IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ・コンプレッサ株式会社の特許一覧

特開2024-30252空気圧縮機の性能試験システムおよびエネルギー回収方法
<>
  • 特開-空気圧縮機の性能試験システムおよびエネルギー回収方法 図1
  • 特開-空気圧縮機の性能試験システムおよびエネルギー回収方法 図2
  • 特開-空気圧縮機の性能試験システムおよびエネルギー回収方法 図3
  • 特開-空気圧縮機の性能試験システムおよびエネルギー回収方法 図4
  • 特開-空気圧縮機の性能試験システムおよびエネルギー回収方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030252
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】空気圧縮機の性能試験システムおよびエネルギー回収方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
F04B51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132980
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】壷井 昇
(72)【発明者】
【氏名】中村 元
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA12
3H145AA26
3H145AA41
3H145CA09
3H145FA03
3H145FA12
(57)【要約】
【課題】 空気圧縮機の性能試験システムにおけるエネルギー効率を向上させる。
【解決手段】 性能試験システム100が、空気圧縮機9の出口9cと接続可能であって空気圧縮機9により生成される圧縮空気が流れる流入ライン10と、流入ライン10内の圧縮空気の圧力P1を空気圧縮機9の定格圧力に調整する圧力調整弁14と、流入ライン10内の圧縮空気に基づいて空気圧縮機9の性能を測定する性能測定装置13と、流入ライン10の下流端と接続されて圧縮空気を貯留する蓄圧タンク21と、蓄圧タンク21と接続される流出ライン20と、流出ライン20上に介在して蓄圧タンク21からの圧縮空気により駆動される膨張機23と、膨張機23により駆動される発電機24と、膨張機23および発電機24の回転数を制御する回転数制御器25と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧縮機が設置される設置部と、
前記設置部に設置された前記空気圧縮機の出口と接続可能な上流端を有し、前記空気圧縮機により生成される圧縮空気が流れるタンク流入ラインと、
前記タンク流入ライン内の前記圧縮空気の圧力を前記空気圧縮機の定格圧力に調整する圧力調整弁と、
前記タンク流入ライン内の前記圧縮空気に基づいて前記空気圧縮機の性能を測定する性能測定装置と、
前記タンク流入ラインの下流端と接続されるタンク入口を有し、前記圧縮空気を貯留する蓄圧タンクと、
前記蓄圧タンクのタンク出口と接続される上流端を有し、前記蓄圧タンクからの前記圧縮空気が流れるタンク流出ラインと、
前記流出ライン上に介在し、前記圧縮空気により駆動されて前記圧縮空気を膨張させる膨張機と、
前記膨張機により駆動される発電機と、
前記膨張機および前記発電機の回転数を制御する回転数制御器と、
を備える、空気圧縮機の性能試験システム。
【請求項2】
前記膨張機は、前記圧縮空気を膨張させると共に降温させ、
前記タンク流出ラインが、空調用の送風口と接続される、
請求項1に記載の空気圧縮機の性能試験システム。
【請求項3】
前記タンク流出ライン上で前記蓄圧タンクと前記膨張機との間に設けられ、前記蓄圧タンクからの前記圧縮空気の圧力または温度に応じて前記圧縮空気を減圧する減圧弁を更に備える、
請求項2に記載の空気圧縮機の性能試験システム。
【請求項4】
前記膨張機が、第1膨張機と、前記第1膨張機に対して前記タンク流出ラインの下流側に設けられた第2膨張機とを含み、
前記回転数制御器が、前記第1膨張機および前記第2膨張機の膨張比が同一となるようにして、前記第1膨張器の回転数と前記第2膨張器の回転数とを制御する、
請求項1に記載の空気圧縮機の性能試験システム。
【請求項5】
前記タンク流出ライン上で前記第1膨張機と前記第2膨張機との間に設けられ、前記第1膨張機から排出されて前記第2膨張機に供給されるエアを加熱する加熱器を更に備える、
請求項4に記載の空気圧縮機の性能試験システム。
【請求項6】
前記空気圧縮機は、ロータ、および前記ロータを回転駆動するアクチュエータを有し、
前記空気圧縮機の前記アクチュエータが、前記発電機により発生された電力に基づいて作動する、
請求項1に記載の空気圧縮機の性能試験システム。
【請求項7】
前記設置部、および前記タンク流入ラインの前記上流端が、複数設けられ、
前記複数の上流端が、前記複数の設置部それぞれに設置される前記空気圧縮機の前記出口それぞれと接続可能である、
請求項1に記載の空気圧縮機の性能試験システム。
【請求項8】
空気圧縮機により生成される圧縮空気の圧力が定格圧力となるようにして前記空気圧縮機を運転し、前記圧縮空気に基づいて前記空気圧縮機の性能を測定することと、
前記空気圧縮機により生成された前記圧縮空気を蓄圧タンクで貯留することと、
前記蓄圧タンクからの前記圧縮空気で膨張機を駆動し、前記膨張機で発電機を駆動することと、
前記膨張機および前記発電機の回転数を制御することと、
を備える、空気圧縮機の性能試験システムにおけるエネルギー回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機の性能試験システム、および当該システムにおけるエネルギー回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、空気圧縮機の性能試験を行うシステムを開示している。圧縮空気の圧力が所定値以下であると、性能試験中に空気圧縮機で生成された圧縮空気を有効活用すべく、圧縮空気が、工場空気源ラインに誘導され、工場内の産業機器に供給される。圧縮空気の圧力が所定値を超えていると、産業機器を保護すべく、圧縮空気は、排出口に誘導され、大気へ放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-337081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムにおいては、圧縮空気が、高いエネルギーを有していると逆に、大気に放出されてしまう。よって、エネルギー回収効率に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、空気圧縮機の性能試験システムからのエネルギー回収効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、空気圧縮機が設置される設置部と、前記設置部に設置された前記空気圧縮機の出口と接続可能な上流端を有し、前記空気圧縮機により生成される圧縮空気が流れるタンク流入ラインと、前記タンク流入ライン上に設けられ、前記圧縮空気の圧力を前記空気圧縮機の定格圧力に調整する圧力調整弁と、前記タンク流入ライン上に設けられ、前記圧縮空気に基づいて前記空気圧縮機の性能を測定する性能測定装置と、前記タンク流入ラインの下流端と接続されるタンク入口を有し、前記圧縮空気を貯留する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクのタンク出口と接続される上流端を有し、前記蓄圧タンクからの前記圧縮空気が流れるタンク流出ラインと、前記タンク流出ライン上に介在し、前記圧縮空気により駆動されて前記圧縮空気を膨張させる膨張機と、前記膨張機により駆動される発電機と、前記膨張機および前記発電機の回転数を制御する回転数制御器と、を備える、空気圧縮機の性能試験システムを提供する。
【0007】
上記構成によれば、空気圧縮機の性能試験に際して生成された圧縮空気が蓄圧タンクで貯留され、膨張機ひいては発電機が、蓄圧タンクに貯留されている圧縮空気により駆動される。高圧の圧縮空気からエネルギーを回収でき、空気圧縮機の性能試験システムにおけるエネルギー効率が向上する。
【0008】
前記膨張機が、前記圧縮空気を膨張させると共に降温させ、前記タンク流出ラインが、空調用の送風口と接続されてもよい。
【0009】
上記構成によれば、膨張機で降温されたエアが空調に利用されるため、空調設備の省エネルギー化を支援できる。
【0010】
空気圧縮機の性能試験システムが、前記タンク流出ライン上で前記蓄圧タンクと前記膨張機との間に設けられ、前記蓄圧タンクからの前記圧縮空気の圧力または温度に応じて前記圧縮空気を減圧する減圧弁を更に備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、膨張機での圧力降下量ひいては温度低下量を減圧弁で調整でき、膨張機から排出されるエアの温度を空調に適した温度に調整可能になる。
【0012】
前記膨張機が、第1膨張機と、前記第1膨張機に対して前記タンク流出ラインの下流側に設けられた第2膨張機とを含み、前記回転数制御器が、前記第1膨張機および前記第2膨張機の膨張比が同一となるようにして、前記第1膨張器の回転数と前記第2膨張器の回転数とを制御してもよい。
【0013】
上記構成によれば、膨張機を2段式で構成し、2つの膨張機の膨張比が互いに同一となるように調整されるため、エネルギー回収効率が向上する。
【0014】
空気圧縮機の性能試験システムが、前記タンク流出ライン上で前記第1膨張機と前記第2膨張機との間に設けられ、前記第1膨張機から排出されて前記第2膨張機に供給されるエアを加熱する加熱器を更に備えてもよい。
【0015】
上記構成によれば、第1膨張機で降温されたエアが加熱され、加熱されたエアが第2膨張機に供給されるので、第2膨張機から排出されるエアを適温に調整できる。また、発電機で回収される電力量が増加するため、エネルギー回収効率が向上する。
【0016】
前記空気圧縮機が、ロータ、および前記ロータを回転駆動するアクチュエータを有し、前記空気圧縮機の前記アクチュエータが、前記発電機により発生された電力に基づいて作動してもよい。
【0017】
上記構成によれば、性能試験の実行に必要とされる電力が、圧縮空気から回生された電力で賄われるため、空気圧縮機の性能試験システムの省エネルギー化が実現される。
【0018】
前記設置部、および前記タンク流入ラインの前記上流端が、複数設けられ、前記複数の上流端が、前記複数の設置部それぞれに設置される前記空気圧縮機の前記出口それぞれと接続可能であってもよい。
【0019】
上記構成によれば、複数台の空気圧縮機の性能試験を同時並行可能な性能試験システムにおいて、各空気圧縮機で生成された圧縮空気を蓄圧タンクで貯留でき、発電に有効活用できる。
【0020】
本発明の第2の態様は、空気圧縮機により生成される圧縮空気の圧力が定格圧力となるようにして前記空気圧縮機を駆動し、前記圧縮空気に基づいて前記空気圧縮機の性能を測定することと、前記空気圧縮機により生成された前記圧縮空気を蓄圧タンクで貯留することと、前記蓄圧タンクからの前記圧縮空気で膨張機を駆動し、前記膨張機で発電機を駆動することと、前記膨張機および前記発電機の回転数を制御することと、を備える、空気圧縮機の性能試験システムにおけるエネルギー回収方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、空気圧縮機の性能試験システムにおけるエネルギー効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る空気圧縮機の性能試験システムを示す概念図。
図2】第1実施形態に係る膨張機の作用を示すモリエル線図。
図3】本発明の第2実施形態に係る空気圧縮機の性能試験システムを示す概念図。
図4】第2実施形態に係る膨張機の作用を示すモリエル線図。
図5】本発明の第3実施形態に係る空気圧縮機の性能試験システムを示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。同一のまたは対応する要素には同一の参照符号を付し、説明の重複を省略する。
【0024】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る性能試験システム100は、例えば、空気圧縮機9の製造工場内に導入され、当該製造工場で製造された未出荷の空気圧縮機9の性能を試験する。
【0025】
性能試験システム100は、性能試験部1およびエネルギー回収部2を有する。性能試験部1は、国際規格あるいは日本産業規格等の所定規格に従って空気圧縮機9の性能試験を行う。エネルギー回収部2は、性能試験部1に付加されている。エネルギー回収部2は、性能試験中に空気圧縮機9により生成された圧縮空気のエネルギーを回収し、回収されたエネルギーを電力のような他のエネルギーに変換して再利用可能にする。
【0026】
性能試験部1は、設置部11、冷却器12、性能測定装置13、圧力調整弁14、およびタンク流入ライン10を有する。エネルギー回収部2は、蓄圧タンク21、圧力調整弁22、膨張機23、発電機24、回転数制御器25、およびタンク流出ライン20を有する。
【0027】
性能試験の対象とされる空気圧縮機9は、設置部11に設置される。試験済の空気圧縮機9は設置部11から移送され、次の試験対象の空気圧縮機9が設置部11に移送される。以下では、空気圧縮機9が設置部11に設置されている状態を「設置状態」という。空気圧縮機9の形式は、軸流式ターボ形に限定されず、遠心式ターボ形でもよく容積形でもよい。
【0028】
空気圧縮機9は、ケーシング9a、入口9b、出口9c、ロータ9d、およびアクチュエータ9eを有する。アクチュエータ9eは、例えば電気モータである。アクチュエータ9eは、ロータ9dを回転駆動する。これにより、空気圧縮機9は、入口9bを介してケーシング9a内に導入されたエアを圧縮し、出口9bを介して圧縮空気をケーシング9a外へ排出する。
【0029】
タンク流入ライン10の上流端は、設置状態にある空気圧縮機9の出口9cと接続可能である。タンク流入ライン10の上流端部は、例えば、可撓性を有するホースで構成される。空気圧縮機9が設置部11に移送されると、作業員が、タンク流入ライン10の上流端を空気圧縮機9の出口9cに接続する。空気圧縮機9で生成された圧縮空気は、タンク流入ライン10を流れる。性能試験の終了後、作業員が、タンク流入ライン10の上流端を出口9cから取り外す。
【0030】
冷却器12、性能測定装置13、および圧力調整弁14は、空気圧縮機9から見てこの順番で、タンク流入ライン10上に設けられる。冷却器12は、タンク流入ライン10を流れる圧縮空気を冷却する。圧力調整弁14は、空気圧縮機9により生成される圧縮空気の圧力P1が空気圧縮機9の定格圧力となるように圧縮空気の圧力P1を調整する。定格圧力は、定められた条件下で空気圧縮機9の性能を保証できる最大圧力である。性能測定装置13は、生成された圧縮空気に基づいて規格に従って空気圧縮機9の性能を測定する。
【0031】
蓄圧タンク21は、タンク入口21aおよびタンク出口21bを有する。タンク流入ライン10の下流端が、タンク入口21aに接続される。性能測定装置13および圧力調整弁14を通過した圧縮空気が、蓄圧タンク21内へ供給され、蓄圧タンク21内に貯留される。圧縮空気の圧力は、性能測定装置13および圧力調整弁14を通過する過程で低下する。蓄圧タンク21内の圧縮空気の圧力(以下、タンク圧P21)は、定格圧力よりも低い。
【0032】
タンク出口21bは、タンク流出ライン20の上流端と接続される。圧力調整弁22および膨張機23は、蓄圧タンク21から見てこの順番で、タンク流出ライン20上に設けられる。タンク流出ライン20は、蓄圧タンク21から膨張機23までの膨張機供給ライン20aと、膨張機23から延びる膨張機排出ライン20bとに分けることができる。膨張機供給ライン20aは、圧力調整弁22の上流側の一次圧ライン20a1と、圧力調整弁22に対して下流側の二次圧ライン20a2とに分けることができる。
【0033】
圧力調整弁22は、蓄圧タンク21からの圧縮空気を減圧し、膨張機23に供給される圧縮空気の圧力を調整する。本実施形態では、膨張機23は容積形(スクリュ式)であるが、回転式の任意の形式が採用され得る。膨張機23は、入口23a、出口23b、およびロータ23cを有する。膨張機供給ライン20a(二次圧ライン20a2)の下流端が、入口23aに接続される。膨張機排出ライン20bの上流端が、出口23bに接続される。膨張機23は、入口23aを介して供給された圧縮空気を膨張させ、出口23bを介して膨張後のエアを排出する。膨張機23から排出されたエアの圧力(以下、膨張機出口圧P23b)は、大気圧付近である。また、膨張機23は、エアを膨張させると共に降温させる。
【0034】
流出ライン20(膨張機排出ライン20b)の下流端部は、空調用の送風口8aと接続される。送風口8aは、空調ダクト8bを介し、製造工場に設けられた空調設備8の室外機8cと接続されている。送風口8aは、空気圧縮機9の製造工場の内部に開放され、製造工場内に空調されたエアを吹き出す。これにより、製造工場の内気温が適温に調整される。膨張機排出ライン20bは、例えば空調ダクト8bに接続される。膨張機23で膨張および降温されたエアは、空調用のエアとして利用される。
【0035】
膨張機23のロータ23cは、発電機24の回転軸24aと連結される。図1は、回転軸24aがロータ23cと直結される旨を略示しているが、減速機もしくは増速機が、膨張機23と発電機24との間に介在してもよい。膨張機23が作動すると、発電機24が駆動されて交流電力を発生する。
【0036】
回転数制御器25は、発電機24の単位時間当たり回転数を制御する。発電機24は膨張機23と機械的に連結されていることから、回転数制御器25は、膨張機23の発電機24に対する速比を考慮することで、発電機24の回転数の制御を通じて膨張機23の回転数を制御できる。回転数制御器25は、一例として、インバータにより実現される。
【0037】
性能試験システム100は、性能試験部1およびエネルギー回収部2の動作を制御するコントローラ3と、コントローラ3による制御に必要とされる情報を検出する各種センサ31~35とを備える。各種センサ31~35には、例えば、試験圧センサ31、タンク圧センサ32、膨張機入口圧センサ33、回転数センサ34、および温度センサ35等が含まれる。コントローラ3は、一例として、圧力調整弁14,22および回転数制御器25の動作を制御する。
【0038】
試験圧センサ31は、空気圧縮機9により生成される圧縮空気9の圧力P1を検出する。試験圧センサ31は、例えば、タンク流入ライン10のうち性能試験部1の上流側で圧力P1を検出する。タンク圧センサ32は、タンク圧P21を検出する。タンク圧センサ32は、例えば蓄圧タンク21内もしくは一次圧ライン20a1でタンク圧P21を検出する。膨張機入口圧センサ33は、膨張機23に供給される圧縮空気の圧力(以下、膨張機入口圧P23a)を検出する。膨張機入口圧センサ33は、二次圧ライン20a2で膨張機入口圧P23aを検出する。
【0039】
回転数センサ34は、発電機24および膨張機23の回転数を検出する。回転数センサ34は、ロータ23cの回転速度を検出してもよく、回転軸24aの回転速度を検出してもよく、発電機24で発生された交流の周波数を検出してもよい。これらのいずれか1つが検出されれば、コントローラ3は、膨張機23と発電機24との速比や発電機24の極数に基づいて、発電機24および膨張機23の双方の回転数を検知可能である。温度センサ35は、膨張機23から排出されたエアの温度(以下、膨張機出口温度T23b)を検出する。
【0040】
コントローラ3は、試験圧センサ31の検出結果を監視し、空気圧縮機9により生成される圧縮空気の圧力P1が定格圧力となるように圧力調整弁14を制御する。コントローラ3は、センサ32,33により検出されるタンク圧P21および膨張機入口圧P23aに基づき、膨張機入口圧P23aが所定値となるよう圧力調整弁22を制御する。コントローラ3は、回転数センサ34の検出結果を監視し、回転数が所定値で保たれるように回転数制御器25を介して回転数をフィードバック制御する。回転数制御器25の制御において、温度センサ35の検出結果が参照されてもよい。
【0041】
図2では、膨張機23の作用が、横軸に比エンタルピー(kJ/kg)をとり縦軸に絶対圧力(MPaA)をとったモリエル線図を用いて示されている。太実線が本実施形態を示し、二点鎖線が参考例を示す。破線は等エントロピー線であり、本実施形態および参考例の両方において全断熱効率ηad(一例として0.6)が考慮される。膨張機出口圧P23bは、本実施形態と参考例とで同じである。本実施形態および参考例のいずれにおいても、膨張機23の入口23aにおける圧縮空気の温度(以下、膨張機入口温度T23a)は、互いに同じであり、また、蓄圧タンク21内の圧縮空気の温度と略同じである。
【0042】
参考例では、蓄圧タンク21内の圧縮空気が、調圧あるいは減圧されずに、膨張機23の入口23aに供給される。膨張機23において、エアの圧力は、タンク圧P21から膨張機出口圧P23bまで低下する。このとき、比エンタルピーは、タンク21内の圧縮空気が持つ初期値h21から出口値h23brefまで低下する。
【0043】
膨張機23における圧力降下量ΔPrefが大きいことから(ΔPref=P23a-P23b)、比エンタルピー差Δhrefが大きくなる(Δhref=h21-h23bref)。その分、エネルギー回収量も大きくなるとも言えるが、膨張機出口温度T23brefは相当な低温となってしまう。
【0044】
単なる一例として、定格圧力が0.8MPaA、タンク圧P21および膨張機入口圧P23aが0.7MPaA、膨張機出口圧P23bが0.1MPaA、膨張機入口温度T23aが40℃である場合、参考例では、膨張機出口温度T23brefは-40.9℃となる。このため、空調用のエアとしての利用が難しい。
【0045】
これに対し、本実施形態では、圧力調整弁22が、膨張機入口圧P23aがタンク圧P21に対して低くなるように圧縮空気を減圧する。この減圧によって、圧縮空気が持つ比エンタルピーは、初期値h21から膨張機入口値h23aへと変化するが、その変化量は小さい。
【0046】
膨張機23において、エアの圧力は、膨張機入口圧P23aから膨張機出口圧P23bまで低下する。膨張機23における圧力降下量ΔPが、参考例に対して小さい。そのため、比エンタルピーの膨張機出口値h23bが、参考例よりも大きくなり、比エンタルピー差Δhは、参考例よりも小さくなる。圧縮空気から取り出されるエネルギー量が小さく、膨張機出口温度T23bは、参考例の膨張機出口温度T23refよりも高くなる。
【0047】
単なる一例として、膨張機入口圧P23aが0.2MPaAである場合、本実施形態では膨張機出口温度T23bが6℃となり、膨張機入口圧P23aが0.3MPaAである場合、本実施形態では、膨張機出口温度T23bが-11℃となる。この温度範囲であれば、空調用のエアとして好適に利用可能となり、空調設備8のエネルギー効率の向上を支援できる。
【0048】
発電機24において圧縮空気から回生される電力(kW)は、比エンタルピー差Δhと循環流量(kg/s)との積である。本システム100においては、発電機24が、タンク圧P21が高い場合でも作動する。エネルギーを回収する機会が増え、性能試験システム100のエネルギー効率が向上する。
【0049】
発電機24で発生された電力は、給電線4を介して設置状態にある空気圧縮機9のアクチュエータ9eに供給される。発電機24は、性能試験システム100において空気圧縮機9の電源の少なくとも一部として機能する。性能試験の実行に必要とされる電力が、性能試験中に生成された圧縮空気から回生された電力で賄われ、性能試験システム100の省エネルギー化を実現できる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、上記実施形態との相違を中心に、第2実施形態について説明する。
【0051】
図3を参照して、本実施形態に係る性能試験システム100のエネルギー回収部2においては、圧力調整弁22(図1を参照)が省略されている。膨張機23が、第1膨張機23Aおよび第2膨張機23Bを含み、2段式で構成されている。第2膨張機23Bは、第1膨張機23Aに対してタンク流出ライン20の下流側に設けられる。膨張機供給ライン20aの下流端部は、第1膨張機23Aの入口23Aaに接続されている。膨張機排出ライン20bの上流端部は、第2膨張機23Bの出口23Bbに接続されている。
【0052】
第1膨張機23Aの出口23Abは、中間ライン20cを介し、第2膨張機23Bの入口23Baに接続されている。エネルギー回収部2は、加熱器26を更に備える。加熱器26は、第1膨張機23Aと第2膨張機23Bとの間の中間ライン20c上に介在し、第1膨張機23Aから排出されて第2膨張機23Bに供給されるエアを加熱する。
【0053】
本実施形態では、発電機24が、第1膨張機23Aにより駆動される第1発電機24Aと、第2膨張機23Bにより駆動される第2発電機24Bとを含む。第1発電機24Aおよび第2発電機24Bは、給電線4を介して設置状態にある空気圧縮機9のアクチュエータ9eと接続可能である。発電機24は、第1実施形態と同様にして空気圧縮機9の電源として機能する。なお、第1膨張機23Aおよび第2膨張機23Bによって1つの発電機を駆動するようにしてもよい。
【0054】
回転数制御器25は、第1発電機24Aの回転数と第2発電機24Bの回転数とを制御する。そのために、回転数センサ34は、第1発電機24Aの回転数を検出する第1回転数センサ34Aと、第2発電機24Bの回転数を検出する第2回転数センサ34Bとを含む。コントローラ3は、2つの回転数センサ34A,34Bの検出結果を参照し、第1膨張機23Aの膨張比と第2膨張機23Bの膨張比とが互いに同一となるようにして、第1発電機24Aおよび第2発電機24Bの回転数ひいては第1膨張機23Aおよび第2膨張機23Bの回転数を制御する。膨張比は、膨張機入口圧P23aを膨張機出口圧P23bで除算した値の平方根である。第1膨張機23Aの出口圧且つ第2膨張機23Bの入口圧(以下、中間圧P23c)は、膨張機入口圧P23aと膨張機出口圧P23bとの積の平方根となる。
【0055】
図4では、図2と同様にして、本実施形態に係る膨張機23の作用が、参考例とともに示されている。参考例は、図2に示すものと同様である。
【0056】
本実施形態では、蓄圧タンク21内の圧縮空気が、参考例と同様に減圧されることなく膨張機23に供給される。まず、第1膨張機23Aで1段目の膨張が行われ、それにより、圧縮空気の圧力が、タンク圧P21と同等の膨張機入口圧P23aから中間圧P23cまで低下する。これにより、比エンタルピーが膨張機入口値h23aから1段目出口値h23Abまで低下し、エアの温度が膨張機入口温度T23aから1段目出口温度T23Abまで降下する。
【0057】
第1膨張機23Aから排出されたエアは、第2膨張機23Bに供給される前に、加熱器26で加熱される。これにより、エアの温度が1段目出口温度T23Abから2段目入口温度T23Baまで上昇する。温度上昇に伴い、比エンタルピーも、1段目出口値h23Abから2段目出口値h23Baまで上昇する。2段目入口温度T23Baおよび2段目入口値h23Baは、膨張機入口温度T23aおよび膨張機入口値h23aと略等しい。
【0058】
エアの加熱後、第2膨張機23Bで2段目の膨張が行われ、それにより、圧縮空気の圧力が、中間圧P23cから膨張機出口圧P23bまで低下する。これにより、比エンタルピーが2段目入口値h23Baから膨張機出口値T23Bbまで低下し、エアの温度が、2段目入口温度T23Baから膨張機出口温度T23bまで低下する。
【0059】
発電機24(第1発電機24Aおよび第2発電機24B)において発生される電力は、第1膨張機23Aにおける比エンタルピー差ΔhAと、第2膨張機23Bにおける比エンタルピー差ΔhBとの和に比例する。加熱の工程で増加されたエネルギーも回収可能となり、膨張機23全体で生じる比エンタルピー差(ΔhA+ΔhB)が、参考例の比エンタルピー差Δhrefよりも大きくなる。そのため、本実施形態において発電機24で回収される電力量は、比較例と比べて大きくなる。したがって、性能試験システム100におけるエネルギー回収効率が一層向上する。
【0060】
単なる一例として、タンク圧P21および膨張機入口圧P23aが0.7MPaA、膨張機出口圧P23bが0.1MPaA、膨張機入口温度T23aが40℃の場合、中間圧P23cは0.26MPaA、1段目出口温度T23Abが-6.9℃となる。2段目入口温度T23Baが40℃の場合、膨張機出口温度T23bが-5℃となる。この温度範囲であれば、膨張機23から排出されたエアを空調用のエアとして好適に利用できる。
【0061】
(第3実施形態)
次に、第1および第2実施形態に対する変更点を中心に、第3実施形態に係る性能試験システム100について説明する。
【0062】
図5を参照して、膨張機23が多段式である場合においても、蓄圧タンク21と膨張機23との間に圧力調整弁22が設けられていてもよい。
【0063】
蓄圧タンク21内の圧縮空気は、膨張ターボ発電機による電力回収のみならず、その他の用途で用いられてもよい。例えば、空気圧縮機9の製造設備に設けられている加工機や工作機械が空圧で駆動される場合において、蓄圧タンク21内の圧縮空気が、これら空圧機器の駆動源として機能してもよい。
【0064】
本実施形態では、その一例として、圧縮空気が、製造設備内の機械加工機59Aの計装エアとして、また、空圧式インパクトレンチ59Bの駆動源として利用される。性能試験システム100は、蓄圧タンク21をこれら空圧機器59A,59Bに接続する機器ライン50A,50Bを有する。蓄圧タンク21は、膨張機23用の前述したタンク出口21bとは別に、取出口21cA,21cBを有する。機器ライン50A,50Bの上流端部は、取出口23cA,23cBにそれぞれ接続され、下流端部は、空圧機器59A,59Bにそれぞれ接続される。これにより、蓄圧タンク21内の圧縮空気で製造設備内の空圧機器が駆動され、製造設備全体の省エネルギー化に貢献できる。
【0065】
この場合において、性能試験システム100は、機器ライン50A,50Bにそれぞれ介在する圧力調整弁51A,51Bを有してもよい。圧力調整弁51A,51Bの調圧機能もしくは減圧機能により、空圧機器それぞれに適した圧力のエアを空圧機器59A,59Bに供給可能となる。
【0066】
性能試験システム100の性能試験部1は、複数の設置部11を備えてもよい。この場合、設置部11が複数設けられ、タンク流入ライン10の少なくとも上流端部が、複数の空気圧縮機9それぞれに対応するように複数設けられる。本実施形態では、設置部11と同数のタンク流入ライン10が、互いに独立している。蓄圧タンク21が、複数のタンク入口を有し、複数のタンク流入ライン10の下流端部が、複数のタンク入口21aそれぞれに接続されている。ただし、タンク流入ライン10が単一の上流端部を有し、タンク流入ライン10が、蓄圧タンク21と複数の圧力調整弁14との間で分岐/集合されていてもよい。
【0067】
このように構成されると、ある設置部11で空気圧縮機9の交換作業を行っている間に、別の設置部11で性能試験を実施でき、圧縮空気が蓄圧タンク21内に絶え間なく供給されることができる。そのため、エネルギー回収部2も絶え間なく動作させることが可能となり、性能試験システム100の動作効率が高くなる。
【0068】
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜変更、追加および/または削除可能である。
【0069】
例えば、膨張機23が多段式である場合、単一の発電機が複数の膨張機により駆動されてもよい。この場合、複数の膨張機23のロータ23cの回転を発電機24の回転軸24aに入力させる動力伝達機構が設けられる。膨張機23が多段式の場合、段数は2に限定されない。
【符号の説明】
【0070】
100 性能試験システム
1 性能試験部
2 エネルギー回収部
3 コントローラ
4 給電部
8a 送風口
9 空気圧縮機
9a ケーシング
9b 入口
9c 出口
9e アクチュエータ
10 タンク流入ライン
20 タンク流出ライン
21 蓄圧タンク
22 圧力調整弁(減圧弁)
23 膨張機
23A 第1膨張機
23B 第2膨張機
24 発電機
25 回転数制御器
26 加熱器
図1
図2
図3
図4
図5