(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003026
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】検査設備システム
(51)【国際特許分類】
A61G 10/00 20060101AFI20231228BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20231228BHJP
E04H 3/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61G10/00 K
A61G12/00 U
E04H3/08 B
E04H3/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183855
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2022528846の分割
【原出願日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2020096130
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020167769
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021004272
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康彦
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友希男
(72)【発明者】
【氏名】亀山 篤
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 利彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】大内 哲志
(72)【発明者】
【氏名】三井 栄二
(72)【発明者】
【氏名】白井 竜弥
(72)【発明者】
【氏名】三井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】中西 朋也
(57)【要約】
【課題】検査設備を備えない場所において検査の一連の処理が可能である環境を構築することを簡易にする検査設備システムを提供する。
【解決手段】検査設備システムは、被検者から検体の採取および測定を行うための検査設備システムであって、検体を採取するための設備を備える採取室を形成する第1ユニット部分と、検体を測定するための設備を備える測定室を採取室と隔離して形成する第2ユニット部分と、測定の結果を出力する設備を備える第3ユニット部分とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者から検体の採取および測定を行うための検査設備システムであって、
検体を採取するための設備を備える採取室を形成する第1ユニット部分と、
前記検体を測定するための設備を備える測定室を形成する第2ユニット部分と、
測定の結果を出力する設備を備える第3ユニット部分とを備える、検査設備システム。
【請求項2】
被検者が検体を採取するための診察を受ける診察室を前記測定室と隔離して形成する第4ユニット部分をさらに備える、請求項1に記載の検査設備システム。
【請求項3】
前記第3ユニット部分は、医療従事者を収容する収容室を前記採取室と隔離して形成する、請求項1または2に記載の検査設備システム。
【請求項4】
前記第1ユニット部分は、前記検体の採取のための行為を実行可能なロボットを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の検査設備システム。
【請求項5】
前記第2ユニット部分は、前記検体の測定のための行為を実行可能なロボットを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の検査設備システム。
【請求項6】
前記第3ユニット部分によって形成される収容室に配置され、かつ、前記ロボットを操作する操作装置をさらに備え、
前記収容室は、前記採取室と隔離して形成され、医療従事者を収容する、請求項4または5に記載の検査設備システム。
【請求項7】
前記ロボットを備える前記ユニット部分の全てから離れた遠隔位置に配置され、かつ、通信手段を介して前記ロボットを遠隔操作する操作装置をさらに備える、請求項4または5に記載の検査設備システム。
【請求項8】
前記ユニット部分の少なくとも1つは、他の前記ユニット部分から分離可能である個別のユニットを形成する、請求項1~7のいずれか1項に記載の検査設備システム。
【請求項9】
前記ユニット部分は、全体として一体化され、1つのユニットを形成する、請求項1~8のいずれか1項に記載の検査設備システム。
【請求項10】
前記1つのユニットは、前記ユニット部分の全体を収容する1つのコンテナを備える、請求項9に記載の検査設備システム。
【請求項11】
前記ユニット部分が形成する前記ユニットは、組み立て式のユニットである、請求項8~10のいずれか1項に記載の検査設備システム。
【請求項12】
前記第2ユニット部分は、
前記検体に第1の測定をするための設備を備える第1測定室を前記採取室と隔離して形成する第1測定ユニット部分と、
前記検体に第2の測定をするための設備を備える第2測定室を前記採取室および前記第1測定室と隔離して形成する第2測定ユニット部分とを含み、
前記第1測定ユニット部分は、前記第1測定室を陽圧環境および陰圧環境の一方の環境にする空調システムを備え、
前記第2測定ユニット部分は、前記第2測定室を陽圧環境および陰圧環境の他方の環境にする空調システムを備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の検査設備システム。
【請求項13】
旅客輸送の移動拠点としての空港のターミナルビルに配置される、請求項1~12のいずれか1項に記載の検査設備システム。
【請求項14】
前記検体は、PCR(Polymerase Chain Reaction)検査を受ける検体であり、
前記測定は、PCR検査のための測定である、請求項1~13のいずれか1項に記載の検査設備システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査設備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平4-333782号公報は、医療施設の緊急な配置及び増設に対応するためのユニットホスピタルを開示する。ユニットホスピタルは、バイオクリーンルームが運搬可能なモジュールによって構成されるユニットを備える。当該ユニットは、他の可搬モジュールが連結されることで形成された施設モジュールと着脱自在に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、新型の病原体による感染症の流行がしばしば発生してきた。近年では、SARS、MERS及びCOVID-19等の新型のコロナウイルスに起因する感染症の流行が発生している。感染症が流行した場合、検査の需要、及び、検査を実施可能な場所の需要が増大する。例えば、COVID-19のような新型コロナウイルスの場合、ウイルスの特徴的な部分を増幅させるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応;Polymerase Chain Reaction)検査が用いられことがある。PCR検査における検体の採取から検査結果の出力までの一連の処理を実行するためには、専用の種々の設備が必要になる。このため、需要に応じた様々な場所を、PCR検査の一連の処理を可能な環境にすることは、容易ではない。
【0005】
本開示は、検査設備を備えない場所において検査の一連の処理が可能である環境を構築することを簡易にする検査設備システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面による検査設備システムは、被検者から検体の採取および測定を行うための検査設備システムであって、検体を採取するための設備を備える採取室を形成する第1ユニット部分と、検体を測定するための設備を備える測定室を採取室と隔離して形成する第2ユニット部分と、測定の結果を出力する設備を備える第3ユニット部分とを備える。
【0007】
本開示の技術によれば、検査設備を備えない場所を、検査の一連の処理が可能である環境にすることが簡易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による検査設備システムの構成の一例を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態による検査設備システムの構成の一例を示す断面側面図である。
【
図3】第1実施形態による検査設備システムの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態による第1ロボットの構成の一例を示す正面図である。
【
図5】第1実施形態の変形例1による検査設備システムの構成の一例を示す断面側面図である。
【
図6】第1実施形態の変形例2による検査設備システムの構成の一例を示す断面側面図である。
【
図7】第1実施形態による検査設備システムの空港での配置例を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態による検査システムの全体構成の概略を示した図である。
【
図9】第2実施形態による検査システムの全体構成の具体的構成を示した図である。
【
図10】第2実施形態による検査システムの第1ユニットの構成を示した図である。
【
図11】第2実施形態による検査システムの検体採取容器を示した図である。
【
図12】第2実施形態による検査システムの消毒液槽を示した図である。
【
図13】第2実施形態による検査システムの検体採取容器搬送部を示した図である。
【
図14】第2実施形態による検査システムの第2ユニットの開栓分注処理および不活化処理を行うための構成を示した図である。
【
図15】第2実施形態による検査システムの第2ユニットの核酸抽出処理を行うための構成を示した図である。
【
図16】第2実施形態による検査システムの核酸抽出処理を行うプレートを示した図である。
【
図17】第2実施形態による検査システムの第2ユニットの廃棄箱を示した図である。
【
図18】第2実施形態による検査システムの第3ユニットの構成を示した図である。
【
図19】第2実施形態による検査システムの蓋閉め部材を示した図である。
【
図20】第3実施形態による検査システムの全体構成の具体的構成を示した図である。
【
図21】第4実施形態による検査システムの全体構成の概略を示した図である。
【
図22】第4実施形態による検査システムの第2ユニットの開栓分注処理を行うための構成を示した斜視図である。
【
図23】第4実施形態による検査システムの第2ユニットの開栓分注処理を行うための構成を示した平面図である。
【
図24】第4実施形態による検査システムの第2ユニットの検体保管部の移動ロボットのハンドを示した図である。
【
図25】第4実施形態による検査システムの第2ユニットの検体分注部の開栓ロボットのハンドを示した図である。
【
図26】第4実施形態による検査システムの第2ユニットの検体分注部の開栓把持部を示した図である。
【
図27】第4実施形態による検査システムの第2ユニットの検体分注部の分注ロボットのハンドを示した図である。
【
図28】第4実施形態による検査システムの第2ユニットのワーク搬送部の搬送ロボットのハンドを示した図である。
【
図29】第4実施形態による検査システムの第2ユニットの試薬分注部の分注ロボットのハンドを示した図である。
【
図30】第4実施形態による検査システムの第3ユニットの複数連チューブを把持するハンドを示した斜視図である。
【
図31】第4実施形態による検査システムの第3ユニットの複数連チューブを把持するハンドを示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下において、本開示の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、添付の図面における各図は、模式的な図であり、必ずしも厳密に図示されたものでない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。また、本明細書及び請求の範囲では、「装置」とは、1つの装置を意味し得るだけでなく、複数の装置からなるシステムも意味し得る。
【0010】
[検査設備システムの構成]
図1は、第1実施形態に係る検査設備システム1の構成の一例を示す平面図である。
図2は、第1実施形態に係る検査設備システム1の構成の一例を示す断面側面図である。
図1及び
図2に示すように、検査設備システム1は、被検者Pから検体の採取及び測定を行うためのシステムである。以下の実施形態において、検査設備システム1は、PCR検査の検体の採取及び測定して分析を行うためのシステムであるとして説明する。検査設備システム1は、検体の採取及び測定して分析するための設備を収容する箱体10と、箱体10を積載する移動体20とを備える。
【0011】
箱体10は、箱体10の内部空間を外部空間から遮断する。箱体10は、予め箱状に形成され、機械により移動体20に積載されてもよい。このような箱体10は、例えば、貨物輸送にも用いられ得るコンテナであってもよい。箱体10は、フォークリフト及びクレーン等の荷役機械によって、移動体20に積載されてもよい。箱体10は、移動体20上又は移動体20内において、組み立てられてもよい。なお、第1実施形態では、箱体10はコンテナである。
【0012】
移動体20は、箱体10を積載した状態で移動可能であり、その具体的な構成は特に限定されない。移動体20は、駆動装置等を備え、自身で移動可能であってもよく、他の移動体によりけん引される又は押圧されることにより移動可能であってもよい。例えば、移動体20は、地上を走行可能である、トラック等の大型自動車又はトレーラ等の被けん引自動車であってもよい。地上で移動体20を移動させる構成は、車輪に限定されず、例えば、クローラ、及び、ロボットの脚部のような歩行可能な脚等であってもよい。例えば、移動体20は、軌道上を移動可能である、鉄道列車等の機関車又は被けん引車であってもよい。例えば、移動体20は、自身で水面上又は水中を航行可能な船舶、又は、自身で水面上及び水中を航行不能な台船であってもよい。例えば、移動体20は、飛行機等の固定翼航空機及びヘリコプタ等の回転翼航空機であってもよい。なお、第1実施形態では、移動体20は大型自動車である。
【0013】
検査設備システム1は、移動体20により様々な場所へ移動可能である。さらに、検査設備システム1は、移動体20又は箱体10が収まるスペースを有する場所であれば、いかなる場所にも配置可能である。
【0014】
検査設備システム1は、旅客輸送の移動拠点に配置される。また、旅客輸送とは、交通機関が車両、航空機、鉄道、船舶などの移動体により乗客を輸送することを含む広い概念である。検査設備システム1は、例えば、地理的境界を跨ぐ移動の起点又は終点に移動し、当該地点に配置されることができる。検査設備システム1は、箱体10を移動体20に積載した状態で使用されてもよく、箱体10が移動体20から地面等に降ろされた状態で使用されてもよい。なお、第1実施形態では、検査設備システム1は、箱体10を移動体20に積載した状態で使用される。地理的境界は、特に限定されないが、国境、都道府県及び州などの行政区画の境界、自治区画の境界、並びに、島間の海による境界等であってもよい。地理的境界を跨ぐ移動の起点及び終点は、例えば、空港、海又は川の港、鉄道の駅、バスステーション、自動車専用道路の出入口、並びに、国境検問所等であってもよい。
【0015】
検査設備システム1は、箱体10内に、第1ユニット部分U1~第4ユニット部分U4を含む。箱体10は、第1ユニット部分U1~第4ユニット部分U4の全体を収容する。第1ユニット部分U1~第4ユニット部分U4は、箱体10と共に、全体として一体化され、1つのユニットを形成する。つまり、検査設備システム1は、1つのユニットで構成される。
【0016】
第1ユニット部分U1は、被検者Pから検体を採取するための設備を備える採取室R2を形成する部分である。
【0017】
第2ユニット部分U2は、検体を測定して分析するための設備を備える分析室R3及びR4を採取室R2と隔離して形成する部分である。第2ユニット部分U2は、浮遊及び飛散等で空気中に存在する病原体が分析室R3及びR4に侵入することを抑制する。第2ユニット部分U2は、第1分析室R3を形成する第1分析ユニット部分と、第2分析室R4を形成する第2分析ユニット部分とを含む。なお、第1分析室R3は、測定室および第1測定室の一例であり、第2分析室R4は、測定室および第2測定室の一例である。
【0018】
第3ユニット部分U3は、分析の結果を出力する設備の一例である結果出力装置600を備えるユニット部分である。これに限定されないが、第1実施形態では、第3ユニット部分U3は、医療従事者H1及びH2を収容する収容室R5を採取室R2と隔離して形成し、結果出力装置600を収容室R5内に含む。第3ユニット部分U3は、空気中に存在する病原体が収容室R5に侵入することを抑制する。これに限定されないが、第1実施形態では、医療従事者H1は医師であり、医療従事者H2は検査技師である。以下において、「医療従事者H1」を「医師H1」と表記し、「医療従事者H2」を「検査技師H2」と表記する場合がある。
【0019】
第4ユニット部分U4は、検体を採取するための診察を被検者Pが受ける診察室R1を分析室R3及びR4と隔離して形成する部分である。第4ユニット部分U4は、空気中に存在する病原体が分析室R3及びR4に侵入することを抑制する。
【0020】
診察室R1は、採取室R2と隣接する。診察室R1は、箱体10の上壁11、底壁12及び隣り合う3つの側壁13によって囲まれ、隔壁W1によって採取室R2と隔てられている。隔壁W1は、箱体10に固定され、不動である。隔壁W1に開口部が形成され、開口部には、ガラス等で形成された透明な仕切板W1aがはめ込まれている。仕切板W1aには、被検者Pから検体を採取するために診察室R1と採取室R2との間のアクセスを可能にする開口部が形成されている。
【0021】
診察室R1を囲む側壁13のうちの1つであり且つ隔壁W1に隣り合う側壁13には、診察室R1への被検者Pの出入りのための出入開口13a1が形成され、出入開口13a1には、出入開口13a1を開閉する扉13a2が配置されている。扉13a2は、電気等の動力により開閉動作されてもよく、手動で開閉動作されてもよい。扉13a2は出入開口13a1を遮蔽する能力を有する。出入開口13a1には、出入開口13a1に昇降するための階段13a3が、収納及び展開自在、又は、着脱自在に配置されている。診察室R1は、箱体10の外部と遮断され得る。
【0022】
採取室R2は、診察室R1及び第1分析室R3と隣接する。診察室R1及び第1分析室R3は、採取室R2を挟んで互いに反対側に位置する。採取室R2は、箱体10の上壁11、底壁12及び2つの対向する側壁13によって囲まれ、隔壁W1によって診察室R1と隔てられ、隔壁W2によって第1分析室R3と隔てられている。隔壁W2は、箱体10に固定され、不動である。隔壁W2に開口部が形成され、開口部には、開口部を開閉するシャッタW2aが配置されている。シャッタW2aは、電気モータによる駆動でスライド移動することで開口部を開閉するスライド扉である。シャッタW2aは、開口部を遮蔽する能力を有する。採取室R2は、診察室R1と連通するが、第1分析室R3とは隔離され得る。
【0023】
第1分析室R3は、採取室R2及び第2分析室R4と隣接する。採取室R2及び第2分析室R4は、第1分析室R3を挟んで互いに反対側に位置する。第1分析室R3は、箱体10の上壁11、底壁12及び2つの対向する側壁13によって囲まれ、隔壁W2によって採取室R2と隔てられ、隔壁W3によって第2分析室R4と隔てられている。隔壁W3は、箱体10に固定され、不動である。隔壁W3に開口部が形成され、開口部には、開口部を開閉するシャッタW3aが配置されている。シャッタW3aは、電気モータによる駆動でスライド移動することで開口部を開閉するスライド扉である。シャッタW3aは、開口部を遮蔽する能力を有する。第1分析室R3は、採取室R2及び第2分析室R4と隔離され得る。
【0024】
第2分析室R4は、第1分析室R3及び収容室R5と隣接する。第1分析室R3及び収容室R5は、第2分析室R4を挟んで互いに反対側に位置する。第2分析室R4は、箱体10の上壁11、底壁12及び2つの対向する側壁13によって囲まれ、隔壁W3によって第1分析室R3と隔てられ、隔壁W4によって収容室R5と隔てられている。隔壁W4は、箱体10に固定され、不動である。隔壁W4に開口部が形成され、開口部には、開口部を開閉する扉W4aが配置されている。扉W4aは、電気等の動力により開閉動作されてもよく、手動で開閉動作されてもよい。扉W4aは、開口部を遮蔽する能力を有する。第2分析室R4は、第1分析室R3及び収容室R5と隔離され得る。
【0025】
収容室R5は、第2分析室R4と隣接する。収容室R5は、箱体10の上壁11、底壁12及び隣り合う3つの側壁13によって囲まれ、隔壁W4によって第2分析室R4と隔てられている。収容室R5は、第2分析室R4と隔離され得る。収容室R5には、設置及び除去可能な壁W5が配置可能である。壁W5は、医師H1の執務エリアと、検査技師H2のエリアとを区分けする。
【0026】
収容室R5を囲む側壁13のうちの1つであり隔壁W4に対向する側壁13には、箱体10内への医療従事者H1及びH2の出入り並びに機材の搬出入のための出入開口13a4が形成され、出入開口13a4には、出入開口13a4を開閉する扉13a5が配置されている。扉13a5は、電気等の動力により開閉動作されてもよく、手動で開閉動作されてもよい。扉13a5は出入開口13a4を遮蔽する能力を有する。出入開口13a4には、出入開口13a4に昇降するための階段13a6が、収納及び展開自在、又は着脱自在に配置されている。収容室R5は、箱体10の外部と遮断され得る。
【0027】
図3は、第1実施形態に係る検査設備システム1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図1~
図3に示すように、第4ユニット部分U4は、第1室内撮像装置510を診察室R1内に備える。第1室内撮像装置510は、例えば、可視光カメラ等を備え、診察室R1内を撮像する。第1室内撮像装置510は、撮像した画像のデータを、収容室R5に配置された第1操作入出力装置310の提示装置313及び第2操作入出力装置320の提示装置323の少なくとも一方に送信する。
【0028】
第1ユニット部分U1は、採取室R2を陰圧環境にする第1空調システムAC1を備える。第1空調システムAC1は、採取室R2と、採取室R2に連通する診察室R1とを陰圧環境にする。これにより、採取室R2及び診察室R1内の気圧は、第1分析室R3内の気圧よりも低くされる。採取室R2及び診察室R1内の気圧は外気圧よりも低くされてもよい。第1空調システムAC1は、空調機器、空気清浄装置、吸排気装置、ダクト、フィルタ及び逆流防止ダンパ等を備えてもよい。第1空調システムAC1の作用によって、空気中に存在する病原体が採取室R2及び診察室R1の外部に漏出することが抑制される。
【0029】
第1ユニット部分U1は、被検者Pから検体を採取する行為を実行する第1ロボット110と、受入装置410と、第2室内撮像装置520とを採取室R2内に備える。第1ロボット110は、操作入出力装置310及び320によって操作される。第1ロボット110は、第1操作入出力装置310を操作する医師H1と被検者Pとがコミュニケーションをとることができるように、コミュニケーション装置を備える。第2室内撮像装置520は、例えば、可視光カメラ等を備え、採取室R2内を撮像する。第2室内撮像装置520は、撮像した画像のデータを第2操作入出力装置320の提示装置323に送信する。
【0030】
第1ユニット部分U1はさらに、採取室R2内に、第1ロボット110が医療検査行為を行うための器具、実験装置、及び各種の検査試薬等を備えてもよい。上記器具としては、例えば、オートピペット、オートピペットに用いられるチップ、マイクロチューブ、遠心管、遠沈管が挙げられ、上記実験装置としては、例えば、遠心分離機、PCR装置等が挙げられる。
【0031】
受入装置410は、第1ロボット110から検体を受け入れることができる。これに限定されないが、第1実施形態では、受入装置410は、検体を不活性化する機能を備える。受入装置410は、検体を分注する機能をさらに備えてもよいが、第1ロボット110が受入装置410において検体を分注してもよい。受入装置410は、不活性化検体を第1分析室R3に移送する機能を備えてもよいが、第1ロボット110がシャッタW2aの開口部を通じて、不活性化検体を第1分析室R3に移送してもよい。
【0032】
第1ロボット110は、被検者Pからの検体の採取行為、検体の受入装置410への投入行為、受入装置410での検体の分注行為、不活性化検体の受入装置410からの取り出し行為、及び、不活性化検体の第1分析室R3への移送行為のうちの少なくとも1つを実行する。
【0033】
例えば、第1ロボット110は、第1操作入出力装置310を用いた医師H1による操作に従って、被検者Pからの検体の採取行為を行う。第1ロボット110は、検体の採取行為を医師H1の手動操縦で行うが、AI(人工知能;Artificial Intelligence)を搭載し自動操縦で行ってもよい。第1ロボット110は、検体の採取行為以外の行為を、第2操作入出力装置320から受け取る指令に従って行うが、第1操作入出力装置310から受け取る指令に従って行ってもよい。第1ロボット110は、検体の採取行為以外の行為を、自動化プログラムに従った自動操縦で行うが、操作入出力装置320又は310を用いた手動操縦で実行してもよい。
【0034】
隔壁W2のシャッタW2aは、操作入出力装置310及び320のいずれによって操作されてもよく、第1制御装置210又は統合制御装置240によって自動制御されてもよい。
【0035】
ここで、第1ロボット110の構成を説明する。
図4は、第1実施形態に係る第1ロボット110の構成の一例を示す正面図である。
図4に示すように、第1ロボット110は、ロボットアームであるアーム111及び112と、アーム111及び112それぞれの先端に取りけられたロボットハンドであるハンド113及び114とを備える。ハンド113及び114は、対象物に作用を加え、エンドエフェクタとも呼ばれる。アーム111及び112はそれぞれ、水平多関節型のロボットアームで構成され、アーム111及び112の基部は同軸上に配置される。第1ロボット110は、同軸双腕ロボットである。後述する第2ロボット120及び第3ロボット130も同軸双腕ロボットである。
【0036】
なお、ロボット110~130の構成は、水平多関節型のロボットアームを備える同軸双腕ロボットに限定されず、いかなるロボットであってもよい。例えば、ロボット110~130は、垂直多関節型、極座標型、円筒座標型、直角座標型及びその他の形式のいかなるロボットアームを備えてもよい。ロボット110~130が備えるアームの数量も、1つ及び3つ以上のいかなる数量であってもよい。また、ロボット110~130は、産業用ロボットと同様の構成を有するが、サービスロボット及びヒューマノイド等の構成を有してもよい。サービスロボットは、介護、医療、清掃、警備、案内、救助、調理、商品提供等の様々なサービス業で使用されるロボットである。
【0037】
第1ロボット110は、提示装置115(
図3参照)と撮像装置116と集音装置117とをさらに備える。提示装置115、撮像装置116及び集音装置117は、被検者Pと医師H1とがコミュニケーションをとるための装置である。
【0038】
撮像装置116は、例えば、可視光カメラ等を備え、仕切板W1aを介して診察室R1の被検者Pを撮像し、撮像した画像のデータを第1操作入出力装置310及び第2操作入出力装置320のうちの少なくとも第1操作入出力装置310に送信する。集音装置117は、例えば、マイク等を備え、仕切板W1aを介して診察室R1の被検者Pの音声等を集音し、集音した音声信号を第1操作入出力装置310及び第2操作入出力装置320のうちの少なくとも第1操作入出力装置310に送信する。
【0039】
提示装置115は、ディスプレイ115a及び音声出力装置115bを備える。ディスプレイ115aは、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)及び有機又は無機ELディスプレイ(Electro―Luminescence Display)等のディスプレイであってもよい。音声出力装置115bは、スピーカ、イヤホン及びヘッドホン等であってもよい。ディスプレイ115a及び音声出力装置115bは、第1操作入出力装置310の撮像装置314及び集音装置315(
図3参照)によって取得される画像データ及び音声信号に対応する画像及び音声を、仕切板W1aを介して診察室R1の被検者Pに提示する。ディスプレイ115a及び音声出力装置115bは、第2操作入出力装置320の撮像装置324及び集音装置325(
図3参照)によって取得される画像データ及び音声信号に対応する画像及び音声を被検者Pに提示してもよい。
【0040】
第1実施形態では、撮像装置116及び集音装置117は、ディスプレイ115aに固定して配置されるが、これに限定されず、被検者Pの画像及び音声を取得することができればよい。例えば、撮像装置116及び集音装置117は、アーム111及び112、仕切板W1a、被検者P、並びに、診察室R1等に配置されてもよい。ディスプレイ115aは、第1ロボット110のアーム111及び112の基部付近に固定して配置されるが、これに限定されず、被検者Pに画像を提示できればよい。音声出力装置115bは、ディスプレイ115aに固定して配置されるが、これに限定されず、被検者Pに音声を提示できればよい。例えば、ディスプレイ115a及び音声出力装置115bは、アーム111及び112、仕切板W1a、被検者P、並びに、診察室R1等に配置されてもよい。
【0041】
図1~
図3に示すように、第2ユニット部分U2は、第2空調システムAC2a及びAC2bを備える。第2空調システムAC2aは、第1分析室R3を陽圧環境にし、第1分析室R3内の気圧を採取室R2内の気圧よりも高くする。これにより、採取室R2及び第2分析室R4から第1分析室R3への空気の流入が抑えられる。第1分析室R3内の気圧は、外気圧よりも高くされてもよい。第2空調システムAC2bは、第2分析室R4を陰圧環境にし、第2分析室R4内の気圧を第1分析室R3内の気圧よりも低くする。第2空調システムAC2a及びAC2bは、空調機器、空気清浄装置、吸排気装置、ダクト、フィルタ及び逆流防止ダンパ等を備えてもよい。
【0042】
第2ユニット部分U2は、採取室R2から送られた検体に対して第1分析行為を実行する第2ロボット120と、第1分析装置420と、第3室内撮像装置530とを、第1分析室R3内に備える。第2ロボット120は、第1ロボット110と同様に、アーム121及び122と、アーム121及び122それぞれの先端のハンド123及び124とを備える。なお、第2ロボット120は、被検者Pとコミュニケーションをとらないため、提示装置、撮像装置及び集音装置を備えないが、第2ロボット120の眼として撮像装置を備えてもよい。第2ロボット120は、第2操作入出力装置320によって操作される。第3室内撮像装置530は、可視光カメラ等を備え、第1分析室R3内を撮像する。第3室内撮像装置530は、撮像した画像のデータを、第2操作入出力装置320の提示装置323に送信する。
【0043】
第1分析装置420は、不活性化された検体に対する第1分析のために必要な種々の装置及び器具を含む。第1分析は、陽圧環境下で行われる分析である。例えば、PCR検査の場合、第1分析は、検体からの核酸の抽出、PCR反応液の生成及び調整、コントロールの添加、並びに、シーリング等の工程を含む。第1分析装置420は、各工程に必要な装置及び器具を含む。
【0044】
第2ロボット120は、第1分析装置420に含まれる装置及び器具を用いて、第1分析の各工程の少なくとも1つを実行する。第2ロボット120は、隔壁W3のシャッタW3aの開口部を通じて、第1分析後の検体を第2分析室R4へ移送する行為を行う。なお、第1分析装置420が第1分析後の検体の移送を行ってもよい。第2ロボット120は、各行為を、第2操作入出力装置320から受け取る指令に従って行うが、第1操作入出力装置310から受け取る指令に従って行ってもよい。第2ロボット120は、各行為を、自動化プログラムに従った自動操縦で行うが、操作入出力装置320又は310を用いた手動操縦で実行されてもよい。
【0045】
第2ユニット部分U2は、第1分析室R3から送られた検体に対して第2分析行為を実行する第3ロボット130と、第2分析装置430と、第4室内撮像装置540とを、第2分析室R4内に備える。第3ロボット130は、第2ロボット120と同様の構成を有し、アーム131及び132と、アーム131及び132それぞれの先端のハンド133及び134とを備える。なお、第3ロボット130は、第3ロボット130の眼として撮像装置を備えてもよい。第3ロボット130は、第2操作入出力装置320によって操作される。第4室内撮像装置540は、可視光カメラ等を備え、第2分析室R4内を撮像する。第4室内撮像装置540は、撮像した画像のデータを、第2操作入出力装置320の提示装置323に送信する。
【0046】
第2分析装置430は、第1分析後の検体に対する第2分析のために必要な種々の装置及び器具を含む。第2分析は、陰圧環境下で行われる分析である。例えば、PCR検査の場合、第2分析は、PCR増幅、検出及び検出結果データの出力等の工程を含む。第2分析装置430は、各工程に必要な装置及び器具を含む。
【0047】
第3ロボット130は、第2分析装置430に含まれる装置及び器具を用いて、第2分析の各工程の少なくとも1つを実行する。第3ロボット130は、隔壁W4の扉W4aの開口部を通じて、第2分析後の検体を収容室R5へ移送する行為を行ってもよい。第3ロボット130は、各行為を、第2操作入出力装置320から受け取る指令に従って行うが、第1操作入出力装置310から受け取る指令に従って行ってもよい。第3ロボット130は、各行為を、自動化プログラムに従った自動操縦で行うが、操作入出力装置320又は310を用いた手動操縦で実行されてもよい。
【0048】
第3ユニット部分U3は、第3空調システムAC3を備える。第3空調システムAC3は、収容室R5内を空調する。例えば、第3空調システムAC3は、収容室R5内の気圧を第2分析室R4内の気圧よりも高くしてもよく、例えば、外気圧と同等の気圧にしてもよい。第3空調システムAC3は、空調機器、空気清浄装置、吸排気装置、ダクト、フィルタ及び逆流防止ダンパ等を備えてもよい。
【0049】
第3ユニット部分U3は、第1操作入出力装置310と第2操作入出力装置320と結果出力装置600とを、収容室R5内に備える。操作入出力装置310及び320はそれぞれ、入力装置311及び321と、操作装置312及び322と、提示装置313及び323と、撮像装置314及び324と、集音装置315及び325とを備える。
【0050】
入力装置311及び321は、医療従事者H1及びH2による指令、情報及びデータ等の入力を受け付ける。例えば、入力装置311及び321は、ロボット110~130に実行させる自動操縦での自動動作の指令を受け付け、当該指令を統合制御装置240に出力されてもよい。入力装置311及び321は、レバー、ボタン、タッチパネル、ジョイスティック、モーションキャプチャ、カメラ及びマイク等の公知の入力手段を備えてもよい。例えば、入力装置311及び321は、教示装置の1つであるティーチングペンダント、スマートフォン及びタブレットなどのスマートデバイス、パーソナルコンピュータ、並びに専用端末装置等の端末装置を備えてもよい。
【0051】
操作装置312及び322は、ロボット110~130を手動操縦するための操作についての医療従事者H1及びH2による入力を受け付ける。操作装置312及び322は、当該操作に対応する指令を統合制御装置240に出力されてもよい。操作装置312及び322は、レバー、ボタン、タッチパネル、ジョイスティック、モーションキャプチャ、カメラ及びマイク等の公知の入力手段を備えてもよい。第1実施形態では、ロボット110~130は、手動操縦においてマスター・スレーブ方式で制御され、操作装置312及び322はマスター機を備える。操作装置312及び322は、入力される操作に従った動作をロボット110~130に実行させる指令を出力するだけでなく、ロボット110~130のハンドに作用する力のフィードバックを、操作装置312及び322を操作する医療従事者H1及びH2に与える。
【0052】
また、操作装置312及び322は、緊急時(例えば、ロボット110~130が異常動作をした場合等)に医療従事者H1及びH2によって押される解除ボタン(図示略)を備えてもよい。解除ボタンの押圧を示す指令は、ハンドに保持している医療検査器具又は医療診察器具を解放させるための指令、及び/又は、ハンドを被検者Pから離すように移動させるための指令等に対応付けられてもよい。
【0053】
提示装置313は、第1ロボット110の提示装置115について例示したようなディスプレイ及び音声出力装置を備える。提示装置313は、第1ロボット110の撮像装置116及び集音装置117によって取得された画像データ及び音声信号に対応する画像及び音声を、医師H1等に提示する。提示装置313は、被検者Pの画像及び音声を提示することができる。提示装置313は、室内撮像装置510~540によって取得された画像データに対応する画像を提示してもよい。
【0054】
提示装置323は、第1ロボット110の提示装置115について例示したようなディスプレイ及び音声出力装置のうちの少なくともディスプレイを備える。提示装置323は、室内撮像装置510~540によって取得された画像データに対応する画像を、検査技師H2等に提示する。提示装置323は、各室内の画像を提示することができる。提示装置323は、第1ロボット110の撮像装置116及び集音装置117、並びに、ロボット120及び130の撮像装置(図示略)によって取得された画像データ及び音声信号に対応する画像及び音声を提示してもよい。
【0055】
撮像装置314及び324は、可視光カメラ等を備える。集音装置315及び325は、マイク等を備える。撮像装置314及び集音装置315は、第1操作入出力装置310の操作者である医師H1等の画像データ及び音声信号を取得し、第1ロボット110の提示装置115に出力する。撮像装置314及び集音装置315は、医師H1の画像及び音声を被検者Pに提示することを可能にする。撮像装置324及び集音装置325は、第2操作入出力装置320の操作者である検査技師H2等の画像データ及び音声信号を取得し、第1ロボット110の提示装置115に出力する。撮像装置324及び集音装置325は、検査技師H2の画像及び音声を被検者Pに提示することを可能にする。
【0056】
結果出力装置600は、分析の結果を出力する設備の一例である。結果出力装置600は、第2分析装置430から検出結果のデータを受け取る。結果出力装置600は、検出結果のデータに対する判定、所見及び証明等の添付データを当該データに添付してもよい。結果出力装置600は、添付データをプログラムに従って生成してもよく、医師H1及び検査技師H2等により入力される情報に従って添付データを生成してもよい。結果出力装置600は、添付データを含む検出結果のデータを、被検者Pが視認できるデータ又は紙面として出力する。例えば、結果出力装置600は、PCR検査の陰性の証明書をデータ出力又は紙出力してもよい。
【0057】
図3に示すように、検査設備システム1は、各装置の動作を制御するための制御装置として、第1制御装置210、第2制御装置220、第3制御装置230及び統合制御装置240を備える。
【0058】
第1制御装置210は第1ロボット110の各構成要素の動作を制御する。第2制御装置220は第2ロボット120の各構成要素の動作を制御する。第3制御装置230は、第3ロボット130の各構成要素の動作を制御する。
【0059】
統合制御装置240は、検査設備システム1の全体を制御する。例えば、統合制御装置240は、操作入出力装置310及び320から指令を受け取り、当該指令の対象の装置に当該指令を出力する、又は、当該指令の対象の装置の動作を当該指令に従って制御する。例えば、統合制御装置240は、操作入出力装置310及び320の指令の対象がロボット110~130のいずれかのロボットである場合、制御装置210~230のうちの当該ロボットを制御する制御装置に当該指令を出力する。統合制御装置240は、1つの第1操作入出力装置310によって、ロボット110~130のいずれのロボットをも操作することを可能にし、1つの第2操作入出力装置320によって、ロボット110~130のいずれのロボットをも操作することを可能にする。
【0060】
例えば、統合制御装置240は、操作入出力装置310及び320の指令の対象が、室内撮像装置510~540、受入装置410及び分析装置420~430のいずれかの装置である場合、当該装置に当該指令を出力する、又は、当該指令に従って当該装置の動作を制御してもよい。統合制御装置240は、1つの第1操作入出力装置310によって、いずれの装置にも動作させることを可能にし、1つの第2操作入出力装置320によって、いずれの装置にも動作させることを可能にする。
【0061】
また、統合制御装置240は、空調システムAC1、AC2a、AC2b及びAC3の動作を制御してもよい。
【0062】
制御装置210~240は、コンピュータ装置を備える。さらに、制御装置210~240は、ロボット110~130及び各装置に供給する電力を制御するための電気回路等を備えてもよい。例えば、制御装置210~240は、収容室R5に配置されてもよい。又は、制御装置210~230はロボット110~130に配置されてもよい。
【0063】
例えば、制御装置210~240のコンピュータ装置は、プロセッサ及びメモリ等を有する演算器を含む。演算器は、他の装置との指令、情報及びデータ等の送受信を行う。演算器は、各種機器からの信号の入力及び各制御対象への制御信号の出力を行う。メモリは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリなどの半導体メモリ、ハードディスク及びSSD(Solid State Drive)等の記憶装置で構成される。例えば、メモリは、演算器が実行するプログラム、及び各種固定データ等を記憶する。
【0064】
演算器の機能は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ及びROM(Read―Only Memory)などの不揮発性メモリ等からなるコンピュータシステム(図示略)により実現されてもよい。コンピュータシステムは、CPUがRAMをワークエリアとして用いてROMに記録されたプログラムを実行することによって、演算器の機能を実現してもよい。なお、演算器の機能の一部又は全部は、上記コンピュータシステムにより実現されてもよく、電子回路又は集積回路等の専用のハードウェア回路により実現されてもよく、上記コンピュータシステム及びハードウェア回路の組み合わせにより実現されてもよい。制御装置210~240はそれぞれ、単一のコンピュータ装置による集中制御により各処理を実行してもよく、複数のコンピュータ装置の協働による分散制御により各処理を実行してもよい。例えば、制御装置210~240の少なくとも2つが単一のコンピュータ装置に統合されてもよい。
【0065】
例えば、制御装置210~240の各機能は、マイクロコントローラ、MPU(Micro Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)、システムLSI、PLC(Programmable Gate Array)及び論理回路等によって実現されてもよい。制御装置210~240それぞれの複数の機能は、個別に1チップ化されてもよく、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。また、回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよく、専用の回路でもよい。LSIとして、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続及び/又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブルプロセッサ、又は、特定用途向けに複数の機能の回路が1つにまとめられたASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が利用されてもよい。
【0066】
図3に示す検査設備システム1に含まれる各構成要素は、有線通信又は無線通信を介して互いに接続される。有線通信及び無線通信の種類はいかなる種類であってもよい。
【0067】
[検査設備システムの動作]
第1実施形態に係る検査設備システム1における検査処理の流れの一例を説明する。なお、以下において、PCR検査での検査処理の流れの一例を説明する。
【0068】
図1~
図3に示すように、まず、被検者Pは、診察室R1に入室し仕切板W1a越しに第1ロボット110と対面するように椅子に着座する。被検者Pは、第1ロボット110の提示装置115から出力される医師H1の画像及び音声と、撮像装置116及び集音装置117に入力される被検者Pの画像及び音声とを用いて医師H1とコミュニケーションをとりつつ、医師H1の指示に従って仕切板W1aの開口部内に被検者Pの顔を入れる。
【0069】
医師H1は、第1操作入出力装置310を用いて第1ロボット110を手動操縦することで、ハンド113又は114を移動させ、当該ハンドに保持された検査器具を用いて被検者Pから検体を採取する。採取後、医師H1は、第1操作入出力装置310を用いて第1ロボット110の動作制御を自動操縦に切り替える、又は採取完了を示す入力をする。第1操作入出力装置310は、第2操作入出力装置320に自動操縦への切り替えの通知等を送信する。
【0070】
検査技師H2は、第2操作入出力装置320を介して当該通知を知覚すると、第2操作入出力装置320に、検体の処理を自動で実行する指令を入力する。検査技師H2は、自動での検体の処理の際、第2操作入出力装置320の提示装置323に映し出される各部屋の画像を視認することで、異常の発生の有無等を監視する。検査技師H2は、異常の発生時、及び、必要に応じて、第2操作入出力装置320を用いて、処理の中止又は自動操縦から手動操縦への切り替え等を行う。
【0071】
統合制御装置240は、第1ロボット110による検体の受入装置410への投入行為、第1ロボット110による受入装置410での検体の分注行為、受入装置410による検体の不活性化、第1ロボット110による不活性化検体の受入装置410からの取り出し行為、及び、第1ロボット110による不活性化検体の第1分析室R3への移送行為をこの順に、第1ロボット110及び受入装置410に自動で実行させる。
【0072】
さらに、統合制御装置240は、シャッタW2aに隔壁W2の開口部を開放させ、第1ロボット110に検体を当該開口部に挿入させる。統合制御装置240は、第2ロボット120を動作させ、第2ロボット120に開口部に挿入された検体を受け取らせ、シャッタW2aに閉鎖させる。
【0073】
次いで、統合制御装置240は、第2ロボット120に、第1分析の各工程を順に自動で実行させる。統合制御装置240は、第1分析の全ての工程の完了後、シャッタW3aに隔壁W3の開口部を開放させ、第2ロボット120に検体を当該開口部に挿入させる。統合制御装置240は、第3ロボット130を動作させ、第3ロボット130に開口部に挿入された検体を受け取らせ、シャッタW3aに閉鎖させる。
【0074】
次いで、統合制御装置240は、第3ロボット130に、第2分析の各工程を順に自動で実行させる。統合制御装置240は、第2分析の全ての工程の完了後、第2分析装置430に検出結果のデータを結果出力装置600に出力させる。統合制御装置240は、結果出力装置600に検査結果の証明書を発行させる。検査技師H2は、結果出力装置600によって発行される、PCR検査の陰性証明等の証明書を被検者Pに渡す。結果出力装置600は、当該証明書のデータを、被検者Pの端末装置等の他の装置に送信してもよい。
【0075】
なお、統合制御装置240は、第1ロボット110から第2ロボット120への検体の受け渡し後、第1ロボット110の動作制御を手動操縦に切り替え、切り替えの通知又は受け渡し完了の通知を第1操作入出力装置310に出力してもよい。これにより、医師H1は、次の被検者Pに対する検体の採取を行うことができる。
【0076】
上述したように、第1実施形態に係る検査設備システム1は、検査設備システム1が配置される場所において、被検者Pからの検体の採取~検体の検査結果の出力の一連の処理を行うことができる。さらに、検査設備システム1は、箱体10内に配置される装置のみを用いて、上記の一連の処理を行うことができる。つまり、検査設備システム1は、箱体10が配置されるだけで、配置場所での一連の処理の実行を可能にする。
【0077】
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態の変形例1は、第2ユニット部分U2が、第1分析室R3の第1前室R3aと、第2分析室R4の第2前室R4aとを備える点で、第1実施形態と異なる。以下、変形例1について、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の点の説明を適宜省略する。
【0078】
図5は、第1実施形態の変形例1に係る検査設備システム1Aの構成の一例を示す断面側面図である。
図5に示すように、検査設備システム1Aの第2ユニット部分U2は、箱体10内に、第1分析室R3の第1前室R3aと、第2分析室R4の第2前室R4aとを備える。第1前室R3aは、採取室R2と第1分析室R3との間に位置し、第2前室R4aは、第1分析室R3と第2前室R4aとの間に位置する。第2ユニット部分U2は、第1前室R3a及び第2前室R4aをそれぞれ、第1前室R3aを形成する分析ユニット部分及び第2前室R4aを形成する分析ユニット部分として含んでもよい。
【0079】
第1前室R3aは、隔壁W2によって採取室R2と隔てられ、隔壁W6によって第1分析室R3と隔てられる。隔壁W6は、隔壁W2と同様に、開口部と、当該開口部を開閉するシャッタW6aとを備える。
【0080】
第2前室R4aは、隔壁W3によって第1分析室R3と隔てられ、隔壁W7によって第2分析室R4と隔てられる。隔壁W7は、隔壁W3と同様に、開口部と、当該開口部を開閉するシャッタW7aとを備える。
【0081】
第2ユニット部分U2は、第1前室R3aの空調環境を調整する第2空調システムAC2cと、第2前室R4aの空調環境を調整する第2空調システムAC2dとを備える。第2空調システムAC2cは、採取室R2の空調環境である陰圧環境と第1分析室R3の空調環境である陽圧環境とのうちの少なくとも第1分析室R3と同様の空調環境に、第1前室R3aの空調環境を調整することができる。第2空調システムAC2dは、第1分析室R3の空調環境である陽圧環境と第2分析室R4の空調環境である陰圧環境とのうちの少なくとも第2分析室R4と同様の空調環境に、第2前室R4aの空調環境を調整することができる。
【0082】
統合制御装置240(
図3参照)は、空調システムAC1、AC2a~AC2d及びAC3の動作を制御する。
【0083】
例えば、第1ロボット110による採取室R2からの検体の移送の場合、統合制御装置240は、第1前室R3aを陽圧環境にした状態で、隔壁W2のシャッタW2aを開放する。次いで、統合制御装置240は、第1ロボット110に、第1前室R3a内の受け台上に検体を載置させた後、シャッタW2aを閉鎖する。さらに、統合制御装置240は、第1前室R3aを陰圧環境にした状態で、隔壁W6のシャッタW6aを開放する。次いで、統合制御装置240は、第2ロボット120に、第1前室R3a内の受け台の検体を第1分析室R3内に移送させ、シャッタW6aを閉鎖する。なお、第1前室R3aは陽圧環境であってもよい。これにより、空気中に存在する病原体が、採取室R2から第1分析室R3に侵入することが確実に抑制される。
【0084】
例えば、第2ロボット120による第1分析室R3からの検体の移送の場合、統合制御装置240は、第2前室R4aを陽圧環境にした状態で、隔壁W3のシャッタW3aを開放する。次いで、統合制御装置240は、第2ロボット120に、第2前室R4a内の受け台上に検体を載置させた後、シャッタW3aを閉鎖する。さらに、統合制御装置240は、第2前室R4aを陰圧環境にした状態で、隔壁W7のシャッタW7aを開放する。次いで、統合制御装置240は、第3ロボット130に第2前室R4a内の受け台の検体を第2分析室R4内に移送させ、シャッタW7aを閉鎖する。これにより、空気中に存在する病原体が、第1分析室R3から第2分析室R4に侵入することが確実に抑制される。
【0085】
上述のような第1実施形態の変形例1に係る検査設備システム1Aによれば、空気中に存在する病原体が部屋間を移動することが確実に抑制される。
【0086】
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態の変形例2は、第1操作入出力装置310及び第2操作入出力装置320の少なくとも一方が箱体10から離れた位置に配置される点で、第1実施形態と異なる。以下、変形例2について、第1実施形態及び変形例1と異なる点を中心に説明し、第1実施形態及び変形例1と同様の点の説明を適宜省略する。
【0087】
図6は、第1実施形態の変形例2に係る検査設備システム1Bの構成の一例を示す断面側面図である。
図6に示すように、本変形例に係る検査設備システム1Bにおいて、第3ユニット部分U3は、操作入出力装置310及び320を備えない。第3ユニット部分U3は、収容室R5に結果出力装置600を備え、結果出力装置600は、箱体10の外部の被検者Pに直接的に、陰性証明書等の検査結果を出力できる。本変形例では、収容室R5は医療従事者H1及びH2を収容しない。
【0088】
また、検査設備システム1Bは、箱体10から離れた位置に第5ユニット部分U5を備える。第5ユニット部分U5は、1つの場所に配置されてもよく、複数の場所に配置されてもよい。第5ユニット部分U5は、第1操作入出力装置310及び第2操作入出力装置320の少なくとも一方を備える。
【0089】
本例では、第5ユニット部分U5は、互いから離れた2つの場所に配置される。一方の第5ユニット部分U5は、第1操作入出力装置310を収容する操作室R6aを備え、他方の第5ユニット部分U5は、第2操作入出力装置320を収容する操作室R6bを備える。2つの第5ユニット部分U5はそれぞれ、操作室R6a及びR6bを含む箱体を備え、当該箱体と共に配置されてもよく、既存の施設の部屋等の空間を操作室R6a及びR6bとして利用して、当該空間内に配置されてもよい。
【0090】
操作入出力装置310及び320はいずれも、通信ネットワークNを介して統合制御装置240(
図3参照)と通信する。よって、医師H1は、第1操作入出力装置310を用いて、ロボット110~130等を含む箱体10内の各装置を遠隔操作することができ、検査技師H2は、第2操作入出力装置320を用いて、ロボット110~130等を含む箱体10内の各装置を遠隔操作することができる。
【0091】
通信ネットワークNは、有線通信ネットワークであってもよく、無線通信ネットワークであってもよい。例えば、通信ネットワークNは、アドホック・ネットワーク(Ad Hoc Network)、イントラネット、エクストラネット、仮想プライベート・ネットワーク(Virtual Private Network:VPN)、ローカル・エリア・ネットワーク(Local Area Network:LAN)、ワイヤレスLAN(Wireless LAN:WLAN)、広域ネットワーク(Wide Area Network:WAN)、ワイヤレスWAN(Wireless WAN:WWAN)、大都市圏ネットワーク(Metropolitan Area Network:MAN)、インターネットの一部、公衆交換電話網(Public Switched Telephone Network:PSTN)の一部、携帯電話網、ISDNs(Integrated Service Digital Networks)、無線LANs、LTE(Long Term Evolution)、CDMA(Code Division Multiple Access)、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、衛星通信等、又は、これらの2つ以上の組み合わせを含むことができる。通信ネットワークNは、1つ又は複数のネットワークを含んでもよい。
【0092】
通信ネットワークNを介して統合制御装置240(
図3参照)と通信する操作入出力装置310及び320は、箱体10と同じ建物又は同じ敷地内に配置されてもよく、これらよりも離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0093】
また、1つの箱体10の統合制御装置240(
図3参照)は、通信ネットワークNを介して、2つの以上の第1操作入出力装置310及び/又は2つ以上の第2操作入出力装置320と通信できてもよい。これにより、様々な場所にいる複数の医師H1及び複数の検査技師H2が、箱体10内の各装置を操作することができる。例えば、複数の医師H1及び複数の検査技師H2が交代しつつ各装置を操作することで、24時間のいつでも検査処理の実行が可能である。
【0094】
なお、本変形例では、操作入出力装置310及び320は、通信ネットワークNを介して統合制御装置240(
図3参照)と通信するが、通信ネットワークNを介さずに、統合制御装置240と有線通信又は無線通信してもよい。
【0095】
上述のような第1実施形態の変形例2に係る検査設備システム1Bによれば、箱体10が配置される場所に医師H1及び検査技師H2が常駐する必要がなくなる。検査設備システム1Bに携わる医師H1及び検査技師H2の人数の低減が可能になる。
【0096】
本変形例では、操作入出力装置310及び320は、別々の操作室R6a及びR6bに配置されるが、これに限定されず、1つの操作室R6に配置されてもよい。
【0097】
また、箱体10内に、第5ユニット部分U5の一部が配置されてもよい。つまり、操作入出力装置310及び320の一方が箱体10内に配置されてもよい。この場合、箱体10内の第3ユニット部分U3の一部が第5ユニット部分U5の一部を兼ねてもよい。
【0098】
(検査設備システムの空港での配置例)
第1実施形態に係る検査設備システム1の配置例を説明する。
図7は、第1実施形態に係る検査設備システム1の空港APでの配置例を示すブロック図である。
図7において、実線の矢印は、空港APを出発する航空機の搭乗者の流れを示し、破線の矢印は、空港APに到着した航空機の搭乗者の流れを示す。一点鎖線の矢印は、データ通信の流れを示す。
図7に示すように、空港APには、ターミナルビルABが存在し、さらに、鉄道及びバスの駅AC、タクシーの乗車場AD及び駐車場AE等が存在する。搭乗者は、駅AC、乗車場AD及び駐車場AEと、ターミナルビルABの出入口AB1との間で往来する。
【0099】
ターミナルビルABは、出入口AB1と、搭乗手続きのためのチェックインカウンタAB2と、X線検査及び金属探知機等を使用する保安検査所AB3と、搭乗待合エリアAB4と、搭乗口AB5と、手荷物受取所AB6と、到着口AB7とを含む。空港APを出発する航空機の搭乗者は、チェックインカウンタAB2、保安検査所AB3、搭乗待合エリアAB4及び搭乗口AB5をこの順で進む。空港APに到着した航空機の搭乗者は、手荷物受取所AB6及び到着口AB7をこの順で進む。
【0100】
検査設備システム1の箱体10は、出入口AB1、チェックインカウンタAB2及び保安検査所AB3の少なくとも1つに配置され、本例では、すべてに配置される。これにより、検査を受けていない搭乗者が保安検査所AB3を通過することが抑制される。さらに、検査設備システム1の箱体10は、手荷物受取所AB6及び到着口AB7の少なくとも1つに配置され、本例では、すべてに配置される。これにより、検査を受けていない搭乗者が到着口AB7を通過することが抑制される。
【0101】
複数のターミナルビルABが存在する場合、ターミナルビルABごとに、上記の場所に検査設備システム1の箱体10が配置されてもよい。
【0102】
検査設備システム1は、当該検査設備システム1が配置された場所で、検査結果の証明書を搭乗者に発行する、又は、搭乗者のチケット等の携帯物に検査結果の証明書のデータを入力してもよい。又は、検査設備システム1は、検査結果の証明書のデータを他の場所に送信してもよい。送信先は、搭乗者が必ず立ち寄る場所であるチェックインカウンタAB2、保安検査所AB3及び到着口AB7の少なくとも1つであってもよい。
【0103】
また、ターミナルビルABの検査設備システム1は、ターミナルビルABの外部の施設から、当該施設において実施された搭乗予定者の検査結果の証明書のデータを、通信を介して受信してもよい。例えば、外部の施設は、病院、保健所及び検査施設等の医療関連施設AF、並びに、空港APに隣接する又は近傍に位置する宿泊施設AG、及び、搭乗者が出発した他の空港APa等である。医療関連施設AF及び宿泊施設AGは、空港APの敷地内に位置してもよく当該敷地外に位置してもよい。
【0104】
外部の施設が検査設備を備えない場合、外部の施設に検査設備システム1が配置され、当該検査設備システム1が、ターミナルビルABの検査設備システム1にデータを送信してもよい。
図7では、データは、チェックインカウンタAB2の検査設備システム1に送信されるが、他の検査設備システム1に送信されてもよい。ターミナルビルABの検査設備システム1は、検査の実施時期及び実施機関等の情報に基づき外部の施設の証明書の信用度を評価し、信用性のある証明書を自身の証明書として発行してもよい。これにより、搭乗者の待ち時間の低減が可能である。
【0105】
なお、検査設備システム1の箱体10は、ターミナルビルABだけでなく、駅AC、乗車場AD及び駐車場AEにも配置されてもよい。ターミナルビルAB、駅AC、乗車場AD、駐車場AE及び外部の施設等に配置される検査設備システム1は、必ずしも箱体10を備えなくてもよく、既存の施設を利用して配置されてもよい。
【0106】
(第2実施形態)
図8~
図19を参照して、第2実施形態による検査システム1100について説明する。第2実施形態の検査システム1100は、被検者から検体を採取し、採取した検体の測定を行い検査するものである。たとえば、検査システム1100は、感染性ウイルスのRT-PCR検査を行うためのものである。感染性ウイルスとは、特に限定されないが、COVID-19が一例である。なお、検査システム1100は、検査設備システムの一例である。
【0107】
図8および
図9に示すように、検査システム1100は、第1ユニット1001と、第2ユニット1002と、第3ユニット1003と、を備えている。また、検査システム1100の第1ユニット1001、第2ユニット1002および第3ユニット1003には、各々、ロボット1004が設けられている。また、第1ユニット1001、第2ユニット1002および第3ユニット1003は、コンテナ1005内に設けられている。なお、第1ユニット1001、第2ユニット1002および第3ユニット1003のうち少なくとも1つがコンテナ1005内に設けられていればよい。これにより、検査システム1100を、容易に搬送して設置することができる。
【0108】
また、検査システム1100は、第1ユニット1001、第2ユニット1002および第3ユニット1003を互いに接続する搬送部1006aおよび1006bを備えている。具体的には、第1ユニット1001および第2ユニット1002は、搬送部1006aにより接続されている。また、第2ユニット1002および第3ユニット1003は、搬送部1006bにより接続されている。これにより、第1ユニット1001、第2ユニット1002および第3ユニット1003間の検体の移動を、搬送部1006aおよび1006bにより容易に行うことができる。
【0109】
第1ユニット1001は、検体を採取して検体を受け入れる。たとえば、第1ユニット1001では、被検者から検体を採取し、採取した検体を希釈液により希釈する処理を行う。また、第1ユニット1001では、希釈した検体の撹拌処理を行う。また、第1ユニット1001では、希釈した検体の遠心分離処理を行う。第2ユニット1002は、第1ユニット1001に接続され、検体に対して測定を行う前の前処理を行う。たとえば、第2ユニット1002では、検体の前処理として、不活化処理を行う。また、第2ユニット1002では、検体の前処理として、核酸抽出処理を行う。第3ユニット1003は、第2ユニット1002に接続され、前処理が行われた検体の測定を行う。たとえば、第3ユニット1003では、RT-PCR検査により検体中に感染性ウイルスが含まれているかを測定する処理を行う。
【0110】
検査システム1100の第1ユニット1001、第2ユニット1002および第3ユニット1003の各々に設けられたロボット1004は、各々検体に対して処理を行う。たとえば、ロボット1004は、検体が収容された容器の搬送、開栓、閉栓を行う。また、ロボット1004は、検体や試薬の分注を行う。また、ロボット1004は、処理に必要な容器、試薬、パレットなどの物の搬送を行う。なお、ロボット1004は、第1ユニット1001、第2ユニット1002および第3ユニット1003うち少なくとも1つに設けられていればよい。
【0111】
また、検査システム1100は、移動体に乗降するための移動拠点に、配置されている。たとえば、検査システム1100は、移動拠点としての空港、駅、バスターミナル、フェリー乗り場に配置されている。移動体は、たとえば、航空機、列車、バス、船舶である。これにより、移動拠点において検査システム1100により感染症の検査を行うことができるので、移動拠点において、感染症の陽性または陰性を直ちに確認することができる。その結果、移動拠点から感染症が拡大するのを効果的に抑制することができる。
【0112】
検査システム1100を空港に配置する場合の例について説明する。空港には、ターミナルビルが存在し、さらに、鉄道およびバスの駅、タクシーの乗車場および駐車場などが存在する。航空機の搭乗者は、駅、乗車場および駐車場と、ターミナルビルの出入口との間で往来する。
【0113】
ターミナルビルは、出入口と、搭乗手続きのためのチェックインカウンタと、X線検査および金属探知機などを使用する保安検査所と、搭乗待合エリアと、搭乗口と、手荷物受取所と、到着口とを含んでいる。空港を出発する航空機の搭乗者は、チェックインカウンタ、保安検査所、搭乗待合エリアおよび搭乗口をこの順で進む。空港に到着した航空機の搭乗者は、手荷物受取所および到着口をこの順で進む。
【0114】
そして、検査システム1100は、出入口、チェックインカウンタおよび保安検査所の少なくとも1つに配置される。これにより、検査を受けていない搭乗者が保安検査所を通過することを抑制することが可能である。さらに、検査システム1100は、手荷物受取所および到着口の少なくとも1つに配置されていてもよい。これにより、検査を受けていない搭乗者が到着口を通過することを抑制することが可能である。
【0115】
空港に複数のターミナルビルが存在する場合、ターミナルビルごとの上記の場所に検査システム1100が配置されていてもよい。また、検査システム1100は、ターミナルビルだけでなく、駅、乗車場および駐車場にも配置されていてもよい。
【0116】
第1ユニット1001は、唾液検体または鼻腔検体を採取して検体を受け入れる。
図10に示すように、第1ユニット1001には、検体を処理するためのロボット1004としての第1ロボット1004aが設けられている。第1ロボット1004aは、ロボットアーム1041および1042を含んでいる。つまり、第1ロボット1004aは、2つのロボットアームにより処理を行う。また、ロボットアーム1041および1042は、各々、水平関節と、水平関節に接続された昇降機構と、を含んでいる。水平関節は、ロボットアーム1041(1042)の先端を水平方向に移動させる。また、昇降機構は、ロボットアーム1041(1042)の先端を上下方向(高さ方向)に移動させる。
【0117】
第1ユニット1001は、被検者が配置される被検者エリア1011を含んでいる。また、第1ユニット1001は、被検者エリア1011と仕切られて配置され、検体を処理するための第1ロボット1004aが配置されるロボットエリア1012を含んでいる。
【0118】
図10に示すように、被検者エリア1011は、仕切部1111により、複数のブースに仕切られている。これにより、複数の被検者同士の感染を抑制することが可能である。また、被検者エリア1011と、ロボットエリア1012とは、仕切部1112により仕切られている。これにより、被検者がロボットエリア1012に入り込むのを抑制することが可能である。
【0119】
第1ユニット1001は、採取した検体を秤量する秤量部1014を含んでいる。また、第1ユニット1001は、秤量部1014により秤量した検体の量に応じて希釈液の量を調整して検体を希釈する。つまり、検体の量が少ない場合は、希釈液の量を少なくし、検体の量が多い場合には、希釈液の量を多くして、検体の希釈が行われる。これにより、検体が適切な範囲の濃度になるように希釈することができる。なお、第1ユニット1001は、ウイルスを不活化する不活化成分を含む希釈液により採取した検体を希釈してもよい。これにより、検体の希釈とともに不活化処理も行うことができる。
【0120】
第1ユニット1001は、検体を希釈するための希釈液を供給する希釈液供給部1016を含んでいる。希釈液供給部1016は、第1ロボット1004aに把持された検体採取容器1007aに対して希釈液を供給する。
【0121】
第1ユニット1001は、秤量部1014により秤量した検体の量が不足している場合に、被検者に検体の再採取を通知する通知部1113を含んでいる。通知部1113は、たとえば、被検者エリア1011に設けられている。通知部1113は、たとえば、画像を表示する表示部である。なお、通知部1113は、音声を出力するスピーカであってもよい。これにより、検体の量が不足することに起因して、検査が正しく行えなくなるのを抑制することができる。
【0122】
第1ユニット1001には、紫外線照射部1017aが設けられている。第1ロボット1004aは、紫外線照射部1017aにより第1ユニット1001内を滅菌処理する。具体的には、第1ロボット1004aは、紫外線照射部1017aの紫外線ランプが点灯した状態で、紫外線照射部1017aを把持して、第1ユニット1001のロボットエリア1012内に紫外線を照射することにより、滅菌処理を行う。これにより、第1ユニット1001を紫外線により滅菌することができるので、コンタミネーションや感染を効果的に抑制することができる。
【0123】
第1ユニット1001は、
図11に示すように、検体採取目安量が付された検体採取容器1007aに、検体を採取して検体を受け入れる。これにより、被検者が検体を供出する量を容易に把握することができるので、検体を容易に過不足なく採取することができる。検体採取容器1007aは、蓋1071により閉塞可能である。また、検体採取容器1007aは、被検者の情報を含む識別子(たとえば、バーコード)および検体採取目安量が印刷されたラベルが貼付されている。
【0124】
第1ユニット1001は、
図10に示すように、検体が採取された検体採取容器1007aの外表面を消毒するための消毒液槽1015を含んでいる。消毒液槽1015は、
図12に示すように、槽内にスポンジ1151が配置されている。スポンジ1151には、消毒液(たとえば、エタノール、次亜塩素酸水)がしみ込んでいる。また、スポンジ1151には、検体採取容器1007aが挿入可能な複数の穴1152が設けられている。スポンジ1151の穴1152に検体採取容器1007aが挿入されることにより、消毒液により検体採取容器1007aの外表面が消毒される。これにより、検体採取容器1007aの外表面を消毒することができるので、コンタミネーションや感染を効果的に抑制することができる。
【0125】
第1ユニット1001は、
図13に示すように、被検者エリア1011からロボットエリア1012に検体が採取された検体採取容器1007aを搬送する検体採取容器搬送部1013を含んでいる。検体採取容器搬送部1013は、検体採取容器1007aが載置される載置部1131と、空気圧により駆動するエアシリンダ1132とを有している。また、検体採取容器搬送部1013は、エアシリンダ1132の駆動により載置部1131を移動させて、検体採取容器1007aを搬送する。検体採取容器搬送部1013は、被検者エリア1011に配置されたカバー1133が閉められたことに基づいて、載置部1131を被検者エリア1011からロボットエリア1012に移動させてもよい。ここで、カバー1133は、水平方向の回動軸周りに回動可能に設けられている。カバー1133は、下に回動して載置部1131を覆う閉位置と、上に回動して載置部1131を露出させる開位置と、に移動可能である。そして、カバー1133が閉位置に移動されたことに基づいて、載置部1131を被検者エリア1011からロボットエリア1012に移動させてもよい。また、検体採取容器搬送部1013は、被検者エリア1011に配置されたスイッチ1134が操作されたことに基づいて、載置部1131を被検者エリア1011からロボットエリア1012に移動させてもよい。ロボットエリア1012に移動された載置部1131に載置された検体採取容器1007aは、第1ロボット1004aにより把持されてロボットエリア1012に取り込まれる。これにより、被検者エリア1011およびロボットエリア1012を確実に隔離しながら、被検者エリア1011からロボットエリア1012に検体を容易に移動させることができる。
【0126】
図10に示すように、第1ユニット1001は、被検者エリア1011の空気の流れを調整する空調部1121を含んでいる。空調部1121は、被検者エリア1011の環境を陽圧または陰圧にする。これにより、被検者エリア1011を清潔に保つことができる。
【0127】
第1ユニット1001は、検体を処理するための第1ロボット1004aを滅菌処理する滅菌部1017bを含んでいる。これにより、第1ロボット1004aを滅菌することができるので、コンタミネーションや感染を効果的に抑制することができる。
【0128】
第1ユニット1001は、希釈液により希釈された検体が収容された検体採取容器1007aを搬送する搬送部1061を含んでいる。搬送部1061は、検体採取容器1007aを下流の第1ロボット1004bに向けて搬送する。
【0129】
第1ユニット1001は、複数の検体を遠心分離可能な第1遠心分離機1018を含んでいる。また、第1ユニット1001は、所定時間毎に第1遠心分離機1018を駆動させて検体の遠心分離処理を行う。つまり、第1遠心分離機1018に検体が満載されなくても、所定時間毎に遠心分離処理が行われる。これにより、検体が貯まるまで待機することに起因して、検体への処理が滞るのを抑制することができる。
【0130】
第1ユニット1001は、検体を処理するためのロボット1004としての第1ロボット1004bを含んでいる。第1ロボット1004bは、垂直多関節ロボットアーム1043を有している。第1ロボット1004bは、搬送部1061により搬送される検体採取容器1007aを、振盪部1019に搬送し、振盪処理後、第1遠心分離機1018に搬送する。また、第1ロボット1004bは、遠心分離処理後の検体採取容器1007aを、搬送部1006aに搬送する。
【0131】
第1ユニット1001は、第1ロボット1004bにより、第1遠心分離機1018にバランス用遠沈管を設置して、第1遠心分離機1018を駆動させて検体の遠心分離処理を行う。これにより、所定時間毎に遠心分離処理を行うことにより遠心分離処理を行う検体採取容器1007aの数が毎回異なる場合でも、バランス用遠沈管によりバランスを調整することができる。
【0132】
第1ユニット1001は、第1遠心分離機1018内の検体の位置を取得するための画像を撮像する撮像部1181を含んでいる。また、第1ユニット1001は、検体を処理するための第1ロボット1004bにより、第1遠心分離機1018から検体(検体採取容器1007a)を取り出す。具体的には、第1ユニット1001は、撮像部1181により撮像された画像に基づいて、第1遠心分離機1018内の検体採取容器1007aの位置を認識する。そして、第1ユニット1001は、認識した位置の検体採取容器1007aを、第1ロボット1004bにより取り出す。これにより、第1ロボット1004bにより第1遠心分離機1018から容易に検体採取容器1007aを取り出すことができる。
【0133】
第1ユニット1001は、検体を再検査する場合に、第2ユニット1002から再検査用の検体を受け入れるとともに、受け入れた再検査用の検体を第1遠心分離機1018による遠心分離処理に投入する。これにより、検体を再度採取することなく検体の再検査を行うことができる。
【0134】
第1ユニット1001は、検体を振盪させる振盪部1019を含んでいる。振盪部1019は、複数の検体採取容器1007aを載置可能である。また、振盪部1019は、載置された検体採取容器1007a内の検体を撹拌するために用いられる。また、振盪部1019は、載置された検体採取容器1007aを周期的に移動させて振盪する。また、振盪部1019は、振盪処理終了後に一定の位置に停止する。これにより、第1ロボット1004bは、検体採取容器1007aを振盪部1019に載置した位置に、振盪後の検体採取容器1007aを取りに行けばよいので、第1ロボット1004bにより振盪部1019から容易に検体採取容器1007aを取り出すことができる。
【0135】
図14に示すように、第2ユニット1002には、希釈された検体を複数のウェル1073を有するプレート1007b上に分注するロボット1004としての第2ロボット1004cが設けられている。プレート1007bは、たとえば、
図16に示すように、8列12行の96のディープウェルを有している。第2ロボット1004cは、水平関節を有するロボットアーム1041および1042を含んでいる。
【0136】
また、第2ユニット1002には、プレート1007bを分注位置に供給するロボット1004としての第3ロボット1004dが設けられている。第3ロボット1004dは、垂直多関節ロボットアーム1043を有している。第3ロボット1004dは、フィーダ1023から供給される空のプレート1007bを把持して供給台1631に搬送する。また、第3ロボット1004dは、搬送部1006aにより搬送される検体採取容器1007aを、搬送部1062に移動させる。また、第3ロボット1004dは、フィーダ1023から供給されるチップラックを、チップ供給スライダ1064に搬送する。また、第3ロボット1004dは、収容された検体の一部がプレート1007bに分注済みの検体採取容器1007aを、搬送部1062から保管ラック1022に搬送する。また、第3ロボット1004dは、排出台1635から排出されるプレート1007bを、搬送部1065に搬送する。
【0137】
第2ロボット1004cは、搬送部1062により搬送される検体採取容器1007aから検体をプレート1007bに分注する。
【0138】
第2ユニット1002は、プレート1007bを所定時間かけて搬送してプレート上の検体を不活化させるプレート搬送部1063を含んでいる。プレート搬送部1063は、搬送部1632と、搬送部1633と、搬送部1634と、を含んでいる。プレート搬送部1063の搬送部1632、搬送部1633および搬送部1634は、第2ロボット1004cを取り囲むように、略U字形状に配置されている。
【0139】
搬送部1632は、プレート1007bを供給台1631から搬送部1633まで搬送する。供給台1631では、プレート1007bに不活化液、洗浄液A、洗浄液B、溶出液(水)が供給される。搬送部1633では、プレート1007bに、検体採取容器1007aから検体が分注される。そして、搬送部1633は、不活化に必要な時間(たとえば、10分間)をかけて、プレート1007bを、搬送部1634に搬送する。搬送部1634は、プレート1007bを、排出台1635に搬送する。これにより、複数のプレート1007bに対して不活化処理を並行して行うことができる。
【0140】
第2ユニット1002は、検体が採取された検体採取容器1007aからプレート1007bに一部の検体を分注した後、残りの検体が収容された検体採取容器1007aを所定時間保管する保管ラック1022を含んでいる。保管ラック1022は、たとえば、2時間、検体採取容器1007aを保管する。これにより、再検査が必要な場合に、保管ラック1022から検体を取り出して再検査することができるので、検体を再度採取する必要がない。
【0141】
第2ユニット1002は、希釈された検体が第2ロボット1004cによりプレート1007b上に分注される内部空間を有するキャビネット1021を含んでいる。つまり、第2ロボット1004cは、キャビネット1021の内部空間内においてハンド(エンドエフェクタ)を移動させながら駆動する。これにより、キャビネット1021内において検体を分注することができるので、検体が外部に拡散して、感染のリスクが高まるのを効果的に抑制することができる。
【0142】
第2ユニット1002は、希釈された検体を分注するためのチップを廃棄するシュータ1241を含んでいる。シュータ1241に廃棄されたチップは、廃棄箱1024に移動して収容される。これにより、使用済みのチップを容易に廃棄することができる。
【0143】
第2ユニット1002は、
図16に示すように、プレート1007bの複数のウェル1073に対して、複数の希釈された検体を空のウェル1073を隔てて分注する。これにより、間隔をあけて検体を分注することができるので、コンタミネーションを効果的に抑制することができる。
【0144】
第2ユニット1002は、
図15に示すように、核酸抽出処理を行うロボット1004としての複数のロボット1004eを含んでいる。ロボット1004eは、垂直多関節ロボットアーム1043を有している。核酸抽出処理では、搬送部1065によりプレート1007bが搬送される。搬送部1065により搬送されたプレート1007bは、ロボット1004eにより作業台に移動されて核酸抽出処理が行われる。第2ユニット1002は、磁石部1025と、チップラック置き場1026と、加温部1027と、振盪部1028と、廃棄箱1029とを含んでいる。また、第2ユニット1002は、磁性粒子供給部1025aと、チップラック置き場1026aとを含んでいる。
【0145】
磁石部1025は、磁性粒子供給部1025aからプレート1007bの検体に供給された磁性粒子を集めるために用いられる。具体的には、磁石部1025は、プレート1007bが載置された状態で、磁石をプレート1007bの検体に磁石を作用させることにより、集磁する。
【0146】
チップラック置き場1026は、チップラック置き場1026aから供給されるチップラックが置かれる。また、使用済みのチップラックは、チップラック置き場1026aに返却される。
【0147】
加温部1027は、プレート1007bの検体を加温する。振盪部1028は、プレート1007bの検体を振盪させて撹拌する。
【0148】
廃棄箱1029は、検体を分注するためのチップ、プレート1007bが廃棄される。また、廃棄箱1029は、
図17に示すように、収容部1291と、先細り部1292とを有している。つまり、廃棄箱1029は、先端(入口)が先細り形状に形成されている。これにより、液はねを抑制することができる。
【0149】
第3ユニット1003は、
図18に示すように、検体の測定を行うための試薬を調製する試薬調製室1031と、検体を測定する測定室1032と、を含んでいる。試薬調製室1031は、陽圧にされている。測定室1032は、陰圧にされている。これにより、試薬調製室1031内に浮遊する異物が侵入するのを抑制することができる。また、測定室1032からウィルスが流出するのを抑制することができる。
【0150】
第3ユニット1003は、試薬調製室1031と、測定室1032とを連通させる開口を開閉するシャッタ1033を含んでいる。シャッタ1033は、試薬調製室1031と測定室1032との間で物をやりとりする場合に開放され、それ以外の場合には、閉塞されている。これにより、試薬調製室1031および測定室1032を確実に隔離しながら、試薬調製室1031から測定室1032に検体や調製した試薬を容易に移動させることができる。
【0151】
第3ユニット1003は、試薬調製処理を行うロボット1004としてのロボット1004fを含んでいる。ロボット1004fは、垂直多関節ロボットアーム1043を有している。また、第3ユニット1003の試薬調製室1031には、冷凍庫1311と、冷蔵庫1312と、開栓装置1313と、調製場所1314と、チップ置き場1315と、廃棄箱1316とが設けられている。
【0152】
冷凍庫1311には、氷点下(たとえば、-18℃)において保管される試薬(Enzyme Mix)が保管されている。また、冷蔵庫1312には、低温(たとえば、4℃)において保管される試薬(Reaction Mix)が保管されている。試薬(Enzyme Mix)と、試薬(Reaction Mix)とは、使用に合わせて混合されて調製される。
【0153】
つまり、第3ユニット1003は、検体の検査の受付状況に基づいて、試薬調製室1031により試薬の調製を行う。これにより、試薬を過不足なく調製することができる。
【0154】
開栓装置1313は、試薬の容器を開栓する。調製場所1314では、試薬(Enzyme Mix)と、試薬(Reaction Mix)とが混合されて調製される。
【0155】
第3ユニット1003は、検体測定部1034に検体を供給する処理を行うロボット1004としての第4ロボット1004gを含んでいる。第4ロボット1004gは、垂直多関節ロボットアーム1043を有している。また、第3ユニット1003の測定室1032には、複数の検体測定部1034と、第2遠心分離機1035と、チューブ保持部1036と、蓋閉め部1037と、廃棄箱1038と、を含んでいる。
【0156】
検体測定部1034は、複数の検体を収容可能な複数のチューブ1074が連なった複数連チューブ1007cに検体を収容した状態で検体を測定する。検体測定部1034は、たとえば、RT-PCRによる測定を行う。
図19に示すように、複数連チューブ1007cは、たとえば、8個のチューブ1074が直線状に連結されている。また、複数連チューブ1007cのチューブ1074には、各々蓋1075が連結されている。蓋1075は、連結部を折り曲げることにより、チューブ1074を閉塞する。
【0157】
第3ユニット1003は、複数連チューブ1007cの蓋1075が開いていることを検知する開状態検知部1034aを含んでいる。これにより、複数連チューブ1007cの蓋1075が開いているにもかかわらず、複数連チューブ1007cが扱われるのを抑制することができるので、複数連チューブ1007cの蓋1075が開いていることに起因するコンタミネーションを効果的に抑制することができる。
【0158】
第2遠心分離機1035は、検体を遠心分離する。また、第2遠心分離機1035は、遠心分離処理終了後に停止位置が位置合わせされて停止する。これにより、第4ロボット1004gは、遠心分離処理後の検体を位置合わせされた停止位置に取りに行けばよいので、第4ロボット1004gにより遠心分離処理後の検体を第2遠心分離機1035から容易に取り出すことができる。
【0159】
チューブ保持部1036は、複数の複数連チューブ1007cを保持する。具体的には、チューブ保持部1036は、複数連チューブ1007cを上下方向に重ねて保持する。
【0160】
第4ロボット1004gは、複数連チューブ1007cを搬送する。また、第3ユニット1003は、第4ロボット1004gにより、チューブ保持部1036から複数連チューブ1007cを下方に取り出すとともに、複数連チューブ1007cに検体を分注した後、複数のチューブ1074の各々に接続された蓋1075を互いに異なるタイミングで曲げながら閉塞させる処理を行う。
【0161】
具体的には、蓋閉め部1037は、
図19に示すように、複数連チューブ1007cの複数の蓋1075の各々が当接する複数の当接部1371の平面視における位置が段差状にズレている。これにより、複数連チューブ1007cの複数の蓋1075が当接部1371に当接するタイミングが互いに異なるようになる。その結果、複数連チューブ1007cの複数の蓋1075を容易に閉めることができる。
【0162】
また、第3ユニット1003は、検査の精度を管理するための管理試薬を所定のタイミングにより測定する。これにより、検査の精度が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0163】
(第3実施形態)
図20を参照して、第3実施形態による検査システム1200について説明する。
【0164】
図20に示すように、検査システム1200は、空港PCRシステム1210と、検査主体システム1220とを備えている。
【0165】
空港PCRシステム1210は、受付カウンター1211と、検体採取ロボットモジュール1212と、遠心ロボットモジュール1213と、開栓分注ロボットモジュール1214と、核酸抽出ロボットモジュール1215と、測定ロボットモジュール1216と、制御装置1217と、を備えている。
【0166】
受付カウンター1211は、検体容器を被検者Pに供給する。受付カウンター1211は、検体を複数受け付ける。ここで、検体は、感染症検査のための検体である。また、感染症検査は、PCR法を用いた検査である。
【0167】
検体採取ロボットモジュール1212は、複数(4体)の第1ロボット1212aを含んでいる。複数の第1ロボット1212aは、各々、2つのロボットアームにより処理を行う。また、ロボットアームは、各々、水平関節と、水平関節に接続された昇降機構と、を含んでいる。第1ロボット1212aは、被検者Pから採取された検体が入った検体採取容器1007aを保持するとともに、検体採取容器1007aを消毒する。第1ロボット1212aは、検体採取容器1007a内に検体を希釈するための希釈液を供給する。第1ロボット1212aは、希釈した検体が入った検体採取容器1007aを搬送部1221に載置する。なお、検体採取ロボットモジュール1212は、1体、2体、3体または5体以上の第1ロボット1212aを含んでいてもよい。
【0168】
遠心ロボットモジュール1213は、複数(2体)のロボット1213aを含んでいる。複数の第1ロボット1213aは、各々、垂直多関節ロボットアームを有している。ロボット1213aは、搬送部1221により搬送された検体採取容器1007aを撹拌機に投入する。ロボット1213aは、撹拌された後の検体採取容器を、遠心機に投入する。なお、遠心ロボットモジュール1213は、1体、または、3体以上のロボット1213aを含んでいてもよい。
【0169】
ここで、遠心ロボットモジュール1213が設置されたブースでは、搬送部1221により搬送された検体採取容器1007aが所定数(4個以上)貯留される。ロボット1213aは、貯留された所定数の検体容器に対して、処理を行う優先順位に合わせて遠心機に投入する。ロボット1213aは、遠心分離された後の検体採取容器を、搬送部1222に載置する。
【0170】
開栓分注ロボットモジュール1214は、第2ロボット1214aと、第3ロボット1214bとを含んでいる。第2ロボット1214aは、水平関節を有する2つのロボットアームを含んでいる。第3ロボット1214bは、垂直多関節ロボットアームを含んでいる。第2ロボット1214aは、搬送部1222により搬送された検体採取容器1007aを開栓する。第2ロボット1214aは、検体採取容器1007aを開栓した後、検体採取容器1007a内の検体をプレート1007b(96穴ディープウェルプレート)に分注する。第2ロボット1214aは、プレート1007b(96穴ディープウェルプレート)に複数の試薬を分注する。第3ロボット1214bは、検体および試薬が分注されたプレート1007b(96穴ディープウェルプレート)を搬送部1223に載置する。
【0171】
核酸抽出ロボットモジュール1215は、複数(5体)のロボット1215aを含んでいる。ロボット1215aは、垂直多関節ロボットアームを有している。ロボット1215aは、搬送部1223により搬送されたプレート1007b(96穴ディープウェルプレート)を作業台に移動させる。ロボット1215aは、作業台上のプレート1007b(96穴ディープウェルプレート)に対して、核酸抽出作業を行う。ロボット1215aは、抽出した核酸を複数連チューブ1007c(8連PCRチューブ)に分注する。ロボット1215aは、検体から抽出された核酸が分注された複数連チューブ1007c(8連PCRチューブ)を搬送部1224に載置する。なお、核酸抽出ロボットモジュール1215は、1体、2体、3体、4体、または、6体以上のロボット1215aを含んでいてもよい。
【0172】
測定ロボットモジュール1216は、ロボット1216aと、第4ロボット1216bとを含んでいる。ロボット1216aは、垂直多関節ロボットアームを有している。第4ロボット1216bは、垂直多関節ロボットアームを有している。ロボット1216aは、2種類の試薬を調製する。ロボット1216aは、搬送部1224により搬送された複数連チューブ1007c(8連PCRチューブ)を作業台に移動させる。ロボット1216aは、作業台の複数連チューブ1007c(8連PCRチューブ)に調製した試薬を分注するとともに、吸引撹拌する。第4ロボット1216bは、複数連チューブ1007c(8連PCRチューブ)の蓋を閉めた後、遠心機に投入する。第4ロボット1216bは、遠心分離させた検体が入った複数連チューブ1007c(8連PCRチューブ)を、サーマルサイクラーにセットする。第4ロボット1216bは、加熱した複数連チューブ1007c(8連PCRチューブ)を、PCR検査装置にセットする。
【0173】
制御装置1217は、複数の検体の中から検査する優先検査検体を決定した後、検査検体から順に処理を開始する制御を行う。具体的には、制御装置1217は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する記憶部とを含んでいる。記憶部には、PCRシステム管理プログラムが記憶されている。制御装置1217は、PCRシステム管理プログラムに基づいて、空港PCRシステム1210を管理および制御する。
【0174】
検査主体システム1220は、PCR検査装置の検査結果に基づいて、被検者Pが陽性かまたは陰性かを判断する。検査主体システム1220は、PCR検査装置の検査結果の情報を含む書類を発行する。具体的には、検査主体システム1220は、CPUと、ROMおよびRAMを有する記憶部とを有する制御部1220aを含んでいる。記憶部には、検査結果判断プログラムが記憶されている。制御部1220aは、検査結果判断プログラムに基づいて、検査主体システム1220を制御する。
【0175】
(第4実施形態)
図21~
図31を参照して、第4実施形態による検査システム1300について説明する。この第4実施形態では、第2実施形態と異なり、第2ユニット1002aの開栓分注ユニット1500にキャビネット1021が設けられていない構成について説明する。後述するように、第4実施形態による第2ユニット1002aの開栓分注ユニット1500では、複数のロボットにより処理を行うため、人体への感染の対策であるキャビネット1021を設けていない。また、キャビネット1021を設けないことにより、設置するロボットの選択の幅を広げることが可能である。たとえば、より小型なロボットを選択したり、タクトタイムを向上させる高速な動作が可能なロボットを選択することが可能である。
【0176】
図21に示すように、検査システム1300は、第1ユニット1001と、第2ユニット1002aと、第3ユニット1003と、を備えている。第2ユニット1002aは、開栓分注ユニット1500を含んでいる。また、検査システム1300の第1ユニット1001には、ロボット1004aおよび1004bが設けられている。また、検査システム1100の第2ユニット1002aには、ロボット1511、1521、1522、1531および1004eが設けられている。また、検査システム1300の第3ユニット1003には、ロボット1004fおよび1004gが設けられている。また、第1ユニット1001、第2ユニット1002aおよび第3ユニット1003は、コンテナ1005内に設けられている。なお、第1ユニット1001、第2ユニット1002aおよび第3ユニット1003のうち少なくとも1つがコンテナ1005内に設けられていればよい。これにより、検査システム1300を、容易に搬送して設置することができる。
【0177】
また、検査システム1300は、第1ユニット1001、第2ユニット1002aおよび第3ユニット1003を互いに接続する搬送部1006aおよび1006bを備えている。具体的には、第1ユニット1001および第2ユニット1002aは、搬送部1006aにより接続されている。また、第2ユニット1002aおよび第3ユニット1003は、搬送部1006bにより接続されている。これにより、第1ユニット1001、第2ユニット1002aおよび第3ユニット1003間の検体の移動を、搬送部1006aおよび1006bにより容易に行うことができる。
【0178】
第1ユニット1001は、検体を採取して検体を受け入れる。たとえば、第1ユニット1001では、被検者から検体を採取し、採取した検体を希釈液により希釈する処理を行う。また、第1ユニット1001では、希釈した検体の撹拌処理を行う。また、第1ユニット1001では、希釈した検体の遠心分離処理を行う。第2ユニット1002aは、第1ユニット1001に接続され、検体に対して測定を行う前の前処理を行う。たとえば、第2ユニット1002aでは、検体の前処理として、開栓分注ユニット1500において、検体の分注処理を行う。また、第2ユニット1002aでは、検体の前処理として、開栓分注ユニット1500において、試薬の分注処理を行う。また、第2ユニット1002aでは、開栓分注ユニット1500の下流において、検体の前処理として、核酸抽出処理を行う。第3ユニット1003は、第2ユニット1002aに接続され、前処理が行われた検体の測定を行う。たとえば、第3ユニット1003では、RT-PCR検査により検体中に感染性ウイルスが含まれているかを測定する処理を行う。
【0179】
(開栓分注ユニットの構成)
図22および
図23に示すように、開栓分注ユニット1500には、検体保管部1510と、検体分注部1520と、ワーク搬送部1530と、試薬分注部1540と、が設けられている。また、開栓分注ユニット1500は、第2ユニット1002aの開栓分注ユニット1500の外部よりも気圧が低い負圧に保たれている。
【0180】
(検体保管部の構成)
検体保管部1510は、複数の検体採取容器1007aを保管する。具体的には、検体保管部1510は、検体が採取された検体採取容器1007aからプレート1007bに一部の検体を分注した後、残りの検体が収容された検体採取容器1007aを所定時間保管する。検体保管部1510は、たとえば、2時間、検体採取容器1007aを保管する。これにより、再検査が必要な場合に、検体保管部1510から検体を取り出して再検査することができるので、検体を再度採取する必要がない。
【0181】
検体保管部1510は、移動ロボット1511と、保管部1512と、廃棄部1513と、検体載置部1514と、QC保管部1515と、を含んでいる。
【0182】
移動ロボット1511は、保管部1512の検体採取容器1007aを移動させる。また、移動ロボット1511は、第1ユニット1001(
図21参照)から検体採取容器1007aを受け取り、検体載置部1514に載置する。また、移動ロボット1511は、検体が分注された検体採取容器1007aを検体載置部1514から保管部1512に移動させる。また、移動ロボット1511は、所定時間保管した検体採取容器1007aを、廃棄部1513に廃棄する。
【0183】
移動ロボット1511は、
図22に示すように、ロボット本体1511aと、ロボット本体1511aの先端に取り付けられたハンド1511bと、を含んでいる。ロボット本体1511aは、複数の垂直関節を含む垂直多関節ロボットである。ハンド1511bは、
図24に示すように、複数(4つ)の検体採取容器1007aを把持可能である。ハンド1511bは、複数(4つ)組のチャック15111を有している。チャック15111の各々は、3つの爪を有し、3つの爪を開閉することにより検体採取容器1007aを把持する。4組のチャック15111のうち、3組のチャック15111は共通の空圧源により駆動される。また、4組のチャック15111のうち残りの1組のチャック15111は、他の3組のチャック15111とは異なる空圧源により独立して駆動される。これにより、他の検体よりも優先して前処理を行い測定させる検体である割り込み検体などの個別に把持する必要がある検体採取容器1007aを個別に把持することが可能である。
【0184】
図22および
図23に示すように、保管部1512は、複数の検体採取容器1007aを載置することが可能である。保管部1512は、たとえば、2時間で処理(前処理および測定)することが可能な個数(たとえば、数百個)の検体採取容器1007aを保管することが可能である。保管部1512は、検体採取容器1007aを立てた状態で挿入するための複数の保持孔が形成されている。
【0185】
廃棄部1513は、平面視において保管部1512内に複数(6つ)設けられている。廃棄部1513には、所定時間保管された後の検体採取容器1007aが廃棄される。廃棄部1513は、架台下に所定時間分(たとえば、8時間分)の検体採取容器1007aを収容可能な収容部を有している。
【0186】
検体載置部1514は、第1ユニット1001(
図21参照)から送られた検体採取容器1007aが載置される。検体載置部1514に載置された検体採取容器1007aは、検体分注部1520に受け渡されて、検体が分注された後、再び検体載置部1514に戻される。検体載置部1514に戻された検体が分注された後の検体採取容器1007aは、保管部1512に移動される。また、検体採取容器1007aの識別子が読み込めないなどにより、作業者による確認が必要な検体採取容器1007aは、検体載置部1514からシュータにより外部に払い出される。
【0187】
QC保管部1515は、品質管理のためのポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの試薬が保管される。QC保管部1515に保管されたポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの試薬は、所定回数の検体毎(たとえば、数十回毎)に分注されて、測定に送られる。
【0188】
検体分注部1520は、検体採取容器1007aから検体をプレート1007bに分注する。具体的には、検体分注部1520は、検体採取容器1007aを開栓し、開栓した検体採取容器1007aから検体の一部をプレート1007bに分注し、分注後の検体採取容器1007aを閉栓する。
【0189】
(検体分注部の構成)
検体分注部1520は、開栓ロボット1521と、分注ロボット1522と、作業台1523と、開栓把持部1524と、溶解吸着液分注装置1525と、廃棄部1526と、を含んでいる。
【0190】
開栓ロボット1521は、
図22に示すように、ロボット本体1521aと、ロボット本体1521aの先端に取り付けられたハンド1521bと、を含んでいる。ロボット本体1521aは、複数の垂直関節を含む垂直多関節ロボットである。ハンド1521bは、
図25に示すように、チャック15211を有している。チャック15211は、3つの爪を有し、3つの爪を開閉することにより検体採取容器1007aの蓋1071を把持する。
【0191】
図26に示すように、開栓把持部1524は、載置された検体採取容器1007aを回転しないように把持する。また、開栓把持部1524には、検体採取容器1007aの識別子を読み取るリーダが設けられている。また、開栓把持部1524には、蓋1071の開栓および閉栓の状態を検知する検知センサが設けられている。検知センサは、たとえば、カメラ内蔵のレーザセンサを含んでいる。
【0192】
開栓ロボット1521は、検体を分注する検体採取容器1007aの開栓を行う。具体的には、開栓ロボット1521は、検体保管部1510の検体載置部1514に載置された検体採取容器1007aを受け取り、開栓把持部1524に移動させる。そして、開栓ロボット1521は、開栓把持部1524により把持された状態の検体採取容器1007aの蓋1071(
図11参照)を把持して開栓方向に回転させることにより、検体採取容器1007aを開栓する。また、
図26に示すように、開栓ロボット1521は、検体が分注された後の検体採取容器1007aが開栓把持部1524により把持された状態で、検体採取容器1007aの蓋1071をチャック15211により把持して閉栓方向に回転させることにより、検体採取容器1007aを閉栓する。そして、開栓ロボット1521は、閉栓後の検体採取容器1007aを検体保管部1510の検体載置部1514に移動させる。また、開栓ロボット1521は、検体採取容器1007aと同様にして、品質管理のためのポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの容器を受け取り、開栓および閉栓する。
【0193】
図22および
図23に示すように、分注ロボット1522は、検体採取容器1007aからプレート1007bに検体を分注する。具体的には、分注ロボット1522は、開栓された検体採取容器1007aから検体を吸引して、プレート1007bの所定の位置に吸引した検体を吐出する。また、分注ロボット1522は、検体採取容器1007aと同様にして、品質管理のためのポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの容器からプレート1007bに試薬を分注する。
【0194】
分注ロボット1522は、
図22に示すように、ロボット本体1522aと、ロボット本体1522aの先端に取り付けられたハンド1522bと、を含んでいる。ロボット本体1522aは、複数の垂直関節を含む垂直多関節ロボットである。ハンド1522bは、
図27に示すように、本体部15221と、ノズル15222と、を含んでいる。ノズル15222の先端には使い捨てのチップ15223が着脱可能に取り付けられる。本体部15221は、ノズル15222に対して、検体の吸引および吐出を行う負圧および正圧を供給する。また、本体部15221は、ノズル15222内の圧力を検知することにより、容器内の液面を検知する。そして、液面の検知結果と、分注ロボット1522により下降されたチップ15223の先端位置とに基づいて、容器内の水位(検体の量または試薬の量)が取得される。また、分注ロボット1522は、検体を分注する度に作業台1523から新しいチップ15223を取り、検体分注後、使用済みのチップ15223を廃棄部1526に廃棄する。
【0195】
図22および
図23に示すように、作業台1523には、試薬および検体が分注されるプレート1007bが載置される。また、作業台1523には、分注ロボット1522のハンド1522bの先端に取り付けられる複数のチップ15223が収容されるチップラックが載置される。
【0196】
図22に示すように、溶解吸着液分注装置1525は、溶解吸着液をプレート1007bに分注する。具体的には、溶解吸着液分注装置1525は、作業台1523上に設けられている。また、溶解吸着液分注装置1525は、ワーク搬送部1530の搬送ロボット1531に把持された状態のプレート1007bに対して溶解吸着液を分注する。また、溶解吸着液分注装置1525は、複数(4つ)のノズル1525aを含んでおり、プレート1007bの4つのウェル1073(
図16参照)に対して並行して溶解吸着液を分注可能である。また、溶解吸着液分注装置1525は、搬送ロボット1531によりプレート1007bを移動させて、2回の動作により1つのプレート1007bに対して8つのウェル1073に溶解吸着液を分注する。また、溶解吸着液分注装置1525は、4つのノズル1525aの各々に流量センサが設けられており、4つのポートを切り替えて分注する分注ポンプにより溶解吸着液を分注する。
【0197】
廃棄部1526は、検体分注に用いられた使用済みのチップ15223が廃棄される。廃棄部1526は、上面に小さな廃棄口1526aを有し、廃棄口1526aからチップ15223が入れられる。廃棄部1526には、廃棄口1526aの下方にチップ15223が収容されるメディカルペール(感染の可能性を有する廃棄物を収容する蓋つきの容器)が配置される。
【0198】
(ワーク搬送部の構成)
ワーク搬送部1530は、開栓分注ユニット1500内においてワークを搬送する。具体的には、ワーク搬送部1530は、検体が分注されるプレート1007bを搬送する。また、ワーク搬送部1530は、検体分注部1520において用いられるチップ15223(
図27参照)が収容されたチップラックを搬送する。また、ワーク搬送部1530は、試薬分注部1540において用いられるチップ15413(
図29参照)が収容されたチップラックを搬送する。
【0199】
図22および
図23に示すように、ワーク搬送部1530は、搬送ロボット1531と、棚1532と、棚1533と、複数(2つ)のプレート搬送部1534と、プレート渡し部1535と、を含んでいる。
【0200】
搬送ロボット1531は、プレート1007bを把持して搬送する。具体的には、搬送ロボット1531は、プレート搬送部1534からプレート1007bを受け取り、作業台1523に搬送する。また、搬送ロボット1531は、溶解吸着液分注装置1525による溶解吸着液を分注する際にプレート1007bを把持して移動させる。また、搬送ロボット1531は、溶解吸着液が分注されたプレート1007bを、作業台1523の検体を分注する位置まで搬送する。また、搬送ロボット1531は、検体が分注されたプレート1007bを、試薬分注部1540の作業台1542に搬送する。また、搬送ロボット1531は、作業台1542において試薬が分注されたプレート1007bをプレート渡し部1535に搬送する。
【0201】
また、搬送ロボット1531は、検体分注部1520において用いられるチップ15223(
図27参照)が収容されたチップラックを、棚1532から取り出して、作業台1523に搬送する。また、搬送ロボット1531は、試薬分注部1540において用いられるチップ15413(
図29参照)が収容されたチップラックを、試薬分注部1540の作業台1542に搬送する。また、搬送ロボット1531は、チップラックの中蓋を蓋廃棄部1543に搬送して廃棄する。
【0202】
搬送ロボット1531は、ロボット本体1531aと、ロボット本体1531aの先端に取り付けられたハンド1531bと、を含んでいる。ロボット本体1531aは、複数の垂直関節を含む垂直多関節ロボットである。ハンド1531bは、
図28に示すように、一対のチャック爪15311を有している。一対のチャック爪15311は、開閉することによりプレート1007bまたはチップラックを把持する。
【0203】
図22および
図23に示すように、棚1532には、検体分注部1520において用いられるチップ15223(
図27参照)が収容されたチップラックが保管される。また、棚1532には、試薬分注部1540において用いられる試薬(磁性粒子、proK試薬)が保管される。棚1532には引き出しが設けられており、保管されたチップラックおよび試薬は引き出しが引き出された状態で搬送ロボット1531により取り出される。また、棚1532は、外部から作業者がチップラックおよび試薬を供給可能である。
【0204】
棚1533には、試薬分注部1540において用いられるチップ15413(
図29参照)が収容されたチップラックが保管される。棚1533には引き出しが設けられており、保管されたチップラックは引き出しが引き出された状態で搬送ロボット1531により取り出される。また、棚1533は、外部から作業者がチップラックを供給可能である。
【0205】
プレート搬送部1534は、使用前の新しいプレート1007bを搬送する。プレート搬送部1534は、平行に2つ設けられている。2つのプレート搬送部1534は、各々、プレート1007bを搬送するコンベアを有している。
【0206】
プレート渡し部1535は、検体および試薬が分注されたプレート1007bを核酸抽出処理を行う下流のユニットに受け渡すために設けられている。
【0207】
(試薬分注部の構成)
試薬分注部1540は、プレート1007bに試薬を分注する。具体的には、試薬分注部1540は、検体が分注されたプレート1007bに、磁性粒子およびproK試薬を分注する。
【0208】
試薬分注部1540は、分注ロボット1541と、作業台1542と、蓋廃棄部1543と、を含んでいる。
【0209】
分注ロボット1541は、作業台1542の撹拌機1542aに載置されたプレート1007bに収容された磁性粒子を、検体が分注されたプレート1007bに分注する。具体的には、分注ロボット1541は、撹拌機1542aにより撹拌された磁性粒子を吸引して、プレート1007bの所定の位置に吸引した磁性粒子を吐出する。また、分注ロボット1541は、作業台1542の冷却器1542bに載置されたプレート1007bに収容されたproK試薬を、検体が分注されたプレート1007bに分注する。具体的には、分注ロボット1541は、冷却器1542bにより冷却されたproK試薬を吸引して、プレート1007bの所定の位置に吸引したproK試薬を吐出する。
【0210】
分注ロボット1541は、ロボット本体1541aと、ロボット本体1541aの先端に取り付けられたハンド1541bと、を含んでいる。ロボット本体1541aは、複数の垂直関節を含む垂直多関節ロボットである。ハンド1541bは、
図29に示すように、本体部15411と、複数(4つ)のノズル15412と、を含んでいる。複数のノズル15412の各々の先端には使い捨てのチップ15413が着脱可能に取り付けられる。本体部15411は、複数のノズル15412に対して、検体の吸引および吐出を行う負圧および正圧を供給する。また、分注ロボット1541は、1つのプレート1007bに対して、検体が分注された8つのウェル1073の各々に、磁性粒子およびproK試薬の両方を分注する。つまり、分注ロボット1541は、4つのノズル15412により4つのウェル1073に磁性粒子およびproK試薬の一方を分注し、その後、4つのノズル15412により残りの4つのウェル1073に磁性粒子およびproK試薬の一方を分注する。そして、分注ロボット1541は、使用したチップ15413を新しいチップ15413に付け替える。その後、分注ロボット1541は、4つのノズル15412により4つのウェル1073に磁性粒子およびproK試薬の他方を分注し、その後、4つのノズル15412により残りの4つのウェル1073に磁性粒子およびproK試薬の他方を分注する。つまり、分注ロボット1541は、1つのプレート1007bの8つのウェル1073に対して、合計で4回の分注動作を行うことにより、磁性粒子およびproK試薬を分注する。
【0211】
図23に示すように、作業台1542には、撹拌機1542aと、冷却器1542bと、廃棄部1542cと、プレート載置部1542dと、待機部1542eと、が設けられている。
【0212】
撹拌機1542aは、磁性粒子が収容されたプレート1007bが載置され、磁性粒子を拡散させるようにプレート1007bを振動させる。
【0213】
冷却器1542bは、proK試薬が収容されたプレート1007bが載置され、proK試薬を4℃程度に冷却する。
【0214】
廃棄部1542cは、作業台1542の下方に設けられ、分注ロボット1541により試薬分注に用いられたチップ15413が廃棄される。
【0215】
プレート載置部1542dは、検体が分注されたプレート1007bが載置され、載置されたプレート1007bに対して、分注ロボット1541により試薬(磁性粒子およびproK試薬)が分注される。
【0216】
待機部1542eは、不活化待機のために、検体が分注されたプレート1007bが載置される。
【0217】
蓋廃棄部1543は、チップラックの中蓋が廃棄される。
【0218】
(第3ユニットの構成)
第3ユニット1003は、
図21に示すように、検体の測定を行うための試薬を調製する試薬調製室1031と、検体を測定する測定室1032と、を含んでいる。また、第3ユニット1003は、複数連チューブ1007cを搬送する第4ロボット1004gが設けられている。第4ロボット1004gには、
図30に示すように、複数連チューブ1007cを把持するハンド1550が設けられている。
【0219】
ハンド1550は、一対のチャック爪1551を有している。一対のチャック爪1551の各々には、複数連チューブ1007cの複数(8つ)のチューブ1074を挟み込んで把持する複数(8つ)の把持部1552が設けられている。また、8つの把持部1552のうち5つの把持部1552には、当接部1553が設けられている。当接部1553は、チューブ1074の蓋1075が閉じられる際にチューブ1074が倒れることを抑制する。
【0220】
複数の把持部1552は、平面視において各々凹形状に形成されている。また、把持部1552は、滑り止め加工が施されている。たとえば、把持部1552は、綾目ローレット加工、または、ブチルゴムの焼き付け加工が施されている。
【0221】
当接部1553は、
図31に示すように、少なくとも、蓋閉め部1037が蓋1075に当接する側の把持部1552の下方に設けられている。当接部1553は、蓋閉め部1037により蓋1075が相対的に押された場合に、チューブ1074が当接する。これにより、チューブ1074が倒れるのを抑制することができるので、確実に蓋1075を閉めることが可能である。
【0222】
(その他の実施形態)
本開示の第1~第4実施形態の例について説明したが、本開示は、上記実第1~第4実施形態及び変形例に限定されない。すなわち、本開示の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。例えば、各種変形を実施形態及び変形例に施したもの、及び、異なる実施形態及び変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0223】
例えば、第1実施形態及び変形例では、検査設備システムは、各ユニット部分が移動体20に積載されるが、これに限定されない。検査設備システムの各ユニット部分は、目的の場所に、移動体20に積載されない状態で配置されてもよい。この場合、検査設備システムの各ユニット部分は、機械による移設が可能であり、運搬された各ユニット部分が機械により目的の場所に配置されてもよい。検査設備システムの各ユニット部分は、現場での組み立てが可能であり、目的の場所で組み立てられてもよい。この場合、検査設備システムの各ユニット部分は、箱体10内に収容されず、目的の場所で組み立てられる壁及び天井等によって囲まれて外部から隔離されてもよく、目的の場所の既存の壁及び天井等を利用して外部から隔離されてもよい。
【0224】
第1実施形態及び変形例では、検査設備システムの全てのユニット部分は一体化され、単一のユニットとして、箱体10内に収容されるが、これに限定されない。ユニット部分の一部又は全てが分離可能であってもよい。例えば、ユニット部分の少なくとも1つが、1つのユニットを形成し、当該1つのユニットが1つの箱体内に収容されてもよい。さらに、第1分析室R3及び第2分析室R4等の部屋が分離可能であってもよい。例えば、1つの部屋が1つの箱体内に収容されてもよい。このような検査設備システムは、複数の箱体を備えてもよい。複数の箱体は、互いに離れて配置されてもよく、互いに連結されてもよい。なお、ユニット部分の少なくとも1つが形成する1つのユニット及び1つの部屋は、配置場所での組み立てが可能であってもよい。この場合、1つのユニット及び1つの部屋は、配置場所で組み立てられる壁及び天井等によって囲まれて外部から隔離されてもよく、配置場所の既存の壁及び天井等を利用して外部から隔離されてもよい。
【0225】
第1実施形態及び変形例では、箱体10としてコンテナが例示されるが、箱体10の構成は、これに限定されない。箱体10の構成は、内部空間と外部空間とを遮断できる構成であればよい。例えば、箱体10は、予め箱状に組み立てられた又は移動体20等の上で組み立てられることが可能であるユニットハウス等であってもよい。
【0226】
第1実施形態及び変形例は、採取室R2、第1分析室R3及び第2分析室R4での処理が、ロボット110~130によって行われるが、これに限定されない。3つの部屋のうちの少なくとも1つの部屋での処理が、医療従事者によって行われてもよい。
【0227】
第1実施形態及び変形例では、採取室R2、第1分析室R3及び第2分析室R4に配置されるロボット110~130は、同じ型式のロボットであるが、これに限定されず、異なった型式のロボットであってもよい。配置されるロボットは、各部屋での処理に適したロボットであってもよい。
【0228】
第1実施形態及び変形例では、検査設備システムは、第1ユニット部分U1~第4ユニット部分U4を備えるが、これに限定されない。検査設備システムは、さらなるユニット部分を備えてもよく、第1ユニット部分U1~第4ユニット部分U4の少なくとも1つを備えなくてもよい。例えば、検査設備システムは、診察室R1を含む第4ユニット部分U4を備えなくてもよい。例えば、検査設備システムが屋外に配置される場合、検査設備システムは、箱体10の外部にいる被検者Pに対して検体を採取してもよい。
【0229】
第1実施形態及び変形例では、検査設備システムは、地理的境界を跨ぐ移動の起点及び終点の少なくとも一方に配置されるが、これに限定されない。例えば、検査設備システムは、人が多く集まる場所、又は、病原体を保有する可能性が高い人が集まる場所に配置されてもよい。例えば、検査設備システムは、病院、保健所、PCR検査施設、宿泊施設、病原体を保有する人の隔離施設、大型ビル、競技場及びホールに配置されてもよい。この場合、検査設備システムの各ユニット部分は、箱体に収容された状態で配置されてもよく、配置場所の部屋等の施設を利用して配置されてもよい。
【0230】
また、本開示の技術の各態様例は、以下のように挙げられる。本開示の一態様に係る検査設備システムは、被検者から検体の採取及び分析を行うための検査設備システムであって、検体を採取するための設備を備える採取室を形成する第1ユニット部分と、検体を分析するための設備を備える分析室を採取室と隔離して形成する第2ユニット部分と、分析の結果を出力する設備を備える第3ユニット部分とを備え、検査設備システムは、地理的境界を跨ぐ移動の起点及び終点の少なくとも一方に配置されることが可能である。
【0231】
上記態様によると、検査設備システムは、検体を採取するための第1ユニット部分と、検体を分析するための第2ユニット部分と、分析の結果を出力するための第3ユニット部分とを備える。検査設備システムは、検査設備システムが配置される場所で、検体の採取、分析及び分析結果の出力の一連の処理を可能にする。第1ユニット部分は採取室を形成され、第2ユニット部分は分析室を形成される。このような第1ユニット部分及び第2ユニット部分を備える検査設備システムの配置は、検査設備を備えない場所においても、簡易に可能である。検査設備システムは、検査設備を備えない場所への検査可能な環境の構築を簡易にすることができる。
【0232】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、第1ユニット部分は、採取室を陰圧環境にする第1空調システムを備えてもよい。
【0233】
上記態様によると、第1空調システムは、検体及び被検者の飛沫に含まれる病原体等が採取室の外部に拡散することを抑制し、採取室に適した空調環境を提供することができる。第1ユニット部分が第1空調システムを備えるため、第1空調システムの配置が簡易になる。
【0234】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、第2ユニット部分は、分析室を陽圧環境又は陰圧環境にする第2空調システムを備えてもよい。
【0235】
上記態様によると、第2空調システムは、分析室に適した空調環境を提供することができる。第2ユニット部分が第2空調システムを備えるため、第2空調システムの配置が簡易になる。
【0236】
本開示の一態様に係る検査設備システムは、被検者が検体を採取するための診察を受ける診察室を分析室と隔離して形成する第4ユニット部分をさらに備えてもよい。
【0237】
上記態様によると、検査設備システムは、診察室を検査設備システムとは別個に用意することを不要にする。検査設備システムは、検査設備システムが配置される場所で、診察、検体の採取及び検体の分析の一連の処理を可能にする。
【0238】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、第3ユニット部分は、医療従事者を収容する収容室を採取室と隔離して形成してもよい。
【0239】
上記態様によると、検査設備システムは、医療従事者を収容する収容室を検査設備システムとは別個に用意することを不要にする。検査設備システムは、検査設備システムが配置される場所で、医療従事者による職務遂行を可能にする。例えば、上記職務は、分析結果の評価、及び、分析結果の証明書の発行等の職務を含んでもよい。また、収容室は採取室から隔離されるため、医療従事者が病原体に汚染されることが防がれる。
【0240】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、第1ユニット部分及び第2ユニット部分の少なくとも1つは、検体の採取のための行為及び検体の分析のための行為の少なくとも1つを実行可能なロボットを備えてもよい。さらに、第1ユニット部分は、検体の採取のための行為を実行可能なロボットを備えてもよい。
【0241】
上記態様によると、検体の採取及び/又は検体の分析のロボットによる代替が可能になる。これにより、検体の採取及び検体の分析に従事する医療従事者の低減が可能になる。ロボットを用いた自動化により、時間に関係なく連続した処理の実行が可能になる。さらに、検体の採取のロボットによる代替は、医療従事者が病原体に汚染される危険性を低減することができる。
【0242】
本開示の一態様に係る検査設備システムは、第3ユニット部分によって形成される収容室に配置され且つロボットを操作する操作装置をさらに備え、収容室は、採取室と隔離して形成され、医療従事者を収容してもよい。
【0243】
上記態様によると、医療従事者は、採取室と隔離された収容室において、操作装置を用いてロボットを操作することができる。これにより、医療従事者が病原体と接することが低減される。
【0244】
本開示の一態様に係る検査設備システムは、ロボットを備えるユニット部分の全てから離れた遠隔位置に配置され且つ通信手段を介してロボットを遠隔操作する操作装置をさらに備えてもよい。
【0245】
上記態様によると、医療従事者は、ロボットを備えるユニット部分の全てから離れた遠隔位置において、操作装置を用いてロボットを遠隔操作することができる。例えば、医療従事者が、検査設備システムが配置される場所に滞在していない場合でも、検査設備システムによる処理が可能である。例えば、医療従事者は、互いに離れた複数の場所に配置された複数の検査設備システムに対しても、ロボットを遠隔操作することができる。よって、少ない医療従事者による検査設備システムの運用が可能である。
【0246】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、ユニット部分の少なくとも1つは、他のユニット部分から分離可能である個別のユニットを形成してもよい。
【0247】
上記態様によると、ユニット部分のアレンジの変更が可能になる。例えば、検査設備システムが配置される場所の環境に応じたユニット部分の配置が可能になる。
【0248】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、ユニット部分は、全体として一体化され、1つのユニットを形成してもよい。
【0249】
上記態様によると、検査設備システムが備えるユニット部分の全てを一括して扱うことが可能である。検査設備システムが備えるユニット部分の全てが一体化されるため、検査設備システムのコンパクト化と検査設備システムの構成の簡易化とが可能になる。
【0250】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、1つのユニットは、ユニット部分の全体を収容する1つの箱体を備えてもよい。
【0251】
上記態様によると、検査設備システムが備えるユニット部分の全てが1つの箱体内に集約される。よって、検査設備システムの配置及び除去が簡易になる。
【0252】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、ユニット部分が形成するユニットは、機械による移設が可能であってもよい。
【0253】
上記態様によると、ユニットの配置及び除去が簡易になる。
【0254】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、ユニット部分が形成するユニットは、移動体への積載が可能であってもよい。
【0255】
上記態様によると、移動体を用いたユニットの移動が可能になる。よって、様々な場所へのユニットの配置が容易に可能になる。
【0256】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、ユニット部分が形成するユニットは、配置場所で組み立てられる組み立て式のユニットであってもよい。
【0257】
上記態様によると、検査設備システムが配置される場所の環境に応じたユニットの配置が可能になる。例えば、組み立て済みのユニットが配置場所に搬入できない場合であっても、ユニットの配置が可能である。
【0258】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、第2ユニット部分は、検体に第1の分析をするための設備を備える第1分析室を採取室と隔離して形成する第1分析ユニット部分と、検体に第2の分析をするための設備を備える第2分析室を採取室及び第1分析室と隔離して形成する第2分析ユニット部分とを含み、第1分析ユニット部分は、第1分析室を陽圧環境及び陰圧環境の一方の環境にする空調システムを、第2空調システムとして備え、第2分析ユニット部分は、第2分析室を陽圧環境及び陰圧環境の他方の環境にする空調システムを、第2空調システムとして備えてもよい。
【0259】
上記態様によると、検査設備システムは、空調環境が異なる複数の分析室を備えることができる。よって、検査設備システムは、様々な検体の分析に対応することができる。
【0260】
本開示の一態様に係る検査設備システムは、空港のターミナルビルに配置されてもよい。
【0261】
上記態様によると、検査設備システムは、航空機に搭乗し空港から出発する搭乗者に対して出発前の検査の実施及び結果の出力を可能にし、航空機に搭乗し空港に到着した搭乗者に対して、空港から外部に出る前の検査の実施及び結果の出力を可能にする。検査結果は、搭乗者の汚染の有無の証明になる。よって、病原体に汚染された人が、他国等の他の地域に拡散することが抑制される。さらに、汚染されていない人が、航空機を利用して他の地域に行けないことも抑制される。
【0262】
本開示の一態様に係る検査設備システムにおいて、検体は、PCR(Polymerase Chain Reaction)検査を受ける検体であり、分析は、PCR検査のための分析であってもよい。
【0263】
上記態様によると、検査設備システムは、PCR検査の検査設備を備えない場所へ、PCR検査可能な環境を構築することができる。
【0264】
また、上記で用いた序数、数量等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0265】
1、1A、1B 検査設備システム
10 箱体
20 移動体
110、120、130 ロボット
310 第1操作入出力装置(操作装置)
320 第2操作入出力装置(操作装置)
600 結果出力装置
AB ターミナルビル
AC1 第1空調システム
AC2a、AC2b、AC2c、AC2d 第2空調システム
AC3 第3空調システム
AP 空港
H1、H2 医療従事者
P 被検者
R1 診察室
R2 採取室
R3 第1分析室(第1測定室)
R4 第2分析室(第2測定室)
R5 収容室
R6、R6a、R6b 操作室
U1 第1ユニット部分
U2 第2ユニット部分
U3 第3ユニット部分
U4 第4ユニット部分
U5 第5ユニット部分