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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030237
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】複合装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B60H1/22 611D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132952
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】岡田 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】関 龍之介
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA53
3L211DA30
3L211DA50
3L211EA87
3L211FB06
(57)【要約】
【課題】車両用空気調和装置等の小型化に資することができる複合装置を提供すると共に、複合装置において電流検出に用いられる電流検出部の増加を抑制する。
【解決手段】冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を有する複合装置1は、モータ駆動回路20を流れる電流Imを検出するモータ電流検出部61と、主電子回路40を流れる電流Itを検出する全体電流検出部62と、全体電流検出部62による電流Itの検出値からモータ電流検出部61による電流Imの検出値を減算することによりヒータ制御回路30を流れる電流Ihを算出するヒータ電流算出部70と、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を有する複合装置であって、
冷媒を圧縮する圧縮機構及び前記圧縮機構を駆動する電動モータを内部に収容すると共に、冷媒を内部に流入させる冷媒流入口及び前記圧縮機構で圧縮された冷媒を外部に流出させる冷媒流出口を有する圧縮機ハウジングと、
熱媒体を加熱する電気ヒータを内部に収容すると共に、熱媒体を内部に流入させる熱媒体流入口及び前記電気ヒータで加熱された熱媒体を外部に流出させる熱媒体流出口を有するヒータハウジングと、
前記電動モータを駆動するモータ駆動回路及び前記電気ヒータを制御するヒータ制御回路を有する主電子回路を内部に収容する回路ハウジングと、
前記モータ駆動回路を流れる電流を検出するモータ電流検出部と、
前記主電子回路を流れる電流を検出する全体電流検出部と、
前記全体電流検出部による電流の検出値から前記モータ電流検出部による電流の検出値を減算することにより前記ヒータ制御回路を流れる電流を算出するヒータ電流算出部と、
を含む、複合装置。
【請求項2】
前記全体電流検出部の電流検出周期は、前記モータ電流検出部の電流検出周期に合わせられている、請求項1に記載の複合装置。
【請求項3】
前記圧縮機構及び前記電気ヒータは、車両用空気調和装置の一部を構成し、
前記全体電流検出部の電流検出周期及び前記モータ電流検出部の電流検出周期は、車両から出力され該複合装置に入力される要求信号の入力周期以下の周期に設定されている、請求項2に記載の複合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒圧縮機能と熱媒体加熱機能とを有する複合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に適用可能な車両用空気調和装置が記載されている。特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する電動圧縮機と、電動圧縮機から吐出された冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、放熱された冷媒を減圧膨張させる膨張弁と、減圧膨張された冷媒と外気との間で熱交換を行わせる蒸発器に相当する熱交換器を含む冷媒回路を有している。また、特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、放熱器による車室内の暖房を補助するため、熱媒体を加熱する熱媒体加熱電気ヒータと、加熱された熱媒体で車室内に供給される空気を加熱する熱媒体-空気熱交換器と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-213765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、放熱器による暖房能力の不足を補完することが可能である。しかし、特許文献1に記載された車両用空気調和装置では、電動圧縮機や熱媒体加熱電気ヒータなどが個別に設けられている。このため、装置全体が大型化し、設置スペースなどの面で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、車両用空気調和装置等の小型化に資することができる複合装置を提供すると共に、複合装置において電流検出に用いられる電流検出部の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、冷媒圧縮機能及び熱媒体加熱機能を有する複合装置が提供される。複合装置は、冷媒を圧縮する圧縮機構及び前記圧縮機構を駆動する電動モータを内部に収容すると共に、冷媒を内部に流入させる冷媒流入口及び前記圧縮機構で圧縮された冷媒を外部に流出させる冷媒流出口を有する圧縮機ハウジングと、熱媒体を加熱する電気ヒータを内部に収容すると共に、熱媒体を内部に流入させる熱媒体流入口及び前記電気ヒータで加熱された熱媒体を外部に流出させる熱媒体流出口を有するヒータハウジングと、前記電動モータを駆動するモータ駆動回路及び前記電気ヒータを制御するヒータ制御回路を有する主電子回路を内部に収容する回路ハウジングと、前記モータ駆動回路を流れる電流を検出するモータ電流検出部と、前記主電子回路を流れる電流を検出する全体電流検出部と、前記全体電流検出部による電流の検出値から前記モータ電流検出部による電流の検出値を減算することにより前記ヒータ制御回路を流れる電流を算出するヒータ電流算出部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両用空気調和装置等の小型化に資することができる複合装置を提供することができる。また、本発明によれば、複合装置において電流検出に用いられる電流検出部の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る複合装置の正面図である。
図2】実施形態に係る複合装置の右側面図である。
図3】実施形態に係る複合装置の上面図である。
図4】実施形態に係る複合装置の部分概略断面図であり、図2のA-A断面図に相当する図である。
図5】実施形態に係る複合装置のモータ駆動回路及びヒータ制御回路を有する主電子回路を含む電子回路の要部構成例を示す図である。
図6】実施形態に係る複合装置の部分概略断面図であり、図3のB-B断面図に相当する図である。
図7】実施形態に係る複合装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1図4は、本発明の実施形態に係る複合装置1の概略構成を示している。図1は、実施形態に係る複合装置1の正面図であり、図2は、実施形態に係る複合装置1の右側面図であり、図3は、実施形態に係る複合装置1の上面図であり、図4は、実施形態に係る複合装置の部分概略断面図であり、図2のA-A断面図に相当する図である。
【0011】
実施形態に係る複合装置1は、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機能と、冷媒とは別の熱媒体を加熱する熱媒体加熱機能とを有している。つまり、複合装置1は、冷媒圧縮機と熱媒体加熱装置とが一体化された構成を有する。
【0012】
複合装置1は、上述したような車両用空気調和装置に適用され得る。すなわち、複合装置1は、冷媒が循環する冷媒回路と、電動ポンプなどで構成されるポンプ部によって熱媒体が循環する熱媒体回路とに組み込まれて使用され得る。例えば、複合装置1の冷媒圧縮機能部は、前記冷媒回路に組み込まれ、膨張弁と、蒸発器(又はこれに相当する熱交換器)とを通過した冷媒を圧縮すると共に、圧縮された冷媒を、車室内に供給される空気を加熱する放熱器(冷媒-空気熱交換器)に供給するように構成され得る。また、複合装置1の熱媒体加熱機能部は、前記熱媒体回路に組み込まれ、車室内に供給される空気を加熱する熱媒体-空気熱交換器を通過した熱媒体を加熱すると共に、加熱された熱媒体を前記熱媒体-空気熱交換器に供給するように構成され得る。なお、冷媒及び熱媒体は、それぞれ任意に選択され得るが、例えば、冷媒としては気体冷媒が用いられ、熱媒体としては液体が用いられ得る。また、特に限定されないが、熱媒体には、通常、水(不凍液などが混入されたものを含む)が用いられる。したがって、熱媒体加熱機能(熱媒体加熱装置)は、水加熱機能(水加熱装置)とも称され得る。
【0013】
図1図4を参照すると、複合装置1は、ハウジング2を有する。ハウジング2は、第1ハウジング2Aと、第2ハウジング2Bと、第3ハウジング2Cと、第1カバー2Dと、第2カバー2Eと、第3カバー2Fとを含み、これら(2A-2F)が図示省略のボルトなどの締結部材によって一体的に結合(締結)されることで、構成されている。
【0014】
第1ハウジング2Aは、略円筒状に形成されている。第1ハウジング2Aの内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構3と、圧縮機構3を駆動する電動モータ4とが軸方向に直列に収容されている。特に限定されないが、圧縮機構3は、固定スクロールと可動(旋回)スクロールとを含むスクロール圧縮機構であり得る。また、電動モータ4の出力軸4aは、圧縮機構3(例えば、前記可動(旋回)スクロール)に連結されている。
【0015】
第1ハウジング2Aの2つの開口端のうちの一方の開口端(図1図2における下側、つまり圧縮機構3側の開口端)は、第1カバー2Dによって閉塞されている。なお、冷媒を圧縮する圧縮機構3及びこれを駆動する電動モータ4を内部に収容する第1ハウジング2Aは「圧縮機ハウジング」とも称され得る。
【0016】
第2ハウジング2Bは、第1ハウジング2Aの側方に配置されている。第2ハウジング2Bは、略矩形筒状に形成されている。第2ハウジング2Bの内部には、熱媒体を加熱する電気ヒータ5が収容されている。
【0017】
第2ハウジング2Bの2つの開口端のうちの一方の開口端(図1図2における下側のの開口端)は、第2カバー2Eによって閉塞されている。なお、熱媒体を加熱する電気ヒータ5を内部に収容する第2ハウジング2Bは、「ヒータハウジング」とも称され得る。
【0018】
第3ハウジング2Cは、上面が開放された箱型に形成されている。第3ハウジング2Cの内部には、電動モータ4を駆動(制御)するモータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30を有する主電子回路40を含む電子回路が収容されている。具体的には、本実施形態においては、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30を有する主電子回路40を含む電子回路が実装された回路基板6が第3ハウジング2Cの内部に収容されている。
【0019】
第3ハウジング2Cの底壁7は、第1ハウジング2Aの他方の開口端(図1図2における上側、つまり電動モータ4側の開口端)と、第2ハウジング2Bの他方の開口端(図1図2における上側の開口端)とを閉塞している。これにより、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とが仕切られ、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とが仕切られている。つまり、第3ハウジング2Cの底壁7は、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第1仕切部71と、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第2仕切部72を有する。
【0020】
第3ハウジング2Cの上面(開口端)は、第3カバー2Fによって閉塞されている。なお、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30(具体的にはこれらを有する主電子回路40を含む前記電子回路が実装された回路基板6)を内部に収容する第3ハウジング2Cは、「回路ハウジング」又は「基板ハウジング」とも称され得る。
【0021】
そして、複合装置1においては、主に圧縮機構3、電動モータ4及びモータ駆動回路20によって冷媒圧縮機能(電動圧縮機)が実現され、主に電気ヒータ5及びヒータ制御回路30によって熱媒体加熱機能(熱媒体加熱装置)が実現される。
【0022】
第1ハウジング2Aには、前記冷媒回路を循環する冷媒を内部に流入させるための冷媒流入口8が形成されている。流入させる冷媒は、例えば、膨張弁と蒸発器とを通過した冷媒、すなわち、低温低圧の冷媒である。本実施形態において、冷媒流入口8は、第1ハウジング2Aの第3ハウジング2C側の部位、つまり、第1ハウジング2Aの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第1仕切部71の近傍に設けられている。好ましくは、冷媒流入口8は、冷媒の少なくとも一部が第1仕切部71に沿って流れるように、前記冷媒回路を循環する冷媒を第1ハウジング2A内に流入させるように構成されている。
【0023】
冷媒流入口8を介して第1ハウジング2Aの内部に流入した(低温低圧の)冷媒は、第1ハウジング2Aの内部を流れて圧縮機構3に吸入される。圧縮機構3に吸入された冷媒は、圧縮機構3によって圧縮され、高温高圧の冷媒となって圧縮機構3から吐出される。吐出された(高温高圧の)冷媒は、第1ハウジング2Aに形成された冷媒流出口9から流出し、例えば、上述の放熱器(冷媒-空気熱交換器)に供給される。つまり、第1ハウジング2Aは、冷媒を内部に流入させる冷媒流入口8及び圧縮機構3で圧縮された冷媒を外部に流出させる冷媒流出口9を有する。
【0024】
本実施形態において、冷媒流出口9は、第1ハウジング2Aの第1カバー2D側の部位に、すなわち、冷媒流入口8から図1図2における上下方向に離れた位置に設けられている。このため、本実施形態において、冷媒流入口8から第1ハウジング2A内に流入した冷媒は、第1ハウジング2A内を図1図2における上側から下側に向かって流れる。なお、第1仕切部71は、冷媒流入口8を介して第1ハウジング2A内に流入する冷媒によって冷却され得る。電動モータ4は、第1ハウジング2Aの内部を流れる冷媒によって冷却され得る。冷媒流入口8、第1ハウジング2Aの内部及び冷媒流出口9は、前記冷媒回路の一部を構成する。
【0025】
第2ハウジング2Bには、前記熱媒体回路を循環する熱媒体を内部に流入させるための熱媒体流入口10が形成されている。流入させる熱媒体は、例えば、上述の熱媒体-空気熱交換器を通過した熱媒体、すなわち、低温の熱媒体である。本実施形態において、熱媒体流入口10は、第2ハウジング2Bの第3ハウジング2C側の部位、つまり、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第2仕切部72の近傍であって且つ図1における奥側(図2における右側)に設けられている。好ましくは、熱媒体流入口10は、熱媒体の少なくとも一部が第2仕切部72に沿って流れるように、前記熱媒体回路を循環する熱媒体を第2ハウジング2B内に流入させるように構成されている。
【0026】
熱媒体流入口10を介して第2ハウジング2Bの内部に流入した(低温の)熱媒体は、第2ハウジング2Bの内部を流れ、その際、電気ヒータ5によって加熱されて昇温する。加熱された熱媒体は、第2ハウジング2Bに形成された熱媒体流出口11から流出し、例えば、上述の熱媒体-空気熱交換器に供給される。つまり、第2ハウジング2Bは、熱媒体を内部に流入させる熱媒体流入口10及び電気ヒータ5で加熱された熱媒体を外部に流出させる熱媒体流出口11を有する。
【0027】
本実施形態において、熱媒体流出口11は、第2ハウジング2Bの内部と第3ハウジング2Cの内部とを仕切る第2仕切部72の近傍であって且つ図1における手前側(図2における左側)に設けられている。このため、本実施形態において、熱媒体流入口10から第2ハウジング2B内に流入した熱媒体は、第2ハウジング2B内を、第2仕切部72に沿って、図2図4における右側から左側に向かって流れる。つまり、複合装置1において、熱媒体の流れ方向は、冷媒の流れ方向に略直交している。なお、第2仕切部72は、熱媒体流入口10を介して第2ハウジング2B内に流入する(低温の)熱媒体によって冷却され得る。熱媒体流入口10、第2ハウジング2Bの内部及び熱媒体流出口11は、前記熱媒体回路の一部を構成する。
【0028】
ここで、図には示されていないが、モータ駆動回路20から電動モータ4への給電線及びヒータ制御回路30から電気ヒータ5への給電線は、それぞれ気密及び液密な状態で第3ハウジング2Cの底壁7を貫通して延びている。
【0029】
次に、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30を有する主電子回路40を含む電子回路について説明する。図5は、主電子回路40を含む前記電子回路の要部構成例を示す図である。主電子回路40は、複合装置1の主な制御を実行する部分である。
【0030】
本実施形態において、モータ駆動回路20は、車両に搭載された高電圧バッテリなどの電源(以下単に、「高電圧電源」という)HVからの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給することで電動モータ4を駆動(制御)するように構成されている。また、ヒータ制御回路30は、高電圧電源HVの電気ヒータ5への印加(高電圧電源HVと電気ヒータ5との間の通電)を制御することで電気ヒータ5の温度を制御するように構成されている。
【0031】
図5に示されるように、モータ駆動回路20は、第1パワーモジュール21と、第1ドライバ22とを有する。
【0032】
第1パワーモジュール21は、6つのパワースイッチング素子(以下単に「第1スイッチング素子」という)Q1~Q6と、6つのダイオードD1~D6とを含む。特に限定されないが、第1スイッチング素子Q1~Q6は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であり得る。第1パワーモジュール21は、第1スイッチング素子Q1~Q6がPWM制御されることにより、高電圧電源HVからの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給する。このように、モータ駆動回路20は、高電圧電源HVからの直流電圧を交流電圧に変換するように構成された第1スイッチング素子Q1~Q6を含む第1パワーモジュール21を有する。
【0033】
具体的には、第1パワーモジュール21は、高電圧電源HVから延びる電源ライン(HV+)と接地ライン(HVGND)との間に、互いに並列に設けられたU相アーム、V相アーム及びW相アームを有する。電源ライン(HV+)は高電圧電源HVの正極(+)から延びている。接地ライン(HVGND)は、例えば、車両の車体などに設けられた接地箇所(GND)から延びている。電源ライン(HV+)は正極母線とも称され、接地ライン(HVGND)は負極母線とも称され得る。
【0034】
U相アームには、2つの第1スイッチング素子Q1、Q2が直列に接続されており、各第1スイッチング素子Q1、Q2にはダイオードD1、D2がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0035】
V相アームには、2つの第1スイッチング素子Q3、Q4が直列に接続されており、各第1スイッチング素子Q3、Q4にはダイオードD3、D4がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0036】
W相アームには、2つの第1スイッチング素子Q5、Q6が直列に接続されており、各第1スイッチング素子Q5、Q6にはダイオードD5、D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0037】
また、U、V、W相アームのそれぞれの中間点は、それぞれの一端においてスター結線された電動モータ4のU、V、W相コイルの他端に接続されている。つまり、U相アームの第1スイッチング素子Q1、Q2の中間点がU相コイルに接続され、V相アームの第1スイッチング素子Q3、Q4の中間点がV相コイルに接続され、及び、W相アームの第1スイッチング素子Q5、Q6の中間点がW相コイルに接続されている。
【0038】
したがって、第1パワーモジュール21は、各相アームの電源ライン(HV+)側の第1スイッチング素子Q1,Q3,Q5のON期間と、接地ライン(HVGND)側の第1スイッチング素子Q2,Q4,Q6のON期間との比率が制御される(PWM制御される)ことにより、高電圧電源HVからの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動モータ4に供給することができ、これにより、電動モータ4を駆動し、及び圧縮機構3を駆動することができる。
【0039】
第1ドライバ22は、後述する制御ユニット15からの制御信号(PWM信号)に基づき、第1スイッチング素子Q1~Q6(のゲート)をON/OFF駆動(スイッチング)する。
【0040】
つまり、本実施形態において、モータ駆動回路20の動作(第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作)、ひいては、電動モータ4及び圧縮機構3(すなわち、冷媒圧縮機能)の動作は、制御ユニット15によって制御されるようになっている。
【0041】
ヒータ制御回路30は、第2パワーモジュール31と、第2ドライバ32とを有する。
【0042】
第2パワーモジュール31は、高電圧電源HVの電気ヒータ5への印加を制御する2つのスイッチング素子(以下「第2スイッチング素子」という)Q7、Q8を含む。第2スイッチング素子Q7、Q8は、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6と同様、IGBTであり得る。本実施形態において、2つの第2スイッチング素子Q7、Q8のうちの一方の第2スイッチング素子Q7は、電気ヒータ5よりも高電圧電源HVの電源ライン(HV+)側に設けられ、他方の第2スイッチング素子Q8は、電気ヒータ5よりも接地ライン(HVGND)側に設けられている。各第2スイッチング素子Q7、Q8にはダイオードD7、D8がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0043】
第2パワーモジュール31は、第2スイッチング素子Q7、Q8が制御(PWM制御)されることにより、高電圧電源HVと電気ヒータ5との間の通電をON/OFFし、これによって、電気ヒータ5の温度、さらには、電気ヒータ5によって加熱される熱媒体の温度を制御する。このように、ヒータ制御回路30は、高電圧電源HVと電気ヒータ5との間の通電をON/OFFするように構成された第2スイッチング素子Q7、Q8を含む第2パワーモジュール31を有する。
【0044】
また、第2パワーモジュール31と第1パワーモジュール21は、高電圧電源HVから延びる電源ライン(HV+)と接地ライン(HVGND)との間に、互いに並列に設けられている。図5を参照すると、第1パワーモジュール21は、高電圧電源HVから延びる電源ライン(HV+)と接地ライン(HVGND)との間において、第2パワーモジュール31よりも高電圧電源HVに近い位置に設けられている。
【0045】
第2ドライバ32は、モータ駆動回路20の第1ドライバ22と同様、制御ユニット15からの制御信号(PWM信号)に基づき、第2スイッチング素子Q7、Q8(のゲート)をON/OFF駆動(スイッチング)する。
【0046】
つまり、本実施形態において、ヒータ制御回路30(第2スイッチング素子Q7、Q8)の動作、ひいては、電気ヒータ5(熱媒体加熱機能)の動作は、制御ユニット15によって制御されるようになっている。
【0047】
ここで、図6を参照して、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8の配置構造について説明する。図6は、複合装置1の部分概略断面図(図3のB-B断面図に相当する)である。
【0048】
上述のように、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30を有する主電子回路40を含む前記電子回路は、回路基板6に実装されて第3収容空間S3に収容されている。回路基板6は、図6に示されるように、例えば、第3収容空間S3内に設けられた複数の基板取付部12に取り付けられている。本実施形態において、複数の基板取付部12のそれぞれは、第3ハウジング2Cの底壁7から上側に(第1ハウジング2A及び第2ハウジング2Bから離れる方向に)突出するボス状に形成され、複数の基板取付部12の上面に回路基板6がねじ13によって取り付けられている。
【0049】
本実施形態において、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6及びヒータ制御回路30の第2スイッチング素子Q7、Q8は、冷媒流入口8から第1ハウジング2Aの内部に流入した冷媒によって冷却され得る位置に配置されている。
【0050】
図7は、実施形態に係る複合装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。図7に示されるように、本実施形態において、複合装置1の制御ユニット15には、上位の制御装置である車両の制御装置(例えば、上述の車両用空気調和装置の制御装置)から出力された、冷媒圧縮機能の動作要求(起動要求、停止要求を含む)や熱媒体加熱機能の動作要求(起動要求、停止要求を含む)などの要求(要求信号)が入力される。つまり、複合装置1には、車両から出力された要求信号が入力される。
【0051】
また、制御ユニット15には、第1スイッチング素子Q1~Q6の温度又はその相関値を検出する第1温度検出部51や第2スイッチング素子Q7、Q8の温度又はその相関値を検出する第2温度検出部52などの各種検出部の検出結果も入力されている。
【0052】
そして、制御ユニット15は、入力された前記上位の制御装置からの動作要求及び/又は前記各種検出部の検出結果に応じた制御信号を第1ドライバ22及び/又は第2ドライバ32に供給し、これによって、第1スイッチング素子Q1~Q6の動作(すなわち、モータ駆動回路20の動作)を制御し、及び/又は、第2スイッチング素子Q7、Q8(すなわち、ヒータ制御回路30の動作)を制御するように構成されている。
【0053】
また、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数は、電動モータ4の安定動作の観点から、ある程度高くせざるを得ない。他方、ヒータ制御回路30(の第2スイッチング素子Q7、Q8)は、単に、高電圧電源HVと電気ヒータ5との間の通電をON/OFFするものであるので、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周波数は、それほど高くする必要はない。そのため、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数は、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周波数よりも高く設定されている。つまり、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周期は、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周期よりも短く(速く)設定されている。
【0054】
ところで、上位の制御装置である車両の制御装置は、高電圧バッテリなどの高電圧電源HVの残量を推測する必要がある。そのため、冷媒圧縮機(電動モータ4)と熱媒体加熱装置(電気ヒータ5)とが一体化されることなく車両に個別に搭載されている場合には、消費電力の車両への通知要求が車両の制御装置から冷媒圧縮機と熱媒体加熱装置とにそれぞれ入力され、通知要求を受けた各機器(冷媒圧縮機、熱媒体加熱装置)は自身を流れる電流を検知しその検知結果に基づき算出した自身で消費されている消費電力を車両の制御装置へそれぞれ通知することになる。
【0055】
そして、冷媒圧縮機と熱媒体加熱装置とが複合装置として一体化された場合には、車両の制御装置が当該複合装置の全体での消費電力の通知を要求することが想定される。さらに、各機器(冷媒圧縮機、熱媒体加熱装置)を流れる電流は、例えば、各機器の故障の有無の判定などにも用いられ得る。したがって、冷媒圧縮機と熱媒体加熱装置とが複合装置として一体化された場合には、冷媒圧縮機を流れる電流と、熱媒体加熱装置を流れる電流と、当該複合装置の全体を流れる電流とが分かっている必要がある。そのため、冷媒圧縮機用と熱媒体加熱装置用と全体用の3つの電流検出部によって、対象の電流を検出することが考えられる。しかし、これでは、電流検出部が、従来よりも増加してしまうことになる。
【0056】
そこで、実施形態に係る複合装置1は、電流検出に用いられる電流検出部の増加を抑制すべく、以下のような構成を採用している。
【0057】
図5及び図7を参照すると、複合装置1は、モータ電流検出部61と、全体電流検出部62と、ヒータ電流算出部70と、を更に含む。
【0058】
モータ電流検出部61は、モータ駆動回路20(詳しくは、第1パワーモジュール21)を流れる電流Imを検出する。モータ電流検出部61によって検出された電流Imの検出結果は、ヒータ電流算出部70に入力される。なお、上述のように、モータ駆動回路20の第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周波数は電動モータ4の安定動作の観点からある程度高くせざるを得ない。したがって、モータ電流検出部61の電流検出周期は、第1スイッチング素子Q1~Q6の高スイッチング周波数に応じてある程度短く設定されている。
【0059】
全体電流検出部62は、モータ駆動回路20及びヒータ制御回路30を有する主電子回路40を流れる電流Itを検出する。つまり、全体電流検出部62によって検出された電流Itは、モータ駆動回路20(詳しくは、第1パワーモジュール21)を流れる電流Imとヒータ制御回路30(詳しくは、第2パワーモジュール31)を流れる電流Ihとを足し合わした合計電流であり、全体電流検出部62は複合装置1の概ね全体で消費される消費電力を算出し得る電流を検出するための電流検出部である。全体電流検出部62によって検出された電流Itの検出結果は、ヒータ電流算出部70に入力される。
【0060】
ヒータ電流算出部70は、全体電流検出部62による電流Itの検出値からモータ電流検出部61による電流Imの検出値を減算することによりヒータ制御回路30を流れる電流Ihを算出する。特に限定されるものではないが、ヒータ電流算出部70は、制御ユニット15に設けられている。
【0061】
複合装置1の全体の消費電力は、電動モータ4で消費される電力と電気ヒータ5で消費される電力との合計電力に概ね一致している。したがって、複合装置1の全体の消費電力は、全体電流検出部62によって検出された主電子回路40を流れる電流It(=電流Im+電流Ih)に基づいて算出され得る。全体電流検出部62によって検出された電流Itの検出値に基づく複合装置1の全体の消費電力の算出は、例えば、制御ユニット15によってなされる。
【0062】
図7を参照すると、本実施形態では、複合装置1の制御ユニット15には、複合装置1で消費される消費電力の車両への通知要求も入力される。消費電力の車両への通知要求が制御ユニット15に入力されると、制御ユニット15は全体電流検出部62からの電流Itの検出値に基づいて複合装置1で消費される消費電力を算出し、その算出結果を車両の制御装置に出力して通知する。
【0063】
具体的には、モータ電流検出部61は、例えば、シャント抵抗からなる検出素子61aと検出素子61aを流れる電流を検出する電流検出部61bとからなる。全体電流検出部62は、同様に、シャント抵抗からなる検出素子62aと検出素子62aを流れる電流を検出する電流検出部62bとからなる。各電流検出部(61b、62b)による電流(Im、It)の検出結果は、制御ユニット15(ヒータ電流算出部70)入力される。モータ電流検出部61及び全体電流検出部62は、主電子回路40と一緒に回路基板6に実装されている。
【0064】
第1パワーモジュール21とモータ電流検出部61の検出素子61aは、電源ライン(HV+)と接地ライン(HVGND)との間に、互いに直列に設けられている。モータ電流検出部61の検出素子61aは、第1パワーモジュール21よりも接地ライン(HVGND)側の位置で、第1パワーモジュール21と直列に接続されている。
【0065】
全体電流検出部62の検出素子62aは、接地ライン(HVGND)における第1パワーモジュール21への接続点X1及び接地ライン(HVGND)における第2パワーモジュール31への接続点X2よりも接地箇所(GND)に近い位置に設けられている。図5を参照すると、接続点X1は接地ライン(HVGND)における接続点X2よりも接地箇所(GND)に近い位置に設けられている。したがって、全体電流検出部62の検出素子62aは、接地ライン(HVGND)における第1パワーモジュール21(図では、モータ電流検出部61の検出素子61a)への接続点X1よりも接地箇所(GND)に近い位置に設けられている。
【0066】
ここで、モータ駆動回路20の第1パワーモジュール21(第1スイッチング素子Q1~Q6)の故障の有無の判定とヒータ制御回路30の第2パワーモジュール31(第2スイッチング素子Q7、Q8)の故障の有無の判定などのためには、モータ駆動回路20(第1パワーモジュール21)を流れる電流Imとヒータ制御回路30(第2パワーモジュール31)を流れる電流Ihとが、それぞれ個別に分かっている必要がある。この点について、第1パワーモジュール21の電流Imはモータ電流検出部61によって検出(サンプリング)され、第2パワーモジュール31の電流Ihはヒータ電流算出部70によって算出(サンプリング)されるので、電流Imと電流Ihはそれぞれ個別にサンプリング(検出/算出)される。そして、第1パワーモジュール21の故障の有無は、モータ電流検出部61による電流Imの検出値(検出結果)に基づいて、例えば、制御ユニット15によって判定されるように構成されている。また、第2パワーモジュール31の故障の有無は、ヒータ電流算出部70による電流Ihの算出値(算出結果)に基づいて、同様に、制御ユニット15によって判定されるように構成されている。
【0067】
そして、上述のように、第1スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング周期は、第2スイッチング素子Q7、Q8のスイッチング周期よりも短く設定されている。このため、第1パワーモジュール21の故障有無判定の周期(換言すると、制御ユニット15による判定用の電流サンプリング周期、又は、第1スイッチング素子故障判定周期)も、第2パワーモジュール31の故障有無判定の周期(換言すると、制御ユニット15による、判定用の電流サンプリング周期、又は、第2スイッチング素子故障判定周期)よりも短く設定されている。特に限定されるものではないが、一例を挙げると、第1パワーモジュール21に対する故障有無判定の周期は100μsに設定され、第2パワーモジュール31に対する故障有無判定の周期は250μsに設定されている。より具体的には、故障有無判定には、複数の電流値の平均値が用いられる。例えば、第1パワーモジュール21に対する平均値による故障有無判定の周期(換言すると、判定用の平均電流サンプリング周期)は100μsに設定され、第2パワーモジュール31に対する平均値による故障有無判定の周期(換言すると、判定用の平均電流サンプリング周期)は2msに設定される。平均値による故障有無判定の周期についても、同様の大小関係で設定されている。
【0068】
また、上述のように、ヒータ電流算出部70は、全体電流検出部62による全体の電流Itの検出値からモータ電流検出部61による電流Imの検出値を減算することによりヒータ制御回路30(第2パワーモジュール31)を流れる電流Ihを算出する。つまり、全体電流検出部62による電流Itの電流検出周期は、ヒータ制御回路30を流れる電流Ihについてのヒータ電流算出部70による電流算出周期に影響を与えることになる。したがって、全体電流検出部62の電流検出周期が、制御ユニット15によるヒータ制御回路30の第2パワーモジュール31の故障有無判定の周期より長い場合には、適切な周期(タイミング)で故障有無判定が実行されなくなり、判定に遅れが生じてしまう。この点について、実施形態に係る複合装置1は、故障有無判定などへ影響を与えることがないように、以下のような構成を採用している。
【0069】
本実施形態において、全体電流検出部62の電流検出周期は、制御ユニット15によるヒータ制御回路30の第2パワーモジュール31の故障有無判定の周期(判定用の電流サンプリング周期、又は、第1スイッチング素子故障判定周期)よりも短く設定されている。これによって、ヒータ制御回路30(第2パワーモジュール31)の故障有無判定が適切な周期(タイミング)で実行される。
【0070】
本実施形態において、全体電流検出部62の電流検出周期は、具体的には、モータ電流検出部61の電流検出周期に合わせられている。上述のように、モータ電流検出部61の電流検出周期は第1スイッチング素子Q1~Q6の短スイッチング周期(高スイッチング周波数)に応じてある程度短い周期に設定されているので、全体電流検出部62の電流検出周期がモータ電流検出部61の短周期である電流検出周期に一致(又は略一致)するように設定されていれば、ヒータ制御回路30(第2パワーモジュール31)の故障有無判定は容易に適切な周期(タイミング)で実行される。
【0071】
本実施形態において、圧縮機構3及び電気ヒータ5は、車両用空気調和装置の一部を構成している。そして、全体電流検出部62の電流検出周期及びモータ電流検出部61の電流検出周期は、車両(車両の制御装置)から出力され複合装置1に入力される要求信号の入力周期以下の周期に設定されている。つまり、全体電流検出部62の電流検出周期及びモータ電流検出部61の電流検出周期は、車両(車両の制御装置)から出力され複合装置1に入力される要求信号の入力周期に一致した周期に設定されてもよいし、前記要求信号の入力周期より短い周期に設定されてもよい。これによって、全体電流検出部62は、車両からの消費電力の通知要求の入力周期に遅れることなく、電流検出周期で、複合装置1の全体を流れる電流Itを検出し得る。その結果、全体電流検出部62の電流Itの検出値に基づく複合装置1の全体の消費電力の算出が、車両からの通知要求の入力周期に応じた周期で、抜けなく車両へ通知され得る。
【0072】
以上、実施形態に係る複合装置1は、冷媒を圧縮する圧縮機構3及び圧縮機構3を駆動する電動モータ4を内部に収容すると共に、冷媒流入口8及び冷媒流出口9を有する第1ハウジング(圧縮機ハウジング)2Aと、熱媒体を加熱する電気ヒータ5を内部に収容すると共に、熱媒体流入口10及び熱媒体流出口11を有する第2ハウジング(ヒータハウジング)2Bと、電動モータ4を駆動するモータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30を含む電子回路が実装された回路基板6を内部に収容する第3ハウジング(回路ハウジング)2Cと、を含み、これら第1ハウジング(圧縮機ハウジング)2A、第2ハウジング2B(ヒータハウジング)及び第3ハウジング(回路ハウジング)2Cが一体的に結合されている。
【0073】
このような複合装置1は、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機(電動圧縮機)及び熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置として機能し得るものであり、冷媒を圧縮しながら、熱媒体を加熱することができる。このため、複合装置1は、上述したような車両用空気調和装置に適用され得る。そして、複合装置1が車両用空気調和装置に適用されることにより、電動圧縮機及び熱媒体加熱装置を別個に有する従来の構成に比べて、車両用空気調和装置の小型化を図ることが可能である。
【0074】
実施形態に係る複合装置1は、電動モータ4を駆動するモータ駆動回路20を流れる電流Imを検出するモータ電流検出部61と、モータ駆動回路20及び電気ヒータ5を制御するヒータ制御回路30を有する主電子回路40を流れる電流Itを検出する全体電流検出部62と、全体電流検出部62による電流Itの検出値からモータ電流検出部61による電流Imの検出値を減算することによりヒータ制御回路30を流れる電流Ihを算出するヒータ電流算出部70と、を含む。これによって、モータ駆動回路20(第1パワーモジュール21)の電流Imはモータ電流検出部61によって検出(サンプリング)され、ヒータ制御回路30(第2パワーモジュール31)の電流Ihはヒータ電流算出部70によって算出(サンプリング)され、複合装置1の全体の電流Itは全体電流検出部62によって検出(サンプリング)されるので、電流Imと電流Ihと電流Itが実質的に二つの検出部(センサ部)によって、サンプリング(検出/算出)されることになる。したがって、複合装置1において電流検出に用いられる電流検出部の増加が抑制されている。その結果、回路基板6における電流検出部(61、62)を実装するための面積の増加も抑制されると共に、部品コストの増加も抑制され得る。
【0075】
また、上記では、主に複合装置1が車両用空気調和装置に適用される場合について説明されている。しかし、これに限られるものではない。複合装置1は、冷媒を圧縮する電動圧縮機及び熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置を利用する種々の装置やシステムに適用することが可能である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0077】
1…複合装置、2…ハウジング、2A…第1ハウジング(圧縮機ハウジング)、2B…第2ハウジング(ヒータハウジング)、2C…第3ハウジング(回路ハウジング)、3…圧縮機構、4…電動モータ、5…電気ヒータ、6…回路基板、8…冷媒流入口、9…冷媒流出口、10…熱媒体流入口、11…熱媒体流出口、15…制御ユニット、20…モータ駆動回路、21…第1パワーモジュール、30…ヒータ制御回路、31…第2パワーモジュール、40…主電子回路、61…モータ電流検出部、61a…検出素子(モータ電流検出部の検出素子)、62…全体電流検出部、62a…検出素子(全体電流検出部の検出素子)、70…ヒータ電流算出部、Q1~Q6…第1スイッチング素子(モータ駆動回路のスイッチング素子)、Q7,Q8…第2スイッチング素子(ヒータ制御回路のスイッチング素子)、HV…高電圧電源(電源)、HV+…電源ライン、HVGND…接地ライン、X1…接続点(接地ラインにおける第1パワーモジュールへの接続点)、X2…接続点(接地ラインにおける第2パワーモジュールへの接続点)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7