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特開2024-30239加速粒子生成装置及び加速粒子生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030239
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】加速粒子生成装置及び加速粒子生成方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 5/02 20060101AFI20240229BHJP
   G21K 1/087 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H05H5/02 A
G21K1/087 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132954
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰介
(72)【発明者】
【氏名】佐古 貴行
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085AA01
2G085BA19
2G085BB02
2G085CA14
2G085CA24
(57)【要約】
【課題】荷電粒子ビームが複数の加速並行平板電極間に生ずる加速電場からのエネルギを効率良く取得して、荷電粒子を設計通りに加速できること。
【解決手段】荷電粒子のビームを発生するビーム源11と、ビーム源からの荷電粒子ビームPを通過させて加速する加速並行平板電極12A、12Bと、加速並行平板電極のそれぞれに電圧を印加するために高電圧を発生する高電圧電源13A、13Bと、レーザLを発生するレーザ源15と、レーザ源からのレーザが照射されることでON状態となって、高電圧電源からの電圧をパルス電圧として加速並行平板電極に印加する光スイッチ16A、16Bと、を有する加速粒子生成装置10であって、光スイッチ間をレーザが通過するレーザ光路の光路長Kを調整して、加速並行平板電極へのパルス電圧の印加タイミングを、荷電粒子ビームの加速並行平板電極通過タイミングと一致させる光路長調整機構17を有して構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子のビームを発生するビーム源と、
前記ビーム源からの荷電粒子ビームを通過させて加速する複数の加速並行平板電極と、
前記加速並行平板電極のそれぞれに電圧を印加するために高電圧を発生する複数の高電圧電源と、
光を発生する光源と、
前記加速並行平板電極及び前記高電圧電源のそれぞれに接続され、前記光源からの光が照射されることでON状態となって、前記高電圧電源からの電圧をパルス電圧として前記加速並行平板電極に印加する複数の光スイッチと、を有する加速粒子生成装置であって、
複数の前記光スイッチ間を光が通過する光路の光路長を調整して、前記加速並行平板電極へのパルス電圧の印加タイミングを、荷電粒子ビームの前記加速並行平板電極通過タイミングと一致させる光路長調整機構を有して構成されたことを特徴とする加速粒子生成装置。
【請求項2】
前記加速並行平板電極に印加されるパルス電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電圧測定手段による測定値と荷電粒子ビームが隣接する前記加速並行平板電極間を通過する時間とに基づいて光路長調整機構の動作を制御する制御手段と、を更に有して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の加速粒子生成装置。
【請求項3】
前記光路長調整機構は、光を反射させると共に移動可能な移動式反射鏡を備えて構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の加速粒子生成装置。
【請求項4】
前記電圧測定手段は、加速並行平板電極に印加されるパルス電圧を分圧する分圧器と、この分圧器により分圧されたパルス電圧の波形を測定する波形測定装置と、を備えて構成されたことを特徴とする請求項2に記載の加速粒子生成装置。
【請求項5】
前記分圧器は、加速並行平板電極からのパルス電圧を伝搬する伝搬路の先に、直列接続された複数のコンデンサと、これらのコンデンサと並列に接続された負荷抵抗とを備えてなり、複数のコンデンサ間のパルス電圧が波形測定器へ出力されるよう構成されたことを特徴とする請求項4に記載の加速粒子生成装置。
【請求項6】
荷電粒子のビームを発生するビーム源と、
前記ビーム源からの荷電粒子ビームを通過させて加速する複数の加速並行平板電極と、
前記加速並行平板電極のそれぞれに電圧を印加するために高電圧を発生する複数の高電圧電源と、
光を発生する光源と、
前記加速並行平板電極及び前記高電圧電源のそれぞれに接続され、前記光源からの光が照射されることでON状態となって、前記高電圧電源からの電圧をパルス電圧として前記加速並行平板電極に印加する複数の光スイッチと、を有する加速粒子生成装置を用意し、
複数の前記光スイッチ間を光が通過する光路の光路長を調整して、前記加速並行平板電極へのパルス電圧の印加タイミングを、荷電粒子ビームの前記加速並行平板電極通過タイミングと一致させることを特徴とする加速粒子生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光の入射によりON状態になる光スイッチによって加速並行平板電極にパルス電圧を印加して電場を形成し、荷電粒子を加速する加速粒子生成装置、及び加速粒子生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加速器は、静電場または高周波エネルギを用いて加速電場を形成し、荷電粒子の加速を行っている。しかしながら、加速電場の強さを上げていくと、静電場ではパッシェンの法則、高周波エネルギではキルパトリック放電限界という経験則に従って放電が発生してしまう。真空度の向上や表面処理、加速周波数の向上等により放電電圧の改善は可能であるが、現実的に加速勾配は静電場による加速で1MV/m程度、高周波エネルギによる加速で40MV/m程度が限界であり、それ以上では放電が発生する可能性がある。
【0003】
また、特にイオンのように質量が大きな粒子の加速では、粒子速度が相対論的速度β=1に近づくまで時間がかかる。このため、高周波エネルギによる加速でイオンを加速する際には、徐々に変化する粒子速度に加速位相を合わせるため加速効率が更に低下し、加速勾配は数百KV/m~数MV/mになる。その結果、装置が数百平方メートル以上の巨大なサイズとなり、加速器普及の妨げとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5757146号明細書
【特許文献2】特表2013-504150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の加速効率の低下を回避して高加速勾配を実現する手段として、誘電体壁加速(Dielectric Wall Accelerator:DWA)が提案されている(特許文献1)。これは、パルス電圧を利用した加速器(特許文献2)の一種で、スイッチング素子により発生したパルス電圧を伝搬して電極間に加速電場を発生するものである。加速のための電極を積層することで多段化が容易なため、静電場による加速のように粒子エネルギに応じた大電圧を印加する必要がない。また、スイッチング素子によるスイッチングのタイミングを粒子ビームに同期させることで、イオンのように質量の大きな粒子の加速も、数十MV/m以上の加速勾配を実現することができる。
【0006】
しかし、加速並行平板電極までのパルス電圧の伝搬路長さの不一致やレーザ光路長の違いにより、粒子ビームが加速並行平板電極を通過するタイミングが不適切で、粒子ビームが良好に加速されない場合がある。つまり、スイッチング素子のONのタイミングが、粒子ビームが加速並行平板電極を通過するタイミングとずれて、粒子を設計通りに加速できない課題がある。
【0007】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、荷電粒子ビームが複数の加速並行平板電極間に生ずる加速電場からのエネルギを効率良く取得して、荷電粒子を設計通りに加速させることができる加速粒子生成装置及び加速粒子生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態における加速粒子生成装置は、荷電粒子のビームを発生するビーム源と、前記ビーム源からの荷電粒子ビームを通過させて加速する複数の加速並行平板電極と、前記加速並行平板電極のそれぞれに電圧を印加するために高電圧を発生する複数の高電圧電源と、光を発生する光源と、前記加速並行平板電極及び前記高電圧電源のそれぞれに接続され、前記光源からの光が照射されることでON状態となって、前記高電圧電源からの電圧をパルス電圧として前記加速並行平板電極に印加する複数の光スイッチと、を有する加速粒子生成装置であって、複数の前記光スイッチ間を光が通過する光路の光路長を調整して、前記加速並行平板電極へのパルス電圧の印加タイミングを、荷電粒子ビームの前記加速並行平板電極通過タイミングと一致させる光路長調整機構を有して構成されたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の実施形態における加速粒子生成方法は、荷電粒子のビームを発生するビーム源と、前記ビーム源からの荷電粒子ビームを通過させて加速する複数の加速並行平板電極と、前記加速並行平板電極のそれぞれに電圧を印加するために高電圧を発生する複数の高電圧電源と、光を発生する光源と、前記加速並行平板電極及び前記高電圧電源のそれぞれに接続され、前記光源からの光が照射されることでON状態となって、前記高電圧電源からの電圧をパルス電圧として前記加速並行平板電極に印加する複数の光スイッチと、を有する加速粒子生成装置を用意し、複数の前記光スイッチ間を光が通過する光路の光路長を調整して、前記加速並行平板電極へのパルス電圧の印加タイミングを、荷電粒子ビームの前記加速並行平板電極通過タイミングと一致させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、荷電粒子ビームが複数の加速並行平板電極間に生ずる加速電場からのエネルギを効率良く取得して、荷電粒子を設計通りに加速させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る加速粒子生成装置を示す構成図。
図2図1の加速並行平板電極周囲の接続関係を示す斜視図。
図3】第2実施形態に係る加速粒子生成装置を示す構成図。
図4図3の電圧モニタの回路構成を示す電気回路図。
図5図3及び図4の電圧モニタの波形測定装置が測定した加速並行平板電極に印加されるパルス電圧の時間分布を示すグラフ。
図6図3の各電圧モニタのそれぞれが測定した各加速並行平板電極に印加されるパルス電圧の時間分布を示すグラフ。
図7図3の制御手段が実行する光路長調整手順及び荷電粒子加速手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1図2
図1は、第1実施形態に係る加速粒子生成装置を示す構成図である。この図1に示す加速粒子生成装置10は、光の入射によりON状態になる光スイッチを用いた光伝導スイッチング方式の加速装置であり、ビーム源11、複数の加速並行平板電極(例えば加速並行平板電極12A及び12B)、複数の高電圧電源(例えば高電圧電源13A及び13B)、グラウンド電極14、光源としてのレーザ源15、複数の光スイッチ(例えば光スイッチ16A及び16B)、光路長調整機構17、並びにビームエネルギ測定装置18を有して構成される。
【0013】
ビーム源11は、例えば陽子、電子、イオン等の荷電粒子のビーム(荷電粒子ビームP)を発生する。高電圧電源13Aは加速並行平板電極12Aに、高電圧電源13Bは加速並行平板電極12Bにそれぞれ電圧(後述のパルス電圧)を印加するために高電圧を発生する。また、レーザ源15は、光としてのレーザLを発生する。
【0014】
光スイッチ16A及び16Bは、レーザ源15からのレーザLの入射により、OFF状態からON状態に高速で瞬間的に動作する。光スイッチ16Aは、高電圧伝搬路19Aを介して高電圧電源13Aに、スイッチ電圧伝搬路20Aを介して加速並行平板電極12Aにそれぞれ電気的に接続される。また、光スイッチ16Bは、高電圧伝搬路19Bを介して高電圧電源13Bに、スイッチ電圧伝搬路20Bを介して加速並行平板電極12Bに、それぞれ電気的に接続される。
【0015】
光スイッチ16Aは、レーザLの入射によりON状態となったときに、高電圧電源13Aからの高電圧をパルス波形としたパルス電圧を、スイッチ電圧伝搬路20Aを経て加速並行平板電極12Aに印加する。光スイッチ16Bは、レーザLの入射によりON状態となったときに、高電圧電源13Bからの高電圧をパルス波形としたパルス電圧を、スイッチ電圧伝搬路20Bを経て加速並行平板電極12Bに印加する。
【0016】
加速並行平板電極12A、12B及びグラウンド電極14は、図1及び図2に示すように、ビーム源11からの荷電粒子ビームPを通過させて加速する。つまり、加速並行平板電極12Aは、高電圧電源13A及び光スイッチ16Aによりパルス電圧が印加されたときに加速並行平板電極12Bとの間で加速電場を形成し、この加速電場内を流れる荷電粒子ビームPを加速する。その後、加速並行平板電極12Bは、高電圧電源13B及び光スイッチ16Bによりパルス電圧が印加されたときにグラウンド電極14との間で加速電場を形成し、この加速電場内を流れる荷電粒子ビームPを更に加速する。
【0017】
ここで、グラウンド電極14は、加速並行平板電極12A及び12Bの下流に設置されて電位が零の電極である。また、ビームエネルギ測定装置18は、グラウンド電極14の下流に設置されて、加速並行平板電極12A、12B及びグラウンド電極14を通過して加速された荷電粒子ビームPのビームエネルギを測定する。この荷電粒子ビームPのビームエネルギEは、加速並行平板電極12A、12Bに印加されるパルス電圧の電圧をV、加速並行平板電極の数をN(第1実施形態ではN=2)、荷電粒子ビームPの価数(電荷)をQとすると、E=N×Q×Vである。
【0018】
光路長調整機構17は、レーザLを反射させると共に固定して設置された固定式反射鏡21と、レーザLを反射させると共に移動可能に設けられた移動式反射鏡22とを備えてなる。レーザ源15から出射されたレーザLは、光スイッチ16Aを通過してこの光スイッチ16AをON状態にした後、固定式反射鏡21、移動式反射鏡22により順次反射され、その後、光スイッチ16Bを通過してこの光スイッチ16BをON状態とする。
【0019】
光路長調整機構17は、移動式反射鏡22を移動させることで、上述の光スイッチ16Aと16B間をレーザLが通過するレーザ光路の光路長Kを調整する。この光スイッチ16A、16B間のレーザ光路の光路長Kは、荷電粒子ビームPが加速並行平板電極12A、12B間を通過する通過時間をTとし、レーザLの速度をCとしたとき、K=CTとなるように調整される。これにより、加速並行平板電極12A及び12B(特に加速並行平板電極12B)へのパルス電圧の印加タイミングを、荷電粒子ビームPが加速並行平板電極12A及び12B(特に加速並行平板電極12B)を通過する通過タイミングと一致させることが可能になる。
【0020】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)光路長調整機構17は移動式反射鏡22を移動させることで、光スイッチ16A、16B間をレーザLが通過するレーザ光路の光路長Kを調整して、加速並行平板電極12A、12B(特に加速並行平板電極12B)へのパルス電圧の印加タイミングを、荷電粒子ビームPの加速並行平板電極12A、12B(特に加速並行平板電極12B)通過タイミングと一致させるものである。従って、光スイッチ16A、16Bのそれぞれが加速並行平板電極12A、12Bにパルス電圧を順次印加させることで、これらの加速並行平板電極12A、12Bが加速電場を形成して荷電粒子ビームPを加速する際に、荷電粒子ビームPは、加速並行平板電極12A、12B間、及び加速並行平板電極12B、グラウンド電極14間にそれぞれ形成される加速電場からのエネルギを効率良く取得することができる。この結果、光路長調整機構17を備えた加速粒子生成装置10は、荷電粒子を設計通りに加速することができる。
【0021】
[B]第2実施形態(図3図7
図3は、第2実施形態に係る加速粒子生成装置を示す構成図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0022】
本第2実施形態の加速粒子生成装置25が第1実施形態と異なる点は、電圧測定手段としての複数の電圧モニタ(例えば電圧モニタ26A及び26B)と、光路長調整機構17等を制御する制御手段27とが、第1実施形態の加速粒子生成装置10に追加して構成された点である。
【0023】
電圧モニタ26Aは、電極電圧伝搬路28Aを介して加速並行平板電極12Aに電気的に接続され、光スイッチ16AがON状態になったときに加速並行平板電極12Aに印加されるパルス電圧を測定する。また、電圧モニタ26Bは、電極電圧伝搬路28Bを介して加速並行平板電極12Bに電気的に接続され、光スイッチ16BがON状態になったときに加速並行平板電極12Bに印加されるパルス電圧を測定する。これらの電圧モニタ26A及び26Bは、図4に示すように、分圧器としての分圧回路29と波形測定装置30とを有して構成され、具体的にはEOプローブ(Electrical-Optical Probe)が好ましい。
【0024】
分圧回路29は、加速並行平板電極12A、12Bからのパルス電圧を伝搬する電極電圧伝搬路28A、28Bの先に、直列接続された複数(例えば2個)のコンデンサ31及び32と、これらのコンデンサ31及び32に並列に接続された負荷抵抗33とを備えてなる。この分圧回路29によって、加速並行平板電極12A、12Bに印加されたパルス電圧が分圧される。分圧回路29のコンデンサ31、32間に波形測定装置30が接続されることで、加速並行平板電極12A、12Bへのパルス電圧が分圧回路29により分圧され、その波形が波形測定装置30に出力されて測定される。
【0025】
波形測定装置30により測定される加速並行平板電極12A、12Bへの印加パルス電圧の波形(時間分布)を図5に示す。加速並行平板電極12A、12Bへの印加パルス電圧の時間分布34は、最大波高になるまでにある一定の立上り時間Saを要し、一定時間Sbを経過した後に降下する。次に、加速並行平板電極12Aへの印加パルス電圧の時間分布35Aと、加速並行平板電極12Bへの印加パルス電圧の時間分布35Bとを図6に示す。加速並行平板電極12Aへの印加パルス電圧の時間分布35Aにおける立上り時刻をt1とし、加速並行平板電極12Bへの印加パルス電圧の時間分布35Bにおける立上り時刻をt2とすると、これらの時間差Δt=|t1-t2|は、光スイッチ16A、16B間のレーザ光路の光路長Kに依存(比例)する。
【0026】
図3に示す制御手段27は、電圧モニタ26A及び26Bの測定値(光スイッチ16A、16Bにより加速並行平板電極12A、12Bに印加されるパルス電圧の時間分布35A、35B)と、荷電粒子ビームPが隣接する加速並行平板電極12A、12B間を通過する通過時間Tとに基づいて、光路長調整機構17の移動式反射鏡22の動作(移動)を制御する。更に、この制御手段27は、ビーム源11、レーザ源15並びに高電圧電源13A及び13Bの起動と停止を制御する。また、制御手段27には、ビームエネルギ測定装置18からの荷電粒子ビームPのビームエネルギの測定値が入力される。
【0027】
上述の移動式反射鏡22の移動制御について、制御手段27は、まず、シミュレーション等で予め求められた荷電粒子ビームPの加速並行平板電極12A、12B間の通過時間Tを取得し、この通過時間Tと、加速並行平板電極12A、12Bへの印加パルス電圧の時間分布35A、35Bにおける立上り時刻t1、t2の時間差Δtとを比較する。次に、制御手段27は、Δt>Tのときには、レーザ光路の光路長Kが短くなるように移動式反射鏡22を移動させ、Δt<Tのときには、レーザ光路の光路長Kが長くなるように移動式反射鏡22を移動させる。制御手段27は、上述の電圧モニタ26A、26Bによるパルス電圧の測定と、光路長調整機構17の移動式反射鏡22の移動制御とを繰り返し実行して、時間差Δtと通過時間Tとの差が最小(好ましくは時間差Δtと通過時間Tとが一致)になるように移動式反射鏡22を移動させる。
【0028】
次に、レーザ光路の光路長Kの調整手順及び荷電粒子ビームPの加速手順について、主に図7を参照して説明する。
まず、高電圧電源13A、13Bの電圧値、レーザ源15の出力値などの各機器のパラメータを設定すると共に、制御手段27は、荷電粒子ビームPが加速並行平板電極12A、12B間を通過する通過時間Tを取得して、光スイッチ16A、16B間のレーザ光路の光路長Kを設定する(S1)。次に、制御手段27は、高電圧電源13A、13Bにより、OFF状態の光スイッチ16A、16Bのそれぞれに電圧を印加させる(S2)。
【0029】
次に、制御手段27は、レーザ源15からレーザLを照射させて(S3)、光スイッチ16Aにより加速並行平板電極12Aにパルス電圧を印加させ、引き続き、光スイッチ16Bにより加速並行平板電極12Bにパルス電圧を印加させる。次に、加速並行平板電極12Aに印加されたパルス電圧を電圧モニタ26Aが測定して制御手段27へ出力し、引き続き、加速並行平板電極12Bに印加されたパルス電圧を電圧モニタ26Bが測定して制御手段27へ出力する(S4)。
【0030】
次に、制御手段27は、電圧モニタ26A、26Bにて測定されたパルス電圧の波形である時間分布35A、35Bにおけるそれぞれの立上り時刻t1、t2の時間差Δtが、設定値(荷電粒子ビームPが加速並行平板電極12A、12B間を通過する通過時間T)と一致するか否かを判断する(S5)。制御手段27は、ステップS5において、Δt>Tの場合にはレーザ光路の光路長Kが短くなるように修正して計算し、Δt<Tの場合には光路長Kが長くなるように修正して計算する(S6)。
【0031】
制御手段27は、ステップS6にて計算し修正した光路長Kとなるように光路長調整機構17の移動式反射鏡22を移動して、レーザ光路の光路長Kを調整する(S7)。制御手段27は、ステップS3~S7を繰り返し実行して、ΔtとTとの差が最小、好ましくはΔtがTと一致するように、光路長調整機構17の移動式反射鏡22を移動させて、レーザ光路の光路長Kを調整する。
【0032】
その後、制御手段27は、ビーム源11を起動させて(S8)、荷電粒子ビームPを加速並行平板電極12A、12B及びグラウンド電極14に通過させ、加速並行平板電極12Aと加速並行平板電極12B間に形成される加速電場、加速並行平板電極12Bとグラウンド電極14間に形成される加速電場により荷電粒子ビームPを順次加速させる。これらの加速電場により加速された荷電粒子ビームPのビームエネルギは、ビームエネルギ測定装置18により測定されて(S9)、その測定値が制御手段27へ出力される。
【0033】
制御手段27は、ビームエネルギ測定装置18により測定された荷電粒子ビームPのビームエネルギが所定値以上増大している場合には、光路長調整機構17によるレーザ光路の光路長Kの調整を完了する(S10)。制御手段27は、ビームエネルギ測定装置18により測定された荷電粒子ビームPのビームエネルギの増大量が所定値未満である場合には、光路長調整機構17による光路長Kの調整以外の他の対策が必要であるかを検討するよう提示する。
【0034】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態によれば、次の効果(2)を奏する。
(2)レーザLの入射によりON状態に変化して加速並行平板電極12A、12Bのそれぞれにパルス電圧を付加する光スイッチ16A、16B間のレーザ光路の光路長Kは、電圧モニタ26A、26Bのそれぞれにより測定された加速並行平板電極12A、12Bの印加パルス電圧の測定値に基づいて、(つまり、測定された印加パルス電圧の時間分布35A、35Bにおける立上り時刻t1、t2の時間差Δtに基づいて)、制御手段27が光路長調整機構17の移動式反射鏡22を移動させることで調整される。これにより、加速並行平板電極12A、12B(特に加速並行平板電極12B)のパルス電圧の印加タイミングを、荷電粒子ビームPの加速並行平板電極12A、12B(特に加速並行平板電極12B)の通過タイミングと高精度に一致させることができる。従って、加速並行平板電極12A、12B及びグラウンド電極14を通過する荷電粒子ビームPは、これらの電極12A、12B、14により形成される加速電場からのエネルギをより一層効率良く取得することができる。この結果、光路長調整機構17、電圧モニタ26A及び26Bを備えた加速粒子生成装置25は、荷電粒子ビームPを設計通りに正確に加速することができる。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0036】
例えば、光源から照射される光は、レーザ源15からのレーザLに限らず、例えばLEDによる光を光学系で集光させて用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…加速粒子生成装置、11…ビーム源、12A、12B…加速並行平板電極、13A、13B…高電圧電源、15…レーザ源(光源)、16A、16B…光スイッチ、17…光路長調整機構、22…移動式反射鏡、25…加速粒子生成装置、26A、26B…電圧モニタ(電圧測定手段)、27…制御手段、29…分圧回路(分圧器)、30…波形測定装置、31、32…コンデンサ、33…負荷抵抗、K…光路長、L…レーザ(光)、P…荷電粒子ビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7