IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-30248電力供給網、電動車両及び電力変換装置
<>
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図1
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図2
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図3
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図4
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図5
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図6
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図7
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図8
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図9
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図10
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図11
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図12
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図13
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図14
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図15
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図16
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図17
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図18
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図19
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図20
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図21
  • 特開-電力供給網、電動車両及び電力変換装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030248
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電力供給網、電動車両及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240229BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240229BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240229BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20240229BHJP
   B60L 58/20 20190101ALI20240229BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240229BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240229BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240229BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B60L3/00 H
B60L15/20 S
B60L9/18 P
B60L7/14
B60L58/20
B60L50/60
H02M7/48 E
H02J1/00 301D
H02H7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132969
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 信康
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋
(72)【発明者】
【氏名】福田 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】稲田 遼一
(72)【発明者】
【氏名】十文字 賢太郎
【テーマコード(参考)】
5G165
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
5G165BB08
5G165CA01
5G165CA05
5G165EA02
5G165FA01
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BA04
5H125BB07
5H125BC29
5H125BC30
5H125CA01
5H125CA11
5H125CB02
5H125EE16
5H125EE26
5H125FF02
5H770BA01
5H770DA10
5H770DA27
(57)【要約】
【課題】電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することを目的とする。
【解決手段】電力供給網1は、車両の主機駆動用電源100-0に電力変換装置101を介して接続されると共に負荷40-1、41、42-1に接続される第1電力供給経路20-1と、主機駆動用電源100-0とは異なる電力源100-2に接続されると共に負荷40-2、41、42-2に接続され、且つ、開閉器SW0を介して第1電力供給経路20-1に接続される第2電力供給経路20-2と、を備える。開閉器SW0は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2が正常である場合には閉じられ、第1電力供給経路20-1又は第2電力供給経路20-2が異常である場合には開かれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、複数の電力供給経路から負荷に電力を供給する電力供給網であって、
前記車両の主機駆動用電源に電力変換装置を介して接続されると共に前記負荷に接続される第1電力供給経路と、
前記主機駆動用電源とは異なる電力源に接続されると共に前記負荷に接続され、且つ、開閉器を介して前記第1電力供給経路に接続される第2電力供給経路と、を備え、
前記開閉器は、前記第1電力供給経路及び前記第2電力供給経路が正常である場合には閉じられ、前記第1電力供給経路又は前記第2電力供給経路が異常である場合には開かれる
ことを特徴とする電力供給網。
【請求項2】
前記第1電力供給経路及び前記第2電力供給経路のそれぞれは、前記車両の少なくとも1つの右車輪用のブレーキ装置と、前記車両の少なくとも1つの左車輪用のブレーキ装置とに接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給網。
【請求項3】
前記第1電力供給経路及び前記第2電力供給経路のそれぞれは、前記車両の少なくとも1つの右車輪用のインホイールモータと、前記車両の少なくとも1つの左車輪用のインホイールモータとに接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給網。
【請求項4】
前記第1電力供給経路及び前記第2電力供給経路のそれぞれは、前記車両のステアリング装置に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給網。
【請求項5】
前記第1電力供給経路及び前記第2電力供給経路のそれぞれは、前記車両の自動運転制御装置に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給網。
【請求項6】
前記電力変換装置は、
前記主機駆動用電源に接続される第1インバータと、
前記第1電力供給経路に接続される第2インバータと、
前記第1インバータに接続される第1巻線、及び、前記第2インバータに接続される第2巻線を有するモータと、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給網。
【請求項7】
前記第2インバータは、前記モータを回生制動させる第2トルク指令に応じて動作し、
前記第1インバータは、所定トルクに前記第2トルク指令分を加えた第1トルク指令に応じて動作する
ことを特徴とする請求項6に記載の電力供給網。
【請求項8】
前記車両は、前記主機駆動用電源に接続されるインホイールモータと、前記第2電力供給経路に接続されるインホイールモータと、を備え、
前記第2電力供給経路に接続される前記インホイールモータは、当該インホイールモータを回生制動させる第2トルク指令に応じて動作し、
前記主機駆動用電源に接続される前記インホイールモータは、所定トルクに前記第2トルク指令分を加えた第1トルク指令に応じて動作する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給網。
【請求項9】
請求項1に記載の電力供給網を搭載する電動車両。
【請求項10】
車両の主機駆動用電源に接続される第1インバータと、
前記車両の補機駆動用電源に接続される第2インバータと、
前記第1インバータに接続される第1巻線、及び、前記第2インバータに接続される第2巻線を有するモータと、を備える
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
前記第2インバータは、前記モータを回生制動させる第2トルク指令に応じて動作し、
前記第1インバータは、所定トルクに前記第2トルク指令分を加えた第1トルク指令に応じて動作する
ことを特徴とする請求項10に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給網、電動車両及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今世紀初頭より、電動ステアリング及び電動ブレーキ等の、自動車の補機の電動化が進展してきた。更に近年になって、ハイブリッド自動車及び電気自動車に代表されるように主機の電動化も進んでいる。加えて自動運転化も進み、今後は故障時においても自動車の運転が徐々に人間の介在なしに自律的及び自動的な動作によって完結することが求められるようになる。このような背景から、自動車の電動化及び自動化を支える車載用電力供給網の高性能化及び高信頼性(故障時の動作継続性)が求められるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、制御部の冗長化に加えて電源部の冗長化についての技術が開示されており、更には、電源部の故障時に制御部を省電力モードで動作させる技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-193720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、故障時の動作継続のために電力供給機能を冗長化しようとすると、大幅なコスト増加につながるので、容易に実現することが難しい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電力供給網は、車両に搭載され、複数の電力供給経路から負荷に電力を供給する電力供給網であって、前記車両の主機駆動用電源に電力変換装置を介して接続されると共に前記負荷に接続される第1電力供給経路と、前記主機駆動用電源とは異なる電力源に接続されると共に前記負荷に接続され、且つ、開閉器を介して前記第1電力供給経路に接続される第2電力供給経路と、を備え、前記開閉器は、前記第1電力供給経路及び前記第2電力供給経路が正常である場合には閉じられ、前記第1電力供給経路又は前記第2電力供給経路が異常である場合には開かれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の電力供給網を示す図。
図2】電力変換装置に異常が発生した場合の動作例を示す図。
図3】2次電池に異常が発生した場合の動作例を示す図。
図4】ブレーキ装置への第1電力供給経路及び第2電力供給経路の接続例を示す図。
図5】ブレーキ装置への第1電力供給経路及び第2電力供給経路の接続例を示す図。
図6】望ましくないブレーキ装置への第1電力供給経路及び第2電力供給経路の接続例を示す図。
図7】4輪より多くの車輪を有する車両に搭載されたブレーキ装置への第1電力供給経路及び第2電力供給経路の接続例を示す図。
図8】4輪より多くの車輪を有する車両に搭載されたブレーキ装置への第1電力供給経路及び第2電力供給経路の接続例を示す図。
図9】インホイールモータへの第1電力供給経路及び第2電力供給経路の接続例を示す図。
図10】インホイールモータへの第1電力供給経路及び第2電力供給経路の接続例を示す図。
図11】車両後部の負荷が多い場合に好適な電力供給網を示す図。
図12】車両後部の負荷が少ない場合に好適な電力供給網を示す図。
図13】2重化された電力供給経路が対角線上の車輪のブレーキ装置に接続される電力供給網を示す図。
図14】前輪ブレーキ装置への電力供給を強化してダイオードにより2重化された電力供給網を示す図。
図15】ECUの構成を示す図。
図16】ECU内の制御機能へ電力を供給する電力線の接続例を示す図。
図17】ECU内の制御機能へ電力を供給する電力線の接続例を示す図。
図18】電力変換装置の構成を示す図。
図19図19(a)は図18に示す電力変換装置の通常時の動作例を示す図、図19(b)は図18に示す電力変換装置のDC/DC動作時の動作例を示す図、図19(c)は図18に示す電力変換装置の高電圧インバータの1相が故障時の動作例を示す図。
図20】第1電力供給経路の電力源として図18に示す電力変換装置を有する電力供給網を示す図。
図21】第2電力供給経路の電力源として図18に示す電力変換装置を有する電力供給網を示す図。
図22】インホイールモータの一部が補機駆動用の電力源として使用される電力供給網を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0011】
[実施例1]
図1は、本実施形態の電力供給網1を示す図である。図2は、電力変換装置101に異常が発生した場合の動作例を示す図である。図3は、2次電池102に異常が発生した場合の動作例を示す図である。
【0012】
電力供給網1は、車両に搭載され、複数の電力供給経路から負荷に電力を供給する電力供給網である。特に、電力供給網1は、純粋な電気自動車(BEV)又はハイブリッド自動車(HEV/PHEV)等の電動車両に搭載される電力供給網である。電力供給網1は、車両の主機駆動用電源100-0に電力変換装置101を介して接続されると共に負荷に接続される第1電力供給経路20-1と、主機駆動用電源100-0とは異なる電力源に接続されると共に負荷に接続され、且つ、開閉器SW0を介して第1電力供給経路20-1に接続される第2電力供給経路20-2と、を備える。
【0013】
主機駆動用電源100-0に接続する電力変換装置101は、第1電力供給経路20-1に電力を供給する電力源100-1として動作する。第2電力供給経路20-2は、電力源100-2(2次電池102)に接続され、更に開閉器SW0を介して電力源100-1(電力変換装置101)に接続される。
【0014】
主機駆動用電源100-0は、純粋な電気自動車においては、充電器とこれに電気的に接続する主機駆動用高電圧2次電池である。主機駆動用電源100-0は、ハイブリッド自動車においては、エンジン又は駆動系に機械的に接続する電動機兼発電機(以下「モータ」とも称する)と、これらに電気的に接続する主機駆動用高電圧2次電池からなる。
【0015】
第1電力供給経路20-1と第2電力供給経路20-2とは共に、重要負荷41、42に接続される。重要負荷41には、ダイオードORを介して第1電力供給経路20-1と第2電力供給経路20-2とが共に接続される。重要負荷42のうちの一部42-1は、第1電力供給経路20-1に接続され、重要負荷42のうちの他の一部42-2は、第2電力供給経路20-2に接続される。重要負荷41、42に加えて、第1電力供給経路20-1には通常負荷40-1が、第2電力供給経路20-2には通常負荷40-2がそれぞれ接続されてもよい。
【0016】
重要負荷41としては、ステアリング装置(具体的にはステアリングECU200-5)、又は、自動運転制御装置(具体的には自動運転(AD)ECU200-6)等が挙げられる。重要負荷42としては、ブレーキ装置(具体的には電動ブレーキ(BK)ECU200-7~200-m+1、又は、インホイールモータ(IWM)200’-7~200’-m+1等の、複数の車輪毎に分散された負荷が挙げられる。通常負荷40-1、40-2としては、電動ウインドウ、空調機器、ナビゲーション装置又は照明装置等の負荷が挙げられる。
【0017】
第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2が正常(何れも異常が検出されていない)である場合、図1に示すように、開閉器SW0は閉じられている。この場合、第1電力供給経路20-1と第2電力供給経路20-2とは電気的に接続されて、第1電力供給経路20-1にある電力源100-1(電力変換装置101)の出力電力は、開閉器SW0を経由して、電力源100-2(2次電池102)を含む第2電力供給経路20-2に供給される。この時、電力源100-2(2次電池102)は、電力源100-1(電力変換装置101)の出力電力により充電される。
【0018】
第1電力供給経路20-1又は第2電力供給経路20-2が異常である場合、図2又は図3に示すように、開閉器SW0は開かれる。この場合、第1電力供給経路20-1と第2電力供給経路20-2とは、互いに独立した個別の電力供給経路として動作する。
【0019】
例えば、図2に示すように、電力源100-1(電力変換装置101)で異常が発生した場合、第1電力供給経路20-1は正常に動作しなくなるが、重要負荷41には、ダイオードOR経由で第2電力供給経路20-2から電力が供給される。重要負荷42のうちの一部42-2には、第2電力供給経路20-2から電力が供給される。重要負荷41、42-2は、それぞれ動作を継続することができる。
【0020】
例えば、図3に示すように、電力源100-2(2次電池102)で異常が発生した場合、第2電力供給経路20-2は正常に動作しなくなるが、重要負荷41には、ダイオードOR経由で第1電力供給経路20-1から電力が供給される。重要負荷42のうちの一部42-1には、第1電力供給経路20-1から電力が供給される。重要負荷41、42-1は、それぞれ動作を継続することができる。
【0021】
このように、本実施形態の電力供給網1は、従来であれば1つの電力供給経路に含まれる電力変換装置101及び2次電池102を、開閉器SW0を介して第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2にそれぞれ接続する。これにより、本実施形態の電力供給網1は、正常時には1つの電力供給経路、異常時には独立した別々の電力供給経路として動作させることが可能となる。言い換えれば、本実施形態の電力供給網1は、電力変換装置101及び2次電池104を電力供給機能として正常時から単に冗長化するのではなく、異常時に電力供給機能が冗長化するよう電力供給経路を構成することができる。よって、本実施形態の電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0022】
特に、電力供給網1を搭載する電動車両では、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができるので、車両の信頼性を容易に向上させることができ、安全性を向上させることができる。
【0023】
なお、本実施形態において異常とは、以下のような故障モードを想定している。電力供給網1には、以下のような故障モードを検出可能なECU及びセンサが設けられている。
<電力源の異常>
・過電圧:電力源から供給されるECUへの入力電圧が閾値よりも高い。
検出方法:電力源から供給されるECUへの入力電圧をECUの制御機能が計測することにより検出する。
・電圧低下:電力源から供給されるECUへの入力電圧が閾値よりも低い。
検出方法:電力源から供給されるECUへの入力電圧をECUの制御機能が計測することにより検出する。
<電力源、電力供給経路、ECUの異常>
・過電流:負荷に流れるECUからの出力電流が閾値よりも大きい。
検出方法:負荷に流れるECUからの出力電流をECUの電流センサが計測することにより検出する。または、負荷への出力電圧をECUの制御機能が計測する(出力電圧が閾値よりも低い)ことにより検出する。この場合、ECUの負荷への出力端子を抵抗でプルアップすることにより、電源遮断時にも負荷の状態が回復したかどうかを検出することができる。
・過熱:機器の温度が閾値よりも大きい。
検出方法:温度センサにより検出する。または、電流センサにより計測される電流値により推定する。
【0024】
[実施例2]
図4は、ブレーキ装置への第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の接続例を示す図である。図5は、ブレーキ装置への第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の接続例を示す図である。図6は、望ましくないブレーキ装置への第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の接続例を示す図である。
【0025】
第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2をブレーキ装置に接続する際には、これらの電力供給経路の故障を共通要因とする共通要因故障(Common Cause Failure:CCF)がブレーキ装置に発生しないように考慮する必要がある。ブレーキ装置の故障とは、ブレーキ力が全く発生できない故障モードを含む。更に、ブレーキ装置の故障とは、右車輪又は左車輪のみにブレーキ力を発生できるが、反対側の車輪にはブレーキ力を発生できない故障モード、いわゆる「片効き」が発生する故障モードを含む。
【0026】
図4は、2重化された電力供給経路を対角線上の車輪の電動ブレーキECUに接続した場合を示している。具体的には、第1電力供給経路20-1は、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と、左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とに接続される。第2電力供給経路20-2は、左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)と、右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)とに接続される。
【0027】
図4の接続例によれば、第1電力供給経路20-1に故障が発生して電力供給ができなくなった場合には、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とが動作しなくなり、ブレーキ力を発生できなくなる。しかしながら、第2電力供給経路20-2が正常であれば、左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)と右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)とは正常に動作するので、「片効き」が発生することはない。また同様に、第2電力供給経路20-2に故障が発生して電力供給ができなくなった場合には、左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)と右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)とが動作しなくなり、ブレーキ力を発生できなくなる。しかしながら、第1電力供給経路20-1が正常であれば、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とは正常に動作するため、「片効き」が発生することはない。
【0028】
図5は、2重化された電力供給経路をそれぞれ前又は後の左右両側の車輪の電動ブレーキECUに接続した場合を示している。具体的には、第1電力供給経路20-1は、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)とに接続される。第2電力供給経路20-2は、右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とに接続される。
【0029】
図5の接続例によれば、第1電力供給経路20-1に故障が発生して電力供給ができなくなった場合には、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)とが動作しなくなり、ブレーキ力を発生できなくなる。しかしながら、第2電力供給経路20-2が正常であれば、右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とは正常に動作するので、「片効き」が発生することはない。また同様に、第2電力供給経路20-2に故障が発生して電力供給ができなくなった場合には、右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とが動作しなくなり、ブレーキ力を発生できなくなる。しかしながら、第1電力供給経路20-1が正常であれば、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)とは正常に動作するので、「片効き」が発生することはない。
【0030】
図6は、2重化された電力供給経路をそれぞれ右側、左側の電動ブレーキECUに接続した場合を示している。具体的には、第1電力供給経路20-1は、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)に接続される。第2電力供給経路20-2は、左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とに接続される。
【0031】
図6の接続例によれば、第1電力供給経路20-1に故障が発生して電力供給ができなくなった場合には、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)とが動作しなくなるので、右車輪ではブレーキ力を発生できない「片効き」が発生する。また同様に、第2電力供給経路20-2に故障が発生して電力供給ができなくなった場合には、左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とが動作しなくなるので、左車輪ではブレーキ力を発生できない「片効き」が発生する。すなわち、図6に示すように、冗長化された電力供給経路20-1、20-2が左右何れかの車輪の電動ブレーキECUのみに接続している場合には、電力供給経路20-1、20-2の何れかの故障により「片効き」が発生する。
【0032】
このように、実施例2の電力供給網1では、図4及び図5に示すように、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2のそれぞれが、車両の少なくとも1つの右車輪用のブレーキ装置と、車両の少なくとも1つの左車輪用のブレーキ装置とに接続される。これにより、実施例2の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障しても、「片効き」の発生を防止することができるので、ブレーキ動作を継続することができる。よって、実施例2の電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0033】
なお、図5の接続例において、制動時には前輪には後輪よりも荷重が加わるので、より大きなブレーキ力を発生させることが考えられる。このため、第1電力供給経路20-1の電源電圧を第2電力供給経路20-2の電源電圧よりも高くしてもよい。例えば、第2電力供給経路20-2は12V、第1電力供給経路20-1は24/36/48Vとしてもよい。これにより、前輪ではより立ち上がりが早くより大きなブレーキ力を発生させることができる。
【0034】
また、図14に示す実施例7において後述するように、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)には、第1電力供給経路20-1と第2電力供給経路20-2とからダイオードORを介して電力を供給することも可能である。これにより、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障した場合でも、後輪よりも荷重が加わる前輪に設けられた右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)とを確実に動作させることが可能となる。
【0035】
図7は、4輪より多くの車輪を有する車両に搭載されたブレーキ装置への第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の接続例を示す図である。図8は、4輪より多くの車輪を有する車両に搭載されたブレーキ装置への第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の接続例を示す図である。
【0036】
図7及び図8に示す場合においても、全車輪のうちの少なくとも4輪について、図4及び図5に示すような電動ブレーキECUへの電力供給経路の接続方法を採用すればよい。すなわち、冗長化された電力供給経路20-1、20-2が必ず左右両側の少なくとも1輪以上(全車輪の半数が最適)の車輪の電動ブレーキECUに接続している場合には、電力供給経路20-1、20-2の何れかの故障により「片効き」が発生することはない。
【0037】
[実施例3]
図9は、インホイールモータへの第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の接続例を示す図である。図10は、インホイールモータへの第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の接続例を示す図である。
【0038】
インホイールモータとは、電気自動車等に使われる車輪のハブ内部に装備された電気モータである。インホイールモータは、ホイールモータ、ハブモータ又はパワーホイールとも称される。インホイールモータは、必ずしもホイールの内部にモータ部分が入っていなくてもよく、ハブと一体化して同軸で繋がっていればインホイールモータと考えることができる。インホイールモータは、ホイール内部にモータとインバータとブレーキとを一体として搭載することも可能である。
【0039】
第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2を、インホイールモータを含む電動駆動系に接続する際には、これらの電力供給経路の故障を共通要因とする共通要因故障(CFF)が、電動駆動系に発生しないように考慮する必要がある。電動駆動系の故障とは、駆動力又は回生制動力を全く発生できない故障モードを含む。更に、電動駆動系の故障とは、右車輪又は左車輪のみが駆動力又は回生制動力を発生できるが、反対側の車輪では駆動力又は回生制動力を発生できない故障モード、いわゆる「片効き」が発生する故障モードを含む。
【0040】
図9及び図10に示す場合においても、全車輪のうちの少なくとも4輪について、図4及び図5に示すような電動ブレーキECUへの電力供給経路の接続方法と同様の接続方法を採用すればよい。すなわち、冗長化された電力供給経路20-1、20-2が必ず左右両側の少なくとも1輪以上(全車輪の半数が最適)の車輪のインホイールモータに接続している場合には、電力供給経路20-1、20-2の何れかの故障により「片効き」が発生することはない。
【0041】
このように、実施例3の電力供給網1では、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2のそれぞれが、車両の少なくとも1つの右車輪用のインホイールモータと、車両の少なくとも1つの左車輪用のインホイールモータとに接続される。これにより、実施例3の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障しても、「片効き」の発生を防止することができる。更に、実施例3の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障し、左右の車輪の駆動及び制動のトルクに差(具体的には外側の車輪のトルクを内側の車輪のトルクよりも大きくする)を持たせて旋回し易くすることができる。これは、更にステアリングが故障しても、インホイールによって旋回可能であることを意味する。したがって、実施例3の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障しても、ブレーキ動作及びステアリング動作を継続することができる。よって、実施例3の電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0042】
なお、図22に示す実施例12において後述するように、補機駆動用電源の故障時には、インホイールモータの一部をバックアップの電力源として活用することも可能である。
【0043】
[実施例4]
図11は、車両後部の負荷が多い場合に好適な電力供給網1を示す図である。
【0044】
電力源100-1(電力変換装置101)の出力電力は、ECU200-1を経由して第1電力供給経路20-1に供給される。第1電力供給経路20-1は、重要負荷41-1であるステアリング装置(ステアリングECU200-5)と、重要負荷41-2である自動運転制御装置(自動運転ECU200-6)とに、ダイオードORを介して接続される。更に、第1電力供給経路20-1は、重要負荷42-1である右前の電動ブレーキECU200-7と、重要負荷42-3である左前の電動ブレーキECU200-9とに接続される。更に、第1電力供給経路20-1は、ECU200-3を介して、車両後部の負荷40-1に接続される。更に、第1電力供給経路20-1は、ECU200-1内の開閉器SW0を介して、第2電力供給経路20-2に接続される。
【0045】
第2電力供給経路20-2は、ECU200-2を経由して電力源100-2(2次電池102)に接続される。更に、第2電力供給経路20-2は、ECU200-4を介して、重要負荷42-2である右後の電動ブレーキECU200-8と、重要負荷42-4である左後の電動ブレーキECU200-10とに接続される。更に、第2電力供給経路20-2は、ECU200-4を介して、車両後部の負荷40-n1に接続される。
【0046】
第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2が正常である場合、図1と同様に、開閉器SW0が閉じられる。第1電力供給経路20-1にある電力源100-1(電力変換装置101)の出力電力は、開閉器SW0を経由して、電力源100-2(2次電池102)を含む第2電力供給経路20-2に供給される。電力源100-2(2次電池102)は、電力源100-1(電力変換装置101)の出力電力により充電される。
【0047】
第1電力供給経路20-1又は第2電力供給経路20-2が異常である場合、図2及び図3と同様に、開閉器SW0は開かれる。第1電力供給経路20-1と第2電力供給経路20-2とは、互いに独立した個別の電力供給経路として動作する。
【0048】
このように、実施例4の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2のそれぞれが、車両のステアリング装置に接続される。これにより、実施例4の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障しても、ステアリング動作を継続することができる。更に、実施例4の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2のそれぞれが、車両の自動運転制御装置に接続される。これにより、実施例4の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障しても、自動運転の制御動作を継続することができる。よって、実施例4の電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0049】
[実施例5]
図12は、車両後部の負荷が少ない場合に好適な電力供給網1を示す図である。
【0050】
図11に示す実施例4では車両後部の負荷が多いので、ECU200-3及びECU200-4に車両後部の負荷40-1~40-n1を接続していた。図12に示す実施例5では、車両後部の負荷が少ないので、ECU200-4のみに車両後部の負荷40-1~40-n2(n1>n2)を接続している。その他は、図11に示す実施例4と同様である。
【0051】
実施例5の電力供給網1は、車両後部の負荷が少ない比較的小型な車両においてECU200-3を省略できる分、電力分配を司るECUの数を減らせるので、車格に合わせてコストを下げることが可能となる。なお、車両後部のECU200-4は車両後部の左部ではなく中央部に設置するのが望ましい。
【0052】
[実施例6]
図13は、2重化された電力供給経路が対角線上の車輪のブレーキ装置に接続される電力供給網1を示す図である。
【0053】
第1電力供給経路20-1は、ECU200-1を経由して右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と、ECU200-3を経由して左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とに接続される。第2電力供給経路20-2は、ECU200-2を経由して左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)と、ECU200-4を経由して右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)とに接続される。
【0054】
実施例6の電力供給網1では、図4に示す実施例2と同様に、第1電力供給経路20-1に故障が発生して電力供給ができなくなった場合には、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とが動作しなくなり、ブレーキ力を発生できなくなる。しかしながら、第2電力供給経路20-2が正常であれば、左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)と右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)とは正常に動作するので、「片効き」が発生することはない。また同様に、第2電力供給経路20-2に故障が発生して電力供給ができなくなった場合には、左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)と右後の電動ブレーキECU200-8(重要負荷42-2)とが動作しなくなり、ブレーキ力を発生できなくなる。しかしながら、第1電力供給経路20-1が正常であれば、右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左後の電動ブレーキECU200-10(重要負荷42-4)とは正常に動作するので、「片効き」が発生することはない。
【0055】
したがって、実施例6の電力供給網1では、図4に示す実施例2と同様に、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障しても、「片効き」の発生を防止することができるので、ブレーキ動作を継続することができる。よって、実施例6の電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0056】
[実施例7]
図14は、前輪ブレーキ装置への電力供給を強化してダイオードにより2重化された電力供給網1を示す図である。
【0057】
右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)は、ダイオードORを介して、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2に接続される。左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)は、ダイオードORを介して、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2に接続される。右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)、及び、左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)のそれぞれには、第1電力供給経路20-1からはECU200-1を経由して、第2電力供給経路20-2からはECU200-2を経由して電力が供給される。
【0058】
これにより、実施例7の電力供給網1は、第1電力供給経路20-1及び第2電力供給経路20-2の何れかが故障しても、後輪よりも荷重が加わる前輪に設けられた右前の電動ブレーキECU200-7(重要負荷42-1)と左前の電動ブレーキECU200-9(重要負荷42-3)とを確実に動作させることが可能となる。よって、実施例7の電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0059】
[実施例8]
図15は、ECU200-1、200-2の構成を示す図である。
【0060】
ECU200-1は、電力源100-1(電力変換装置101)からの電力を、スイッチSW11~SW1m及び電流センサ(シャント抵抗)rs11~rs1mを経由して、第1電力供給経路20-1に供給する。更に、ECU200-1は、電力源100-1(電力変換装置101)からの電力を、開閉器SW0及び電流センサ(シャント抵抗)rs0を経由して、ECU200-2に電力を供給する。
【0061】
ECU200-1は、制御機能210-1を有する。制御機能210-1は、入力電圧Vi1、及び、出力電圧Vo0、Vo11~Vo1mを監視する。更に、制御機能210-1は、電流センサ(シャント抵抗)rs0、rs11~rs1mによって出力電流I0、I11~I1mを監視する。そして、制御機能210-1は、過電圧(入力電圧が閾値よりも高い)時、電圧低下(入力電圧が閾値よりも低い)時、過電流(出力電流が閾値よりも大きい、出力電圧が閾値よりも低い)時には、当該スイッチSW11~SW1m及び開閉器SW0を開いて(オフにして)電流を遮断する。
【0062】
ECU200-2は、電力源100-2(2次電池102)からの電力、及び、ECU200-1からの電力を、スイッチSW21~SW2n及び電流センサ(シャント抵抗)rs21~rs2nを経由して、第2電力供給経路20-2に供給する。
【0063】
ECU200-2は、制御機能210-2を有する。制御機能210-2は、入力電圧Vi2、及び、出力電圧Vo21~Vo2nを監視する。更に、制御機能210-2は、電流センサ(シャント抵抗)rs21~rs2nによって出力電流I21~I2nを監視する。そして、制御機能210-2は、過電圧(入力電圧が閾値よりも高い)時、電圧低下(入力電圧が閾値よりも低い)時、過電流(出力電流が閾値よりも大きい、出力電圧が閾値よりも低い)時には、当該スイッチSW21~SW2nを開いて(オフにして)電流を遮断する。
【0064】
また、ECU200-1及びECU200-2の何れにおいても、上記の過電圧、電圧低下及び過電流が検出されていない場合、ECU200-1の制御機能210-1は、開閉器SW0を閉じる(オンにする)。制御機能210-1は、第1電力供給経路20-1と第2電力供給経路20-2とを電気的に接続して電力源100-1(電力変換装置101)からの電力により電力源100-2(2次電池102)を充電することができる。
【0065】
ECU200-1及びECU200-2の何れかにおいて、上記の過電圧、電圧低下又は過電流が検出された場合、制御機能210-1は、開閉器SW0を開く(オフにする)。制御機能210-1は、第1電力供給経路20-1と第2電力供給経路20-2とを電気的に切り離して、それぞれを独立した電力供給経路として動作させることができる。
【0066】
[実施例9]
図16は、ECU200-3内の制御機能210-3へ電力を供給する電力線50-1、50-2の接続例を示す図である。図17は、ECU200-3内の制御機能210-3へ電力を供給する電力線50-1、50-2の接続例を示す図である。
【0067】
図16では、ECU200-3に接続される負荷40-1~40-nへ電力を供給するために、電力線50-1に加えて電力線50-2が、ダイオードORを介してECU200-3内の制御機能210-3に接続される。更に、ECU200-3から負荷40-1~40-nへの出力電力が流れる電力線に接続されるプルアップ抵抗Rpuに対して、電力線50-1に加えて別の電力線50-2が、ダイオードORを介して接続される。図16に示す電力線50-1及び電力線50-2のそれぞれは、第1電力供給経路20-1の一部である。
【0068】
これにより、実施例9の電力供給網1では、負荷40-1~40-nにおいて過電流又は短絡が発生して電力線50-1が遮断されても別の電力線50-2によって制御機能210-3の動作を継続することができる。したがって、実施例9の電力供給網1では、制御機能210-3が負荷40-1~40-nのうちから過電流又は短絡が発生した負荷を特定し、当該負荷へのスイッチSWを遮断した後、電力線50-1を再度開通させればよいので、復旧までの所要時間を短縮することができる。
【0069】
更に、実施例9の電力供給網1では、上記のプルアップ抵抗Rpuに対して、電力線50-1に加えて別の電力線50-2が電力を供給するので、より迅速に過電流又は短絡が発生した負荷を特定することができる。したがって、実施例9の電力供給網1は、復旧までの所要時間を更に短縮することができる。
【0070】
また、図17に示すように、電力線50-2は、電力線50-1とは別のECU200-2から延びてECU200-3に接続されてもよい。これにより、電力線50-1と電力線50-2とが同時に故障することを防ぐことができる。図17に示す電力線50-1は第1電力供給経路20-1の一部であり、図17に示す電力線50-2は第2電力供給経路20-2の一部である。
【0071】
[実施例10]
図18は、電力変換装置103の構成を示す図である。図19(a)は、図18に示す電力変換装置103の通常時の動作例を示す図である。図19(b)は、図18に示す電力変換装置103のDC/DC動作時の動作例を示す図である。図19(c)は、図18に示す電力変換装置103の高電圧インバータ110の1相が故障時の動作例を示す図である。
【0072】
実施例10の電力供給網1は、図1に示す電力変換装置101とは異なる電力変換装置(DC/DCコンバータ)103を備えてもよい。電力変換装置103は、主機駆動用電源に接続される第1インバータである高電圧インバータ(HV INV)110を備える。更に、電力変換装置103は、第1電力供給経路20-1(又は第2電力供給経路20-2)に接続される第2インバータである低電圧インバータ(LV INV)130を備える。更に、電力変換装置103は、モータ150を備える。モータ150は、駆動輪に機械的に接続され、駆動輪を回転させる。モータ150は、ジェネレータの機能を含む。
【0073】
モータ150は、第1インバータである高電圧インバータ110に接続される第1巻線である高電圧巻線120U、120V、120W、及び、第2インバータである低電圧インバータ130に接続される第2巻線である低電圧巻線140U、140V、140Wを有する。高電圧巻線120U、120V、120W、及び、低電圧巻線140U、140V、140Wは、図18に示すようにY結線によって結線されていてもよいし、Δ結線によって結線されていてもよい。高電圧巻線120U、120V、120W、及び、低電圧巻線140U、140V、140Wは、印加される電圧に応じて巻数が異なるが、タップ付きの単一の巻線ではなく、それぞれが絶縁された巻線である。
【0074】
電力変換装置103は、電力変換装置103の上位制御装置からのトルク指令に応じて動作する。トルク指令は、モータ150から所望のトルクが出力されるよう、電力変換装置103の動作を制御する制御指令である。トルク指令は、第1インバータである高電圧インバータ110への制御指令である第1トルク指令と、第2インバータである低電圧インバータ130への制御指令である第2トルク指令と、を含む。電力変換装置103は、図19(a)~図19(c)に示すように、少なくとも3つの動作モードによって動作する。
【0075】
通常時、電力変換装置103は、主機駆動用電源100-0からの直流電力を交流電力に変換してモータ150を駆動する主機駆動用電力変換器として動作する。具体的には、電力変換装置103には、図19(a)に示すように、モータ150に接続される駆動輪を所定回転数又は所定トルクによって回転させるためにモータ150が出力するべき所定トルク(「駆動トルク」とも称する)を指示する第1トルク指令が与えられる。電力変換装置103には、図19(a)に示すように、第2トルク指令が与えられない(或いは、トルク値がゼロを指示する第2トルク指令が与えられる)。高電圧インバータ110は、第1トルク指令に応じて動作し、高電圧巻線120U、120V、120Wに交流電力を供給してモータ150を駆動する。低電圧インバータ130は、動作しない。これにより、電力変換装置103は、通常時、高電圧インバータ110のみが動作して、所定トルクを出力するようモータ150を駆動することができる。なお、電力変換装置103は、通常時において、車両が減速する場合にモータ150を回生制動させる動作を行うことができる。
【0076】
DC/DC動作時、電力変換装置103は、モータ150の高電圧巻線120U、120V、120W、及び、低電圧巻線140U、140V、140Wを利用して、高電圧から低電圧に変換するDC/DCコンバータとして動作する。具体的には、電力変換装置103には、図19(b)に示すように、モータ150を回生制動させる負の第2トルク指令が与えられる。更に、電力変換装置103には、モータ150が出力するべき所定トルクに、当該第2トルク指令分を加えた第1トルク指令が与えられる。高電圧インバータ110は、当該第1トルク指令に応じて動作し、高電圧巻線120U、120V、120Wに交流電力を供給してモータ150を駆動する。低電圧インバータ130は、当該第2トルク指令に応じて動作し、低電圧巻線140U、140V、140Wから交流電力を回収する。低電圧インバータ130は、回収された交流電力を直流電力に変換して、第1電力供給経路20-1(又は第2電力供給経路20-2)に供給する。これにより、電力変換装置103は、所定トルクを出力するようモータ150を駆動しながら、第2トルク指令分の電力を高電圧から低電圧への電力変換に利用することができる。
【0077】
高電圧インバータ110の1相が故障した時、高電圧インバータ110は、電気角によっては正常な他の2相のみでモータ150を駆動できないので、モータ150の起動又は力行が不能となる。特に、モータ150が起動不能な電気角で停止してしまうと、高電圧インバータ110は、モータ150が起動できなくなる。
【0078】
高電圧インバータ110の1相が故障した時、電力変換装置103は、モータ150の起動又は力行が不能となる範囲の電気角が到来するタイミングにおいて、低電圧インバータ130によってモータ150を駆動するよう動作する。具体的には、電力変換装置103には、図19(c)に示すように、モータ150が出力するべき所定トルクを指示する第1トルク指令が与えられる。更に、電力変換装置103には、起動又は力行が不能となる範囲の電気角が到来するタイミングにおいてモータ150が出力するべき所定トルクを指示し、当該タイミング以外においてトルク値がゼロを指示する第2トルク指令が与えられる。これにより、電力変換装置103は、高電圧インバータ110の1相が故障してモータ150の起動又は力行が不能となる範囲の電気角が到来しても、モータ150の起動又は力行の動作を継続することができる。
【0079】
このように、実施例10の電力供給網1は、モータ150を含む電動駆動系の故障時の動作継続性を実現することができる。特に、実施例10の電力供給網1は、図19(b)及び図19(c)を用いて説明したように、通常のDC/DCコンバータの故障に対応した冗長な電力変換装置として電力変換装置103を使用することができる。これにより、実施例10の電力供給網1は、電動駆動系の故障時の動作継続性だけでなく、電力変換装置(DC/DCコンバータ)の故障時の動作継続性も確保することができる。よって、実施例10の電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0080】
なお、実施例10の変形例として、低電圧インバータ130(第2インバータ)は、第2電力供給経路20-2(又は第1電力供給経路20-1)を介して補機駆動用電源に接続されてもよい。すなわち、実施例10の変形例に係る電力変換装置103は、主機駆動用電源に接続される高電圧インバータ110(第1インバータ)と、補機駆動用電源に接続される低電圧インバータ130(第2インバータ)と、モータ150と、を備えていてもよい。そして、実施例10の変形例に係る電力変換装置103は、上記の図19(a)~図19(c)を用いて説明したような動作モードによって動作してもよい。これにより、実施例10の変形例に係る電力供給網1においても、通常のDC/DCコンバータの故障に対応した冗長な電力変換装置として電力変換装置103を使用することができ、電動駆動系の故障時の動作継続性だけでなく、電力変換装置(DC/DCコンバータ)の故障時の動作継続性も確保することができる。よって、実施例10の変形例に係る電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0081】
[実施例11]
図20は、第1電力供給経路20-1の電力源100-1として図18に示す電力変換装置103を有する電力供給網1を示す図である。図21は、第2電力供給経路20-2の電力源100-2として図18に示す電力変換装置103を有する電力供給網1を示す図である。
【0082】
図20に示す実施例11の電力供給網1は、図11に示す実施例4の電力供給網1が備える通常の電力変換装置101の代わりに、図18に示す電力変換装置103を備えている。これにより、図20に示す実施例11の電力供給網1は、通常の電力変換装置101を不要とすることができると共に、モータ150を含む電動駆動系の故障時の動作継続性を確保することができる。
【0083】
図21に示す実施例11の電力供給網1は、図11に示す実施例4の電力供給網1が備える2次電池102の代わりに、図18に示す電力変換装置103を備えている。これにより、図21に示す実施例11の電力供給網1は、電力供給経路20-1、20-2の異常時に、第1電力供給経路20-1は電力変換装置101を電力源100-1とし、第2電力供給経路20-2は電力変換装置103を電力源100-2として、それぞれを独立した冗長な電力供給経路として動作させることができる。更に、図21に示す実施例11の電力供給網1は、2次電池102を充電する必要がないので、開閉器SW0は常時開くか、不要とすることができる。
【0084】
[実施例12]
図22は、インホイールモータの一部が補機駆動用の電力源として使用される電力供給網1を示す図である。
【0085】
実施例12の電力供給網1では、補機駆動用電源の故障時に、インホイールモータの一部をバックアップの補機駆動用の電力源として活用する。但し、駆動トルクの左右のバランスの見地から、左右において同じ車輪数のインホイールモータを補機駆動用の電力源として活用するのが望ましい。
【0086】
実施例12の電力供給網1では、インホイールモータの一部が、補機駆動用電源(例えば12/24/36/48V系)に接続される第2電力供給経路20-2(又は第1電力供給経路20-1)に接続される。他のインホイールモータが、主機駆動用電源(数百V系)に接続される。
【0087】
実施例12の電力供給網1では、走行中に補機駆動用電源が異常となった場合には、次のように動作する。すなわち、補機駆動用電源に接続される第2電力供給経路20-2(又は第1電力供給経路20-1)に接続されるインホイールモータには、当該インホイールモータを回生制動させる負の第2トルク指令が与えられる。補機駆動用電源に接続される当該インホイールモータは、当該第2トルク指令に応じて動作する。主機駆動用電源に接続されるインホイールモータには、所定トルクに当該第2トルク指令分を加えた第1トルク指令が与えられる。主機駆動用電源に接続される当該インホイールモータは、当該第1トルク指令に応じて動作する。これにより、補機駆動用電源に接続される第2電力供給経路20-2(又は第1電力供給経路20-1)に接続されるインホイールモータは、回生制動による電力を発生させ、第2電力供給経路20-2(又は第1電力供給経路20-1)に供給することができる。
【0088】
更に、図22を用いて具体的に説明すると、右前のインホイールモータ200’-7(重要負荷42’-1)と左前のインホイールモータ200’-9(重要負荷42’-3)とは、第2電力供給経路20-2に接続される。図22に示す実施例12の電力供給網1は、電力供給経路20-1、20-2の異常時に、第1電力供給経路20-1は電力変換装置101を電力源100-1とし、第2電力供給経路20-2は右前のインホイールモータ200’-7と左前のインホイールモータ200’-9とを電力源として、それぞれを独立した冗長な電力供給経路として動作させることができる。これにより、実施例12の電力供給網1は、補機駆動用電源の故障時の動作継続性を確保することができる。よって、実施例12の電力供給網1は、電力供給機能の冗長性を簡易な構成によって実現し、故障時の動作継続性を確保することができる。
【0089】
なお、図22では、右前のインホイールモータ200’-7(重要負荷42’-1)と左前のインホイールモータ200’-9(重要負荷42’-3)とを第2電力供給経路20-2に接続した。しかしながら、実施例12の電力供給網1は、任意のインホイールモータを第2電力供給経路20-2(又は第1電力供給経路20-1)に接続することができる。
【0090】
また、図18に示す実施例10の電力供給網1では、高電圧巻線120U、120V、120Wと低電圧巻線140U、140V、140Wとが電磁的に結合しているので、停車時(モータ150の静止時)であっても、電力を供給することが可能である。しかしながら、実施例12の電力供給網1では、主機駆動用電源に接続されるインホイールモータと補機駆動用電源に接続されるインホイールモータとの間は、路面を介して機械的に結合されているだけなので、車両が走行していないと電力を供給することができない。したがって、実施例12の電力供給網1では、補機駆動用電源に接続されるインホイールモータから停車時にも電力を供給可能とするために2次電池を併用することも考えられる。
【0091】
また、図21に示す実施例11及び図22に示す実施例12の電力供給網1では、補機駆動用の電力源として2次電池102を不要とすることができる。但し、通常は、主機駆動用高電圧2次電池は、車両を使用しないときには安全のために高電圧コンタクタを開いて、車両を使用するときには補機駆動用電源によって高電圧コンタクタを閉じることが多い。このような場合、補機駆動用の電力源として2次電池102の代わりに、2次電池102より小規模な電源であって、高電圧コンタクタを開閉するために必要な電力を供給可能な電源を用意すればよい。
【0092】
[その他]
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0093】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0094】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…電力供給網、20-1…第1電力供給経路、20-2…第2電力供給経路、40-1~40-n2、41-1、41-2、42-1~42-n+1、42’-1~42’-n+1…負荷、100-0…主機駆動用電源、101、103…電力変換装置、102…2次電池、110…高電圧インバータ(第1インバータ)、120U、120V、120W…高電圧巻線(第1巻線)、130…低電圧インバータ(第2インバータ)、140U、140V、140W…低電圧巻線(第2巻線)、150…モータ、200-5…ステアリングECU(ステアリング装置)、200-6…自動運転ECU(自動運転制御装置)、200-7~200-m+1…電動ブレーキECU(ブレーキ装置)、200’-7~200’-m+1…インホイールモータ、SW0…開閉器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22