(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030231
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】パウダースラッシュ成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 41/34 20060101AFI20240229BHJP
B29C 41/38 20060101ALI20240229BHJP
B29C 41/18 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B29C41/34
B29C41/38
B29C41/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132938
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 英司
(72)【発明者】
【氏名】及川 亮嗣
【テーマコード(参考)】
4F202
4F205
【Fターム(参考)】
4F202AA15
4F202AA31
4F202AC04
4F202AF01
4F202AF06
4F202AF07
4F202AG01
4F202AG05
4F202AH25
4F202CA06
4F202CB01
4F202CC07
4F205AA15
4F205AA31
4F205AC04
4F205AF01
4F205AG05
4F205AG06
4F205AH25
4F205GA13
4F205GB01
4F205GC04
4F205GF25
4F205GN01
4F205GN13
4F205GN18
4F205GN28
4F205GN29
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品の一部の厚さを薄くできるパウダースラッシュ成形装置を提供する。
【解決手段】パウダースラッシュ成形装置は、粉体樹脂原料を収容したバケットの開口をスラッシュ成形型で塞いで結合して回転させることで前記スラッシュ成形型の内表面に樹脂成形品を成形するパウダースラッシュ成形装置であって、前記バケットを結合した前記スラッシュ成形型の内表面に対向して設けられ、前記スラッシュ成形型の長手方向に隙間をあけて配置された複数の規制部と、前記隙間を開閉する開閉部材と、を備え、前記開閉部材は、前記スラッシュ成形型が前記バケットの下方に位置する際に前記隙間を閉じる閉状態となり、前記スラッシュ成形型が前記バケットの上方に位置する際に前記隙間を開ける開状態となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体樹脂原料を収容したバケットの開口をスラッシュ成形型で塞いで結合して回転させることで前記スラッシュ成形型の内表面に樹脂成形品を成形するパウダースラッシュ成形装置であって、
前記バケットを結合した前記スラッシュ成形型の内表面に対向して設けられ、前記スラッシュ成形型の長手方向に隙間をあけて配置された複数の規制部と、
前記隙間を開閉する開閉部材と、
を備え、
前記開閉部材は、前記スラッシュ成形型が前記バケットの下方に位置する際に前記隙間を閉じる閉状態となり、前記スラッシュ成形型が前記バケットの上方に位置する際に前記隙間を開ける開状態となる、
パウダースラッシュ成形装置。
【請求項2】
前記バケットを結合した前記スラッシュ成形型は、該スラッシュ成形型の長手方向に延びる回転中心軸を中心として回転し、
前記開閉部材は、前記回転中心軸の延びる方向と交差する方向に延びるヒンジ軸を介して前記規制部に回転可能に取り付けられる、
請求項1に記載のパウダースラッシュ成形装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記スラッシュ成形型の内表面に向けて突出した凸形状である、
請求項1または2に記載のパウダースラッシュ成形装置。
【請求項4】
前記開閉部材は、一方の規制部から前記隙間を挟んで隣り合う他方の規制部に向けて延びる板状部材であり、前記閉状態において、前記板状部材が前記他方の規制部に接触することによって、前記隙間を閉じる、
請求項1または2に記載のパウダースラッシュ成形装置。
【請求項5】
粉体樹脂原料を収容したバケットの開口をスラッシュ成形型で塞いで結合して回転させることで前記スラッシュ成形型の内表面に樹脂成形品を成形するパウダースラッシュ成形装置であって、
前記バケットを結合した前記スラッシュ成形型の内表面に対向して設けられた板状の規制部を有する粉体樹脂原料供給制御空間と、
前記規制部を有しない粉体樹脂原料供給非制御空間と、を備えるパウダースラッシュ成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パウダースラッシュ成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉体樹脂原料を用いて樹脂成形品を製造するパウダースラッシュ成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなパウダースラッシュ成形装置は、バケットとスラッシュ成形型を結合し、バケットとスラッシュ成形型を回転させながら、粉体樹脂原料をスラッシュ成形型に供給する。スラッシュ成形型は予め加熱され、スラッシュ成形型の成形面に付着した粉体樹脂原料が溶け、樹脂成形品が製造される。
【0005】
特許文献1は、樹脂成形品の一部の厚さを厚くできるパウダースラッシュ成形装置を開示している。しかし、樹脂成形品の一部の厚さを薄くできるパウダースラッシュ成形装置は開示していない。
【0006】
本開示の課題は、樹脂成形品の一部の厚さを薄くできるパウダースラッシュ成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るパウダースラッシュ成形装置は、粉体樹脂原料を収容したバケットの開口をスラッシュ成形型で塞いで結合して回転させることで前記スラッシュ成形型の内表面に樹脂成形品を成形するパウダースラッシュ成形装置であって、前記バケットを結合した前記スラッシュ成形型の内表面に対向して設けられ、前記スラッシュ成形型の長手方向に隙間をあけて配置された複数の規制部と、前記隙間を開閉する開閉部材と、を備え、前記開閉部材は、前記スラッシュ成形型が前記バケットの下方に位置する際に前記隙間を閉じる閉状態となり、前記スラッシュ成形型が前記バケットの上方に位置する際に前記隙間を開ける開状態となる。
【0008】
また本開示に係る別の態様のパウダースラッシュ成形装置は、粉体樹脂原料を収容したバケットの開口をスラッシュ成形型で塞いで結合して回転させることで前記スラッシュ成形型の内表面に樹脂成形品を成形するパウダースラッシュ成形装置であって、前記バケットを結合した前記スラッシュ成形型の内表面に対向して設けられた板状の規制部を有する粉体樹脂原料供給制御空間と、前記規制部を有しない粉体樹脂原料供給非制御空間と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
このパウダースラッシュ成形装置によれば、規制部によって粉体樹脂原料がスラッシュ型に向けて落ちることを抑制する。これによって、樹脂成形品の厚さを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態におけるスラッシュ成形型の上面図。
【
図2】本開示の実施形態におけるパウダースラッシュ成形装置の断面図。
【
図3】本開示の実施形態における樹脂成形品の車両搭載状態を示す図。
【
図4】本開示の実施形態における樹脂成形品の上面図(a)および断面図(b)。
【
図5】本開示の実施形態におけるスラッシュ型が下になった状態の図。
【
図6】本開示の実施形態におけるスラッシュ型が上になった状態の図。
【
図7】本開示の他の実施形態におけるパウダースラッシュ成形装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1および
図2に示すように、パウダースラッシュ成形装置1は、樹脂成形品を成形するスラッシュ成形型2と、スラッシュ成形型2と結合および分離されるバケット4と、複数の規制部6と、開閉部材8と、を備える。バケット4は、粉体樹脂原料が収容される箱状の部材である。粉体樹脂原料は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)や熱可塑性ポリウレタン(TPU)などである。パウダースラッシュ成形装置1は、粉体樹脂原料を収容したバケット4の開口をスラッシュ成形型2で塞いで結合して、スラッシュ成形型2を加熱しながら回転させることによって、スラッシュ成形型2の内表面に樹脂成形品を成形する装置である。
【0013】
図3に示すように、本実施形態のパウダースラッシュ成形装置1は、自動車のインパネPの表面を形成する表皮材Cとなる樹脂成形品を製造するための装置である。
図4に示すように、樹脂成形品である表皮材は、厚さを有する。このため、このような表皮材の一部の厚さを薄くすることによって、軽量化とコスト削減が求められる。
【0014】
図1および
図2に示すように、スラッシュ成形型2は、表皮材Cを形成するための成形面(内表面の一例)10と、スラッシュ成形型2を回転可能に支持する回転軸12と、を有する。スラッシュ成形型は、回転軸12の中心線が回転中心軸Lとなって回転する。スラッシュ成形型2は、長手方向と、長手方向に対して交差する短手方向とを有する。長手方向は、成形面10によって成形される表皮材Cが車両に搭載された状態において、車幅方向(車両の左右方向)に相当する。したがって、以下明細書および図面において、スラッシュ成形型2の長手方向を左右方向と記し、短手方向を前後方向と記す。
【0015】
成形面10は、表皮材C(樹脂成形品の一例)の形状に合わせて、スラッシュ成形型2に形成された凹部の底面である。本実施形態ではスラッシュ成形型2は、成形面10の温度調整をする温調配管(図示せず)を有し、中を通る媒体により成形面10を加熱および冷却することができる。
【0016】
回転軸12は、スラッシュ成形型2の長手方向の端部に配置され、その中心線がスラッシュ成形型2とバケット4が結合した結合体が回転するときの回転中心軸Lとなる。回転軸12は、左右方向(長手方向)に延び、図示しない回転装置と連結される。
【0017】
図2に示すように、バケット4は、粉体樹脂原料を収容するための開口14を有する。バケット4は、スラッシュ成形型2と結合されると、開口14がスラッシュ成形型2によって塞がれる。本実施形態ではバケット4は、粉体樹脂原料を均一にならすためのエアー噴出装置(図示せず)を有する。
【0018】
図1および
図2に示すように、規制部6は、成形面10と対向するとともに、スラッシュ成形型2の成形面10を跨いで前後方向(短手方向)に延び、成形面10から外れた成形面10の周囲に固定される。また規制部6は、成形面10から上下方向に隙間を空けて設けられる。規制部6は、スラッシュ成形型2の長手方向に隙間を空けて複数配置される。例えば、
図2に示すように、一番左に位置する1番前の規制部6に対して、左右方向に隙間を空けて2番目の規制部6が配置される。また、2番目の規制部6に対して左右方向に隙間を空けて、3番目の規制部6が配置される。さらに、3番目の規制部6に対して左右方向に隙間を空けて4番目の規制部6、5番目の規制部6、6番目の規制部6、7番目の規制部6が配置される。しかし、規制部6の配置は、表皮材C(樹脂成形品の一例)の薄くしたい箇所に対応させて適宜変更してもよい。
【0019】
本実施形態では規制部6は、成形面10に向けて突出した凸形状である。より具体的には、規制部6は、金属または樹脂などの材料によって形成されたV字型の板状部材である。規制部6は、V字の頂点が成形面10に向けて形成される。しかし、規制部6は、例えば、成形面10側に突出した円弧形状の板状部材など、種々の形状の部材であってもよい。
【0020】
開閉部材8は、一方の規制部6から隙間を挟んで隣り合う他方の規制部6に向けて延びる板状部材である。開閉部材8は、回転中心軸Lの延びる方向と交差する方向に延びるヒンジ軸16を介して規制部6に回転可能に取り付けられる。本実施形態では、ヒンジ軸16は、成形面10を跨いで前後方向に延び、2番目および4番目から7番目の規制部6に取り付けられる。本実施形態では
図5に示すように、開閉部材8は、スラッシュ成形型2が下にあるとき、板状部材が一方の規制部6と隣接する他方の規制部6に接触することによって、他方の規制部6と、開閉部材8が取り付けられた一方の規制部6との隙間を閉じた閉状態となる。本実施形態では、2番目の規制部6に取り付けられた開閉部材8が1番目の規制部6に接触することによって、開閉部材8が2番目の規制部6と1番目の規制部6との隙間を閉じた閉状態となる。同様に、4番目の規制部6は3番目の規制部6と接触し、5番目の規制部6は4番目の規制部6と接触し、6番目の規制部6は5番目の規制部6と接触し、7番目の規制部6は6番目の規制部6と接触する。このように、各開閉部材8が一方の規制部6と隣接する他方の規制部6に接触することによって、開閉部材8が各規制部6の間の隙間を閉じ、閉状態となる。しかし、開閉部材8は、隙間を閉じることができれば、例えばヒンジ軸16にロック機構を設けて、隣接する規制部6との隙間を閉じる位置で開閉部材8をロックできるようにしてもよい。
【0021】
図6に示すように、開閉部材8は、スラッシュ成形型2が上にある状態においては、一方の規制部6と他方の規制部6と間の隙間が開いた開状態となる。開閉部材8は、開状態においては開閉部材8が接触した他方の規制部6から離れて取り付けられた、一方の規制部6側に回動し、隙間が開く。これによって、スラッシュ成形型2の成形面10に付着しなかった粉体樹脂原料が、隙間を通りバケット4に落ちる。
【0022】
また、開閉部材8は、開状態において開閉部材8が閉状態で接触する規制部6側に少し傾斜して止まる。これによって、スラッシュ成形型の回転に対して、開閉部材8は確実に開状態から閉状態に移行できる。
【0023】
次に、
図5および
図6を用いてパウダースラッシュ成形装置1を用いて樹脂成形品として表皮材Cを製造する製造方法について説明する。
【0024】
まず、バケット4に所定量の粉体樹脂原料を供給する。その後、バケット4の底からエアーを噴出して粉体樹脂原料を均等にならす。
【0025】
次に、バケット4をスラッシュ成形型2の下に配置させ、スラッシュ成形型2の成形面10が開口14に対向するように、バケット4の開口14をスラッシュ成形型2によって塞ぎ、結合体を形成する。
【0026】
その後、成形面10を加熱し、成形面10の温度が上層すると回転軸12を回転中心軸Lを中心として回転させて、結合体を回転させる。結合体の回転速度や回転時間は、表皮材Cの目標とする厚さなどに応じて適宜決定してよい。
【0027】
このように、結合体を回転させると、
図5に示すように、スラッシュ成形型2が下にある時に開閉部材8が隙間を閉じ、粉体樹脂原料がバケット4から成形面10に落下することを抑制する(
図5ドット参照)。また、規制部6は、落下してきた粉体樹脂原料を受け、規制部6の上側に粉体樹脂原料を貯める。これによって、規制部6がある場所の成形面10には、粉体樹脂原料が落下せず、溶融する粉体樹脂材料が減る。
【0028】
一方、
図6に示すように、スラッシュ成形型2が上にあるときは、開閉部材8が隙間を開き、成形面10に溶融付着しなかった粉体樹脂原料がバケット4に落下する(
図6ドット参照)。また、規制部6に蓄積した粉体樹脂原料もバケット4に落下する。このように、結合体が回転中心軸Lを中心に回転する間、開閉部材8が動き、成形面10への粉体樹脂原料の溶融付着量が減る。この結果、規制部6のある位置の表皮材Cの厚さが薄くなる。
【0029】
その後、所定時間が経過すると、成形面10を冷却する。そして、スラッシュ成形型2とバケット4とを分離し、表皮材Cを成形面10から引きはがす。
【0030】
このように製造された表皮材Cは、
図4に示すように、規制部6の位置に対応した粉体樹脂原料供給制御領域20の厚さH1および厚さH2が、規制部206を有しない粉体樹脂原料供給非制御領域22の厚さH3および厚さH4よりも薄くなる。これによって、表皮材Cの軽量化が図れるとともに、表皮材Cの製造に使用する粉体樹脂原料の量が減りコスト削減を図ることができる。
【0031】
以上説明した通り、本開示によれば樹脂成形品の一部の厚さを薄くできるパウダースラッシュ成形装置1を提供できる。
【0032】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
上記実施形態では、V字型の規制部6を例に用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、パウダースラッシュ成形装置201は、バケット204を結合したスラッシュ成形型202の成形面210に対向して設けられ、短手方向に成形面210を跨いで延びるとともに長手方向に広がる複数の板状の規制部206を有してもよい。このようなパウダースラッシュ成形装置201は、規制部206によって上下方向の空間が遮られた粉体樹脂原料供給制御空間220と、規制部206を有しない粉体樹脂原料供給非制御空間222と、を備えてもよい。このようなパウダースラッシュ成形装置201によっても、回転軸212に接続されたスラッシュ成形型202と、バケット204との結合体を回転中心軸Lを中心として回転させる際に、粉体樹脂原料の成形面210への溶着量を制御することができ、樹脂成形品の一部の厚さを薄くできる。
【0034】
また、上記実施形態では、表皮材Cを製造する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。パウダースラッシュ成形装置1によって製造可能な樹脂成形品であればどのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,201 :パウダースラッシュ成形装置
2,202 :スラッシュ成形型
4,204 :バケット
6,206 :規制部
8 :開閉部材
10,210 :成形面(内表面の一例)
12,212 :回転軸
14 :開口
16 :ヒンジ軸
20 :粉体樹脂原料供給制御領域
22 :粉体樹脂原料供給非制御領域
220 :粉体樹脂原料供給制御空間
222 :粉体樹脂原料供給非制御空間
C :表皮材
L :回転中心軸
H1 :厚さ
H2 :厚さ
H3 :厚さ
H4 :厚さ
H5 :厚さ
P :インパネ