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特開2024-30285ポリエステル樹脂用増粘剤、マスターバッチ、成形体およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030285
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂用増粘剤、マスターバッチ、成形体およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240229BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20240229BHJP
   C08F 212/00 20060101ALI20240229BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09K3/00 103G
C08G59/18
C08F212/00
C08J3/22 CFC
C08J3/22 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133058
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西 祐次
(72)【発明者】
【氏名】重森 一範
(72)【発明者】
【氏名】草間 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【テーマコード(参考)】
4F070
4J036
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA46
4F070AA47
4F070AB11
4F070AB26
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB04
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4J100JA15
(57)【要約】
【課題】本発明は、臭気、透明性および黄変を抑制し、成形加工性が良好な再生ポリエステル樹脂を作製可能なポリエステル樹脂用増粘剤の提供を目的とする。
【解決手段】エポキシ基含有単量体単位(X)、ならびに芳香環含有単量体単位(Y)およびその他単量体単位(Z)(ただし、エポキシ基および芳香環を有しない)からなる群より選択される1種以上の単量体単位を含む重量平均分子量6,000以上の重合体のポリエステル樹脂用増粘剤であって、前記ポリエステル樹脂用増粘剤中の重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~3質量%である、ポリエステル樹脂用増粘剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有単量体単位(X)、ならびに芳香環含有単量体単位(Y)およびその他単量体単位(Z)(ただし、エポキシ基および芳香環を有しない)からなる群より選択される1種以上の単量体単位を含む重量平均分子量6,000以上の重合体のポリエステル樹脂用増粘剤であって、
前記ポリエステル樹脂用増粘剤中の重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~4.5質量%である、ポリエステル樹脂用増粘剤。
【請求項2】
エポキシ基含有単量体単位(X)の含有量は、重合体の全単量体単位中、10~90質量%である、請求項1記載のポリエステル樹脂用増粘剤。
【請求項3】
前記重合体のエポキシ価が0.4~6.5mmol/gである、請求項1に記載のポリエステル樹脂用増粘剤。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載のポリエステル樹脂用増粘剤およびポリエステル樹脂(A)の反応生成物を含む、ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ。
【請求項5】
マスターバッチのエポキシ価が0.4~3.6mmol/gである、請求項4記載のポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ。
【請求項6】
ポリエステル樹脂用増粘剤の含有量は、ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ中、35~60質量%である、請求項4に記載のポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ。
【請求項7】
希釈用ポリエステル樹脂、および請求項4に記載のポリエステル樹脂用増粘マスターバッチを成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂の改質剤であり、特にリサイクル等に使用できるポリエステル樹脂用増粘剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的にプラスチックのゴミ問題対策が重要課題となっており、サスティナブル素材の開発が求められている。例えば、使用済みペットボトルは、回収後にフレーク状に砕かれ、これを原料にして、ペットボトルとは異なる、例えば再生繊維などの別の製品とするカスケードリサイクルがある。また、使用済みペットボトルをケミカルリサイクルまたはメカニカルリサイクルにより原料へもどし、再度、ペットボトルをつくる水平リサイクル(ボトルtoボトル)がある。しかし、再生ポリエステル樹脂はバージンポリエステル樹脂に比べて物性が低下する傾向にある。特に、回収工程や成形時の熱履歴によりポリエステル樹脂の分子量低下が生じ、成形加工性が大幅に低下する。そのため、再生可能樹脂が限定される上、品質のよい成形品が得られず、用途が限られていた。また、ポリエステル樹脂の成形は、単軸押出機や二軸押出機により行われることが多いが、再生ポリエステル樹脂は、分子量低下などの理由により成形加工が難しい問題があった。
【0003】
特許文献1では、非晶性ポリエステル樹脂、グリシジル基および/またはイソシアネート基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量200以上50万以下である反応性化合物を含む結晶性ポリエステル樹脂用改質剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-45477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のポリエステル樹脂用増粘剤は、エポキシ基等の反応性基を有する高分子化合物であるため、重合時の未反応物やオリゴマー等の低分子量成分を含むため再生ポリエステル樹脂を製造する際、高分子量化が難しく成形性加工性が十分ではなく、また、これら低分子量成分がポリエステル樹脂に混入して、臭気発生、黄変、透明性低下等の品質劣化が生じる問題があった。
また、従来のポリエステル樹脂用増粘剤を使用した成形体は、二軸押出機を使用すると混合は良好だが発熱が大きく成形体が熱劣化(黄変等)する場合がある一方、単軸押出機を使用すると発熱し難いが、混合に時間がかかる問題があったため、組成により両者を使い分ける必要があり汎用性が低かった。
【0006】
本発明は、臭気、透明性の低下および黄変を抑制し、再生ポリエステル樹脂の成形加工性を向上可能であり、単軸押出機および二軸押出機での成形を可能にするポリエステル樹脂用増粘剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤は、エポキシ基含有単量体単位(X)、ならびに芳香環含有単量体単位(Y)およびその他単量体単位(Z)(ただし、エポキシ基および芳香環を有しない)からなる群より選択される1種以上の単量体単位を含む重量平均分子量6,000以上の重合体のポリエステル樹脂用増粘剤であって、
前記ポリエステル樹脂用増粘剤中の重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~4.5質量%であるである。
【発明の効果】
【0008】
上記の本発明によれば、臭気、透明性の低下および黄変を抑制し、再生ポリエステル樹脂の成形加工性を向上可能であり、単軸押出機および二軸押出機での成形を可能にするポリエステル樹脂用増粘剤を提供できる。また、本発明は、ポリエステル樹脂用マスターバッチ、および成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではない。また、本発明の課題を解決できる範囲内であれば任意に変形できる。また、本明細書で特定する数値「A~B」は、数値Aと数値Aより大きい値および数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲をいう。なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。また、本明細書におけるシートは、フィルム、板状と同義である。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
本明細書で単量体は、未反応の化合物であり、単量体単位は、前記単量体が重合して重合体の一部を構成している状態を指す。
【0010】
1.ポリエステル樹脂用増粘剤
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤は、エポキシ基含有単量体単位(X)、ならびに芳香環含有単量体単位(Y)およびその他単量体単位(Z)(ただし、エポキシ基および芳香環を有しない)からなる群より選択される1種以上の単量体単位を含む重量平均分子量6,000以上の重合体のポリエステル樹脂用増粘剤であって、前記ポリエステル樹脂用増粘剤中の重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~4.5質量%である。本発明のポリエステル樹脂用増粘剤は、再生ポリエステル樹脂を使用する成形体の製造に使用することが好ましい。
【0011】
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤は、成形体作成の際、希釈用ポリエステル樹脂と反応して溶融混練時の分子量の低下を抑制し、物性低下が生じにくいポリエステル樹脂成形体(成形体ともいう)成形できる。その主たる理由は、ポリエステル樹脂用増粘剤に含まれる重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~4.5質量%であることで、希釈用ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂用増粘剤との間で適切に反応が進行するため、臭気、透明性および黄変に影響し難く、成形加工性が良好な過不足ない分子量の成形体が得られると推測する。希釈用ポリエステル樹脂は、一般的なポリエステル樹脂、および再生ポリエステル樹脂を使用することが好ましい。
【0012】
<エポキシ基含有単量体単位(X)>
エポキシ基含有単量体は、エポキシ基が希釈用ポリエステル樹脂との反応に寄与する。エポキシ基含有単量体は、例えば、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0013】
<芳香環含有単量体単位(Y)>
芳香環含有単量体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂のような芳香環含有樹脂との相溶性向上に寄与する。芳香環含有単量体は、芳香族ビニル単量体、芳香環含有(メタ)アクリレート系単量体が挙げられる。
芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、安息香酸ビニル、ビニル安息香酸メチル、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
芳香環含有(メタ)アクリレート系単量体は、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸β-フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル等が挙げられる。これらの中でも、スチレン、ベンジルメタクリレートが好ましい。
【0014】
<その他単量体>
その他単量体は、エポキシ基含有単量体および芳香環含有単量体以外の単量体でありエポキシ基および芳香環を有さない、(メタ)アクリレート系単量体ならびにビニル単量体が挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリレート系単量体は、アルキル鎖またはシクロアルキル鎖を有する。
アルキル鎖を有する(メタ)アクリレート系単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t-オクチル、メタ)アクリル酸アセトキシエチル、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等が挙げられる。
シクロアルキル鎖を有する(メタ)アクリレート系単量体は、単環式のシクロアルキル鎖または多環式のシクロアルキル鎖を有する。
単環式のシクロアルキル鎖(メタ)アクリレート系単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多環式のシクロアルキル鎖(メタ)アクリレート系単量体は、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0016】
ビニル単量体は、例えば、クロトン酸エステル、ビニルエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、イタコン酸ジエステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、酸性基含有単量体、窒素含有複素環単量体等が挙げられる。
【0017】
クロトン酸エステルは、例えば、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0018】
ビニルエステルは、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート等が挙げられる。
【0019】
マレイン酸ジエステルは、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチル等が挙げられる。
【0020】
フマル酸ジエステルは、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0021】
イタコン酸ジエステルは、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリルアミドは、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアクリル(メタ)アミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0023】
ビニルエーテルは、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0024】
酸性基含有単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。
【0025】
窒素含有複素環単量体は、例えば、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、ペンタメチルピペリジニルアクリレート、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
その他単量体の中でも、炭素数1~8のアルキル鎖を有する(メタ)アクリレート系単量体、炭素数6~12のシクロアルキル鎖を有する(メタ)アクリレート系単量体が好ましく、炭素数1~8のアルキル鎖を有する(メタ)アクリレート系単量体がより好ましい。
【0026】
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤は、エポキシ基含有単量体単位(X)、ならびに芳香環含有単量体単位(Y)およびその他単量体単位(ただし、エポキシ基および芳香環を含有しない)からなる群より選択される1種以上の単量体単位を含む重合体である。
(X)、(Y)、および(Z)の含有量は、前記全単量体単位中、(X)が10~90質量%、(Y)が5~80質量%、(Z)が1~75質量%であることが好ましい。
より好ましくは(X)が15~70質量%、(Y)が25~80質量%、(Z)が1~50質量%であり、さらに好ましくは(X)が20~50質量%、(Y)が40~70質量%、(Z)が1~35質量%である。
(X)と(Y)を含むポリエステル樹脂用増粘剤の場合、(X)が10~90質量%、(Y)が10~90質量%であることが好ましい。より好ましくは(X)が15~70質量%、(Y)が30~85質量%であり、さらに好ましくは(X)が20~50質量%、(Y)が50~80質量%である。
(X)と(Z)を含むポリエステル樹脂用増粘剤の場合、(X)が10~90質量%、(Z)が10~90質量%であることが好ましい。より好ましくは(X)が15~70質量%、(Z)が30~85質量%であり、さらに好ましくは(X)が20~50質量%、(Z)が50~80質量%である。
ポリエステル樹脂用増粘剤中の単量体単位が上記比率にあることで、臭気、透明性低下の抑制および黄変を抑制し、成形加工性が良好な再生ポリエステル樹脂を作製可能なポリエステル樹脂用増粘剤となる。
【0027】
ポリエステル樹脂用増粘剤の合成に使用する単量体の使用例は、グリシジルメタクリレート/スチレン/メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン/ブチルメタクリレート共重合体、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート/スチレン/メチルメタクリレート重合体、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル/スチレン/メチルメタクリレート重合体等が挙げられる。
【0028】
<合成方法>
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の方法で合成できる。
重合手法は、例えば、アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、フリーラジカル重合、及びリビングラジカル重合等が挙げられる。この中でも、コスト及び生産性の観点よりフリーラジカル重合が好ましい。
【0029】
<重合開始剤>
重合には、重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物、過酸化物が好ましい。アゾ系化合物は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。過酸化物は、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、又はジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0030】
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0031】
重合開始剤の使用量は、単量体の合計量100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。なお、塊状重合の場合、重合開始剤を使用しないことがある。
【0032】
重合温度は、単量体の種類および目的の分子量に応じて適宜選択できる。重合温度は、40~150℃程度が好ましく、50~110℃がより好ましい。反応時間は、3~30時間程度が好ましく、5~20時間がより好ましい。
【0033】
<チオール系連鎖移動剤>
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤は、重合の際分子量調整のためにチオール系連鎖移動剤を使用できる。
【0034】
前記チオール系連鎖移動剤は、チオール基以外にカルボキシル基、水酸基、エステル結合の中から1種以上の部位を有することが好ましい。
カルボキシル基を有するチオール系連鎖移動剤は、例えば、α-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸、2,3-ジメルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸o-メルカプト安息香酸、m-メルカプト安息香酸、チオリンゴ酸、o-チオクマル酸、α-メルカプトブタン酸、β-メルカプトブタン酸、γ-メルカプトブタン酸、11-メルカプトウンデカン酸等が挙げられる。
水酸基を有するチオール系連鎖移動剤は、例えば、メルカプトメタノール、1-メルカプトエタノール、2-メルカプトエタノール、1-メルカプトプロパノール、3-メルカプトプロパノール、1-メルカプト-2,3-プロパンジオール、1-メルカプト-2-ブタノール、1-メルカプト-2,3-ブタンジオール、1-メルカプト-3,4-ブタンジオール,1-メルカプト-3,4,4’-ブタントリオール、2-メルカプト-3-ブタノール、2-メルカプト-3,4-ブタンジオール、2-メルカプト-3,4,4’-ブタントリオール、チオグリセロール等が挙げられる。
エステル結合を有するチオール系連鎖移動剤は、例えば、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチルなどのチオグリコール酸アルキルエステル、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸トリデシルなどのメルカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、1級チオール基を有するチオール系連鎖移動剤が特に連鎖移動効果が高く、分子量調整が容易のため好ましい。特に臭気と分子量調整の容易さのバランスから、β-メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルが好ましい。
【0036】
チオール系連鎖移動剤は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0037】
チオール系連鎖移動剤の分子量は、101~300が好ましく、150~250がより好ましい。この範囲のチオール系連鎖移動剤を用いることで、チオール系連鎖移動剤自体の揮発性を抑えつつ、少量添加で連鎖移動効果が得られるため、分子量制御が容易になる。
【0038】
チオール系連鎖移動剤の含有量は、単量体の合計100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~4質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。なお、チオール系連鎖移動剤は、全単量体単位には含めない。
【0039】
<有機溶剤>
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤の合成は、有機溶剤を使用できる。有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0040】
有機溶剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0041】
<分子量>
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤の重量平均分子量(Mw)は、6,000~100,000が好ましく、7,000~60,000がより好ましく、8,000~20,000がさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることで、ポリエステル樹脂と溶融混練する際の流動性と相溶性が向上し、成形体の透明性、加工性を高めることができる。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤の数平均分子量(Mn)は、1,200~100,000が好ましく、1,700~50,000がより好ましく、2,600~17,000がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲にあることで、ポリエステル樹脂と溶融混練する際の流動性と相溶性が向上し、成形体の透明性、加工性を高めることができる。
【0043】
Mwよ
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤の分子量分布(Mw/Mn)は、ポリエステル樹脂との反応を均一化する観点で1~5が好ましく、1.2~4がより好ましく、1.2~3がさらに好ましい。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤中の重量平均分子量1,000未満の成分は、0.001~4.5%が好ましく、0.001~4%がより好ましく、0.001~3.5%がさらに好ましい。重量平均分子量1,000未満の成分が上記範囲にあることで、臭気、透明性低下を抑制し、黄変を抑制し、成形加工性が良好となる。
なお、ポリエステル樹脂用増粘剤中の重量平均分子量500未満の成分は、0.001~2.5%が好ましく、0.001~2%がより好ましく、0.001~1.5%がさらに好ましい。重量平均分子量500未満の成分が上記範囲にあることで、臭気、透明性低下抑制、黄変を抑制、および成形加工性がさらに良好となる。
【0045】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定できる。装置としてHLC-8320GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GEL SUPER HZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHF溶液を用い、流速0.35ml/minで測定する。サンプルは1質量%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、20マイクロリットル注入する。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
測定した分子量の分布リストから分子量1,000未満の成分と分子量500未満の成分の比率を面積比から算出できる。解析範囲はピークの立上りから溶剤ピークがでる直前までとした。
【0046】
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤中の重量平均分子量1,000未満の成分を0.001~4.5%とするために、本発明のポリエステル樹脂用増粘剤の合成工程後に精製工程を行うことが好ましい。精製方法は、例えば、再沈殿が挙げられる。重合で得られたポリエステル樹脂用増粘剤を貧溶媒に滴下して再沈殿精製させた後、ろ過、乾燥させることで、残留しているモノマーや低分子化合物を所望の範囲まで除去できる。
【0047】
再沈殿に使用する貧溶媒は、ポリエステル樹脂用増粘剤の溶解性が低く、コストや純度、ポリエステル樹脂用増粘剤から溶剤を除去しやすいものが好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの非極性溶媒が挙げられる。これらの中でもコストや溶剤の除去のしやすさからメタノールが好ましい。貧溶媒は、ポリエステル樹脂用増粘剤の1~20倍の質量を使用することで不純物を効率よく除去できる。また、貧溶媒は、単独または2種類以上を併用できる。
【0048】
<エポキシ価>
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤中のエポキシ基は、ポリエステル樹脂中のカルボキシ基および/または水酸基と反応してポリエステル樹脂が鎖延長されて高分子量化する。その結果、ポリエステル樹脂の溶融粘度が増加し、成形加工性を高めることができる。
【0049】
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価は、0.4~6.5mmol/gが好ましく、0.7~5mmol/gがより好ましく、0.9~3.6mmol/gがさらに好ましい。エポキシ価がこの範囲にあることで、本発明のポリエステル樹脂用増粘剤とポリエステル樹脂の反応性が向上し溶融粘度を増加させるため成形加工性が向上する。なお、エポキシ価は、樹脂1gあたりのエポキシの当量(mmol/g)を意味する。
【0050】
ポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価は以下のように求めることができる。JIS K 7236に準拠し、ポリエステル樹脂用増粘剤0.5mgを測定溶液[メチルエチルケトン(MEK):酢酸:テトラエチルアンモニウムブロマイド=1000:1000:140]50gに30分間撹拌後、自動滴定装置(商品名GT-100、三菱化学社製)を使用し、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を加えることによりポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価を測定できる
【0051】
本発明のポリエステル樹脂用増粘剤の流動開始温度は、240℃以下が好ましく、50~200℃がより好ましく、60~140℃がさらに好ましい。より均質に混練する観点からは、本発明のポリエステル樹脂用増粘剤とポリエステル樹脂(A)との流動開始温度の差が150℃未満であることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂用増粘剤と希釈用ポリエステル樹脂との流動開始温度の差が200℃以下であることが好ましい。なお、流動開始温度は、フローテスターによる溶融粘度の評価において、9.8MPaの圧力下で樹脂の溶融粘度が4800Pa・s以下になる最小温度をいう。
流動開始温度は島津製作所社製「CFT-EXシリーズ」等を用いて測定することができる。フローテスターを用いて、9.8MPaの圧力下でダイ穴径φ1mm、ダイ長さ1mmのキャピラリを通した時に、測定対象の樹脂の溶融粘度が4800Pa・s以下になる最小温度を測定することで求まる。
【0052】
2.ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ
本発明のポリエステル樹脂用増粘マスターバッチは、ポリエステル樹脂用増粘剤およびポリエステル樹脂(A)の反応生成物を含む。ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチは、ポリエステル樹脂用増粘剤およびポリエステル樹脂(A)を用いて溶融混練によりマスターバッチを作製する。その際、ポリエステル樹脂用増粘剤およびポリエステル樹脂(A)の一部が反応し反応生成物(以下、鎖延長ポリエステル樹脂(C)という)が得られる。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂用増粘マスターバッチの不揮発分100質量%中のポリエステル樹脂用増粘剤の含有量は35~60質量%が好ましい。前記範囲とすることで、例えば、再生ポリエステル樹脂の鎖延長が促され、高分子量化することで単軸押出機および二軸押出機での成形が可能となる。これは、ポリエステル樹脂用増粘剤中の重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~4.5質量%であることで、ポリエステル樹脂用増粘剤と再生ポリエステル樹脂の反応が効率的に進むためと推測している。より好適な範囲は38~55質量%であり、更に好適な範囲は40~50質量%である。マスターバッチの均一分散性を向上させ再生ポリエステル樹脂の分子量を均一に高めることができることから、マスターバッチのМFRは10~300g/分であることがより好ましく、20~100g/分であることが更に好ましい。本発明におけるMFRはJIS K-7210-1:2014に従って測定した値である。
【0054】
<ポリエステル樹脂(A)>
ポリエステル樹脂(A)は、流動開始温度が180℃以上、240℃以下のポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、例えば、飽和ジカルボン酸と飽和二価アルコールとを合成した樹脂が好ましい。飽和ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-1,4-又は2,6-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸類、ジフェノキシエタンジエタンジカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、デカン-1,10-ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
飽和二価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール類、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、その他の芳香族ジオール類等が挙げられる。これらに中でも、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET-G)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(I-PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)が好ましい。
【0055】
ポリエステル樹脂(A)の流動開始温度のより好適な範囲は220~240℃である。ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量は、流動開始温度が前記範囲であればよい。
【0056】
マスターバッチの均一分散性を高める観点からポリエステル樹脂(A)のメルトフローレート(МFR)は5~100g/分が好ましく、10~50g/分が更に好ましい。相溶性の観点から再生ポリエステル樹脂が芳香族ポリエステル樹脂の場合、ポリエステル樹脂(A)は芳香族ポリエステルが好ましい。再生ポリエステル樹脂が脂肪族ポリエステル樹脂の場合、ポリエステル樹脂(A)は脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
【0057】
ポリエステル樹脂(A)の含有量は、マスターバッチの不揮発分100質量%中、20~64.5質量%が好ましい。この範囲とすることにより、マスターバッチ生産時の加工性がより向上する。
【0058】
<鎖延長ポリエステル樹脂(C)>
鎖延長ポリエステル樹脂(C)は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤が溶融混練で一部反応した反応生成物である。ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチを製造する際に、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤の混練条件を調整することにより、鎖延長ポリエステル樹脂(C)の含有率を調整することができる。また、ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチを製造する際に、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤を予め反応させた鎖延長ポリエステル樹脂(C)の全部または一部を添加して、マスターバッチの不揮発分100質量%に対する鎖延長ポリエステル樹脂(C)の含有率を調整してもよい。
【0059】
ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチの不揮発分100質量%中の鎖延長ポリエステル樹脂(C)の含有量は1.5~20質量%が好ましい。より好適な範囲は2~15質量%であり、更に好適な範囲は2.5~10質量%である。上記範囲にあることで、ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチと再生ポリエステル樹脂との相溶性が向上し、透明性低下の抑制、黄変を抑制できるとともに成形加工性が良好となる。この理由は、鎖延長ポリエステル樹脂(C)が相溶化剤の機能を有しているためと推測している。そのためポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤を単に混練したマスターバッチよりも良好な成形体が得られる。
【0060】
前記マスターバッチの不揮発分100質量%中のポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂用増粘剤、鎖延長ポリエステル樹脂(C)の含有量は、以下のGPC測定で算出できる。なお、GPC測定で数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ポリメタクリル酸メチルを標準物質に用いた換算分子量として求めた。
まず、ポリエステル樹脂(A)および樹脂(B)の分子量分布(Mw/Mn)をGPC測定により求める。続いて、前記マスターバッチの分子量分布をGPC測定し、得られた微分分子量分布曲線の面積を100%とする。そして、この微分分子量分布曲線を100質量%(総質量)としたときの、前記マスターバッチ中のポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂用増粘剤、鎖延長ポリエステル樹脂(C)の面積との比率(存在比率)をそれぞれの質量%として求めることができる。なお、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂用増粘剤よりも高分子量側に観測されたピークを鎖延長ポリエステル樹脂(C)のピークとした。GPCは以下の条件で測定した。
・標準物質:ポリメタクリル酸メチル
・装置:ウォーターズ社製 LCシステム
・カラム:昭和電工株式会社製 HFIP-806M×2本
・移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム10mmol/L ヘキサフルオロイソプロパノール溶液
・流速:1.0ml/min
・検出:示差屈折率計
・カラム温度:30℃
【0061】
<エポキシ価>
本発明のポリエステル樹脂用増粘マスターバッチの不揮発分1グラムにおけるポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価は、0.4~3.6mmol/gが好ましい。この範囲とすることにより、再生ポリエステル樹脂との反応性に優れ、再生ポリエステル樹脂の分子量低下を効果的に抑制できる。なお、エポキシ価は、0.5~2.8mmol/gが好ましく、0.7~2.5がより好ましい。
【0062】
前記ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ中のポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価の測定方法は以下のように求めることができる。
JIS K 7236に準拠し、ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ0.5mgを測定溶液[メチルエチルケトン(MEK):酢酸:テトラエチルアンモニウムブロマイド=1000:1000:140]50gに30分間撹拌後、自動滴定装置(商品名GT-100、三菱化学社製)を使用し、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を加えることによりポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ1gあたりのポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価を測定できる。なお、ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチにはポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤の反応物である鎖延長ポリエステル樹脂(C)が含まれており、エポキシ基が残存している場合もあるが、鎖延長ポリエステル樹脂(C)はMEKに溶解しないので、測定値はポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価が得られる。
【0063】
本発明のポリエステル樹脂用増粘マスターバッチは、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂用増粘剤および鎖延長ポリエステル樹脂(C)以外の任意成分を含んでいてもよい。例えば、前記以外の樹脂、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤、紫外線吸収剤、充填剤等を含有できる。
【0064】
<ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチの製造方法>
以下、本発明のポリエステル樹脂用増粘マスターバッチの製造方法の一例について説明するが、前記マスターバッチの製造方法はこの方法に限定されるものではない。
【0065】
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂用増粘剤を量り取り、マスターバッチ製造装置に投入して溶融混練して、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤の一部を反応させる。
混練工程は、均一な混練物が得られるように加熱する。このとき、ポリエステル樹脂(A)の一部とポリエステル樹脂用増粘剤の一部が反応して鎖延長ポリエステル樹脂(C)が得られる。混練温度、混合物の比率、混練時間等の条件を調整することによりマスターバッチ中のポリエステル樹脂用増粘剤および鎖延長ポリエステル樹脂(C)それぞれの含有率、ならびにポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価を調整できる。温度は、例えば、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂用増粘剤のいずれか高い方の流動開始温度に対し、+0~20℃の温度で混練するのが好ましい。加熱時間は例えば30秒~300秒が好ましい。圧力は常圧でかまわない。ポリエステル樹脂用増粘剤の仕込み率は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤の合計100質量%に対し、例えば40~65質量%混合させることが好ましい
【0066】
押出機中の組成物の平均温度は例えば180~280℃、混錬時間を30秒~10分とする方法が好ましい。混合物の段階で、鎖延長ポリエステル樹脂(C)の一部を添加することにより、マスターバッチ中のポリエステル樹脂用増粘剤および鎖延長ポリエステル樹脂(C)の含有率、ならびにポリエステル樹脂用増粘剤のエポキシ価を調整してもよい。
【0067】
混練後、例えば、ダイスなどのマスターバッチ製造装置から押出し、水冷後に切断してペレット化したマスターバッチを得ることができる。なお、ペレット化以外に、混合物を粉砕し粉状としてもよい。
【0068】
3.成形体
本発明の成形体は、希釈用ポリエステル樹脂、およびポリエステル樹脂用増粘マスターバッチを成形してなる。なお、成形は、溶融混練後行うことが好ましい。
【0069】
本発明の成形体は、ポリエステル樹脂成形体の黄変を効果的に抑制することができる。その主たる理由は、ポリエステル樹脂用増粘剤に含まれる重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~3質量%であることで、成形加工性が向上し、ポリエステル樹脂成形時の溶融混練の際に生成する黄変原因不純物を抑制できると推測する。そのため黄変および臭気が少なく、透明性が良好な高品質の成形体が得られる。
【0070】
本成形体によれば、ポリエステル樹脂成形体の透明性の低下を抑制することができる。その主たる理由は、ポリエステル樹脂用増粘剤に含まれる重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~3質量%であるためと考えられる。これにより、ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂用増粘剤の相溶の阻害を抑制できる。また、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤の反応物である鎖延長ポリエステル樹脂(C)による相乗効果もあると推測する。また、マスターバッチ中の鎖延長ポリエステル樹脂(C)によって、ポリエステル樹脂用マスターバッチと希釈用ポリエステル樹脂との相溶性を高め、溶融混練時の均一性が高まり、透明性の低下を効果的に抑制できると推測する。
【0071】
本成形体によれば、ポリエステル樹脂成形体の分子量低下を効果的に抑制できる。その主たる理由は、ポリエステル樹脂用増粘剤に含まれる重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~3質量%であるためと考えられる。これによりポリエステル樹脂とポリエステル樹脂用増粘剤との反応が阻害され難くなる。また、マスターバッチ中の鎖延長ポリエステル樹脂(C)によって、ポリエステル樹脂用マスターバッチと希釈用ポリエステル樹脂との相溶性を顕著に改善し、希釈用ポリエステル樹脂と反応するポリエステル樹脂用増粘剤の割合が高まり、局所的な鎖延長反応が起きず効果的に分子量低下を抑制することができる。
【0072】
本明細書では、単軸成形および二軸成形のいずれに適用しても優れた成形体を得ることができる汎用性の高い成形体を提供できる。その主たる理由は、その主たる理由は、ポリエステル樹脂用増粘剤に含まれる重量平均分子量1,000未満の成分が0.001~3質量%であるためと考えられる。これによりポリエステル樹脂とポリエステル樹脂用増粘剤との反応が阻害されず、ポリエステル樹脂の加水分解が起こりやすい二軸成形においてもポリエステル樹脂の分子量低下を抑制できる。
【0073】
<希釈用ポリエステル樹脂>
希釈用ポリエステル樹脂は、本成形体の主成分となる樹脂であり、且つ、改質対象となる樹脂である。希釈用ポリエステル樹脂は非晶性であっても結晶性であってもよい。また、希釈用ポリエステル樹脂は直鎖状でも分岐状でもよい。希釈用ポリエステル樹脂は、再生ポリエステル樹脂が好ましい。
【0074】
本明細書において主成分とは、組成物中で最も含有量が多い成分をいう。希釈用ポリエステル樹脂は、典型的には、ジオールおよびジカルボン酸に由来するポリエステル樹脂、ジオールおよびヒドロキシカルボン酸に由来するポリエステル樹脂、ジオール、ジカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸に由来するポリエステル樹脂、あるいはこれらの混合物が例示できる。
【0075】
前記ジオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオールが例示できる。
前記ジカルボン酸は、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪酸ジカルボン酸;テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;或いは、これらのエステル形成性誘導体が例示できる。 前記ヒドロキシカルボン酸は、例えば、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトンが例示できる。
【0076】
希釈用ポリエステル樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET-G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が挙げられる。透明性に優れ、成形加工が容易なことからポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0077】
希釈用ポリエステル樹脂はバージンポリエステル樹脂でも、再生ポリエステル樹脂でもよい。本発明によれば、ポリエステル樹脂用マスターバッチを用いることにより希釈用ポリエステル樹脂を鎖伸長して高分子量化し、更に、均質に溶融粘度を高めることができる。従って、特に、分子量が低下した再生ポリエステル樹脂に好適である。より品質の高いポリエステル樹脂成形体を得る観点からは、希釈用ポリエステル樹脂は直鎖状ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0078】
希釈用ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は限定されないが、0.4dl/g以上が好ましく、0.5dl/g以上がより好ましい。上限値は、溶融粘度を考慮した成形加工時の取り扱い性の観点からは1.5dl/g以下が好適である。なお、本明細書における固有粘度および溶融粘度は、後述する実施例により求められる値をいう。
【0079】
希釈用ポリエステル樹脂に対するポリエステル樹脂用増粘マスターバッチの添加量は、希釈用ポリエステル樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.2~8質量部がより好ましい。
【0080】
<成形体の製造方法>
成形体の製造方法は、希釈用ポリエステル樹脂に、ポリエステル樹脂用増粘剤を直接添加して混合する工程またはポリエステル樹脂用マスターバッチを添加して混合する混合工程と、この混合工程と同時または混合工程後に成形する成形工程とを含む。混合工程は、希釈用ポリエステル樹脂の流動開始温度よりも0~30℃高い温度でマスターバッチが均質になるように混合する。溶融する温度で均質に混合することにより、希釈用ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂用増粘剤、ならびにポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂用増粘剤の反応が促進され、溶融粘度が上昇する。鎖延長ポリエステル樹脂(C)がエポキシ基を有する場合には、希釈用ポリエステル樹脂と鎖延長ポリエステル樹脂(C)、ならびにポリエステル樹脂(A)と鎖延長ポリエステル樹脂(C)も反応して高分子量化する。これらに伴い、溶融混練物の溶融粘度が上昇する。
【0081】
前記成形工程は、単軸や二軸押出成形、射出成形、ブロー成形等が挙げられる。
【0082】
前記混練工程は、希釈用ポリエステル樹脂の流動開始温度以上であることが好ましい。混錬温度は、例えば、250~300℃が好ましく、250~280℃がさらに好ましい
【0083】
成形体の形状は、例えば、フィルム、シート、板状、網状体、容器、筒状体、ボトル、フィラメントなどの糸状体、不織布、織布などの繊維等が挙げられる。成形体の表面は平滑であっても凹凸や複雑な形状を有していてもよい。
【0084】
成形体の用途は、例えば、飲料ボトル、衣料品、包装材、発泡体、フィルム、シート、容器、電子材料、建材、自動車部品、各種工業部品・製品等が挙げられる。
【実施例0085】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例に限定ない。特に断りがない限り、実施例中、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0086】
<ポリエステル樹脂用増粘剤の製造>
(実施例1)
温度計、撹拌機、滴下ロート、冷却器を具備した4つ口セパラブルフラスコに、メチルエチルケトン44.9部を仕込み、窒素気流化で30分撹拌し、昇温した。
別途、滴下ロートに、エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体としてグリシジルメタクリレートを30部、芳香環含有単量体としてスチレンを65部、その他単量体としてメチルメタクリレートを5部、チオール系連鎖移動剤としてチオグリコール酸2-エチルヘキシルを1.8部仕込み、滴下モノマー液とした。
滴下モノマー液と2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)の10%メチルエチルケトン溶液18部を3時間かけて均一滴下し、還流下で重合反応を開始した。
滴下終了後、還流を維持し5時間反応を継続した。その後、サンプリングを行い転化率が98%以上であることを確認し、冷却後、メチルエチルケトンで希釈し、不揮発分50%の樹脂溶液を製造した。
次に、1Lのビーカーにメタノール500部を仕込み、デイスパーを用いて1,000回転で撹拌したところに樹脂溶液を1時間かけて滴下した。その後直径150mmのブフナー漏斗で、定性濾紙(ADVANTEC社製、品名No.2)を用いて減圧吸引し、生成した白色沈殿物をろ過した。得られた白色沈殿物を真空乾燥機で50℃12時間乾燥し、ポリエステル樹脂用増粘剤(P-1)を製造した。
【0087】
(実施例2~15)
実施例2~15は下記表1のように、使用する単量体、重合開始剤、連鎖移動剤の種類や使用量を変更した以外は、実施例1と同様な方法でポリエステル樹脂用増粘剤(P-2)~(P-15)を得た。
【0088】
(比較例1)
比較例1は下記表1のように、使用する単量体、重合開始剤、連鎖移動剤の種類や使用量を変更した以外に、再沈殿工程を行わずに溶液で取り出し、エバポレーターで一定量の溶媒を除去した後、真空乾燥機で50℃12時間乾燥し、比較例1の樹脂(P-16)を製造した。
【0089】
【表1-1】
【0090】
【表1-2】
【0091】
表1中の略号は以下の通りである。
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
OTG:チオグリコール酸2-エチルヘキシル
【0092】
実施例に用いた原料を以下に示す。
<ポリエステル樹脂(A)>
A-1:GN001(イーストマンケミカル社製、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート PET-G、流動開始温度200℃)
A-2:PIFG30(ベルポリエステルプロダクツ社製、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート I-PET、流動開始温度224℃)
【0093】
<ポリエステル樹脂用マスターバッチの製造>
(実施例16)
ポリエステル樹脂(A-1)50部、及びポリエステル樹脂用増粘剤(P-1)50部を、日本製鋼所(株)製同方向回転2軸押出し機「TEX-54α3」(L/D=52.5、吐出量;350kg/hr、3ベント孔)に投入し、ベント孔から高真空下で吸引・脱気しながら220℃で押し出し、ペレタイザーでカットすることでポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ(M-1)を得た。
【0094】
(実施例17~33)、(比較例2)
表2に示した組成の材料、製造温度でポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ(M-1)と同様にしてポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ(M-2)~(M-19)を得た。
【0095】
【表2-1】
【0096】
【表2-2】
【0097】
[臭気評価]
製造したポリエステル樹脂用マスターバッチを、10g量り取り、アルミ蒸着袋に入れて密閉し、40℃で24時間静置した。その後、5人のモニターにより臭気を確認した。
◎:臭気がほとんど認められない(モニター全員が臭気を感じない)。良好。
○:臭気がわずかに認められる。(モニター1~3人が臭気を感じる)。実用可能。
×:明らかに臭気が認められる(モニター4人以上が臭気を感じる)。実用不可。
【0098】
<成形用ペレットおよび成形体の製造と評価>
(参考例1)
再生ホモPET樹脂(IV:0.60dl/g)100部を日本プラコン社製のスクリュー径40mmの単軸押出機(ダルメージスクリュー)にてスクリュー回転数90rpm、加工温度270℃、吐出20kg/hにて押出加工を行い、再生ポリエステル樹脂ペレットを作製した。
(参考例2)
再生ホモPET樹脂(IV:0.60dl/g)100部を日本製鋼所社製のスクリュー径30mm(L/D=53.5)の二軸押出機にてスクリュー回転数200rpm、加工温度270℃にて押出加工を行い、再生ポリエステル樹脂ペレットを作製した。
【0099】
(実施例34)
再生ホモPET樹脂(IV:0.60dl/g)100部と、ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ(M-1)1部とをタンブリング(ペレット同士を混合すること)したものを日本プラコン社製のスクリュー径40mmの単軸押出機(ダルメージスクリュー)にてスクリュー回転数90rpm、加工温度270℃、吐出20kg/hにて押出加工を行い、成形用ペレットを作製した。
【0100】
(実施例35~51)、(比較例3)
表3に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例34と同様の方法で成形用ペレットを製造した。
【0101】
【表3-1】
【0102】
【表3-2】
【0103】
[固有粘度(IV)の評価]
作製した各ペレットをフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン=1/1の溶液に溶解させ、柴山科学器械製作所社製の自動粘度測定装置「SS-600-L2」を用いてJIS K7367-5に従いペレットのIVを測定した。各実施例のIVをIV、参考例1のIVをIVとし、固有粘度の上昇分について以下の評価基準により評価を行った。
◎:IV/IV≧15 (極めて良好)
〇: 10≦IV/IV<15 (良好)
△: 5≦IV/IV<10 (実用可)
×:IV/IV<5 (実用不可)
【0104】
[黄色度(YI値)]
作製した各ペレットを、射出成形機(東芝機械社製、IS-100F型)を用いて270℃で射出成形を行い、縦30mm×横40mm×高さ3mmの直方体のプレートを作製した。その後、クラボウ社製の画像分光測色機AUカラーCOLOR7xを用い、D-65(10)標準光源にてテストピースのL値(明度)、a値、b値を測定し、JIS K7373に従い、YI値を算出し黄色度を測定した。黄変性は以下の基準で評価した。
◎:0≦YI<5 (極めて良好)
○:5≦YI<10 (良好)
△:10≦YI<20 (実用可)
×:20≦YI (実用不可)
【0105】
[白濁度]
黄色度(YI値)を評価したプレートのヘイズを、JIS K7136に従い、ヘイズガードプラス(ガードナー社製)を用いて測定し、以下の基準で白濁度を評価した。
◎:ヘイズ≦10% (極めて良好)
〇:10<ヘイズ≦15% (良好)
△: 15<ヘイズ≦20% (実用可)
×:ヘイズ>20% (実用不可)
【0106】
[衝撃強度評価]
作製したペレットを、それぞれブロー成形機を用いて280℃でブロー成形し、実施例に係るペットボトルを各50本作製した。ペットボトルの厚みは1mmとした。得られたペットボトルのうち、任意の10本で衝撃試験を行った。具体的には、ペットボトルの8割に水を充填し、高さ1mから落下させた。評価基準は以下の通りとし、成形加工性の確認を実施した。
◎:N=10で変形や穴あき等は見られなかった。 (極めて良好)
〇:N=10で穴あきはなかったが若干の変形は見られた。 (良好)
△:穴あきが1本見られ、水がこぼれた。 (実用可)
×:2本以上穴あきが見られた。 (実用不可)
【0107】
(実施例52)
再生ホモPET樹脂(IV:0.60dl/g)100部と、ポリエステル樹脂用増粘マスターバッチ(M-1)1部とをタンブリングしたものを日本製鋼所社製のスクリュー径30mm(L/D=53.5)の二軸押出機にてスクリュー回転数200rpm、加工温度270℃にて押出加工を行い、成形用ペレットを作製した。
【0108】
(実施例53~69)、(比較例4)
表4に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例52と同様の方法でリ成形用ペレットを製造した。
【0109】
二軸押出機を用いて作製した成形用ペレットならびに成形体の評価は、単軸押出機で製造したものと同様の方法で実施した。なお、固有粘度(IV)は、参考例1のIVを参考例2のIVに読み替えて求めるものとする。各評価基準は、単軸押出機の評価と同一とした。
【0110】
【表4-1】
【0111】
【表4-2】
【0112】
表4-1および表4-2の結果より、実施例で得られた成形体は、ポリエステル樹脂用増粘剤を使用することで臭気、透明性の低下および黄変を抑制し、再生ポリエステル樹脂の成形加工性を向上可能であり、単軸押出機および二軸押出機での成形を可能なることが分かる。