(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030280
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】液体カートリッジの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B41J2/175 173
B41J2/175 141
B41J2/175 143
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133045
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 淳
(72)【発明者】
【氏名】石澤 卓
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056FA10
2C056KB27
2C056KC02
2C056KC04
2C056KC05
2C056KC11
2C056KC13
2C056KC14
2C056KC16
2C056KC30
(57)【要約】
【課題】液体カートリッジの液体収容室内の液体を排出することなく、空気を排出する。
【解決手段】液体カートリッジは、液体と気体を収容し拡張と収縮が可能な液体収容室と、多孔質部材とメッシュ状のシート部材を備え、それらを介して液体収容室内の液体を液体カートリッジの外部に供給する液体供給部と、液体収容室の壁に対して液体収容室が拡張する向きに力を加えるバネと、液体収容室に空気を導入する大気導入路と、液体収容室が第1状態のとき大気導入路を遮断し、第1状態より液体収容室の容積が小さい第2状態のとき大気導入路を導通させる、弁部と、を備える。方法は、液体供給部に液体を供給することにより液体収容室を第1状態とする第1工程と、液体収容室が液体供給部より下になる姿勢に液体カートリッジを配した状態で、環境圧力を低下させることにより、液体収容室内の空気の一部を液体収容室内から排出する第2工程と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの液体カートリッジに液体を充填することより液体カートリッジを製造する方法であって、
前記液体カートリッジは、
液体および気体を収容することができ、拡張および収縮が可能な液体収容室と、
連続した空隙を備える多孔質部材とメッシュ状のシート部材とを備え、前記連続した空隙と前記メッシュ状のシート部材の網目とを介して前記液体収容室内の前記液体を前記液体カートリッジの外部に供給する液体供給部と、
前記液体収容室を構成する壁に対して前記液体収容室が拡張する向きに力を加えるバネと、
前記液体収容室内に空気を導入する大気導入路と、
前記液体収容室が第1状態にあるときに前記大気導入路を遮断し、前記第1状態よりも前記液体収容室の容積が小さい第2状態にあるときに前記大気導入路を導通させる、弁部と、を備え、
前記方法は、
前記液体供給部に液体を供給することにより、前記連続した空隙と前記網目とを介して前記液体収容室内に液体を供給して、前記液体収容室を前記第1状態とする第1工程と、
前記第1工程の後に、前記液体収容室が前記液体供給部よりも下になる姿勢に前記液体カートリッジを配した状態で、前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力を、前記第1工程における前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力よりも低下させることにより、前記連続した空隙と前記網目とを介して、前記液体収容室内の空気の一部を前記液体収容室内から排出する第2工程と、を備える、液体カートリッジの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の液体カートリッジの製造方法であって、
前記第2工程の後に、前記液体収容室が前記液体供給部よりも下になる姿勢に前記液体カートリッジを配した状態で、前記液体収容室を前記第1状態に保ちつつ、前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力を、前記第1工程における前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力に戻す第3工程と、
前記第3工程の後に、前記第1工程を実行する第4工程と、を備える、液体カートリッジの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の液体カートリッジの製造方法であって、
前記第2工程の後に、前記液体収容室が前記液体供給部よりも下になる姿勢に前記液体カートリッジを配した状態で、前記液体収容室を前記第1状態に保ちつつ、前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力を、前記第1工程における前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力に戻す第3工程と、
前記第1工程、第2工程、および第3工程を、その順に繰り返し実行する第4工程と、を備える、液体カートリッジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体を収容している液体カートリッジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンターに液体を供給する液体カートリッジが存在する。特許文献1の液体カートリッジにおいては、液体収容室の外縁の一部を画定する受圧板を備える。受圧板は、可撓性を有するシート部材に、支持されている。シート部材は、受圧板とともに液体収容室の外縁の一部を画定している。受圧板は、液体収容室の内部空間を挟んで対向壁と向かい合うように配されている。シート部材が変形することにより、受圧板は、対向壁に対して変位することができる。
【0003】
受圧板は、液体収容室内に配されたコイルばねによって、対向壁から離れる方向に押圧されている。その結果、液体収容室内の圧力は、液体カートリッジの周囲の圧力以下の圧力に保たれている。液体収容室は、液体カートリッジ内部の大気開放口および空気室、ならびに大気導入口および大気連通口を介して液体カートリッジの外部と連通している。大気開放口は、通常、大気弁によって塞がれている。液体収容室内の液体が消費されて液体収容室内の液体の量が少なくなると、コイルばねの力に抗して、受圧板が対向壁に近づく。受圧板が対向壁に近づき大気弁を対向壁に向かって押すと、大気弁は大気開放口を開通させる。すると、大気開放口を介して、液体カートリッジの外部から液体収容室内に空気が導入される。その結果、コイルばねの力によって受圧板が対向壁から遠ざかり、大気弁が閉じる。その後、液体収容室内の液体がさらに消費されると、液体カートリッジ内の各機構は、上記と同様に動作する。
【0004】
特許文献1の液体カートリッジは、外部に液体を供給するための液体供給口に、フォームとシート部材を備える。フォームは、可撓性を有する合成樹脂製の多孔質部材である。シート部材は、可撓性を有し液体を透過する合成樹脂製のメッシュである。液体カートリッジがプリンターに取り付けられて印刷が行われた後の状態において、フォームとシート部材には、液体が浸透している。すなわち、フォーム内の連続した空隙、およびシート部材内のメッシュの開口、すなわち網目は、液体によって塞がれている。プリンターの液体供給管は、液体カートリッジのシート部材に接触している。プリンターにおいて液体が消費されると、液体供給管内の圧力が低下する。すると、液体供給管は、フォームとシート部材に浸透している液体を吸引する。その結果、フォーム内の連通孔内の連続した空隙およびシート部材内の網目の開口を通って、液体カートリッジの液体収容室内の液体が、プリンターに供給される。
【0005】
特許文献1の技術においては、以下のように液体カートリッジに液体が補充される。液体カートリッジ内の空気室に通じる大気連通口がふさがれる。液体カートリッジの液体供給口が注入キットの収容部材によって覆われ、収容部材のシール部材によって液体供給口の開口端が封止される。注入キットのチューブおよび収容部材、ならびに液体カートリッジの液体供給口を介して、注入キットの排出ポンプによって、液体カートリッジの液体収容室内の空気および液体が、液体カートリッジの外部に排出される。その後、注入キットのチューブに設けられている切替ユニットが切り換えられる。そして、注入キットのチューブおよび収容部材、ならびに液体カートリッジの液体供給口を介して、注入キットの加圧ポンプによって、液体カートリッジの液体収容室内に、注入キットの液体供給源から液体が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術においては、液体カートリッジに液体を供給するために、液体カートリッジの液体供給口を覆う収容部材であって、シール部材を備えた収容部材が必要である。液体供給口にフォームを備える液体カートリッジに対して、より簡易な構成で、外部から液体を供給できる技術が求められていた。
【0008】
また、特許文献1の技術においては、注入キットの排出ポンプによって、液体カートリッジの液体収容室内の空気および液体が、液体カートリッジの外部に排出される。その際、液体カートリッジの液体収容室内の液体を排出することなく、空気のみを液体カートリッジの外部に排出することが容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一形態によれば、使用済みの液体カートリッジに液体を充填することより液体カートリッジを製造する方法が提供される。液体カートリッジは、液体および気体を収容することができ、拡張および収縮が可能な液体収容室と、連続した空隙を備える多孔質部材とメッシュ状のシート部材とを備え、連続した空隙とメッシュ状のシート部材の網目とを介して液体収容室内の液体を液体カートリッジの外部に供給する液体供給部と、液体収容室を構成する壁に対して液体収容室が拡張する向きに力を加えるバネと、液体収容室内に空気を導入する大気導入路と、液体収容室が第1状態にあるときに大気導入路を遮断し、第1状態よりも液体収容室の容積が小さい第2状態にあるときに大気導入路を導通させる、弁部と、を備える。方法は、液体供給部に液体を供給することにより、連続した空隙と網目とを介して液体収容室内に液体を供給して、液体収容室を第1状態とする第1工程と、第1工程の後に、液体収容室が液体供給部よりも下になる姿勢に液体カートリッジを配した状態で、液体カートリッジの周囲の環境の圧力を、第1工程における液体カートリッジの周囲の環境の圧力よりも低下させることにより、連続した空隙と網目とを介して、液体収容室内の空気の一部を液体収容室内から排出する第2工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】印刷装置PRのホルダー512の斜視図である。
【
図4】
図3とは異なる角度から見た液体カートリッジICの斜視図である。
【
図5】液体カートリッジIC内の構造を模式的に示す説明図である。
【
図6】液体カートリッジIC内の構造を模式的に示す説明図である。
【
図7】使用済みの液体カートリッジICに液体Ikを充填することより液体カートリッジICを製造する方法を示すフローチャートである。
【
図8】ステップS100の処理を示す説明図である。
【
図9】ステップS100の処理を示す説明図である。
【
図10】ステップS200の処理を示す説明図である。
【
図11】ステップS300の処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.実施形態:
A1.印刷システムの構成:
図1は、印刷システムPSを示す斜視図である。印刷システムPSは、印刷装置PRと、複数の液体カートリッジICとを含む。
【0012】
複数の液体カートリッジICは、互いに異なる色の液体を収容している。複数の液体カートリッジICは、印刷装置PRに着脱可能に装着されて、印刷装置PRに液体を供給する。本実施形態においては、印刷装置PRは、6個の液体カートリッジICを着脱可能であるように構成されている。
【0013】
印刷装置PRは、印刷媒体PMに液滴を吐出して、印刷媒体PM上に液体による複数のドットを形成する。印刷媒体PM上に形成された複数のドットは、文字や絵を構成する。印刷媒体PM上に形成された複数のドットは、互いに繋がっている場合もある。
【0014】
印刷装置PRは、キャリッジ510と、主走査機構520と、副走査機構530と、制御部590と、を備える。
【0015】
キャリッジ510は、主走査方向に沿って往復動されつつ、液滴を吐出する(
図1の下段中央部参照)。キャリッジ510は、ホルダー512と、印刷ヘッド514と、を備える。ホルダー512は、6個の液体カートリッジICを着脱可能に装着されるように構成されている。印刷ヘッド514は、ホルダー512に装着された6個の液体カートリッジICから液体を供給されて、液滴の形態で印刷媒体PMに向けて吐出する。
【0016】
主走査機構520は、キャリッジ510を、主走査方向に沿って往復動させる。主走査機構520は、キャリッジモーター522と、駆動ベルト524と、を備える(
図1の中段右部および上段左部参照)。
【0017】
キャリッジモーター522は、電力を供給されて、回転力を出力する。キャリッジモーター522は、時計方向および反時計方向の回転力を出力することができる。駆動ベルト524は、無端ベルトである。駆動ベルト524は、キャリッジモーター522の出力軸に接続されている。駆動ベルト524は、キャリッジモーター522の回転力によって、時計方向および反時計方向に回転される。駆動ベルト524には、キャリッジ510が固定されている。キャリッジ510は、駆動ベルト524が時計方向および反時計方向に回転されるのに応じて、往復動される。
【0018】
副走査機構530は、印刷媒体PMを、副走査方向に搬送する。副走査方向は、主走査方向に対して垂直な方向である。
【0019】
本実施形態においては、副走査方向のうち、印刷媒体PMが最初に印刷ヘッド514と向かい合う位置まで搬送される方向を、X軸正方向とする。印刷を行う際に印刷装置PRが置かれる状態において、鉛直上方と一致する方向を、Z軸正方向とする。主走査方向のうち一方を、Y軸正方向とする。X軸、Y軸およびZ軸は、左手系を構成する。本願の明細書に添付する
図1~
図4において、X軸、Y軸およびZ軸を示す。
【0020】
副走査機構530は、搬送モーター532と、搬送ローラー534と、を備える(
図1の中段右部および下段左部参照)。搬送モーター532は、電力を供給されて、回転力を出力する。搬送モーター532は、時計方向および反時計方向の回転力を出力することができる。搬送ローラー534は、印刷媒体PMを支持しつつ、副走査方向に搬送する。搬送ローラー534は、搬送モーター532の出力軸に接続されている。搬送ローラー534は、搬送モーター532の回転力によって、時計方向および反時計方向に回転される。その結果、印刷媒体PMは、X軸正方向およびX軸負方向に搬送される。
【0021】
制御部590は、キャリッジ510と、主走査機構520と、副走査機構530と、を制御する(
図1の上段右部参照)。制御部590は、キャリッジ510の印刷ヘッド514に、フレキシブルケーブル597を介して、駆動電力および制御信号を供給する。
【0022】
図2は、印刷装置PRのホルダー512の斜視図である。ホルダー512は、レバー5122と、液体供給管5124と、接点機構5126と、を備える。
【0023】
レバー5122は、ホルダー512に装着された液体カートリッジICを保持する(
図2の上段右部参照)。レバー5122がユーザーによって操作されることにより、液体カートリッジICは、ホルダー512から取り外されることができる。
【0024】
液体供給管5124は、ホルダー512に装着された液体カートリッジICに押しつけられる(
図2の中段左部参照)。より具体的には、レバー5122によって液体カートリッジICがZ軸負方向に押圧されることにより、液体供給管5124の先端部5124tが、液体カートリッジICの液体供給部160に押しつけられる。液体カートリッジIC内の液体は、液体カートリッジICの液体供給部160および液体供給管5124を介して、印刷装置PRに供給される。
【0025】
接点機構5126は、ホルダー512に装着された液体カートリッジICに押しつけられる(
図2の上段右部参照)。より具体的には、レバー5122によって液体カートリッジICがZ軸負方向に押圧されることにより、接点機構5126の端子が、液体カートリッジICの回路基板の端子に押しつけられる。液体カートリッジICの回路基板は、接点機構5126の端子を介して、印刷装置PRから電力および制御信号を供給される。
【0026】
図3は、液体カートリッジICの斜視図である。
図4は、
図3とは異なる角度から見た液体カートリッジICの斜視図である。液体カートリッジICの筐体400は、大まかには、略直方体の形状を有する。液体カートリッジICの筐体400の略直方体の形状は、第1面401、第2面402、第3面403、第4面404、第5面405、および第6面406から構成される。印刷を行う際に印刷装置PRが置かれる状態にある印刷装置PRに対して、液体カートリッジICが取りつけられた状態を基準として、以下で、液体カートリッジICの構成について説明する。
【0027】
第1面401は、液体カートリッジICの底面である。第2面402は、液体カートリッジICの上面である。第3面403は、印刷装置PRのホルダー512のレバー5122と向かい合う面である(
図2の上段右部参照)。第4面404は、略直方体の液体カートリッジICにおいて、第3面403とは逆の位置にある面である。第5面405および第6面406は、それぞれ第1面401~第4面404にその外縁を囲まれている面である。第5面405および第6面406は、略直方体の液体カートリッジICの筐体400において、互いに逆の位置にある面である。
【0028】
第1面401と第3面403の間には、第7面407と、第8面408と、が配されている(
図4の中段左部参照)。第7面407は、第1面401に隣接しており、第3面403と略平行な面である。第8面408は、第3面403と第7面407の間に配されている面である。第8面408は、第3面403と第7面407のいずれとも異なる角度で配されている。第8面408は、印刷装置PRのホルダー512の接点機構5126と向かい合う面である(
図2の上段右部参照)。第8面408には、液体カートリッジICの回路基板415が設けられている。
【0029】
図5は、液体カートリッジIC内の構造を模式的に示す説明図である。
図5においては、液体カートリッジIC内の構造は、
図1~
図4に示したX軸、Y軸、Z軸に沿って示されてはいない。すなわち、
図5は、液体カートリッジICの各部の寸法および位置関係を正確に表すものではない。
【0030】
液体カートリッジICは、液体収容室100と、液体供給部160と、第1バネ170と、大気弁180と、第2バネ190と、空気室200と、を備える。
【0031】
液体収容室100は、液体Ikおよび空気Arを収容することができ、拡張および収縮が可能な空間である(
図5の中央部参照)。液体収容室100は、受圧板110と、シート部材120と、隔壁130,140,150と、によって、画定されている。
【0032】
受圧板110は、液体収容室100の内部空間を挟んで隔壁130と向かい合うように配されている(
図5の上段中央部参照)。受圧板110は、シート部材120によって、支持されている。より具体的には、シート部材120が液体収容室100と空気室200とを仕切っている。受圧板110がシート部材120の液体収容室100側に置かれている。受圧板110の外周がシート部材120に接続されていてもよい。
【0033】
シート部材120は可撓性を有する。シート部材120の外周は、隔壁140,150に接続されている。液体カートリッジICの使用が開始される前の状態においては、液体収容室100内には液体Ikが収容されている。その状態において、シート部材120は、受圧板110の周囲において折りたたまれた状態にある(
図5の上段参照)。
【0034】
シート部材120が変形することにより、受圧板110は、向かい合う隔壁130に対して変位することができる。受圧板110が隔壁130から遠ざかるとき、液体収容室100は拡張する。受圧板110が隔壁130に近づくとき、液体収容室100は収縮する。
【0035】
隔壁140は、液体収容室100の内部空間を挟んで隔壁130と向かい合うように配されている(
図5の上段左部参照)。隔壁150は、隔壁140と隔壁130とを接続している(
図5の中段左部および中段右部参照)。隔壁130,140,150は、液体カートリッジICの筐体400の一部である。
【0036】
液体供給部160は、筐体400に設けられた流路を介して、液体収容室100に接続されている(
図5の下段右部参照)。液体供給部160は、液体収容室100内の液体Ikを液体カートリッジICの外部に供給する。液体供給部160は、筐体400の第1面401に設けられた壁部480に囲まれている(
図3の下段左部および
図4の下段右部参照)。技術の理解を容易にするため、
図5において、壁部480は示されていない。液体供給部160は、フォーム162と、シート部材164と、を備える。
【0037】
フォーム162は、連続した空隙を備える弾性変形可能な多孔質部材で構成されている。フォーム162は、連続した空隙により、空気Arおよび液体Ikを透過させることができる。フォーム162の連続した空隙は、フォーム162に液体Ikが浸透することによって塞がれる。
【0038】
シート部材164は、空気Arおよび液体Ikを透過させることができるフィルターである。シート部材164は、網目状の構成を有するシート状の部材である。シート部材164は、網目に液体Ikを保持する。シート部材164の網目状の構成の空隙は、シート部材164に液体Ikが浸透することによって塞がれる。その状態において、シート部材164の両側の圧力差があらかじめ定められた値未満の場合に、シート部材164は、空気Arを流通させないが、それ以上の圧力差が生じた場合に、網目を通じて、空気Arを流通させる。このような機能を有することにより、シート部材164は、実質的に弁として機能する。本明細書において、シート部材164の網目状の構成が有する個々の空隙を「網目」とも表記する。
【0039】
液体供給部160は、液体カートリッジICの外部に露出し、かつ略平坦な表面160sを備える(
図5の下段右部、および
図4の下段右部参照)。液体供給部160の表面160sは、XY平面に略平行な平面である。液体供給部160の表面160sのX軸方向の最大寸法は、液体供給部160の表面160sのY軸方向の最大寸法よりも大きい。液体供給部160の表面160sは、シート部材164に覆われている。シート部材164を挟んで液体供給部160の外部とは逆の側には、フォーム162が配されている。
【0040】
本明細書において液体供給部160の表面160sが「略平坦」であるとは、液体供給部160の表面160sのうち、Z方向について最もへこんでいる部位と、Z方向について最も突出している部位と、の位置の差が、XY平面内における液体供給部160の最大寸法の1/20以下であること、を意味する。XY平面内における液体供給部160の最大寸法は、本実施形態においては、液体供給部160のX軸方向についての最大寸法である。
【0041】
液体カートリッジICが印刷装置PRのホルダー512に装着されると、液体供給部160の表面160sは、液体供給管5124の先端部5124tに押しつけられる(
図2および
図4参照)。液体カートリッジIC内の液体は、液体カートリッジICの液体供給部160および液体供給管5124を介して、印刷装置PRに供給される。
図4において、液体カートリッジICが印刷装置PRのホルダー512に装着される方向を矢印SDで示す。
【0042】
空気室200は、液体収容室100内に空気Arを導入する(
図5の上段および右部参照)。空気室200は、液体カートリッジICの筐体400内において、受圧板110と、シート部材120と、隔壁140,150と、によって、液体収容室100に対して仕切られている。空気室200は、隔壁140に設けられた大気開放口142を介して、液体収容室100と連通している。空気室200は、液体カートリッジICの筐体400に設けられた大気連通口210,大気導入口220を介して、液体カートリッジICの外部と連通している(
図4の下段右部も参照)。
【0043】
液体収容室100内には、第1バネ170と、大気弁180と、第2バネ190と、が配されている。
【0044】
第1バネ170は、液体収容室100を構成する受圧板110および隔壁130に対して液体収容室100が拡張する向きに力を加える。第1バネ170は、受圧板110と隔壁130との間に配されている(
図5の中央部参照)。第1バネ170は、シート部材120によって変位可能に支持されている受圧板110が、向かい合う隔壁130から遠ざかる向きに、受圧板110および隔壁130に力を加える。その結果、液体収容室100内の圧力Piは、液体カートリッジICの外部の圧力Pe以下に保たれている。
【0045】
大気弁180は、液体収容室100が第1状態Cn1にあるときに空気室200を遮断する。
図5は、液体収容室100が第1状態Cn1にある液体カートリッジICを示す。大気弁180は、第1状態Cn1よりも液体収容室100の容積が小さい第2状態Cn2にあるときに空気室200を導通させる。すなわち、第1状態Cn1と第2状態Cn2とは、液体収容室100の容積に関する状態である。第1状態Cn1は、第2状態Cn2よりも液体収容室100の容積が大きい状態である。大気弁180の一部182は、隔壁140の大気開放口142と、第2バネ190との間にある(
図5の上段左部参照)。大気弁180の他の一部184は、受圧板110と隔壁130との間にある(
図5の下段中央部参照)。
【0046】
第2バネ190は、大気弁180と隔壁130との間に配されている(
図5の下段左部参照)。液体収容室100が第1状態Cn1にあるとき、大気弁180は、第2バネ190に押圧されて、隔壁140の大気開放口142を塞いでいる。
【0047】
液体収容室100内の液体Ikが消費されて液体収容室100内の液体Ikの量が少なくなると、第1バネ170の力に抗して、受圧板110が隔壁130に近づく。受圧板110と隔壁130との距離があらかじめ定められた値以下になると、受圧板110は、大気弁180の他の一部184に接触する。
【0048】
図6は、液体カートリッジIC内の構造を模式的に示す説明図である。
図6においても、液体カートリッジIC内の構造は、
図1~
図4に示したX軸、Y軸、Z軸に沿って示されてはいない。すなわち、
図6は、液体カートリッジICの各部の寸法および位置関係を正確に表すものではない。
図6は、液体収容室100が第2状態Cn2にある液体カートリッジICを示す。
【0049】
受圧板110と隔壁130との距離がさらに小さくなると、受圧板110は、大気弁180の他の一部184を、隔壁130に向かって押す。このとき、液体収容室100は、第1状態Cn1よりも容積が小さい第2状態Cn2にある。第2状態Cn2において、大気弁180は、受圧板110に押されることにより、第2バネ190の力に抗して変位し、隔壁140の大気開放口142を連通させる。その結果、空気室200が導通される(
図6の上段左部参照)。
【0050】
空気室200が導通されると、空気室200を介して、液体カートリッジICの外部から液体収容室100内に空気Arが導入される(
図6の矢印An参照)。その結果、受圧板がコイルばねの力によって対向壁から遠ざかり、大気弁が閉じる。
【0051】
その後、液体収容室100内の液体Ikがさらに消費されると、液体カートリッジIC内の各構成は、ふたたび上記と同様に動作する。その結果、液体収容室100内の圧力Piは、液体カートリッジICの外部の圧力Pe以下に保たれる。
【0052】
A2.使用済みの液体カートリッジへの液体の充填:
前述のように、液体カートリッジICが外部である印刷装置PRに液体Ikを供給しているときには、液体供給部160が備える多数の連通孔を介して、液体Ikが印刷装置PRに供給される。このため、使用済みの液体カートリッジICにおいては、液体供給部160が備える多数の連通孔内は液体Ikで塞がれている。本明細書において、フォーム162の連続した空隙とシート部材164の網目とをまとめて、液体供給部160の「連通孔」と呼ぶ。
【0053】
液体カートリッジICから外部としての印刷装置PRに液体が供給された結果、液体収容室100が収縮し、液体収容室100が第2状態になると、空気室200が導通される(
図6参照)。すると、空気室200を介して液体収容室100内に空気Arが導入され、第1バネ170によって液体収容室100が拡張される。液体収容室100が第1状態Cn1になると、大気弁180により、空気室200が遮断される(
図5参照)。このため、液体の供給を行っていない状態の、使用済みの液体カートリッジICにおいては、液体収容室100は第1状態Cn1にあり、大気弁180により、空気室200は遮断されている。
【0054】
図7は、使用済みの液体カートリッジICに液体Ikを充填することより液体カートリッジICを製造する方法を示すフローチャートである。
図7の処理により、使用済みの液体カートリッジICに液体Ikを充填することより液体カートリッジICを製造する方法が、実現される。
【0055】
ステップS100において、液体供給部160に液体Ikを供給することにより、フォーム162の連続した空隙とシート部材164の網目とを介して液体収容室100内に液体Ikが供給される。その結果、液体収容室100は、第1状態Cn1となる。
【0056】
図8および
図9は、ステップS100の処理を示す説明図である。
図8および
図9においても、液体カートリッジIC内の構造は、
図1~
図4に示したX軸、Y軸、Z軸に沿って示されてはいない。すなわち、
図8および
図9は、液体カートリッジICの各部の寸法および位置関係を正確に表すものではない。
図10および
図11も同様である。
【0057】
図7のステップS100においては、使用済みの液体カートリッジICが、液体収容室100が液体供給部160よりも下になる姿勢に配される(
図8参照)。本明細書において、「液体収容室100が液体供給部160よりも下になる姿勢」とは、液体収容室100の下端が液体供給部160の下端よりも下になる姿勢である(
図8参照)。使用済みの液体カートリッジICは、液体収容室100内に未使用の液体を保持している可能性がある。しかし、
図8においては、技術の理解を容易にするため、液体収容室100内の未使用の液体の図示を省略している。
【0058】
ステップS100においては、液体収容室100が液体供給部160よりも下になる姿勢に液体カートリッジICを配した状態で、液体供給部160に液体Ikが供給される(
図9参照)。具体的には、重力を利用して、補充タンク750から液体供給部160に、液体Ikが滴下される(
図9の矢印Ai参照)。その結果、液体供給部160が備える連通孔を介して液体Ikが液体カートリッジIC内に浸透し、液体収容室100内に液体Ikが供給される。その間、液体供給部160が備える連通孔は、液体Ikで満たされている。
【0059】
このような処理を行うことにより、液体供給部160全体を覆いシール機能を有する部材を使用することなく、簡易な構成で、液体収容室100内に液体Ikを供給することができる。
【0060】
ステップS100において、液体収容室100内に液体Ikが追加的に供給されるため、液体収容室100は拡張される。ステップS100において、空気室200は、一貫して大気弁180によって遮断されている。ステップS100において、液体供給部160の連通孔内において液体Ikのメニスカスは維持される。このため、ステップS100において、液体供給部160の連通孔を介して液体収容室100内に空気Arが出入りすることはない。ステップS100後の状態において、液体収容室100内には、ステップS100の前の状態において液体収容室100内にあった空気Arと、ステップS100の前の状態において液体収容室100内にあったかもしれない液体Ikと、ステップS100において、液体収容室100に供給された液体Ikとが存在する。
【0061】
図10は、ステップS200の処理を示す説明図である。
図7のステップS200において、液体収容室100が液体供給部160よりも下になる姿勢に液体カートリッジICを配した状態で、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peを、ステップS100における液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Pe1よりも低下させる。その結果、液体供給部160の連通孔を介して、液体収容室100内の空気Arの一部が液体収容室100内から排出される。より具体的には、液体カートリッジICは、減圧チャンバ800内に配される。減圧チャンバ800内の空気が減圧チャンバ800の排出口810から排出されることにより、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peが低下される。本実施形態において、減圧チャンバ800内の圧力は、大気圧の1/10まで低減される。
【0062】
図7のステップS200において、液体供給部160の連通孔内が液体で塞がれている段階においては、液体収容室100内の圧力Piは低下しない。このため、液体収容室100は、第1状態Cn1にある。すなわち、この段階において、空気室200は、大気弁180によって遮断されている。
【0063】
液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peが、液体収容室100内の圧力Piよりも、ある程度以上低下すると、液体供給部160の連通孔の一部において、連通孔内の液体のメニスカスが破壊され、連通孔が開通する。その結果、それらの連通孔を介して、液体収容室100内の空気Arが外部に流出する。
【0064】
その後、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peと、液体収容室100内の圧力Piとの差が、ある程度以下になると、開通していた連通孔内において液体のメニスカスが形成され、連通孔が塞がれる。この段階において、液体収容室100内の圧力Piは、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Pe近傍にまで低下している。
【0065】
ステップS200においては、液体収容室100内の圧力Piと、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peとが、同程度に低下する。このため、ステップS200の前後において、液体収容室100内において空気Arが占めている空間の体積は、一定である。すなわち、ステップS200において、液体収容室100内において液体の液面が上昇することはなく、液体供給部160から液体が排出されることはない。
【0066】
ステップS200後の状態において、液体収容室100内には、ステップS100の前の状態において液体収容室100内にあったかもしれない液体Ikと、ステップS100において液体収容室100に供給された液体Ikと、ステップS100の前の状態において液体収容室100内にあった空気ArのうちステップS200において排出されずに残った空気Arと、が存在する。
【0067】
図11は、ステップS300の処理を示す説明図である。
図7のステップS300において、液体収容室100が液体供給部160よりも下になる姿勢に液体カートリッジICが配された状態で、液体収容室100が第1状態Cn1に保られつつ、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peが、ステップS100における液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peに戻される。より具体的には、減圧チャンバ800の排出口810から減圧チャンバ800内に空気が導入されることにより、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peが、ステップS100における液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peに戻される。その後、液体カートリッジICは、減圧チャンバ800から出される(
図11参照)。その結果、液体収容室100内の圧力Piは、大気圧に近似した圧力となる。
【0068】
ステップS300においては、一次的に、液体収容室100内の圧力Piは、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peよりも低くなる。すると、液体収容室100がわずかに収縮し、液体収容室100内の圧力Piは、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peと同程度になる。すなわち、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力PeがステップS100における圧力Pe1に近づくのに応じて、液体収容室100が収縮する(
図10、および
図11参照)。ステップS300においては、液体収容室100は、第1状態Cn1を維持される。よって、空気室200は、大気弁180によって遮断されている。
【0069】
また、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力Peと、液体収容室100内の圧力Piとの差は、ある程度以上、拡大しない。このため、液体供給部160の連通孔内の液体のメニスカスは破壊されず、連通孔は開通しない。すなわち、液体カートリッジICの周囲の環境の圧力PeがステップS100における圧力Pe1に戻される過程において、液体収容室100への空気Arの流入、ならびに液体収容室100からの空気Arの流出は、ない。その結果、収縮した液体収容室100内には、ステップS100の前の状態において液体収容室100内にあったかもしれない液体と、ステップS100において液体収容室100に供給された液体と、ステップS100の前の状態において液体収容室100内にあった空気ArのうちステップS200において排出されずに残った空気Arと、が存在する(
図11参照)。
【0070】
ステップS200において、減圧チャンバ800内の圧力は、大気圧の1/10まで減圧されている。このため、ステップS300後の状態において、ステップS200において排出されずに残った空気Arが占める体積は、ステップS200後の状態のその体積の1/10となる(
図11の上段参照)。
【0071】
図7のステップS350において、液体収容室100内の液体Ikの量が、あらかじめ定められた閾値を超えたか否かが判定される。液体収容室100内の液体Ikの量は、液体Ikを含む液体カートリッジIC全体の重量に基づいて判定することができる。液体収容室100内の液体の量が、閾値を超えた場合には、処理は終了する。液体収容室100内の液体の量が、閾値を超えていない場合には、処理は、ステップに戻る。その結果、ステップS100以下の処理が実行される。すなわち、液体収容室100内の液体Ikの量が、あらかじめ定められた閾値を超えるまで、ステップS100、ステップS200、およびステップS300の処理が、その順に繰り返し実行される。
【0072】
ステップS100、ステップS200、およびステップS300をn回(nは正の整数)繰り返すと、液体収容室100内の空気の量は、
図7の処理か開始される前の量に対して、(1/10)のn乗の量となる。このため、ステップS100、ステップS200、およびステップS300をより多く繰り返すほど、ステップS100の処理によって多くの液体が液体収容室に供給され、保持されることができる。ステップS350の判定処理を経て、ステップS100、ステップS200、およびステップS300の処理が、その順に繰り返し実行される工程を、
図7においてステップS400として示す。
【0073】
図7の処理においては、ステップS350において、液体収容室100内の液体の量が、あらかじめ定められた閾値を超えるまで、ステップS100、ステップS200、およびステップS300が、その順に繰り返し実行される。
【0074】
本実施形態によれば、使用済みの液体カートリッジICに液体Ikを再充填する際に、液体収容室100内に残存する液体Ikを液体カートリッジICから流出させることなく、液体収容室100内から空気Arを排出することができる(
図7のS200,S300、ならびに
図10および
図11参照)。
【0075】
本実施形態においては、ステップS200の後にステップS100の処理を行って液体収容室100に液体Ikを供給することにより、ステップS200で排出された空気Arが液体収容室100内で占めていた空間に、追加的に液体Ikを収容させることができる。そして、ステップS200における減圧の程度を制御することにより、その後、ステップS100の処理において使用済みの液体カートリッジICに供給するインクの量を、適切に制御することができる。
【0076】
本実施形態におけるフォーム162を、「多孔質部材」とも呼ぶ。第1バネ170を、「バネ」とも呼ぶ。空気室200を、「大気導入路」とも呼ぶ。大気弁180を、「弁部」とも呼ぶ。ステップS100を、「第1工程」とも呼ぶ。ステップS200を、「第2工程」とも呼ぶ。ステップS300を、「第3工程」とも呼ぶ。ステップS400を、「第4工程」とも呼ぶ。
【0077】
B.他の実施形態:
B1.他の実施形態1:
(1)上記実施形態においては、液体供給部160は、フォーム162と、シート部材164と、を備える(
図5の下段中央部参照)。しかし、液体供給部は、多孔質部材としてのフォームと、シート部材との一方を備え、他方を備えない態様とすることもできる。
【0078】
(2)上記実施形態においては、
図7のステップS100において、重力を利用して、液体供給部160に液体Ikが滴下される(
図9の上段参照)。しかし、液体カートリッジへの液体の供給に際しては、液体は、たとえばポンプによって、連続的に液体供給部に供給されてもよい。
【0079】
(3)上記実施形態においては、
図7のステップS200において、減圧チャンバ800内の圧力は、大気圧の1/10まで減圧される(
図7のS200、および
図11の上段参照)。しかし、減圧チャンバ800内の減圧の程度は、大気圧の1/5や、1/20など、他の程度とすることができる。すなわち、第2工程としてのステップS200は、第1工程としてのステップS100の後に、液体カートリッジの周囲の環境の圧力を、第1工程における液体カートリッジの周囲の環境の圧力よりも低下させることにより、連続した空隙と網目とを介して、液体収容室内の空気の一部を液体収容室内から排出するものであればよい。
【0080】
(4)上記実施形態においては、
図7のステップS200において、減圧チャンバ800内の空気Arが、ポンプで吸引される(
図10参照)。しかし、減圧チャンバ内の空気の吸引は、人間が操作するシリンダーなど、他の方法で行われてもよい。
【0081】
(5)上記実施形態においては、
図7のステップS350において、液体収容室100内の液体Ikの量は、液体Ikを含む液体カートリッジIC全体の重量に基づいて決定される。しかし、液体収容室100内の液体Ikの量は、液体収容室100内内設けられたセンサで決定することもでき、液体収容室100を画定する隔壁に設けられた窓を通じて測定されることもできる。
【0082】
B2.他の実施形態2:
上記実施形態においては、
図7のステップS350において、液体収容室100内の液体Ikの量が、あらかじめ定められた閾値を超えていない場合には、処理は、ステップに戻る。その結果、ステップS100以下の処理が実行される(
図7のS350およびS400参照)。しかし、使用済みの液体カートリッジICに液体Ikを充填することより液体カートリッジICを製造する方法は、
図7の処理中、ステップS350を備えず、他の処理を備える態様とすることもできる。そのような態様においても、使用済みの液体カートリッジに液体を再充填する際に、液体収容室内の液体を流出させることなく、液体収容室内から空気を排出することができる。
【0083】
B3.他の実施形態3:
上記実施形態においては、液体収容室100内の液体Ikの量が、あらかじめ定められた閾値を超えるまで、ステップS100、ステップS200、およびステップS300の処理が、その順に繰り返し実行される(
図7のS350およびS400参照)。しかし、
図7のステップS350において、液体収容室100内の液体の量が、あらかじめ定められた閾値を超えていない場合に、その後、たとえば、1回、3回など、あらかじめ定められた回数、ステップS100,S200,S300の処理が行われる態様とすることもできる。そのような態様においても、ステップS200の後に実行されるステップS100において、液体収容室100に液体を供給することにより、ステップS200で排出された空気が液体収容室内で占めていた空間に、追加的に液体を収容させることができる。
【0084】
B4.他の実施形態4:
本開示の技術は、インクを収容しているインクカートリッジや、インク以外の他の液体を収容する任意の液体カートリッジに適用することができる。たとえば、以下のような各種の液体カートリッジに適用可能である。なお、本明細書において「カートリッジ」とは、容器であって、容器内に収容された物質を使用する装置に、着脱可能に装着される容器を意味する。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置に装着され、インクを収容しているカートリッジ。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置に装着され、色材を収容しているカートリッジ。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置に装着され、電極色材を収容しているカートリッジ。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置に装着され、生体有機物を含む液体を収容しているカートリッジ。
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置に装着され、試料を収容しているカートリッジ。
(6)潤滑油の噴射装置に装着され、潤滑油を収容しているカートリッジ。
(7)樹脂液の噴射装置に装着され、樹脂液を収容しているカートリッジ。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置に装着され、潤滑油を収容しているカートリッジ。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置に装着され、透明樹脂液を収容しているカートリッジ。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置に装着され、エッチング液を収容しているカートリッジ。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体噴射装置に装着され、液体を収容しているカートリッジ。
【0085】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0086】
(1)本開示の一形態によれば、使用済みの液体カートリッジに液体を充填することより液体カートリッジを製造する方法が提供される。前記液体カートリッジは、前記液体カートリッジは、液体および気体を収容することができ、拡張および収縮が可能な液体収容室と、連続した空隙を備える多孔質部材とメッシュ状のシート部材とを備え、前記連続した空隙と前記メッシュ状のシート部材の網目とを介して前記液体収容室内の前記液体を前記液体カートリッジの外部に供給する液体供給部と、前記液体収容室を構成する壁に対して前記液体収容室が拡張する向きに力を加えるバネと、前記液体収容室内に空気を導入する大気導入路と、前記液体収容室が第1状態にあるときに前記大気導入路を遮断し、前記第1状態よりも前記液体収容室の容積が小さい第2状態にあるときに前記大気導入路を導通させる、弁部と、を備える。前記方法は、前記液体供給部に液体を供給することにより、前記連続した空隙と前記網目とを介して前記液体収容室内に液体を供給して、前記液体収容室を前記第1状態とする第1工程と、前記第1工程の後に、前記液体収容室が前記液体供給部よりも下になる姿勢に前記液体カートリッジを配した状態で、前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力を、前記第1工程における前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力よりも低下させることにより、前記連続した空隙と前記網目とを介して、前記液体収容室内の空気の一部を前記液体収容室内から排出する第2工程と、を備える。
この態様によれば、使用済みの液体カートリッジに液体を再充填する際に、液体収容室内の液体を流出させることなく、液体収容室内から空気を排出することができる。
【0087】
(2)上記形態の方法において、前記第2工程の後に、前記液体収容室が前記液体供給部よりも下になる姿勢に前記液体カートリッジを配した状態で、前記液体収容室を前記第1状態に保ちつつ、前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力を、前記第1工程における前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力に戻す第3工程と、前記第3工程の後に、前記第1工程を実行する第4工程と、を備える、態様とすることもできる。
このような態様においては、第2工程の後に液体収容室に液体を供給することにより、第2工程で排出された空気が液体収容室内で占めていた空間に、追加的に液体を収容させることができる。
【0088】
(3)上記形態の方法において、前記第2工程の後に、前記液体収容室が前記液体供給部よりも下になる姿勢に前記液体カートリッジを配した状態で、前記液体収容室を前記第1状態に保ちつつ、前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力を、前記第1工程における前記液体カートリッジの周囲の環境の圧力に戻す第3工程と、前記第1工程、第2工程、および第3工程を、その順に繰り返し実行する第4工程と、を備える、態様とすることもできる。
このような態様においては、第1工程、第2工程、および第3工程をより多く繰り返すほど、多くの液体を液体収容室に保持させることができる。
【0089】
本開示は、液体カートリッジの製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、液体カートリッジの再生方法や液体の再充填方法、それらの方法を実行する装置、それらの方法で製造された液体カートリッジ等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0090】
100…液体収容室、110…受圧板、120…シート部材、130…隔壁、140…隔壁、142…大気開放口、150…隔壁、160…液体供給部、160s…表面、162…フォーム、164…シート部材、170…第1バネ、180…大気弁、182…大気弁の一部、184…大気弁の他の一部、190…第2バネ、200…空気室、210…大気連通口、220…大気導入口、400…筐体、401…第1面、402…第2面、403…第3面、404…第4面、405…第5面、406…第6面、407…第7面、408…第8面、415…回路基板、480…壁部、510…キャリッジ、512…ホルダー、514…印刷ヘッド、520…主走査機構、522…キャリッジモーター、524…駆動ベルト、530…副走査機構、532…搬送モーター、534…搬送ローラー、590…制御部、597…フレキシブルケーブル、750…補充タンク、800…減圧チャンバ、810…排出口、5122…レバー、5124…液体供給管、5124t…先端部、5126…接点機構、Ai…液体が送出される向き、An…液体収容室内に空気が流入する向き、Ar…空気、Cn1…第1状態、Cn2…第2状態、IC…液体カートリッジ、Ik…液体、PM…印刷媒体、PR…印刷装置、PS…印刷システム、Pe…液体カートリッジの外部の圧力、Pi…液体収容室内の圧力、SD…液体カートリッジの装着方向。