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  • 特開-エネルギー供給システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030225
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】エネルギー供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 15/00 20060101AFI20240229BHJP
   C01C 1/02 20060101ALI20240229BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20240229BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240229BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240229BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H02J15/00 G
C01C1/02 D
C01B3/04 B
C25B1/04
C25B9/00 A
H02J7/00 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132928
(22)【出願日】2022-08-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 補助金申請: 補助金名称:福島県 令和4年度「地域復興実用化開発等促進事業費補助金」 申請日:令和4年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】598037569
【氏名又は名称】會澤高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】青木 涼
【テーマコード(参考)】
4K021
5G503
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DC03
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
(57)【要約】
【課題】発電拠点で発電した電力を、効率良く需要者に供給するエネルギー供給システムを提供する。
【解決手段】複数の発電拠点(3)と、需要者に水素を供給する複数の水素供給拠点(4)と、これらを結ぶ流通手段(6)と、を備える。発電拠点(3)には、発電設備(8)と水素生成装置(10)とアンモニア生成装置(11)とを設け、発電した電力により水素を生成しこの水素からアンモニアを生成するようにする。一方、水素供給拠点(4)には、アンモニアから水素を製造するアンモニア-水素製造装置(20)を設ける。流通手段(6)は、発電拠点(3)において生成されたアンモニアを水素供給拠点(4)に輸送するように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発電拠点と、需要者に水素を供給する複数の水素供給拠点と、前記発電拠点と前記水素供給拠点とを結ぶ流通手段と、を備え、
前記発電拠点は、発電設備と水素生成装置とアンモニア生成装置とが設けられ、前記発電設備が発電した電力により前記水素生成装置が水素を生成し、該水素から前記アンモニア生成装置がアンモニアを生成するようになっており、
前記水素供給拠点は、アンモニアから水素を製造する水素製造装置が設けられており、
前記流通手段は、前記発電拠点において生成された前記アンモニアを前記水素供給拠点に輸送するようになっている、エネルギー供給システム。
【請求項2】
複数の前記発電拠点のいずれかは洋上になっており、前記発電設備は洋上風力発電設備からなる、請求項1に記載のエネルギー供給システム。
【請求項3】
前記エネルギー供給システムは、精製水を貯蔵する精製水貯蔵施設を備え、前記水素生成装置が水素を生成するとき必要となる精製水は、前記精製水貯蔵施設から前記流通手段により輸送されるようになっている、請求項1または2に記載のエネルギー供給システム。
【請求項4】
前記エネルギー供給システムは、アンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵施設を備え、前記流通手段は前記発電拠点からアンモニアを前記アンモニア貯蔵施設に輸送し、そして前記アンモニア貯蔵施設から前記水素供給拠点に輸送するようになっている、請求項1または2に記載のエネルギー供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発電拠点と複数のエネルギー消費拠点とかならなるシステムであって、発電拠点で得られるエネルギーをエネルギー消費拠点に供給する、エネルギー供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電、太陽光発電、地熱発電等により得られる電力は再生可能エネルギーであり、持続可能な開発目標における重要な解決方法の1つになっている。しかしながら、このような再生可能エネルギーには、天候等の条件により発電量が変動するものが多く、電力の安定供給という点で課題がある。さらには、発電拠点は各地に点在しており、電力をエネルギー消費地に送電するための送電設備の整備にコストがかかる。特に、洋上において風力発電するいわゆる洋上発電設備は、陸地から離間するほど送電設備の敷設にコストが嵩むという問題がある。
【0003】
ところで、風力発電や太陽光発電等から得られる電力により水素を製造する方法が、例えば特許文献1のように色々な文献で提案されている。水素は貯蔵することができるので、発電量の変動に影響されずにエネルギーの安定供給が可能になる。特に再生可能エネルギーから得られる水素はいわゆるグリーン水素と呼ばれており、水素を製造する際に二酸化炭素を排出しないので、脱炭素化時代へ移行するにあたり、有力な手段として期待されている。水素は燃料電池の燃料として利用でき電気自動車あるいは発電に利用できる。そうすると例えば、風力発電、太陽光発電、地熱発電等の発電拠点の近傍において電力を使って水素を製造し、この水素を複数の消費拠点に輸送するようにすれば、エネルギーの安定供給が可能になり、送電設備の整備に要するコストが削減できそうである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-136801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで水素は化石燃料に代わり得る汎用性の高いクリーンエネルギーであり、重量あたりのエネルギー含有量は化石燃料より遙かに大きい。しかしながら、体積密度は低く取り扱いが難しいと言う問題がある。水素は圧縮ガスあるいは液化ガスにされて貯蔵されることが多いが、圧縮・液化するときに大量のエネルギーが消費される。そうすると、水素から得られる正味のエネルギーは結果的に小さくなってしまう。また圧縮・液化ガスの輸送には専用のローリー車等が必要になりコストが嵩む。そうすると、単に風力発電設備、太陽光発電設備等の複数の発電拠点の近傍において水素を製造して、これを輸送して需要者に供給するようにするだけでは、エネルギーの効率的な利用にはつながらない。
【0006】
本発明は、複風力発電、太陽光発電、地熱発電等により発電する複数の発電拠点と、需要者に水素を供給する複数の水素供給拠点とを結んで、クリーンエネルギーとしての水素を効率良く需要者に供給するエネルギー供給システムを提供することを目的としている。具体的には、送電設備の整備等のコストが削減でき、エネルギーを効率的に利用することができ、そして輸送等のコストが小さく手済む、エネルギー供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の発電拠点と、需要者に水素を供給する複数の水素供給拠点と、発電拠点と水素供給拠点とを結ぶ流通手段と、を備えたエネルギー供給システムとして構成する。発電拠点には、発電設備と水素生成装置とアンモニア生成装置とを設け、発電設備が発電した電力により水素生成装置において水素を生成し、該水素からアンモニア生成装置においてアンモニアを生成するようにする。一方、水素供給拠点には、アンモニアから水素を製造する水素製造装置を設ける。流通手段は、発電拠点において生成されたアンモニアを水素供給拠点に輸送するように構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、エネルギー供給システムは複数の発電拠点と、需要者に水素を供給する複数の水素供給拠点と、発電拠点と水素供給拠点とを結ぶ流通手段とを備えている。つまりクリーンエネルギーとしての水素を需要者に供給するエネルギー供給システムになっている。そして発電拠点では、発電した電力で水素を生成し、水素からアンモニアを生成し、このアンモニアは流通手段により複数の水素供給拠点に輸送して、水素供給拠点においてこのアンモニアから水素を製造するようにしている。そうすると、輸送するために水素を圧縮ガスにしたり、あるいは液化ガスにしたりする必要がない。水素に比してアンモニアは比較的容易に液化することができ、低コストで輸送することができる。つまり、本発明にかかるエネルギー供給システムは、エネルギーを効率良く利用することができる。さらには、送電設備が不要になるという効果も得られる。特に送電設備の整備にコストがかかる洋上風力発電設備のような発電拠点において有利である。
【0009】
再生可能エネルギーを使用したグリーン水素製造は福島県浪江町の「Fukushima Hydrogen Energy Research Field(FH2R)」を筆頭に世界で実証事業がスタートしている。後で説明するように本発明の1つの実施の形態では、陸上風力発電設備にアンモニア生成装置を設置し、アンモニアを生成させる。これを流通手段によって水素供給拠点すなわち水素ステーションに輸送し、水素製造装置によってアンモニアから水素を生成するようにしている。このような本発明に係る水素供給モデルは、FH2Rによる水素供給モデルと比較した場合、約3割程度のエネルギーロスが生じる。FH2Rでは直接水素を生成し、これを高圧車で水素供給拠点まで運搬するようにしていて、中間生成物としてのアンモニアを生成する必要がないからである。しかしながら、水素を高圧車によって輸送する場合、例えば20MPaの高圧にして輸送するようにしても大量輸送には適さない。液化しやすいアンモニアを輸送する場合と比べても7倍の車両台数が必要になる。運送業界では、いわゆる2024年問題で、労働時間の時間制限が課題になっている。そうすると、比較的少ない台数の高圧車で輸送できるアンモニアは輸送コストを抑制でき、水素供給拠点つまり水素ステーションの普及に対して有利であると言える。
【0010】
一方、本発明の1つの実施形態である洋上風力発電設備のモデルについては、生成したアンモニアを回収船によって輸送することになる。回収船による輸送は、輸送時のエネルギーコストがわずかで済む。比較的大量のアンモニアを効率良く輸送できるからである。そうすると、水素キャリアとして考えたとき、アンモニアを生成しこれを輸送する本発明に係る水素供給モデルは、安全性や運搬効率が高く、総合判断としてメリットが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係るエネルギー供給システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本実施の形態に係るエネルギー供給システム>
以下、本実施の形態を説明する。
本実施の形態に係るエネルギー供給システム1は、図1に示されているように、複数の発電拠点3a、3b、…と、複数の水素供給拠点4a、4b、…と、中継基地5と、これら複数の発電拠点3a、3b、…と複数の水素供給拠点4a、4b、…と中継基地5とを結ぶ流通手段6a、6b、…とを備えている。
【0013】
発電拠点3a、3b、…は、風力発電、太陽光発電、地熱発電等、色々な方式により発電するようになっており、場所は陸上、洋上を問わない。例えば発電拠点3aは、陸上に建設されており、風力発電からなる発電設備8a1、8a2を備えている。発電拠点3bも陸上に建設されているが、太陽光発電からなる発電設備8bを備えている。これに対して発電拠点3cは洋上に設けられており、風力発電からなる発電設備8cを備えている。これらの発電設備8a1、8a2、8b、…によって電力が発電されるようになっている。
【0014】
これらの発電拠点3a、3b、…には発電設備8a1、8b、8c、…だけでなく、水素生成装置10a、10b、…と、アンモニア生成装置11a、11b、…と、精製水タンク13a、13b、…と、アンモニアタンク14a、14b、…とが設けられている。水素生成装置10a、10b、…は、発電設備8a1、8a2、8b、…で発電された電力を利用して精製水タンク13a、13b、…からの精製水を電気分解して水素を生成するようになっている。生成した水素はアンモニア生成装置11a、11b、…に送られる。
【0015】
アンモニア生成装置11a、11b、…は、水素生成装置10a、10b、…で生成された水素と、窒素とからアンモニアを生成する装置になっている。窒素は空気から得るようになっており、中空糸分離膜により分離して得ることもできるし、深冷分離により得ることもできる。水素と窒素とからアンモニアを生成する方法には、ハーバー・ボッシュ法等、色々な方法があり、本発明を実施する上でどのような方法を採用してもよい。ただし、本実施の形態においては、国際公開WO2012/077658号に記載の方法によりアンモニアを生成するようにしている。すなわち、C12A7エレクトライド触媒を利用して、比較的低温、低圧力下で水素と窒素とを反応させ、アンモニアを生成するようにしている。生成したアンモニアは液化され、アンモニアタンク14a、14b、…に貯蔵されるようになっている。
【0016】
中継基地5には、アンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵施設16と、精製水を貯蔵する精製水貯蔵施設18とが設けられている。ローリー車、船舶等の流通手段6a、6b、…により、複数の発電拠点3a、3b、…のアンモニアタンク14a、14b、…からアンモニアを輸送して、アンモニア貯蔵施設16に貯蔵するようになっている。また、精製水貯蔵設備18に入れられている精製水は、流通手段6a、6b、…により、複数の発電拠点3a、3b、…の精製水タンク13a、13b、…に輸送されるようになっている。
【0017】
水素供給拠点4a、4b、…は、需要者に水素を供給する拠点になっている。水素供給拠点4a、4b、…には、水素製造装置20a、20b、…が設けられている。水素製造装置20a、20b、…は、アンモニアから水素を生成する装置になっている。水素製造装置20a、20b、…に供給されるアンモニアは、中継基地5のアンモニア貯蔵施設16から流通手段6a、6b、…により輸送されるようになっている。アンモニアから水素を生成する方法は色々あり本発明を実施する上で、どのような方法を採用してもよく、どのような装置を採用してもよい。本実施の形態においては、水素製造装置20a、20b、…として、Syzygy Plasmonics Inc.製の水素製造装置20a、20b、…を採用している。同社製品は例えば米国特許第10766024号明細書に記載されているような、ライス大学で開発された光触媒を利用して、アンモニアを分解して水素を得るようにしている。水素製造装置20a、20b、…によって生成された水素は、需要者に供給されるようになっている。
【0018】
<変形例>
本実施の形態に係るエネルギー供給システム1は色々な変形が可能である。例えば、上で説明した実施の形態においては、中継基地5を備えているように説明した。しかしながら中継基地5は必須ではない。すなわち、発電拠点3a、3b、…で生成されたアンモニアは、流通手段6a、6b、…によって水素供給拠点4a、4b、…に直接輸送するようにしてもよい。また中継基地5は1カ所であるように説明したが複数箇所に設けられていてもよい。精製水の供給方法についても変形が可能である。本実施の形態において精製水は精製水タンク13a、13b、…から水素生成装置10a、10b、に供給されるように説明した。しかしながら、精製水は地下水、海水等、現地で得られる水から精製するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 エネルギー供給システム 3 発電拠点
4 水素供給拠点 5 中継基地
6 流通手段 8 発電設備
10 水素生成装置 11 アンモニア生成装置
13 精製水タンク 14 アンモニアタンク
16 アンモニア貯蔵施設 18 精製水貯蔵施設
20 水素製造装置

図1