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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030233
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】無線給電装置、及び飛行体
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/23 20160101AFI20240229BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20240229BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240229BHJP
   B64F 3/02 20060101ALI20240229BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240229BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20240229BHJP
   H01Q 1/28 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H02J50/23
H02J50/20
B64C39/02
B64F3/02
H01Q21/06
H01Q3/26 Z
H01Q1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132943
(22)【出願日】2022-08-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年5月13日 https://www.soumu.go.jp/main_content/000813014.pdf https://www.soumu.go.jp/main_content/000813726.pdfを通じて公開
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度 支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「ドローンへのマイクロ波送電に向けた空芯ビーム形成に関する研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】松室 尭之
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和伸
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021DB01
5J021GA06
5J021HA08
5J046AA01
5J046AA04
5J046AB03
5J046KA01
(57)【要約】
【課題】ミッション機器を有する飛行中の飛行体に適切にマイクロ波を送信することができる無線給電装置を提供する。
【解決手段】飛行中の飛行体2に対して無線で給電する無線給電装置1は、面状に配置された複数のアンテナ素子を有する平面アレイアンテナである送電アンテナ11と、送電アンテナ11の複数のアンテナ素子からそれぞれマイクロ波を送信する送電部12と、を備え、送電部12は、送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、飛行体2の受電アンテナ21面の中心において最小となるようにマイクロ波を送信する。このようにして、ミッション機器25が受電アンテナ21面の中心に配置されている場合や、受電アンテナ21面の中心に孔が開いている場合であっても、効率のよい無線給電を実現することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行中の飛行体に対して無線で給電する無線給電装置であって、
面状に配置された複数のアンテナ素子を有する平面アレイアンテナである送電アンテナと、
前記送電アンテナの複数のアンテナ素子からそれぞれマイクロ波を送信する送電部と、を備え、
前記送電部は、前記送電アンテナから伝送された電力の強度が、前記飛行体の受電アンテナ面の中心において最小となるようにマイクロ波を送信する、無線給電装置。
【請求項2】
前記送電部は、前記送電アンテナから伝送された電力の強度が、送電方向の中心軸において最小となるビームが形成されるようにマイクロ波を送信する、請求項1記載の無線給電装置。
【請求項3】
前記ビームのビームウェストは、前記受電アンテナ面の位置となる、請求項2記載の無線給電装置。
【請求項4】
前記飛行体の高度を取得する高度取得部と、
前記高度を用いて、ビームウェストが前記受電アンテナ面の位置となるビームを設計する設計部と、
前記設計部によって設計されたビームに応じた電力伝送が行われるように前記送電部を制御する制御部と、をさらに備えた、請求項3記載の無線給電装置。
【請求項5】
空中を飛行する飛行体であって、
前記飛行体の下方側に配置されており、送電アンテナから送信されたマイクロ波を受信する受電アンテナと、
前記受電アンテナで受信されたマイクロ波の電力によって駆動される飛行手段と、
所定のミッションを行うためのミッション機器と、を備えており、
前記受電アンテナ面の中心には、前記ミッション機器がミッションを行うための孔が設けられている、飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行中の飛行体に無線で給電する無線給電装置、及び無線給電装置によって無線で給電される飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドローンなどの飛行体への給電は、飛行体が地上に着陸してから行われていた(例えば、特許文献1,2参照)。このように、飛行体が給電のたびに地上に着陸した場合には、連続して飛行できる時間が短くなる。そのため、飛行体が飛行中に行っているミッションが中断することになるという問題がある。
【0003】
また、有線ケーブルを介して地上から飛行中の飛行体に給電することも考えられるが、この場合には、飛行高度や飛行の範囲が制限されることになり、飛行の自由度が損なわれるという問題がある。
【0004】
上記問題を解決するために、飛行体に対して、地上の無線給電装置から飛行中の飛行体にマイクロ波によって電力を伝送することが考えられる。この場合には、飛行を中断することなく飛行中の飛行体に給電することができるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-202734号公報
【特許文献2】特開2020-125021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
飛行中の飛行体には、地上の撮影や電波の中継などの所定のミッションがある。そのミッションは、カメラや中継器などのミッション機器を用いて行われるが、そのミッション機器は、飛行体の下部に配置される。一方、地上の無線給電装置から送信されたマイクロ波を受信する受電アンテナも、飛行体の下部に配置されることになる。そのため、受電アンテナの一部にミッション機器が配置された場合には、そのミッション機器によってマイクロ波の一部が遮蔽されることになり、それに応じて受電アンテナによって受電される電力量が低下する可能性がある。また、ミッション機器が中継器である場合には、送電用のマイクロ波が中継器であるミッション機器に照射されることによって、ミッション機器が中継器として適切に動作しない可能性もある。また、ミッション機器にマイクロ波が照射されることによって、ミッション機器が故障する可能性もある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ミッション機器を有する飛行中の飛行体に無線給電用のマイクロ波を適切に送信することができる無線給電装置、及び無線給電装置から送信された無線給電用のマイクロ波を飛行中に適切に受信することができる飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による無線給電装置は、飛行中の飛行体に対して無線で給電する無線給電装置であって、面状に配置された複数のアンテナ素子を有する平面アレイアンテナである送電アンテナと、送電アンテナの複数のアンテナ素子からそれぞれマイクロ波を送信する送電部と、を備え、送電部は、送電アンテナから伝送された電力の強度が、飛行体の受電アンテナ面の中心において最小となるようにマイクロ波を送信するものである。
このような構成により、受電アンテナ面の中心以外の領域を用いて適切に無線給電を行うことができるようになる。そのため、例えば、ミッション機器が受電アンテナ面の中心に配置されている場合や、受電アンテナ面の中心に孔が開いている場合であっても、効率のよい無線給電を実現することができる。
【0009】
また、本発明の一態様による無線給電装置では、送電部は、送電アンテナから伝送された電力の強度が、送電方向の中心軸において最小となるビームが形成されるようにマイクロ波を送信してもよい。
このような構成により、中心に空芯領域を有するビームによって無線給電を行うことができる。そのため、例えば、無線給電中に飛行体と送電アンテナとの鉛直方向の距離が変化したとしても、受電アンテナ面の中心はビームの空芯領域に存在することになり、受電アンテナ面の中心の電力の強度が最小である状態が維持されることになる。
【0010】
また、本発明の一態様による無線給電装置では、ビームのビームウェストは、受電アンテナ面の位置となってもよい。
このような構成により、より効率のよい無線給電を実現することができ、例えば、受電アンテナの大きさをより小さくすることができる。
【0011】
また、本発明の一態様による無線給電装置では、飛行体の高度を取得する高度取得部と、高度を用いて、ビームウェストが受電アンテナ面の位置となるビームを設計する設計部と、設計部によって設計されたビームに応じた電力伝送が行われるように送電部を制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
このような構成により、送電アンテナと受電アンテナとの鉛直方向の距離が変化したとしても、その変化に応じた最適な電力伝送を実現することができる。
【0012】
また、本発明の一態様による飛行体は、空中を飛行する飛行体であって、飛行体の下方側に配置されており、送電アンテナから送信されたマイクロ波を受信する受電アンテナと、受電アンテナで受信されたマイクロ波の電力によって駆動される飛行手段と、所定のミッションを行うためのミッション機器と、を備えており、受電アンテナ面の中心には、ミッション機器がミッションを行うための孔が設けられている、ものである。
このような構成により、受電アンテナ面の中心に設けられている孔によって、ミッション機器は所定のミッションを行うことができるようになる。また、例えば、受電アンテナ面の中心において電力の強度が最小となるように送電アンテナからマイクロ波が送信されることによって、効率のよい受電を実現することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様による無線給電装置によれば、飛行中の飛行体が有する受電アンテナ面の中心以外の領域を用いて適切に無線給電を行うことができるようになる。また、本発明の一態様による飛行体によれば、受電アンテナ面の中心に設けられている孔によって、ミッション機器は飛行中に所定のミッションを行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における無線給電装置の送電アンテナから飛行体の受電アンテナへの無線給電の一例を示す模式図
図2】同実施の形態による無線給電装置及び飛行体の構成を示すブロック図
図3】同実施の形態による無線給電装置の送電部の構成の一例を示す回路図
図4】同実施の形態における空芯領域を有するビームの一例を示す図
図5A】同実施の形態におけるアンテナ間の距離と送電アンテナの直径との関係を示す図
図5B】同実施の形態における中心からの距離と相対電力密度との関係を示す図
図6A】同実施の形態における送電アンテナが有する各アンテナ素子の振幅の一例を示す図
図6B】同実施の形態における送電アンテナが有する各アンテナ素子の位相の一例を示す図
図6C】同実施の形態におけるマイクロ波のビームの中心軸を含む断面の電力密度の一例を示す図
図7】同実施の形態におけるビームの他の一例を示す図
図8A】同実施の形態における送電アンテナ面の直径方向における電力及び位相の一例を示す図
図8B】同実施の形態におけるマイクロ波のビームの中心軸を含む断面の電力密度の一例を示す図
図8C】同実施の形態における受電アンテナ面における電力密度の一例を示す図
図9】同実施の形態による無線給電装置の構成の他の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による無線給電装置、及び飛行体について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による無線給電装置は、送電アンテナから伝送された電力の強度が、空中を飛行する飛行体の受電アンテナ面の中心において最小となるように無線給電を行うものである。
【0016】
図1は、本実施の形態による無線給電装置1から飛行中の飛行体2への無線給電の状況の一例を示す模式図であり、図2は、無線給電システム100の構成を示すブロック図である。また、図3は、アンテナ素子11aごとに振幅及び位相を変更可能な送電部12の構成の一例を示す回路図である。図2で示されるように、無線給電システム100は、無線給電装置1と、飛行体2とを備える。無線給電装置1は、飛行中の飛行体2に対して無線で給電を行うものであり、通常、地上に存在する。無線給電装置1は、例えば、図1で示されるように電源車4などの移動体に搭載されていてもよく、または、地上に固定されていてもよい。空中を移動している飛行体2に無線で給電できるようにする観点からは、無線給電装置1が地上で移動可能な移動体に搭載されていることが好適である。図2で示されるように、無線給電装置1は、送電アンテナ11と、送電部12と、制御部13とを備える。
【0017】
送電アンテナ11は、面状に配置された複数のアンテナ素子11aを有する平面アレイアンテナである。各アンテナ素子11aは、平面アレイアンテナを構成可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ダイポールアンテナなどの線状アンテナ、スロットアンテナ、マイクロストリップアンテナなどの低利得でビーム幅の広いものであってもよい。複数のアンテナ素子11aは、例えば、面状に等間隔で配置されていてもよい。アンテナ素子11aの配置間隔は特に限定されないが、例えば、0.7λなどのように、送信されるマイクロ波の波長λよりも短い間隔であってもよい。また、送電アンテナ11は、図1で示されるように、平面視において、例えば、円盤形状であってもよい。なお、この平面アレイアンテナ、及びそれによって形成されるビームの偏波は、例えば、直線偏波であってもよく、円偏波であってもよい。飛行体2がビームの軸を中心に回転することを考慮すると、円偏波の方が好適である。
【0018】
送電部12は、送電アンテナ11の複数のアンテナ素子11aからそれぞれマイクロ波を送信する。マイクロ波の周波数は特に限定されないが、例えば、300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。送電部12によるマイクロ波の送信は、送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、飛行体2の受電アンテナ21面の中心において最小となるように行われてもよく、一例として、送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、送電方向の中心軸において最小となるビームが形成されるように行われてもよい。また、そのビームのビームウェストは、受電アンテナ21面の位置となってもよい。なお、結果としてそのような送電が行われる方法は問わない。そのような送電が、例えば、制御部13によって送電部12が制御されることによって行われてもよく、そのような制御なしに行われてもよい。本実施の形態では、前者の場合について主に説明し、後者の場合については後述する。送電部12は、例えば、アンテナ素子11aごとに振幅、及び位相を変更できる機構を有していてもよい。図3で示されるように、送電部12は、所定の周波数のマイクロ波を生成する発振器12aと、信号の位相を変化させる複数の移相器12bと、信号を増幅する複数の増幅器12cとを備える。発振器12aによって発振された信号は、複数の移相器12bによってそれぞれ移相され、複数の増幅器12cによってそれぞれ増幅されてアンテナ素子11aから放射される。なお、各移相器12bによる移相の程度や、各増幅器12cによる振幅の変化の程度は、後述するように、送電アンテナ11から送信されるマイクロ波が所望のビームを構成するように制御部13によって制御される。
【0019】
なお、送電部12は、図3以外の構成であってもよい。送電部12は、例えば、デジタルビームフォーミングによって複数のアンテナ素子11aからそれぞれマイクロ波を送信してもよい。この場合には、送電部12は、例えば、複数のアンテナ素子11aごとに、ベースバンド帯域で所望の位相のデジタル信号を生成し、生成したデジタル信号をDA変換し、送信周波数に周波数変換(変調)し、所望の振幅に増幅してもよい。そして、それらの処理の行われた信号が各アンテナ素子11aから放射されてもよい。
【0020】
制御部13は、送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、飛行体2の受電アンテナ21面の中心において最小となるように送電部12を制御する。電力の強度が受電アンテナ21面の中心において最小となるとは、受電アンテナ21面の中心を含む領域において、中心部分の電力の強度が、その中心を取り囲む周辺部分の電力の強度よりも小さくなっていることであってもよい。従来、無線給電を行う場合には、受電アンテナ21面の中心の電力の強度がピークとなることが一般的であるが、本実施の形態では、そのピークの領域が受電アンテナ21面の中心を取り囲む環状の領域となってもよい。受電アンテナ21面の中心とは、受電アンテナ21の面方向の中心であってもよい。なお、送電部12を制御するとは、送電部12から各アンテナ素子11aに出力される信号の振幅及び位相を制御することであってもよい。制御部13は、例えば、送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、送電方向の中心軸において最小となるビームが形成されるように送電部12を制御してもよい。送電方向は、例えば、送電アンテナ11の面方向に垂直な方向であってもよい。また、送電方向の中心軸は、マイクロ波のビームの送電方向に延びる中心軸であってもよい。送電方向の中心軸において電力強度が最小となるビームは特に限定されないが、一例として、ラゲールガウシアンビームであってもよい。本実施の形態では、ラゲールガウシアンビームによって電力伝送が行われる場合について主に説明する。なお、具体的な振幅及び位相の制御については後述する。
【0021】
飛行体2は、空中で停止可能なもの、すなわち停止飛行(ホバリング)をすることができるものであることが好適であり、例えば、回転翼機であってもよく、飛行船であってもよく、停止飛行可能なその他の飛行体であってもよい。停止飛行可能であると共に、任意の位置に移動可能であるという観点からは、飛行体は、回転翼機であることが好適である。回転翼機は、例えば、ヘリコプターであってもよく、3個以上の回転翼(ロータ)を有するマルチコプターであってもよい。マルチコプターは、いわゆるドローンであってもよい。マルチコプターは、例えば、4個の回転翼を有するクワッドロータであってもよく、その他の個数の回転翼を有するものであってもよい。本実施の形態では、飛行体2がドローンである場合について主に説明する。図2で示されるように、飛行体2は、受電アンテナ21と、バッテリ22と、受電部23と、飛行手段24と、ミッション機器25とを備える。
【0022】
受電アンテナ21は、送電アンテナ11から送信されたマイクロ波を受信するアンテナである。受電アンテナ21は、飛行体2の下方側に配置される。受電アンテナ21面の中心には、図1で示されるように、ミッション機器25がミッションを行うための孔21aが設けられていてもよい。受電アンテナ21は、平面状のアンテナであり、形状は特に限定されないが、例えば、平面視において、円盤形状であってもよく、中心に孔21aを有する円盤形状、すなわち環状盤形状であってもよい。本実施の形態では、受電アンテナ21が環状盤形状である場合について主に説明する。孔21aの形状は特に限定されないが、例えば、円形状であってもよい。受電アンテナ21も、送電アンテナ11と同様に、面状に配置された複数のアンテナ素子を有する平面アレイアンテナであってもよい。受電アンテナ21は、停止飛行中に面方向が水平方向となるように配置されていることが好適である。受電アンテナ21は、例えば、レクテナであってもよい。
【0023】
バッテリ22には、無線給電装置1から無線で給電された電力が蓄積される。バッテリ22は、充電可能な二次電池であることが好適である。
【0024】
受電部23は、受電アンテナ21で受電された電力をバッテリ22に充電する。なお、受電部23は、例えば、受電アンテナ21がレクテナである場合には、整流後の直流電力をそのままバッテリ22に充電してもよく、受電アンテナ21がレクテナでない場合には、受電された交流電力を整流し、整流後の直流電力をバッテリ22に充電してもよい。
【0025】
飛行手段24は、飛行体2を飛行させるための手段であり、例えば、回転翼と、その回転翼を駆動する駆動手段とを有していてもよい。駆動手段は、例えば、モータであってもよい。飛行手段24は、回転翼と駆動手段との2以上の組を有していてもよい。飛行手段24は、受電アンテナ21で受信されたマイクロ波の電力によって駆動される。その電力は、受電後にバッテリ22に充電された電力であってもよい。飛行手段24がバッテリ22の電力で駆動されるとは、飛行手段24の駆動手段が、バッテリ22の電力で駆動されることであってもよい。
【0026】
ミッション機器25は、所定のミッションを行うための機器である。このミッション機器25も、無線給電装置1から受電された電力、すなわちバッテリ22の電力で駆動されてもよい。所定のミッションは、例えば、撮影であってもよく、電波の中継であってもよい。ミッションが撮影である場合には、ミッション機器25は、例えば、カメラであってもよい。ミッションが中継である場合には、ミッション機器25は、例えば、中継器であってもよい。飛行体2が飛行している状態において、ミッション機器25は、受電アンテナ21面より上方に位置してもよく、または、下方に位置してもよい。前者の場合には、ミッション機器25は、例えば、受電アンテナ21の孔21aを介して撮影や電波の中継を行ってもよく、後者の場合には、ミッション機器25は、例えば、図1で示されるように、支持部材25aによって支持されており、その支持部材25aが、受電アンテナ21の孔21aを介して飛行体2の本体側に固定されていてもよい。
【0027】
無線給電装置1から無線給電されている際に、飛行体2は、例えば、無線給電装置1が停止している場合には停止飛行してもよく、無線給電装置1が移動している場合には送電アンテナ11との相対的な位置関係が一定となるように飛行してもよい。飛行体2は、例えば、自律的に飛行するものであってもよく、操作者の操作に応じて飛行するものであってもよい。また、無線給電装置1と飛行体2とは、それぞれ両者間で無線通信を行うための通信部を備えていてもよい。
【0028】
次に、ラゲールガウシアンビームについて説明する。ラゲールガウシアンビームの電界分布は、次式で示される。
【数1】
【0029】
r、φ、zは、円柱座標系における基準軸からの距離、基準軸周りの方位角、基準軸方向の距離である。図4で示されるように、円盤形状の送電アンテナ11及び受電アンテナ21が平行に配置され、平面視において、送電アンテナ11及び受電アンテナ21の中心が一致する場合には、基準軸は送電アンテナ11及び受電アンテナ21の中心を繋ぐ直線であり、zは、受電アンテナ21の位置が0であり、送電アンテナ11に向かう方向、すなわち図4における下向きが正に取られるものとする。また、このラゲールガウシアンビームの電界分布では、z=0の位置、すなわち受電アンテナ21の位置がビームウェストの位置となっている。Eは、正の実数の比例係数である。p、mは、モードインデックスである。なお、pは0以上の整数であり、mは任意の整数である。w(z)は、中心である基準軸に空芯領域がない状況におけるビーム半径であり、以下の式によって示される。また、Lはラゲール多項式であり、kは送信されるマイクロ波の波数であり、R(z)はビームを構成する波面の曲率半径であり、以下の式によって示される。また、Ψ(z)は、グイ位相であり、以下の式によって示される。jは虚数単位である。
【0030】
ビーム半径w(z)は、次式で示される。ここで、w=w(0)であり、z=(πw )/λである。また、λはマイクロ波の波長である。
【数2】
【0031】
波面の曲率半径R(z)は、次式で示される。
【数3】
【0032】
グイ位相Ψ(z)は、次式で示される。
【数4】
【0033】
また、ビームの分散σは、次式で示される。この分散σは、ビームの中心軸に垂直な面方向におけるビームの広がりを示すものであり、中心軸に空芯領域があるビームの半径と考えてもよい。なお、基準軸に垂直な方向のビームの断面形状は、p=0では1個のリング状となり、p=N(N≧1)ではN+1個の同心のリング状となる。本実施の形態では、ビームの断面形状はリング状であればよいため、p=0の場合について主に考える。
【数5】
【0034】
このビームは、ガウス分布のように半径方向、すなわち基準軸から離れる方向に無限の広がりを有しているが、それは円盤形状のアンテナの端部によって切り取られることになる。エッジテーパーTを、アンテナの端部までに含める、ピークの強度に対する減衰の程度を示す値とすると、zの位置における分散σ(z)と、zの位置に配置されたアンテナの半径r(z)との関係は、次式のようになる。なお、図4では、受電アンテナ21の半径r(0)=rとしている。例えば、T=20dBである場合には、ピークの強度に対して1/100となる強度までの範囲がアンテナに含まれることになる。
【数6】
【0035】
したがって、受電アンテナ21の半径r、及びエンジテーパーTを決定すると、受電アンテナ21における分散σ(0)を算出することができ、その算出した分散σ(0)を用いて、受電アンテナ21におけるビーム半径w=w(0)を算出することができる。その結果、ラゲールガウシアンビームの電界分布が決定されることになる。
【0036】
次に、送電アンテナ11から受電アンテナ21までの距離zを決定すると、w(z)を算出することができ、その算出したw(z)=wを用いてσ(z)を算出することができる。また、その算出したσ(z)を用いて、送電アンテナ11の半径r(z)=rを算出することができる。
【0037】
なお、図5Aで示されるように、送電アンテナ11の直径2r(z)と、アンテナ間の距離zとの関係は、モードインデックスmの値に応じて変化する。図5Aから、アンテナ間の距離が変わらないとすると、モードインデックスmの絶対値が大きくなるほど、送電アンテナ11の直径も大きくなることが分かる。また、受電アンテナ21面におけるビームの中心からの距離と、ピークを0とした相対電力密度との関係は、図5Bで示されるようになる。図5Bから、ビームの中心軸付近においては、電力の強度が最小となっていることが分かる。また、図5Bから、モードインデックスmの絶対値が大きいほど、ビームの中心の空芯領域も大きくなることが分かる。したがって、モードインデックスmは、許容できる送電アンテナ11の大きさの範囲内において、最も大きい値に設定されることが好適である。例えば、アンテナ間の距離z=40(m)であり、送電アンテナ11の直径は4.5(m)までが許容範囲である場合には、m=3に設定されることが好適である。m=3の場合には、送電アンテナ11の直径は4.2(m)であり、4.5(m)以下だからである。また、送電アンテナ11の直径があらかじめ決まっている場合にも、2r(z)が送電アンテナ11の直径以下となるモードインデックスmが選択されることが好適である。なお、空芯領域は、ビームの電力密度のピークに対して、所定以上だけ減衰した中心軸付近の領域である。図5Bでは、m=3のビームにおいて、ピークに対して20dB以上減衰した中心の領域を空芯領域として両矢印で示している。m=3のビームでは、空芯領域の直径は約14(cm)となる。したがって、例えば、受電アンテナ21の中心に設けられる孔21aの直径を約14(cm)程度としてもよい。
【0038】
モードインデックスmと、アンテナ間の距離zとが決まると、ラゲールガウシアンビームの電界分布の式にそれらを代入することによって、送電アンテナ11における電界分布を算出することができる。なお、算出した電界分布に含まれる比例係数Eは、伝送される電磁波の電力の合計を算出し、その電力の合計が目的とする電力となるように決定すればよい。例えば、r=0.5(m)、r=2.1(m)、T=20(dB)、マイクロ波の周波数f=24(GHz)、p=0、m=3、z=40(m)とすると共に、伝送される電力の合計が1kWとなるように比例係数Eを決定すると、送電アンテナ11における振幅、位相は、図6A図6Bで示されるようになり、基準軸を含む平面における電力密度は、図6Cで示されるようになる。図6Cから、ビームの中心軸付近においては、電力の強度が最小となっていることが分かる。なお、ラゲールガウシアンビームの電界分布の式から、m≧1の場合には、基準軸の周りを1周することによって、すなわちφを2πだけ変化させることによって、2πの位相の変化がm回存在することが分かるが、図6Bによってそのことを確認することができる。したがって、m≧1であるラゲールガウシアンビームは、送電方向の中心軸、すなわち基準軸を中心とした方位角方向について位相が変化するビームであるということができる。なお、図6A図6Cは、円柱座標系の基準軸がZ軸方向となり、Z=0であるXY平面が送電アンテナ11の面方向となるXYZ直交座標系によって表示している。
【0039】
制御部13は、送電アンテナ11の各アンテナ素子11aの振幅及び位相が、ラゲールガウシアンビームの電界分布を用いて算出された振幅及び位相となるように送電部12を制御すればよい。具体的には、送電アンテナ11の各アンテナ素子11aの位置(r,φ)をラゲールガウシアンビームの電界分布の式に代入し、その式における振幅及び位相を特定することによって、送電アンテナ11を構成する複数のアンテナ素子11aの位置ごとの振幅及び位相を特定することができる。そして、制御部13は、各アンテナ素子11aの振幅及び位相が、その特定された振幅及び位相となるように送電部12を制御すればよいことになる。より具体的には、ラゲールガウシアンビームの電界分布の式を用いて算出された各アンテナ素子11aの振幅及び位相が記録媒体で記憶されている場合には、制御部13は、その振幅及び位相を記録媒体から読み出して、送電部12を制御してもよい。なお、送電部12が図3で示される回路である場合には、制御部13は、各アンテナ素子11aに対応する移相器12b及び増幅器12cをそれぞれ制御することによって、特定された位相及び振幅の信号がアンテナ素子11aから放射されるようにしてもよい。
【0040】
なお、本実施の形態では、電力の強度が中心軸、すなわち上記円柱座標系における基準軸において最小となるビームとして、ラゲールガウシアンビームを用いる場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、電力の強度が中心軸において最小となるビームを球面波の重ね合わせによって形成することもできる。そのようにして形成された、電力の強度が中心軸において最小となるビームによって、無線給電を行ってもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、ビームのビームウェストが受電アンテナ21の位置となるビームが形成される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。受電アンテナ21の位置が、ビームウェストからずれた位置となるビームが形成されるようにしてもよい。なお、ビームウェストは、ビームの最も絞られた箇所であるため、受電アンテナ21の位置をビームウェストとすることによって、受電アンテナ21の直径が決まっている場合に、最も効率のよい無線給電を実現することができるようになる。また、受電アンテナ21の直径が決まっていない場合には、受電アンテナ21の位置をビームウェストとすることによって、受電アンテナ21の直径を最小にすることも可能である。
【0042】
また、本実施の形態では、電力の強度が中心軸において最小となるビームを用いて無線給電が行われる場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、少なくとも、受電アンテナ21面の中心において最小となるのであれば、他の無線給電が行われてもよい。例えば、送電アンテナ11における中心から半径R1までの円盤形状の中心領域における位相と、半径R1から半径R2までの環状盤形状の環状領域における位相との差がπとなるようにし、また、中心領域から送信される電力と、環状領域から送信される電力とが等しくなるようにすることによって、所定の焦点位置において、電力の強度が0になるようにすることができる。その焦点位置は、上記した円柱座標系における基準軸上に存在する。したがって、このドーナッツビームを、その焦点位置が受電アンテナ21面の中心となるように設計し、制御部13が、その設計されたドーナッツビームが形成されるように送電部12を制御することによって、送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、受電アンテナ21面の中心において最小となるようにすることができる。このドーナッツビームでは、ビームの中心軸に空芯領域は存在しないことになる。なお、ドーナッツビームの詳細については、例えば、次のサイトを参照されたい。
サイト<URL:https://optipedia.info/app/lsm/doughnut_beam/>
【0043】
また、送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、少なくとも、受電アンテナ21面の中心において最小となるようにするため、2つのガウシアンビームを重ね合わせてもよい。この場合には、飛行体2の受電アンテナ21面の高さがビームウェストとなるガウシアンビームの断面振幅を送電アンテナ11である平面アレイアンテナが有する複数のアンテナ素子11aによって実現することによって、エネルギーが受電アンテナ21面に集中する円錐状のビームを形成する。さらに、異なるビームウェスト半径w10、w20(w10<w20)となる2つの基本モードのガウシアンビームを逆相で重ね合わせて、ビームウェストの中心領域の強度を打ち消し合わせることによって、図7で示されるように、受電アンテナ21面に半径w10の大きさの減衰領域を形成することができる。なお、図7でも、図4と同様の円柱座標系を採用している。
【0044】
このとき、送電アンテナ11面における各ガウシアンビームの半径は、伝搬距離zを用いて次式のように与えられる。なお、n(=1,2)は、ガウシアンビームを識別するインデックスであり、λはマイクロ波の波長である。
【数7】
【0045】
ビームウェストが小さいw10のモードは、ビーム発散角が大きく、zの増加に対してビーム半径が大きくなる程度が大きくなる。そのため、ビームウェストにおけるアンテナ半径、すなわち受電アンテナ21の半径rは、ウェスト半径がw20であるガウシアンビームのエッジテーパーTe2によって決まるのに対して、送電アンテナ11の半径rはビーム半径w11とそのエッジテーパーTe1とによって決定される。すなわち、次式のようになる。言い換えると、主に形成する減衰領域の大きさにより、必要とされる送電アンテナ11の径が決まることになる。
【数8】
【0046】
次に、ビーム形成の数値シミュレーションにおいて、アレイアンテナからビーム電磁界を計算するプログラムを用いることにより、2つのガウシアンビームを重ね合わせたビームの電磁界を計算した。ここでは、マイクロ波の周波数を24GHz、送電電力を1kW、送電アンテナ11の半径を2.1(m)、受電アンテナ21の半径を1.0(m)、送電アンテナ11から受電アンテナ21までの高さを40(m)とした。また、ガウシアンビームのエッジテーパーは、Te1=Te2=20dBとした。このとき、ビームウェスト半径w10、w20は、上式を用いてそれぞれ0.12(m)、0.33(m)と算出することができる。また、本シミュレーションでは、アンテナ素子11aに相当する微小ダイポールアンテナを0.7波長間隔で正方形状に配列することによってビーム電磁界を形成した。
【0047】
上記のようにして得られた送電アンテナ11の入力電力及び位相分布は、図8Aで示されるようになった。なお、図8Aでは、送電アンテナ11面の中心を通る直径方向の相対電力密度及び位相を示している。図8Aから、中心付近では、通常のガウシアンビームの分布に近いことが分かるが、半径0.8(m)の付近では振幅が一定になっていることが分かる。また、このような振幅及び位相で平面アレイアンテナである送電アンテナ11から放射されたビームプロファイルは、図8Bで示されるようになる。なお、図8A図8Cでは、図6A図6Cと同様のXYZ直交座標系を設定しているものとする。図8Bから、設計通り高度40(m)でビーム中心軸上に減衰領域が存在することが分かる。図8Cは、高度40(m)、すなわち受電アンテナ21面におけるビームの断面強度を示す図である。図8Cから、減衰領域の直径が約15(cm)であることが分かる。したがって、2つのガウシアンビームを受電アンテナ21面の中心で互いに打ち消しあうように重ね合わせることによって、送電アンテナ11から伝送された電力の強度が、受電アンテナ21面の中心において最小となるようにすることができることが分かる。なお、ドーナッツビームや、2つのガウシアンビームの重ね合わせ以外の方法によって、受電アンテナ21面の中心において電力の強度が最小となるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0048】
次に、本実施の形態による無線給電システム100の動作について、具体例を用いて説明する。飛行体2のバッテリ22の充電量が閾値以下となると、飛行体2は、無線給電装置1に無線給電を行う旨を送信する。それに応じて、無線給電装置1は、例えば、無線給電装置1の現在位置を飛行体2に伝えてもよい。または、飛行体2からの送信内容に飛行体2の現在位置が含まれている場合には、無線給電装置1を搭載している電源車4が、その飛行体2の現在位置に移動してもよい。電源車4と飛行体2との少なくとも一方が移動することによって、飛行体2が無線給電装置1の送電アンテナ11の上方に位置するようになると、飛行体2は、送電アンテナ11と受電アンテナ21との距離があらかじめ決められた距離となるように、電源車4の移動に追従して飛行する。そして、無線給電装置1の制御部13は、あらかじめ決められたビームでマイクロ波が送信されるように送電部12を制御する。このようにして、送電アンテナ11から受電アンテナ21への電力伝送を行うことができる。受電された電力は、受電部23によってバッテリ22に充電され、充電量が目的とする量になると、無線給電が終了される。なお、電力伝送で用いられるマイクロ波のビームでは、受電アンテナ21面の中心における電力強度が最小となるようにされているため、その中心の位置に配置されているミッション機器25に影響を与えないことになり、また、ミッション機器25が所定のミッションを行うために、受電アンテナ21面の中心に孔21aが設けられていたとしても、その孔21aによって受電効率が低下しないようにすることができる。また、ミッション機器25は、無線給電が行われている際にも、ミッションを継続することもできる。
【0049】
以上のように、本実施の形態による無線給電装置1によれば、受電アンテナ21面の中心において電力強度が最小となるように無線給電を行うことによって、受電アンテナ21面の中心にミッション機器25が配置されていたり、受電アンテナ21面の中心に、ミッション機器25がミッションを行うための孔21aが設けられていたりしても、ミッション機器25に対する電波干渉などの影響を低減することができ、また効率のよい無線給電を行うことができる。また、ミッション機器25にマイクロ波が照射されることも回避できるため、ミッション機器25の故障の可能性も低減することができる。また、無線給電で用いられるマイクロ波のビームが、送電方向の中心軸において電力強度が最小となるビームである場合には、無線給電中に飛行体2の上下方向の位置が風の影響などによってずれたとしても、受電アンテナ21面の中心の電力強度が最小である状態は維持されることになり、電波干渉などの問題は生じないことになる。また、無線給電で用いられるマイクロ波のビームのビームウェストが受電アンテナ21面の位置となるようにすることによって、効率のよい無線給電を実現することができる。また、本実施の形態による飛行体2によれば、受電アンテナ21面の中心に孔21aが設けられていることによって、その孔21aを介して、飛行中にミッション機器25が所定のミッションを行うことができるようになる。
【0050】
なお、本実施の形態では、あらかじめ設計されたビームによって無線給電を行う場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。無線給電装置1において、飛行体2の高度に応じてリアルタイムでビームの設計を行い、飛行体2の高度に応じたビームを用いて無線給電を行ってもよい。この場合には、図9で示されるように、無線給電装置1は、高度取得部14と、設計部15とをさらに備えてもよい。
【0051】
高度取得部14は、飛行体2の高度を取得する。高度取得部14は、例えば、飛行体2の高度を測定してもよく、または、飛行体2や他の装置から、飛行体2の高度を受信してもよい。飛行体2の高度を測定する場合には、高度取得部14は、例えば、測距センサによって飛行体2の高度を測定してもよい。測距センサは、例えば、レーザ光、赤外光、超音波、マイクロ波などを用いて距離を測定するセンサであってもよく、ステレオカメラを用いて距離を測定するセンサであってもよい。なお、この高度は、結果として、送電アンテナ11から受電アンテナ21までの距離、すなわち両アンテナ間の鉛直方向の距離を知ることができるのであれば、どのような高度であってもよい。高度取得部14によって取得される高度は、例えば、地面から飛行体2の受電アンテナ21までの高度であってもよく、送電アンテナ11から受電アンテナ21までの高度であってもよい。前者の場合には、例えば、地面から送電アンテナ11までの高さを用いて、高度から両アンテナ間の距離が算出されてもよい。
【0052】
設計部15は、高度取得部14によって取得された飛行体2の高度を用いて、ビームウェストが受電アンテナ21面の位置となるビームを設計する。まず、設計部15は、例えば、取得された高度を用いて、送電アンテナ11から受電アンテナ21までの距離を取得してもよい。ラゲールガウシアンビームによって無線給電が行われる場合には、送電アンテナ11及び受電アンテナ21の半径はすでに決まっているため、設計部15は、図5Aのグラフを用いて、送電アンテナ11の直径以下となるモードインデックスmの値を決定してもよい。そして、設計部15は、その決定したmなどを代入したラゲールガウシアンビームの電界分布を用いて、送電アンテナ11のアンテナ素子11aの位置ごとの振幅及び位相を算出して制御部13に渡してもよい。このように、設計部15による設計は、アンテナ素子11aごとの振幅及び位相を算出することであってもよい。制御部13は、設計部15によって設計されたビームに応じた電力伝送が行われるように送電部12を制御してもよい。なお、制御部13の処理は、上記説明と同様であり、その詳細な説明を省略する。このように、飛行体2の高度に応じたビームをリアルタイムで設計することにより、飛行体2の高度が変化したとしても、その変化に適応した効率のよい無線給電を実現することができる。なお、設計部15は、例えば、高度取得部14によって取得された高度が所定の閾値を超えて変化した場合に、その変化後の高度に応じた新たなビームを設計してもよい。
【0053】
なお、ここでは、飛行体2の高度に適応した効率のよい無線給電を実現する場合について説明したが、さらに飛行体2の水平方向の位置に適応した効率のよい無線給電を行うようにしてもよい。この場合には、無線給電装置1は、例えば、送電アンテナ11に対する飛行体2の相対的な位置関係を取得し、その位置関係において、受電アンテナ21面の中心において、電力強度が最小となるビームを設計し、その設計したビームに応じた電力伝送が行われるように送電部12を制御してもよい。この場合には、受電アンテナ21面の中心が送電アンテナ11面の中心の鉛直上方に存在しなかったとしても、受電アンテナ21面の中心の電力強度が最小となるビームを用いた無線給電を実現することができる。送電アンテナ11は平面アレイアンテナであるため、このような無線給電を行うことも可能である。
【0054】
また、本実施の形態では、制御部13が送電部12を制御する場合について主に説明したが、上記したように、送電部12による送電は、制御部13による制御なしに行われてもよい。この場合には、無線給電装置1は、制御部13を備えていなくてもよい。無線給電装置1が制御部13を備えていない場合には、送電部12は、送電アンテナ11の各アンテナ素子11aの出力が、あらかじめ決められた振幅及び位相となるようにマイクロ波を送信してもよい。例えば、送電部12が有する複数の移相器12bによる移相の程度、及び複数の増幅器12cによる増幅の程度は、固定されていてもよい。この場合には、移相器12bや増幅器12cは、例えば、移相や増幅の程度を変更できないものであってもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、無線給電装置1が地上に存在する場合について主に説明したが、無線給電装置1は飛行体に搭載されていてもよい。そして、送電側の飛行体から、受電側の飛行体2に対して無線給電が行われてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、飛行体2の受電アンテナ21面の中心に孔21aが設けられている場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。受電アンテナ21面には、孔21aが設けられていなくてもよい。この場合には、例えば、受電アンテナ21面の中心にミッション機器25が、貼り付けられたり、ねじ止めされたりすることによって固定されていてもよい。この場合には、受電アンテナ21面のうち、ミッション機器25の固定されている領域ではマイクロ波を受信することができないが、上記のように、受電アンテナ21面の中心において電力の強度が最小となるように無線給電が行われることによって、ミッション機器25の影響を受けない、またはその影響を低減した受電を実現することができる。また、この場合には、例えば、受電アンテナ21面のうち、マイクロ波のビームの空芯領域に対応する領域には、アンテナ素子が配置されていなくてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
【0058】
また、以上の実施の形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 無線給電装置
2 飛行体
11 送電アンテナ
12 送電部
13 制御部
14 高度取得部
15 設計部
21 受電アンテナ
22 バッテリ
23 受電部
24 飛行手段
25 ミッション機器
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9