして、次の工程では、図9(a)に示すように、作業者が注入具42を用いて、コーキング材43をマウス体21の側から注入する。
【0063】
なお、マウス体21の内フランジ部23には、図3(b)に示すように、小円からなる注入口予定部28が開孔22aの外側の周囲に2箇所表示されている。作業者は、注入口予定部28を目途にドリルを用いて注入口をあらかじめ開口しておく。図9(a)は、注入口がすでに開口している状態を示している。
【0064】
以上の工程を実施することで、コーキング材43を、巻付係止材41とマウス体21との間の空間のみを埋めるように充填することができる。これにより、本変形例の管材接続構造では、コーキング材43を効率的に短時間で埋め込むことができる。
【0065】
[その他の変形例]
上述の実施形態において、外フランジ部13と内フランジ部23は、外筒部12及び内筒部22に対して一体形成されている必要はなく、着脱自在の構成でもよい。例えば、外フランジ部13と内フランジ部23は、外筒部12及び内筒部22に螺合されている構成でもよい。
【0066】
上述の実施形態において、ロック体11の外筒部12の内周面に、螺旋状に連続している第1係合部14が形成されていてもよい。また、外筒部12の内周面に、3個以上の第1係合部14が形成されていてもよい。
【0067】
上述の実施形態において、外フランジ部13及び内フランジ部23は、一部切り欠きされた形状でもよいし、楕円、多角形状など、どのような形状でもよい。また、外筒部11及び内筒部22に対して直角方向ではなく、斜めに延出された形状でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の管材接続具は、ハンドホールの貫通孔に限らず、地中梁の貫通孔に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 構造物
2 貫通孔
5 波付管材(FEP管)
6a 外周螺旋凹凸
6b 内周螺旋凹凸
10 管材接続具
11 ロック体
12 外筒部
13 外フランジ部
14 第1係合部
15 第1パッキン部
16 圧潰パッキン部
17 フィン部
21 マウス体
22 内筒部
23 内フランジ部
24 第2係合部
25 第2パッキン部
26 切り欠き部(係合部)
27 隆起部
28 注入予定部
29 止水材
41 巻付係止材
42 注入具
43 コーキング材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11