(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030224
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/11 20170101AFI20240229BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240229BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240229BHJP
【FI】
G06T7/11
G06T7/00 350C
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132926
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】591063202
【氏名又は名称】産業振興株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭造
(72)【発明者】
【氏名】池田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小泉 真志
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 誠司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 均
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC12
5L096AA09
5L096BA08
5L096DA02
5L096FA02
5L096FA69
5L096FA70
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】スクラップをより定量的な区分で管理できるようにする。
【解決手段】形態の異なる複数のスクラップが混在したスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する画像取得手段と、画像内におけるスクラップの形態ごとの特徴領域の位置および当該形態の嵩比重を教師データとして学習された学習済みモデルを用いて、前記画像取得手段によって取得された撮影画像において形態ごとに領域を区分けするとともに、形態ごとの嵩比重を推定する推定手段と、前記推定手段の推定結果を用いて、前記画像取得手段によって取得された撮影画像のスクラップ集合体全体の嵩比重を出力する出力手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形態の異なる複数のスクラップが混在したスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する画像取得手段と、
画像内におけるスクラップの形態ごとの特徴領域の位置および当該形態の嵩比重を教師データとして学習された学習済みモデルを用いて、前記画像取得手段によって取得された撮影画像において形態ごとに領域を区分けするとともに、形態ごとの嵩比重を推定する推定手段と、
前記推定手段の推定結果を用いて、前記画像取得手段によって取得された撮影画像のスクラップ集合体全体の嵩比重を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記撮影したスクラップ集合体の三次元位置測定によって得られた前記スクラップ集合体の形状から当該スクラップ集合体の体積を算出する体積取得手段をさらに備え、
前記出力手段は、前記スクラップ集合体全体の嵩比重と、前記体積取得手段によって取得された体積とを用いて、当該スクラップ集合体の重量を算出することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記撮影画像は、スクラップ山を構成するスクラップ集合体を撮影した画像であり、
前記出力手段は、前記スクラップ山の重量を在庫として算出することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記学習済みモデルを更新する更新手段をさらに備え、
前記体積取得手段は、スクラップ山から積み込みを行ったことによるスクラップ山の体積の減少分を算出し、
前記出力手段は、前記積み込みされた積荷の重量と前記体積の減少分とから、前記積荷の嵩比重を算出し、
前記更新手段は、前記出力手段によって算出された嵩比重に基づいて前記学習済みモデルを更新することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記撮影画像は、スクラップ山から吊り上げられたスクラップ集合体を撮影した画像であり、
前記出力手段は、前記スクラップ山から吊り上げられたスクラップ集合体の重量を算出することにより、積み込み量を通知することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
スクラップ集合体の撮影画像を入力データとし、前記教師データを用いて機械学習することにより前記学習済みモデルを生成する学習手段をさらに備えることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
形態の異なる複数のスクラップが混在したスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する画像取得工程と、
画像内におけるスクラップの形態ごとの特徴領域の位置および当該形態の嵩比重を教師データとして学習された学習済みモデルを用いて、前記画像取得工程において取得された撮影画像において形態ごとに領域を区分けするとともに、形態ごとの嵩比重を推定する推定工程と、
前記推定工程の推定結果を用いて、前記画像取得工程において取得された撮影画像のスクラップ集合体全体の嵩比重を出力する出力工程と、
を備えることを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項8】
形態の異なる複数のスクラップが混在したスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する画像取得工程と、
画像内におけるスクラップの形態ごとの特徴領域の位置および当該形態の嵩比重を教師データとして学習された学習済みモデルを用いて、前記画像取得工程において取得された撮影画像において形態ごとに領域を区分けするとともに、形態ごとの嵩比重を推定する推定工程と、
前記推定工程の推定結果を用いて、前記画像取得工程において取得された撮影画像のスクラップ集合体全体の嵩比重を出力する出力工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、スクラップを管理するために用いて好適な情報処理装置、情報処理装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルといった社会の実現に向けて、高級鋼の製造に適した技術として、高炉法による製鉄技術から二酸化炭素の排出量の少ない電気炉法による鉄鋼製造技術へのニーズが高まってきている。電気炉法においては、鉄系スクラップを再利用することから、スクラップの需要も高くなってきている。こうしたスクラップの需要の高まりを受けて、スクラップの価格が上昇しており、今後も価格が高位で推移することが予測されている。
【0003】
また、電気炉法による鉄鋼製造技術へのニーズの高まりに伴い、スクラップを管理するシステムの構築も重要になっている。
図3には、スクラップを管理する区分の例を示す。スクラップの品種の一例としては、ヘビー屑、プレス屑、シュレッダー屑、新断などが挙げられ、これ以外の品種も数多く存在する。また、これらの品種は、それぞれスクラップのサイズによって2~5種類程度の等級に分けられる。このように区分で管理されたスクラップを配合調整することにより、スクラップが再利用される。
【0004】
一方で、スクラップの区分は操業オペレーターの経験に頼っており、大まかで、定量的な評価がないのが実態であり、スクラップの検定員や検収員、操業オペレーターの経験に基づいた等級の管理や工場操業の長年の経験に基づいた配合調整が行われているのが現状である。そこで特許文献1には、鉄スクラップの集合の画像を入力データとし、各等級の割合を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、カメラにより生成された画像から、鉄スクラップに含まれる各等級の割合を推定するスクラップ等級判定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、電気炉に供給するスクラップの嵩比重が電気炉ならびに製鋼工場の操業に大きく影響することが知られている。嵩比重によって炉当たりの出鋼量が左右され、エネルギー原単位にも大きな影響を及ぼすが、電気炉に投入する前にスクラップの嵩比重を定量的に把握してないのが現状であり、スクラップの形態の区分や重量の精度については依然としてオペレーターの経験に頼っている。
【0007】
また、スクラップヤードに於いては、体積を目視で測定し、品種や等級別に長年の経験により積み上げた嵩比重を用いて在庫の棚卸が行われる。しかしながら、等級は同じでも形態が異なることによって嵩比重は大きく異なり、在庫棚卸の精度には大きな問題があった。そこで、積み上げた嵩比重データに信ぴょう性が低い場合は、在庫山から一定量のスクラップの集合を取り出し、内法の判明している容器に入れ、毎回、嵩比重を計測する必要があった。また、嵩比重の計測を、代表するスクラップの集合で行っても、スクラップの等級や区分が同じでも当該山のスクラップが同じ形態で同じような嵩比重である保証はなく、在庫山の体積測定を行っても、在庫重量の精度は低いものであった。
【0008】
特許文献1に記載の技術では、スクラップ山もしくはクレーン等で積み上げたスクラップの集合から、上述した品種および等級の割合を推定するための技術であるが、等級内の形態の違いや形態の違いによる嵩比重の違いは判定することができない。また、特許文献1に記載の技術では、重量を推定する学習モデルを機械学習により構築するとしているが、スクラップの集合を撮影した画像を学習しても重量を推定することは困難であり、スクラップの重量を推定するには精度が不十分である。
【0009】
本発明は前述の問題点に鑑み、スクラップをより定量的な区分で管理できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る情報処理装置は、形態の異なる複数のスクラップが混在したスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する画像取得手段と、画像内におけるスクラップの形態ごとの特徴領域の位置および当該形態の嵩比重を教師データとして学習された学習済みモデルを用いて、前記画像取得手段によって取得された撮影画像において形態ごとに領域を区分けするとともに、形態ごとの嵩比重を推定する推定手段と、前記推定手段の推定結果を用いて、前記画像取得手段によって取得された撮影画像のスクラップ集合体全体の嵩比重を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る情報処理装置の制御方法は、形態の異なる複数のスクラップが混在したスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する画像取得工程と、画像内におけるスクラップの形態ごとの特徴領域の位置および当該形態の嵩比重を教師データとして学習された学習済みモデルを用いて、前記画像取得工程において取得された撮影画像において形態ごとに領域を区分けするとともに、形態ごとの嵩比重を推定する推定工程と、前記推定工程の推定結果を用いて、前記画像取得工程において取得された撮影画像のスクラップ集合体全体の嵩比重を出力する出力工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプログラムは、形態の異なる複数のスクラップが混在したスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する画像取得工程と、画像内におけるスクラップの形態ごとの特徴領域の位置および当該形態の嵩比重を教師データとして学習された学習済みモデルを用いて、前記画像取得工程において取得された撮影画像において形態ごとに領域を区分けするとともに、形態ごとの嵩比重を推定する推定工程と、前記推定工程の推定結果を用いて、前記画像取得工程において取得された撮影画像のスクラップ集合体全体の嵩比重を出力する出力工程と、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スクラップをより定量的な区分で管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るスクラップ推定システムの概略を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施形態における情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】品種および等級によるスクラップの区分を説明するための図である。
【
図4】同一等級内での嵩比重のばらつきを説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態において、撮影画像内の同一形態と嵩比重とを紐付ける学習済みモデルを生成する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】同一形態の部分が区分けされた撮影画像の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態において、スクラップ山全体の嵩比重を推定して出力する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】品種、等級および嵩比重によるスクラップの区分けを説明するための図である。
【
図9】本発明の実施形態において、学習済みモデルを更新する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態において、ダンプへの積込み量を通知する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態において、在庫であるスクラップ山の重量を算出する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態における情報処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態では、スクラップの集合体の形態別の嵩比重を学習した上、正確な体積を三次元位置測定装置で測定した形状に基づいて算出してその体積と嵩比重から重量を算出する。更には、その重量と体積とから嵩比重を逆算して機械学習により学習済みモデルを更新していくことを繰り返す。これにより、形態と嵩比重とを紐付けし、形態別の嵩比重を精度よく把握し、嵩比重をスクラップの等級判定に定量的指標として導入することを特徴とする。かかる嵩比重は三次元位置測定と組み合わせることで精度の高い在庫重量を提供するものである。また、ダンプ等への積み込みを行う際にも、体積から積み込み重量を算定でき、積載重量上限以下に効率的に積み込むことも可能とする。
【0016】
本実施形態では、重機やクレーンに架装されたリフティングマグネットに、同一性の高いスクラップの集合体を吊り上げ、複数の方向からスクラップを撮影するカメラから、同一性の高いスクラップの集合体の画像を撮影する。そして、内法を正確に測定したダンプ等に、スクラップの形態に同一性が高いスクラップの集合体を積み込み、スクラップヤードの入り口に備えられた車両ごと重量を測定する秤量機にかけて秤量して嵩比重を求め、形態の画像と嵩比重との関係を機械学習させることにより、形態と嵩比重との関係を連続的な相関をもって把握させる。
【0017】
また、在庫としてスクラップ山の重量を測定する際には、従前は目視の体積測定と経験的に把握していた嵩比重によって山の重量を求めていたが、極めて精度が低く、同じ品種区分内でも、形態が異なるスクラップの集合体であるため、形態によって嵩比重に差が生じ、在庫山の重量に誤差を生じていた。そこで本実施形態では、在庫であるスクラップ山の体積を、ドローンなどを活用して三次元位置測定し、機械学習した形態別の嵩比重を用いて形態別の重量を把握し、加重平均することによってスクラップ山の重量を高精度に把握することができる。
【0018】
さらに本実施形態では、秤量機によって重量の判明している積荷と、スクラップ山の三次元位置測定を継続的に実施することによって測定されるスクラップ山の体積の増減との関係によって逆算した嵩比重を用い、その学習の軽重によって機械学習によって生成された学習済みモデルを常時更新するようにしている。これにより、連続した形態と嵩比重との関係性に於いて、より嵩比重の精度を向上させることができる。
【0019】
また、ダンプ等にスクラップを積み込む際にスクラップの輸送効率を向上させるためには、最大積載量の基準を守りつつ、目標以上の積み込み重量を確保することが重要である。従来は、オペレーターがリフティングマグネットで積み込んだ回数をカウントして調整するなど勘に頼った操業が行われており、秤量機で重量を測定して目標の積み込み重量に達していない場合には、積み込み場所に戻って、再積み込みの調整が必要であった。そこで本実施形態では、積み込みの都度、リフティングマグネットに吊り上げられたスクラップ集合体の嵩比重を推定するとともに三次元位置測定などの方法を用いて積荷の体積を算出し、リアルタイムに積み付け重量を算出することで目標重量範囲に精度よく調整し、秤量機で重量を測定するまでの積み込み重量の調整を最小限とすることを可能とする。
【0020】
また、
図3に示したように、スクラップの品種区分は極めて定性的で大雑把なものであり、従来は区分けや配合は検定員やオペレーターの勘に頼ったものであった。そこで本実施形態では、スクラップ山の集合体において、撮影画像から常にリアルタイムでスクラップ山の集合体の嵩比重を提供することができ、客先に納入するスクラップの集合体の嵩比重を品種区分に付加して提供することができる。本実施形態では、品種区分を定量的に細分化するものであり、定量的な嵩比重により品種区分をさらに細分化して客先に販売を行うことができる。このように、嵩比重によって定量的な品種区分を細分化した販売方法は、客先において当該スクラップの品位を定量的に把握することができることを意味する。結果、客先は、当該嵩比重と炉の操業との相関を定量的に把握することができ、炉の操業を最適化する所要の嵩比重を定量的に把握することができる。
【0021】
以下、本発明の実施形態の詳細について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
[システム概要]
図1は、本実施形態に係るスクラップ推定システム100の概略を説明するための図である。
図1に示すように、スクラップヤード内においてスクラップ山101をカメラ102aが常時撮影を行っている。なお、
図1においては、スクラップ山は1つしか図示していないが、スクラップ山は複数存在し、それぞれのスクラップ山を撮影するカメラも複数存在するものとする。また、スクラップ山を撮影するカメラは1台に限らず、1つのスクラップ山に対して複数のカメラを設置し、複数の角度からスクラップ山を撮影できるようにしてもよい。
【0023】
ダンプ104にスクラップを積み組む際には、スクラップヤードの上部に設置されているリフティングマグネット103を用いてスクラップ山101からスクラップを吊り上げ、スクラップをダンプ104に積み込む。また、リフティングマグネット103で吊り上げられたスクラップ集合体を撮影するカメラ102b、およびダンプ104積み込まれたスクラップ集合体を撮影するカメラ102cも設置されている。
【0024】
秤量機105は、スクラップヤードの入り口付近に埋設された踏板センサーであり、スクラップを積み込んだ状態でダンプ104の重量を測定する。空のダンプ104の重量を秤量機105で予め測定しておくことにより、積み込んだスクラップの重量を測定することができる。また、本実施形態に係るスクラップ推定システム100では、三次元位置測定装置106を用いてスクラップ山101やリフティングマグネット103で吊り上げられたスクラップ集合体の形状を測定する。
【0025】
ここで、三次元位置測定装置106による測定は、スクラップ集合体の体積を算出できるものであれば、どのような方法を用いてもよい。例えば、スクラップ山101の形状を測定する場合には、バックパック型のLiDAR(GreenValley International社製)の装置を作業員が担ぐか、もしくはスクラップヤード内を動く車の天井に設置し、スクラップ山やの周囲を移動してスクラップの集合体の形状を測定する方法が挙げられる。LiDARの装置を用いる場合には、スクラップ集合体に向けてレーザーを照射してスクラップの表面からの反射波が戻ってくるまでの時間を測定することにより表面の位置を特定する。また、リフティングマグネット103で吊り上げられたスクラップ集合体の形状を測定する場合には、ドローンを用いてもよい。ドローンを用いる場合には、ドローンを飛ばして複数の高度でスクラップ集合体を撮影し、立体写真から形状を測定する方法を用いてもよく、ドローンを飛ばしてスクラップ集合体にレーザーを照射して形状を測定する方法を用いてもよい。
【0026】
スクラップ山101に積み上げられたスクラップは、通常、目視判定や発生形態によってほぼ同一の品種で区分されているが、混在している場合も多い。
図3に示すように、スクラップは、例えばヘビー屑やプレス屑などの品種によって区別され、さらに同一品種の中で大きさ(具体的には、厚さ、幅又は高さ、長さ)及び重さに応じた等級が定められている。また、スクラップ山101は同一の品種のスクラップだけで構成されていても、等級の異なるスクラップが混在している場合もあり、さらに同一の等級であっても、
図3に示すように、等級は非常に大まかな区分であることから、様々な形態のスクラップが混在している。
【0027】
図4は、ヘビー屑のH2等級における嵩比重のばらつきを説明するための図である。
図4に示す例では、同一の等級であっても嵩比重にばらつきがあること示しており、このばらつきはスクラップの形態の違いに依存しており、嵩比重を特定することにより、逆に形態区分を詳細に表すことができる。
【0028】
[情報処理装置の構成]
図12は、本実施形態において、嵩比重を推定する情報処理装置201のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図12に示すように、情報処理装置201は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、記憶装置304と、入出力I/F305と、通信I/F306とを備えており、これらはバス307によって接続されている。
【0029】
CPU301は、ROM302に記憶された制御プログラムを読み出して各種処理を実行する。RAM303は、CPU301の主メモリ、ワークエリア等の一時記憶領域として用いられる。記憶装置304は、各種データや各種プログラム等を記憶する。表示装置405は、各種情報を表示する。入出力I/F305は、キーボードやマウスからユーザによる各種操作を受け付けたり、不図示の表示装置に演算結果を表示させたりするためのインターフェースである。
【0030】
通信I/F306は、ネットワークを介して外部装置から情報を取得するためのインターフェースである。カメラ102a、102b、102cで撮影されたスクラップ集合体の撮影画像は、有線または無線通信により、通信I/F306を介して本実施形態の情報処理装置201に受信される。また、秤量機105および三次元位置測定装置106の測定結果も、有線または無線通信により、通信I/F306を介して本実施形態の情報処理装置201に受信される。
【0031】
図2は、本実施形態において、嵩比重を推定する情報処理装置201の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、情報処理装置201は、形状判定部202、重量換算部203、体積換算部204、嵩比重換算部205、入力部206、出力部207および記憶部220を備えている。また、形状判定部202はさらに、画像取得部211、学習部212、推論部213および照合部214を備えている。
【0032】
画像取得部211は、
図1に示したカメラ102a、102b、102cからなるカメラ群102からスクラップ集合体の撮影画像を取得する。学習部212は、後述する機械学習によりスクラップ集合体の中の同じ形態の部分とその部分のスクラップの嵩比重とを紐付けた学習済みモデルを生成する。学習方法の詳細については後述する。
【0033】
推論部213は、学習部212で生成した学習モデルを用いて、スクラップ山を撮影した撮影画像内のスクラップ集合体で同一形態ごとに嵩比重を紐付ける。照合部214は、撮影画像から同一形態ごとの体積比率を推定し、スクラップ集合体全体の嵩比重を算出する。また、照合部214は、推論部213で推定された嵩比重と、体積換算部204から出力されるスクラップ集合体の体積とを用いて、スクラップ集合体の重量を算出する。
【0034】
重量換算部203は、秤量機105から出力される重量から空のダンプの重量を差し引いて、ダンプに積み込まれたスクラップ集合体の重量を算出する。なお、秤量機105もしくはそれ以外の外部装置でスクラップ集合体の重量を算出し、その情報を情報処理装置201が受信するようにしてもよい。体積換算部204は、三次元位置測定装置106で測定されたスクラップ集合体の形状から、スクラップ集合体の体積を算出する。なお、その他の外部装置でスクラップ集合体の体積を算出し、その情報を情報処理装置201が受信するようにしてもよい。
【0035】
嵩比重換算部205は、重量換算部203で算出されたスクラップ集合体の重量と、体積換算部204で算出されたスクラップ集合体の体積とから、スクラップ集合体の嵩比重を算出する。なお、ここで算出される嵩比重は、学習済みデータに含まれる嵩比重を補正する際などに用いられる。
【0036】
入力部206は、学習フェーズにおいて学習済みモデルを生成する際に、ユーザの操作により、撮影画像内で同一形態の区分を入力する。また、入力部206は、ユーザの操作によりその他必要な情報を入力する。出力部207は、照合部214によって得られた結果(嵩比重や重量)を不図示の表示装置に表示する。記憶部220は、学習部212で生成された学習済みモデルや、学習済みモデルを生成するのに必要な同一形態のスクラップ集合体からなる撮影画像など、その他必要な情報を記憶する。なお、記憶部220の一部は、データベースとして外部の装置に設けてもよい。
【0037】
[学習フェーズの処理]
まず、学習済みモデルを生成する手順について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
図5は、本実施形態において、撮影画像内の同一形態と嵩比重とを紐付ける学習済みモデルを生成する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5に示す各処理は、ROM302または記憶装置304に記憶されたプログラムをRAM303に展開し、CPU301がそのプログラムを実行することにより行われる。
【0038】
まず、ステップS501において、画像取得部211は、スクラップ集合体の撮影画像を記憶部220から取得する。ここで取得する撮影画像は、予め同一形態のスクラップに仕分けされたスクラップ集合体を撮影した撮影画像であることが好ましいが、数種類の形態が含まれたスクラップ集合体を撮影した撮影画像でもよい。これらのスクラップ集合体は、どの状態で撮影されてもよく、例えば、リフティングマグネットに吊り下げられた状態で撮影されてもよく、スクラップ山とは異なる小さい山として撮影されてもよい。
【0039】
次に、ステップS502において、形状判定部202は、ステップS501で得られた撮影画像の中から同一形態のスクラップに該当する部分を区分けする。この処理では、出力部207により撮影画像を表示装置に表示し、ユーザが撮影画像を見ながら同一形態の部分を指定することによって区分けする。なお、区分けした際に、形態の名称などを区分けした部分に関連付けておいてもよい。
【0040】
図6は、同一形態のスクラップに該当する部分を区分けした状態を説明するための図である。
図6(a)~
図6(c)は、それぞれスクラップ山から同一形態のスクラップに該当する部分が区分けされた例を示している。この区分けは学習フェーズにおいてはユーザの操作により手動で行い、後述する推論フェーズでは、学習済みモデルを用いて自動で区分けを行うようにする。
【0041】
続いてステップS503において、形状判定部202は、ステップS502で区分けした部分に該当する形態における嵩比重を取得する。本実施形態においては、スクラップの形態ごとに嵩比重が予め測定されており、形態とそれに対応する嵩比重とのテーブルが記憶部220に記憶されている。形状判定部202は、当該テーブルから該当する形態の嵩比重を取得する。
【0042】
ここで、嵩比重の測定方法について説明する。まず、ダンプに同一形態のスクラップを摺切り一杯積み込む。ダンプに積み込む際に容積が予め判明しているので、この段階でダンプに積み込んだスクラップ集合体の体積が判明する。そして、スクラップを積み込んだダンプの重量を秤量機で測定し、ダンプ本体の重量を差し引くことによりスクラップ集合体の重量が判明する。そして、その重量を体積で割ることにより嵩比重を測定することができる。なお、これ以外の方法で形態ごとに嵩比重を測定してもよい。
【0043】
次に、ステップS504において、形状判定部202は、撮影画像名の区分けした部分と、ステップS503で取得した嵩比重とを紐付けする。そして、ステップS505において、形状判定部202は、撮影画像内での区分けされた形態と嵩比重とが紐付けされた撮影画像の数が所定数に達したか否かを判定する。この判定の結果、所定数に達していない場合はステップS501に戻り、処理を繰り返す。
【0044】
一方、ステップS505の判定の結果、所定数に達した場合は、ステップS506において、学習部212は、機械学習を実行し、学習済みモデルを生成する。本実施形態においては、同一形態の部分を区分けする必要があることから、撮影画像から自動的に特徴を抽出可能なディープニューラルネットワークや畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習を行う。
【0045】
機械学習では、スクラップ集合体を撮影した撮影画像を入力データとし、形態ごとの特徴領域の位置およびその形態の嵩比重を教師データとする。例えば
図6に示した例の場合では、
図6(a)~
図6(c)の太枠に囲まれた領域の各画素に対して、嵩比重の数値を関連付けて学習させ、スクラップに該当しないその他の部分についてはマスキングを行って学習の対象外とする。嵩比重の数値を関連付ける際には、区分けされた領域内でスクラップの形態(鉄の部分と空気の部分の比率)を見極めるように学習させ、その比率によって嵩比重との相関を導き出せるようにする。このように機械学習を繰り返すことにより、スクラップ集合体を撮影した撮影画像から、形態ごとに区分けしてそれらの部分での嵩比重を推定するための学習済みモデルを生成する。
【0046】
次に、ステップS507において、学習部212は、テストデータを用いて学習済みモデルの評価を行う。ここで用いるテストデータは、撮影画像と、その撮影画像における形態ごとの区分けおよび区分けされた部分の嵩比重からなる正解データとを含む。なお、ここで用いる撮影画像は学習に用いた撮影画像であってもよく、学習に用いなかった撮影画像であってもよい。また、テストデータは、学習済みモデルを評価できる程度の数を予め用意しておくものとする。
【0047】
また、学習済みモデルの評価方法としては、撮影画像内での同一形態の区分けの重複率およびそれぞれの形態で正しい嵩比重の正解率に応じたスコアを算出する。例えば、学習済みモデルで推定した同一形態での区分けと正解データとを比較して重複率が高いほどスコアが高くなるようにし、正しい嵩比重を推定した場合は加算し、誤った嵩比重を推定した場合は減算して最終的なスコアを算出する。
【0048】
次に、ステップS508において、学習部212は、ステップS508で算出したスコアの平均値が所定値以上であるか否かを判定する。この判定の結果、スコアの平均値が所定値未満である場合は、学習済みモデルはまだ学習不足であることからステップS501に戻る。一方、ステップS508の判定の結果、スコアの平均値が所定値以上である場合は、ステップS509において、学習部212は、生成した学習済みモデルを記憶部220に記憶し、学習フェーズでの処理を終了する。
【0049】
[推論フェーズ]
次に、撮影画像内において同一形態ごとに嵩比重を推定する処理について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態において、スクラップ山全体の嵩比重を推定して出力する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7に示す各処理は、ROM302または記憶装置304に記憶されたプログラムをRAM303に展開し、CPU301がそのプログラムを実行することにより行われる。
【0050】
まず、ステップS701において、画像取得部211は、カメラ102aからスクラップ山を撮影した撮影画像を取得する。1つのスクラップ山に対して複数のカメラから撮影可能である場合には、それぞれのカメラから同一のスクラップ山を撮影した撮影画像を取得する。
【0051】
次に、ステップS702において、推論部213は、記憶部220に記憶された学習済みモデルを用いて、ステップS701で取得した撮影画像内のスクラップ集合体において、同一形態で区分けを行う。そして、ステップS703において、推論部213は、学習済みモデルを用いてステップS702で区分けした各形態において嵩比重を推定する。
【0052】
続いてステップS704において、照合部214は、スクラップ山におけるそれぞれの形態の体積割合を単純計算し、体積割合に従って嵩比重を加重平均し、スクラップ山(スクラップ集合体)全体の嵩比重を算出する。なお、体積割合を単純計算する際に、2方向以上からスクラップ山が撮影された場合には、それぞれの撮影画像内で単純計算された体積割合の平均値を用いるものとする。なお、算出したスクラップ山(スクラップ集合体)全体の嵩比重は記憶部220に現在の嵩比重として記憶するようにする。
【0053】
次に、ステップS705において、形状判定部202は、入力部206から出力の指示を受けたか否かを判定する。この判定の結果、出力の指示を受けていない場合は、ステップS701に戻り、所定の期間が経過した後にステップS701の処理を行うようにする。スクラップ山はダンプへの積み込みやダンプからの搬入によって同一形態の割合が変化する可能性がある。出力が指示されたときに最新の情報を提供する必要があるため、出力の指示がない場合はステップS701~S704の処理を繰り返すようにしている。
【0054】
一方、ステップS705の判定の結果、出力の指示があった場合は、ステップS706において、照合部214は、ステップS704で算出したスクラップ集合体全体の嵩比重を、現在のスクラップ山の嵩比重として決定する。そして、ステップS706において、出力部207は、撮影画像とともにスクラップ山の嵩比重と、必要に応じて各形態の嵩比重の情報を表示装置に表示し、処理を終了する。
【0055】
図8は、本実施形態において、等級区分をさらに細分化した例を説明するための図である。例えば等級「H2」では、ヘビー屑の品種で、厚さが3mm以上6mm未満で、かつ幅又は高さ×長さが500mm以下×1200mm以下であれば、どのような形態であっても等級「H2」として従来は一括に管理されていた。これに対して本実施形態では、等級「H2」において、さらに嵩比重でより細分化して管理することができる。これにより、客先に納入するスクラップの品位を嵩比重の一定範囲にあるものとして特定して品種区分を細分化した形でデータを提供することができる。また、実質的に細分化した品種区分を提供することにより、スクラップ品位の向上に寄与することができる。
【0056】
[学習済みモデルの更新]
次に、学習フェーズにて生成した学習済みモデルを更新する手順について、
図9のフローチャートを参照しながら説明する。本実施形態では、学習済みモデルの精度をさらに改善するために、秤量機によって重量が判明している積荷と、三次元位置測定を用いてスクラップ山の体積の増減とから嵩比重を逆算することにより、学習済みモデルを更新する。これにより、形態と嵩比重との関係性に於いて、学習済みモデルの推定精度をさらに向上させるようにしている。
【0057】
図9は、学習済みモデルを用いて推定されるスクラップ集合体の嵩密度を補正して学習済みモデルを更新する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9に示す各処理は、ROM302または記憶装置304に記憶されたプログラムをRAM303に展開し、CPU301がそのプログラムを実行することにより行われる。
【0058】
本実施形態では、以下の
図9に示す処理を行う前に、三次元位置測定装置によるスクラップ山の形状の測定や、ダンプに積み込んだ積荷の重量測定などが行われているものとする。具体的には、まず、ダンプへの積み込みが行われる前に、三次元位置測定装置を用いてスクラップ山の形状を測定し、体積V(A)を算出しておく。また、ダンプへの積み込みを行う前に、空の状態でダンプの重量を秤量機105にて測定しておくものとする。
【0059】
そして、スクラップ山からダンプへ積み込みを行う際に、リフティングマグネットに吊り下げられたスクラップ集合体を吊り下げる度に撮影し、これらのスクラップ集合体の形態の情報を取得することによって、ダンプの積荷(スクラップ集合体)全体の形態として平均化する。この場合、推論部213において、リフティングマグネットに吊り下げられたスクラップ集合体の撮影画像からスクラップ集合体の形態(鉄の部分と空気の部分の比率)を特定する。そして、リフティングマグネットに吊り下げられたスクラップ集合体の形態の情報を平均化して最終的にダンプの積荷全体の形態の情報とする。
【0060】
なお、リフティングマグネットにスクラップを吊り下げる際に、同じ形態のスクラップのみを吊り上げることが理想であるが、実際に全く同じ形態のスクラップを積み込むことはほぼ不可能である、そこで、なるべく似た形態のスクラップを積み込むことにより、スクラップ集合体の形態を平均化し、積荷全体の形態とする。
【0061】
以上の手順によりダンプへの積み込みが完了すると、続いて積み込み終了後のスクラップ山について、三次元位置測定装置を用いてスクラップ山の形状を測定し、体積V(B)を算出しておく。一方で、積荷を載せた状態でダンプの重量を秤量機105にて測定し、重量換算部203は、ダンプ本体の重量を差し引くことによって積荷の重量Wを算出しておく。以上の方法によって得られた情報は、記憶部220に記憶される。
【0062】
まず、ステップS901において、照合部214は、記憶部220からダンプへの積み込み前のスクラップ山全体の体積V(A)の情報を取得する。
【0063】
次に、ステップS902において、照合部214は、記憶部220から積荷の形態の情報を取得する。そして、ステップS903において、照合部214は、記憶部220からダンプへの積み込みが完了した後のスクラップ山全体の体積V(B)の情報を取得する。続いてステップS904において、照合部214は、スクラップ山の体積の差分から、積荷の体積Vを算出する。つまり、積み込み前のスクラップ山の体積V(A)から積み込み後のスクラップ山の体積V(B)を減算することにより、積荷の体積Vを算出する。
【0064】
次に、ステップS905において、照合部214は、記憶部220から積荷の重量Wの情報を取得する。そして、ステップS906において、照合部214は、積荷の重量Wを積荷の体積Vで除算することにより積荷の嵩比重Bを算出する。
【0065】
次に、ステップS907において、形状判定部202は、ステップS902で取得した積荷(スクラップ集合体)の形態と、ステップS906で算出した積荷の嵩比重Bとを紐付けたデータ(以下、紐付けデータ)を生成し、記憶部220に記憶する。なお、ステップS902で取得した積荷の形態は、リフティングマグネットに吊り下げられたスクラップ集合体の形態を平均化した形態であるが、鉄の部分と空気の部分との比率そのものが平均化されているだけであるため、積荷全体の形態であっても、嵩比重とを紐付けて学習済みデータの補正に利用することができる。そして、ステップS908において、形状判定部202は、記憶部220に記憶されている紐付けデータがある一定数に達しているか否かを判定する。この判定の結果、紐付けデータがある一定数に到達していない場合は、学習済みモデルを見直す段階ではないため、そのまま処理を終了する。
【0066】
一方、ステップS908の判定の結果、記憶部220に記憶されている紐付けデータがある一定数に到達した場合は、ステップS909において、ある一定数の紐付けデータを用いて学習済みモデルの更新を行う。具体的には、一定数の紐付けたデータを用いて、嵩比重と紐付いているスクラップ集合体の形態(鉄の部分と空気の部分の比率)の画像認識を微調整する。
【0067】
[積み込み量の制御]
続いて、学習済みモデルを用いてダンプへの積み込み量を制御する例について、
図10のフローチャートを参照しながら説明する。ダンプ等にスクラップを積み込む際に、最大積載量の基準を守りつつ、目標以上の積み込み重量を確保することは、スクラップの輸送効率を向上させるに必須である。従来は、積み込みオペレーターがリフティングマグネットで積み付けた回数をカウントして調整するなど積み込み量の精度が低く、秤量機で積み込み重量が目標値に達していなかった場合には、積み込み場所に戻って、再積み込みの調整が必要であった。そこで本実施形態では、リフティングマグネットに吊り下げられたスクラップ集合体を三次元位置測定によって体積を算出し、さらには学習済みモデルを用いて嵩比重を推定することによってリアルタイムにスクラップ集合体の重量を算出することにより、ダンプにスクラップを積み込む際の重量をより高精度に把握できるようにしている。
【0068】
図10は、本実施形態において、ダンプへの積み込み量を通知する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10に示す各処理は、ROM302または記憶装置304に記憶されたプログラムをRAM303に展開し、CPU301がそのプログラムを実行することにより行われる。この処理は、スクラップ山からリフティングマグネットを用いてダンプにスクラップを積み込む際に行われる。また、リフティングマグネットでスクラップ集合体が吊り下げられている状態で、その都度、三次元位置測定装置106で形状の測定が行われるものとする。
【0069】
まず、ステップS1001において、ダンプへ積み込む回数Nに1を追加する。そして、ステップS1002において、画像取得部211は、カメラ102bからリフティングマグネットに吊り下げられたスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する。1つのリフティングマグネットに対して複数のカメラから撮影可能である場合には、それぞれのカメラから同一のスクラップ集合体を撮影した撮影画像を取得する。
【0070】
次に、ステップS1003において、推論部213は、学習済みモデルを用いて撮影画像内の形態別の区分けおよび各形態の嵩比重を推定する。そして、照合部214は、それぞれの形態の体積割合を推定し、体積割合に従って嵩比重を加重平均し、リフティングマグネット下のスクラップ集合体全体の嵩比重を算出する。なお、この処理はステップS702~S704の流れと同様である。
【0071】
次に、ステップS1004において、体積換算部204は、三次元位置測定装置106からスクラップ集合体の形状の測定結果を取得し、スクラップ集合体の体積を算出する。そして、ステップS1005において、照合部214は、ステップS1003で推定したスクラップ集合体の嵩密度に、ステップS1004で算出した体積を乗算することにより、リフティングマグネット下のスクラップ集合体の重量を算出する。
【0072】
その後、リフティングマグネットによりダンプにスクラップが積み込まれると、ステップS1006において、照合部214は、1~N回の積み込み重量の合計(以下、積荷重量)が目標値以上であるか否かを判定する。つまり、1回目からN回目でステップS1005において算出されたスクラップ集合体の重量の合計が目標値以上であるか否かを判定する。この判定の結果、積荷重量が目標値未満である場合は、さらにスクラップを積み込むだけの余裕があることから、ステップS1007に進む。そして、ステップS1007において、出力部207は、現在の積荷重量を通知する。具体的には、例えばスクラップ山付近の不図示のスピーカーから現在の積荷重量およびまだ積載に余裕がある旨を音声により通知してもよく、スクラップ山付近にある不図示の表示装置に、現在の積荷重量およびまだ積載に余裕がある旨の情報を表示させるようにしてもよい。
【0073】
一方、ステップS1006の判定の結果、積荷重量が目標値以上である場合は、ステップS1008において、照合部214は、積荷重量がダンプの最大積載量以下であるか否かを判定する。この判定の結果、積荷重量が最大積載量を超えている場合は、ステップS1009において、出力部207は、積荷重量が最大積載量を超えているため、積荷の一部を減らすためのガイダンスを行う。そして、積荷の重量調整が行われた後に、ダンプから降ろした積荷の重量を入力部206から入力することにより、再度ステップS1008において、同様の判定を行うものとする。
【0074】
一方、ステップS1008の判定の結果、積荷重量が最大積載量以下である場合は、ステップS1010において、出力部207は、秤量機105にて重量を測定するための通知を行い、処理を終了する。これにより、秤量機と積み込み場所との往復をなくすことができ、大幅に積み込み効率を向上させることができる。
【0075】
[棚卸手順]
次に、スクラップヤードにあるスクラップ山の棚卸の手順について、
図11のフローチャートを参照しながら説明する。本実施形態において、棚卸時に三次元位置測定装置を用いてスクラップ山の形状を測定することによりスクラップ山の体積を算出し、学習済みモデルを用いて推定したスクラップ山全体の嵩比重をその体積に乗算することにより、スクラップ山の重量を算出することができる。
【0076】
図11は、在庫であるスクラップ山の重量を算出する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11に示す各処理は、ROM302または記憶装置304に記憶されたプログラムをRAM303に展開し、CPU301がそのプログラムを実行することにより行われる。前述したように、スクラップ山全体の嵩比重は
図7に示した手順により記憶部220に記憶されており、随時更新される。そこで、現在のスクラップ山の体積を算出することにより、現在のスクラップ山の重量を概ね知ることができる。
【0077】
まず、ステップS1101において、三次元位置測定装置106を用いてスクラップ山の形状を測定することにより、体積換算部204は、その形状の測定結果からスクラップ山の体積を算出する。そして、ステップS1102において、照合部214は、記憶部220に記憶されている現在のスクラップ山全体の嵩比重を読み出し、ステップS1101で算出された体積に乗算することにより、現在のスクラップ山の重量を算出する。
【0078】
続いて、ステップS1103において、出力部207は、ステップS1102で算出した重量を現在のスクラップ山の在庫重量として表示装置等に出力し、処理を終了する。以上のような手順で、スクラップヤードで管理しているスクラップ山ごとに重量を算出することにより、棚卸を行うことができる。
【0079】
以上のように本実施形態によれば、撮影画像内の同一形態と嵩比重とを紐付けた学習済みモデルを用いてスクラップ集合体全体の嵩比重を推定するようにしたので、同一等級であっても、嵩比重の違いによってより細分化してスクラップの管理を行うことができる。これにより、客先において当該スクラップの品位を定量的に把握することができ、その結果、客先で当該嵩比重と炉の操業との相関を定量的に把握することができる。このように、客先側で炉の操業を最適化する所要の嵩比重を定量的に把握して要求することができ、本実施形態のようなシステムを用いて、適正に配合し所要の嵩比重のスクラップ配合品を提供することができる。
【0080】
(その他の実施形態)
なお、以上述べた実施形態の操業演算装置は、具体的にはコンピュータシステム或いは装置により構成されるものである。したがって、前述した機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体をシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0081】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、プログラムコード自体及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0082】
以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0083】
201 情報処理装置
202 形状判定部
203 重量換算部
204 体積換算部
205 嵩比重換算部
206 入力部
207 出力部
211 画像取得部
212 学習部
213 推論部
214 照合部
220 記憶部