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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030240
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/133 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
F16L37/133
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132957
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南原 翔平
(72)【発明者】
【氏名】上村 尚三
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE21
3J106EA01
3J106EC06
3J106ED28
3J106EE02
3J106EF13
(57)【要約】
【課題】緩み止め機構を備えた管継手を容易に分解できるようにする。
【解決手段】管継手1は、第1ホース91に接続され雌ねじ25を有する筒状の雌部品2と、第2ホース92に接続され雌ねじ25に締め込まれる雄ねじ33を有する筒状の雄部品3と、雌ねじ25に対して雄ねじ33が締込完了位置まで締め込まれたときに、互いに軸方向に係合して雄ねじ33の緩みを規制する凹部61及び凸部62を有する緩み止め機構6と、を備える。凹部61は雌部品2に設けられ、凸部62は雄部品3に設けられる。雌部品2は、凹部81が設けられ、凹部61が凸部62との係合が解除される軸方向一方側に移動するように撓み変形可能な撓み部71と、撓み部71から軸方向一方側に延びる引掛部72と、撓み部71が撓み変形したときに引掛部72が引っ掛けられて保持される被引掛部73と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の配管に接続され、雌ねじを有する筒状の雌部品と、
他の配管に接続され、前記雌ねじに締め込まれる雄ねじを有する筒状の雄部品と、
前記雌ねじに対して前記雄ねじが締込完了位置まで締め込まれたときに、互いに軸方向に係合して前記雄ねじの緩みを規制する第1係合部及び第2係合部を有する緩み止め機構と、を備える管継手であって、
前記第1係合部は、前記雌部品及び前記雄部品のうちの一方の部品に設けられ、
前記第2係合部は、前記雌部品及び前記雄部品のうちの他方の部品に設けられ、
前記一方の部品は、
前記第1係合部が設けられ、前記第1係合部が前記第2係合部との係合が解除される軸方向一方側に移動するように撓み変形可能な撓み部と、
前記撓み部から前記軸方向一方側に延びる引掛部と、
前記撓み部が前記撓み変形したときに、前記引掛部が引っ掛けられて保持される被引掛部と、を備える、管継手。
【請求項2】
前記一方の部品の周方向の一部において径方向外方に突出して設けられた第1突出部と、
前記他方の部品の周方向の一部において径方向外方に突出して設けられ、前記雄ねじが前記締込完了位置まで締め込まれたときに、前記第1突出部と周方向の位置が一致する第2突出部と、をさらに備え、
前記撓み部、前記引掛部、及び前記被引掛部は、それぞれ前記第1突出部の一部により構成されている、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記第1突出部には、その突出端面における軸方向の途中位置から径方向内方に延びるスリットが形成され、
前記第1突出部における前記スリットよりも前記軸方向他方側の部分に、前記撓み部と前記引掛部が形成され、
前記第1突出部における前記スリットよりも前記軸方向一方側の部分に、前記被引掛部が形成されている、請求項2に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車内に配置されるゴムホースや金属パイプ等の様々な配管を互いに連結する管継手として、特許文献1に記載された管継手が知られている。特許文献1の管継手は、一の配管が接続される雄部品(継手本体)と、他の配管が接続される雌部品(ナット)と、緩み止め機構と、を備えている。雄部品には雄ねじが形成され、雌部品には、雄部品の雄ねじが締め込まれる雌ねじが形成されている。
【0003】
緩み止め機構は、雄部品の外周に設けられた凹状の受け部と、雌部品の外周に設けられた片持ち梁状の爪部と、によって構成されている。雌部品の雌ねじに対して雄部品の雄ねじを適正位置まで締め込むと、雌部品の爪部が雄部品の受け部に係合するようになっている。これにより、緩み止め機構は、自動車が走行中に振動しても、雌部品の雌ねじに対して雄部品の雄ねじが緩むのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-162060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記管継手において、雄部品と雌部品とを分解する際には、作業者は、爪部を径方向外側に撓ませて爪部を受け部から係合解除し、その状態を維持しながら雌部品に対して雄部品を緩める方向に回転させる必要がある。このため、分解作業が煩雑であり、作業性の改善が望まれている。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、緩み止め機構を備えた管継手を容易に分解できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示は、一の配管に接続され、雌ねじを有する筒状の雌部品と、他の配管に接続され、前記雌ねじに締め込まれる雄ねじを有する筒状の雄部品と、前記雌ねじに対して前記雄ねじが締込完了位置まで締め込まれたときに、互いに軸方向に係合して前記雄ねじの緩みを規制する第1係合部及び第2係合部を有する緩み止め機構と、を備える管継手であって、前記第1係合部は、前記雌部品及び前記雄部品のうちの一方の部品に設けられ、前記第2係合部は、前記雌部品及び前記雄部品のうちの他方の部品に設けられ、前記一方の部品は、前記第1係合部が設けられ、前記第1係合部が前記第2係合部との係合が解除される軸方向一方側に移動するように撓み変形可能な撓み部と、前記撓み部から前記軸方向一方側に延びる引掛部と、前記撓み部が前記撓み変形したときに、前記引掛部が引っ掛けられて保持される被引掛部と、を備える、管継手である。
【0008】
本開示の管継手によれば、雄部品の雄ねじが雌部品の雌ねじに対して締込完了位置まで締め込まれたときに、緩み止め機構の第1係合部及び第2係合部が互いに軸方向に係合することで、雌部品の雌ねじに対する雄部品の雄ねじの緩みが規制される。この状態から、管継手を分解する際には、作業者は、雌部品及び雄部品のうちの一方の部品に設けられた撓み部を軸方向一方側へ撓み変形させる。これにより、第1係合部が軸方向一方側に移動することで、第1係合部と第2係合部との係合が解除される。この状態で、作業者は、撓み部から軸方向一方側に延びる引掛部を被引掛部に引っ掛けることで、第1係合部及び第2係合部は、係合解除された状態で保持される。この状態から、作業者は、雌部品に対して雄部品を緩める方向に回転させれば、雄部品を雌部品から取り外すことができる。これにより、緩み止め機構を備えた管継手を容易に分解することができる。
【0009】
(2)前記(1)の管継手において、前記一方の部品の周方向の一部において径方向外方に突出して設けられた第1突出部と、前記他方の部品の周方向の一部において径方向外方に突出して設けられ、前記雄ねじが前記締込完了位置まで締め込まれたときに、前記第1突出部と周方向の位置が一致する第2突出部と、をさらに備え、前記撓み部、前記引掛部、及び前記被引掛部は、それぞれ前記第1突出部の一部により構成されているのが好ましい。
この場合、雄部品の雄ねじが雌部品の雌ねじに対して締込完了位置まで締め込まれたときに、第1突出部の周方向の位置と第2突出部の周方向の位置とが一致するので、作業者は、雄部品の雄ねじが締込完了位置まで締め込まれたことを容易に把握することができる。また、撓み部、引掛部、及び被引掛部は、それぞれ第1突出部の一部により構成されるので、第1突出部とは別に設ける必要がない。これにより、前記一方の部品の構成を簡素化することができる。
【0010】
(3)前記(2)の管継手において、前記第1突出部には、その突出端面における軸方向の途中位置から径方向内方に延びるスリットが形成され、前記第1突出部における前記スリットよりも前記軸方向他方側の部分に、前記撓み部と前記引掛部が形成され、前記第1突出部における前記スリットよりも前記軸方向一方側の部分に、前記被引掛部が形成されているのが好ましい。
この場合、第1突出部にスリットを形成することで、撓み部、引掛部、及び被引掛部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、緩み止め機構を備えた管継手を容易に分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態に係る管継手の斜視図である。
図2】管継手を図1の反対側から見た斜視図である。
図3図1の管継手の軸方向の断面図である。
図4図1の管継手の平面図である。
図5図3の要部拡大断面図である。
図6】撓み部が少し撓み変形した状態を示す要部拡大断面図である。
図7】引掛部が被引掛部に引っ掛かった状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
[全体構成]
図1は、本開示の実施形態に係る管継手1の斜視図である。図2は、管継手1を図1の反対側から見た斜視図である。図3は、図1の管継手1の軸方向の断面図である。図1図3において、管継手1は、例えば電気自動車(EV)のバッテリーパックの冷却ラインに設けられ、冷却水(LLC)を通す第1ホース(一の配管)91及び第2ホース(他の配管)92を連結するために用いられる。第1ホース91及び第2ホース92は、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)等の樹脂材料からなる。
【0014】
管継手1は、雌部品2と雄部品3とを備えている。雌部品2及び雄部品3は、いずれも、ポリアミド(PA)又はガラス繊維強化ポリアミド(PA-GF)等の樹脂材料により円筒状に形成されている。雌部品2及び雄部品3は、同一の内径を有し、同一の軸線C上に配置された状態で互いに締結される。
【0015】
雌部品2は第1ホース91に接続され、雄部品3は第2ホース92に接続される。これにより、雌部品2及び雄部品3の各内部空間は、第1ホース91の内部空間と第2ホース92の内部空間とを連通する。すなわち雌部品2及び雄部品3の各内部空間は、2本のホース91,92の間を繋ぐLLCの流路として機能する。
【0016】
以下、本明細書において、「軸方向」とは、軸線Cに沿った方向(この中心線に平行な方向も含む)である。便宜上、図3の右側を「軸方向一方側」といい、図3の左側を「軸方向他方側」という。また、本明細書において、「径方向」とは、軸線Cに対して直交する方向であり、「周方向」とは、軸線C回りの方向である。
【0017】
[雌部品]
雌部品2は、軸方向一方側に形成された第1雌部21と、軸方向他方側に形成された第2雌部22と、を備えている。第1雌部21は、第1ホース91との接続部分である。第1雌部21の外径は第1ホース91の内径よりも少し大きい。第1雌部21は、第1ホース91内に圧入され、第1ホース91の開口端部を押し広げる。第1ホース91の開口端部の内周面は、その復元力により第1雌部21の外周面を径方向内側へ締め付ける。これにより、第1雌部21は第1ホース91に接続され、第1雌部21の外周面と第1ホース91の内周面との間はシールされる。
【0018】
第2雌部22は、雄部品3との接続部分である。第2雌部22は、径方向内側において軸方向他方側に突出するシール部23と、径方向外側において軸方向他方側に突出する外筒部24と、を有している。シール部23は、円筒状に形成されている。外筒部24は、シール部23の径方向外方に間隔をあけて円筒状に形成されている。外筒部24の内周には、雌ねじ25が形成されている。雌ねじ25は、例えば、二条ねじ等の多条ねじからなる。
【0019】
[雄部品]
雄部品3は、軸方向他方側に形成された第1雄部31と、軸方向一方側に形成された第2雄部32と、を備えている。第1雄部31は、第2ホース92との接続部分である。第1雄部31の外径は第2ホース92の内径よりも少し大きい。第1雄部31は、第2ホース92内に圧入され、第2ホース92の開口端部を押し広げる。第2ホース92の開口端部の内周面は、その復元力により第1雄部31の外周面を径方向内側へ締め付ける。これにより、第1雄部31は第2ホース92に接続され、第1雄部31の外周面と第2ホース92の内周面との間はシールされる。
【0020】
第2雄部32は、雌部品2との接続部分である。第2雄部32の内径は第1雄部31の内径と同一であり、第2雄部32の外径は第1雄部31の外径よりも大きい。これにより、第2雄部32の径方向の厚みは、第1雄部31の径方向の厚みよりも大きい。第2雄部32の外周における軸方向一方側には、雄ねじ33が形成されている。雄ねじ33は、雌部品2の雌ねじ25と噛み合い可能なねじからなる。本実施形態の雄ねじ33は、例えば二条ねじ等の多条ねじからなる。
【0021】
第2雄部32には、軸方向一方側(雌部品2側)に開口するシール溝34が形成されている。シール溝34は、雌部品2のシール部23が圧入されるように円環状に形成されている。シール溝34の外径は、シール部23の外径と同一であり、シール溝34の内径は、シール部23の内径よりも少し大きい。
【0022】
以上より、雌部品2の雌ねじ25に、雄部品3の雄ねじ33が締め込まれることで、雌部品2のシール部23が、雄部品3のシール溝34に圧入されるようになっている。シール部23がシール溝34に圧入されると、シール部23の内周面とシール溝34の内周面とが密着することで、雌部品2と雄部品3との接続部分がシールされる。
【0023】
[突出部]
管継手1は、雌部品2(一方の部品)に設けられた雌突出部(第1突出部)4と、雄部品3に設けられた雄突出部(第2突出部)5と、をさらに備えている。雌突出部4は、雌部品2と同一の樹脂材料からなり、例えば射出成形により雌部品2と一体に成形される。同様に、雄突出部5は、雄部品3と同一の樹脂材料からなり、例えば射出成形により雄部品3と一体に成形される。
【0024】
雌突出部4は、第2雌部22の周方向の一部において径方向外方に突出して設けられている。雄突出部5は、第2雄部32の周方向の一部において径方向外方に突出して設けられている。雌突出部4及び雄突出部5は、同一の外形に形成されており、本実施形態では例えば、径方向外端部が先細るように略三角柱状に形成されている。雌突出部4には、窪み部41が形成されている。窪み部41は、雌突出部4の軸方向一方側及び周方向一方側(図2の右側)に開口している。同様に、雄突出部5には、窪み部51が形成されている。窪み部51は、雄突出部5の軸方向他方側及び周方向他方側(図1の右側)に開口している。これらの窪み部41,51は、各突出部4,5が射出成形後に収縮して変形するのを抑制している。
【0025】
第2雌部22における雌突出部4の周方向の位置、及び第2雄部32における雄突出部5の周方向の位置は、雌ねじ25に対して雄ねじ33が適正な締込完了位置まで締め込まれたときに、両突出部4,5の周方向の位置が互いに一致するように設定されている。作業者は、雌突出部4及び雄突出部5の周方向の位置が互いに一致したことを視認することで、雄ねじ33が締込完了位置にあることを把握することができる。
【0026】
[緩み止め機構]
図4は、図1の管継手1の平面図である。図4において、管継手1は、締込完了位置にある雄ねじ33の緩みを規制する緩み止め機構6をさらに備えている。緩み止め機構6は、雌部品2に設けられた第1係合部としての凹部61と、雄部品3に設けられた第2係合部としての凸部62と、を有している。
【0027】
本実施形態の凹部(第1係合部)61は、雌突出部4の軸方向他方側の側面42における径方向外端部(突出端部)に形成されている。雌突出部4の側面42には、テーパ面42aが凹部61に隣接して形成されている。テーパ面42aは、凹部61に対して、雌ねじ25の締め込み方向の反対側(図4の上側)に隣接して配置されている。テーパ面42aは、前記締め込み方向に向かうにつれて、徐々に軸方向他方側に突出するように形成されている。
【0028】
本実施形態の凸部(第2係合部)62は、雄突出部5の軸方向一方側の側面52における径方向外端部(突出端部)に形成されている。雄ねじ33が締込完了位置の直前まで締め込まれると、凸部62がテーパ面42aに当接する。この状態から、さらに雄ねじ33が締め込まれると、凸部62は、テーパ面42aを軸方向一方側に押し付けながら締め込み方向(図4の下側)に移動する。
【0029】
その際、凹部61が設けられた撓み部71(後述)が軸方向一方側に撓み変形することで、凸部62の締め込み方向(図4の下側)への移動が許容される。さらに、雄ねじ33が締込完了位置まで締め込まれると、凸部62は、テーパ面42aを乗り越えて凹部61に嵌まり込む。これにより、凹部61及び凸部62は、互いに軸方向に係合した状態となり、締込完了位置にある雄ねじ33の緩みを規制する。
【0030】
[係合解除機構]
図1図3において、雌部品2は、緩み止め機構6の凹部61と凸部62との係合を解除する係合解除機構7を備えている。係合解除機構7は、撓み部71と、引掛部72と、被引掛部73と、を備えている。撓み部71、引掛部72、及び被引掛部73は、それぞれ雌突出部4に設けられている。本実施形態では、撓み部71、引掛部72、及び被引掛部73は、それぞれ雌突出部4の一部により構成されている。
【0031】
雌突出部4には、係合解除機構7の各部71~73を形成するためのスリット44が形成されている。スリット44は、雌突出部4の突出端面43における軸方向の途中位置から径方向内方に延びている。スリット44は、窪み部41よりも軸方向他方側において、雌突出部4の幅方向(図3の紙面垂直方向)の全体にわたって形成されている。したがって、スリット44は、雌突出部4の周方向両側において開口している。
【0032】
雌突出部4におけるスリット44よりも軸方向他方側の部分には、係合解除機構7の撓み部71と引掛部72が形成されている。本実施形態では、雌突出部4の前記軸方向他方側の部分が撓み部71とされており、撓み部71に引掛部72が一体に形成されている。撓み部71は、薄板状に形成され、径方向に延びている。撓み部71の軸方向他方側の側面は、雌突出部4において凹部61が設けられた前記側面42である。したがって、撓み部71の軸方向他方側の側面42に、緩み止め機構6の凹部61が設けられている。なお、撓み部71の側面42と雄突出部5の側面52との間には、緩み止め機構6よりも径方向内側に隙間Sが形成されている。
【0033】
撓み部71の軸方向一方側にはスリット44が隣接している。これにより、撓み部71は、径方向内端部を起点として、径方向外端部が軸方向一方側に移動するように撓み変形可能である。撓み部71が撓み変形することで、凹部61が軸方向一方側へ移動する。したがって、撓み部71が撓み変形することで、緩み止め機構6の凹部61と凸部62との係合を解除することができる。
【0034】
引掛部72は、撓み部71の径方向外端部から軸方向一方側(スリット44側)に延びている。引掛部72は、薄板状に形成され、撓み部71に対して片持ち梁状に支持されている。引掛部72の軸方向の長さは、作業者が引掛部72を径方向内方に押し付けても、撓み部71が撓み変形し難いように(凹部61と凸部62との係合が解除されにくいように)、比較的短く形成されるのが好ましい。
【0035】
図5は、図3の要部拡大断面図である。図3及び図5において、引掛部72の径方向内側には、軸方向他端から軸方向一端に向かって、平坦面72a、係止面72b、及びテーパ面72cが、この順に形成されている。平坦面72aは、引掛部72の軸方向他端から軸方向一方側に延びている。係止面72bは、平坦面72aの軸方向一端から径方向内方に突出して形成されている。係止面72bは、平坦面72aに対して垂直に形成されている。テーパ面72cは、引掛部72の軸方向他端から係止面72bの径方向内端からに向かうにつれて、徐々に径方向内側に突出するように形成された凸曲面からなる。
【0036】
雌突出部4におけるスリット44よりも軸方向一方側の部分には、段差部45が形成されている。段差部45は、前記軸方向一方側の部分の径方向外端部において、スリット44に隣接して形成されている。段差部45は、径方向に延びる第1段差面45aと、軸方向に延びる第2段差面45bと、を有している。第2段差面45bは、第1段差面45aの径方向内端から軸方向他方側に延びている。第2段差面45bには、係合解除機構7の被引掛部73が一体に形成されている。被引掛部73は、撓み部71が軸方向一方側に撓み変形したときに、引掛部72の係止面72bが引っ掛けられて保持される部分である。
【0037】
被引掛部73は、第2段差面45bのスリット44側の端部において、径方向外方に突出している。被引掛部73の径方向外側面は、テーパ面73bとされている。テーパ面73bは、その軸方向他端から軸方向一端に向かうにつれて、徐々に径方向外側に突出するように形成された凸曲面からなる。被引掛部73のテーパ面73bは、引掛部72のテーパ面72cが当接し得る位置に配置されている。
【0038】
被引掛部73の軸方向一方側の側面は、引掛部72の係止面72bが引っ掛けられて係止される被係止面73aとされている(図7参照)。被引掛部73の被係止面73aは、撓み部71の軸方向一方側への撓み変形量が所定量に達すると、引掛部72の係止面72bが係止されるように配置されている。
【0039】
前記所定量は、凹部61と凸部62との係合が解除されるまで撓み部71が撓み変形したときの撓み変形量に設定されている。したがって、前記所定量は、上述のように雄部品3側の凸部62が雌部品2側のテーパ面42aに当接したとき(図4参照)における撓み部71の撓み変形量よりも大きい。このため、雄部品3側の凸部62が雌部品2側のテーパ面42aに当接したときに、撓み部71の軸方向一方側への撓み変形しても、引掛部72の係止面72bが被引掛部73の被係止面73aに引っ掛かることはない。
【0040】
次に、図5に示す状態から、管継手1を分解する手順について説明する。まず、作業者は、雌突出部4と雄突出部5との間の隙間Sに、例えば汎用の工具であるマイナスドライバー100の先端部101を差し込み、当該先端部101を図5の時計回り方向に回転させる。そうすると、マイナスドライバー100の先端部101が、撓み部71の側面42と雄突出部5の側面52とにそれぞれ当接することで、撓み部71に軸方向一方側への押し付け力が作用する。これにより、撓み部71は、軸方向一方側に少し撓み変形する。
【0041】
前記押し付け力により、撓み部71は軸方向一方側に少し撓み変形する。これにより、図6に示すように、撓み部71と共に引掛部72が軸方向一方側に移動し、引掛部72のテーパ面72cが被引掛部73のテーパ面73bに当接する。作業者は、図6に示す状態から、さらにマイナスドライバー100の先端部101を回転させ、撓み部71を軸方向一方側にさらに撓み変形させる。
【0042】
撓み部71の軸方向一方側への撓み変形量が所定量に達すると、図7に示すように、引掛部72のテーパ面72cが被引掛部73のテーパ面73bを乗り越えることによって、引掛部72の係止面72bが被引掛部73の被係止面73aに係止される。その際、緩み止め機構6の凹部61と凸部62との係合も解除される。したがって、係止面72bが被係止面73aに係止することで、引掛部72は、被引掛部73に引っ掛けられて保持されるとともに、緩み止め機構6の凹部61及び凸部62は、係合解除された状態で保持される。
【0043】
次に、作業者は、マイナスドライバー100の先端部101を隙間Sから抜き出し、雌部品2に対して雄部品3を緩める方向に回転させ、雄部品3を雌部品2から取り外す。これにより、管継手1は分解された状態となる。
【0044】
[作用効果]
本実施形態の管継手1によれば、雄部品3の雄ねじ33が雌部品2の雌ねじ25に対して締込完了位置まで締め込まれたときに、緩み止め機構6の凹部61及び凸部62が互いに軸方向に係合することで、雌部品2の雌ねじ25に対する雄部品3の雄ねじ33の緩みが規制される。この状態から、管継手1を分解する際には、作業者は、雌部品2に設けられた撓み部71を軸方向一方側へ撓み変形させる。これにより、凹部61が軸方向一方側に移動することで、凹部61と凸部62との係合が解除される。この状態で、作業者は、撓み部71から軸方向一方側に延びる引掛部72を被引掛部73に引っ掛けることで、凹部61及び凸部62は、係合解除された状態で保持される。この状態から、作業者は、雌部品2に対して雄部品3を緩める方向に回転させれば、雄部品3を雌部品2から取り外すことができる。これにより、緩み止め機構6を備えた管継手1を容易に分解することができる。特に、上述のように撓み部71を撓み変形し難くし、マイナスドライバー100等の工具を用いて意図的に撓み部71を撓ませない限り、緩み止め機構6の凹部61及び凸部62が係合解除されない場合に、本実施形態の管継手1がより有効となる。
【0045】
雄部品3の雄ねじ33が雌部品2の雌ねじ25に対して締込完了位置まで締め込まれたときに、雌突出部4の周方向の位置と雄突出部5の周方向の位置とが一致する。これにより、作業者は、雄部品3の雄ねじ33が締込完了位置まで締め込まれたことを容易に把握することができる。また、撓み部71、引掛部72、及び被引掛部73は、それぞれ雌突出部4の一部により構成されるので、雌突出部4とは別に設ける必要がない。これにより、雌部品2の構成を簡素化することができる。
【0046】
雌突出部4にスリット44を形成することで、撓み部71、引掛部72、及び被引掛部73がそれぞれ形成されるので、係合解除機構7の各部71~73を雌突出部4に容易に形成することができる。
【0047】
[その他]
上記実施形態の管継手1は、電気自動車での使用に限定されるものではない。上記各実施形態の緩み止め機構6は、第1係合部を凹部61とし、第2係合部を凸部62としているが、第1係合部を凸部とし、第2係合部を凹部としてもよい。上記実施形態の係合解除機構7は、工具(マイナスドライバー100)により撓み部71を撓み変形させるように構成されているが、工具を用いずに手動で撓み部71を撓み変形させるように構成されていてもよい。
【0048】
上記実施形態の係合解除機構7の撓み部71、引掛部72、及び被引掛部73は、雌突出部4とは別に設けられていてもよい。また、撓み部71、引掛部72、及び被引掛部73は、雄部品3のみに設けられていてもよい。その場合、凸部62が第1係合部となり、凹部61が第2係合部となる。また、雄部品3側の撓み部71、引掛部72、及び被引掛部73は、雄突出部5と一体に設けられてもよいし、雄突出部5とは別に設けられてもよい。さらに、撓み部71、引掛部72、及び被引掛部73は、雌部品2及び雄部品3の両方に設けられてもよい。
【0049】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 管継手
2 雌部品
3 雄部品
4 雌突出部(第1突出部)
5 雄突出部(第2突出部)
6 緩み止め機構
25 雌ねじ
33 雄ねじ
43 突出端面
44 向スリット
61 凹部(第1係合部)
62 凸部(第2係合部)
71 撓み部
72 引掛部
73 被引掛部
91 第1ホース(一の配管)
92 第1ホース(他の配管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7