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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024030286
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】地震予測方法及び地震予測システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/01 20240101AFI20240229BHJP
【FI】
G01V1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133060
(22)【出願日】2022-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】508281354
【氏名又は名称】富士防災警備株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514081715
【氏名又は名称】富士ロボテクスセキュリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】田代 亮介
(72)【発明者】
【氏名】道下 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 了
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB19
2G105CC04
2G105DD01
2G105EE02
2G105GG01
2G105MM03
(57)【要約】
【課題】効率よく正確に地震発生を予測する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、観測手段によりビスマス214の半減期より短い一定期間ごとに大気中のγ線の量を観測し、データ取得手段により観測した前記大気中のγ線の量のうち、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量を取得し、データ検出手段により取得したビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量の計測データの平均に対する偏差の異常値を地震の前兆として検出し、地震発生予測手段により検出された前記異常値が生じた時期に基づいて、前記地震の発生時期を予測する地震予測方法及び地震予測システムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震予測方法であって、
ビスマス214の半減期より短い一定期間ごとに大気中のγ線の量を観測する観測段階と、
観測した前記大気中のγ線の量のうち、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量を取得する取得段階と、
取得した前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量の計測データの平均に対する偏差の異常値を地震の前兆として検出する検出段階と、
検出された前記異常値が生じた時期に基づいて、前記地震の発生時期を予測する予測段階と
を含むことを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の地震予測方法であって、
前記予測段階は、前記異常値が生じたときから2~14日後に地震が発生すると予測することを特徴とする。
【請求項3】
請求項2に記載の地震予測方法であって、
前記予測段階は、前記異常値が生じたときから4~9日後に地震が発生すると予測することを特徴とする。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の地震予測方法であって、
前記異常値は、前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた場合及び前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた回数が一定数を超えた場合の少なくとも何れかの場合に発生したと判断することを特徴とする。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載の地震予測方法であって、
前記観測段階は、大気中のγ線の量を測定する測定段階と、測定した大気中のγ線の量を、スペクトラム解析によりエネルギーごとのγ線量を分析する分析段階とを含むことを特徴とする。
【請求項6】
地震予測システムであって、
ビスマス214の半減期よりも短い一定期間ごとに大気中のγ線の量を測定するγ線観測手段と、
前記γ線観測手段により観測した大気中のγ線の量のうち、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線の量の計測データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得した前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量の計測データの平均に対する偏差の異常値を地震の前兆として検出するデータ検出手段と、
前記データ検出手段により検出された前記異常値が生じた時期に基づいて、前記地震の発生時期を予測する地震発生予測手段と
を含むことを特徴とする。
【請求項7】
請求項6に記載の地震予測システムであって、
前記地震発生予測手段は、前記異常値が生じたときから2~14日後に地震が発生すると予測することを特徴とする。
【請求項8】
請求項7に記載の地震予測システムであって、
前記地震発生予測手段は、前記異常値が生じたときから4~9日後に地震が発生すると予測することを特徴とする。
【請求項9】
請求項6から8の何れか1項に記載の地震予測システムであって、
前記異常値は、前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた場合及び前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた回数が一定数を超えた場合の少なくとも何れかの場合に発生したと判断することを特徴とする。
【請求項10】
請求項1から3の何れか1項に記載の地震予測システムであって、
前記γ線観測手段は、大気中のγ線の量を測定するγ線測定手段と、測定した大気中のγ線の量を、スペクトラム解析によりエネルギーごとのγ線量を分析するγ線分析手段とを含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震予測方法及び地震予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震前兆現象の候補の一つとして、地震の数日前から破壊域に微小破壊(マイクロクラック)があることが知られている。そのため、マイクロクラックの発生を検知することができれば、地震発生を予測することが可能となるため、現在ではマイクロクラックの発生を検知する方法が様々研究されている。
【0003】
ここで、大気中のラドン222(222Rn)の濃度変化を計測することにより、マイクロクラックの発生を検知する方法が考えられている(非特許文献1)。ラドン222は、岩石中に含まれるラジウム226(226Ra)が放射性崩壊することで発生する。そのため、ラドン222は、地殻中に存在しており、マイクロクラックにより発生したラドン222の一部は地下水に溶け込んで流出し、一部は地殻の空隙に溜り、空気中に放出される。実際に地震発生前に大気中のラドン222の濃度が異常に上昇した例も報告されている(非特許文献1)。ラドン222は放射性物質であるため、ラドン222の放射線を観測することにより地震予測が可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構,量子生命・化学部門,“兵庫県南部地震前に大気中ラドンの濃度変動を観測。臨界現象数理モデルへ適用し地震予知に活用も”,[online],2018年12月26日、独立行政法人 放射線医学総合研究所,広報室,[2022年6月15日検索],インターネット <URL:https://www.qst.go.jp/site/qms/1575.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ラドン222の濃度の観測には以下のような困難が伴う。
1.ラドン222の濃度を観測するためには、ラドン222から発生するα線を測定する必要がある。しかし、α線の放射距離(飛程)は、大気中では3cmから8cmと非常に短い。従って、マイクロクラックから発生したラドン222を素早く正確に測定するためには、地表(地面)にα線の測定器を設置して測定する必要がある。
2.α線の飛程の短さから、ラドン222の発生を正確に測定するためには、ラドン222の観測点を多くする必要がある。例えば観測点は網目状に間隔を開けず設置する必要がある。
3.ラドン222は無臭、無色、不活性の気体であり、空気中に放出されたラドン222は、風によって発生点から移動してしまう可能性がある。ラドン222の半減期は3.8日であるため、その間に移動してしまうと、発生点が絞りづらい。
上記理由から、ラドン222の濃度を観測することによる地震予測は効率が悪く正確性に欠ける。
従って、効率よく正確に地震発生を予測する方法及びシステムが求められている。本発明の目的は、効率よく正確に地震発生を予測する地震予測方法及び地震予測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、マイクロクラックの発生を検知する方法について、更に検討した。地中に存在するラドン222は、原子崩壊により、更にビスマス214(214Bi)に変化する。従って、大気中のビスマス214の濃度を観測することによりラドン222の濃度を観測しなくともマイクロクラックの発生を検知することができるという結論に至った。
【0007】
但し、ビスマス214は、半減期が19.9分と短いため、測定時期によっては、検出できない場合が生じる。従って、ビスマス214の半減期よりも短い一定期間ごとにビスマス214の濃度を観測する。これによりビスマス214が発生した場合も漏れなく検出することができる。また、発生したビスマス214は、風により発生地点から大気中を移動する前に崩壊する。従って、ビスマス214を観測することによりラドン222と比較して発生点を絞りやすい。
【0008】
また、ビスマス214は、ラドン222と異なりγ線を放出する。γ線は大型のシンチレーション検出器であれば容易に検出できる。また、γ線は飛程が地表から電離層までと非常に長い。従って、ビスマス214の発生地点から離れていても、ビスマス214の濃度を観測することができる。
以上のようにビスマス214の濃度観測によるマイクロクラック検知はリアルタイム性を有し、濃度の観測も容易である。
【0009】
上記課題を達成するため、本発明は以下のような構成を備えている。
(1) 地震予測方法であって、
ビスマス214の半減期より短い一定期間ごとに大気中のγ線の量を観測する観測段階と、
観測した前記大気中のγ線の量のうち、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量を取得する取得段階と、
取得した前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量の計測データの平均に対する偏差の異常値を地震の前兆として検出する検出段階と、
検出された前記異常値が生じた時期に基づいて、前記地震の発生時期を予測する予測段階と
を含むことを特徴とする。
【0010】
(1)の地震予測方法によれば、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量を観測するため、観測点における大気中におけるビスマス214の濃度を観測することができる。ラドン222が崩壊した物質であるビスマス214の濃度を観測することにより、マイクロクラックの検知が可能となり、これにより地震の予測が可能となる。
特に、ビスマス214は、半減期が20分弱と短く、崩壊が早いので、半減期よりも短い時間間隔で測定することにより、発生したビスマスを漏れなく検出することができるようになる。ビスマス214は半減期の短さから、大気中において風により発生点から遠方に移動してしまう前に崩壊してしまうので、観測点から離れた位置で検出される確率が低くなる。従って正確な発生位置が特定でき、マイクロクラックの発生位置を正確に検知できる。また、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線は飛程が長いため、観測点を多く設けなくてもよい。従って、(1)の地震予測方法は、効率よく正確に地震発生を予測することが可能となる。
【0011】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(2) (1)の地震予測方法であって、
前記予測段階は、前記異常値が生じたときから2~14日後に地震が発生すると予測することを特徴とする。
【0012】
(2)の地震予測方法によれば、異常値が生じたときから地震発生すると予測できる日までの期間を設定しているため、より精密な地震発生時期が予測できる。
【0013】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(3) (2)の地震予測方法であって、
前記予測段階は、前記異常値が生じたときから4~9日後に地震が発生すると予測することを特徴とする。
【0014】
(3)の地震予測方法によれば、異常値が生じたときから地震発生すると予測できる日までの期間を設定しているため、更に精密な地震発生時期が予測できる。
【0015】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(4) (1)から(3)の何れか1つの地震予測方法であって、
前記異常値は、前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた場合及び前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた回数が一定数を超えた場合の少なくとも何れかの場合に発生したと判断することを特徴とする。
【0016】
(4)の地震予測方法によれば、異常値の判断方法を明確に規定しているため、より精度が高いビスマス214の観測ができる。また、これらを組み合わせることにより、様々な面からのビスマス214の観測が可能となる。
【0017】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(5) (1)から(3)の何れか1つの地震予測方法であって、
前記観測段階は、大気中のγ線の量を測定する測定段階と、測定した大気中のγ線の量を、スペクトラム解析によりエネルギーごとのγ線量を分析する分析段階とを含むことを特徴とする。
【0018】
(5)の地震予測方法によれば、測定した大気中のγ線をスペクトラム解析によりエネルギーごとのγ線量を分析するため、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量を精密に観測できる。
【0019】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(6)地震予測システムであって、
ビスマス214の半減期よりも短い一定期間ごとに大気中のγ線の量を測定するγ線観測手段と、
前記γ線観測手段により観測した大気中のγ線の量のうち、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線の量の計測データを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得した前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量の計測データの平均に対する偏差の異常値を地震の前兆として検出するデータ検出手段と、
前記データ検出手段により検出された前記異常値が生じた時期に基づいて、前記地震の発生時期を予測する地震発生予測手段と
を含むことを特徴とする。
【0020】
(6)の地震予測システムによれば、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量を観測するため、観測点における大気中におけるビスマス214の濃度を観測することができる。ラドン222が崩壊した物質であるビスマス214の濃度を観測することにより、マイクロクラックの検知が可能となり、これにより地震の予測が可能となる。
特に、ビスマス214は、半減期が20分弱と短く、崩壊が早いので、半減期よりも短い時間間隔で測定することにより、発生したビスマス214を漏れなく検出することができるようになる。ビスマス214は半減期の短さから、大気中において風により発生点から遠方に移動してしまう前に崩壊してしまうので、観測点から離れた位置で検出される確率が低くなる。従って正確な発生位置が特定でき、マイクロクラックの発生位置を正確に検知できる。また、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線は飛程が長いため、観測点を多く設けなくてもよい。従って、(6)の地震予測システムは、効率よく正確に地震発生を予測することが可能となる。
【0021】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(7) (6)の地震予測システムであって、
前記地震発生予測手段は、前記異常値が生じたときから2~14日後に地震が発生すると予測することを特徴とする。
【0022】
(7)の地震予測方法によれば、異常値が生じたときから地震発生すると予測できる日までの期間を設定しているため、より精密な地震発生時期が予測できる。
【0023】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(8) (7)の地震予測システムであって、
前記地震発生予測手段は、前記異常値が生じたときから4~9日後に地震が発生すると予測することを特徴とする。
【0024】
(8)の地震予測システムによれば、異常値が生じたときから地震発生すると予測できる日までの期間を設定しているため、更に精密な地震発生時期が予測できる。
【0025】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(9) (6)から(8)の何れか1つの地震予測システムであって、
前記異常値は、前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた場合及び前記ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた回数が一定数を超えた場合の少なくとも何れかの場合に発生したと判断することを特徴とする。
【0026】
(9)の地震予測システムによれば、異常値の判断方法を明確に規定しているため、より精度が高いビスマス214の観測ができる。また、これらを組み合わせることにより、様々な面からのビスマス214の観測が可能となる。
【0027】
また、本発明は以下のような構成を備えている。
(10) (1)から(3)の何れか1つの地震予測システムであって、
前記γ線観測手段は、大気中のγ線の量を測定するγ線測定手段と、測定した大気中のγ線の量を、スペクトラム解析によりエネルギーごとのγ線量を分析するγ線分析手段とを含むことを特徴とする。
【0028】
(10)の地震予測システムによれば、測定した大気中のγ線をスペクトラム解析によりエネルギーごとのγ線量を分析するため、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量を精密に測定できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、効率よく正確に地震発生を予測する地震予測方法及び地震予測システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】地震発生のメカニズムを簡略的に示す図である。
図2】ウラン238からの元素の崩壊の様子を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る地震予測システム1の一例を示す図である。
図4図3の地震予測システムによる地震予測方法のフローチャートを示す図である。
図5】ある時間に計測された大気中のγ線の量のデータに対してスペクトラム解析を行った時のグラフを示す図である。
図6】(a)は、データシートに入力したビスマス214が放出するエネルギーのγ線の量の積算値、増加量及び変化量である。(b)は、(a)の増加量の折れ線グラフである。
図7】データ検出処理における計算結果の表を示す図である。
図8】観測点Aでのビスマス214の観測データに対する各値の計算結果及び地震のデータである。
図9】観測点Bでのビスマス214の観測データに対する各値の計算結果及び地震発生のデータである。
図10】(a)は、観測点Aでの観測データと観測点近辺において発生した地震との相関関係の計算結果のグラフを示す図であり、(b)は、観測点Bでの観測データと観測点近辺において発生した地震との相関関係の計算結果のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0032】
[原理]
地震発生のメカニズムとしては以下のようなことが考えられる。図1は地震発生のメカニズムを簡略的に示す図である。地震前兆現象の一つとして、地震発生の数日前から地震発生地域においてマイクロクラック1000が発生する。プレート運動(陸のプレート1100及び海のプレート1200の移動)が発生するとプレート(1100、1200)内又はプレート境界1300において応力が溜まる。溜った応力が限界に達するとプレート(1100、1200)に亀裂が入ったりプレートが大きく動いたりする。これが地震となる。マイクロクラック1000はこの時プレート(1100、1200)に溜った応力に伴って発生する。マイクロクラック1000が発生すると、大気中のラドン222の濃度が濃くなる。
【0033】
ラドン222は、岩石中に含まれるウラン238(238U)が放射性崩壊することで発生する。地球の地殻には放射性のウラン238が含まれており、放射性のウラン238は崩壊を起こして元素が変化する。図2はウラン238からの元素の崩壊の様子を示す図である。ウラン238から、トリウム234(234Th)、プロトアクチニウム234(234Pa)、ウラン234(234U)、トリウム230(230Th)、ラジウム226(226Ra)、ラドン222(222Rn)の順に変化する。そのため、ラドン222は、地殻中に存在しており、マイクロクラック1000により発生したラドン222の一部は地下水に溶け込んで流出し、一部は地殻の空隙に溜り、空気中に放出される。その後、ラドン222は大気中に拡散され、大気中のラドン222の濃度が上昇する。大気中のラドン222の濃度を計測することにより、マイクロクラック1000の発生を推定して、地震発生を予測することができる。
【0034】
ここで、大気中のラドン222の濃度の観測には以下のような困難が伴う。
1.大気中のラドン222の濃度を観測するためには、ラドン222から発生するα線を測定する必要がある。しかし、α線の放射距離(飛程)は、大気中では3cmから8cmと非常に短い。そのため、マイクロクラックから発生したラドン222を素早く正確に測定するためには、地表(地面)にα線の測定器を設置して測定する必要がある。
2.α線の飛程の短さから、ラドン222の発生を正確に測定するためには、ラドン222の観測点を多くする必要がある。例えば観測点は網目状に間隔を開けず設置する必要がある。
3.ラドン222は無臭、無色、不活性の気体であり、空気中に放出されたラドン222は、気象条件、特に風によって発生点から移動してしまう可能性がある。ラドン222の半減期は3.8日であるため、その間に移動してしまうと、発生点が絞りづらい。
上記理由から、ラドン222を測定することによる地震予測は効率が悪く正確性に欠ける。
【0035】
ここで、再び図2を参照すると、ラドン222は、更に崩壊して、ポロニウム218(218Pa)、鉛214(214Pb)、(又はアスタンチン218(218At))、ビスマス214(214Bi)へと変わっていく。検出したいのはラドン222であるが、ラドン222はγ線を出さず、α線しか出さない。そのため直接ラドン222をγ線によって検出することはできない。そこで注目するのがラドン222から崩壊して発生するビスマス214である。ビスマス214はγ線を出すため、大型のシンチレーション検出であれば検出することができる。γ線は飛程が地表から電離層までと非常に長い。そのため、上記1及び2に挙げた困難は解消され、ビスマス214の発生地点から離れていても、ビスマス214の濃度を観測することができる。従って、地殻の変動によりラドン222が発生するとビスマス214も検出できるようになる(図1)。
【0036】
ビスマス214は、半減期が19.9分と短いため、測定時期によっては、検出できない場合が生じる。従って、ビスマス214の濃度を測定するために、短い期間、具体的にはビスマス214の半減期よりも短い期間を設定して、周期的に観測する。例えば本実施形態では10分ごとにビスマス214の濃度を観測する。これによりビスマス214が発生した場合、発生したビスマス214を漏れなく検出することができる。また、発生したビスマス214は、風により発生地点から大気中を移動する前に崩壊する。従って、ビスマス214を観測することにより、上記3に挙げた困難も解消され、ラドン222と比較して発生点を絞りやすい。なお、ラドン222は発生点から移動した後にビスマス214に変化する場合もあるが、発生点から離れた場所で観測されたビスマス214は、発生点において観測されたビスマス214よりも濃度が薄く、微量しか検出できない。そのため、マイクロクラック1000の発生を推測するために無視できる程度の量である。
【0037】
更に、ビスマス214が発生するγ線を観測することにより、γ線全体の量を観測する場合よりも検測精度が高くなる。地震予測においてマイクロクラック発生を検知するためにγ線を観測する方法が検討されているが、γ線全体を観察すると地球由来のγ線の他、宇宙由来のγ線まで検出してしまうことで、検測精度が下がってしまう場合がある。ビスマス214は地球上にのみ存在するため、ビスマス214が発生するγ線を観測することで、宇宙由来のγ線を拾ってしまうことがなくなる。
【0038】
以上のようにビスマス214の濃度観測によるマイクロクラック1000の発生の検知はリアルタイム性を有し、濃度の観測も容易である。
【0039】
[地震予測システムの概要]
図3は、本発明の一実施形態に係る地震予測システム1の一例を示す図である。地震予測システム1は、放射線量観測装置10-1~10-n、及び解析サーバ20を備える。複数の放射線量観測装置10-1~10-nと解析サーバ20は、クラウド30を介して通信可能に接続される。放射線量観測装置10-1~10-nは、それぞれ観測点X-1~X-nに配置される。
【0040】
放射線量観測装置10-1~10-nは、それぞれ放射線検出器11-1~11-n及びコンピュータ12-1~12-nを備える。放射線量観測装置10-1~10-nは、大気中のγ線の量を観測するγ線観測手段である。放射線量観測装置10-1~10-nは、例えば、それぞれ観測点X-1~X-nの地上に設置されている。放射線検出器11-1~11-nは、例えば、それぞれ観測点X-1~X-nの地上から離れた、地上よりも上の位置に配置されてもよい。放射線量観測装置10-1~10-nでは、観測点X-1~X-nにおけるそれぞれの放射線量が連続的に観測され、観測データとして所定の記憶領域に記憶される。
【0041】
放射線検出器11-1~11-nは、γ線測定手段であるγ線検出器である。放射線検出器11-1~11-nは、それぞれコンピュータ12-1~12-nと接続され、コンピュータ12-1~12-nから電力を供給される。放射線検出器11-1~11-nは、空間放射線量を測定可能に構成されている。放射線検出器11-1~11-nは、国際放射線防護委員会の勧告による平常時の公衆の線量限度の単位時間あたりの量よりも低い空間放射線量を測定することが可能である。また、放射線検出器11-1~11-nは、γ線のスペクトラム解析を行うγ線分析手段である。そのため、放射線検出器11-1~11-nは、γ線のスペクトラム解析、核種識別が可能なソフトウェアがインストールされている。放射線検出器11-1~11-nは、それぞれ測定した空間放射線量の測定データに対してγ線のスペクトラム解析を行い、観測データを作成する。
【0042】
コンピュータ12-1~12-nは、情報処理装置の一例であり、放射線検出器11-1~11-n及びクラウド30と通信可能に接続されている。コンピュータ12-1~12-nは、観測データを送信する旨の指令をそれぞれ放射線検出器11-1~11-nに送信する。放射線検出器11-1~11-nは、指令に応じて観測データをそれぞれコンピュータ12-1~12-nに送信する。コンピュータ12-1~12-nは、それぞれ放射線検出器11-1~11-nから送信された観測データを受信し、受信した観測データを自己の所定の記憶領域に記憶し、クラウド30上の所定の記憶領域にアップロードする。
【0043】
解析サーバ20は、受信した観測データからγ線量のうちビスマス214が放出するエネルギーのγ線の量を取得するデータ取得手段としてデータ取得処理を行う。データ取得処理では、解析サーバ20は、クラウド30上の所定の記憶領域に記憶された観測データを適宜のタイミングでダウンロードする。このようにして、解析サーバ20は、各地に設置されている放射線量観測装置10-1~10-nから観測データを収集(取得)することができる。なお、例えば、解析サーバ20の機能のうち全部又は一部は、データ収集を担う地震予測を行う施設35に設けられてもよい。この観測データを、解析サーバ20の機能のうち、データ収集以外の機能を担うサーバが受信する。また、コンピュータ12-1~12-nは、クラウド30を介して解析サーバ20と通信可能に接続される。このとき、例えば、解析サーバ20は、観測データを送信する送信指令をコンピュータ12-1~12-nに送信する。コンピュータ12-1~12-nは、送信指令を受信すると、HDDなどに記憶されている観測データを解析サーバ20に送信する。解析サーバ20では、受信したスペクトラム解析された観測データからγ線量のうちビスマス214が放出するエネルギーのγ線の量が抽出される。抽出は、データシートに手入力してもよく、また、γ線の量を抽出できるように、ソフトウェアを構成してもよい。
【0044】
解析サーバ20はデータ取得処理により取得したビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量の計測データの平均に対する偏差の異常値を地震の前兆として検出するデータ検出手段としてデータ検出処理を行う。データ検出処理では、例えば、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値(例えば平均値+標準偏差の整数倍、又はあらかじめ設定された閾値)を超えた場合に異常値が発生したと判断される。また、データ検出処理では、例えば、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えた回数が一定数を超えた場合に異常値が発生したと判断されてもよい。また、データ検出処理では、例えば、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量が基準値を超えている時間が一定時間を超えた場合に異常値が発生したと判断されてもよい。また、データ検出処理では、例えば、これらの異常値が少なくとも一つ発生した場合に異常値が発生したと判断されてもよく、また、これらの異常値のうち、少なくとも2つ以上の異常値が発生した場合に異常値が発生したと判断されてもよい。
【0045】
解析サーバ20は、データ検出処理により検出された異常値が生じた時期に基づいて、地震の発生時期を予測する地震発生予測手段として地震発生予測処理を行う。地震発生予測処理では、例えばデータ検出処理において検出された異常値が生じたときから2~14日後に地震が発生する可能性があると判断される。より好ましくは、地震発生予測処理では、例えばデータ検出処理において検出された異常値が生じたときから4~9日後に地震が発生すると予測する。
【0046】
[地震予測方法]
地震予測システム1による地震予測方法2について説明する。図4は地震予測システム1による地震予測方法2のフローチャートを示す図である。地震予測方法2は、先ずビスマス214の半減期より短い一定期間ごとに大気中のγ線の量を観測する観測段階である観測100が行われる。観測100は、先ずステップS101において、一定期間ごとに大気中のγ線の量を測定する。測定は、放射線量観測装置10-1~10-nの放射線検出器11-1~11-nそれぞれにおいて行われる。観測周期は、ビスマス214の半減期である19.9分よりも短く設定される。観測周期は、本実施形態において例えば10分に設定される。ステップS101の次に、観測100は、ステップS102において、測定した大気中のγ線の量を、スペクトラム解析によりエネルギーごとのγ線量を分析する。放射線検出器11-1~11-nは、測定した大気中のγ線の量の測定データに対してスペクトラム解析を行う。図5は、ある時間に計測された大気中のγ線の量のデータに対してスペクトラム解析を行った時のグラフを示す図である。縦軸にカウント数(計測している日の計測開始時からの放射線量の積算値)、横軸にエネルギー(チャネル数)が示される。スペクトラム解析を行うことにより、ある時間のエネルギーごとのγ線の量がわかるようになる。これにより、核種ごとのγ線の量が明確になる。スペクトラム解析を行った大気中のγ線の観測データは、それぞれコンピュータ12-1~12-nに送信される。コンピュータ12-1~12-nに送信された観測データは、ステップS103において、それぞれ所定の記憶領域に記憶され、クラウド30上の所定の記憶領域にアップロードされる。
【0047】
地震予測方法2は、観測100の次に、観測した前記大気中のγ線の量のうち、ビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量を取得する取得段階であるデータ取得処理200が行われる。データ取得処理200は、ステップS201において、解析サーバ20が、クラウド30上の所定の記憶領域に記憶された観測データを適宜のタイミングでダウンロードする。これにより、解析サーバ20は、観測点X-1~X-nに設置されている放射線量観測装置10-1~10-nから観測データを取得する。ステップS201の次に、データ取得処理200は、ステップS202において、受信したスペクトラム解析された観測データからγ線の量のうちビスマス214が放出するエネルギーのγ線の量が抽出される。抽出は、解析サーバ20において行われる。抽出は、データシートに手入力してもよく、また、γ線の量を抽出できるように、解析サーバ20のソフトウェアを構成してもよい。
【0048】
ステップS202では、具体的には、609.61keVのエネルギーを有するγ線のカウント数を抽出する。ビスマス214が放出するエネルギーのγ線のうち、最も多く放出するγ線は、609.61keVのエネルギーを有するγ線である。図5を参照すると、ある時間において、609.61keVのエネルギーを有するγ線のカウント数は、119である。抽出した値は、例えばデータシートに入力される。カウント数をデータシートに入力後、直前の計測時間の積算値からの増加量(10分値)、及び直前の計測時間の増加量と現在の時間の増加量との差分(10分値差分)が計算され入力される。図6(a)は、データシートに入力したビスマス214が放出するエネルギーのγ線の量の積算値、増加量及び変化量である。図6(b)は、図6(a)の増加量の折れ線グラフである。
【0049】
地震予測方法2は、データ取得処理200の次に、取得したビスマス214が放出するエネルギーを有するγ線の量の計測データの平均に対する偏差の異常値を地震の前兆として検出する検出段階であるデータ検出処理300を行う。データ検出処理300は、ステップS301において、抽出したビスマス214が放出するエネルギーのγ線の増加量(直前の計測時間の積算値からの増加量:10分値)に対して、1日の平均値m及び日別の標準偏差σを算出する。更に、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線の量の1日の平均値+標準偏差の整数倍(n倍)の値(m+nσ)を計算する。本実施形態においては、平均値+標準偏差の2倍(m+2σ)、及び平均値+標準偏差の3倍(m+3σ)の値を計算する。図7は、データ検出処理300における計算結果の表を示す図である。図7に記載の通り、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線の増加量の平均値m(日平均)、標準偏差σ、平均値m+2σ、平均値m+2σ発生回数、平均値m+3σ及び平均値m+3σ発生回数が日別に計算される。なお、観測点によっては、ビスマス214の日々の発生量の変化、気象の変化、並びに測定地域における地形及び地質等の違いから、日別のビスマス214の観測値及び平均値がバラついてしまう可能性がある。これを是正するために、日別の標準偏差の他に、例えば月別、直近の15日間、直近の30日間等の標準偏差を算出し、これら算出した標準偏差に基づき前述の10分値を標準化してもよい。
【0050】
ステップS301の次に、データ検出処理300は、ステップS302において、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線の増加量の平均に対する偏差の異常値を検出する。異常値は、例えば、解析サーバ20において、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線の増加量が計算したm+3σの値を超えた日にち、その回数及びその量を解析結果データとして記録する。解析サーバ20は、γ線の増加量がm+3σを超えた場合に異常値が発生したと判断する。解析サーバ20は、m+3σの値を超えたγ線の増加量を基準値(パラメータ等により変化する値又はあらかじめ定められた閾値)と比較して、基準値を超えた場合に異常値が発生したと判断してもよい。また、解析サーバ20は、γ線の増加量がm+3σの値を超えた回数が一定数を超えた場合に異常値が発生したと判断してもよい。
【0051】
また、異常値は、例えば、解析サーバ20において、ビスマス214が放出するエネルギーのγ線の増加量が計算したm+2σの値を超えた日にち、その回数及びその量を解析結果データとして記録する。解析サーバ20は、m+2σの値を超えたγ線の増加量を基準値と比較して、基準値を超えた場合に異常値が発生したと判断してもよい。また、解析サーバ20は、γ線の増加量がm+2σの値を超えた回数が一定数を超えた場合に異常値が発生したと判断してもよい。
【0052】
地震予測方法2は、データ検出処理300の次に、データ検出処理300により検出された異常値が生じた時期に基づいて、地震の発生時期を予測する予測段階である地震発生予測処理400を行う。地震発生予測処理400は、ステップS401においてデータ検出処理300により検出された異常値が生じた時期にマイクロクラックが発生したと推定し、異常値が発生した時期に基づいて、地震の発生時期を予測する地震発生予測処理400を行う。地震の発生時期は、異常値発生から2週間(14日間)までを目安に予測する(短期予測)。2週間を超えてしまうと(長期予測)、多くの地震と異常値との関連性まで検討するため、異常値と関連性が低いと思われる地震まで考慮に入れなければならず、それぞれの地震に対する相関係数の精度も低下してしまう恐れがあるからである。そうすると、本実施形態の地震予測方法2の精度が低下してしまう恐れがある。ここで、地震の発生時期は、経験則上、マイクロクラックが発生した翌日に起こる確率は低く、マイクロクラック発生後7日を中心に、マイクロクラック発生後2日から7日まで徐々に発生確率が上昇し、7日を過ぎると徐々に発生確率が減少することが多い。地震発生予測処理400では、上述の経験則に則って、例えばデータ検出処理において検出された異常値が生じたときから2~14日後に地震が発生すると予測する。より好ましくは、地震発生予測処理400では、例えばデータ検出処理において検出された異常値が生じたときから4~9日後に地震が発生すると予測する。地震発生予測処理400は、解析サーバ20により行われる。
【0053】
[実施例]
本発明者は、本実施形態の地震予測システム1を使用して、一定期間(3月9日~5月15日)2つの観測点A及びBにおいて観測を行った。その後、観測データと観測点近辺において発生した地震との相関関係を計算した。
【0054】
観測に当たっては、先ず、ビスマス214の観測値を地域別に標準化した。標準化は月別に標準偏差を算出した。次に、観測データからビスマス214の1日の内での最大値、平均値m+3σ値、平均値m+2σ値、平均値m+3σ発生回数、及び平均値m+2σ発生回数を算出した。また、各観測点における過去14日間の地震発生のデータ、詳細には、各観測点から半径約100kmの範囲内を観測範囲内として、観測範囲内においてM4.0以上の地震が何時、何回発生したかを入力した。図8は、観測点Aでのビスマス214の観測データに対する各値の計算結果及び地震のデータであり、図9は、観測点Bでのビスマス214の観測データに対する各値の計算結果及び地震発生のデータである。図8図9の表は、共に、上記計測期間の一部のデータであり、また、観測日と、地震発生から14日間の地震のマグニチュード値ぞれぞれと、を対比させた表として作成している。
【0055】
次に、上記地震データと、上記計算値であるビスマス214の1日の内での最大値、平均値m+3σ値、平均値m+2σ値、平均値m+3σ発生回数、及び平均値m+2σ発生回数とのそれぞれの相関関係を、観測点A及びBそれぞれにおいて算出した。図10は、観測データと観測点近辺において発生した地震との相関関係の計算結果を示す図である。図10(a)は、観測点Aでの観測データと観測点近辺において発生した地震との相関関係の計算結果のグラフを示す図であり、図10(b)は、観測点Bでの観測データと観測点近辺において発生した地震との相関関係の計算結果のグラフを示す図である。
【0056】
データ検証では、観測点A、Bそれぞれにおいて、最大値、平均値m+3σ値、平均値m+2σ値、平均値m+3σ発生回数、及び平均値m+2σ発生回数における日ごとの異常値と、異常値が発生した当日から14日前までに観測範囲内において発生した地震とのそれぞれの相関関係を調査した。なお、図10(a)及び(b)において、全体的に高い相関関係は、破線の四角で囲っている。この調査において、観測点A、B共に、最大値、平均値m+3σ値、平均値m+2σ値、平均値m+3σ発生回数、及び平均値m+2σ発生回数における異常値を観測してから7日目の地震の相関が一番高く、次いで4日目の地震の相関が高い傾向にあった。観測点Aでは、2日目などの短いラグと、11日目などの長いラグの双方で高めの相関が観られた。観測点Bでは、4日目、7日目に集中していた。
【0057】
この結果、本実施形態の地震予測システム1における地震予測方法2では、前述の経験則に沿った結果を得ることができた。従って大気中のビスマス214の濃度が上昇することによりマイクロクラック1000の発生を推測できることがわかり、大気中のビスマス214の濃度を観測することにより地震の予測の精度を向上させることができる。よって、地震予測方法2では、例えばデータ検出処理300において検出された異常値が生じたときから2~14日後に地震が発生すると予測できる。より好ましくは、データ検出処理300において検出された異常値が生じたときから4~9日後に地震が発生すると予測できる。
【符号の説明】
【0058】
1 地震予測システム
10-1~10-n 放射線量観測装置
11-1~11-n 放射線検出器
12-1~12-n コンピュータ
20 解析サーバ
30 クラウド
35 施設
100 観測
200 データ取得処理
300 データ検出処理
400 地震発生予測処理
1000 マイクロクラック
1100 陸のプレート
1200 海のプレート
1300 プレート境界
X-1~X-n、A、B 観測点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10